決算要旨

山川隆義氏(以下、山川):2020年3月期の決算要旨についてご報告いたします。2020年3月期の決算要旨です。連結売上高は225億円で前年比18億9,000万円の増加、経常利益は6億1,000万円で前年比2億8,000万円の減少、親会社株主に帰属する当期純利益は6,000万円で前年比2億9,000万円の減少となっており、前年比で売上高は増加したものの、利益はともにマイナスというかたちとなってしまい、株主のみなさまには深くお詫び申し上げます。

決算のポイントについては、次のページのセグメント別P/Lで詳細をご説明します。

2020年3⽉期 セグメント別P/L

セグメント別の数値については、こちらに記載のとおりとなります。まず、営業投資セグメントです。IPOが1件ありましたが、今年の3月末の新型コロナウイルスによる株式市況の悪化により、期待していたゲインを下回ったことが赤字となった大きな要因です。また減損についても、大きい金額ではありませんが、新型コロナウイルスの影響で期末に追加での計上を行なっています。

次に、戦略コンサルティングです。前期は売上が大きく落ち込み、赤字となりましたが、サービスメニューの拡充や新規顧客の開拓など、中長期を見据えた建て直しに注力し、少し回復したかたちとなっています。DI Asiaについては、昨年9月に調査事業から撤退していますので、今後のコストはほとんど発生しない見込みです。

保険セグメントのアイペット損害保険については、保険契約が引き続き順調に積み上がり、売上も堅調です。新規契約増加に伴い費用が増加しているという面もありますが、そのコストを吸収しつつ、増益も確保できました。

その他セグメントのワークスタイルラボは赤字ですが、成長のための先行投資フェーズのため、想定内です。

なお、2020年3月期中における新型コロナウイルスの影響については、営業投資セグメント以外ではほとんどありませんでした。

純資産・時価総額・NAV(Net Asset Value)推移と⾒通し

「Net Asset Value(NAV)」、純資産、時価総額の状況について記載しています。NAVとは、端的に言いますとドリームインキュベータが保有している資産を時価評価し、その合計から負債を控除した金額です。ドリームインキュベータの企業価値をより適切に示すため、2019年3月期よりこの指標を計算して開示しています。

この指標で見ると、2017年3月期から2020年3月期末までで、年平均成長率は14パーセントとなっています。濃い青の部分の事業投資の価値増加が主な要因です。

今後の見通しについて、ここでは内訳までは開示していませんが、各事業をバランスよく成長させていく考えです。次の3年は、年平均成長率20パーセント程度を目標と考えています。

その他の事業報告ならびに連結計算書類等の詳細については、招集ご通知の7ページから41ページに掲載のとおりです。

以上、2020年3月期の決算要旨についてご報告いたしました。次に、今後の方向性についてご説明します。

新役員体制(株主総会での承認可決が前提)

まず、役員体制変更についてですが、この後の採決にて、第2号議案が原案どおり承認可決されると、3名の常勤取締役体制へ移行する予定です。

これまで先延ばしになってきたあらゆる産業の変革および新陳代謝が、新型コロナウイルスの影響で急激に加速していきます。それに対応していくためには、ドリームインキュベータの経営体制の移行も一気に進めるべきと判断し、創業から20年間にわたって取締役を務めてきた堀と山川の退任を決めたものであります。

では、ここからは新体制について説明させたいと思います。

時代背景とDIのあり姿(推移)

原田哲郎氏(以下、原田):ドリームインキュベータ創業20年の節目に経営体制を刷新し、新しい発想でさらなる挑戦を続けてまいります。引き続き、ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。それでは、今後の方向性について、私から概略をご説明させていただきます。

ドリームインキュベータが創業された2000年当時、日本はバブル崩壊後の不良債権問題や大手証券会社の経営破綻、銀行の破綻や国有化など、経済全体が閉塞感に包まれ、新しい産業や事業が生まれてこないという、大きな社会課題に直面していました。そのような中で、ドリームインキュベータがスタートしました。

そして創業から20年が経ちました。超少子高齢化、環境問題等、我が国はさまざまな社会課題に直面しています。足元では、新型コロナウイルスの影響で社会の構造も大きく変わろうとしており、先延ばしになってきた日本の産業構造の転換も、いよいよ「待ったなし」の状況です。

このような時代背景の中で、ドリームインキュベータはどのように社会に役立っていくべきか、1年をかけて社内で議論を重ねてきました。

DI = The Business Producing Company

その結論がこちらです。創業以来、取り組んできたドリームインキュベータの存在目的を「社会を変える 事業を創る」という言葉で、我々のミッションとして明確に定義しました。そのためには、社会に挑戦者が必要であり、挑戦者を支えること、一緒に挑戦する伴走者となることが、我々の目指す姿です。

新しい事業を創るためには、従来の枠を超えて、構想し、戦略を立て、一緒に実現する仲間を集め、一丸となって挑戦することが必要です。これらのことを実践し続ける、唯一無二の「The Business Producing Company」として、社会に役立ち続けたいというのが我々ドリームインキュベータメンバーの願いであり、目標です。

重点取組

これまで提供してきた大企業向けのプロフェショナルサービスと、ベンチャー向けの投資を通じて、ドリームインキュベータは大きく2つの力を蓄積してきました。

1つ目は、構想の構築、戦略の設計、仲間づくりなどの「ビジネスプロデュース」の力。2つ目は、事業の目利き、投資スキーム、事業育成などの「インキュベーション」の力です。この2つの力をあわせて社会を変える事業を創っていくことが、今後の重点取組課題です。

その融合領域においては、ソーシャル・インパクト・ファンドなどの組成支援や投資、大企業の事業創造支援と共同投資の組み合わせなど、ビジネスプロデュースとアセットを組み合わせた取り組みを増やしていきます。その結果として、ドリームインキュベータの収益性、企業価値も高めていきたいと考えています。

社会課題から事業創造への取り組み事例(リリース抜粋)

