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株式会社マツオカコーポレーション3611

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繊維製品

2026年3月期第2四半期決算説明会 兼 新中期経営計画説明会

松岡典之氏(以下、松岡典):株式会社マツオカコーポレーション代表取締役の松岡典之です。平素より格別のご高配を賜り、心より感謝申し上げます。

本日は、当社グループの2026年3月期第2四半期決算および新たに開示した新中期経営計画「BEYOND2028 ~Stitch the Future~」についてご説明します。

「BEYOND2028 ~Stitch the Future~」は、これまで積み重ねてきた信頼と実績を基盤に、技術・人・情報を縫い合わせ、新たな価値を創造する挑戦です。

持続可能で統制された成長を目指し、全社が一丸となって進化する3年間の歩みとなります。工場と本社の連携を強化し、「スマート化」と「見える化」を推進することで、効率と対応力を高めます。

新中期経営計画の取り組みを通じて、社会やお客さまにとって欠かせない存在であり続けるため、私たちはこれからも挑戦を続けていきます。本日はどうぞよろしくお願いします。

INDEX

金子浩幸氏(以下、金子):取締役の金子浩幸です。まずは、私から会社概要、2026年3月期第2四半期の決算概要、2026年3月期の業績見通しについて、ご説明します。

マツオカコーポレーションの概要

マツオカコーポレーションの概要です。当社グループは、広島県上下町で呉服店として歩みを始め、1956年に会社を設立しました。おかげさまで来年、70周年を迎えます。

縫製業として事業を拡大し、1980年代、1990年代から競合他社に先駆けて海外へ進出しました。1990年に中国、2004年にミャンマー、2007年にバングラデシュ、2015年にベトナム、2018年にインドネシアに進出し、現在5か国で、アパレル縫製品を製造する縫製工場を展開しています。

加えて、中国とベトナムでは、ラミネートフィルム製造と生地加工を行う工場も展開しています。

2017年には、国内の縫製メーカーとして初めて東証1部に上場し、現在はスタンダード市場へ市場変更しています。

マツオカコーポレーションの概要

現在当社グループは、2つのセグメントで事業を展開しています。1つは縫製事業で、国内外のアパレルメーカーの生産を受託し、縫製加工サービスを提供しています。

もう1つはラミネーションフィルム事業で、自社で開発、生産した機能性フィルムを生地に張り合わせ、透湿防水機能に優れた加工生地を製造、販売しています。

両セグメントを合わせた工場数は、アジア5か国に全13工場で、従業員数は全体で2万人を超えています。特に縫製事業では、人の力が事業の根幹を支えており、従業員数の増加が事業規模の拡大と密接に結びついています。

業績ハイライト

2026年3月期第2四半期の決算概要です。

売上高は348億2,800万円で前年同期比1.2パーセント減、営業利益は9億7,300万円で前年同期比1,878.4パーセント増、経常利益は25億4,400万円で前年同期比30.2パーセント増、親会社株主に帰属する中間純利益は12億2,000万円で前年同期比16.4パーセント増となりました。

また、当社グループの本業の実力値を示すと考える独自指標、為替差損益調整後営業利益は26億300万円で前年同期比15.7パーセント増となりました。

縫製事業では、堅調な受注を背景に、ベトナムやバングラデシュを中心とした新工場の生産キャパシティ拡大と安定生産維持を両立させました。

一方、ラミネーションフィルム事業では、前期に顧客のヒット商品の影響による事業伸長があり、今期はその反動があったことに加え、中国経済低迷による需要の鈍化があったことから、一部のお客さまで、在庫調整が行われ、発注のタイミングや数量に変動が生じました。

さらに、価格競争が一層激化しており、事業環境は厳しい市況となっています。

セグメント別業績

セグメント別の業績です。縫製事業の売上高は297億100万円で前年同期比3.4パーセント増、セグメント利益は26億6,600万円で前年同期比59.1パーセント増と大きく伸長しました。当第2四半期は、夏の猛暑に伴うファン付きウェアの需要増加を背景に、ワーキングウェアの受注が増加しました。

