会社概要

一坪隆紀氏(以下、一坪):みなさま、本日はモリト株式会社の説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。当社の会社概要と事業内容、今後成長を期待している事業を中心にご説明します。

最初に会社概要です。会社名はモリト株式会社、本社は大阪市のメインストリートである御堂筋に面した場所にあります。連結子会社は国内外20社、連結の従業員数は約1,300名、決算月は11月です。

沿革

沿革です。創業は1908年、明治時代の後期になります。西洋文化の広まりによって服装が洋服に変化して、下駄や草履が靴へと変わり、靴の部材として必要なハトメ、ホックや靴ひもにいち早く目をつけて商売を始めたのが、モリト創業のきっかけです。ここから商品を増やしていき、1960年にマジックテープの取り扱いも開始しました。

1977年には、当社初の現地法人を香港に設立し、これを皮切りにグローバル展開を加速させていきました。

沿革

1989年に大阪証券取引所の二部指定銘柄、2016年に東京証券取引所の一部指定銘柄になり、現在は東証プライム市場に上場しています。

事業軸

事業と商品の一部を紹介します。当社の事業は大きく分けて3つの事業から成り立っています。1つ目はアパレル関連事業で、ここではアパレル関連の付属品や一部製品などを取り扱っています。2つ目はプロダクト関連事業で、フットケア商品や雑貨など、小売商品の取り扱いを行っています。3つ目は輸送関連事業で、自動車や鉄道などの輸送機器の内装関連の資材を取り扱っています。

アパレル関連事業

各事業について具体的にご説明します。まずはアパレル関連事業です。ジャンルはベビー服から大人向けまで、カジュアル、フォーマル、インドア、アウトドア、ワーキングウェアなど多岐にわたります。

例えば、スライドの左下に男性向けのズボンがあります。女性向けのスカートも同様ですが、ファスナーの上に金属のホックがついています。この金具は、業界用語で前カンと呼ばれていますが、当社が国内シェア約90パーセントを持っています。

その右側のジーンズのボタンや、ポケットの両サイドのリベット、さらに右側のアウターのウェアについている金属や樹脂が使われているホック、その左上の白いパーカーのフードや袖口の調整ストッパーなど、これらはほんの一例ですが、「つなぐ・とめる・かざる」がコンセプトのコア商品を扱っています。

ファッション系の商品もたくさんあります。みなさまもご存じの国内外のアパレルブランドの商品には、当社の扱う付属品がついています。

輸送関連事業

輸送関連事業です。アパレルからいきなり自動車ということですが、実は自動車に採用された最初のアイテムは、当社の主力商品であるマジックテープやハトメでした。自動車の足元に敷くカーマットと呼ばれるマットがありますが、このマットのずれ防止のためにマジックテープとハトメが採用されました。これが輸送関連事業への参入のきっかけです。

スライドの右上にマットエンブレムと記載しています。これは社名やメーカー名を示すプレートですが、現在は国内シェア約8割を占めています。図に掲げているとおり、他にも多くの内装部品を手がけており、日系自動車メーカーを中心に、製造、調達、販売のグローバル対応を行っています。

輸送関連事業

自動車以外に、新幹線にも採用されています。スライドの写真は、新幹線の座席を写したものです。座席についている、物を入れるネット状のポケットも当社の取り扱い商品です。

当社の取り扱うネットは特殊な製法で作られており、結び目がなくて伸縮性があるため、物の出し入れがストレスなく行えることに加え、ネットとその周りの樹脂をセット加工して納品できるということも強みです。

使用してないときはペタッと座席にくっつくため、邪魔にならずストレスフリーの商材ということが、採用された理由だと思っています。

プロダクト関連事業

プロダクト関連事業です。この事業では、製品メーカーとして小売商品を手がけています。靴ひもや、靴の中敷きであるインソール、靴クリームなどのシューケア商品をはじめ、女性の足回りの悩みに対応するフットケア商品を中心に、「is-fit」というブランドで展開しています。主に靴の量販店やホームセンター、雑貨店、オンラインショップなどで取り扱っています。100円均一の小売店向けにも商品を提供しています。