社会課題から事業を創出する仕組みにも着手し始めています。2月に豊田市と、4月に国際協力機構と、5月には前橋市と、それぞれ共同で社会課題を解決する事業を創る仕組み作りを開始しています。

6月には日本政策投資銀行との共同取り組みも開始しました。こちらは、1,000億円の投資規模で、社会課題に大きなインパクトのある事業創造を目指していきます。

新たに招聘した顧問

社会課題の事業化には、政府との連携も欠かせません。そのため、経済産業省の前事務次官の嶋田さん、環境省の前事務次官の森本さんを新たに顧問としてお迎えし、事業、産業創りの喧々諤々の議論にも加わっていただくことになりました。

では、三宅、細野からも一言ずつ、ご挨拶申し上げたいと思います。まずは、ビジネスプロデュース代表の三宅です。

三宅氏よりご挨拶

三宅孝之(以下、三宅):私の職業人生のスタートは通産省、今の経済産業省からでした。しかし、入省後すぐに官僚バッシングや「規制緩和だ、国は何もやるな」という空気になりました。政府全体が思考停止になっていくのを感じた2001年、私はビジネスの世界に転身しました。民間側から経済や社会を盛り立てていこうと考えたのです。

ビジネス側に立ってみてわかったことは、事業は産業政策と切っても切れない関係にあるということでした。両者が有機的に作用して初めて産業が起こり、ビジネスが育つという当たり前のことが、日本ではまったくできていないことも思い知りました。

ドリームインキュベータ入社後に立ち上げた、ルールを変え、仲間を集めて大きな事業を創る「ビジネスプロデュース」や、国と連携して産業ごと創造する「産業プロデュース」は、そういった思いから発しています。これらはかたちになり、世の中の支持を受け、ドリームインキュベータのコンサルティングは他の企業とはまったく異なる高い価値を持つようになったと自負しており、政府の意識変革にも大いに役にたったと思います。

ドリームインキュベータは強い会社だと思っています。「社会を、ビジネスの力で変える」という一見無謀な考え方に集まった社員、そのポテンシャルと入社してからの鍛えられ方は素晴らしいものがあります。これをどう活かすかが、我々3名に課された使命です。

その実現には、先ほどの「ビジネスプロデュース on Asset」がカギを握ります。大企業の新規事業は、戦略コンサルだけではまったく立ち上げることができません。その後のフォローもプロデュースも必要です。

費用をキャッシュで出し続けることは簡単ではありません。一方で、上場後間もないベンチャー企業は非常に戦略を欲していますが、このような企業がキャッシュを出し、P/Lを痛めながら我々にコンサルティングを出すのは非常に難しいものがあります。ここに、株式投資やファンド組成を組み合わせ、アセットを活用するかたちで価値を高めるという取り組みを進めていきたいと思います。

数年後、ドリームインキュベータは今よりも強くて、より当社らしい姿に生まれ変わっている予定です。すでにパーツはかなり揃っており、具体化に向けた仕込みも開始しています。

この実現を、私の大きなチャレンジと位置づけ、頑張っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

細野氏よりご挨拶

細野恭平氏(以下、細野):私はドリームインキュベータに入る前は、国際協力銀行という政府系の金融機関で仕事をしていました。仕事の内容としては「途上国のよりよい社会を作っていく」ということを行なっていました。

今回ドリームインキュベータが創業20年となり、「社会を変える 事業を創る」という、ある意味私自身が人生のモットーにしていたスローガンを会社として掲げ、それを優秀なメンバーと一緒に推進できることに非常に喜びを感じています。

私がCOOとして取り組んでいきたいことは大きく3つあります。1つはドリームインキュベータのアセット規模を、社会を変える事業を創っていけるような大きな規模感にしていくことです。過去3年、ベンチャー投資で日本やインドのファンドを立ち上げたり、事業投資をしてきました。規模的にはまだ非常に小さいものであり、社会を変える事業を創っていくには、10倍もしくは100倍のお金が必要になってくると思います。そのような大きな金額を動かして、社会を変えていけるような規模感にしていくことが、まず1つ目です。

2つ目は、アセットを大きくした上で、ドリームインキュベータならではのビジネスプロデュースの力で価値を最大化させていくことです。仮に大きなアセットを持っていたとしても、単にアセットを運用しているだけでは普通の投資会社と変わりません。コンサルティングに関しても、通常の戦略コンサルティングを行なっているだけではグローバルのコンサルティングファームにはなかなか勝てません。

ですので、ドリームインキュベータならではの力であるビジネスプロデュースの力と投資の目利き、インキュベーションの力を融合して、我々しかできない事業を創っていくことが2つ目です。具体的には、先ほどお話がありました日本国内向けのソーシャル・インパクト・ボンドの設立や、途上国向けのソーシャル・インパクト・ファンドなど、アセットを使っていろいろな社会課題を解決しているような事業にトライしていきたいと思います。

3つ目はグローバルの展開です。私自身、コンサルタントとしても投資家としても、海外、とくに新興国でさまざまな修羅場をくぐってきました。日本企業も今後は海外へ進出していくにあたり、伴走者としていろいろな知見をサポートしていく方が必ず必要になってくると思いますので、そのような役割を演じていきたいと思います。

社長の山川が「note」というSNSのようなところで「昭和はサラリーマンの時代で、平成はスペシャリストの時代で、令和はプロデューサーの時代だ」と書いていました。ドリームインキュベータは社会を改革していくプロデューサーとして、みなさまに、そして日本全体に伴走していければと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。

原田氏よりご挨拶

原田:私からも一言ご挨拶いたします。私は自衛隊3年、金融機関10年を経て、創業直後のドリームインキュベータに参画しました。三宅は経済産業省、細野は国際協力銀行と、3人とも公的機関から職業を開始し、事業で社会をよくしたいという志を持ちつつ思考錯誤し、ここで合流しました。失敗や挫折を乗り越えながら一緒に戦っている戦友です。

