2026年9月期第2四半期決算説明
PRISM BioLab、新薬候補の探索を加速 独自技術を応用し創薬標的を拡大してヒット化合物創出を推進
企業理念

竹原大氏(以下、竹原):本日は株式会社PRISM BioLabの2026年第2四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。代表取締役の竹原です。資料を使いながら当社についてご説明します。
まずは企業理念です。当社独自の創薬プラットフォームである「PepMetics」技術を活用して新薬を創り出し、誰もが希望に満ちた生活ができるようにすることを目指しています。
そのためのミッションとして、自由な発想と積み重ねた技術で「あたらしい創薬」に挑戦します。従来、創薬が難しかった標的に対して「あたらしい創薬」を目指しています。
また、ビジョンとして「あたらしい研究」を掲げ、世界のトップレベルの研究者が集まり、「あたらしい研究」にチャレンジできる舞台を作ります。さらに、彼らの才能を最大限に活かせるような組織作りを目指しています。
2026年9月期 中間会計期間 ハイライト

中間期のハイライトとして、共同研究の進捗についてご説明します。小野薬品工業とのプロジェクトでは、昨年11月に初回のマイルストンを達成し、一時金および共同研究費を受領しました。
このプロジェクトは、当社のサイエンティストと小野薬品工業のみなさまが共同チームを組み、邁進しています。難易度の高いターゲットではありますが、関係者のみなさまの努力によって着実に進捗が見られることに感謝しています。
また、秘密保持のため具体的な内容はお話しできませんが、中間期において、他のパートナー企業との間でも新しいプロジェクトを立ち上げています。現在「ヒット化合物探索」ステージで活動を進めています。
一方で、この上半期中に2件の契約が終了しました。前四半期にもご報告しましたが、フランスの製薬会社であるLES LABORATOIRES SERVIERとの契約が10月2日に終了しています。
また、Boehringer Ingelheim International GmbHとは2020年から契約を結び、さまざまな取り組みを進めてきましたが、本日5月18日をもって終了します。
2026年9月期 中間会計期間 ハイライト

一方、当社のプラットフォーム基盤である化合物空間を確保するために、知財を継続的に出願しています。この上半期には、日本で2つの新しい特許が成立しました。
昨年6月に日本で初めて成立した特許が、このたびアメリカでも特許として成立しました。当社では「骨格特許」と呼んでいる、基本的な化合物を抑えるための特許について、日米欧できちんと整備していくことを目標にしています。
2026年9月期 中間会計期間 ハイライト

今期から中心的に進めている、PPI創薬をさらに加速するための施策として、2つの柱を掲げています。「ヒット創出プログラム」と「創薬バイオテックとの共同開発」については、後ほど詳しくご説明します。
2026年9月期 中間会計期間 損益状況

業績について、概要をご説明します。2026年9月期の中間の売上高は2億5,300万円で、前期に比べて微増となりました。
一方、研究開発がさらに加速しており、研究開発費の増加に伴い、営業損失は5億8,400万円で若干増加しました。最終的に、上半期の損失は6億円となっています。
2026年9月期 中間会計期間 財政状況

現預金は期首に29億円ありましたが、現在は24億5,400万円となっています。
2026年9月期 中間会計期間 キャッシュフロー状況

純損失が6億円に対して、営業活動によるキャッシュ・フローは4億6,000万円です。
投資活動によるキャッシュ・フローは15億円となっていますが、現預金の一部を6ヶ月以上の定期預金にすると、キャッシュ・フロー上は投資活動に含まれます。したがって、この15億円は現預金と同様の定期預金と考えていただければと思います。
期首の現金及び現金同等物の中間期末残高は29億円でしたが、中間会計期間では9億5,000万円となっています。実際には15億円を含めた24億5,000万円が現在の預金残高となります。
PepMeticsがあたらしい創薬領域を創る可能性

冒頭に言及した「PepMetics」技術について、あらためてご説明します。これは、我々が独自に開発した創薬プラットフォームで、新しい創薬領域を生み出す大きな可能性を秘めています。
これを3つのステップでご説明します。まず、我々が主な標的としているタンパク質間相互作用(PPI: Protein-Protein Interaction)は、以前から認識されていながらも、非常に困難とされている有望な創薬標的です。
PPIにおいて重要な役割を担うのがヘリックス構造です。このヘリックス構造はタンパク質の一部の構造で、非常に重要な役割を果たします。従来、ヘリックス構造を低分子で模倣することは難しいとされていましたが、当社の基盤技術「PepMetics」を用いることで、ヘリックス構造を高い精度で模倣することが可能となりました。
これにより、従来模倣できなかったヘリックス構造の模倣を実現し、PPIを制御してあらたな創薬領域の創出を目指しています。
タンパク質間相互作用(以下「PPI」)は有望な創薬標的