販売枚数は前年同期比15.3パーセント増の2,736万枚となりました。また、縫製事業における為替差損益調整後営業利益も、前年同期比48.8パーセント増と成長しています。

ラミネーションフィルム事業の売上高は51億2,600万円で、前年同期比21.4パーセント減、セグメント利益は5億400万円で、前年同期比48.4パーセント減となりました。厳しい状況下でも、新商品の開発や中国国内での新規顧客開拓を進めています。

売上高(品目別)

品目別の売上高です。縫製事業の4品目は、カジュアルウェアが188億4,700万円、ワーキングウェアが31億5,900万円、インナーウェア・カットソーが68億7,900万円、その他が8億1,500万円となりました。ラミネーションフィルム事業の売上高は51億2,600万円です。

カジュアルウェアは製品の引取り時期が下期にずれたこと、ラミネーションフィルム事業は中国国内の需要が鈍化したことの影響を受け、ともに減収となりました。一方で、堅調な受注に支えられたワーキングウェアとインナーウェア・カットソーはそれぞれ大幅増収となりました。

売上高(生産地域別)

生産地域別の売上高です。品目別でも伸長しているワーキングウェアやインナーウェア・カットソーを生産するバングラデシュは、前年同期比27.2パーセント増の104億9,400万円と大幅増収となりました。

一方、中国では前年同期に見られたラミネーションフィルム事業の伸長が剥落し、売上高は前年同期比12.8パーセント減の121億5,600万円となりました。ベトナムでは、一部製品の引き取り時期が下期にずれた影響で、売上高は前年同期比4.3パーセント減の94億9,000万円となりました。

ASEAN諸国等の売上高比率は前年同期比で5ポイント増の約65パーセントとなりました。

為替の影響及び「為替差損益調整後営業利益」について①

昨年より開示している為替差損益調整後営業利益についてご説明します。当社グループの収支構造は、売上収入の約7割が米ドル、残りの約3割がドル以外の通貨によるものです。

工場運営経費は、収入で得た米ドルを必要に応じて、ベトナムドンやバングラデシュタカなど工場所在国の通貨に両替して支払うため、最終的に当社グループに残る現預金残高の約5割が米ドルになっています。

為替の影響及び「為替差損益調整後営業利益」について②

現在の会計基準において、日常的な営業取引の決済から発生する為替差損益は、営業外収益または費用に集計され、表示されています。

当社グループはこれらの営業取引から発生する為替差損益は、営業利益と一体のものであるという考えのもと、その金額を営業利益に加えた為替差損益調整後営業利益を当社グループ本業の実力値の参考として、継続開示しています。

当社グループにおける事業の実力をより正確にご評価いただくためには、この為替差損益調整後営業利益をご参照いただきたいと考えています。

2026年3月期第2四半期の為替差損益調整後営業利益は前年同期比で15.7パーセント増益となりました。

連結貸借対照表

連結貸借対照表の前期末比較です。

資産合計は前期末比で13億4,000万円減少し、711億1,300万円となりました。有形固定資産については、この半年間に大型の投資がなかったため、減価償却などにより前期末比19億6,100万円減の189億円となりました。

流動資産は、一部製品の納期が下期にずれたことによる棚卸資産の増加などから、前期末比7億1,500万円増の484億3,000万円となりました。純資産は前期末比23億6,000万円減の381億6,900万円となりましたが、これは円高進行による為替換算調整勘定の減少によるものです。

連結キャッシュ・フロー計算書

連結キャッシュ・フロー計算書の前年同期と比較したグラフです。スライド右側が当第2四半期です。

当第2四半期の営業キャッシュ・フローは4億円の収入、投資キャッシュ・フローは24億円の支出、財務キャッシュ・フローは1億円の支出であり、第2四半期末の現金および現金同等物の残高は162億円となりました。

当第2四半期の現金および現金同等物残高が前期末比で31億円減少した主な要因は、預入期間が3ヶ月を超える定期預金の預入14億円と、円高進行による換算差額の減少10億円です。

