2026年3月期決算説明
椿本興業、新たな中期経営計画を発表 売上高1,500億円・ROE12%以上を掲げ、企業価値の向上を目指す
INDEX

香田昌司氏(以下、香田):本日は、当社の2026年3月期決算および中期経営計画説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。代表取締役社長の香田です。精一杯務めますので、よろしくお願いします。
これより、Chapter1から4までをご説明します。まず、私から当社のビジネス概要を説明した後、連結業績は専務の春日部がご説明します。そして、中期経営計画『ATOM2028』と連結業績計画を、再度私からご説明します。
成長の軌跡

それでは、当社のビジネス概要をご説明します。まず、事業全体像をお話しします。
はじめに、成長の軌跡についてです。当社は1916年の創業以来、時代の要請に応えるために果敢な変革と革新に取り組み、事業の強みを活かして規模を拡大してきました。1990年代には、シンガポールをはじめとする海外市場へ進出し、新たな世紀に向けた変革と改革に挑戦しました。
その後、営業部門を事業部制からエリア制に移行し、販売会社の地域に根ざした営業と本部との協業を推進することで、販売会社の業績拡大を実現し、それが連結業績のさらなる拡大につながりました。
2026年3月期は、売上高および利益面で過去最高水準を達成しました。これは、これまで積み重ねてきた方向性が間違っていなかった証しと考えています。
当社は2026年10月に創業110周年を迎え、新たな中期経営計画『ATOM2028』をスタートさせ、次なるステージへ進むとともに、強固な収益基盤を構築し、企業価値の向上を目指します。
理念体系

理念体系をご説明します。中期経営計画『ATOM2028』は、社是とミッションステートメントを基盤とした活動計画です。
その社是では、社会に貢献することをモットーとし、商品の開発と販路の開拓を通じて繁栄を達成することを掲げています。一方で、「OUR VISION」では「Advanced Technology for Optimum Machinery」、最先端の技術による最適な機械をお客さまに提供することを目指しています。
また、経営方針およびサステナビリティ基本方針においては、中長期的な利益拡大と持続的な企業価値の向上を目標としています。当社は持続可能な成長を実現するため、さらに理念の追求に努めていきます。
事業ポートフォリオ

当社の3つの主要な事業をご説明します。動伝事業は、動力伝達部品を幅広く取り扱う中核事業であり、圧倒的な商品数と長い歴史によって培われた揺るぎない強みを有しています。商品提案力を活かして、顧客に「つなぐ」ソリューションを提供しています。
設備装置事業は、エンジニアリング力を強みに、「モノを動かす技術」であるマテリアルハンドリングを中心とし、据付工事やアフターサービスまでを含めた総合ソリューションを提供する事業です。人手不足への対応や社会課題の解決に貢献する重点事業として位置付けられています。
産業資材事業は、創業当初からの歴史をもとにした商品開発力によって、高付加価値とオリジナリティを追求する事業です。不織布や樹脂加工品、一般消費財まで幅広く取り扱い、独自の開発力とサプライチェーン構築力で、ゼロからビジネスを支援します。
ビジネスモデル

事業別のビジネスモデルをご説明します。それぞれの特徴を一言で紹介すると、動伝事業は、商品数の豊富さによる商社力とブランド力が生む収益力、設備装置事業は、技術および施工監理部門を擁し、トータルサポートを実現するエンジニアリング力、産業資材事業は、オリジナリティのある商品をコーディネートする力です。
当社が果たすべき使命や存在意義は、機械と技術の総合商社として、ビジネスモデルにかかわらず不変です。事業ごとの多種多様なビジネスモデルを活用し、最適な「つなぐ」ソリューションと新たな可能性や価値を提供します。
海外ビジネス

