2019年3月期第2四半期決算説明会
西本逸郎:本日は、本当にご多忙な中、説明会にお越しいただきまして、大変ありがとうございます。
日本貿易保険さまから「次期貿易保険システム開発」を、当社が昨年(2017年)の3月末に受注したわけですが、先般、そちらで「入札等における不正について」という発表があり、同社の元顧問に不適切な行為があったとされています。弊社でも(外部弁護士を含めた)調査委員会等を作り、今(事実確認等の)調査を行っていますが、現時点においては当社としては不適切行為があったとされる先方の元顧問に当社社員が不当に関与したという認識はありません。
いずれにしましても、投資家のみなさまにはご不安とご迷惑をおかけして、大変申し訳ございません。
日本貿易保険さまは、日本の国力である貿易、日本の企業を支えているような、非常に重要な任務を負われている国の機関でございます。そこで、消費税を入れまして、50億円ほど案件を入札により昨年受注いたしました。
当社においても非常に名誉なことでございまして、全社をあげて、この任務にかかっておりました。おかげさまで、現場のプロジェクトマネージャーも全力で任務にあたっており、非常に高い評価をいただいておりましたが、入札そのもので先方のプロジェクトマネージャーである元顧問の方に「不適切な行為があった」ということでした。このため、一旦現状の精査をしております。
当社としましては、これは上期において約10億7,000万円の売上に相当する部分が期ズレとなっており、バランスシートに仕掛品として記載しております。
当社としましては、正しく納品していると捉えており、その分は当然検収をしていただけるものと思っておりますが、やはり入札における不適切行為とされていることですから、そのあたりはしっかり精査をされたいということで、現在両者で誠意を持って、対応をしているところでございます。
連結決算ハイライト(前年同期比)
続きまして、第2四半期累計の決算です。この概要についてご説明させていただきます。
前年同期比で言いますと、先ほどお話ししました日本貿易保険……通称「NEXI」と呼んでおりますので、私も今後は「NEXI」と呼ばせていただきます。NEXIさまの売上が10億7,000万円計上されていませんが、売上高としては微減で、利益面では増収で着地することができました。
続きまして、サービス売上の伸長、とくに、セキュリティ系サービスが伸びたことが、非常に大きなポイントになっております。
連結決算ハイライト(予想比)
続きまして、予想比になります。
予想比に関しましては、売上高(の増減率)はマイナス10.8パーセントでございます。適時開示の開示基準に触れておりますので、業績予想に対し10パーセント以上の未達ということを、昨日(2018年11月1日)に、併せて開示をさせていただいております。
(差異の)ポイントとして、先ほどお話ししました「開発サービスの(売上計上の)期ズレ」というのは、NEXIさまの案件です。この期ズレおよび、HW/SW販売で、想定したほど案件が増えませんでした。
昨年度(2018年3月期)は幸いながら、上期に非常に大型のハードウェアの案件を受注することができまして、プラスになっていたのですが、今期(2019年3月期)についてはスポット案件がなく、とくにHW/SW販売に関しては思ったとおり(には)伸びていないため、売上高は大幅な未達です。
ただ、利益面は(販管費抑制などにより)予想を上回って着地することができました。
セグメント別業績(前年同期比)
今度は、事業分野ごとでのご説明になります。
弊社は、セキュリティソリューションサービスの「SSS」という事業と、(システムインテグレーションサービスの)「SIS」の事業の2つに分けております。
ご覧いただいたとおりなのですが、セキュリティソリューションサービスに関しましては、大幅な増収増益となっております。
SISは、減収ですが増益となっております。これは、とくに先ほどご説明したHW/SW販売のマイナス部分が大きいことと、NEXIさまの案件が仕掛となり計上されていないことが大きな要因になります。ただ、全体としては、SISも実に好調に動いていたというのが、上期の実態でございます。
セグメント利益は、なんとか両事業とも前年同期比増という状況でございます。
セグメント別業績ポイント セキュリティソリューションサービス(SSS)事業
続きまして、セキュリティソリューションサービスの詳細に入ってまいります。
セキュリティは保守以外は(前年同期比で)プラスとなっております。とくに、診断と運用監視サービスがプラスに貢献しております。運用監視サービスがプラスになったのは、4月にアジアンリンクという会社をM&Aで買収し、こちらの売上部分が4.5億円ぐらいございますが、それが運用監視サービスにアドオンされましたので、大幅なプラスになっております。