まず、PPIの重要性についてです。人間の体は基本的にタンパク質が、筋肉など体を構成する部分だけでなく、体内でさまざまな信号を伝える役割を担っています。
左の図では、細胞膜の外から信号が入ると新しいタンパク質が生成される場合について示しています。リガンドタンパク質という信号を伝達するタンパク質が、受容体タンパク質に結合することから始まります。
受容体タンパク質が酵素タンパク質やシグナル伝達タンパク質と結合することでシグナルを伝達し、DNAからmRNAを読み起こすための転写コンプレックスを形成します。この際も複数のタンパク質がうまく組み合わさることで、機械的にmRNAを読み出します。
また、mRNAからタンパク質を生成する「翻訳」という機構では、この過程でも複数のタンパク質が適切に結合し、機械的に進行します。
これらのタンパク質は、それぞれが選択性を持ちながら必要に応じて結合することで、体の調節機能を果たします。人間の体が成長したり、恒常性を維持したり、疾患と闘う際に、多様なPPIが関与していることが知られています。
さまざまなタンパク質が異常な状態になると疾患が発生します。それを元の状態に戻すことで疾患を治療することが、PPIの制御による創薬につながります。
PPIで重要な役割を担うヘリックス構造

PPIを制御する際に最も重要なものがヘリックス構造です。タンパク質は数百から数万のアミノ酸が1本の長い紐状になって構成されています。このタンパク質が先ほど述べたような機械仕掛けのように働くためには、正確に一定の形に折りたたまれる必要があります。
正確に折りたたまれることを確保するために、アミノ酸のタンパク質は3つのシンプルな安定した構造を持っています。それはヘリックス構造、シート構造、ターン構造です。これらが組み合わさり、1つの形を形成します。このようにして安定した構造を作り出すことができます。
この3つの構造の中で、PPIの結合界面において最も重要なのはヘリックス構造です。約6割のPPIでヘリックスが重要な役割を果たしていることが知られています。
当社のプラットフォーム基盤技術「PepMeticsテクノロジー」

ヘリックス構造を模倣することでPPIを制御するのですが、ヘリックスはその名のとおり螺旋状の構造を持ち、4つほどのアミノ酸で一周します。この構造を模倣するためには、アミノ酸置換基の側鎖が360度さまざまな方向に向いている立体的な構造を作る必要があります。
ところが、従来の低分子は基本的には平面的な構造を有しており、立体構造を模倣するのは苦手だとされています。
そこで、当社は独自の「骨格」を用い、2つの環が一定の角度で比較的固く結合することによって、3次元的な構造を形成する「骨格」を約40個ほど開発しています。また、天然あるいは非天然のアミノ酸を自由に結合することが可能な合成ルートを開発し、「骨格」において多様な「側鎖」の組み合わせを生成できるようにしました。これが「PepMetics」技術の基本的な構造です。
これにより、従来は困難とされていたヘリックス構造の模倣が可能となり、PPIを制御することができるようになります。
「細胞内」PPIをターゲットとする創薬の課題

従来、PPIは低分子での制御が難しく、バイオ医薬品ではタンパク質や抗体といった大きな分子が用いられています。
これは、細胞の外を制御することには適していますが、大きすぎて細胞内に入ることができません。細胞内では、先ほどご説明したように、さまざまなPPIが作用して人間を維持していますが、それを制御するためのツールがこれまでなかなか存在しませんでした。それに対して、当社では制御が可能です。
右図のグレー部分は、比較的大きなポケットを示しています。これは従来の低分子では制御が難しいとされていた大きなポケットです。ここにヘリックス構造がすっぽりと入ります。その一部を模倣することで、大きなポケットでも低分子で制御することが可能です。
細胞内PPIに対する他モダリティとの比較優位性

従来の低分子は細胞内には入れますが、PPIを制御することはできません。一方で、PPIを制御できる抗体や大きな化合物やペプチドについては、細胞内にはなかなか侵入できないという問題がありました。
当社の化合物は細胞内に侵入し、PPIを制御すると同時に高い選択性を発揮しながら、経口剤としての実用化を可能にする新しい創薬を実現しています。
PPI創薬を加速する2つの戦略

