スターツ出版のビジョン
菊地修一氏:スターツ出版代表取締役社長の菊地修一です。暑い中、お越しいただき、誠にありがとうございます。それでは、スライドに沿って2025年12月期第2四半期の決算についてご説明します。
当社の企業ビジョンは「感動プロデュース企業へ」です。
スターツ出版のミッション
ミッションは「文化と笑顔の需要創造」です。
今期のスローガン
今期のスローガンを「イノベーションで次なる未来を!」とし、スタートしています。
中期経営計画の基本方針
中期経営計画の基本方針についてあらためてお伝えします。「右肩下がりの出版市場に抗うべく、コンテンツの多層化を推進」として、以下の3つを掲げています。
1つ目が「IP展開による、収益の最大化」、2つ目が「コミックシフトと新レーベルの創刊ラッシュ」、3つ目が「生成AI活用による、生産性の向上」です。
スターツ出版の事業領域
スターツ出版の事業領域は、スライドのとおり書籍コンテンツ事業とメディアソリューション事業に分かれます。
2025年第2四半期の決算
第2四半期の決算です。残念ながら上期は映像化作品やヒット作が少なく、発行点数も伸び悩んだため減収となりました。さらに、新レーベル創刊のコストと原価、人件費の増加が要因となり、大幅減益となっています。
第2四半期 売上高推移
第2四半期の売上高の推移です。スライドのグラフでお示ししたように、前年同期比で88パーセントとなりました。
第2四半期 営業利益推移
営業利益は前年同期比64パーセントとなりました。
第2四半期 四半期純利益推移
純利益は前年同期比68パーセントです。
セグメント別の状況
セグメント別の状況です。書籍コンテンツ事業は大幅な減収減益となりました。一方で、メディアソリューション事業は若干の増収増益で半期を折り返しています。
投稿サイトから作家を発掘、紙とデジタルの循環で読者を拡大
大きく減収減益となった書籍コンテンツ事業について、下期にどのように回復を進めていくのかを含めてご説明します。
当社の事業モデルは、投稿サイトを通じて作家を発掘し、紙とデジタルとの循環によって読者を拡大することを長らく続けています。
スライドにあるとおり、「小説投稿サイト」から始まり、最終的には「映像化」することが非常に重要です。映像化された作品の書籍は、再び書店で売れ始めるケースが続いています。
読者ターゲットをさらに細分化し、下期3ジャンルを新創刊
読者ターゲットをかなり細分化し、子どもから大人まで、あるいは、男性や女性に向け、さまざまなレーベルが増えてきました。今年の下期には新たに3レーベルを創刊する予定であり、後ほどこちらについてもご説明します。
書籍コンテンツ事業のレーベル別売上推移
レーベル別の売上推移です。スライドのグラフで見て取れるように、第1四半期および第2四半期ではレーベル別の売上が減少しています。2022年度よりは良いものの、2023年度や2024年度と比較すると大きく下がっています。
2023年から2024年にかけては、大型のヒット作、特に映画化が寄与し、非常に売上が伸びた年でした。しかし、今年の第1四半期および第2四半期については、IPによるヒット作がなく、「スターツ出版文庫」の単行本が減収となりました。
さらに、電子書籍の発行点数を増やせなかったことが原因で、「コミックベリーズ」「noicomi」も減収しています。一方で、それ以外のレーベルは若干ながら増収している状況です。
この売上減少以外に利益面においても、昨年および一昨年の非常に売れ行きが好調だった時期には、重版が相当かかっていました。重版がかかる際には、制作原価がリクープされた状態で、紙を印刷するだけということもあり、非常に利益率が高い状況になります。
しかし、今年は重版が昨年や一昨年と比べて大幅に減少しました。これが利益率の悪化につながる大きな要因となっています。また、新しい創刊レーベルの先行制作コストや人件費の増加も起因しています。
映像化次々決定、情報解禁後に原作書籍・アニメの販促開始
下期からの施策についてです。下期からようやくIP展開が本格化します。自社原作の映画化・ドラマ化・アニメ化・海外展開の進捗についてご説明します。
スライドには現時点で決定しているIPの展開内容を示しています。映像化が次々と正式決定しており、上期はあまり動きがありませんでしたが、第3四半期に映画が1本、第4四半期にドラマ化が2本決定しています。