スライドの右側に、防水素材のバッグを載せています。「ZAT」「ZAB」という名前の商品で、ゲリラ豪雨などの多い最近の気候に対応できるバッグとして、テレビや雑誌にも取り上げられている人気商品です。

プロダクト関連事業

アクティブスポーツ関連です。サーフィン、スケートボード、スノーボードなど、いわゆる横乗り系のスポーツ用品の輸入卸売業界トップのマニューバーラインを2018年にM&Aし、100パーセント子会社化しました。

これらのスポーツは東京五輪の種目にもあり、日本からメダリストが出るなど、注目を集めています。取り扱い商品においては、当社の商品の付属品の使用など、シナジー効果も大いに出てきています。

直近では、世界の有名サーファーを抱えるブランド「CHANNEL ISLANDS」の輸入代理店も担っています。

プロダクト関連事業

他にも、スノーボード、スケートボードの各種ブランドを取り扱っており、東京五輪、北京五輪の日本選手の活躍で注目を集めています。密にならずに楽しめることもあり、非常に人気のスポーツです。3つの事業と商品の説明は以上です。

モリトのここがすごい!

モリトの強みについてご説明します。スライドに大きく3点挙げています。

3つの事業の柱で安定した業績を維持

1つ目の強みとして、アパレル関連、プロダクト関連、輸送関連の3つの事業で安定した業績を維持しています。オイルショックやリーマンショック、新型コロナウイルス感染拡大の影響などがあっても、赤字にならない安定した業績を維持しています。

多彩なアイテムで高シェアをマーク

2つ目の強みは、各業界分野でシェア率の高い商品が多いことです。当社調べではありますが、金属ホックは日本で1位、世界でも1位、2位を争っています。先ほどご説明した前カンは国内でもダントツの1位、靴のインソールや自動車のマットエンブレム、サーフボードなども日本1位のシェアを有しています。特許や意匠、実用新案などの知的財産も数多く保有しています。

世界各地に広がるグローバルネットワーク

3つ目の強みは、製造、調達、販売網が世界各地に広がっているグローバルネットワークです。自社拠点以外にも、協力工場や代理店が世界各地にあり、あらゆる顧客ニーズにできるだけ近くで対応しています。自社製造が30パーセント、トレーディングが70パーセントの構成です。

売上高と営業利益の10年の推移(連結)

業績です。直近10年の売上高と営業利益の推移を、スライドのグラフで示しています。2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響がありましたが、前期の2021年度および今期は回復傾向が続いています。

今期の第1四半期は、四半期開示義務の開始以来、最高の売上高および純利益を達成しています。通期計画は、第1四半期終了時においては年初の発表どおり、売上高450億円、営業利益18億円となっています。

売上構成(2021年11月期)

売上構成です。スライドの左側のパイグラフは地域別です。日本国内の売上が約70パーセントとなっていますが、日本の事業会社が海外市場に直接販売するものもここに含まれているため、グローバルビジネスという観点から見れば、海外、国内それぞれの売上のウェイトはだいたい50対50です。

右側は事業別の売上構成を、さらに地域別に細分化したグラフです。2021年11月期の分析ですが、APと書かれてるのがアパレル関連事業で46パーセント、PDがプロダクト関連事業で36パーセント、TRが輸送関連事業で18パーセントということです。

連結貸借対照表(2021年11月期)

貸借対照表です。コロナ禍ということもあり、2020年度、2021年度と大型投資を控えた結果、有利子負債は21億円ほどありますが、現預金110億円ということで、実質無借金で経営を行っています。自己資本比率は現在70パーセントを超えています。

第8次中期経営計画の開始

2022年度より開始した第8次中期経営計画についてご説明します。当初は2020年度から5ヶ年での実施を予定していましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、開始時期を2022年度からに見直しています。

2020年度、2021年度は事業体制を構築する期間として、コロナ禍への対応、アフターコロナを見据えた準備などを進めてきました。2022年度から2026年度までの5年間の定量目標において、連結売上高500億円、連結営業利益25億円を前倒しで達成すべく努めていきます。