ASEAN地域を中心とした当社の海外ビジネスをご説明します。このグラフは、2021年度から2025年度までの海外売上高と海外売上高比率の推移を示しています。
国内で培った商品力とソリューション機能を基盤に、当社では海外ネットワークと貿易管理体制を活用し、お客さまの業務効率化や海外ビジネス展開を支援しています。国内と同等のサービス体制を目標に、海外メーカーやパートナーと連携し、納入・据付・保守まで一貫対応できる体制を整えています。
また、輸入商品開発の専門部署を中心に、国内需要を敏感に捉え、欧州や米国、台湾などからの高品質な輸入商品の拡充にも取り組んでいます。海外ビジネス戦略として、将来的にはまず海外売上高比率20パーセントを目指し、輸入商品を含めた海外取引の拡大に努めます。
椿本チエインとの関係性

よくご質問いただく世界的チェーンメーカー、椿本チエインとの協業関係をご説明します。椿本チエインとは、兄弟で創業したという背景もあり、重要なパートナーである一方で、販売と製造という互いに異なる分野で独自の歩みを進めてきました。
従来から強い協力関係のもと、トップシェア商品の販売をはじめ、搬送・仕分け装置などのマテリアルハンドリングを中心に、市場ニーズに対応した商品の共同開発を行ってきました。
特に、自動車エンジン用タイミングチェーンシステムにおいては、国産化直後から約70年にわたり需要の変化に対応しながらアライアンスを構築し、自動車産業界の発展とともに進化を遂げてきました。
また、EV化が進む中で、車載部品や周辺機器を、それぞれの強みである商社のマーケティング力とメーカーのコア技術を融合させた「カケザン」による商品開発を進めています。これまでの100年にわたる強固な協力関係が維持され、両社はともに成長を続けています。
椿本チエイングループが当社内で占める売上高構成比率は約3割で推移しており、強力なコア商品を取り扱うことが当社の強みに直結しています。今後も関係性をさらに強化し、新市場の開拓と新商品の開発に取り組むことで、両社の一層の成長を目指します。
競争優位性を生み出す強み

当社の競争優位性を生み出す強みをご説明します。提案人材、ワンストップ体制、取引基盤の3つの強みが相互に作用することで、エンジニアリングとソリューションの融合を実現しています。潜在課題の具体化から運用までを一貫して提供することで、受注拡大と保全やメンテナンスを含む収益の安定化を図っています。
1つ目の強みは提案人材であり、業界や顧客の理解、商材探求に基づき課題解決を行います。技術的な素養を有する担当者が最適な提案を行う点も特徴です。
2つ目の強みはワンストップ体制であり、ライフサイクル全体にわたるソリューションの提供のほか、工場や倉庫の入口から出口までの最適なコーディネート、新たな加工・開発機能の提供、さらに運用やメンテナンスまで一貫してサポートすることが可能です。
3つ目の強みは取引基盤です。あらゆる商材や顧客に対応する豊富な取引ネットワークと、トップメーカーとの強固な関係により、当社は産業と社会の基盤を支えています。
これらの相互作用によって新たな課題を獲得し、ソリューションを拡充する好循環が生まれている点が、競争優位性の源泉となっています。
2026年3月期 業績ハイライト

春日部博氏(以下、春日部):取締役専務執行役員管理総括の春日部です。ここから2026年3月期の連結業績ハイライトをご説明します。
売上高および各利益は、5期連続で増収増益を達成し、過去最高となりました。売上高は1,310億円で、前期比5.4パーセント増加しました。豊富な受注残高を概ね納期どおりに売上計上したことが、売上高増加の要因です。
営業利益は65億円で、前期比8.2パーセント増加しました。増収により売上総利益が増加したことが、営業利益の増加に寄与しています。
また、経常利益は71億円で、前期比8.9パーセント増加しました。経常利益は前中期経営計画で目標としていた水準を上回り、初めて70億円を超えることができました。
当期純利益は50億円で、前期比7.1パーセント増加となりました。増収に伴う各段階利益の改善が、当期純利益の増加要因となりました。
セグメント別業績①