社会では今、多くの企業や産業が大変な難局に直面しています。社会課題も山積みです。失われた30年とも言われています。これまでの日本を支えてきた産業が、変われないまま沈んでいくのではないかと心配されている方も多いと思います。

しかし、企業、官庁、大学等、あらゆる組織の中には、変化を先延ばしにするのではなく、変革と創造に挑みたいと心を燃やすリーダーや次世代幹部が必ずいます。組織の枠を超えて、そうした挑戦者達と協力し、社会課題を乗り越える、社会をよくする事業や産業の創造と育成に一緒に挑戦していきます。

あらゆる企業の経営で最も大切なことが、我社の社是に書かれています。「人々の役に立つ」「利益を創出する」「成長する」「分かち合う」。挑戦の結果として企業価値を高め、株主のみなさまとわかち合いたい、同時に、よりよくなった社会を子どもたちの世代とわかち合いたいと切に願っています。

みなさまに「あってよかった」と思ってもらえるようなドリームインキュベータになれるよう、一丸となって取り組んでいきます。温かいご支援を、何卒よろしくお願い申し上げます。

質疑応答:コロナ禍で経営体制を変更した理由について

質問者1:経営体制についてお伺いしたいと思います。一度「堀さんと山川さんが取締役になります」と発表された後、5月に取り下げ、3人の取締役から社長を選ぶと発表がありました。

産業構造が急速に変革していることや、新型コロナウイルスの状況で一変したことなどが理由と発表していましたが、御社は従前からAIやエンタメなど、先の知見を持っていたにも関わらず、なぜ新型コロナウイルスによって新陳代謝が必要になり、急に経営体制を変えてしまうのでしょうか?

原田さんが相当ご苦労されているのは堀さんの著書で拝見していますので、原田さんが社長になられるのは納得します。本当に修羅場をくぐってきているため、資質としては素晴らしいと感じています。

経営陣が交代することはすごく大きなことだと思うのですが、内部で何かあったのではないかと勘ぐってしまいます。少し本音の部分でお話しいただきたいと思います。

山川:私からお答えしてもよいのですが、こちらに関しては監査等委員長がお答えしたいということですのでお願いします。

那珂正氏(以下、那珂):世代交代や経営陣の交代については、当事者の方はなかなかお答えしづらいかと思いますので、私からお話しします。いつの時代でも、またどんな会社でも組織でも、経営トップの世代交代は大変重要なテーマであり、同時に大変デリケートで難しい問題だと思います。

とりわけ、当社のように創業以来長く続いてきた強力な経営陣の交代については、その対象、あるいは規模、タイミング等々についていろいろな考え方があり、さまざまな議論があるのは当然です。また、そのプロセスにおいてもある種の迷いがありますし、若干の軋轢、混乱も止むを得ないと思います。そのような「産みの苦しみ」を後継と目す人たちが連携し、しっかりと乗り越えてこそ本物の世代交代だと思います。

ご指摘のように、今回のコロナ禍の中で若干は混乱もあったのですが、慎重で真剣な議論を重ねた上で、かねてから取締役として次代を担う自覚を持ち、準備をしてきた原田、三宅、細野の3名の「トロイカ体制」への世代交代を思い切って行なう決断がされたことは、社外取締役としても一定の評価をしたいと思います。

先ほど、この3名による決意表明がありましたが、その決意どおりに3名が信頼し合い、連携して新しいドリームインキュベータを切り開き、立派な業績を上げてもらえるよう、社外取締役、広報としてもしっかりと監督して見守っていきたいと思います。どうか株主のみなさまにも、本日の提案にご賛同いただくとともに、新体制による新ドリームインキュベータに対して、一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

山川:私から少しだけ付け加えたいと思います。今回の新型コロナウイルスは、今までのリーマンショックや「9.11」「3.11」とはまったく違うものだと思っています。同じように経済状況は悪くなりますが、今までとは人間の行動パターンが根底から違ってくるものであると考えています。

戦後の日本も世界も、産業構造は鉄を中心にいろいろな業界が発展してきました。移動したいという気持ちが大きいため、自動車やエアラインも発展してきました。このような戦後の発展の構造が、新型コロナウイルスで大きく変革していきます。そうなると、まったく違う産業構造になります。そこまで世の中が認識しているかはわかりませんが、私は強く意識しました。

私や堀がそのままでは社員たちの頭の中がいつまで経っても延長線上から変わりません。新聞にそのようなことは記載していませんが、私自身は世の中が完全に変わるということを強く認識しています。

実は4月に社内で、「新型コロナウイルスで産業構造は根底から変わる」と発表しています。他のコンサルティング会社もいろいろとコロナレポートを出されていましたが、どのくらい下がってどのくらい戻ってくるのかというお話が中心です。私は「産業構造が根本的に変わるから、社員も脳味噌を全部入れ替えなきゃだめだ」と思っています。これをしっかり把握して実行するためには経営陣も変わらなければなりません。新しい経営陣になったら、さすがにメンバーも「これは変わっていかざるを得ないんだ」という認識になると思います。

先ほど原田、三宅、細野からも決意表明がありましたが、今までと少し違ったタイプのドリームインキュベータになっていくと感じたのではないかと思います。

ビジネスプロデュースの概念はもともとドリームインキュベータで作りましたが、コンサルティングとベンチャーインキュベーションをそれぞれ融合して、これからはアセットをうまく使ってビジネスインキュベーション、ビジネスプロデュースを行なっていくという戦い方をします。

株主総会の日程等を変えて、みなさまにいろいろとご心配をおかけして大変申し訳なく思うのですが、来年の3月ぐらいになると「1年遅らせたら大変なことになっていたな」「結局、リスクとチャンスの両方を失うことになっていたな」という反省になると強く思いました。6月1日はドリームインキュベータ創業20周年ですので、この機会に私と堀の退任を発表した次第です。

質疑応答:取締役退任後の立場について

質問者2:堀さんについて「退任取締役ファウンダー」と記載されています。これは、堀さんが取締役を退任されてもファウンダーの立場は変わらない、大株主という立場でのコメントは今後あるかもしれないが、経営には直接関与しないという解釈でよいでしょうか?

