損益概要
高田真治氏:高田でございます。大変お暑い中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
本日は私から、第1四半期の概要と、新たにこのたび私どもが策定いたしました「スカパーJSATグループミッション」と、将来に向けての事業ビジョンをつくりましたので、それをご説明させていただきます。
当面の取り組みにつきましては、私からメディア事業の部分をご説明申し上げまして、続いて小山取締役が、宇宙事業の具体的な取り組みをご説明申し上げます。
まず、昨日(2018年8月1日)発表いたしました、2018年度第1四半期の概要でございます。
まず、損益でございますけれども、今年(2018年)4月に打ち上げが成功いたしました防衛省向け衛星の引渡による売上が230億円ございまして、増収増益となりました。
営業収益は588億円、前年同期比で58パーセントの増。営業利益は46億円、7.2パーセントの増。当期純利益は33億円、12.9パーセントの増でございます。
通期の予想に対しましても、順調に推移していると考えております。
セグメント別連結業績の推移(2017年度 1Q ~ 2018年度 1Q)
2017年度から2018年度第1四半期までの、四半期ごとの連結業績の推移でございます。
右の赤い線で囲った2018年度の「1Q」と左の前年同期を、セグメントごとに見ていただきますと、まずメディア事業につきましては、視聴料収入が減少したことによりまして、第1四半期の営業収益は約259億円と、前年同期比で約16億円減少し、営業利益は約8億円ということで、約2億円の減でございます。
宇宙事業につきましては、防衛省向け衛星売却収益によりまして、営業収益は約355億円と前年同期比約230億円の増、営業利益は約40億円ということで、約5億円の増となりました。
セグメント別の増減の要因につきましては、詳細を、のちのページでご説明申し上げます。
メディア事業の主要指標
続いて、メディア事業の主要な指標でございます。
新規と再加入を合計した加入件数、「スカパー! 新基本パック複数台無料キャンペーン」が大変好評という効果もございまして、前年同期を上回る155,000件となりました。
第1四半期累計の純増数につきましては、前年同期は6,000件の純減でございましたけれども、プラスになりまして7,000件の純増となりました。
2018年6月末の累計加入件数は3,270,000件でございました。(2018年)7月につきましては約7,000件の純減でございました。
第1四半期のARPUにつきましては、43円下がりまして2,020円となっております。
SAC、新規顧客獲得費用でございますけれども、広告宣伝を中心に総額が前年同期比で3億円減少し、加えまして新規加入件数の増加もありまして、単価としては10,870円減の27,064円となっております。
四半期ごとの推移につきましては、後ろに参考資料を付けておりますので、ご参照ください。
メディア事業の業績概況:前年同期比
メディア事業の主な増減の要因でございますけれども、営業収益は約16億円減少し、約259億円となりました。
視聴料収入が約11億円減少、また、基本料の減少や加入料を廃止したことに伴いまして、約5億円減少しております。
営業費用は約14億円減少いたしまして、251億円となりました。放送事業者さんにお支払いする番組供給料が約9億円減少し、コンテンツ費などの削減によりまして、その他の費用が約5億円減少しております。
宇宙事業の業績概況:前年同期比
宇宙事業の主な増減要因でございますけれども、営業収益は約230億円増の約355億円でございます。
防衛省向け衛星引渡による売上以外には、スカパー加入件数及び視聴料収入の減少に伴いまして、放送トランスポンダ収入が約1億円減少しましたけれども、航空機向けのWi-Fi回線の提供などの収入が約1億円増加しております。
営業費用は、約225億円増の約315億円でございます。
防衛省向けに売却をしました衛星事業の原価等が約227億円増加した一方で、「JCSAT-5A」の減価償却が終了いたしまして、減価償却費が2億円減少しております。
スカパーJSATグループ ミッション
次に、このほど策定いたしました「スカパーJSATグループミッション」、事業ビジョンを初めてご報告させていただきます。
