スマホを持っている人が6割もいるのに、12%しか銀行口座を持っていないなんて。そうするとそこには大きなチャンスが存在すると考えるべきなんでしょうね。恐らく通貨そのものが、再定義されるチャンスがあるように思います。
関口和一氏(以下、関口):その通りだと思います。どの国が1番新しい企業を使うのが得意なのかということであれば、例えば電子的な決済に関してはM-Pesaというのがあります。中国ですとテンセントというものが、新しいスキームを使っています。
例えばホームパルというのがありますけれども、こちらも非常に急速に伸びています。こういったレガシーテクノロジーというのが、チャンスを持つかもしれません。ピーターさん、どうですか?
ピーター・ティール氏(以下、ピーター):一部その通りだと思いますけれども、最終的にはやはり、アメリカとかケニア、または日本とか、いろいろな世界中の場所によって違いがあるわけです。ですから、これは課題だと思います。
例えばエストニアですけれども、非常に革新的です。もはやフロンティアと言いますか、技術は最先端を行っています。彼らはとても速いスピードで技術を導入しています。
いろいろなことが関連していると思うので、どういった文脈なのか、オンラインバンキングというのをゼロからスタートするのは難しい。日本、アメリカなどでは、他のこともいろいろできると思います。
決済に関して日本は、タッチベースの支払いにおいてリーダーになることもできたわけです。全てを合わせると数百~数千億ドルの取引というのが、タッチベースで日本で起こっているわけです。ただ、ApplePayのようなものを作ることはできなかった。というのもこれまで非常に内向きで、国内のスペックだけを見ていたからです。
関口:三木谷さん、日本にはどういった問題があるのでしょうか? つまり規制的な政策ですとか、ビジネスの慣行、カスタムとかそういった意味で、どういったところが問題なんですか?
三木谷:非常にこれはセンシティブな問題ですね。規制問題に関しては、これからどうなるかということだと思います。つまり、どこまで今の構造を守るのか? 業界を守るのか? これは将来起こることなのであれば、先を行った方がいいんじゃないかということです。あまりにも保護主義的であると。ですから規制緩和が必要です。
例えば、今の東京証券取引所の取引時間ですけれども、9時から15時ですか? 15時半ですか? しかも昼食時間にはクローズしてしまうということです。他の取引所に行くと基本的に、24時間365日無休なわけです。というあたりで、多くの日本固有の規制というのがあると思います。
ですから私たちは、これから将来何が起こるのかということを検討し、日本は単に新しい技術ですとか、新しいトレンドに追いつくということではなく、先を行くことが必要だと思います。
ピーター:恐らく私にはちょっと、あまりにもネガティブにな偏見があると思います。PayPalでも新しい通貨を作ろうとして失敗したことで、他もできないだろうとネガティブな見方をしてしまいます。
ただ非常に素晴らしい現象、進歩であるというふうに思っています。プロトコルですとか暗号の技術ですとか、コインのシステムの構築に関しては素晴らしいと思います。PayPalは新しい決済のシステムを作りはしましたが、新しい通貨は作れなかった。
ビットコインは新しい通貨を作ったわけですが、新しい決済システムはできなかった。ですからビットコインのこれからの課題というのは、シームレスな形で決済のフローが流れるようにする。より簡単に使えるようにする。日常的なトランザクションができるようにするということだと思います。
いろいろな意見が、いろいろな人によってあるでしょう。コインのプロトコルを使う、またはテクノロジー全体をデザインする。もしそれができれば、恐らくもっと強気になれると思います。
私は何か新しい、全く違うことにトライしたいと考えています。新しい通貨を作ったら、政治的な強い脅威となりうるでしょう。規制当局や政府など、そういったところもかなり注目してくることでしょう。ちょっと私が驚いたのは、規制当局からのビットコインに対しての抵抗が、これまであまりなかったということです。
関口:私が考えているのは、ビジネスのコミュニティがビットコインを受け入れるようになっている。DellとかPayPalもそうですよね? 受け入れると言っています。Expediaもそうです。ちょっと今全部の名前は出ないと思いますが、こういったところは導入するということで、アメリカの規制当局も、これを承認するというふうに言っています。金銭的な本物の資産であると。
ピーター:ですから、これからどれぐらいの支払いのボリュームが、ビットコインを使うか? どれぐらいビットコインが使われていくのか? というところだと思います。過去1年~1年半は、それほど増えていません。
そういったところにちょっと足踏み感がありますね。つまり、多くの人が受け入れているように見えるけれども、まだコンシューマーが使えるところまでは来ていない。決済の額というのが増えていないということです。
三木谷:インターネットは、グローバルなネットワークです。非常に大きな、国境を越えたトランザクションが起こっているわけです。まだまだ何らかの、プライベートなグローバル通貨が出てくる余裕というのはあるわけです。
1番可能性の高いチャンスというのが、ビットコインです。ただビットコインには、いくつか問題もあります。私の予想としては、ビットコインでなくてもこういったグローバル通貨の大きなチャンスはあると思います。
例えば中国のサイトから製品を買う。そういった場合には、中国の為替を計算しなければならない。そしてそれが、あまりスプレッドの高くない形で支払わなければいけないということがあります。ですので、このプライベートなグローバル通貨には、大きな余地があると思っています。もちろん1番可能性が高いのは、ビットコインだと思いますが。
三木谷:考えてはいます。恐らく使うでしょうね。
関口:それはいつですか?
三木谷:それは企業秘密です。ちょっと複雑なんです。でも使うようになると思いますよ。ただパーセンテージとしては、やはり小さいパーセンテージに留まると思います。
我々がそれを実施するのには、そんなにコストもかからないと思うんです。ですからあらゆる決済のプラットフォームを受け入れたいと思います。PayPalも、ビットコインも。そういった決済の手段を選ばないようなプラットフォームになりたいと思います。
関口:そうなっていくと規制政策との連携や、お客様との連携も必要だと思うんですけれども、どんな障壁が考えられますか?
三木谷:わかりませんね。障壁があるかどうかはわかりません。それも難しいところです。例えば政府は、なるべく曖昧にしようとしています。理解していないのか、あまりにも厳しい規制を敷きたくないのか。あるいはあとになってから恥をかくことを避けたいのか。
いずれにしましても私が把握している限りでは、楽天にビットコインを導入する明示的な規制の障壁はないと思います。