logmi Finance
株式会社INPEX(1605)

東証プライム

鉱業

INPEX Investor Day 2026

杉本晶子氏(以下、杉本):本日最後のプログラム「コーポレートガバナンス 社外取締役との対話」です。前半ではINPEXのマネジメントより、外部環境分析、事業進捗、投資戦略、キャッシュアロケーションについてお話をうかがいました。

ここからは、そうした成長戦略や資本配分を取締役会がどのように監督し、企業価値向上につなげているのかについて、社外取締役のみなさまの視点からおうかがいします。社外取締役の飯尾紀直さま、齋木尚子さま、高岡英則さまをお迎えしています。

前半は私との対話形式で進め、後半はご参加のみなさまからのご質問をお受けします。限られた時間ですが、どうぞよろしくお願いします。それでは、さっそく始めたいと思います。

最初の質問です。ご自身の経験を踏まえ、INPEXの持続的な成長と企業価値の向上に向けて、どのような役割を果たしていきたいとお考えでしょうか? また、ご自身ならではの知見や強みについてもお聞かせください。それでは、まず飯尾さまからお願いします。

飯尾社外取締役のご紹介

飯尾紀直氏(以下、飯尾):株式会社INPEX 社外取締役の飯尾です。

私がINPEXに入ってから10年を迎えます。この間、取締役会のガバナンスの様相が一変しました。私自身もエネルギー分野の出身ですが、10年前は同じ分野の方々がほとんど社外取締役を務めていました。

現在では、社外取締役としてエネルギー分野出身なのは私と高岡さんぐらいです。当時は、同じ分野の人々が集まることで、どうしても画一的で同調的な路線になりがちでした。一方、現在では活発な議論が取締役会で行われており、その頃と比べて格段の差があると感じています。

やはり、多様な意見が出ることは会社にとって非常に重要であり、それが正しい方向性に近づく原動力となり、この会社を導いていく力になるのではないかと思います。

活発な議論は、業績に直接結びつくものではありません。ただし、INPEXにおいて重要なのは、優良案件を確保し、それを積み重ねていくことだと思います。

そのような中、E&P(石油ガスの開発投資)には落とし穴が存在します。私が10年間在籍している間にも、過去に投資された案件で減損が発生したケースがいくつかあり、それらはある程度の金額にのぼると考えています。

私自身、三井物産のエネルギー部門に在籍していた現役時代に、E&Pの落とし穴にはまった苦い経験をしたことがあります。したがって、このような落とし穴にはさまざまな要因がありますが、できる限りそれを回避していきたいと考えています。

私自身の過去の経験を踏まえ、例えば「ちょっと臭うぞ」という案件では、取締役のみなさまが賛同された中で、私1人が反対した事例もありました。私の経験に基づき、感覚的な話ですが、なにかしらの「危うさ」を感じることがありました。

ポジティブな面のみでなく、マイナス面を減らすために、これからも投資案件に対して注視していきたいと思っています。

杉本:エネルギー業界以外の方々も多様性の観点からメンバーにいらっしゃるとうかがっています。外国籍のブルース・ミラーさんという社外取締役もいらっしゃいますが、実際、10年前と比べて議論が活発化し、また反対意見が出ることも増えているのでしょうか?

飯尾:おっしゃるとおりです。多様なバックグラウンドを持つメンバーがいることもあり、非常に議論が活発です。

例えば、オーストラリアご出身のミラーさんは非常に豊富な経験をお持ちですし、齋木さん、さらに環境省の事務次官を務められた森本さんなど、幅広い分野の知見を持つ方々が加わることで、意見交換がより深まっています。

多様な方々が加わることにはもちろん賛成です。ただ、このINPEXという会社は、やはりE&Pが基本の会社ですので、E&Pの経験者も一定数加えておいたほうがよいと思います。新しい投資案件では、さまざまな失敗を糧にする経験が活きるためです。

こうした点を踏まえて、今後の構成を考えていただければと思います。

齋木社外取締役のご紹介

杉本:次に齋木さん、お願いします。本年から取締役会のメンバーとして加わられたということで、これまでのご感想はいかがでしょうか?

