決算ハイライト

札場操氏:決算の説明会をただいまより開催させていただきます。

まずは概要でございますけれども、世界経済は、この年度後半に中国の景気減速が見られましたものの、アメリカや日本では緩やかな景気の回復が続きました。

このような環境の中で、私どもの当期の業績は、有機合成あるいは合成樹脂の販売数量の増加・販売価格の改定など増収要因があったものの、原燃料価格の上昇、たばこフィルター用トウの市況の軟化、インフレーターの販売品種構成の変化、あるいは研究開発費の増加などによりまして、営業利益は減益となりました。

連結損益計算書

損益計算書でございます。

当期の売上高は4,649億円。先ほども申し上げましたけれども、たばこフィルター用のトウの市況の軟化、インフレーターの販売品種構成の変化などの減収要因がありましたが、有機合成や合成樹脂の販売数量の増加・販売価格の改定などによりまして、前期に比べまして19億円の増収となりました。

為替は前期から変わらず111円ということで、為替の影響は、今期に関してはほぼございません。

営業利益は512億円。昨年の大竹工場火災事故からの回復があったものの、減収要因に加え、原燃料価格上昇や研究開発費の増加などによりまして、前期比78億円の減益となりました。

営業外損益につきましては、為替損益の改善などによりまして、前期比1億円改善の23億円となり、経常利益は前期比77億円減益の534億円でございます。

特別損益につきましては3億円。固定資産売却に関するもの以外に、特別利益で、政策保有株売却による売却益を58億円、前期の大竹工場の火災事故や去年の自然災害に伴う受取保険金を20億円。

それから特別損失のところでは、退職給付制度改定に伴う費用を33億円、インフレーター事業の韓国子会社の減損損失18億円などを計上しております。

以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べまして18億円減益の353億円となり、ROEは9.1パーセントとなりました。

セグメント別 売上高・営業利益

セグメント別売上高・営業利益はご覧のとおりでございまして、セルロースと火工品は減収減益、有機合成は増収増益、合成樹脂につきましては増収減益となりました。各セグメントの状況につきましては、後ほどご説明させていただきます。

業績予想

2020年3月期の業績予想でございます。

2020年3月期は、有機合成・合成樹脂の販売数量が引き続き数量的には好調に推移することや原燃料価格の下落を見込んでおりますが、インフレーターの販売数量の減少・販売品種構成の変化、酢酸セルロースの販売数量の減少、研究開発費の増加などにより、減収減益の見通しとなっております。

前提条件は、為替がほぼ前期並みの110円、メタノールは前期より低い320ドルとしております。

セグメント別 売上高・営業利益予想

セグメント別の売上高・営業利益につきましては、ご覧のとおりでございます。

設備投資/減価償却

続きまして、設備投資/償却でございます。

当期の設備投資の実績は447億円でございます。有機合成で投資が増加しておりますが、主な案件は、酢酸原料の一酸化炭素製造設備の更新、化粧品原料設備の増強でございまして、現在、建設を進めているところでございます。ほかに、インフレーターのラインの増強、新井工場でのイノベーションセンター建設などを実施しております。

次期では590億円を計画しております。引き続き、一酸化炭素製造設備の更新が一番大きな投資となります。

当期の減価償却費は300億円でございます。次期は295億円の見通しでございます。

セグメント情報 セルロース

それでは、セグメント別に、まずはセルロースのセグメントでございます。当期の売上高は832億円、前期比58億円の減収となりました。

まず酢酸セルロースは、液晶フィルム向けTACや、外販のたばこフィルター用途の販売数量が減少し、減収となりました。

たばこフィルター用トウは、販売数量は前年並みとなりましたものの、市況軟化に伴うこの2018年1月からの販売価格の低下影響により、減収となりました。

当期の営業利益は、前期比33億円減益の160億円。たばこフィルタートウの販売価格の低下、酢酸などの原燃料価格の減少により、減益となっております。

次期につきましては、売上高820億円、営業利益135億円を予想しております。

酢酸セルロースは、今期のお話でも申し上げましたが、たばこフィルター用の用途が大きく減少し、液晶フィルム向けTACも、若干でございますが減少する見通しです。

たばこフィルター用トウにつきましては、販売数量が増加する見通しでございます。一方、販売価格につきましては、販売構成差による平均単価の低下を織り込んでおります。

また、酢酸など原燃料価格が高かった前期の在庫が持ち越されておりますので、それによります移動平均差も減益要因となっておりまして、セグメントでは減収減益と見込んでおります。

セグメント情報 有機合成

続きまして、有機合成セグメントでございます。

当期の売上高は895億円、前期比75億円の増収となりました。有機の合成品・機能品は、酢酸市況の上昇やその他製品での原燃料価格上昇に伴う価格改定、コスメ・ヘルスケア分野などの需要が堅調に推移したことにより増収となっております。

キラル分離事業、CPIカンパニー、CPIのセグメントですけれども、カラムの販売が増加したことやインドでの分析サービスの成長などによりまして、増収となっております。

当期の営業利益は、前期比65億円増益の144億円、販売数量の増加や販売価格の改定、昨年の大竹工場過酢酸製造プラントでの火災事故からの回復などによりまして、増益となりました。