あとは、昨年(2017年)もご説明させていただいておりますが、前期第4四半期から開始しております中部地域の大手製造業向け運用監視サービスです。今期になって、通期での売上計上フェーズに入っておりますので、ここも非常に大きなプラス(要因)になってきております。
セグメント利益も、これらの売上増に伴い前年同期比で増益となっております。
ちなみに、当社のセキュリティサービスの骨格は、この運用監視サービスです。運用監視サービスの部分は、基本的にストックビジネスになっております。ストックビジネスで経営を安定化させていくということで、当社のセキュリティソリューションサービス事業が伸びた、特徴の1つです。
今は、かなりセキュリティサービスの競合先が増えてきておりますが、このようなストックビジネスで、どれだけ屋台骨としてしっかり立ち上がっているかどうかが、大きなポイントとなっておりまして、ここが当社の競争力の一番の源泉だと思っております。
ここがしっかりしていないと、セキュリティの次の投資と結びついていきません。みなさまもご存じのように、セキュリティでは日々新しい手口等が開発されておりますので、それに見合った研究を、常に怠らないようにしなければいけない。そのための原資を、常に安定したストックビジネス、つまり監視サービスからたたき出していかなければいけない。このモデルが構築できているということが、当社の大きなポイントかと思っております。
セグメント別業績ポイント システムインテグレーションサービス(SIS)事業
続きまして、SISです。
これは、先ほどお話ししたように、開発サービスはほぼ横ばいというか微増なのですが、NEXIさまの案件が仕掛にならず計上されていれば約10億円のプラスでございます。
HW/SW販売に関しましては、前期にあったようなスポット案件がなかったことによるマイナスよりも、さらに落ち込んでおります。やはりHW関係は、今期になりまして、お客さまのクラウドシフトがかなり急速に進んでいるためだと認識しております。
当然当社も、開発サービスの案件はクラウドにシフトをしてきておりますので、そちらの対応はとれておりますが、やはりHW/SW販売については、直に影響が出ているというのが、正直なところでございます。
連結貸借対照表ハイライト(前期末比)
連結貸借対照表に関しましては、ご覧いただいたとおりです。
先ほどの(ご説明にございました)大型案件のNEXIさまの件が期ズレしているところもありまして、短期の借入を行いました。
ご覧いただければおわかりになりますが、12億円の短期借入をやっておりますが、基本的には、順調に安定した財務基盤を維持していると思っております。
連結キャッシュ・フロー計算書ハイライト
連結キャッシュ・フローのハイライトに関しましては、先ほどお話ししました運転資本要因等によって、営業キャッシュ・フローは少し振るっておりませんが、これも回収が進んでいけば、プラスになっていくと考えております。
主な取り組み①
現状の主な取り組みをご紹介させていただきます。
1つ目に、最近非常にホットになっていますのは、工場のセキュリティです。これまで日本の中では、セキュリティ事業はオフィスセキュリティがメインでした。当社も、中部地域の大手のグループを企業グループに持ってセキュリティをやっていますが、これも今のところは、ほとんどがオフィスセキュリティです。
今後広がるのは工場のセキュリティ、つまり産業分野のセキュリティです。さらにその上で事業をやるセキュリティになっていくのですが、次のステップの産業分野向けセキュリティサービスは、今期拡充を狙っていっています。
まだまだ、実需までには至っていないところがあり、まだこれからのところですが、昨年(2017年)から産業系にも被害が出始めており、ここは待ったなしの状況となっています。
厚生労働省からも、「医療分野で事故が多発しているのでしっかりしろ」という指示(医療機関等におけるサイバーセキュリティ対策の強化について)が昨日(2018年11月1日)出ていますが、医療系なども1つの産業といえます。
医療も、今はすべて基本的にコンピュータで管理されていますので、ここで何かがあると(例えば)「患者さんの情報がわからない」「どんな治療をしていいかわからない」「日々のいろいろな測定器から上がってくる医療情報なども、集めることができない」。これらは、非常に重大なセキュリティ市場になるということを合わせて、このあたりの産業分野にも、我々はフォーカスしています。
2つ目に、中堅・中小企業向けのセキュリティサービスの展開で、「CloudFalcon」というプロダクトをリリースいたしました。これは(何かというと)当社の屋台骨の、セキュリティ監視のエンジンの名前が「Falcon」です。