ご案内のとおり、当社は1985年に設立いたしまして、以来衛星通信及びデジタル多チャンネル放送のパイオニアといたしまして、新たな事業あるいはサービスを開拓してまいりました。
そして2007年には、スカイパーフェクト・コミュニケーションズとJSAT、さらには2008年宇宙通信との統合を経まして、現在のスカパーJSATグループになりました。
以来10年でございますけれども、近年ご案内のとおり、私どもの事業を取り巻く環境は大きく変化をしております。
そして、さらに加速しますデジタル社会の進展と、宇宙を始めあらゆる空間でのビジネスフィールドが拡張しております。
そういう中で、当社の果たすべき役割、あるいは目指すべき方向を再定義いたしまして、新たなグループミッションを策定した次第でございます。
新たなスカパーJSATグループミッションは、「Space for your Smile」。「不安が『安心』にかわる社会へ、不便が『快適』にかわる生活へ、好きが『大好き』にかわる人生へ」でございます。
そして、その想いを加えております。
「『Space for your Smile』には、私たちの目指す世界が描かれています。宇宙も、空も、海も、陸も、家族が集うリビングも、ひとりの自由な場所も、これらすべてのSpaceが笑顔で満たされるように、日常のちょっとした幸せから、まだ見ぬ未来の幸せまで、ひとりひとりの明日がよりよい日になっていく、そんな世界を創りつづけます」。
そして、このミッションを実現して、さらなる企業価値の向上に向けまして、事業ビジョンも策定いたしました。その骨子につきまして、ご説明申し上げます。
宇宙事業ビジョン
まず、宇宙事業のビジョンでございますけれども、大きく2つの分野で成り立っております。
1つ目の柱は、これまでのインフラに関連する分野でございます。中核である高度36,000キロメートルの静止軌道衛星のみならず、さまざまなSpaceを開拓して、事業領域を広げようというものでございます。
静止軌道の少し上になりますけれども、準天頂軌道の測位衛星につきましては、現在国が主導でより高精度な測位サービスを提供すべく、推進しております。当社は、測位信号の干渉の監視などの部分で、参入していきたいと考えております。
さらにその上は、月ということになりますけれども、宇宙基本計画の中で探査機によります月面調査がうたわれております。月と地球との通信などの分野で、当社の参画機会があるのではないかと考えております。
次は、静止軌道から高度が下がりまして、低軌道におきましては、プラネット社の衛星画像ビジネスへの参画や、Orbital Insightとの代理店契約等の活動を実施しております。画像ビジネスなどは、順調に契約が獲得できております。
その下になりますHAPS(通信)、これはHigh Altitude Platform Stationの略でございますけれども、このHAPSは高度2~30キロメートルあたりで運用されます、通信機能を持ちました飛行船などのことを指します。
半径7~80キロメートルに及びますカバーエリアで、通信環境を構築することが可能になります。このHAPSでは、静止軌道衛星のビジネスに似た仕組みであるといえます。
ドローンにつきましては、エンルート社によります機体販売やサービス提供だけではなくて、スカパーJSATとして国の研究開発案件に積極的に参加しております。
研究成果をさらに発展させまして、将来の目視外飛行における運行管理ネットワークの構築なども、他の民間企業と連携して推進していきたいと考えております。
そして、地上でございます。ここでは2つの取り組みがございます。
1つは政府関係の衛星の運用受託でございます。すでに「WINDS」や「きらめき」などの実績に加えまして、JAXAのデータ中継衛星の運用受託も決定しております。
そしてもう1つは、低軌道衛星向けのゲートウェイ局の提供でございます。このビジネスにつきましては、ノルウェーのKSAT社との提携によりまして、低軌道衛星事業者に場所や設備を貸し出すというもので、すでにお客さまも獲得しているところでございます。このように、宇宙事業の活動領域を拡大していくことを、宇宙事業のビジョンの1つの柱としております。
もう1つの柱といたしまして、これまでのように、ただ通信インフラを提供するだけではなくて、これらのSpaceのアイテムをセンシングにも使いまして、収集したデータを活用した事業を創出していきたいと考えます。