来年2026年には映画化が5本、アニメ化が1本決定しています。また、再来年2027年にはアニメ化が2本、映画化が3本、ドラマ化が1本決定しており、現在、2027年の第4四半期以降の映像化に関して交渉を進めている状況です。
このように、下期から来年・再来年にかけては、ラインナップが決定しています。今後のタイムスケジュールとしては、映画化が決定した段階で、書籍に「映画化決定」の帯を巻いて、書店の「映画化決定コーナー」や、大々的な展示が可能となります。
さらに、キャストが発表できる段階になると、キャストの帯を巻いて大きく展開し、販売促進に結びついていきます。
累計580万部 「鬼の花嫁」TVアニメ化決定に伴う販促展示開始
具体的にご説明します。『鬼の花嫁』は累計で580万部を売り上げている、当社の最も代表的な作品です。こちらのTVアニメ化が決定しました。
スライドの写真のように、大型書店では「『鬼の花嫁』アニメ化決定」というかたちで、先月からちょうど販促展示がスタートしたところです。
「すべての恋が終わるとしても」TVドラマ化決定
『すべての恋が終わるとしても』シリーズは、「TikTok」で話題となり、大変売れた小説で、こちらのTVドラマ化が決定しました。
10月から放送開始、夜10時台という良い時間帯にスタートします。こちらに関しては、まだ販促は始まっておらず今後の展開となります。
こちらはシリーズで単行本が刊行されています。このシリーズの一斉展開をおそらく来月からスタートできるのではないかと思います。
「青春BL」シリーズ第一弾 TVドラマ化決定
昨年末に創刊した「青春BL」シリーズの第1号である創刊作品『修学旅行で仲良くないグループに入りました。』が非常に好調な売れ行きを見せ、注目を集めています。
こちらもTVドラマ化が決定し、10月から放送がスタートします。キャストもすでに決定し、販売促進活動は9月頃から開始される予定です。
スライドに記載のとおり、「BeLuck文庫」は非常に売れ行きがよく、今年1月から毎月2作品程度を発刊するのと並行しコミカライズ化を進めています。
コミカライズについては、TVドラマが10月にスタートしますが、12月から順次、デジタルや紙で発刊できるスケジュールとなっています。今期は12月のみですが、来期には毎月のように発刊できる体制で進めています。このTVドラマが、その起爆剤となると考えております。
累計150万部 「あの花が咲く丘で…」シリーズ映像化再スタート
一昨年と昨年の当社の売上利益を牽引した『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の続編である『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』の実写映画化が決定しました。
8月8日に『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が金曜ロードショーで放映され、その直後から文庫本が再び売れ始めました。また、その放送内で「続編の『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』が映画化決定」と発表されたところ、こちらも現在売れ行きが好調で、重版をかけている最中です。
作品の著者である汐見夏衛先生が、『あの夏のキミを探して』という新作を7月に発刊しました。この作品は発売後すぐに重版がかかり、汐見夏衛先生のシリーズが店頭に続々と並んでいる最中で、9月に大規模な展示を行う予定です。
そのため、9月以降は書店での展示が一層賑やかになると予想されます。ただし、実際の映画公開は来年ですので、その間に盛り上がりを維持すると同時に、映画のヒット次第では原作もロングランで売れる可能性があると考えています。
IPの海外展開をスタート
IPの海外展開もスタートしました。『鬼の花嫁』は紙・デジタルを合わせると、日本で累計580万部の大ヒットとなっています。さらにアニメ化が決定されたことから、アニメの放映に合わせ、英語、フランス語、韓国語、繁体字を使用する国で、紙とデジタルでの販売を開始し、北米ではデジタルで販売を開始しました。
アニメが成功し、「Netflix」や「Amazon Prime Video」などで配信されることになれば、さらに世界各国で原作を販売していくことが可能になると考えています。
また、『交換ウソ日記』という2014年に初版が発行された作品ですが、韓国で大ヒットしています。ベトナムや台湾でも紙の書籍販売を開始しています。