齋木尚子氏(以下、齋木):ただいまご紹介に預かりました齋木尚子と申します。本年3月の株主総会で社外取締役に選任されました。どうぞよろしくお願いします。

当社の持続的成長と企業価値の向上になんらかの貢献ができるとすれば、3点あると考えています。1つ目は専門性、2つ目は客観性、3つ目は先ほど飯尾さんからもお話があった多様性です。

まず専門性について、私は約40年間外務省に勤務し、現在も参与を務めています。これまでに外交の最前線で交渉に携わるとともに、国際法や経済、文化、安全保障など、さまざまな分野における外交政策の企画、立案、実施を経験してきました。

そのような中で培われた専門性や経験、知識、人脈を十分に活かしながら、INPEXの経営に対してしっかりと提言を行っていきたいと考えています。

例えば、今年4月に社外役員の方々が座談会を実施され、その際のファシリテーターは滝本副社長であったと記憶しています。

その対談の内容は統合報告書にも記載されています。その中で、滝本副社長からは、私について海外事業におけるリスクマネジメントや資源外交、国際関係構築の取り組みなどについて意見を求めたいとの期待を寄せていただきました。まさにこうした専門的な見地から、しっかりと貢献していきたいと考えています。

加えて、私は外務省で長年にわたり人材の育成・活用に関する業務を担当してきました。そのため、この分野においても積極的な提言を行いたいと考えています。

次に、客観性についてです。これについては飯尾さんも触れられましたが、私自身は必ずしもエネルギー分野に深く関わった経験はありません。また、行政組織におけるマネジメント経験を除けば、企業経営に直接執行部として関わったこともありません。

しかしながら、だからこそ新鮮で新たな気づきを提供できるのではないかと考えています。すなわち、社内やエネルギー業界の常識に必ずしも精通していないからこそ、独立した客観的な立場から意見を述べ、経営の監督を行うことも役割の1つになるのではないかと思います。

さらに、この観点に立つと、リスクマネジメントやコンプライアンスの分野においては社外の視点が非常に重要であると考えています。そのため、これらの点でもしっかりと役割を果たしたいと思います。

次に、多様性について、INPEXのコーポレートガバナンスに関する基本方針では、知識や経験、能力のバランスを取りながら、ジェンダーや国際性、文化的背景などの多様性が重要であるとしています。

また、特に女性取締役の比率について、2030年までに30パーセントを目標に掲げていることが明記されています。私自身、たまたま女性ですが、幸いこれまで女性であることで差別された経験はありません。

しかし、女性であることは確かですので、その視点から見た多様性という意味で議論の活性化に貢献していきたいと考えています。また、女性ならではの強みを活かして尽力していきたいと思います。

特に多様性において重要なのは、先ほど飯尾さんが触れられた「活発な議論をして多様性が保たれたからといって、業績が上がるわけでは必ずしもない」という趣旨の発言にも共感する部分がありました。

多様性は組織の強靭性を高め、議論の質を向上させるものです。このような観点から、多様性を通じてINPEXのよりレジリエントな企業体質の構築や、質の高い意思決定に寄与していきたいと考えています。

杉本:齋木さんは他の会社の社外取締役も兼務されていますが、INPEXに参加されて驚いたことや、雰囲気について、あるいは議論の中で「なにか違うな」と感じたことはありますか?

齋木:「違うな」と感じるところは特にありません。外部から拝見していてもINPEXはすばらしい会社だと思っていましたが、実際に取締役会に参加する中で、「やっぱり良い会社だな」と感じることがあります。

また、日々進化し、変化しておられると感じる点もあります。例えば、取締役会前に大変丁寧な事前説明会が開かれます。また、iPadを貸与していただき、今年3月に社外取締役に選任される前の取締役会やその他の資料を含め、すべて拝見できるようになっています。

そのような体制の中で日々勉強を重ね、大変しっかりとしたサポートをいただいています。

さらに、外国籍の方もおられますし、監査役は5名いらっしゃいます。そのため、取締役と監査役を合わせた15名のうち、社外役員が過半数を占めており、女性は私のほかに社外監査役としてもう一方いらっしゃいます。

そのような状況の中で、非常に良い雰囲気で活発な議論が行われていると認識しています。

高岡社外取締役のご紹介

杉本:そして、高岡さんも今年からメンバーに加わられたということですが、ここまでいかがでしょうか?