静止衛星を始め、当社が持つSpace上の資産に、宇宙を監視するためのミッションや、宇宙空間から地球上の情報を収集するミッションを搭載するなどして、センシングのインフラを構築してまいりたいと考えています。
そして、そこから取得いたしましたデータをリモセンデータとして収集しまして、横浜管制センターでの衛星運用の過程で得ていますイベントデータ、あるいはスペクトラムのデータなどと合わせまして、データベース化します。
これを、例えば気象データや交通データと、我々が持っていないデータを保有しているパートナーと連携して活用いたします。
そして、災害復旧やインフラの点検・管理、あるいは航空機や船舶の自律航行といったサービス・アプリケーションといたしまして、これらを開発して外部の企業へ提供していきたい。
最終的には、それらのサービスを政府・自治体あるいは民間企業等へ提供し、さらにこれらエンドユーザーからのニーズやデータを組み上げて、我々のインフラ計画にフィードバックして、より有用なサービスを開発させていくという事業展開につなげたいと考えております。
今後も、衛星が引き続き宇宙事業のコアの部分であることには変わりはございませんけれども、さまざまなスペースでの取り組みをさらに強化いたしまして、我が社しか取得できない宇宙データを活用した事業の創出によりまして、ビジネスを拡大してまいりたいと考えております。
以上が、宇宙事業の将来ビジョンの骨子でございます。
メディア事業ビジョン
続いて、メディア事業のビジョンでございますけれども、従来の映像サービスに加えまして、新たに時間軸上のスペース……つまり、拡大していく生活時間を新たなターゲットにしてまいりたいと考えております。
これ(スライドの左側)は、総務省が2016年に発表しました、10歳以上のすべての日本人……つまり、サラリーマンも主婦も、学生さんや老人も含めた、24時間の過ごし方の平均値でございます。テレビ視聴は、この右上にございます「自由時間356分」の中に含まれております。これまで、スカパーJSATのメディア事業は、この自由時間の中で少しでも多く「スカパー!」を見てもらうことに努力してまいりました。
これからの生活時間の比率でございますけれども、10年後には、働き方改革やAI・IoT・5Gあるいはロボティクスといったテクノロジーによりまして、かなり変化すると想定されます。いわゆる無償労働や有償労働の部分は減少し、そのぶん学習・ケア、そして自由時間が増加いたします。
従来は、テレビ視聴時間の一部が当社のコンテンツ事業およびプラットフォーム事業としての価値になっておりましたけれども、自由時間が増えることは、我々にとって大きなチャンスだと考えております。
さらに、メディア事業の対象を、生活の中のケア・学習といった増加する時間にも広げていきまして、多チャンネル放送の加入者数が増えにくい今のような環境下においても、利益を出し続ける事業構造に変化させてまいりたいと考えています。
そして、これらの時間で展開する事業を、人々の生活に役立ち、そして人生がより豊かになるという意味で、「LIFE事業」と呼ぶことにいたしました。そして、人々の生活が営まれる過程には、多様なデバイスが使われることになるでしょうけれども、多くの世帯では、テレビが見られる大画面の映像デバイスが存在することになると思います。
さまざまな調査を見ましても、やはり、人が長時間視聴する場合、結局大きな画面できれいな映像が見たいという結果が表れております。メディア事業部門のプラットフォーム事業とコンテンツ事業は、もちろんこのテレビチューナー付きディスプレイを中心に展開してまいります。
私どもスカパーJSATが開発した「スカパー!Hybrid」は、ハイブリッドキャストを使って放送と通信を完全融合したインターフェース。「スカパー!Hybrid」対応のテレビは、今現在、およそ200万台と見られます。この「スカパー!Hybrid」をさらに進化させまして、ディスプレイ上のインターフェースとして、さまざまなパートナーとともにLIFE事業を展開してまいります。
現在、手始めにベネフィット・ワンとの協業によります「スカパー!ベネフィット」、あるいは角川さんとの協業による電子雑誌「スカパー!マガジン」のサービスを開始しておりますけれども、今後多種多様なLIFE事業を、それぞれのパートナーさんとの協業によって拡大してまいります。そのベースとなるのが、現在の「スカパー!」プラットフォームの加入世帯、300万世帯強のお客さまでございます。