2026年3月期連結業績見通し

2026年3月期の連結業績見通しです。

2026年3月期の通期業績予想は、売上高740億円、営業利益25億円、経常利益47億円、親会社株主に帰属する当期純利益30億円で、2025年5月に発表した当初の予想から変更はありません。

第2四半期の売上高は僅かに減収となりましたが、製品引き取り時期のずれの影響は下期にはおおむね収束する見込みであり、売上高、利益ともに通期では当初想定通りの着地になる見通しです。

なお、為替差損益調整後営業利益の通期予想は、前期末比18.1パーセント増の50億円を見込んでいます。以上が2026年3月期第2四半期決算についての説明となります。

現中期経営計画「ビジョン2025」の振り返り

松岡哲博氏(以下、松岡哲):執行役員の松岡哲博です。2025年11月13日に発表した新中期経営計画「BEYOND2028 ~Stitch the Future~」についてご説明します。

まず、現中期経営計画「ビジョン2025」を振り返ります。「ビジョン2025」の発表時に掲げた売上高700億円、経常利益35億円の業績目標は、前期の2025年3月期に前倒しで達成することができました。

これを受け、今期2026年3月期の計画を売上高740億円、経常利益47億円に上方修正しています。

パンデミックを背景に、サプライチェーンが変化していく状況下で取り組んだ「ビジョン2025」では、「欲しいときに欲しいものを欲しい量」でお客さまへ届けることを可能にするサプライチェーンを整備しました。我々の技術に支えられた「良質なものづくり」は、お客さまから一定の評価をいただいています。

現中期経営計画「ビジョン2025」の振り返り

「ビジョン2025」では、3つの工場を新設し、ASEAN諸国等での生産を拡大した成果が大きかった一方で、データ経営や組織体制強化などの分野においては、整備途上となる課題が残っていると分析しています。

我々はグローバルな事業展開を前提に、持続性のある成長を目指すべきステージを迎えているものと認識しています。

アパレル業界を取り巻く環境への認識

アパレル業界を取り巻く環境は日々変化しています。消費者は、価値価格バランスを一層重視する傾向が強まり、ブランドやサステナビリティへの関心もさらに高まっています。

サプライチェーンでは、地政学リスクや人件費の上昇が進み、業界では、品質、コスト、納期に加え、透明性や信頼性がこれまで以上に重視されています。

また、世界のアパレル市場を見ると、今後も拡大が見込まれています。この成長を取り込むためには、グローバル市場で競争できる土俵に立つことが前提条件であり、業界構造の変化に対応し、提供価値を磨くことが「選ばれる工場」として不可欠であると考えています。

新中期経営計画の位置づけと基本方針

新中期経営計画の位置づけについてご説明します。

「『選ばれる工場』になる」という事業の目指す姿、そして「社員一人ひとりが責任をもって行動し、組織全体でAccountability(説明責任)を果たす文化を育てる」という組織の理想の実現に向け、新中期経営計画の3年間を、持続的成長が可能な事業基盤を確立するための期間として位置づけています。

新中期経営計画の位置づけと基本方針

新中期経営計画の基本方針は以下の4つです。

「工場稼働の最大化・生産の拡大」は、拡大している工場の生産能力を最大限に活用することです。そして、その「拡大を支える基盤への重点投資」とは、具体的には、システムへの投資、製造管理、顧客対応力向上へ向けた投資を指します。

財務面としては「『資本コストや株価を意識した経営』への転換」、組織・人財への投資方針としては「グローバル・ガバナンス強化」です。

この4つの基本方針のもと、新中期経営計画では2029年3月期に売上高900億円、経常利益60億円、ROE9.0パーセントを目指します。そしてその先では、「選ばれる工場」へのさらなる進化とROE10パーセントを目指していきます。

経営目標 (財務・非財務)

経営目標です。財務目標として、売上高900億円、経常利益60億円、ROE9.0パーセントのほか、純利益は40億円、自己資本比率は45パーセントから55パーセントの達成を目指します。

