アイホン、通期業績見通しを据え置き 下期は販売価格見直しの効果本格化で収益改善へ、年間配当130円の安定還元も継続
本日の内容

鈴木富雄氏:みなさま、こんにちは。アイホン株式会社代表取締役社長の鈴木です。本日は、当社の決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。さっそくですが、2026年3月期第2四半期決算の説明に移ります。
本日は、スライドに記載の内容についてご説明します。
経営環境

2026年3月期第2四半期決算のハイライトについてご説明します。第2四半期までの経営環境です。
為替の状況は、当社の期初想定どおり円安基調のままとなっています。これにより、海外売上の底上げというプラスの影響に加え、海外仕入れによる原材料費の増加といったマイナスの影響も依然として継続しています。
市場の動向としては、国内戸建住宅市場では防犯需要が依然として高い状態が続いており、国内集合住宅市場においてもリニューアル需要が高水準を維持しています。
一方で、北米市場では関税政策の影響を中心に、経済の先行きが不透明な状況が続いています。欧州市場では、ウクライナの紛争が長期化していることや政治の混乱により経済活動が停滞し、景気が減速している状況です。アジア・オセアニア圏では、中国の不動産市況の不安定化を背景に建設投資の停滞が続いています。
連結業績

そうした経営環境の中、国内では戸建住宅市場やケア市場を中心に売上が増加し、前年同期比4パーセントの増収となりました。
一方で、海外では主力の北米市場で前年同期のバックオーダー解消による売上増加の反動減が見られたほか、関税政策により米国経済が不透明さを増す中で販売代理店の在庫抑制に伴い、当社製品の購入が控えられたことなどにより、前年同期比17.8パーセントの大幅な減収となりました。
その結果、連結業績は売上高が302億1,000万円となり、前年同期比で2.5パーセントの減収となりました。利益については、利益率の高い海外市場の売上構成比が低下したことによる利益率の悪化や、開発費や人的投資にかかる経費の増加等が影響し、大幅な減益となっています。
売上高の増減要因

スライドは、市場別に売上高の変動を示した滝グラフです。国内市場では、戸建住宅市場とケア市場を中心に売上が大幅に増加しましたが、一方で集合住宅市場では、前期の商品供給の安定化による一時的な売上増加の反動減が見られたため、売上が減少しています。国内市場全体の売上高は、前年同期比4.0パーセント増加の226億6,000万円となりました。
一方で、海外市場では、主力である北米市場において、前年同期に見られたバックオーダー解消に伴う売上増加への反動減や、販売代理店の在庫抑制が大きな影響を及ぼし、海外市場全体の売上高は前年同期比17.8パーセント減少の75億4,000万円となりました。
国内市場(戸建住宅)

各市場の動向について詳しくご説明します。まず、国内の各市場についてです。戸建住宅市場における売上高は、前年同期比27.9パーセント増加の25億4,000万円となりました。
新築分野では、主力商品の価格改定に伴う駆け込み需要や、他社採用先へ積極的に受注活動を行ったことが奏功し、前年同期比27.6パーセントの売上増加となっています。
リニューアル分野では、防犯意識の高まりを背景にリニューアル需要が増大し、前年同期比28.9パーセントの売上増加を達成しました。
国内市場(集合住宅)

当社の売上の中核となる国内集合住宅市場における売上高は、前年同期比1.2パーセント減の151億2,000万円となりました。
新築分野に関しては、当社の納入時期にあたる分譲マンションの新築着工戸数が減少するなど、厳しい市場競争環境が続いています。その中で、宅配ソリューションサービス「Pabbit」の提案により、賃貸マンション向け商品「PATMOα」の販売が好調に推移し、売上高は前年同期比2.5パーセント増加しました。
リニューアル市場における売上高は前年同期比で2.8パーセント減少しました。一見すると売上が鈍化しているように見えますが、前年同期は、価格改定を控えた需要の前倒しや商品供給の安定化に伴う販売量の増加などの要因で、大きく売上が拡大したタイミングでした。そのため、実質的には、高いセキュリティニーズを背景にシェア拡大が進み、販売が拡大したと捉えるべきだと考えています。
「Pabbit」サービスに対する顧客の評価は非常に高く、将来性を見越して当社製品の採用が増加しており、これが今後のリニューアル売上拡大に貢献すると期待しています。
国内市場(ケア)

