2020年5月期決算説明会
仁科善生氏(以下、仁科):管理本部長の仁科です。今日はわざわざ当社の説明会に足を運んでいただきまして、大変ありがとうございます。新型コロナウイルス感染症拡大の関係で決算を延ばしたり、説明会自体も延期されたりしている会社があるとお伺いしていますが、当社は予定どおり開催させていただきました。しかしながら、ご報告差し上げる決算の内容については、やはり影響は免れませんでした。
最近のトピックス・資本政策の動き
それでは、説明会の資料をもとにページ順で説明させていただきたいと存じます。まず4ページです。業績結果の前に、この1年間当社が実施した資本政策などについて概要のみご報告します。
9月に譲渡制限付株式報酬制度を役員ならびに経営幹部に付与しました。昨年から実施しており、今回で2回目です。
同じく9月に外販事業課を新設しました。一昨年の春に出張回転寿司という業務を開始し、お客さまから大変ご好評をいただきました。こちらを採算に乗せて事業部門として運営していきたいということと、さらに今後はECなどの売上にも幅を広げていきたいとの思いも込めての新設というかたちになっています。
11月には劇団員ファミリーホリデーの導入を行ないました。働き方改革については2年半くらい前から本格的に着手し、労働時間そのものはしっかりと削減を図ってきたため、劇団員の生活はかなり改善したものと思っています。
一方で「休みを取る」というのが、外食の場合にはどうしても一斉には取れないため、交代に休みを取るのですが、お店が営業しているのに自分だけが休むとなると、気がかりでなかなか心が休まらないことや、また、家族でどこかで行こうと思っても、交代制のためになかなか計画が立てづらいといった問題点がありますので、思い切って2日間連続での休業日を設定しています。
「ご家族でお出かけください。会社も一応休みにしますので、みなさま心置きなく休養を取ってリフレッシュしてください」という思いで設定した制度です。こちらの制度を昨年の11月と12月に2回実施し、今年の2月にも実施しましたが、残念ながらコロナウイルスの関係で今期は以降の予定が立っていない状況です。
また、今年の2月に従業員向けストックオプション(第2回目)を実施しました。対象者は425名で、基準日から当社に1年以上勤務している社員に対して付与しています。大きな金額ではないのですが、幅広く付与することで、働く劇団員のモラルアップやモチベーションアップを期待しているところです。
そのほか、5月にはデリバリーサービスの出前館を導入しています。以上が資本政策ならびにトピックスです。
業績ハイライト
業績についてご説明します。次の5ページをご覧ください。全体としては、売上が180億7,600万円、対前年で12億4,000万円の減少です。率にして6.4パーセント減少しました。
営業利益は7,100万円、対前年でマイナス8億6,500万円、率にして92.4パーセントのマイナスになりました。当期純利益はマイナスの9,300万円の損失計上です。前期が5億500万円でしたので、対前年で5億9,900万円減ってしまったことになります。こちらは、ご承知のとおり、新型コロナウイルスの感染症拡大に伴う結果です。
この結果を受けて当期については、配当を取りやめさせていただくこととしています。
店舗政策:スクラップ&ビルドを推進
次のページをご覧ください。店舗ですが、退店が2店舗、新規の出店が2店舗。プラスマイナスで増減がゼロになり、期末で93店舗です。
出店は、昨年度から新たに展開している「雅」形態で、習志野店とテラスモール松戸店の2店を出店しました。退店は、東大宮店および川口新郷店の2店です。その他に、上尾、みずえ、八王子、千葉駅前、南小岩の5店について、大規模改装を実施しました。大変よいものができたのですが、新型コロナウイルスの感染症拡大に伴って、改装の成果が計画に及ばない状態での推移でございます。
エリア別売上
7ページをご覧ください。エリア別の売上です。売上高は、千葉県が72億2,400万円、東京都が75億6,000万円、埼玉県が22億9,100万円、神奈川県が10億円の合計180億7,600万円です。店舗数については千葉県で新店が2店舗出たため前期比プラス2店舗の40店舗、東京都は変わらず37店舗、埼玉県が2店減り12店舗、神奈川県が4店舗の計93店舗となっています。
既存店売上高 前年比
下の表の2月までをご覧ください。既存店の売上高がどう推移したかですが、100パーセントを超えるレベルで、ずっと堅調に推移してきました。
しかしながら、3月から5月にかけて新型コロナウイルス感染症の影響が大きく売上に出てきまして、3月で前年比90.2パーセント、4月で前年比57.2パーセント、5月で前年比49.3パーセントと、最終的に5月では前年の半分ほどの売上になっています。