また、非財務目標として、連結従業員数は2万4,000人、生産量は、縫製事業において7,800万枚、ラミネーションフィルム事業において1,500万ヤードを目標としています。

新中期経営計画 BEYOND2028 ~Stitch the Future~

4つの基本戦略をご説明します。スライド右側に記載の重点施策の実行を通じて、持続的な企業価値の向上を目指します。

事業戦略の1つ目としては、生産規模を追求し、利益を最大化します。事業戦略の2つ目としては「選ばれる工場」に向けて提供価値を磨きます。

財務戦略では「資本効率を高める経営への転換」を図ります。人財戦略では「人的資本への重点取り組み」を行います。これらの戦略を達成するための重点施策について、次のスライド以降で詳しくご説明します。

事業戦略①重点施策:生産地拡大による、サプライチェーンの強化・拡充

事業戦略の1つ目である「生産規模を追求し、利益を最大化」の重点施策の1つ目は、「生産拡大による、サプライチェーンの強化・拡充」です。2026年3月期のASEAN諸国等の生産地比率は72パーセントと見込まれており、目標水準に到達しました。

今後は生産規模の拡大が中心となります。ASEAN諸国等を中心に生産量を拡大し、縫製事業の売上高は2026年3月期比23パーセント増となる817億円と、過去最大の売上規模を目指します。

生産枚数については、バングラデシュでは生産設備を拡張し1,000万枚の増産、インドネシアでは、新たな縫製工場を建設して300万枚の増産、ベトナムのアンナム工場では60万枚の増産を計画しています。中国では、生産設備を導入しつつ、衣類以外の寝具などの生産へ転換を進めます。

事業戦略①重点施策:生産地拡大による、サプライチェーンの強化・拡充

スライドには、2029年3月期の目標に向け、各国ごとの増産とその要因を示しています。

事業戦略①重点施策:ラミネーションフィルム事業の“稼働最適化”と”開発力強化”

重点施策の2つ目は、「ラミネーションフィルム事業の“稼働最適化”と”開発力強化”」です。ラミネーションフィルム事業では外部環境の変化が激しく、柔軟な対応が求められています。

現在は中国での生産が中心ですが、この生産および技術をベトナムへ移管していく予定です。さらに、顧客開拓の面では、現在は欧米のアウトドアウェアメーカーが主要な顧客ですが、今後は中国国内のメーカーへの販売も強化し、稼働を最適化します。

また人財と設備に投資することで、フィルム開発の開発力強化に専念します。

現在、ラミネーションフィルム事業は外部環境の影響を受けて、一時的に低調な推移となっていますが、施策を通じて着実に事業基盤の強化を図っています。本事業は、中長期的な成長ポテンシャルを有しており、将来的な回復と拡大を見込んでいます。

事業戦略②

次に、事業戦略の2つ目である「『選ばれる工場』に向けて提供価値を磨く」についてご説明します。

計画生産の徹底および技術の承継と最適化により、品質、コスト、納期(QCD)を磨き続けること、そして、サプライチェーンの統制と透明性の確保により新たなニーズに対応すること、これらは我々の事業の競争力の根幹であり、強化すべき2つの柱と考えています。

MESの導入により「実態の可視化」が進むことで、現場の解決力強化と、経営の対応力強化へ向けた体制が確立できると考えています。次のスライドで重点施策についてご説明します。

事業戦略②重点施策:工場毎の技術・品質の成長とアイテム対応力の強化

重点施策の1つ目は、「工場毎の技術・品質の成長とアイテム対応力の強化」です。シャツ、インナー、ボトムスなど、同一生産アイテムのオーダーを1つの工場に固めることで、従業員の習熟度と品質を同時に向上させるための計画精度を追求します。

また、工場のステージに合わせて、育成工場、中堅工場、旗艦工場に分け、それぞれに役割を持たせています。現在も旗艦工場から育成工場へ技術者を派遣し、技術やノウハウの底上げを図っています。マツオカグループとしての育成と生産効率を最大化させる計画です。