山川:ファウンダーであることに変わりはありません。2000年に設立したのは堀であり、ファウンダーそのものですので、今回は取締役として私と堀は退任しますが、2人ともOBとしてドリームインキュベータを支えていくつもりです。

自分の会社の社員だけで仕事をする時代は終わると思います。みなさまは、ハードディスクもバーチャルで使っていますし、メモリもバーチャルメモリを使っていると思います。そのようなかたちで、これからはバーチャルリソースの概念が出てくるはずです。

私は、ドリームインキュベータのOBである約300人をよく知っていますので、そのようなリソースや、もっと言えば、最初に勤務した横河ヒューレット・パッカードのSEの仲間たち、ボストン コンサルティング グループを辞められたコンサルタントの方々といったリソースも含めて、社外のアルムナイとして、堀と私はドリームインキュベータとともにいろいろ取り組んでいきたいと思っています。

質疑応答:今後の「トロイカ体制」について

質問者3:今後の体制についてコメントさせてください。「トロイカ」という言葉が出ましたが、これはまさに3名に代表権があるということで、トロイカ体制だと解釈しています。トロイカ体制は、歴史的にはかつての旧ソ連、東欧諸国でよく行なわれたのですが、その結果、3名のうちの最も権謀術数に長けた1人が他の2人を粛正するということが起こってきました。例えばレーニンが倒れた後に、スターリンがトロツキーを追放して3人体制を組むのですが、2人を「トロツキスト」だと言って処刑しています。

その後、ソ連がどうなったのかはみなさまもよくご存知だと思います。スターリンが死んだ時にも同じことが起こりました。フルシチョフ、マレンコフ、ブルガーニンという3人体制になったのですが、フルシチョフが実権を握りました。

私は、この3名の中にスターリンがいるとは思いません。むしろ「三すくみ」になって決定できないのが一番恐ろしいことだと思います。これからドリームインキュベータが変わっていかなければいけない時代に、誰がリーダーシップを取って、どのように決めていくのかといったときに、「三すくみ」になって何も決められない組織になることが最悪の結末だと思います。

3名についてはよく知っていますので、そのようなことはなく、これから発展していくだろうと確信はしていますが、そのような「三すくみ」も起こる可能性があるため、そうならないように発展していただきたいと思います。

幸いにと言いますか、細野さんがおられたベトナムはトロイカ体制が意外とうまくいっています。ですから、アジアとヨーロッパでは違うのかもしれません。そのような意味では、ぜひトロイカ体制でうまく発展していただきたいと心から願っています。

山川:トロイカ体制は「三すくみ」になるのではないかというご指摘だと思いますが、私はまったくそのようには思いません。3名ともにそれぞれの個性を活かして、しっかり取り組んでいけると思います。

原田がCEOですから、最終的な責任は彼が取ることになるため、個々人が今までとはまったく異なることを行なっていかなければ困るわけです。そちらをご理解いただければと思います。

質疑応答:株価の低迷について

質問者4:個人的なところになりますが、ドリームインキュベータの株を売ったり買ったりはしていますが、投資家として最大の損失を被ったのがこのドリームインキュベータの株です。今からする質問は、山川さんと堀さんにぜひお答えいただきたいと思います。ディメンションという会社がありますよね?

宮宗さんという方が社長ですが、宮宗さんがインタビューの中で「伸びる企業と伸びない企業があり、そのケーススタディをたくさん積み重ねてきたため、伸びる企業はわかる。定石があるため、そのような会社に対してディメンションは投資を行なっていく」ということが記載されていました。

さて、約20年続いてきたドリームインキュベータですが、現在の時価総額を見るとドリームインキュベータが145億円、アイペット損害保険が215億円、またドリームインキュベータが支援して、株も持っているのか、今は持っていないのかはわかりませんが、LTSが123億円という状況です。

20年経営してきて、ドリームインキュベータが145億円で、子会社のアイペット損害保険が上場して数ヶ月で親会社を抜いていきましたが、この現実に対して山川さんや堀さんはどう感じていますか? 僕は株主として、非常に悔しかったです。

僕は何年か前の株主総会で、アイペット損害保険の上場を提案した者です。あくまで投資家ですので株価という観点ではありますが、それなら、ドリームインキュベータの株を売ってアイペット損害保険の株を買った方がよかったと思います。伸びる企業と伸びない企業があるのであれば、はっきり言って、ドリームインキュベータは20年間伸びなかった企業に属していると思います。

何年か前の株主総会で堀さんに「ドリームインキュベータの目標とする時価総額はいくらぐらいですか」と漠然と質問しました。その時に「5,000億円、将来的には1兆円を目指していきたい。ある数字を超えると、そこから先はどんどん株価は上がっていく」というお話もされたように記憶しています。その時に堀さんからは、「現状ではまだ1,000億円も届かない状態のため、しっかり取り組まなければいけない」というお答えをいただきました。

話がもとに戻りますが、なぜドリームインキュベータはアイペット損害保険にも抜かれる惨憺たる状況なのでしょうか。この先もこのような状況が続くということであるならば、3名の新しい取締役候補の方にも失礼な話になってしまいますが、投資家として株を持つ価値がないなと思います。

ベンチャースピリットはすごくすばらしいと思います。私も心意気を感じて投資したいという気持ちがありますが、20年が経って時価総額145億円という状態がずっと続くのであるならば、上場会社ですから、投資家として投資するメリットがまったくないということです。繰り返しになりますが、この20年間でのこの失態ということで、なぜ伸びない企業に属してしまったのでしょうか? では、伸びる企業にするにはどうしたらよいのでしょうか? ここを総括して、前向きな展望をお話しいただきたいと思います。