セグメント別業績をご説明します。当社は事業間の連携促進や地域密着を通じた営業力強化を図るため、エリア制を採用しています。東日本本部は北海道・東北・甲信越・関東地区を担当しており、売上高は447億8,900万円で、前期比0.2パーセント減となりました。
一般産業向けの動伝部品は堅調でしたが、自動車関連部品および半導体製造装置関連部品の需要が変化し、前年度比で減少したことが売上に影響しました。一方、設備装置関連は堅調で、前年度を上回る結果となりました。
セグメント利益は28億8,300万円で、前期比10.7パーセント減少しました。売上高構成比では全体の約34パーセントを占めています。
西日本本部では、北陸、関西、中国、四国、九州地区を担当しており、売上高は510億700万円で前期比10.7パーセント増となりました。
動伝部品は各産業への需要が底堅く、設備装置関連は中国向けの大口設備をはじめ、その他の設備工事も順調に売上に寄与したことが売上増加の要因となりました。セグメント利益は34億6,300万円で、前期比17.3パーセント増加しました。売上高構成比では全体の約38パーセントを占めています。
セグメント別業績②

中日本本部および開発戦略本部の業績をご説明します。中日本本部は東海地区を担当しており、売上高構成比は全体の約14パーセントを占めています。売上高は195億7,800万円で、前期比7パーセントの増加となりました。
重工業および一般産業機械向けを中心に動伝部品の売上高が増加したことが、売上高増加の要因となりました。設備装置関連は、重工業、自動車関連産業、食品業界向けなどの受注残高を確実に売上計上できたことで、前年度を上回る結果となりました。セグメント利益は13億3,400万円で、前期比18.9パーセントの増加となっています。
開発戦略本部は海外およびマテリアルビジネス、新商品開発を担当しており、売上高構成比は全体の約14パーセントです。
売上高は199億5,700万円で、前期比8.2パーセント増となりました。タイおよび中国の子会社は、特定の大口案件の売上によって前年度を上回りました。海外直接取引では設備装置関連が増加し、これが売上高の増加要因となりました。
また、マテリアルビジネスも前年度比で増加しました。セグメント利益は7億900万円で、前期比29.5パーセントの増加となりました。
事業別・地域別売上高

事業別および地域別の売上高をご説明します。動伝事業の売上高は568億2,500万円で、前年同期比0.9パーセント減少しました。構成比は全体の43.4パーセントを占めており、一般産業向けは堅調だったものの、自動車および半導体製造装置関連の減少が影響しました。
設備装置事業の売上高は635億9,900万円で、前年同期比11.9パーセント増となりました。構成比は48.5パーセントで、自動車業界向けおよび物流関連分野での売上拡大が増加の要因です。
産業資材事業の売上高は106億700万円で、増減率は前期比5パーセントの増加となりました。構成比は8.1パーセントで、一般消費財の需要回復が増加の要因です。
地域別では、日本の売上高は全体で1,137億1,300万円となり、増減率は前期比4.5パーセント増、構成比は全体の86.8パーセントでした。また、アジアの売上高は154億9,000万円で、増減率は前期比17.6パーセント増、構成比は11.8パーセントです。
中国向けの大口偏光板生産設備を順調に売上計上したことが、アジア向け売上の大幅な増加要因となりました。一方、その他の売上高は18億2,900万円で、増減率は前期比21.2パーセント減、構成比は1.4パーセントとなりました。
年度別の推移では、動伝事業が前年度からやや減少しましたが、設備装置事業と産業資材事業は前年度を上回る結果となりました。
ROE/PER/PBRの推移

株主価値指標をご説明します。ROE、PBRの推移ですが、直近のROEは10.7パーセント、PERは9.9倍、PBRは1倍となっています。
ROEは増益基調の中で高水準を維持しており、株主資本コストを上回る水準で推移しています。また、新中期経営計画の最終年度にはROE12パーセント以上を目標としています。
株主資本コストは6パーセントから8パーセントを目安としており、CAPMベースの考え方を採用しています。
PBRは1倍超を目標としており、ROEの継続的な向上や株主資本コストの低減に努めます。当社は株価水準に満足していないため、事業戦略や成長戦略の浸透を図るべく積極的に情報開示を行います。
また、株主の保有促進のため、株主優待制度の継続に加えて、増配や自己株式取得も機動的に実施します。
中期経営計画『ATOM2025』の振り返り