事業戦略②重点施策:スマートファクトリー化による製造管理の高度化

重点施策の2つ目は、「スマートファクトリー化による製造管理の高度化」です。

生産・在庫・収益を見える化し、納期の短縮、安定供給力の向上、コストの削減、品質の強化を同時に実現します。このシステムを導入することにより、情報を一元化し、可視化と分析を即時化することで生産現場の改善や判断を支えることができます。

例えば、生産現場において、工程別の異常値を発見し、ボトルネックを事前に解消したり、日報や帳票類の電子化によりミスを抑制したり、さらに原材料や仕掛品、製品在庫をリアルタイムで把握することが可能となります。

事業戦略②重点施策:スマートファクトリー化による製造管理の高度化

すでにバングラデシュのIMBD工場やベトナムのタンチュオン工場をパイロット工場として、スマートファクトリー化のシステム導入に向けた準備を進めています。

導入後、検証稼働させながら、新中期経営計画期間において、徐々に他の工場にも展開していく計画です。

財務戦略③重点施策:資本政策・キャッシュマネジメントの高度化

金子:財務戦略についてご説明します。PBR1倍以上の達成に向けて、資本効率と企業価値を高める経営を推進していきます。

中期的方針として、投下資本利益率が資本コストを超過することを出発点とし、持続的に株主の期待を上回る成長と価値創造を目指します。

重点施策としては、ROE10パーセント以上を目標に、資本効率の向上を図ります。なお、新中期経営計画期間内ではROE9パーセント以上を定量目標として設定しました。

厳格な投資判断と評価、キャッシュマネジメントの高度化を実行し、資本効率の向上につなげていきます。また、成長戦略の発信を中心に、これまで以上に株主のみなさまとの対話と情報開示を強化していきます。

財務戦略③ 重点施策:キャッシュ創出力強化による成長投資と株主還元の両立

事業成長により獲得した資金を効率的に配分するため、キャピタルアロケーションの方針を設定しました。

営業キャッシュ・フローを中心とした配分可能資金を150億円から200億円と想定し、その55パーセントから65パーセントを将来のさらなる成長への再投資と事業基盤投資に配分します。これは3年間でおおむね100億円規模になる見込みです。

また、獲得したキャッシュの一部を株主のみなさまに還元します。新中期経営計画内では、配当性向35パーセントを目安とし、業績などに応じて機動的に株主還元の追加を検討していきます。

さらに、M&A案件など成長を加速するための資金や、パンデミックや天災など不測の事態に備えるリスク対応資金も確保します。

財務戦略③ 重点施策:キャッシュ創出力強化による成長投資と株主還元の両立

3年間の設備投資金額の概算です。MESやERPなど工場現場の効率化を目的としたシステム投資に6億8,000万円、生産能力拡大を目的とした工場新設や生産設備拡張投資に71億5,000万円、工場の安定稼働と製品の安定供給を目的とした工場維持投資に26億7,000万円と、合計で105億円を計画しています。

工場の拡大投資とシステム投資は、当社グループの事業成長の基盤となる投資です。これらの成長投資額の計画は78億3,000万円で、全体の投資計画の75パーセントを占めています。

株主還元方針

株主還元方針です。新中期経営計画の初年度である2027年3月期より、配当性向の目安を5パーセント引き上げ、35パーセントとします。また、配当に加え、業績や財政状態、株価の状況に応じて、機動的に還元を実施することを検討していきます。

人財戦略④ 重点施策:ASEAN諸国等での事業拡大に対応したグループ人財戦略

松岡哲:人財戦略・人的資本への重点的な取り組みです。

当社グループでは、「全てのグループ人財がいきいき働く」をマテリアリティとして、多様なバックグラウンドや知識、経験を持つ人財をワンチームにまとめ、ともに挑戦し学びあう職場環境を整備してきました。