ちなみに、当社は15日を締め日にしていますので、この3月、4月、5月は、例えば3月であれば3月15日まで、4月が4月15日、5月が5月15日で、他の一般的な基準とずれています。その関係もありまして、他社との率の比較が若干ぶれることもありますので、ご留意をお願いします。
既存店客数 前年比
9ページは客数です。3月、4月、5月を見ていただきますと、客数は売上よりも大きく落ちています。3月が84.8パーセント、4月が51.1パーセント、5月が29.7パーセントです。
こちらはテイクアウトの売上が増えたためです。テイクアウトの場合には客数を1とカウントするため、ご家族分のテイクアウトをされても1件としかカウントされず、結果として客数の減少というかたちで出てきています。
既存店客単価 前年比
この結果、既存店の客単価が大きく跳ね上がりました。同じく右下の3月、4月、5月をご覧ください。3月は前年比106.3パーセント、4月は前年比112パーセント、5月が前年比165.9パーセントとなっています。理由は先ほど申し上げたとおりです。したがいまして、こちらの数字の推移は連続性に欠けるところがありますので、ご了承いただきたいと存じます。
営業利益の変動
11ページは、営業利益の変動です。先期の営業利益が9億3,700万円ありました。新店では6億2,800万円、売上増加要因があったのですが、既存店で第3四半期中心に18億6,800万円の売上が減少となり、トータルでは前年比12億4,000万円の売上減少となっています。
これに対しまして、売上原価の減少もあったのですが、その他の経費の増減分を加味しても最終的に売上総利益の減少額をカバーしきれず、営業利益としては7,100万円になったということです。
売上原価と主要な販管費(通期)
通年の分析についての具体的な計数については、12ページをご参照ください。
売上原価と主要な販管費(1Q-3Q)
12ページ(通年実績)を見ても新型コロナウイルスの影響がわからないため、13ページには第3四半期までの累計の数字を、前年同期比で掲載しています。14ページは、第4四半期単体の数字を会計期間で出していますので、両方を合計すると、通年実績に合うことになります。第3四半期までの累計で見ると、売上も利益も堅調に推移したことが一目瞭然と思います。ただ、この中で給与が2億6,500万円、前期比で増えているところが目立ったところだと思います。売上が増えた分だけ売上総利益も増えているということですが、人件費の増加も相応にあったということです。
売上原価と主要な販管費(4Q)
第4四半期は売上が前期比で18億6,600万円減りました。売上総利益ベースでは11億円くらい減っています。これに対して、売上原価が6億8,700万円減ったということです。
一方で、販管費については23億700万円、前年同期比で3億円減っています。この内訳の主なものは、給与・賞与です。9億9,600万円が第4四半期の給与・賞与ですが、前年同期比で2億6,100万円減っています。これは期末賞与の支給を断念すること、シフトの厳格な運営などを実施しまして、この額まで減少させたものです。
広告宣伝費、水道光熱費・消耗品費の圧縮等々、第4四半期には精力的にコスト削減に注力しました。一方で、キャッシュレス化に伴い、支払(決済)手数料は減らすことができず、若干増えています。これらの結果、営業利益はマイナス3億9,300万円、前年比8億6,800万円の減となりました。
こちらは第4四半期単体ですので、こちらを第3四半期までの累計に足したのが、先ほどの通年の結果です。新型コロナウイルスの影響は、当社の業績に大きく反映されており、第4四半期だけで一転して赤字になった、ということです。
貸借対照表の状況
貸借対照表は、この結果を受けて現預金が11億2,400万円減りました。相手科目の負債は、買掛が6億円、未払金が2億円、未払法人税が2億円ということで、だいたい約10億円くらいの負債の減少になっています。資産・負債が11億円減った結果、最終的に自己資本比率が当期は74.5パーセントになっています。赤字を計上したため、自己資本が減っているのですが、それ以上に総資産が減ってしまったため、自己資本比率が66.8パーセントから74.5パーセントに逆に上がってしまったというのが今期の結果です。
キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローについては、16ページをご覧ください。現預金が11億2,400万円減っているということですが、内訳はこちらに記載のとおりです。