山川:いろいろとご迷惑をおかけしまして本当に申し訳ございません。おっしゃるとおり株価は大して伸びもせず、低迷したままです。いろいろと紆余曲折がありながらここまできましたが、売上は伸びたものの、それに対して時価総額は連動しておらず、一方でアイペット損害保険は実際に上場でき、現在200億円の時価総額がついています。

ドリームインキュベータ自身は、ビジネスモデルがまだカチッと固まっていなかったころから始まり、徐々に固まってきたとはいえ、まだ途中の段階だと思います。結果的に現在は、コンサルティングとベンチャー投資、事業投資とそれぞれ取り組んでいますが、なかなかそれが完全に融合して戦えておらず、独自のものを完全にブランド化できてないのが一番大きな原因ではないかと思います。これがきちんとブランド化されていけば、自ずとみなさまが集まってきますし、お金も集まってきますし、その後、人も集まってきます。

そのようなかたちになれば、もっともっと成長していくと思うのですが、20年間でまだそこまで至っておらず、現在はその途中の状況であり、十分にブランド化されていないというのが、私の現在の感想です。

そして、今後、次の3名の経営陣にどういうことを期待するかですが、先ほど少し細野取締役がお話ししましたが、昭和の時代というのはサラリーマンであることが一番よい時代で、堀の書籍にも『一番いいのはサラリーマン』という本がありましたが、一方で『サラリーマンなんか今すぐやめなさい』という書籍もあります。

これは、平成の時代になるとスペシャリストの時代になり、サラリーマンよりもスペシャリストがよいということかと思います。ただし、令和の時代は、プロデューサーの時代になると私は思っています。

今までは、それぞれのスペシャリストがあちらこちらに行ってサービスを提供していたわけですが、コンピュータだけではなく人間もつながってしまったため、必要な機能だけを使えばよくなってきます。一方で、それを取りまとめるプロデューサーの力がもっと強くなってきます。

私は、ビジネスプロデュースや産業プロデュースといったものが、これからブランド化する余地が十分にあると思います。現在の段階では、こうした概念は一般化しておらず、ブランド化もしていませんので、今後ビジネスプロデュースといえばドリームインキュベータだ、となっていければと思っています。ビジネスプロデュースはこれからの世の中に必要だということを広め、それによって人もお金も集まってくるような会社にしてもらいたいと思っています。

2000年6月に堀から「コンサルタントではなく、違う言葉を考えろ」と言われた時に「ビジネスプロデュース」という言葉を作りました。そこでは作っただけで、世の中にビジネスプロデュースというのが浸透していませんし、我々もそのようなことができているわけではありませんでした。

ただし、原田、三宅、細野は、実際にこれを体現しつつあります。我々ができなかったことを実際に体現して、社会、いわゆる官僚の世界からビジネスの世界まで、そのようなものを融合してサービスを提供していくという流れを作り出しています。

私の期待として、今後新型コロナウイルスの影響が続けば、国の影響もより強くなってきますし、いろいろなものが融合して戦わなければ単一の産業では厳しくなってくると思っています。そこで、ビジネスプロデュースという概念を盛り立てて、そのトップの企業であるというブランドを作っていただきたいと思っています。

堀紘一氏:今のご質問は、極めてもっともだと思います。実は今日の後半でお時間をいただいて、お詫びを申し上げたいと思っていたのですが、今の質問にお答えするかたちの方がタイミング的によいと思いますので、後半のご挨拶は中止して、この質問にお答えするかたちにしたいと思います。

簡単に言えば、これはもう謝るしかなく、株主のみなさまには本当に申し訳ないと心の底から思っています。毎年株主総会に参加してくださるということは、株を持っているということですし、本日お集まりいただいた方の中で、当社の株を持ったことでキャピタルゲインを受けた、あるいは潜在的にプラスだという方は、ほぼゼロだと思います。

俗に「命の次に大事なお金」と言われますが、みなさまの貴重なお金をすり減らしてしまったのは私たちです。そのような意味では、私は大変責任を感じており、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

簡単に歴史を振り返ってみます。この会社は2000年4月に設立して、会社を設立してから8ヶ月の翌年の2月に、第三者割当で十何社から株を買っていただきました。その時の値段が80万円で、やや複雑ですがそのあとに6分割して100分割するため、「600分の1」を掛けると今の株価になるわけです。80万円は現在の株価で1,300円ぐらいで、かろうじて今の株価よりも高いです。その次に、3月19日に第三者割当を行ないましたが、その時の株価はたった1ヶ月の違いでも130万円でした。これも同じように6分割すると、約22万円で、「600分の1」を掛けると約2,200円という数字になります。今日現在の株価は正確にはわからないのですが、1,500円を切っているくらいかと思います。それと比べると、上場前の株価の方が今の株価よりも高く、時価総額が高いわけです。いかにいろいろな方が期待してくれて、また熱い支援をお寄せいただいたかということだと思います。

そして2002年5月、会社ができてわずか2年で東証マザーズに上場させていただきました。その時の公募価格が23万円で、この時は6分割は終わっており、100分割はそのあとですので、100で割って今の値段で言えば2,300円となり、時価総額もだいたい230億円です。つまり、今よりもマザーズに上場した時の方が時価総額が大きいわけです。そして、初値が28万円となり、ホッとしました。公募価格よりも初値が安いとなると、せっかく買ってくださったみなさまにご迷惑をおかけすることになるため、その時は安心しました。その時に、まさか今のような体たらくで恥ずかしい株価の会社になるとは夢にも思っていませんでした。

2005年、会社ができて5年と数ヶ月が経ったところで東証一部に昇格させていただくことになりました。その時の主幹事の野村證券から、「このようなことはそんなに頻繁にあることではないため、東証一部に昇格させてもらって、公募しましょう」と言われて、公募価格はその時の時価から3パーセントぐらい安いところで決めたと思うのですが、58万9,760円で、1株約59万円だったのです。