新中期経営計画では、さらにグローバル成長を支える組織基盤の強化を図るため、「ASEAN諸国等での事業拡大に対応したグループ人財戦略」を重点施策の1つ目としました。各国の技能人財が国境や工場の垣根を越えて、現場指導や改善活動を行える横断型スキームの構築を目指します。

人財戦略④ 重点施策:現場力・技術レベル向上を目指す「横断的活動」の制度設計

重点施策の2つ目である「現場力・技術レベル向上を目指す『横断的活動』の制度設計」としての取り組みは、「縫製技術・ノウハウの組織的循環」「グローバル貢献を促す制度設計」「データに基づく戦略的な人財配置」の3点です。

これらの効果が相互に作用することで、グループ全体のグローバル成長を支える組織基盤となります。

サステナビリティのための取り組み

サステナビリティのための取り組みです。当社グループは、「服を着る人も作る人も幸せになる社会をつくる」をサステナビリティ指針として掲げています。

私たちの事業は、創業以来、グループ全従業員2万人の生活基盤を支えると同時に、従業員によってものづくりが支えられてきました。グループ工場の安定稼働と収益確保は、働く人々の尊厳を守るための不可欠な土台であり、私たちにとって重要なサステナビリティ活動の根幹でもあります。

また、当社グループの工場はお客さまの要望に応じて国際監査を継続的に受けています。これは、国際基準を上回るという生産現場の信頼性を証明するものであり、国際基準に耐えうる強い工場であることを示す、私たちの品質・倫理観の揺るぎない土台となっています。

サステナビリティのための取り組み

具体的な取り組みとして、これまで職場環境の整備や福利厚生の提供に加え、太陽光パネルの設置などを通じて再生エネルギーを活用してきました。

新中期経営計画では、女性雇用の継続的な拡大や女性管理職の積極的な登用、業務の見える化や標準化を実施し、マニュアル化を推進します。

また、CO2排出量削減の活動展開とモニタリングの強化を通じて製造責任を果たします。さらに、デジタルトレーサビリティの実現によって、永続的な信用と透明性の確立を図ります。

お客さまや地域からの信用、そして透明性を武器に、グローバルサプライチェーンにおいて最も信頼されるパートナーを目指していきます。

私からの説明は以上です。ありがとうございました。

質疑応答:スマートファクトリー化の効果について

司会者:「新中期経営計画のスマートファクトリー化の推進について、検証を行いながら導入を行うとのことですが、具体的にどのような効果を見込むのでしょうか?」というご質問です。

松岡哲:スマートファクトリー化の推進は、製造管理の高度化を目的としています。生産・在庫・収益をリアルタイムで見える化し、納期短縮、安定供給、コスト削減、品質強化を同時に実現することを目指します。

MESは、工場の製造現場を管理する中核的なシステムです。工程ごとの異常をリアルタイムで検知し、悪化要因を事前に排除することで品質を維持します。

さらに、日報や帳票類の電子化による入力ミスの防止、原材料や仕掛品、製品在庫の即時把握、生産進捗の可視化を通じて、計画どおりの生産を確実に実現する体制を整えています。これにより、納期どおりの出荷や安定供給を強化し、現場改善のスピードを飛躍的に向上させます。

ERPは、企業全体の情報を一元管理することで経営判断を支え、統合します。これにより、経営状況をリアルタイムに把握することができ、迅速な意思決定やサプライチェーンの最適化が可能となります。

これらの取り組みは、顧客対応力を強化するための施策であり、生産キャパシティの拡大と並ぶ重要な柱と位置づけています。

質疑応答:株主還元強化を検討する判断基準について

司会者:「新中期経営計画において、配当性向35パーセントを目安としつつ、業績に応じて株主還元を強化する方針とのことですが、株主還元強化の具体的な判断基準は何でしょうか?」というご質問です。

金子:配当性向35パーセントを目安とすることは、新中期経営計画の事業計画およびキャピタルアロケーションからシミュレーションして算定し、設定しました。

株主還元のさらなる強化については、新中期経営計画における事業成長が想定以上のスピードで進捗しながらも、当面の新たな成長投資機会が発生していなかった場合に、獲得したキャッシュ・フローの一部を株主のみなさまに還元する考えです。