環境配慮型の商品開発等の取り組み

中期経営計画に沿った4つの取り組みについて、ご説明します。1つ目は、環境配慮型の商品開発などの取り組みです。環境問題の意識を高く持つ各業界、社会全体に対して、グループ全体として環境に優しいものづくりなどの製品の提案を強化しています。これは流行りだから当社も行うという短絡的なことではなく、この事業における利益の一部を微力ながら社会に還元し、地域環境保全に寄与していくことを目的とした事業です。

取り組みの第1弾として2021年度より、海洋汚染問題の原因の1つと言われている使用済みの漁網をリサイクルした素材を使用し、ボタン・テープ・生地などの資材を開発しています。

環境配慮型の商品開発等の取り組み

廃漁網から資材を作るまでの工程です。使用された漁網を回収した後は、洗浄、加熱などの工程を経て、粒状の樹脂ペレットにします。そして、その樹脂ペレットから糸を作り生地を作る、あるいはペレットを成形し、先ほどアパレルの付属品のところでご説明したような、ストッパーなどの部品、各資材へ加工しています。

モリトはこの生地を「どのようなものに加工できるのか」「どのようなところで販売できるのか」について、これまで培ったノウハウをもとに検討した上で提案しており、現在は大手アパレルブランド向けの付属品や、兵庫県の豊岡鞄、神戸シューズなどにも採用されています。

環境配慮型の商品開発等の取り組み×東京ヴェルディ女子ホッケーチーム

一般社団法人東京ヴェルディクラブに所属する、東京ヴェルディ女子ホッケーチームとコーポレートパートナー契約を締結しており、環境配慮型の商品開発などの取り組みをスタートしました。

ホッケー用のグッズを自社ブランドとして開発し、環境問題を一緒に考える、子ども向けワークショップなどのイベントの開催を予定しています。スライドに記載のとおり、東京ヴェルディ女子ホッケーチームのユニフォームには、当社の企業ロゴが入っています。

安心・安全・健康業界への注力

2つ目は、安心・安全・健康業界への注力についてです。モリトでは、ベビー服の前開きのところや股の部分などで使用される樹脂ホック、金属ホックなどを世界中で多く手掛けています。赤ちゃんが舐めても害がない素材でホックを生産しており、欧州の安全基準の認証も取得しています。

また、ホックが外れて赤ちゃんが誤飲することがないように、生地の厚みや種類にあったホックを提案しています。また、縫製工場において取り付け指導も行うなど、安全にこだわった商品を提供しています。「モリトの付属品がついている製品はどこに出しても安全だ」と、日本を含む世界大手ブランドの信頼が厚いことは非常に大きなポイントです。

安心・安全・健康業界への注力

作業服、医療現場向けのホック、付属品についても多く手掛けています。例えば、工場の作業服、建築現場で使用されているハーネス(安全ベルト)、医療従事者用ウェア、心電図検査で使用されるパッチの部品などがあります。このようなアイテムには、油などの汚れを落とす強力な洗剤を使用しても品質が落ちないように、耐久性のあるステンレスを使用した当社のホックが使われています。

ステンレスは他の素材に比べて非常に硬く加工が難しいものになりますが、モリトが取り扱うホックは、特に品質面において評価をいただいています。また、モリトが取り扱うステンレスのホックは、他と比べて磁力が弱く通電性が高いこともあり、医療機器業界で好評を得ています。

B to Cビジネスの展開 株式会社52DESIGN

3つ目は、BtoCビジネスの展開、52DESIGNについてです。イッセイ ミヤケの元デザイナーで、BAOBAOのバッグに携わっていた松村光氏と会社を共同で設立しています。今までにない、デザイン性のある高価格のバッグ販売を中心に行っており、最近では雑誌、テレビ番組、SNSなどで取り上げられ注目を集めています。

B to Cビジネスの展開 株式会社52DESIGN

各地の百貨店、あるいはセレクトショップでPOP-UP STOREを積極的に展開しており、最近では中国からの問い合わせや購入が増加しています。中国の海南島でPOP-UP STOREを実施するなど、アジアを中心に販売を強化しています。

また、直近では「Aquascutum」とのコラボバッグも販売しました。今後も異業種との協業、海外の有名ブランドとのコラボも予定しているため、新たな展開にご期待いただきたいと思います。