期首にご説明したPPIを加速するための2つの戦略について、この上半期での進捗をご報告します。
まず、ヒット創出プログラムです。スライドに記載の「HTS(ハイ・スループット・スクリーニング)」とは、ライブラリ化合物の活性を自社内でスクリーニングする技術を指しますが、この技術を昨年までに社内で確立しました。これにより、さまざまな標的に対して迅速に評価ができるようになりました。
この技術を活用し、年間10件のHTSを実施して、さまざまなヒット創出を行っています。年間10件という数は創薬の世界では非常に高水準であり、大手製薬企業でなければこれほど多くを実施する例はなかなかないかもしれません。
多くのスクリーニングを行うことで、ヒット化合物を基に自社での検証を進め、また共同研究も推進していこうとしています。
ヒット創出プログラムの進捗

創薬のプロセスは、まず標的を決定し、それに対して初期の作用を持つヒット化合物を見つけます。そして、ヒット化合物を改良してより強い活性を持つリード化合物を作製し、さらに人の体に十分効くものにして臨床候補化合物を創り出します。この工程はリード最適化と呼ばれます。
我々のプラットフォームが最も得意とし、他社にはできないことに取り組んでいるのは「ヒット化合物探索」の段階です。自社でHTSが可能になり、今年度からここに力を入れて、多くの成果を創出していく予定です。それによって、自社パイプラインの拡充もそうですし、ライセンス機会の増加も目指しています。
目標は10プログラムですが、昨年下半期末にスタートした2つのプログラムと、今年度に入ってから開始した4つのプログラムを加え、合計6個のプログラムを開始しています。
合計6個の中で、すでに2つのヒット化合物を取得しました。1つは中止しましたが、残りの3つについても初期のヒットが確認されています。現在それを確認する作業を進めており、比較的想定よりも高いヒット率で推移しているのが現状です。
数だけでなく、標的探索の段階で新しい試みにも着手しています。あらたな創薬コンセプトに基づき標的を選定し、従来のPPI創薬に加え、すでに確立された大きな市場においてあらたな市場を創出することを目指しています。
PepMeticsによる「あたらしい創薬標的群」への展開

「PepMetics」によるPPI創薬は、将来的に非常に大きな可能性を秘めており、他社がこれまで実現することが難しかった困難なものとされています。
一方、短期的には新しい創薬分野であるため、さまざまな壁に直面します。この分野は非常に難易度が高く、開発には比較的長い時間がかかります。そのため、パートナー企業においては、PPI創薬に対して慎重な姿勢のところも多い状況です。
従来のPPI創薬に加えて、すでに巨大市場を持ち、既存の創薬標的として知られているものとして、キナーゼや膜タンパク質があります。スライド下部の表に記載されているとおり、キナーゼでは70以上の薬剤、膜タンパク質では700以上の薬剤が承認され、大きな市場を形成しています。
これらは大成功を収めていますが、その中にもいまだに解決が難しい課題が残っています。この困難な課題を解決することで、既存の大きな市場の中であらたな市場を創出することを目指しています。
あらたな展開:PPIを標的にする次世代キナーゼ阻害剤