ケア市場の売上高は、前年同期比8.5パーセント増加の36億8,000万円となりました。新築では、病院の着工戸数が引き続き減少傾向にある中、医療・介護従事者不足の解消に向けた「見守り支援」のニーズを背景に営業活動に努めましたが、売上高は前年同期比2.7パーセント減少となりました。
リニューアルにおいては、医療・介護施設における大規模修繕やICTロボットの導入に関し、各自治体による補助金などの支援が継続されている中、ナースコールや見守りカメラの活用に伴う「見守り支援」ニーズが引き続き高い水準を維持しています。
このようなニーズに対応するため、病院や施設へのソリューション提案活動を継続した結果、売上高は前年同期比13.7パーセント増加しました。
海外市場(北米)

海外市場についてご説明します。主力市場である北米の売上高は、現地通貨ベースで前年同期比20.5パーセント減となりました。円貨ベースでも為替の影響による減少があり、前年同期比24パーセント減の46億1,000万円となっています。
この要因は、前期の在庫回復に伴う第1四半期の売上増に対する反動減に加え、関税政策に関連した米国経済の不透明さが影響し、販売代理店による在庫抑制などの動きがあったためです。その結果、販売が伸び悩みました。
海外市場(欧州)

欧州の売上高は、現地通貨ベースで前年同期比7.5パーセント減少、円貨ベースでは為替の影響もあり前年同期比6.3パーセント減少の20億6,000万円となりました。
ウクライナ紛争や政治的な混乱が見られる中で欧州経済は依然として停滞していますが、主要国であるフランスではIPネットワーク対応インターホンシステムの販売が伸びました。しかし、欧州や中国企業との価格競争が激化したこともあり、最終的には販売額は減少しました。
営業利益の増減要因

スライドは、このような売上の結果として得られた営業利益について、前年同期と比較した増減の内訳を示した滝グラフです。減収による減益、とりわけ、相対的に利益率の高い海外市場での売上構成比の減少に伴うセールスミックスの悪化や、開発費・人的投資の増加により、営業利益は減少しています。
連結業績予想

以上を踏まえ、2026年3月期通期の業績見通しについてご説明します。2026年3月期の通期連結業績は、売上高が前期比3.3パーセント増の654億円、営業利益が前期比18.0パーセント増の45億円という当初計画を据え置いています。
先ほどご報告した中間業績の結果から見ると、高い目標と受け止められるかもしれません。しかし、売上目標の達成に向けて、相対的に利益率が高い国内リニューアル売上の期内受注獲得にさらに注力するとともに、期初から進めてきた販売価格の見直しの効果が下半期中盤から本格化すると予想しています。
なお、米国の関税政策による下期の市況変化や、関税額の販売価格への転嫁に対する反響など、間接的な影響については不確定な要素が多いため、現時点ではこの業績予想には織り込んでいません。影響の度合いが明確になり、大きな影響が生じた場合には、あらためて開示する予定です。
連結業績予想(推移)

スライドは、売上高と営業利益の推移をまとめたものです。報告したとおり、国内の集合住宅市場でのシェア拡大と利益確保を進め、グループ全体で増収増益を目指し、過去最高の売上高更新と利益水準の向上に努めていきます。
事業活動トピックス(国内)

第8次中期経営計画の戦略テーマの1つである「国内顧客サービスの拡充」に関連する取り組みとして、集合住宅市場における新たな収益モデルの確立、いわゆるコト売りに関する取り組みである「Pabbit」というサービスの状況についてご説明します。
「Pabbit」というサービスは、集合住宅のオートロックを解錠し、置き配を含む安心・安全な宅配を可能にすることで、社会課題となっている再配達の低減に貢献するものです。
また、「Pabbit」サービスの利用にあたっては、入居者や管理会社、施主がコストを負担するのではなく、再配達を省けた運送会社や、サービスを利用して玄関先まで荷物を届けることができた事業者が、「1回の解錠につきいくら」というかたちでコストを負担する仕組みとなっています。
「Pabbit」によって、配送事業者は再配達にかかるコストを削減でき、再配達に伴う燃料の削減を通じた環境負荷の低減も期待できます。
また、配達員は無駄な待ち時間を削減でき、労働時間や残業時間の短縮が可能です。受け取る側はコストを気にせず利便性を享受できるだけでなく、受け取り時間を気にする必要もありません。施主さまにとっては、エントランスに宅配ボックスを過剰に設置する必要がなくなるうえ、置き配対応可能な物件として差別化のポイントにすることができます。
当社は、このサービスによりサービス収益を得るだけでなく、将来性を評価いただくことでインターホン自体の売上増加にもつながっています。まさに一石五鳥、六鳥ともいうべきサービスです。現在は、デベロッパーや管理会社、賃貸オーナー、REIT事業者に対し、このサービスの紹介・普及・導入を推進しています。
事業活動トピックス(国内)