高岡英則氏(以下、高岡):高岡と申します。私は三菱商事出身ですが、現在も三菱商事の顧問と、三菱金曜会という組織の事務局長を務めています。

先ほどの議論を拝聴し、三菱商事も数年前まではPBRが非常に低く、「本当はもっと良い会社なんだ」として十分にアピールしていましたが、なかなか苦労していました。

私は会社内でLNGや石油を担当していましたが、三菱商事では多岐にわたる事業が展開されているため、経営資源の奪い合いが生じることもありました。

その中で、トップマネジメントやステークホルダーに対して「LNGはすばらしい」と訴え続けましたが、なかなかご理解いただけず、大変苦労した経験を思い出しました。そのため、まるでデジャヴを経験しているような感覚を覚えました。

私が貢献できるとすれば、まずエネルギー業界に40年近く携わってきたことから、業界人として一定の知見があると考えています。

また、現在は三菱金曜会の役員として公益財団をはじめ15の団体で役員を務めており、さらに三菱商事の全社投資や融資を司る投資委員会では、委員長を含めて4年間委員を務めました。

三菱商事のエネルギー事業グループのトップや北米のトップとして事業会社の経営を束ねてきた経験を活かし、数多くの投資案件、事業、経営に携わってきました。こうした経験を通じて、なにかお役に立てることがあるのではないかと思っています。

経営資源を適切に配分していくことが重要

杉本:では、続いての質問です。INPEXが株式市場からより高い評価を得るために、社外取締役の立場から見て、何が最も改善すべき点だとお考えでしょうか? 成長期待、資本効率、株主還元、情報発信など、いずれの観点でもけっこうです。それでは、高岡さんからお願いします。

高岡:先ほどの議論をお聞きしており非常に難しいとは思いますが、社外役員として、あまり執行に寄り添いすぎることがないようにしつつ、良いものは良いと評価し、INPEXのすばらしい点をさらに客観的な視点でみなさまに訴えることで貢献できないかと考えています。

これだけ国益や公益に寄り添い、安定供給を担いながら分厚いキャッシュフローを生む会社は、それほど多くありません。また、LNGという一言で簡潔に表現されますが、三菱商事がアラスカからカナダまで広範に展開してきた歴史を考えても、これはすばらしい産業です。

さらに、LNG分野で、日本で唯一の大規模プロジェクトのオペレーターを務める企業でもあります。私は、これからますますガスやLNG分野には大きな成長の余地があると考えています。

そうした中で、日本唯一のオペレーターシップを担い、上流から中流、下流まで一貫して対応できるINPEXという企業には、果たすべき使命や役割がまだ多く残されていると感じます。

この点をしっかりとPRし、より客観的かつ説得力のある議論を構築して外部に示していくことで、なんらかの貢献を果たしたいと考えています。

もう1点として、ご承知のとおり、当社は化石燃料企業であり、油価、為替動向、ホストカントリーの規制などによって非常にボラティリティが高くなる傾向があります。

この点について、みなさまから「いかがなものか」などさまざまなご意見があるかと思いますが、それらを踏まえた上で2035年のビジョンを明示しています。そこに至るプロセスや、中期経営計画の後、2035年までにどのような道のりやプロセスを踏むのかを、さらに明確にしていきたいと思います。

また、私自身、イクシスのバックフィルや拡張、アバディに対して大変期待を寄せています。ただし、実行することが前提という考え方は絶対に容認できません。そのため、これを実行するかどうかの判断に至るまで、慎重な議論を行い、みなさまと意見を交わしながら進めていきます。

場合によっては、中止やダイリューション、さらにはパートナーを迎えるといった選択肢も視野に入れ、成長の糧と位置付けた柱となる案件について議論を深めていきたいと思います。

杉本:あえて課題や注文があるとすれば、どのような点でしょうか?

高岡:課題は尽きません。私はアメリカにいた際、たまたまバイデン政権の誕生により、非常に苦労しました。本社では、サハリンの撤退を議論する事態にもなりました。

また、昨日まで「LNGはクリーン」と呼ばれていたものが、突然「ダーティー」に変わるなど、そのような波による大変な状況も経験しました。あれから、わずか4年から5年しか経っていませんが、今やLNGは大賛辞を受けています。エネルギー分野では、このような変化が起こります。

釈迦に説法かもしれませんが、もともと石炭系だったものが石油系へ、さらにガス系となり、そして再生可能エネルギーへという流れがあります。

三菱商事についても、例えば東京ガスさまとの関係では、もともとは炭素系のコークスガスからスタートし、次に原油、ガス、ナフサガス、LPG、LNGと推移し、現在に至っています。

30年や50年という長期的なスパンで見ると、大きな波が訪れます。この波を捉えつつ、その中で発生する短期的な振動や変動にどう向き合うかは非常に難しい課題です。

そのため、長期的な視野と短期的な動向を見極めながら、経営資源を適切に配分していくことが重要であり、非常に難しい部分でもあります。そこに対して、解がまだ見つかっていない状況ですが、チームINPEX全員で解を目指していきたいと思います。

杉本:齋木さま、いかがでしょうか?