新型コロナウイルスの影響
第4四半期にはスライドにあるようなさまざまな施策を打ってきましたが、お伝えしたような結果になっています。
2021年5月期 通期業績見通しは「未定」
これを受けまして、2021年5月期についての業績予想ですが、足元では、売上は相応に回復してきているのですが、第2次感染の拡大も予想される中で、通期を通しての業績予想は困難ということで、予想については開示を控えています。配当も同様に、現在は未定としています。あまり具体的なお話しができず、大変恐縮ですが、業績については以上です。
新型コロナウイルス禍の影響の克服が最優先課題
石田満氏(以下、石田):あらためまして、銚子丸の石田です。今日はよろしくお願いします。みなさまご多用のところ、ご参集いただきまして本当にありがとうございます。私からは今後の取り組みについてお話しします。
今、仁科がご説明したとおり、第3四半期および2月から3月くらいまでは、累計で前年プラスの売上であり、例年であればなんとか4月、5月で大きく乗せていけるところだったのですが、このような状況になってしまいました。「5月決算じゃなくて3月決算だったら、少し気が楽だったかな」などと冗談を言っていたのですが、それほど4月、5月は大きなマイナスになったわけです。そうは言っても明けない夜はないわけですから、社内では「夜明けの空を何色に染めるか」と、夜明けの空を真っ青に染めていけるよう、鼓舞している次第です。
今後、何を行なっていくかは大きく3つのフェーズに分け、第1フェーズは初期対応ということです。この新型コロナウイルスの感染が広がってきた段階で、「まず、何する?」というところで、初期対応を行なうということで動きました。
中央の第2フェーズはウィズ・コロナと言いますか、新型コロナウイルスの渦中にあって、どのようにして新しいことであったり、既存店であったりを展開・組み立てをし直していくか、ということを考えました。
一番右側の第3フェーズには、第2フェーズで決めたことをしっかりと根付かせて回していくというようなかたちで、この危機を乗り越えていこうということで話し合いました。内容を少し砕いてお話しします。
1.ウィズ・コロナ時代への対応 Ⅰ
まずは会社の存続のためにということで、もともと資金は潤沢な会社ではありますが、それでもなお、手元資金を余裕を持たせるということで、3行から40億円の借入を行なうこととしました。
そのほか、役員報酬の減額ということで、4月、5月の役員報酬の30パーセントカットを行ないました。また今期も、6月、7月、総会前までは、20パーセントの減額を行なうということになっています。また、店舗の賃料はもともと(経費に占める)シェアが大きくなっているため、減額の交渉を進めました。家主には個人と法人があるのですが、個人の家主については30パーセント、法人の家主については50パーセントの減額を半年間お願いしました。
伝統のある会社ですから、個人の家主については、満額とはいきませんでしたがほぼほぼご協力いただいている状況です。法人の家主については、お互いに事情のあることで、なかなかいいお返事をいただけていませんが、着実に進んでいる現状となっています。
そして、下に書いてある経費も削減していく必要があります。売上の最大化が見込められない状況ですので、経費最小ということで、あらゆるところの見直しを進めています。少し悩んだのですが、従業員の管理職については、5パーセントの給与減額を一人ひとりと話し合ってお願いしました。
店舗の劇団員については、社員のお給料の中に入っている見合い残業分として、残業の見合い分の45時間分を入れていましたが、新型コロナウイルス感染でそれほど店舗が忙しくはなくなっているため、30時間に減らし、あとは働いたら働いた分だけというようなかたちに移行しました。あまり無理をせずに実質的に経費の削減を図っています。これは(会社)存続のためというお話を劇団員一人ひとりにしたうえで、ご協力をいただけたということです。
1.ウィズ・コロナ時代への対応 Ⅱ
次に、外食の価値は、もちろんおいしい食事にあるわけですが、この新型コロナウイルス禍にあって、食事以外のプラス要素の必要性が浮き彫りになってきたと感じています。その大きな1つとして、「感染しない、させない売り方」を徹底するというところを柱にしました。
お客さまが見てわかりやすく、目に見えて変わったところから順にお客さまが戻り、業績が回復すると考えています。今となれば、どこもやっている対策ではありますが、今やるべきことをしっかりやっていこうということで、今も指示を出し続けているところです。
1.ウィズ・コロナ時代への対応 Ⅲ