「Pabbit」サービスについてです。宅配事業者との連携を基盤とした置き配事業にとどまらず、ネットスーパーや生活協同組合などのデリバリー事業者、クリーニング事業者といった多岐にわたる生活パートナーとの事業連携が進展しています。最近では、全国初となる食配サービスの導入を新築分譲マンションで実現し、好評を得ています。
「Pabbit」サービスは、再配達の削減だけでなく、配達関連業務の効率化や入居者の利便性向上にも貢献するソリューションとして、評価を確立しつつあります。不動産業界や物流業界をはじめ、さまざまな業界から多くの注目やお問い合わせをいただいています。
SDGsにおけるより住みやすい街作りの実現という観点からも、魅力的なサービスであり、社会インフラとして定着・発展させていきたいと考えています。
事業活動トピックス(国内)

そうした中、2025年3月25日付で国土交通省より置き配の普及に向けた取り組みに関し、関連業界への周知が発出されました。今回の周知文には、消防庁予防課と調整済みである旨が記載されています。また、具体的な置き配の方法についてもガイドラインが示されています。
こうした動きを受け、消防法に関連して避難通路確保の観点から置き配導入に慎重な姿勢を示していたデベロッパーや管理会社においても、方向性が明示されたことで、それぞれの動向に少しずつ変化が生じ始めているように感じています。
当社としては、この機運に乗じて、「Pabbit」サービスの採用拡大および市場への浸透をさらに加速していきたいと考えています。
継続的な取り組み(CareRings Contact)

コト売りに関連して、ケア市場で好評をいただいているアプリケーション「CareRings Contact(ケアリングス コンタクト)」についてご紹介します。
「CareRings Contact」は、医療施設や介護施設の従事者向けのアドレス帳アプリケーションです。シフト制勤務に従事している医療・介護スタッフが共有のスマートフォンを活用する際に、円滑な業務の引き継ぎやコミュニケーションを実現するためのツールです。
出勤している医療・介護従事者の情報をスマートフォンの画面上でリアルタイムに確認でき、スムーズな連絡を支援することで、業務の効率化や省力化を実現し、より良いコミュニケーション環境を提供するアプリケーションサービスです。
継続的な取り組み(CareRings Contact)

現在、医師の働き方改革が進む中で、特定医療行為を行う看護師が増えています。その結果、医療現場における医師と看護師のコミュニケーションの機会が、以前よりさらに増加しています。
一方で、医師にとっては、特定医療行為が可能な看護師の出勤状況や配置状況を把握しづらいという課題があり、人づてに該当の看護師を探すという状況がこれまで多くあったと聞いています。
そのような状況の中で、「CareRings Contact」を導入いただいたことで、スマートフォン画面から関係者の勤務状況や属性情報をすばやく確認し、円滑にコミュニケーションを取ることが可能になっています。
ある病院での効果検証によると、「CareRings Contact」の導入前には1ヶ月間で263回あった病棟への問い合わせ回数が、導入後には18回となり、93パーセント減少しました。これにより、効率的なコミュニケーションが取られていることが確認されています。
また、「Pabbit」サービスだけでなく、こうしたアプリケーションを通じたソリューション提案やコト売りを推進するなど、モノ売りにとどまらない価値提供の拡大を図っています。
株主還元(配当)

以上のような取り組みを踏まえ、株主還元についてご説明します。第8次中期経営計画の期間中は、株主のみなさまのご期待にさらに応えるべく、安定配当の方針は維持しながら、配当水準を引き上げています。
その還元強化の方針を踏まえ、今中間配当については当初の配当予想どおり1株あたり50円としました。また、期末配当については1株あたり80円とし、年間配当は当初予定どおり130円を予定しています。
なお、本配当には、2025年3月期に引き続き、第8次中期経営計画期間における追加還元が含まれています。
長期経営戦略イメージ

最後に、2026年3月期に最終年度を迎える第8次中期経営計画の進捗状況についてご説明します。まず、第8次中期経営計画の基盤となる長期経営戦略における位置付けや、中期方針について、あらためてご説明します。
こちらのスライドは、長期経営戦略のイメージ図を示しています。現在の国内市場環境として、今後10年程度は国内の集合住宅市場を中心にリニューアルの拡大が一段と見込めると考えています。
こうした国内の成長が期待できる間に、成長の軸足を海外市場へシフトしていくとともに、社会課題となっている再配達問題の解決に向けたソリューション提案である「Pabbit」サービスなど、周辺事業やコト売りへの取り組みをさらに拡大・加速していきます。
また、利益貢献度の高い海外市場への成長投資を含め、これまで以上に効率的かつ確実に利益を生み出す仕組みを確立し、長期的にはROE10パーセント以上の実現を目指す考えです。
第8次中期方針