まず注目しているのがキナーゼ阻害剤です。これは非常に大きな市場であり、先ほどもお伝えしたように70以上の品目が承認されており、8兆円規模の市場になると予測されています。しかしながら、さまざまな未解決課題が存在しています。
キナーゼは、対象のリガンドタンパク質をリン酸化する酵素です。ATPという細胞内のエネルギー源となる低分子を用いた反応を行います。
3つのリン酸を持つATPのうち1つをタンパク質に結合させる役割を担う酵素がキナーゼと呼ばれるものです。キナーゼは必ずATPが結合するポケットを備えており、リガンドと結合してリン酸を付加します。
つまり、すべてのキナーゼ阻害剤は、同じ化合物であるATPが結合するためのポケットを持っています。このポケットを標的とすることで、従来の低分子化合物でも十分に対応が可能です。そのためキナーゼ阻害剤は、ATPポケットをターゲットとして、低分子を利用した分子標的薬として非常に活発に開発が進められてきました。
課題として挙げられるのが、選択性の低さです。同じATPが入るポケットにおいて、キナーゼごとにわずかな違いがあるもののほぼ同じ構造を持つため、100パーセントの選択性を実現することは難しいです。その結果、他のキナーゼにも作用してしまい、副作用が生じるという課題があります。
さらに、ATPのポケットは比較的変異が起きやすく、多少の変異が生じてもATPは結合するのですが、特別に微細な部分を設計した化合物では、わずかな変異でも効果が失われることがあります。このため、薬剤耐性が発生するという課題も知られています。
我々はATPポケットではなく「キナーゼを動かすスイッチ部分」を標的とします。特に今回注目したのは、CDKと称される種類のキナーゼです。これは「サイクリン依存性キナーゼ」と呼ばれるもので、サイクリンと呼ばれる別のタンパク質がキナーゼタンパク質に結合することでその役割を果たします。
つまり、サイクリンとキナーゼのPPIがあって初めてキナーゼとしての役割を果たす仕組みとなっています。そのため、ATPポケットではなく、CDKとサイクリンの結合部分を阻害することで、キナーゼの機能を働かなくさせることが可能です。
この結合部分の組み合わせはそれほど多くはないので、高い選択性を得ることができます。また、この箇所はATPポケットより変異が起こりにくいため、薬剤耐性の回避も期待できる新しい作用機序と言えます。
先ほどお話ししたとおり、2つのヒット化合物をすでに発見しています。これらの化合物にはキナーゼ阻害活性があるものの、ATPと競合することはありません。すなわち、ATPポケットに入るのとは異なる手法でキナーゼを阻害しています。さらに、2つのCDKに対して完全に異なるヒット化合物が見つかっており、選択性が十分に確認されています。
プログラムの進捗:自社開発(期首設定目標と進捗状況)

このような試みを通じて、今期は10個のスクリーニングを実施し、新しいヒット化合物の創出を目指しています。上半期に1つ、4月以降にもう1つが創出され、計2つとなっています。これを推進しています。
創薬バイオテックと共同開発

もう1つの取り組みである創薬バイオテックとの共同開発についてです。すでにリリースしていますが、この上半期において「Talus Bio」および「Receptor.AI」と提携を行いました。
Talus Bioは、転写因子およびPPI標的に対する新しい標的と阻害剤を一緒に探索できるプラットフォームを有する企業です。
彼らはプロテオミクスを基盤にPPIの標的を発見します。ただし、彼らもそれを制御する化合物を見つけることは難しいので、当社の化合物と彼らの技術を組み合わせることで、新しい標的に対する新しいヒット化合物を創出していこうという試みを始めています。
また、Receptor.AIはその名のとおり、受容体とAIを組み合わせて、AIを活用して受容体に対するヒットを生成し、さらに設計していくことを強みとしています。
Receptor.AIは、膜タンパク質などの受容体に対して、抗体やペプチドを用いたAI創薬を行っていました。これを低分子にも応用することが可能ですが、なかなかそれに近い低分子が少ないという中で、当社の低分子と彼らのAI技術を組み合わせることで、新しいヒット化合物を創出する試みを始めています。
PPI創薬コンソーシアム構想を始動

PPIという新しい創薬分野には極めて困難が伴います。当社は低分子において1つの差別化できる技術を有していますが、それだけでは不十分であり、スクリーニングやAIなどのさまざまな分野で新しい創薬を進める必要があります。
これをグローバルに視野を広げ、先進的に取り組んでいる企業や機関と組み合わせることで、創薬プロセスをさらに促進していきます。その一環として、PPI創薬コンソーシアムを今期の初めに構想として立ち上げました。
今回は2つ、Talus BioとReceptor.AIですでに活動を開始しています。他にもいくつか共同研究を検討中です。このような新しい創薬において、当社が中心的な役割を果たしていきたいと考えています。
PPI創薬を推進するビジネスモデル

進捗中のパイプラインについてご説明します。その前に、ビジネスモデルについてもご説明します。
当社は新しい創薬を創り出す基盤を有しており、それを活用した2つの事業モデルを展開しています。
1つ目は自社開発事業です。自らヒット化合物を発見し、臨床候補まで開発し、ライセンスするところから始まりました。新しい技術であるため、きっちりと薬を創れることを世の中に示すために、実績を重ねてきました。この事業でライセンスアウトを経て、現在2つのプログラムが進行しています。
このプロセスには3年から5年という長い期間と多額の費用が必要です。そのため、当時、自分たちでバイオロジーを持っていなかったこともあり、製薬会社とのコラボレーションを始めました。製薬会社が持つ創薬標的でヒットが見つからなかった領域に対し、当社の技術でヒット化合物を創出し、それを基にした共同開発事業を、2020年頃から開始しています。
初めから共同研究費をいただきながら進められるため、プロジェクト単体では黒字化が可能です。最終的な利益は自社開発よりも小さい可能性がありますが、安定的な事業運営ができるというメリットがあります。
自社開発事業