齋木:1つということでしたので、1つ申し上げます。組織にとって最重要課題は、人材の育成と活用だと思います。その意味で、当社は非常にしっかりと人材を採用し、育成し、活用していると思います。

例えば、どう捉えるべきか意見が分かれるかもしれませんが、人によっては当社INPEXをスーパーホワイト企業だと評価しています。もしかすると、その評価は少し緩いという意味を含むのかもしれません。

しかし、いずれにしても人的資本経営を推進するためには、どのような仕組みや制度を作るべきかが重要です。どう強化し、どう運営するかが極めて重要であることは言うまでもありませんが、併せて重要なのは、社員一人ひとりの意識改革だと思います。

そのような意味で、常に考えるのは、企業文化の重要性です。企業文化について言えば、INPEXには経営理念があり、サステナビリティ憲章があり、「INPEXバリュー」も定められています。

また、この間「INPEX Vision 2035」を発表し、ブランドメッセージやブランドステートメントを定義し、これを明文化し、共有しようと努力されている点を高く評価します。

さらに、このように明文化された企業文化を、一人ひとりの従業員に浸透させるため、さまざまな努力を尽くされていると認識しています。ただ、私が思うのは、一度ブランドメッセージを出し、これが「INPEXバリュー」だと決めたからといって、その現状に甘んじていてはいけないということです。

企業文化は常に磨き上げ、意識的かつ能動的によりよい企業文化をみんなで作り上げることが大切です。その結果として、社員一人ひとりに広く共有され、深く浸透することが求められます。

そのような意味で、私は「INPEXはすばらしいものをいろいろ作っています」と述べました。ブランドメッセージとして掲げる「地球の力で未来へ挑む」の「未来へ挑む」も、非常にすばらしい考え方だと思います。

ただ、私が理解した範囲では、まだ半年間ですが、いろいろとすばらしい理念を掲げ、価値観の共有に努めていますが、「挑む」というのは、ブランドメッセージには含まれているものの、INPEXがハイリスク・ハイリターンの業務を遂行し、非常に長期間にわたるプロジェクトを展開していることを考えると、企業文化として「粘り強さ」と「挑戦」をもっと意識的に磨き上げるべきではないかと思います。

これは、多くのステートメントや統合報告書を読むとその必要性が感じられます。意識的に磨き上げたい企業文化という観点から考えると、今後、経営トップや一人ひとりの社員、さらには4割を占める海外の従業員とも対話を重ね、私の考える「粘り強さ」と「挑戦」が企業文化の中にしっかりと根づいていることを確認し、共有していきたいという課題感を持っています。

杉本:飯尾さま、いかがでしょうか?

飯尾:言いにくいのですが、やはりE&Pはニッチな業界です。そのため、株価の話にも関係してきます。

例えば、世界の石油メジャー企業や日本で言うとENEOSは、上流と下流の両方を持っています。INPEXの場合は、上流部門に特化した企業であるため、現在、世間に向けて一生懸命PRやさまざまな宣伝活動を行っています。

しかし、例えばビール会社や自動車メーカーと比較すると、「INPEXは何してる?」というCMにあるとおりです。このような特徴を持つ企業であるため、ある程度仕方のない面もありますが、本日IRをご視聴いただいたみなさまには、ぜひINPEXを広める活動にご協力いただきたいと思います。

上流部門に限定された企業は、テレビ広告だけでは広く浸透しにくいという現状がありますので、みなさまのお力添えが重要と考えています。自分でも取り組んでいてそのように思いました。

もう1つ付け加えると、齋木さんもおっしゃっていた人材育成についてです。INPEXは現在、宝物とも言える資産を持っています。

具体的には、イクシスというオペレーションを日本で初めて行っています。LNGの1,000万トン弱のオペレーションをINPEXの社員が実施しており、今度のアバディというプロジェクトには、この社員たちを投入する予定です。

これは大変な財産で、「人が仕事を作り、仕事が人を作る」にも表現されていますが、まさにそのような良い循環がINPEXの中で起こっており、人材育成に非常に力を注いでいます。

そのような意味では、今日は数字の話も多く出ていますが、みなさまが納得された上で、INPEXの本当に優れている点を持ち帰っていただければと思います。

質疑応答:取締役会議長が社内取締役の場合の社外取締役の独立性確保について

質問者:取締役会の体制と執行側の監督についてです。御社では、上田さまが取締役会議長を務めていますが、最近では、一般的に取締役会において議長を社

ここから先は会員登録(無料)で
お読みいただけます

または

※利用開始をもって利用規約とプライバシーポリシーに同意したとみなします。

会員登録がお済みの方はログインしてください

facebookxhatenaBookmark