そして、LIFE事業は、「スカパー!」のお客さまを皮切りに、加入者以外にも広げてまいります。その際に最も重要なのは、「スカパー!」のロイヤルカスタマーのデータだと思います。お客さまの承諾をいただきながら、顧客データの活用をして、さまざまなLIFE事業が展開される。その結果としまして、顧客満足度は上がり、ロイヤルカスタマーの数は増えてまいります。
プラットフォーム事業、そしてコンテンツ事業とLIFE事業は、互いに正のスパイラルを描きながら、「スカパー!」全体のお客さまを大きく拡大させることで、メディア事業を拡大してまいりたいと考えております。以上、両事業のビジョンの概要をご説明申し上げました。
今後の主なコンテンツ
続いて、今後の具体的な取り組みといたしまして、メディア事業について私からご説明申し上げます。今後の放送予定のコンテンツでございます。
いよいよ(2018年)8月から、欧州サッカーの各国リーグが開幕いたします。「スカパー!」では、先般のワールドカップで活躍した香川・長谷部・大迫選手などの日本代表をはじめ、大変多くの日本人が活躍しているドイツのブンデスリーガを、2019シーズンより2年間独占放送いたします。
また、中島翔哉選手が活躍しているポルトガルリーグ、あるいは久保裕也選手をはじめ多数の日本選手も加わりましたベルギーリーグについても、注目試合を中心に放送してまいります。さらに、これら各国のリーグで活躍する日本人選手が出場した試合のハイライトや、独自取材など、注目選手たちの旬(な話題)を徹底的に伝えるウィークリー番組もスタートさせたいと考えています。
アニメにおきましては、週刊少年ジャンプに連載されました、累計400万部の人気コミックの『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』を、アニマックスさんとオリジナルアニメ化いたします。
音楽ライブは、AAA、東方神起、浜崎あゆみなどが出演します音楽ライブ『a-nation』を、エムオン!さんとともにテレビ独占生中継で放送いたします。来年(2019年)ワールドカップを行いますラグビーにつきましては、「J SPORTS」にて8月31日に開幕のラグビートップリーグの注目試合を放送したいと思っています。
新たな取り組み①
続きまして、メディア事業部門の新たな取り組みといたしまして、3点ご紹介したいと思います。
1つ目は、(2018年)7月12日に発表させていただきました、光回線を使ったテレビサービスによります、新4K8K衛星放送の提供についてでございます。
現在、フレッツ・テレビのサービス提供エリアは26都道府県でございます。全国世帯の約60パーセントとなります3,000万世帯に、BSの左旋を使うNHKの8K放送を含む、新4K8K衛星放送をお届けすることが可能になるものでございます。
当社とNTTの東西さんでは、2018年12月より順次提供を開始しますBS右旋の4K放送に加えまして、来年(2019年)の夏以降になりますけれども、BS110度CSの左旋の4K8K放送を新たに提供いたします。
左旋の放送を見るためには、左旋用のアンテナ、あるいは宅内設備の改修などが必要で、なかなか普及は難しいと言われてまいりましたけども、お手元の資料の29ページをご覧いただきますと、サービス提供のイメージの図が付いております。
これは、BS・CS左旋の4K8K放送を、周波数変換・パススルーによって送りまして、宅内の配線を変えることなく、変換した周波数を専用アダプターを利用いたしまして、テレビの手前でもとの周波数に戻すことで、お手軽に視聴できるようになるものでございます。
新4K8K衛星放送が始まり、テレビ需要の拡大が見込まれる中で、NTT東西さんなどと連携いたしまして、とくに8Kに注力されますNHKさんをはじめ、放送事業者さんとも協力して普及・促進に貢献するとともに、当社サービスの加入基盤の拡大を目指してまいりたいと考えております。
新たな取り組み②・③
2つ目は、(2018年)6月に設立いたしました、株式会社THReee entertainmentについてでございます。
このTHReee社ですけれども、音楽ライブコンテンツに関する企画・制作、および国内・海外向けの放送権・配信権の販売、さらにスポーツや音楽におけますファンコミュニケーションアプリの開発提供など、エンターテインメントの領域におきまして、コンテンツホルダーさんとともに、コンテンツの企画・制作・運用を行うことを目的として設立した会社でございます。