24ページです。お客さまの生活様式が大きく変わってきたため、今まで手を付けていなかったデリバリーサービスに手を付けていきました。最初に、5月に「出前館」を15店舗に導入しましたが、思いのほか順調に進みましたので、現在60店舗で展開中です。「Uber Eats」についても、これから65店舗くらいで導入を進めていく予定です。
また、その下に書いてあるECサイトによる販売の展開も、今まで「やろう、やろう」と言ってできていなかったため、しっかりと行なっていくということです。商品またはシステムを現在準備中であり、上期に開始予定として動いています。
このように、新型コロナウイルスの風に押されるようにECサイトの立ち上げや宅配など、新しいことに挑戦し始めており、そちらが少しずつですが、次々に芽吹いてきているような感触を受けているところです。そうは言っても、草花と同じですから、今日種をまいて、明日には花が咲いて実がなるということはあり得ないわけです。ですから、このあたりはまだ、既存店のマイナスをカバーするほどの業績は出せていません。
そう考えますと、当面は、まずこの苦境を乗り切るために、既存店の磨き直しを行ない、業績を新型コロナウイルス前まで戻すことが、「いの一番」で行なわなくてはならないことだと考えて動いているところです。
2.アフターコロナへ向けたサービスモデルの再構築Ⅰ
先ほどの「食事以外のプラス要素の必要性」のもう1つは、やはりお客さまの満足感が変化してきていることにあると考えています。
お客さまは漠然とした不安を抱えながらご来店いただいており、そのような世の中で生きてもいるわけです。そのような時代では気持ちや心が繊細になってきて、いい意味でも悪い意味でも些細なことを感じてしまうため、何気ないことで傷ついたり、ちょっとしたことで嬉しくなったりということがあると思っています。
そのような時代ですから、こちらに書いた商品や接客など、既存店で起こる対応の一つひとつをあえて深堀りすることが大事なのではないかと社内に発信しています。
「ヒューマンタッチな部分が大事だ」ということで、我が銚子丸の経営理念である「お客様の感謝と喜びを頂く」というところに焦点をあてて、今まさに理念を実現していくチャンスであるとして動いているところです。
言葉ではなかなかうまくは説明できないのですが、今までお客様は、例えば銚子丸の商品であれば、鮮度などおいしさというところに反応してくださったのですが、それだけではなく、もう1歩進めて、この商品が本当に手間をかけた商品であり、お寿司屋としての矜持をもった仕事ができているというところをきっちりと説明してご理解いただくことが大事になってくると思います。
次の接客についても同じです。銚子丸劇場と言っていますが、我々のお店は「元気、活気、そして楽しさ」を中心に運営してきました。
これからはもう1歩進んで、丁寧な仕事をする、機敏に動く、それから穏やかな会話などというところが必要になってくると思います。また、そのような立ち居振る舞いをすることで、お客様にはお店の良さを感じていただけるのではないかと考えています。
衛生についてもしかりでして、お店を見ると、清潔感は当然普通以上にがんばってはいるのですが、それよりも銚子丸は鮮度感が最も重要ということで清潔感や衛生的なところを見せていた部分があります。しかし、それではどうもお客さまは納得しなくなってきています。これからは圧倒的な清潔感、安心感ももてるような清潔感を打ち出していく必要があるのだと考えています。
最後に、お客様との関係ですが、こちらもおいしいお寿司を出していればいいという一方通行ではなく、それこそ今SNS等を通じた双方向のやり取りができる時代ですから、お客様と何か心が通うような、そのようなつながりができることが必要になってくるかなと思っています。なかなか社員に説明をしてもまだピンときていないのかもしれないのですが、しっかりとこちらを磨くことで既存店を立ち直らせていく。そのようなつもりで動いています。
まさに、先ほどお伝えした「お客様の感謝と喜びを頂く」という経営理念を売る絶好の好機として考え、他社にはマネができないくらいストレスフリーな銚子丸劇場を実現していきたいと考えています。
2.アフターコロナへ向けたサービスモデルの再構築Ⅱ
26ページについては、先ほどお伝えした新しいサービスを第2フェーズから定着させ、結果を出していきます。「出前館」に続いて「Uber Eats」そして、その先「menu」なども含めて媒体の数を増やし、幅広に進めていければと思っています。
ECサイトについても同様で、名物商品をしっかりと出していくことが必要になってくると思います。顧客利便性については、非接触型の決済が非常に増えてきているため、こちらもしっかりと充実させていきます。