質疑応答:新中期経営計画における縫製事業の売上高増加の要因について

司会者:「新中期経営計画において、縫製事業の売上高が817億円と、2026年3月期比で23パーセント増加していますが、この大幅な増加の主な要因について、具体的な施策はありますか?」というご質問です。

松岡哲:主にASEAN諸国などの地域での生産を強化します。バングラデシュでは既存工場の生産設備を拡張し、1,000万枚の増産と64億円の増収を図ります。

ベトナムでは、当社グループ最大規模の工場であるアンナム工場の稼働を最大化し、60万枚の増産と13億円の増収を見込んでいます。

インドネシアでは、新工場の建設とその本格稼働により、300万枚の増産と51億円の増収を目指します。

質疑応答:新中期経営計画における為替差損益調整後営業利益の目標値について

司会者:「為替差損益調整後営業利益ベースでは、新中期経営計画の最終年度目標はどうなりますか? 新中期経営計画目標を為替差損益調整後営業利益で設定しなかったのはなぜでしょうか?」というご質問です。

金子:為替差損益調整後営業利益の目標については、算定に必要な一部の取引先さまとの契約レートが未定の期間が長いため、新中期経営計画では開示していません。

現時点では、経常利益を参考にしていただければと考えています。2026年3月期比27.7パーセント増の60億円を計画しています。

質疑応答:インドネシア新工場の建設時期と生産品目について

司会者:「新中期経営計画において、インドネシアでは300万枚の増産が予定されています。これは、新工場建設による効果を見込んでのことだと理解していますが、新工場の建設時期と生産品目について教えていただけますか?」というご質問です。

松岡哲:2027年3月期に新工場の建設を開始し、テスト生産まで着手したいと考えています。生産の進捗状況を見極めながら、本格的な稼働開始はその翌年の2028年3月期を見込んでいます。

生産アイテムは、カジュアルウェアにあたるボトムスを予定しており、新中期経営計画の最終年度にあたる2029年3月期中には、年間300万枚程度の生産能力を達成できるよう計画を進めていきます。

質疑応答:横断的な人財活用が業績拡大にもたらす効果について

司会者:「新中期経営計画の人財戦略について、グループ全体の横断的な人財活用が、どのように業績拡大につながるとお考えでしょうか?」というご質問です。

松岡哲:人財戦略に関する定量的な目標として、2029年3月期末までに、連結従業員数を2万4,000人規模へ拡大することを掲げています。

事業の持続的な成長には人財の力が不可欠であり、特に生産現場においては、採用、育成、定着の各フェーズでの対応が重要と認識しています。

人財を採用すると、縫製現場では未経験者が増えますが、当社グループには多くの技術者が在籍しているため、戦略的に人財を配置し、グループ内でノウハウを循環させることで工員の育成を行い、安定した定着を実現している点が当社グループの強みです。

引き続き採用を進めつつ、確かな生産体制で事業拡大を目指します。

質疑応答:縫製事業の利益率が大幅に伸びている要因について

司会者:「2026年3月期上期における縫製事業の利益率が大幅に伸びている要因は何でしょうか?」というご質問です。

金子:縫製事業の利益率が大幅に向上している要因は、生産効率の向上にあります。工場の現場では、生産アイテムを集約し、効率的な生産ラインを構築しています。

また、従業員の成熟度が高まったことで、1日当たりの生産枚数が増加しました。これにより、固定費の分散効果が高まり、利益率の改善につながっています。

質疑応答:バングラデシュ工場の生産拡大計画について

司会者:「新中期経営計画において、バングラデシュでは生産設備を拡張することで1,000万枚の増産を計画されていますが、工場を新設するのではなく、既存工場での拡張という理解でよろしいでしょうか?」というご質問です。

松岡哲:ご認識のとおりです。工場は新設ではなく、既存の工場を拡張します。具体的には、バングラデシュにあるTMBD工場で建屋を有効活用し、レイアウトの最適化やインナーウェアを中心とした生産ラインの増設を行うことで、生産能力の拡大を図ります。