なお火災事故につきましては、昨年秋の定期修理の期間中に機器の更新・補修が完了いたしまして、現在の設備能力は火災事故以前の水準に回復しております。

次期につきましては、売上高900億円、営業利益155億円を予想しております。酢酸市況は昨年に比べれば下落を見込んでおりますものの、電子材料分野やコスメ・ヘルスケア分野での販売数量の増加、原燃料価格などの下落などにより、増益となる見通しでございます。

セグメント情報 合成樹脂

続きまして、合成樹脂のセグメントでございます。

当期の売上高は1,759億円、前期比76億円の増収となりました。自動車部品の需要増加による販売数量の増加や販売価格改定などによるエンジニアリングプラスチックス事業の増収が、セグメントの増収に大きく寄与いたしました。

当期の営業利益は、前期比26億円減益の206億円でございます。販売数量は増加いたしましたものの、原燃料価格の上昇、あるいは第3四半期後半からの中国での景気減速での影響などによりまして、減益となりました。

次期につきましては、売上高1,865億円、営業利益235億円を予想しております。エンジニアリングプラスチックスの販売数量の増加や原燃料価格の下落などにより、増収増益となる見通しでございます。

セグメント情報 火工品

続きまして、火工品のセグメントでございます。

当期の売上高は1,079億円、前期比93億円の減収となりました。自動車エアバッグ用のインフレーターの販売数量は増加いたしましたものの、販売品種構成の変化などによりまして、減収となりました。

減収に加えまして、研究開発費の増加などもございまして、当期の営業利益は156億円と、前期比66億円の減益となりました。

次期の見通しは、売上高910億円、営業利益70億円を予想しております。インフレーターの販売数量は、通常ビジネスで増加いたしますものの、緊急増産分の数量が大幅に減少し、全体では若干の減少となる見通しです。

販売品種構成差、前年に引き続き将来のビジネス拡大のための研究開発費の増加や、安全と品質確保などの基盤強化のための費用増加などもありまして、減収減益となる見通しでございます。

株主還元

次に、株主還元についてご報告させていただきます。当期の期末配当は当初予想どおりの16円とさせていただきまして、年間配当は前期同額の1株あたり32円となります。

いま最終年度になっておりますが、中期計画では30パーセントを目標としている配当性向が、今期の利益で割りますと30.4パーセントとなります。

自己株式取得につきましては、5月に発表した100億円の自己株式取得を実施いたしました。さらに、2月にも約100億円の自己株式取得を発表して、いま取得を進めておりまして、3月末時点で約30億円の取得を実施しております。また、3月に発行済株式総数の約5パーセントにあたります1,800万株の自己株式消却も実施しております。

次期の配当予想につきましては、当期同額の1株あたり32円としております。

トピックス メディカル・ヘルスケア

最後に、この中期計画の注力分野でありますメディカル・ヘルス、エレクトロニクス分野のトピックスについてご紹介させていただいて、ご報告を終えたいと思います。

まずは、メディカル・ヘルスケアで「アクトランザ™ラボ」、火薬工学のパイロテクニックを応用した新たなドラッグデリバリーシステムを上市、提供を開始いたしました。遺伝子治療薬・核酸医薬・DNAワクチンなど革新的な医薬品の、実際にお客様にデリバリーできる、その実現に貢献できる可能性が大ということで、学会の発表等々も行っておりまして、これから「次は人向けに」ということで、いま進めております。

アメリカのゲノミクス企業Arbor Biosciencesを今年買収しておりまして、DNA配列解析の関連技術に強みを持ちます同社の買収によりまして、医薬だけでなくゲノミクス市場でのビジネスを拡大しようという意図で、買収を行っております。

それから最後3番目に書いてあるのは、Lomapharmという欧州のドイツの医薬品製造会社を買収いたしました。製剤の分野まで事業を拡大するその一端でありまして、我々が持っております医薬添加剤の事業のさらなる成長を目指すことを意図しております。

トピックス エレクトロニクス

エレクトロニクスの分野でございます。台湾にDaicel Micro Optics Co. Ltd.を設立いたしました。写真にあるように、我々で開発しておりますウエハーレベルのレンズを活用いたしまして、光学製品の製品開発拠点を、エレクトロニクスデバイスの製造・開発における世界的な情報集積地であります台湾に設置いたしまして、ここに掲げてありますようなIoTとかセンシング領域での事業拡大と加速を図ってまいります。

高機能フィルム。これはいままでもやっておりますけれども、車載用のディスプレイで低ギラツキ・高精細。こういったところに我々のAGフィルムの採用が拡大しております。

電子材料向け溶剤。有機カンパニーで、半導体あるいは液晶用のいろいろなレジストポリマーをやっておりますが、それに付随して、半導体製造向けに徹底した不純物除去を行いました高沸点溶剤の展開、あるいは新たにパワー半導体や積層セラミックのコンデンサに特化いたしましたプリンテッドエレクトロニクス用の溶剤といったものをいま注力して進めております。

2020年3月期は、この中期計画の最終年度となります。こうした新しい分野での成長に注力してまいりたいと考えております。

以上で、簡単ではございますが、2019年3月期決算のご説明を終了いたします。