そのほか、こちらには書いていませんが、順番待ちシステムや、テイクアウトの予約アプリなどについても開発途上であり、こちらもしっかりと進めていく予定です。新しいサービスについて、このあたりがもう少し見えてきた段階で、デリバリー専用店舗もしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
3.新しい生活様式定着に向けた長期戦略の再構築①
続きまして、これが第3フェーズになるわけですが、今までの銚子丸は成功モデルの出店で成長を成し遂げてきました。ところが、このような状況の世の中になってきますと、なかなか難しい状況も出てきています。
ですから、前回お話しした、異業種や異業態に挑戦する、海外の進出を検討するなどというところは、一旦ペンディングにしたいと考えています。
6月、7月については、まだ途中経過ですが、(売上は)前年の93パーセントぐらいまで戻ってはきているのですが、まだ私の頭の中では、現在危機の真っ只中にあると考えています。なぜなら、先がまだ見えていないからです。そのような中では既存店を磨くということで、スライドにあるとおり、「イノベーション5」を新しく形作っていきます。
既存店は「お店で銚子丸」ということで、今のイートインをしっかりと強く磨いていきます。そして「おうちで銚子丸」はテイクアウトなどのデリバリーで、おうちで銚子丸の商品を召し上がっていただけるサービスです。「おとどけ銚子丸」はECサイトでの販売であり、「おでかけ銚子丸」は出張回転ずしです。
「チャレンジ銚子丸」というのは、これは商品を「手巻き寿司」などのようにキットでお求めいただき、当社のホームページで職人が作っている姿を見ながら、ご家庭において、ご自身でお寿司を作っていただくという販売手法です。このようなことを行ないながら、既存店の業績を少しでも上げていくのを一番に考えています。
3.新しい生活様式定着に向けた長期戦略の再構築②
店舗展開は、先ほどお伝えしたとおり、成功モデルでの店舗展開が我々の強みだったわけですが、これがなかなか難しくなっています。新店はやはりこのような時期ですので、当たり外れが出ると思います。
ですから大きな投資をかけて外れるということも考えられるため、もう少し状況が落ち着いてきたら、1番には改装をしっかり行おうと思っています。改装は実績がだいたい見えていますので、改装を1番に、そして2番目に物件次第ですが出店を進めていきたいと思っています。3番目ですが、このような状況で売上が揺さぶられるため、どうしても不振店が出て退店の決断をする場合が出てくることも考えられます。店舗の成長戦略として、しっかりとした改装、出店、退店の基準を設けてそれぞれ確実に取り組んでいきたいと思います。
当社の企業価値向上プロセス
以前よりお伝えしてきましたが、左下をご覧のとおり、これまで設備投資や教育投資を積極的に行なったり、給与も上げたりしてきました。それをトリガーに、既存店のQSCを向上させ、良質な外食体験の提供にもっていくということです。
つまりは、従業員が満足して、お店がより良くなり、それが顧客満足度につながって、顧客満足度が上がることでお客さまが増え、売上高が増大します。売上高が増大すると、よほどの疎漏がなければ利益も増大します。そして増えた利益を投資余力、支払余力として充てて生産性をアップさせ、さらなる質の向上を目指していくということで、これを1周、2周と回していく予定でいるわけです。
これは新型コロナウイルスの状況があっても休むことなく実施していこうと思っていますが、少しスピードが落ちているかなという感じは否めません。これを2周、3周と回していくと右上にあるとおり、高い顧客満足度に後押しされての適正価格が実現できるような気がしています。
闇雲な値上げができるような世の中ではありませんので、顧客満足度に後押しされて適正価格まで上げていくことができ、新たな世界に入っていくと考えています。
いずれにしてもこのような世の中で、地道な行動で業績を上げていくという以外は、今のところないと思っています。ご説明したようなことで今期できる限りのことを行ない、次へのステップに目処をつけていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。
質疑応答:新戦略の前提条件と販管費削減について
質問者1:ご説明ありがとうございました。3点お願いします。まず今日ご紹介いただいた新戦略の前提条件、外部環境をどのようにお考えなのか確認をさせてください。ご説明いただいた中で、けっこう急ピッチで業績が戻っているという感覚を感想として持ったのですが、これがそのまま回復に向かっているのか、そのまま100パーセントに戻ることもありうるのか、どのような前提をお持ちでしょうか?