積極的なM&Aの継続

4つ目は、積極的なM&Aの継続についてです。企業価値を向上させていくために、M&Aは重要な戦略の1つと位置付けており積極的に取り組んでいます。

積極的なM&Aの継続

M&Aの実施方針としては、ニッチトップであること、当社と関連する事業領域であること、成長性があり相乗効果が見込めることの3つとなっており、積極的に進めています。

利益配分に関する基本方針

株主のみなさまへの還元についてです。株主還元策の基本方針は、継続的な配当、配当性向50パーセント以上、DOE1.5パーセントの維持です。今期は、年間で1株あたり27円を予定しています。

当期純利益と配当金、配当性向の推移

配当金と配当性向の推移です。昨年実績、今年の予想配当も配当性向50パーセント以上、DOE1.5パーセントの基準を維持しています。

まとめ

最後に、当社の特徴についてまとめたいと思います。ホックなど、日常的に必要とされる付属品を取り扱っており、ニッチな業界の取り扱いアイテムにおいて当社はトップの立ち位置になります。また、多岐に渡る事業で長年安定した収益を出しており、実質無借金経営のため自己資本比率も高く、財務的にも安定している状況です。

事業の中でさまざまな社会問題や環境問題へのアプローチを行い、SDGsに関する取り組みも実施しています。当社は配当性向50パーセント、DOE1.5パーセントを維持し収益が安定しているためインカムゲインが期待できます。モリトは小さなパーツで世界を変え続け、グローバルニッチトップ企業を目指します。本日のご縁をきっかけに是非、モリトという名前を覚えていただければと思います。

質疑応答:環境配慮型の商品開発などの取り組みについて

坂本慎太郎氏(以下、坂本):まず成長戦略として「環境配慮型の商品開発などの取り組み」「安心・安全・健康業界への注力」を掲げられていますが、現在この引き合いはあるのでしょうか? また、環境配慮型商品を開発されていると思いますが、こちらを開発・販売することによる利益率の向上はありますか? 他社との差別化などについても教えていただきたいです。

一坪:サステナブルといったSDGs系については、おそらく未来において当たり前の世界になっていくと思います。長い歴史の中でちょうど今が過渡期になると思っていますが、最後に残るものは本物、つまり、基準の高いもの、本当に付加価値があるものになってくると思います。

そのため、例えば今回は「海」というテーマを持っていますが、これに関する漁網を使った商品などをいろいろな場面で展開しております。先ほどご説明した内容以外にも、例えばランドセルのような、学生、子どもたちの物など、いろいろなところから付属品目について引き合いが多く来ており、中には成約につながっているものもあります。

差別化に関しては、例えば少しだけ漁網を使い、「漁網を使った製品です」と言っているような製品はいろいろとあると思いますが、そのような製品ではない本当の意味での付加価値のある「本物」を追及していきたいと思います。

質疑応答:M&Aの実施方針における優先順位について

坂本:M&Aについておうかがいしたいと思います。御社はM&Aを2014年、2018年など継続的に実施されていますが、今後のM&Aの実施方針について、御社の中で優先順位などがありましたら教えてください。

一坪:この2年間においてはやはりコロナ禍の影響があり、いろいろとお話をいただくことがあってもなかなか難しい状況でしたが、事業別・地域別においても基本的に優先順位はありません。これというものがあれば進めていきたいと思っており、基本的には先ほどご説明した3つのM&A方針に基づき進めている状況です。

質疑応答:配当政策について

坂本:配当政策についてのご質問です。継続して配当するとのことで、配当性向50パーセント以上、DOE1.5パーセント以上を定めていますが、どちらか一方ということではなく、配当性向とDOEの両方を実現していくという意味で認識してよいでしょうか? 

一坪:そのようにご認識いただければと思います。

坂本:御社は非常に高い配当性向を続けており、自己資本がかなり厚いと思いますが、仮に大きなM&Aが実施されても変わらないというイメージでよろしいでしょうか?