香田:ここからは、中期経営計画『ATOM2028』についてご説明します。まず、前中期経営計画『ATOM2025』の振り返りをお話しします。
『ATOM2025』ではROEを重要視し、経常利益の増加を目標として掲げました。最終年度の経常利益は67億9,000万円となり、策定時目標の53億円を大幅に上回って達成しました。また、ROEは10パーセントで、策定時目標の10パーセントを達成しました。
なお、経常利益およびROEの数値は一過性の影響など特殊要因を除いたものです。一方、人的付加価値は112となり、策定時目標の108を上回りました。男性育休取得率は100パーセントで、策定時目標を達成しましたが、その他の非財務指標は未達となりました。
財務目標は、重点業界の深耕や新たな分野へのアプローチ強化など、重点施策の実行により策定時目標を超過して達成しました。一方、非財務目標については、経営戦略と人材戦略の連動が限定的だったため、人的資本指標が未達となり、課題が残りました。
これらの課題を経営課題として捉え、「稼ぐ力」の拡大と資本効率の向上を図り、新中期経営計画『ATOM2028』では企業価値の最大化を目指します。
中期経営計画『ATOM2028』 基本方針

新中期経営計画『ATOM2028』の基本方針をご説明します。当社のビジョンは、「機械と技術の総合商社として、産業界の未来価値創造企業を目指す」ことです。
前中期経営計画ではROEを重視し、配当性向を意識した経営を行いましたが、中期経営計画『ATOM2028』では、強靭な収益基盤の構築と財務戦略の高度化を基本方針とし、3つの基本戦略を推進します。
さらに、将来に向けて企業価値の向上とステークホルダーとの協創を目指します。中期経営計画の基本戦略の第1は事業領域の価値向上で、「エンジニアリング×ソリューション」を追求します。
第2は、資本構成の最適化と株主還元の強化に取り組むため、キャッシュ・アロケーション戦略を推進します。第3は、ESG経営を深化させることを目指し、人的資本への積極投資を進めます。
これら3つの基本戦略により、競争優位性をさらに磨き上げ、企業価値の向上を実現します。
定量目標

中期経営計画『ATOM2028』の定量目標をご説明します。先ほどの基本方針に基づき、2026年からの3年間を達成期間とする新たな財務目標を設定しました。
『ATOM2028』の最終年度目標は、連結売上高1,500億円、営業利益75億円、経常利益80億円、ROE12パーセント以上を掲げています。
また、営業利益率は5パーセントを基準とし、2028年以降も5パーセント以上を維持することを目指します。スライド右側のグラフは、営業利益率の推移をイメージとして示したものです。
これらの財務目標を通じて収益基盤の強化と資本効率の向上を図っていきます。
外部環境認識

基本戦略の前提となる外部環境の認識および事業機会、リスクをご説明します。EV・次世代モビリティ、半導体、物流自動化、環境・エネルギー関連への成長投資や、自動化需要の拡大、AIやロボット関連の技術発展を追い風として、設備・インフラ需要は拡大基調にあります。
政治面では、産業競争力強化策による国内投資の拡大や、脱炭素政策に伴う再生可能エネルギーおよび水素インフラ市場の拡大が機会となります。
経済面では、成長産業への投資拡大や環境関連分野、物流・生産設備などインフラ輸出の拡大が需要を押し上げる一方で、原材料や燃料価格の高騰による収益圧迫や景気変動に伴う設備投資需要の不安定化が脅威として挙げられます。
社会面では、省人化および自動化設備の需要増加や、環境配慮型製品への需要拡大が機会となります。人材確保の難しさや技能継承の停滞、物流業界の担い手不足による輸送力低下が脅威として挙げられます。
技術面では、スマート工場や自動搬送システムへの事業拡大が機会と認識しています。
環境面では、環境対策商品の市場拡大やリサイクル・省資源ビジネスの成長、さらに気候変動適応策への需要増が機会となります。一方で、異常気象や災害の激甚化リスク、そして環境規制強化に伴うコスト増が脅威となっています。
これらの機会と脅威を十分に踏まえ、勝ち筋のある領域に資源を集中するとともに、提供価値の高度化や人材・組織基盤の強化に努めていきます。
事業領域の価値向上|牽引領域と発展領域による拡大