石田:外部環境については予測ができていないのですが、コロナウイルスの感染拡大がどのあたりで収まるかという話はあるかと思います。巷間で言われているとおり22年の半ばくらいまではお付き合いしていく必要があると考えています。
もう1つは、この期に及んでの緊急事態宣言はおそらく出ないだろうという認識を持っています。夜の営業では、やはりうちも弱くなっていますので、その辺の実態ベースを見ながら、というのが外部環境の認識かと思っています。また、戻り具合についてですが、楽観的に考えれば、このまま回復していくという考えもありますが、私はまだ一時的な反動増だと思っています。
それを確かめるべく、今考えているのは、8月度の夏休みや、通常であれば大繁忙期になるお盆などを狙って、7月のイベントで新聞の全面広告を1回打とうと思っています。それで8月度がどのくらいになるのかというのが戻り具合の目安になるかと考えていまして、その先のことはまだ読めていないというところです。以上です。
質問者1:ありがとうございます。続いて今期の販管費についての考え方について質問です。販管費は削減の方針ということだったのですが、どのあたりを削減されるご予定になっているのか、また、前期と比較してどのあたりに余地があるとお考えなのか教えてください。
仁科:削減の費目ということですが、まずは人件費ということになると思います。従来の人件費の考え方というのは、売上が増えた分をカバーするためにしっかり人を手配しよう、配置しようという拡大志向の発想でした。
もちろん働き方改革を充実させるということも含めて、この時期は採算点、損益分岐点をどこに置いてコスト管理するかが重要になってくると認識しています。従来では90パーセントで損益分岐というイメージで運営していたのですが、現在、(売上が)その90パーセントになっているという感じです。
こちらをさらに10パーセント(損益分岐80%)ぐらい下げるということで進めていきたいと考えていますが、そうは言ってもこれからさらに10パーセント下げるのはなかなか至難の業ですので、まずはその中で売上に対しての最も大きく弾力性のある費目は人件費だと思います。こちらについては従業員に無理を強いるのではなく、その働き方の効率化、無駄な時間を排除することを徹底して追求していく中で、人件費の率および額を下げていきたいと思っています。
一方で、そのほかの費用についても、投資に関わるコストや新店については先ほど社長からお話ししたとおり、大きな投資を現状は想定をしていないため、このあたりについての費用も当期においては前期比で減ってくるだろうと思っています。以上です。
質問者1:ありがとうございます。続いて3点目ですが、ECサイトで取り扱う商材について、まだ公表前ですのでヒントをいただけたらと思います。デリバリーのように、もうできあがったお寿司を提供するようなものとは少し違うかたちと考えておいてもよろしいでしょうか?
石田:まだ具体的に決まっているわけではないのですが、商品の形態でいうと、基本的には地方の特産品のようなイメージです。ですから、お寿司を提供するということではなく、例えば我々が使っているお醤油などの加工品の提供というようなものです。黒酢もお店では非常に人気が高いのですが、今回はそれも販売形態にするということで、販売商品を作って売っていくというイメージです。もう一言だけお伝えいたしますと、前回はおせちが非常に好評だったので、今回もそちらは大々的に行なっていこうと思っています。
質疑応答:デリバリー店舗数の内訳とHACCPに関する取り組み
質問者2:今回、4月、5月、6月と外食各企業の売上の流れを見ると、テイクアウトやデリバリーによって売上の落ち込みをかなり下支えして、がんばっている企業もありますが、御社の場合も、5月13日からデリバリーに提携されて、新しい分野に出ています。
当初、15店舗だったものが、今は60店舗ということですが、一点目の質問は、この60店舗は東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県のそれぞれの地域別でどの程度あるのか、60店舗の内訳がわかれば教えていただきたいと思います。
秋から冬にかけて、とくに寿司屋の場合は、テイクアウト、デリバリーが増えるであろうと私は思っているのですが、店舗販売とテイクアウト、デリバリーの比率を想定上で今後は、どの程度のウェイトにまで持っていくのか、何か目処があれば教えてください。
2点目の質問は、寿司屋ということで、とくに衛生面に非常に力を入れられているということで、25ページにも「圧倒的な清潔感と安心感」と衛生のところに書いてあります。
今は食品衛生法の問題でHACCPの実施が6月に実施され、1年間の猶予がありますが、このようなHACCPに関する全社的な取り組みも、ブランド価値を上げるために、御社で行なっていることや、このような目標で取り組んでいるというお話があれば教えてください。
石田:デリバリーの60店舗の地域別の内訳については、(手元に)資料がないのですが、今は出前館でのみ実施しています。出前館の拠点が配達できる範囲にあるお店が全部で60店舗だったということです。
ですから、現在、93店舗ある中で、あとの33店舗は、出前館のエリアに入っていないお店だということです。そのあたりははっきりしているので、内訳(注1)については、また別途ご説明できればと思います。