一坪:おっしゃるとおり、基本的に変えずに行っていきたいと思っています。約2年間は大きな投資がなかったため、現在は自己資本比率が70数パーセントの数字になっていますが、仮に前期末時点の現預金およそ110億円の半分くらいにあたる投資を行うと途端に状況は変わっていくため、それなりの力を蓄えているとご理解いただければと思います。

質疑応答:国内外において高いシェアを占めている要因について

坂本:御社は国内外において、取り扱い製品の中でもホック、マジックテープなどが高いシェアを占めているとのことでしたが、なぜ高いシェアを獲得できているのかを教えてください。

一坪:ハトメ、ホックについては、基本的に日本・東南アジアも含めて同業のいろいろな方が作っていますが、その中でもなぜ当社のものが選ばれているのかに関して、1つは品質保証体制が確立していることが大きい要因になっています。

先ほどご説明したように、ただホックのみを売るのではなく、価格、納期、品質などをプラスし、企業としての信用力を築いています。縫製工場にも実際に伺い、打ちつけの指導などトータルで提供しています。例えば国によって安全基準が違う中、「Aという国に出せてもBという国には出せない」というものでは、グローバル展開するブランドではダメであるわけです。

そのあたりも含めて、高いレベルの品質ときちんとした規格を持ち、信用ある対応を行っていることが一番大きなポイントであると思います。

坂本:非常によくわかりました。ただ売るのではなく、いろいろなサポートも含めて実施されているということだと思います。

一坪:おっしゃるとおりです。

質疑応答:商品数について

坂本:もう少しビジネスのことを聞きたいのですが、仕入れ先が1,500社、販売先が1万社とのことで、御社の取り扱う商品数はどのくらいなのかを教えてください。

一坪:同じ商品でもサイズや色がいろいろあり、それらを合わせて10万点以上あると思います。とはいえ、今日生まれるものもあれば今日で役目が終わるものもあり、「えっ、そんなのが出たの」と私も知らないものもあったりしますが、いろいろな業界のものをトータルすると10万点ぐらいになると思います。

坂本:製品のカタログのようなものはあるのですか?

一坪:定番商品のカタログはあります。基本的に、定期的に流れるものは即納できるような体制を整えています。

質疑応答:原材料価格の上昇の影響について

坂本:続いて、ハトメ、ホックなどは金属製だと思うのですが、金属も最近価格が上昇しています。この原材料価格の上昇の影響があったかを教えてください。

一坪:この価格上昇の背景には、ウクライナ情勢、為替、コロナ禍などいろいろなことがあります。原材料は金属にしても樹脂にしても上がってきていますし、物流面においてもきちんとした供給がなされないことがあります。

これは自社だけで吸収できるレベルではないため、常に取引先に対して価格の交渉を行っています。当然この為替で輸入品などは大変なのですが、できるだけそのようなところは対応していますし、仕入れと販売のそれぞれで交渉している状況です。

質疑応答:中国のロックダウンの影響について

坂本:中国のロックダウンの影響についてテレビなどで目にしますが、御社には影響がありましたか?

一坪:当社は上海に現地法人があり、特にそこが影響を受けています。4月くらいからロックダウンに入り、今のところ6月の初旬に解除されるという話ですが、4月には受注残も結構あったため、当社の工場からの直送で対応しています。

コロナ禍の前からリモートのシステムを国内外で使っていたのですが、5月はどの企業も上海で動いていないとのことで、その影響はあると思います。これは致し方ないと思っています。アフターコロナもどのようになっていくかまだ想像できないのですが、5月、6月は厳しい状態かなと思っています。

質疑応答:BtoCビジネスの展開について

坂本:スライド31ページのとおりBtoCビジネスを展開し、バッグの販売などをしているとのことですが、御社は今までBtoBビジネスに取り組んできた部分が大きかったと思います。それとバッティングしたりしないのか、取引先との付き合いが変わったりしないのかを教えてください。

一坪:BtoCビジネスが完全に取引先とバッティングすることは今のところありません。当社の取引先が扱っていない分野であることが多いと思います。

坂本:ニッチな高級バッグの分野で展開しているということですね。

一坪:もしどこかでバッティングが想定される場合はきちんと話し、ご理解いただいて進めることにしています。

質疑応答:アパレル産業の近況について

坂本:「国内アパレル産業の衰退が続く中で、展望や対応策があれば教えてください」という質問が来ています。コロナ禍の状況を含め、アパレルの最近の状況を教えてもらえればと思います。