そうした長期経営戦略を踏まえ、第8次中期経営方針では「顧客と社会の期待に応え、発展し続ける企業体質をつくりあげる」を掲げました。
直接的な顧客にとどまらず、ESGやSDGsといった社会からの期待に応えるとともに、5年後、10年後、その先も発展し続けるために、第9次・第10次中期経営計画で飛躍できる強靭な企業体質を築くことを、第8次中期経営計画の狙いと位置付けています。
第8次中期戦略テーマ

スライドは、第8次中期戦略における取り組みをまとめた概念図です。重要な戦略テーマである「国内顧客サービスの拡充」「海外事業の拡大」「開発力の強化」の3つの戦略に取り組むとともに、それらを実現可能な成長基盤の充実を図り、顧客価値の向上、ひいては当社の企業価値と社会価値の向上を目指しています。
直近のM&A履歴

重要戦略テーマの1つである「開発力の強化」に関連するトピックスを1つご紹介します。ここ数年にわたり、ソフトウェア開発の担い手として、北海道の株式会社ソフトウェア札幌と、地元である愛知県の株式会社テシオテクノロジを続けて子会社化してきました。
そこに新たに、昨年12月に、東京都でソフトウェアの受託開発を行っていた株式会社日本マイクロリンクを子会社化しました。重要性が増しているソフトウェア開発において、リソースの確保とノウハウの蓄積を実現するための開発体制の確立を目指し、開発力の強化を加速しています。
定量目標

第8次中期経営計画で掲げた最終年度の定量目標は、2024年5月に修正を発表しています。これに対し、2025年5月8日に発表した通期業績予想は、為替の影響や研究開発費の増大に加え、賃金ベースアップを含む人的資本投資の継続もあり、利益目標の達成が困難な状況となったため、営業利益を下方修正するなどの見直しを行いました。
中期経計と次期業績予想の営業利益差異(2026年3月期)

スライドは、営業利益に関する第8次中期経営計画の修正目標値と、下方修正した2026年3月期の業績予想との差異を示した滝グラフです。
売上増加による利益の増加というプラス要素はあるものの、為替の影響によるコスト上昇や開発費、賃金ベースアップといった経費の増加もあり、修正目標を11億円下回る45億円と予想しています。
為替レートの推移

為替の影響についてです。未達要因の1つとして大きな影響を与えたため、もう少し詳しく補足説明します。
当社はUSドルとタイバーツにおける為替の影響を大きく受ける事業構造を有しています。海外生産比率が海外売上比率を大きく上回っているため、円安が進むほど、原価や販管費の増加が売上による利益増を上回り、結果として営業利益が押し下げられるという利益構造となっています。
つまり、ここ数年続いている円安基調は、当社の営業利益に対してネガティブに作用しています。なお、2026年3月期においては、USドルの想定レートを148円、タイバーツの想定レートを4.3円としています。
USドルの為替感応度については、1円の円安で営業利益が2,000万円から3,000万円減少すると見込んでいます。また、タイバーツについては、0.01円の円安で営業利益が1,000万円から2,000万円減少する見込みです。
研究開発費の推移

為替に続いて、中期経営計画の修正目標に対する未達要因の1つである研究開発費の増大について補足説明します。
研究開発費は、2023年3月期までは毎年30億円台前後で推移していました。しかし、ソフトウェア開発の規模が大きくなる中で、外注コストの上昇により、開発コストは年々増加しています。
特にコロナ禍の影響や部品逼迫・部品不足に伴う製品の設計変更などにより、開発効率が大きく悪化したことで、開発スケジュールに遅れが生じています。その結果、大規模な研究開発案件が複数同時に進行しており、研究開発コストは高止まりする見通しです。
今後は開発リソースの効率的な活用を進めるとともに、開発子会社と一体となり、開発力を強化していきます。引き続き、新製品開発の品質とスピードの向上に努めていきたいと考えています。
販売価格改定の履歴(市場別)

円安による悪影響や開発経費の増大に対して、当社では経費節減などの企業努力を重ねてきました。しかし、適正利益の確保に向けて、2022年より販売価格の改定を継続的に実施しています。
本年度も、国内では7月に、海外では各国・地域の事情に合わせて価格改定を適宜実施しています。なお、価格改定の効果の大半は、下半期の中盤以降に本格的に表れ始めると見込んでいます。今後も引き続き、原材料価格や人件費の上昇、世界的なインフレ傾向、市場の受け止め方などを見極めながら、適宜見直しを行っていく予定です。
以上で、2026年3月期第2四半期決算の概要および今年度の見通し、第8次中期経営計画の進捗状況についてご説明しました。引き続き、みなさまのご期待に応えられるよう、グループ一丸となって着実な企業成長を果たしたいと考えています。ご清聴いただきありがとうございました。
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