(注1:出前館の地域別導入店舗数(2020年7月7日時点)・・・千葉県20店舗、東京都29店舗、埼玉県7店舗、神奈川県4店舗 計60店舗)
売上の構成比は、従前のテイクアウトはだいたい10パーセントから12パーセントぐらいでした。それが、瞬間風速では高いときで半分以上になったこともあるのです。今、営業が今期の目標としているのは、テイクアウトで25パーセントをキープすることです。
デリバリーはどうかと言うと、まだ60店舗とは言っても、実施している期間が短いですし、とても何パーセントと言えるほどの数字ではないのですが、今期の目標としては、デリバリーで2億円くらいと思っていますので、200億円とすると1パーセントくらいを考えています。
HACCPに対しては、今は現実にどこまで行なうかを検討し始めていることと、今回、仁科の管理部門の下にチームを入れて、営業との牽制ができる体制も取りましたので、組織を変えてこれから動かしていくところで、まだ進んでいる部分はありませんが、進めていく段階に入っているということです。
仁科:HACCPについて追加ですが、6月に施行されて、猶予期間が来年の6月の前までということで、今は猶予期間に入っているわけですが、このHACCPの考え方自体について、当社がHACCPの施行に伴って、大きく何かを変えなければいけない衛生管理をしていたという認識はないのです。そのため、これをHACCP用にどこまで形を変えてアジャストさせていくかということと、とくに重要なのがプロセス管理で、記録を行なったうえで、それに対してどのように何があったかを修正をしていく一連のサイクルです。
このあたりについては、従来の考え方とHACCPはまったく違いますので、これをしっかり定着させていくための仕組みを、これからしっかりと構築していくということで、先ほど社長がご説明したとおり「着手したところ」という意味合いになるため、誤解のないようによろしくお願いいたします。
質疑応答:店舗の改装とECサイトなどについて
質問者3:まず1点目です。圧倒的な清潔感とのお話がありましたが、お店はけっこう清潔になさっていますので、やっぱり圧倒的ということになると改装が必要なのかという気がします。今あるお店の中で、そう考えた場合に改装をどのくらい行なう必要があるのか教えていただけますでしょうか?
石田:おっしゃったように、圧倒的な清潔感というと、かなり古いお店もありますので改装を行なっていく必要はあります。しかし、古いは古いなりに、要はお店は古いけれどピカピカといったお店もずいぶんあるため、改装だけではないと考えています。
改装をもし実施していくと、新型コロナウイルスがなければ毎年6店舗くらいずつ、3億円ぐらいの予算を立てて改装を行うかたちでしたので、今後は業績の動きを見ながら何店舗できるかになってくると思います。今のところは、そのような答えになってしまいます。
質問者3:ありがとうございます。あとECサイトなのですが、いろいろなところで取り組んでいても、だいたい儲からないところが多いのですが、うまくいく考え方があるものかどうか、教えていただけますでしょうか。
仁科:ECサイトについては、私も絡んで、いろいろな仕組みを提供する業者と打ち合わせしているところです。まず重要なのはECサイトそのものの仕組み自体は、いろいろな会社が提供されており、複雑なことはないのですが、最も重要なのは何を商品として売っていくかという商品力になります。
単純に物を売るだけであれば、アプリなどを提供することなく、個人でも売れるものですが、当社で考えているECサイトはやはりWebアプリを活用したかたちのもので、当社のロゴを背負ったアプリを作り、それを開くと当社の商品が見れるようになるものを作りたいと思っています。
商品力を問われることになりますので、先ほど社長からお話させていただいたようなものや、今店頭で物販として置いているものにはすでに当社のロゴを背負って売っているものもあるため、そのようなものをスタートにして、あるいは飲む黒酢などの人気商品も保存の効くものであれば商品化を行ない、そこに乗せていきたいと思っています。
その他おせちや、物販の中で、季節の商品として果物なども売っていたりするのですが、そのようなものも産地から直送するのであれば、当社の商品の供給力、調達力を最大限に生かすことで、大変新鮮で良いものを割安でご自宅にお届けできる仕組み作りは問題なく行なっていけると思っています。
もう1つのポイントは決済をどうするかです。現在、キャッシュレス化が進んでいますが、決済手数料が大変高いため、少しでも採算を確保していくために、決済サービス提供会社との交渉の中で、わずかでも利益を確保できるかたちに持っていければということで進めています。
質問者3:あと1点だけなのですが、株式報酬の話で従業員の方向けのストックオプションの話がありました。私の思い付きで申し訳ないのですが、従業員の方も、給料を減らす話ばかりではなく、例えば、3年経ったら株式が100株もらえるなど、なにかプラスの話があった方がいいのではないかと思っています。せっかく自社株をお持ちなのですから、従業員の方の劇団員としての参画の意識を高めるようなものはないのかと思います。マイナスな話だけではなく、従業員の方にメリットがある話は何かないものでしょうか?