そのあとに100分割するため、今の値段で5,900円です。東証一部に昇格した時の時価総額で言うと、今の4倍だったわけです。そこから14年、15年をかけて時価総額が4分の1に減っていきました。まず第一に本当に情けない、そして第ニに申し訳ないということで、どうすればよいのかを随分考えました。

オフィシャル、またアンオフィシャルで株主のみなさまからはいろいろなお叱りを受けました。例えば「ドリームインキュベータは、社員にはたくさんボーナスを出して優遇するかもしれないが、株主にはまったく冷たい会社だ」というご批判をいただきましたが、それは当たっています。

ただし、社員に温かくしたことには理由があり、社員を「猫可愛がり」したのではなく、それだけの対応をしなければ競争相手に引き抜かれてしまうわけです。競争相手によいメンバーが引き抜かれていけば、会社はその先、ますます先細っていくことになるため、それは対抗する措置を取らざるを得ないということです。

今でも、大学卒の初任給はマッキンゼーやBCGと同じ金額ですが、業績が悪いためそのあとの昇給が思うように伸びず、他との差がどんどん開いていきます。結果としては「負のループ」に入ってしまったわけです。

ただ、個人投資家には人気がないのは事実ですが、海外の機関投資家は「これは面白いのではないか」と思ってくれています。「この会社のブックにはこのような数字が載っていて、もう少し中身を聞くと、そこに載っていないようなポテンシャルがあり、キャピタルゲインのある銘柄も持っている」「PERもこれくらいだから、投資したら儲かるのではないか」と考えてくださる海外の機関投資家がおり、簡単に言えば国内の個人投資家がここ十何年で株を売って、海外の機関投資家が買ってくださっています。

国内の投資家が見切りをつけるスピードの方が、海外の機関投資家が買ってくれるよりも速かったわけですから、需給の法則で株価はどんどん落ちて、東証一部に上場した時の「4分の1」になっています。

本日、ここにいらっしゃる方で「ドリームインキュベータの株で損をした」「莫大な含み損を抱えている」という方はいらっしゃると思います。「お前らのおかげで儲けた」「いい思いしたよ」という方は、ゼロとは言いません。「高い時に売って、安い時に買ってというのを7回繰り返したから、ドリームインキュベータの株は得意中の得意で儲かっている」という方もいるかもしれませんが、一般論で言えば、そのような方はあまりいないと思いますので、みなさまに大損させたのが実態だと思っています。

これだけ迷惑をかけて、このような高いステージの上でお話をするような立場ではないと思っています。現代だから切腹しないだけのことで、武士の社会であれば切腹ものです。内容的には、みなさまにただひたすらにお詫びを申し上げて、切腹に値するということを認識して、静かに去っていくということです。

もちろん、次の経営者に対する期待はありますが、私はもう辞めた人間のため、心密かに期待しています。それをあからさまに言ったり、指導や命令をするようなことはあり得ないわけです。私たちが散々株主さまにご迷惑をおかけしたため、それでもまだ株を持ってくださっている方に少しはよい思いをしてもらえるようにがんばってほしいという気持ちをかなり持っています。

ここで区切りをつけて、辞めるしかないと思っていますが、今回のお詫びですべてを清算できるとは思っていません。しかし「土下座をしろ」と言われれば土下座もします。腹を切ったら物騒です。株主の方に言われて代表の1人が腹を切ったなどとなれば、新聞に載ってしまいますので、今のところ切腹はしませんが、お詫びはしたいと思います。多大なご迷惑をおかけしまして、申し訳ございませんでした。

質疑応答:新経営陣の決意表明について

質問者5:堀さんに頭を下げられた後でこのようなことを言うのは失礼なのですが、5号議案のファウンダー功労金6,000万円はあまりに少ないと思います。個人的に、堀さんにはこの10倍、100倍ぐらい受け取っていただいてもよいのではないかと思っています。

私自身は、十数年前に堀さんの本を読んで、「この会社の株はおもしろいな」と思って株式を買いました。その後、何回か売ったり買ったりして儲けたこともあるのですが、結局は今のところ、堀さんがおっしゃった大多数に属しています。

2、3年前の株主総会の際、「このごろ元気がなく、ドリームインキュベータなのに夢がないのではないか」というお話をしました。まさにこのあたりのところがマーケットの評価ではないかと感じています。

堀さんは東大法学部を出られて大変秀才な方でありながら、やんちゃな一面もお持ちで、外から見ていると「この人、何をするかわからないな」というワクワク感が書物の中からも感じられ、そこに惚れ込んで株主になって今日に至っています。

今回、一線を退かれて、新経営陣3名体制になるということですが、創業者から引き継ぐというのはなかなか難しい局面だと思います。ユニクロや日本電産もそうですが、いろいろな会社が試行錯誤しています。

その中で、ドリームインキュベータも創業者から引き継いで新しい世界に入るわけです。正直なところ、みなさまはとてもがんばっており、業績自体もそこまで悪くはないと思いますが、先ほどお伝えしたように少し夢が足りません。「ドリーム」を見せてもらいたいと思っています。

新経営陣のどなたからでもよいのですが、「堀さんに10倍、100倍の功労金を払えなかった代わりに、一番の大株主である堀さんが大喜びするような株価に引き上げるんだ」「配当金も出して、一番の株主の堀さんに報いるんだ。これは俺たちに任せろ」という決意表明のお言葉をいただきたいと思います。

原田:おっしゃるように、会社を立ち上げて創業時から引っ張ってきた2人の創業者および創業メンバーが同時に抜けて、そのバトンを引き継ぐのは本当に大変だと感じています。先ほどの株価の話もそうですが、我々が受け取るバトンの重さと責任の重さを感じています。受け取るからには、株主のみなさまや筆頭株主としてこれからも株を持たれる堀を含めて、必ず「持っていてよかった」と思ってもらえるように、何が何でもがんばっていきたいと考えています。