すでに、当社として交渉権を取得したライブといたしましては、先週末に行われました「FUJI ROCK FESTIVAL」や[ALEXANDROS]、SEKAI NO OWARIのライブでございますけれども、今回の出資を契機に、海外配信やアプリ開発を担いますTHReee社との連携によって、新規事業領域への取り組みを強化してまいりたいと考えています。
3点目は(スライドの)右にございます、7月から提供を開始したAmazonプライム会員向けのサービス、「Amazon Prime Videoチャンネル」の「スカパー!アニメセットfor Prime Video」でございます。「スカパー!」の代表的なコンテンツでございますアニメジャンルの中から、特色のある3チャンネルとBSスカパーを加えまして、「Prime Video」のチャンネル向けに新たに編成パッケージした新商品でございます。これによりまして、「スカパー!オンデマンド」に加えて、OTT展開の拡大を目指してまいりたいと考えております。
私からの説明は、以上でございます。宇宙事業の取り組みにつきましては、小山取締役から詳細をご説明申し上げます。
低軌道商用電波観測衛星サービスへの参入
小山公貴氏:それでは今、高田社長から事業ビジョンに関する説明がありましたけれども、その中で宇宙事業部門について、これからの柱に育てたいというスペースインテリジェンス絡みのトピックスについて、私から2点ほどご紹介させていただきます。
1点目は、低軌道商用電波観測衛星サービスへの参入ということで。これは、以前この場でもご紹介させていただいた、私どもの子会社である株式会社衛星ネットワークが、米国のPlanet社と提携して、日本において衛星画像の販売事業を開始するというご説明差し上げました。おかげさまで、2件ほど大口の受注を獲得しまして、今年度から収益に寄与し始めたところなんですが。
それに続きまして、同じくSNET(衛星ネットワーク)が、Planetと同様の、米国の2015年設立のスタートアップのHawkEye360という会社と提携しまして、一部官公庁さんへの独占販売権と、日本における販売代理店契約を締結いたしました。それで、陸海空の地理空間情報提供サービスを行うということです。
具体的には、ここにありますように、高度600キロメートルのところにそれぞれ200キロメートル間隔で、電波観測の小型衛星を3機打ち上げます。この3機1組で「クラスタ」と呼んでいますけれども。
陸海空の移動体、例えば船舶ですとレーダーであったり、他の船舶あるいは陸上との無線通信であったり、あるいは船舶電話であったり、いろいろな電波を発射します。それらの電波をこの3機の衛星で捕捉することによって、電波の発射源の正確な位置の特定と、それからAIを活用しまして、例えば、船舶が発射する固有の電波を解析することによって、「この船舶は、どこの何の船舶だろう」ということを特定すると。こういうサービスであります。
日程的には、今年(2018年)の秋にまず1組目のクラスタ……3機をSpaceXで打ち上げまして、来年(2019年)当初から、お客さまにデモを実施すると。来年の春先くらいからクラスタを順次打ち上げて、2020年には10クラスタ、つまり合計30機ですけれども、この体制を確立する。再訪頻度というのは、1つの場所に返ってくる時間の間隔ですけれども、それを20分とすると。こういう計画であります。
とくに不審船とか、不審な飛行物体の特定に活用できるということで、国内においても、安全保障分野のお客さまには、非常に高い関心を持っていただいていますので、利用はそういうところから始まると思っていますけれども。
いずれ、海運あるいはエアライン、あるいは陸運。こういった民間の物流の関係の会社さんにもお使いいただけるんじゃないか、需要を掘り起こせるんじゃないかということで、今後の展開を期待しているところであります。
総務省研究開発案件の受託
もう1件は、総務省が公募をかけました、「衛星通信における量子暗号技術の研究開発」という案件につきまして、我々もコンソーシアムのメンバーとして受託しましたという件であります。「これを、我々のビジネスにどういうふうに活用できるんだ?」ということで、ちょっと解説をしたいと思いますけれども。