1つ目の基本戦略である事業領域の価値向上をご説明します。最初に、牽引領域と発展領域の意図をお伝えします。牽引領域は、現在の収益を支える既存優位な領域であり、発展領域は将来の成長を取り込むために重点的に拡大を図る領域と位置づけています。
このように両領域を分けることで、短中期の収益基盤の強化と中長期の成長機会の獲得を両立させる方針を示しています。
スライド右側の成長イメージは、事業規模や売上高の拡大を示していますが、当社が目指す成長は量的拡大にとどまらず、収益性の向上も見据えています。
当社は牽引領域で収益基盤を伸ばし、発展領域へリソースを重点的に配分することで事業領域の拡大を図ります。両領域において商品力の拡充、総合ソリューション化や高付加価値化を推進することで、成長の質を高め、持続的な成長を実現していきます。
高付加価値化の取り組みとしては、外部環境の変化に即した新商品の開発や仕入先の開拓を進めていきます。さらに、予防保全やメンテナンスサービスを含む総合ソリューションの強化にも取り組んでいきます。
主要分野ごとの方針をご説明します。自動車分野では、既存モビリティ生産ライン周辺を牽引領域と位置づけ、次世代モビリティ設備や関連部品を発展領域として育成していきます。
半導体分野では、製造装置周辺領域を牽引領域、先端および後工程の周辺領域を発展領域としています。
物流分野では、ECフルフィルメントの自動化を発展領域と位置づけ、商品力の拡充を進めます。
食品分野では、フードテックを活用した省人化を発展領域、環境分野ではバイオマスやリサイクルなどの安定操業領域を牽引領域とし、脱炭素や資源環境ソリューションを発展領域として事業領域の拡大に取り組んでいきます。
財務戦略の高度化|キャッシュ・アロケーション

2つ目の基本戦略である財務戦略の高度化をご説明します。まず、キャッシュ・アロケーションについてです。
自社の既存事業や内部リソースを強化するための投資である人的資本経営に資するオーガニック投資と、既存のリソースだけでは得にくい顧客基盤技術や商材機能を取り込むための成長ドライバーとしてのインオーガニック投資を推進していきます。
投資は、企業価値向上につながる次世代向けの成長投資とステークホルダーへの還元に振り分けます。
インオーガニック投資においては、顧客基盤の拡大に有効な事業連携やアライアンス構築を想定しています。一方、オーガニック投資では、生産性向上を目的とした新商品の開発、拠点整備、ITインフラの更新を計画しています。
また、人的資本投資としては、人材育成と確保のためのスキル向上、採用活動、報酬水準の向上への投資を検討しています。
株主還元方針は、DOEを配当方針に取り入れ、短期的な利益変動や市場環境の変化に左右されにくい、安定的な配当を目指していきます。
財務戦略の高度化|資本政策と株主還元

資本政策と株主還元について、実績推移を踏まえてご説明します。ROEの実績は2025年度で10.7パーセントとなり、市場が求める株主資本コストを十分に上回っており、高水準を維持しています。
資本コストはCAPMの考えに基づき6パーセントから8パーセントと算出しています。中期経営計画の最終年度である2028年度にはROEを12パーセント以上にする目標を掲げ、エクイティスプレッドプラスの実現を目指します。
配当方針は、配当性向35パーセントまたはDOE4パーセントのいずれか高い水準を基準に、累進配当を基本とし、中期経営計画の最終年度での達成を目指します。2025年度の配当性向実績は32.9パーセント、DOEは3.6パーセントでした。
2026年度の予想は、株主優待を除いた配当性向が31.2パーセントとなっています。また、自己株式取得は機動的に実施し、株主優待制度は年2回実施することとし、長期保有特典を継続していきます。
ESG経営の深化