どのようにがんばるのかという戦略は、先ほど三宅、細野からも少しお話がありましたが、さらにその根本については、先ほど私がお話ししたときに少し触れた社是だと思っています。今回、社内で「ミッション・ビジョン・バリュー」を再構築する中で、社是についても見直す必要があるかを検証したのですが、これは変更しようがないというのが結論です。

これからのドリームインキュベータが株主のみなさまのご期待に沿うためにも、一番大事なことは何かを煎じ詰めると、ドリームインキュベータが社会の役に立ち続けることが一番です。二番は、やはり利益を上げることです。その二つが社是の第1条、第2条に記載されています。ですので、そこに取り組んでいくことが新経営陣の最大のミッションであると肝に銘じています。ご支援いただければありがたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

質疑応答:持分等についての開示と投資金額について

質問者6:堀さん、山川さんには、こういったかたちの決断をされたことに関しては、残念ではありますが、次のトロイカ体制を率いるみなさまには大変期待しています。私は18回目の出席になるのですが、来年以降も、厳しくも示唆に富んだ株主総会になってくれることを願っていますので、トロイカ体制のみなさまにはぜひがんばっていただきたいと思います。

些末な話で恐縮なのですが、今年度も含め、これまでさまざまなIRを拝見していく中で、最近ではC ChannelのTOKYO PRO Marketへの上場の話なども出ていますが、御社の持分は非常に少ないと思います。

リリースが出て、初めて持分などがわかってくるところがあります。クライアントや法令も関わってくるところではありますが、投資金額や持分について、丁寧な事前アナウンスを行なっていただきたいと思います。

私の邪推ですが、正直なところ、業績の振るわない時期が続いているため、キャッシュがある程度減ってきて、新規投資に対する部分がどうしても少なくなってくるため、小粒な案件が増えてしまっているのではないかという懸念があります。今後のIRなどで、より適切なアナウンスを期待していますので、改善策も含めてお答えをいただきたいと思います。

山川:持分等についての開示をもう少し丁寧にお願いできないかというお話と、投資金額が小粒になっているのではないかというご指摘だと思います。こちらについては、投資の責任者である細野からお答えしたいと思います。

細野:まずは開示についてですが、現状では投資した案件は、投資の直後に、その都度開示を行なっています。売却については、持分や実際の金額、リターンなどの損失も含めて、現状では個別の開示を控えています。投資先との関係や他のベンチャーキャピタル、投資する側の企業も、金額やパーセンテージに関する開示を控えていることが多く、それに平仄を合わせるかたちになっています。

ただし、ご指摘のとおり、我々の中でどのような投資先があり、実際にAsset Valueにどれくらい貢献できているのかという開示は進めていきたいと思いますので、引き続き可能な限り対応したいと思っています。

投資の規模に関しては、直近では投資金額が小さくなっているということはありません。我々は、自己資本以外に日本で50億円規模の投資ファンドであるDIMENSIONファンドを、またインドで15億円規模の投資ファンドを一昨年に立ち上げました。現在、自己資金の金額に加えてファンドの投資分が増えてきているため、実際の投資金額は一定程度の金額になってきています。

それから、事業投資に関しては銀行やファイナンスを含めて投資していく領域ですので、資金面は確保していきたいと思っているのですが、今のところ、それほど金額は大きくないため、より社会を大きく変えていくような事業にはなかなか成長できていないことを痛切に感じています。私自身のミッションとしては、どのように投資規模をより大きくしていけばよいのかということで、今後集中的に取り組んでいきたいと思っています。

質疑応答:第5号議案の撤回について

質問者7:先ほど堀さんから、過去の資金調達時の株価より低い時価総額であることに対して「申し訳ない」という言葉をいただいたため、大変申し上げにくい提案なのですが、第5号議案の撤回をお願いしたいです。理由はシンプルで、現在、増資時より時価総額が安くなってしまったためです。

今の株主構成を見ますと、堀さんが筆頭株主であることは事実なのですが、ドリームインキュベータは明らかに経営陣以外の株主が多くなっています。今は社会の公器にもかかわらず時価総額が低く、ネットキャッシュはマイナスになっています。そのような状況でファウンダー功労金を支払うことには、正直なところ非常に違和感がありました。

現在の時価総額が低いことに対して謝罪の言葉をいただいたため、現在の時価総額に対する見解と行動を一致させるという意味では、謝罪と第5号議案の提案を同時に行なうことに、個人的に大きな矛盾を感じています。そのため、第5号議案に関しては、提案そのものが合理的ではないとあらためて感じたため、撤回をお願いしたいというのが個人的な提案です。

そして第5号議案について、今後の経営体制にも関わるため那珂さんにお伺いしたいのですが、今後の経営陣の方たちが第5号議案についてどのような審議をしたのか、その過程についてお伺いしたいと思います。

山川:第5号議案について撤回した方がよいのではないかというご意見と、その審議の過程についてご説明いただきたいということですね。一つ目はご意見ということで頂戴してよろしいでしょうか?

質問者7:はい、問題ありません。

山川:それでは、審議の過程について那珂から簡単にご説明したいと思います。

那珂:当初、取締役会として「従前の体制をそのまま次期も継続する」という議論があったため、一旦はそのように開示しましたが、その後、山川社長や他の方からいろいろな経緯の説明があり、「この際、やはり思い切った世代交代をやるんだ」ということになったわけです。その過程で、堀に対する功労金の話も出てきまして、新体制等を含め、取締役会において議論を経て決定されたわけです。

山川:私からも少しご説明します。私も現在は取締役ですので、この議論に参加しています。堀に対してですが、取締役に対しては退職規定がありません。ですから、取締役の退職金はありません。私も、そして過去の取締役の方も退職金はありません。

堀に関しては、会社がなければ人材も集まってこないため、会社を創ってくださったことに対する我々の感謝と敬意ということで、取締役会の方で決定しました。ご意見は頂戴しますが、取締役会としては、本件は撤回せずにこのまま功労金をお渡ししたいと思っています。