本格的な監視をやるには非常に高い技術力が必要になりますし、かなりしっかりした体制で運用しなければいけないのですが、中小企業向けとなるとかなりライトで、基本的には自動でやっていかなければいけません。
そのようなものを、我々が提供し続けてきた監視のノウハウを注入して「CloudFalcon」というプロダクトとして提供しています。現在のところ、デジタルハーツホールディングスさまならびに、当社とKDDIさまの合弁会社であるKDDIデジタルセキュリティさまが、これを採用して事業展開していこうということが発表されています。
基本的に、中堅・中小企業向けには、当社が直接マーケットにリーチする術を持っていません。そのようなマーケットにリーチできる会社さまの1つのクロスセルおよびアップセルの商材として、このような当社のプロダクトを取り扱っていただこうという戦略を考えています。
続きまして、脅威情報(スレットインテリジェンス)です。これも、最近非常に注目されている部分で、「脅威ハンティング」などと言われていますが、「脅威がくる前に、脅威の芽を潰せ」というサービスにつながるものです。やはりサイバーセキュリティでは情報戦に勝っていかないと、話にならない。この「情報」そのものを販売していくというサービスになります。
また、これは中堅・中小(企業向けサービスの展開)とも連携してくるのですが、サイバー保険との連携がいよいよ本格化してきていますので、ここをしっかりリードしていきたいと考えています。
主に、これらの4つの部分で事業展開しています。
主な取り組み②
SI系と全体的な取り組みとしましては、アジャイル開発センターを設置しました。
現在、お客さまご自身が変化しています。従来は、情報システム部門や情報システム子会社側がお客さまで、そこでしっかりと要件が決められて大規模な開発を行うのが、だいたいの常でありました。
しかし今は、やはり環境変化によって、お客さまは「非常にスピーディに、事業を支えるシステムを作っていかないといけない」ということで、アジャイル開発が非常に注目されています。
そのため、そのようなお客さまの動きにフィットし、一緒に事業開発をしていく場所として、このようなアジャイル開発センターを設置しました。これは、「今後、SI事業がどうなっていくか」「どう変化していくか」ということを、少し先取りしたといいますか、そのような位置付けで動いています。
次に、新事業開発部を設置しています。これはとくに、スタートアップをしたばかりのところ(の出資)です。非常にアーリーステージのベンチャー等に関わる技術的な支援を含めて、弊社で関わって、次の事業の種を創出していこうという動きです。
当然、この中で「投資」と言っても、当社は大企業がやるような、何十億円もの投資をすることはできませんので、当社の身の丈に合った規模の「コーポレートベンチャーキャピタル」という位置付けで、まずは小さくスタートしています。
そして、拠点の拡充としまして、シンガポール支店を設置しました。従来は、お客さまの施設の中で事業をやっていたのですが、これは先ほどもお話ししたインターポールの支援であるとか、日本の大手企業さんがASEANに進出している部分でサービスしていくということを、共同で進めています。そこのベースになる支店の設置です。
また、北九州に「ラックテクノセンター北九州」を(2019年1月に)設置いたします。これの狙いは何かといいますと、人材採用です。今は、IT人材の採用がどんどん厳しくなってきています。
北九州は昔工業都市で、実は優秀な技術系の学校が多数あります。ただ、「地元に就職先がない」というところを狙って、北九州市さまにもご了解いただいて、弊社をバックアップしていただき、「ラックテクノセンター北九州」を来年開設することになりました。
ちなみに初年度は来年4月で、15名程度のこじんまりしたところからスタートしますが、そのうち、実は10名が新卒でございます。今期の途中から動いているにもかかわらず、10名程の新卒が内定しています。東京採用も10名程あり、地域以外でも、採用活動という観点では、今のところ比較的順調にきていると思っています。
株主還元(中間配当)
配当でございます。
これに関しては、期初予定どおりです。今期は通期で22円の配当を考えており中間期としては配当予想のとおり10円の配当を予定しています。
連結業績予想(通期)
通期の連結業績予想につきましては、現在のところ、以前(2018年5月9日に)発表した内容から変更していません。
NEXIさまの影響がどの程度出るのかが、まだ合理的・総合的に勘案できないために、今の段階では、変更なしでございます。ただ、開示すべき事実が判明した場合は当然、迅速に公開してまいります。基本的には、「大きなものはないのではなかろうか」とは思っていますが、現状ではなんとも言えないのが、正直なところでございます。
私からの説明は、以上となります。ご清聴、ありがとうございました。