最近、「量子コンピュータ」ということを、よく耳にするかと思いますけれども。量子コンピュータというのは、量子と言われる物質の最小単位のもの、量子が粒子になったり波になったりということで、状況によって性質が変わるという特性を活かして、既存のスーパーコンピュータ等に比べて、はるかに大きな計算能力を所有すると。そういう量子コンピュータが、2020年代の後半には実用化されると言われています。
一方、通信は普通、とくに秘匿性を高めたいお客さまには、必ず暗号化をかけることになります。この暗号化を、今は非常に複雑な暗号化にして送っているものも、例えばこういう量子コンピュータが出現したりすると、破られてしますと。それに対抗するために考えられているのが、この量子暗号技術というものです。これは同じように、量子の環境によって性質が変わるという状況を利用して、例えば暗号を解きにいくと、そのデータそのものが壊れると。
そういうことで、計算技術が進展しても、解読の危険性がないと言われています。この量子暗号鍵の配送については、非常に微弱な光通信を利用するわけですけれども、長距離の通信には光ファイバーよりも、むしろ宇宙空間。すなわち衛星通信が適しているだろうと言われていまして。
実際、中国ではこういう量子暗号のための技術衛星を打ち上げて、昨年(2017年)大規模な実験を行って、成功していまして。こういう量子暗号の衛星のネットワークを作りつつあるということで、世界でもけっこう先進的な取り組みをしています。
日本においても、情報通信研究機構(NICT)が、一部実証試験等はやっているんですが、今回総務省が官民の力を結集しようということで、こういう公募をかけまして、我が社もそのコンソーシアムのメンバーとして参加することになったものです。
研究の課題は、ここにあるように4つございます。1つ目が、超小型衛星に搭載可能な量子暗号通信技術。2つ目が、それに対抗するかたちの地上側の、可搬型の地上局の開発。3つ目が、それらを結ぶ空間の光通信の技術。4つ目が、それのインテグレーションならびに実験。こういう構成になっています。
コンソーシアムのメンバーは、非営利法人であります次世代宇宙システム技術研究組合。これが、プライムコントラクターということです。あと、情報通信研究機構・東京大学・ソニーコンピュータサイエンス研究所、それに私どもスカパーJSATということで、それぞれがその課題を分担して担当していくことになります。当社は、②の可搬型光地上局の開発と、全体のインテグレーションならびに実証実験を担当することになります。
スケジュールとしては、今年度から5ヶ年かけて研究開発をするわけですけれども、当然総務省は、最終的には実用化・事業化を視野に置いていますので、それと並行するかたちで、これも私どもが担当することになりますけれども、潜在顧客へのヒアリングや市場動向調査。これが、前半の3年間です。後半の2年間で、ビジネスモデルの設計までやっていくということになっています。
これも、非常に高い秘匿性を要する方々、すなわち安全保障分野であるとか、あるいは外交分野であるとか、あるいは医療分野であるとか。そういうところに、こういう暗号技術を使った衛星通信をご利用いただけるんじゃないかと考えているところであります。以上の2つが(トピックスの)ご紹介でした。
打ち上げ予定衛星一覧
次は、これから打ち上がる予定の衛星の一覧でありまして。
「Horizons 3e」。これは、Intelsatとの共同衛星で、私どもとしては初めてのHTS衛星となりますけれども。打ち上げ予定が、これも2018年度の下期と申し上げていましたけれども、今のところの現在の予定は9月となっています。
「JC SAT-17」。これはドコモさんに、IRU契約で専用的に提供する衛星ですけれども。
それから、「JC SAT-18」。HTS衛星の2機目となりますけれども。これらの2つの衛星については、2019年度下期ということで、予定の変更はありません。
衛星フリート図
最後は、衛星フリート図ですけれども。これも1点だけ(申し上げると)、今までは18機だったんですけれども、17機に減りました。今年(2018年)の4月に「Superbird-8」を打ち上げまして、それが「Superbird-B3」ということで162°に持っていきまして、この「Superbird-B2」のお客さまの移行がすべて完了したものですから。燃料がなくなって、これをデオービットということで、6月に軌道の外に廃棄した格好になりましたので、合計で17機であります。
私からの説明は、以上でございます。ありがとうございました。