質疑応答:新たに就任する顧問について

質問者8:提案なのですが、招聘する顧問の方にもっとバリエーションがあったほうがよいのではないかと思います。私は官公庁に勤めているのですが、官公庁は体質として非常に堅く、やはり柔軟な発想ができていません。

経産省も同様で、有名な逸話があるのですが、小泉内閣時代に竹中平蔵氏が総務大臣だったころ「岩盤規制を破ろうと思っていろいろやったんだけど、みんな反対。ところが、小泉氏が、『これはおもしろいじゃないか。やってみよう』と言った後、官僚がみんな手の平を返したように『実はやりたかったです」と言い出す」とおっしゃっていました。

その体質はやはり変わっておらず、実は最近、リクルートから出向されている方にお話を伺ったところ、「国の官僚組織は堅く、これでは全然、世界と伍してはいけないと実感した」「決まったことがいつの間にか変わっていて駄目になることが多い」と言っていました。ですので、招聘する方も、たとえば竹中平蔵氏に近い考え方を持った方々にすることで、初めて国を変えることができるのではないかと考えていますが、いかがでしょうか。

山川:顧問が少し偏りすぎているのではないかというお話かと思います。今回、新しく就任する方は2名ですが、他にも技術的な顧問の方、それからエンターテインメント分野の顧問の方もいらっしゃいますので、顧問の就任はバランスを考えて行なっており、こちらの2名はたまたま官僚出身でこの機に就任していただきます。

もちろん、経産省や環境省の中ではいろいろなことがあるかと思いますが、人物や過去のネットワーク、信頼という面から今回の2名にお願いしています。もちろん、今お話しされたとおり、まったく違う色の方々も、今後は招聘することがあると思いますが、そちらは次の経営陣に任せたいと思います。そのようなかたちでご理解いただければと思います。

質疑応答:重点取組について

質問者9:スライド10ページの重点取組についてです。半分はご質問で、半分はご提案になると思うのですが、今後ドリームインキュベータが重点的に取り組むということで、なかなかすばらしいことが記載されていると思います。その反面、ドリームインキュベータらしくないと言いますか、それこそリクルートなどの他の大企業が記載していても、それほど違和感のないスライドだというのが正直な感想です。

例えば、堀さん、山川さんがおっしゃるように、これからプロデューサーの時代になるのであれば、「100人が100人の社長を知っていれば、それだけで1万人になる」といったように、「これは絶対負けない、このようなことならドリームインキュベータに聞きに行こう」という部分が不明確だと思います。

すぐにP/Lにインパクトはないかもしれませんが、今後の新経営陣3名で、あの時の新型コロナウイルスの中、100人の社長をプロデュースしたというようなことがあれば、3年後や5年後に「あの時の種まきがよかったのではないか?」「あれは失敗だったけれど、あの時の失敗があるから今はこうなれた」ということにつながっていくような気がします。

正直なところ、資料だけを見ると、ビジネスプロデュースではなく、「ビジネスダイレクション」と言いますか、プロデューサーではなくディレクターのような気がするというのが僕の意見であり、提案です。そのようなことに対して、経営陣はどう思っているのかをお聞きしたいと思います。

山川:もちろん、私にも意見はありますが、本日で退任しますので、この話は実際に現場に出ている細野と三宅からご説明します。

三宅:その部分だけを見るとドリームインキュベータらしくないというのは、なんとなくわかるような気もします。ビジネスプロデュースそのものの中身についてのお話だと思いますが、その中で「ネットワークを拡大していく」「こんな仕組みを入れる」という部分は、まさにビジネスプロデュースの中身の話だと思います。

我々の反省として、どちらかといえばそればかりに取り組んできて、ドリームインキュベータに収益が落ちる仕掛けにはなっていませんでした。しかし、スライド中央にあるビジネスプロデュースという機能は非常にすばらしく、よりよいものに育っていると思いますので、これを活かせる場を作り、ビジネスとしてしっかりと収益が落ちるかたちにしていこうというところが、このスライドの趣旨です。

私は大企業のビジネスプロデュースとして、新規事業や事業創造をどんどん仕掛けてきたため、ビジネスモデルを作るのは非常に得意だと思っているのですが、それをクライアントや他社のためだけに使ってきたと思っています。今度は、ドリームインキュベータという会社のためにそのスキルを使おうということがこのスライドの趣旨であり、ビジネスプロデュースの稼働範囲を広め、ドリームインキュベータのために力を注いでいくという決断を記載したものですので、ご理解いただければと思います。

細野:今、三宅がお伝えしたことと重複する部分があるのですが、当社はいろいろなネットワークを作っていてもビジネスモデルが弱く、それが利益や収益を生み出せていない要因の一つだと思っています。

当社は、大企業向けのコンサルティング、ベンチャー投資、事業投資など、さまざまなことを行なっていますので、いろいろなネットワーク自体はあります。ただし、選択と集中ということで、きちんとした事業を創っていくための事業モデルをもう一度作り直すことが非常に大事だと思っています。そのような意味での収益作りのモデルとして、スライドに書いてあるような考え方を提示しています。

一方で、先ほどの「100人が100人の社長を知っていれば、それだけで1万人になる」というお話は、山川もお伝えしたとおり、令和の時代では、何か特定の領域にすごく詳しく、分析ができてスライドが書けるということはあまり期待されていません。大きな問題に対して、外のネットワークも中のネットワークも駆使してつないでいき、「その問題を解決するには、A社長、B社長、C社長をつなげばよい」というように、一人ひとりがそうしたケイパビリティとネットワークを持つ必要がある時代になってきていると思います。

その意味で、ドリームインキュベータはいろいろなネットワークを持っているのですが、実はまだ全体としては集約できておらず、個々の役員が、それぞれ個別に持っている状態に近いため、これを全体として集合させて、大きなネットワークとして日本全体を動かしていけるような事業にしていきたいと思っているところです。