3つの基本戦略であるESG経営の進化に関して、全体像をご説明します。人的資本への積極的な投資、DXの推進、サステナビリティ商材の拡充、そしてサプライチェーンの強靭化を通じて、ESG経営を着実に深化させていきます。
また、社会課題への対応を進めることで、企業価値向上と社会価値創造の両立を目指していきます。
環境への取り組みとしては、環境負荷の低減につながる商材を拡充し、脱炭素目標の達成を図ります。脱炭素貢献商品の売上高は2023年比で2倍を目標とし、温室効果ガス(GHG)排出量は2030年までに2013年比で50パーセント削減を目指しています。
人的資本では、個人と組織の強化、DXによる高効率化、働きやすさの基盤づくりに投資します。中期経営計画『ATOM2028』においては、付加価値創造に重点を置いた生産性向上の取り組みを推進するとともに、従業員への還元をより意識した指標として付加価値創造性を設定しました。
業務にかける時間や費用の最小化に加えて、生み出す成果の最大化を重視し、付加価値のさらなる増大に取り組むことで、価値創造サイクルの好循環を目指していきます。
ガバナンスにおいては、サプライチェーンの強靭化、取締役会の実効性向上、ステークホルダーとの対話の強化に取り組みます。具体的には、外部の第三者機関による取締役会の実効性評価やガバナンス体制の点検を実施し、さらにグループ会社の内部統制強化に努めていきます。
ESG経営の深化|人的資本への積極投資

ESG経営の深化における人的資本への積極投資をご説明します。『ATOM2028』の人材目標に向けて、個人、組織、働く基盤それぞれへの投資を加速させ、価値創造性を生み出す人材を持続的に輩出していきます。
具体的には、エンジニアリング力の進化や価値創造に挑む人材の育成を進めていきます。また、部門間の連携を促しながら挑戦を後押しし、成果を生み出す企業風土を醸成することで、生産性向上と社員の豊かさが好循環を生み出す、持続可能な成長基盤を構築していきます。
人的資本のKPIとしては、先ほどご説明した付加価値創造性に加え、特定資格の保有者数、従業員エンゲージメントおよび健康経営スコアを設定しています。個のスキル強化、組織の強化、働く基盤の整備を進めるため、これらに対して積極的に投資を行っていきます。
前中期経営計画では、マイスター制度を通じて若手へのノウハウ継承の基盤を整備してきましたが、新中期経営計画では、これらに加え、技術力や専門性を高める研修の充実や資格取得推進など、個人のスキル強化に一層注力していきます。
あわせて報酬制度の見直しにも取り組み、スキル向上と処遇、働きがいの向上の好循環を図ります。人材が当社の価値を創造する源泉であることを認識し、経営戦略と人材戦略を連動させ、企業価値を高めていきます。
中期経営計画とマテリアリティの関係

中期経営計画とマテリアリティの関係をご説明します。新たな中期経営計画の策定にあたり、経営を取り巻く外部環境の変化を踏まえ、マテリアリティの見直しを実施しました。
『ATOM2028』では、事業領域の価値向上、資本構成の最適化と株主還元強化、ESG経営の深化という3つを基本戦略と定め、これらを通じて新たなマテリアリティに対応し、持続的な成長を目指します。
特に少子高齢化や労働力制約社会に関連して、人的資本施策の強化はもちろん、AIとロボティクスを省人化・自動化・高付加価値化を支える重要な技術要素として位置づけ、市場ニーズに対応していきます。
さらには、DX投資による業務品質や生産性の向上を目指し、基本戦略と連動させながら重点的に取り組んでいきます。
当社は、このような外部環境の変化を背景とした社会課題の解決に適切に取り組むとともに、強固な収益基盤の構築と財務戦略の高度化を目指し、持続的な成長を実現していきます。
企業価値向上を実現する中長期戦略