一坪:アパレル事業そのものがコロナ禍に入る前から、日本国内のみならず世界的に曲がり角に来ていたことは事実です。大量生産の時代から徐々に変わってきているということもあります。

同じような商品展開、例えば付属品にしても、環境、健康、安心、安全、あるいは機能などをテーマに付加価値を付け、お客さまにそれを理解してもらうことが非常に大事だと思っています。

それゆえ、日本におけるアパレル市場に少し元気がない部分はありますが、その中で当社が提供する付属品等々に関しては、それなりの付加価値のついたもので展開しています。

質疑応答:為替の感応度について

坂本:「為替の感応度について教えてください」という質問が来ています。御社はどちらかというと円安と円高どちらのほうが儲かるのかといったことを教えてください。

一坪:輸出と輸入それぞれありますが、今はどちらかというと輸入のほうが若干多いです。当然、輸出にしても輸入にしても為替予約によるリスクヘッジに努めていますが、事業によってバランスがあります。130円、140円になってくると輸入のほうが少し多いため全体としては少し厳しいかなと思います。

ただ、国内外合わせて20社の連結になり、海外の収益は全部円で計上していくため、円安になるとそこでの膨らみがあることは確かです。したがって為替の考え方としては、110円前後が当社にとって精神的にも落ち着いた為替だと思っていますが、これが140円、150円になると影響は大きくなると思います。

質疑応答:会社分割のメリットについて

坂本:「御社において会社分割のデメリット、メリット、コストなど、ポイントがあれば教えてください」という質問が来ています。

一坪:3年前にモリト株式会社とモリトジャパン株式会社、つまり管理会社と事業会社に分けました。そのモリトジャパンをこの6月から、先ほどお伝えした3つの事業にそれぞれ分社化することになっています。

これはすべての事業を1つにしても、それぞれ商売の仕方や慣習、さらには働き方も違うためです。先進国において我々の業種業態で今後成長していくため、それぞれの分野に分けることによって深掘りをしながらも成長していく方針です。

6月1日からということで、すでに各社の幹部の意識がすごく変わってきています。お金に困ったことのない会社だったため、例えば仕入れたものをいつ支払って、お客さまからいつ入金があるといったことにもあまり厳しくありませんでした。

しかしこれからは独立するため、そうした利益体質という面では先進国において非常に重要なところに対する意識が高まっています。これがメリットであり、効果はすでに出てきています。

「コストが高くなるのではないか?」という話もあり、確かにシステムなどについては初期投資として最初に出るわけですが、それをカバーするくらいの利益体質になっていくことを考えており、デメリットはあまり感じていません。

今はコロナ禍でなかなか対面でのコミュニケーションが図れないことについて、いろいろな手段を使いながらグループとして同じ方向を向くよう進めています。

質疑応答:ヒット商品が業績に与える影響について

坂本:御社は多岐にわたった商品展開をしており、事業ポートフォリオの分散もかなりきれいにされていると思うのですが、ヒット商品が出たとき、やはり業績は上振れするのでしょうか?

一坪:ファッション系のもので言えば、ホックの中心にラインストーンを入れるといった1年から2年間にわたるヒットで高利益を得たことがありました。最近ではオリンピックがあったことでスケートボード関連商品も一躍人気が出てきています。

ほかにも最近はアウトドアスポーツの、フィッシングで魚を入れたり道具を入れたりする箱があります。あれはバッカンという名前で、昔の軍隊で使われていた「飯缶」に形状が似ていることから名前が来ているのですが、これは納期が長くて申し訳ないくらいの注文を受けています。

商品のところで登場した新幹線のネットもさまざまな鉄道向けに、形は違えどいろいろなところでストレスのない商材として売れています。

マジックテープもそうで、「つなぐ・とめる・かざる」の中の、「点」と「線」と「面」というのがあり、「点」がホック、「線」がジッパーまたはファスナー、「面」がマジックテープです。

このマジックテープは汎用性があり、二次商売が継続しています。ヒット商品もそうですが、しっかりと根付いた商品が多いところが大きなポイントだと思います。