すでにライセンスアウトされ、臨床開発に進んでいる2つのプログラムについてご説明します。
1つはエーザイとの「E7386」です。実はこちらはスライド下段に記載されている「PRI-724(OP-724)」を基に共同開発した化合物ですが、エーザイにおいて、抗がん剤「レンビマ」との併用でPhaseⅡの臨床試験が進められています。
もう1つの化合物は、大原薬品に提供している「PRI-724」です。HCVおよびHBV、MASHを由来とする肝硬変の患者を対象に、PhaseⅡ試験を進めています。
2026年9月期 中間会計期間 E7386進捗

エーザイは、この半年間で大変積極的にさまざまな情報を発信しています。昨年10月のESMO(欧州臨床腫瘍学会)年次総会を皮切りに、臨床試験や非臨床試験の結果を通じて、この薬が効果を発揮していることを示すデータを積極的に公表しています。
また、子宮内膜がんにおける「レンバチニブ」との併用に焦点を当てて開発を進めています。
自社開発事業:E7386

スライドで示されている作用機序ですが、「Wntパスウェイ」という、1980年代から知られている作用機序です。当時、このWntパスウェイを入口で遮断する薬が複数開発され、臨床試験が行われましたが、毒性が強く、すべてが中止となりました。
パスウェイを遮断すると毒性が発生するとされていましたが、私たちの化合物はここを遮断するのではなく、先ほどお話ししたように細胞内に入り、シグナル伝達タンパク質であるβカテニンが転写因子と言われるCBPというタンパク質に結合する箇所を、PPI阻害というかたちで切断します。
CBPとβカテニンが結合すると、がんの増殖が促進されることが知られています。当社の化合物は、この結合を選択的に阻害しますが、CBPと非常によく似たタンパク質であるP300とβカテニンの結合は阻害しないため、細胞分化を誘導することが可能です。
これまではすべての結合を一括して阻害していたのに対し、一部のみを選択的に阻害することで、正常細胞への毒性を抑えつつ、がん細胞の増殖のみを抑制するという成果を実現しました。
現在、エーザイが進めている臨床試験では、前段階である1b試験において30名の患者のうち36.7パーセントにあたる11名の患者になんらかの効果が見られ、極めて高い効果が示されています。
自社開発事業:PRI-724

「PRI-724」は大原薬品に導出しているものですが、メカニズムとしては同じです。このWntパスウェイは、人にとって非常に重要なパスウェイであり、線維症にも関係することが昔から知られています。
これを抑制することで線維化を抑制し、分化を誘導します。現在、肝硬変を対象に研究を進めており、フェーズ2aのデータでは線維化を改善する効果が示されています。この結果をもとに、次の段階へ進めています。
臨床開発の進捗

こちらのスライドは、各臨床試験の進捗状況を示しています。スライドには、2019年7月にスタートした「レンバチニブ」との併用試験が、現在進行中であることが記載されています。
共同開発事業:創薬共同研究

もう1つ、共同開発事業として進めているものについてお話しします。現在、小野薬品工業、Roche、Genentech、Merckの4社と提携しており、それぞれ異なる段階で進行しています。
プログラムの進捗:共同開発(期首設定目標と進捗状況)

これは今期の期首に立てた目標です。期首時点で標的探索段階が4つ、ヒット化合物探索が1つ、リード化合物探索が1つありましたが、SERVIER社が止まり、2つのマイルストンを達成して、それぞれ上に上がってきています。今回、BI社との契約が残念ながら止まってしまった状況です。
創薬は大変難しい部分があり、時間もかかります。また、すべてのプロジェクトが順調に進むわけではありません。その中でも確率をできる限り高め、多くの提携やプログラムを開始しながら、確実に成果を出すことを目指しています。
進むものもあれば止まってしまうものもありますが、全体としてバランスのよいかたちを作り上げていくことを目指しています。今後ともご支援いただけると幸いです。
以上でご説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。
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