中期経営計画の最後に、企業価値向上に向けた中長期戦略をご説明します。PBRはROEとPERの積で表されます。当社はPBRの改善を目指し、ROE向上と市場評価の改善を両輪として進めていきます。
第1に、ROEの向上と資本市場からの信頼性向上を通じてPBRの改善を目指します。次に、成長期待の向上と資本コストの低減を通じて、市場評価の改善を図ります。最後に、IR活動の強化により、事業戦略と資本政策への理解促進を目指します。
また、IR体制の整備・強化をはじめ、経営課題の解決の中でIRの充実を図ります。これらの改善策に加え、IR戦略としてステークホルダーとの建設的なコミュニケーションを推進し、開示拡充による情報の非対称性の解消に努めます。
2027年3月期 業績予想ハイライト

ここからは、先ほどの中長期戦略を踏まえ、2027年3月期の業績予想ハイライトをご説明します。2027年3月期の売上高は前期比0.7パーセント増の1,320億円、営業利益は前期比2.9パーセント増の67億円、経常利益は前期比2.9パーセント増の73億円、当期純利益は前期比5.5パーセント増の53億円を計画しています。
世界的な輸入材料や石油関連製品の価格高騰が続く先行き不透明な状況の中、当社は中期経営計画『ATOM2028』の初年度として、計画達成に努めていきます。
お客さまの設備投資計画の見直しや仕入価格の大幅な上昇、調達難が発生し、業績に大きな影響を及ぼすと判断した場合には、迅速に対応し、速やかに業績に反映させる判断を行います。
持続的な企業価値の向上のため、ROE10パーセントの継続達成に加え、中期経営計画の最終年度にはROEを12パーセント以上まで高めていきます。さらに、政策保有株式の計画的な縮減を実施し、資本効率化と株主還元に努めていきます。
株主優待

株主優待についてご説明します。当社は株式分割にあわせて優待内容を変更し、拡充しました。具体的には増額と長期保有特典を追加し、昨年の内容変更により拡充された結果、年間最大1万円相当が獲得可能となり、より魅力的な内容となりました。
優待は年2回実施しており、保有株式数に応じた内容はスライドの表のとおりです。「鉄腕アトム」オリジナルのQUOカード、または寄付を選択できる形式になっています。
当社は株主のみなさまの日頃のご支援に感謝するとともに、当社株式への投資魅力を高め、より多くの方に当社株式を保有していただくことを目標に、年2回の株主優待制度および長期保有株主優待制度を継続して実施していきます。
IR戦略の強化

IR戦略の強化についてご説明します。事業成長に加え、IR活動のさらなる強化により、PBRの改善を図ります。
2026年4月には、IR体制の整備・強化に向けて、IR窓口である広報室を「IR推進・広報部」に改称し、同時に経営戦略本部に編入するとともに、要員を増員しました。広報とIRを一体化させ、積極的な情報発信を進めていきます。
また、昨年10月には、IRサイトを大幅にリニューアルし、個人投資家のみなさま向けのIRを充実させるとともに、株主・投資家のみなさまに向けた開示を拡充しています。
さらには、決算説明会の早期化および日本語と英語の書き起こしの配信により、タイムリーな情報発信を図っています。サステナビリティ情報の発信強化やスポンサードリサーチの内容拡充、IR資料の英文開示強化を通じて、市場との対話を推進していきます。
これらのIR強化の取り組みを通じて、投資家の期待値とそのギャップの解消を図っていきたいと考えています。説明は以上です。
4月からIR部署を充実させ、コンタクト先を公開しています。できるだけ開示可能な情報については、当社Webサイトから精一杯開示しますので、よろしくお願いします。
本日は、椿本興業株式会社2026年3月期決算および中期経営計画説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございました。
質疑応答:国際情勢の変化が業績に与える影響について

司会者:「米中関係の緊張や中東情勢の不安定化など、国際情勢の変化により、グローバルに事業を展開する企業を取り巻く経営環境は不透明さを増してきています。こうした国際情勢が事業に与える影響について、現状どのように認識しているの
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