石田:おっしゃる通りだと思います。今の段階はまだそこまで行っておらず、危機感を共有しようというマイナスの話からスタートしているのですが、一体感は生まれてきているのかとは勝手に認識しています。何か先が見えてきた段階では、おっしゃるとおり、劇団員へそのような明るい一筋の光を見せるのは大事なことですから、みんなで一緒にやっていくために検討させていただきたいと思います。
それと1つだけ、さっきのECサイトで仁科がお伝えしたのですが、サイトを運営するだけでなく、うまく商売につなげていくのは、なかなか難しいところではあるのです。ですから商品力に加えて、営業力のところが難しいと思っています。スタートはうちのお店にきてくださっているお客さまに対しての告知から始めて、地道に広がっていくのが「いの一番」かと思っているため、そのように動いていくと思います。
質疑応答:長期戦略とキャッシュレス手数料について
質問者1:2周目で失礼します。ちょっと簡単な質問なのですが、2点ありまして、20ページで、新しい生活様式定着に向けた長期戦略の再構築というお話しがあるのですが、実際に専門家会議で提言された新しい生活様式というのが、席を離したり、私から見るとけっこう「無茶振り」もされている部分があると思っていまして、どのようにお感じになられているのか、どの項目でしたら受け入れて、折り合いが付けられるのかを教えてください。
石田:うちの会社の人間みんなもう真面目なものですから、なるべく言うことを聞くようにということでお店のスタイルを少しずつ変えているところです。ですから、できないところはもしかすると出てくるのかもしれないのですが、今は一つひとつ手を打っている状況です。認識としては、できるだけ沿っていこうと思っています。
質問者1:わかりました。あと、もう1点が、キャッシュレスの手数料についてですが、NTTデータの「CAFIS」の手数料がちょうど引き下げに動いたというお話しもちょっと聞いており、そのあたりの影響は、御社にもお話しがきているのかどうか確認させてください。
仁科:キャッシュレスの手数料については、導入するにあたって導入する会社にとっての負担が極めて大きいのが現実です。また、当社のような外食産業ですと、普通でも最終的に利益率は5パーセントほどしかないのですが、通常で2パーセント、3パーセントと、ひょっとするともっと高い決済手数料をもし取られるようであれば、利益がぜんぶ吹き飛ぶことになりかねないような、大きな率になってきますので、導入にあたっては、そこがある程度会社として受け入れられるレベルまで下がらない限り、当社では導入は行ないません。
ですので、当社に限ってお伝えしますと、いろいろなキャッシュレスの提供会社があるのですが、当社として受け入れるレベルまで下げていただけていない場合には入れていないということで、スライドに載っている銘柄のみを現状では取り扱っているということです。他社がどうかということについては、わかりかねますのでご容赦お願いしたいと思います。
質問者1:では、現状としては、手数料を負担してもらえるところを利用してという感じでしょうか? あと、PayPayなどは、今後手数料が上がると思うのですが、そちらは継続するという理解でよろしいですか?
仁科:当社は、POSレジでの決済ということで、導入時からどの銘柄を入れてもとくにシステムの開発は必要なく、連動で当社のインフラの中で処理ができるかたちです。手数料うんぬんで一般に小さな規模の商店さまが決済端末の提供を受けて、さらに手数料無料でということで導入されていることがあろうかと思うのですが、そのような優遇はいっさい受けていない中で導入をしていますので、今後もその条件については変わらないものと認識しています。