また、主にワーキングウェアを生産しているバングラデシュのIMBD工場では、生産ラインを増設し、生産量の拡大を計画しています。

これら2工場で生産最大化に取り組むことで、約1,000万枚の増産を目指します。

質疑応答:新中期経営計画において人員増加を計画している国について

司会者:「新中期経営計画における非財務目標として、連結従業員数を2029年3月期で2万4,000人規模まで拡大を見込んでいらっしゃいますが、人員が増加する国としてはどこを想定していますか?」というご質問です。

松岡哲:主にインドネシアとバングラデシュでの人員増加を想定しています。背景として、両国とも人口規模が大きく、雇用環境が安定していることに加え、バングラデシュでは輸出産業の中心が繊維業であり、縫製に関する経験を持つ人財が豊富です。

また、当社グループの工場周辺地域では農業が主要産業であるため、縫製業への就業意欲が高く、採用活動において一定の優位性があります。このような環境を踏まえ、工場の稼働状況に応じてさらに人員を増やす計画です。

質疑応答:2026年3月期の通期業績予想の進捗について

司会者:「2026年3月期の通期業績予想の現状の進捗は、計画どおりだと理解してよいでしょうか?」というご質問です。

金子:現時点では、通期業績予想の達成に向けて順調に推移していると考えています。今期中の生産ラインの大部分に対して、すでに十分な受注をいただいており、生産も計画どおりに進行しています。

また、下期にずれ込んでいた一部の納品についても、現在は解消に向かっており、通期では当初の業績予想どおりの着地が可能と見込んでいます。

質疑応答:新中期経営目標達成に向けた課題と対策について

司会者:「最終目標の売上高900億円、経常利益60億円達成にあたってのリスクや懸念点、課題はありますか?」というご質問です。

松岡哲:最終目標である売上高900億円、経常利益60億円の達成に向けた課題の1つは、人財の確保だと考えています。生産ラインの増設に伴い、現地工場での従業員の採用、育成、定着が重要なテーマとなっています。

特に、人財の確保と定着は製造能力の拡充に直結するため、各現場マネージャーが主体的に取り組んでおり、全社会議などを通じて進捗を確認しています。

一方で、業績拡大の過程では内部の作業量や業務量が増加し、組織が膨張に耐えられなくなるリスクも想定しています。

これを回避するため、売上拡大と同時に、全社的に業務プロセスの効率化を推進し、安定した基盤を築く計画です。

質疑応答:新中期経営計画における新たな資金調達の必要性について

司会者:「投資計画に関連して、新たな資金調達の必要性はどの程度ありますか?」というご質問です。

金子:新中期経営計画における総投資額は、3年間で105億円を計画しています。これに必要な資金で、特に将来、利益につながる成長投資に関しては、営業キャッシュ・フローから獲得する資金の再投資が中心になると考えています。

一方で、投資機会を逃さないよう財務の安全性を確認しつつ、借入による資金調達を活用する予定です。

質疑応答:国際情勢の変化と事業活動への影響について

司会者:「高市総理の発言による今後の中国事業への影響は、何かしらあるとお考えでしょうか?」というご質問です。

松岡典:国際情勢の変化について注視していますが、現時点で当社グループの事業活動に直接的な影響は確認されていません。中国を含む海外拠点や取引先との関係についても、通常どおりのオペレーションを継続しています。

今後も地政学的リスクを含めた外部環境の変化に適切に対応できるよう、情報収集とリスク管理を強化していきます。

松岡典之氏からのご挨拶

本日は当社グループの2026年3月期第2四半期決算説明会兼新中期経営計画説明会にご参加いただき、誠にありがとうございました。

新中期経営計画の達成と、その先の事業成長の実現を見据えながら、日々挑戦を続けていきます。みなさまにおかれましては、今後とも引き続きご支援賜りますよう、どうぞよろしくお願いします。

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