また、電子コミック作品『転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました』を翻訳し、各国の電子ストアでの配信も始めました。収益はまだ大きくありませんが、手始めとして、当社のコンテンツをさまざまな国で配信および紙の販売を展開し、今後の広がりを見ています。
新創刊レーベル
新創刊のレーベルについてです。第4四半期に3つの新レーベルを創刊します。まず、「OZbooks/comics」というコミックおよび文芸のレーベルを10月に創刊します。内容は、コミックエッセイとエッセイです。
11月には「コミックゼライズ」という少年コミックを創刊します。創刊に向け、すでに発刊している「コミックグラスト」との共同Webコミックサイト「マンガゼグラ」を7月に立ち上げました。販促用のサイトであり、立ち上げにもある程度のコストがかかっています。
これも先ほどお伝えした先行投資に係る部分です。弊社のコミックは、今後レーベルの本数を増やしていく予定であり、その影響力を高めるための手段となります。
最後に「BeLuckコミック」です。現在文庫と並行して制作を進めている青春BLで、10月にはドラマ化が予定されています。電子版は12月から創刊し、紙のコミックは来年発刊する予定です。
以上を踏まえ、第3四半期から立ち上がり、第4四半期の12月には相当数の発刊点数になるとお考えください。
新ジャンル開発にもチャレンジ
新ジャンル開発にもチャレンジしています。新たにモキュメンタリーホラーの単行本を発刊しました。発売直後に重版が決まり、映画会社数社からオファーが入っています。
まだ発刊したばかりですが、弊社のコンテンツは来年や再来年にかけて相当数の映画化が決定しており、各映画制作会社や配給会社とも良好な関係が築けています。弊社への期待度も非常に高く、「ぜひ、どこかのタイミングで映画化したい」といった企画が、未定ではあるもののお話があがっています。
当社のコンテンツは若者向け、Z世代向けが多い中で、「古典文学もよいのではないか」との考えから、新たな試みをスタートさせました。『エモ恋万葉集』など、若い世代が親しみやすいよう、万葉集、古典文学、百人一首に加え、論語をわかりやすく翻訳し、読みやすい単行本として発刊することを進めています。
下期より発刊点数大幅増加
発刊点数の予定についてお知らせします。第1四半期、第2四半期は社員の産休等による人員体制の変化により110本程度と振るわなかったものの、第3四半期は131本、第4四半期は164本と確定しました。来年以降に向けて、第3四半期、第4四半期の勢いを維持し、発刊点数を増やすべく人員を増やしました。
今年4月には新卒社員を12人採用し、半数を編集部に配属しています。昨年採用した新卒社員も戦力として活躍し始めています。発刊には半年から1年ほどの時間がかかりますが、この第3四半期から徐々に点数が増えていくかたちです。
掲載店舗数、予約組数はゆるやかに拡大
メディアソリューション事業についてです。「OZのプレミアム予約」は、掲載店舗数や予約組数が緩やかに拡大しています。
OZの「貸切会場予約」順調につき「少人数高級店貸切」も開始
半年前にお伝えしたかと思いますが、OZの「貸切会場予約」が非常に順調です。スライド右側のグラフは予約の推移を示しており、昨年と比べて今年は倍の水準で予約が入っています。今年の年末にかけて、相当な予約が見込まれています。
大人数の貸切だけでなく、大人の接待で利用できるような、少人数向けの1人当たり単価が2万円から3万円程度の高級店でも貸切予約が可能なサービスを開始すべく、現在、営業開拓を急いでいます。
ブランドソリューションのメディアブランド
弊社の長く続くメディアブランドについてです。『オズマガジン』は38年、『メトロミニッツ』は23年、『アエルデ』は42年、「オズモール」は29年の歴史を誇っています。
これらのメディアブランドを活かして、単に雑誌のタイアップや広告を獲得するのではなく、ブランドを活用した賑わい創出や観光支援ビジネスを展開しています。
ブランドを利用した賑わい・観光支援ビジネス
大手では三井不動産や森ビルの都心の大規模商業施設のオウンドメディア制作や企業の公式SNS運用支援などの業務を、『オズマガジン』や『メトロミニッツ』のテイストでといったかたちでいただいています。
また、松屋銀座の100周年アニバーサリー特設記念サイトも当社で制作しました。このように、ブランドを背景としたお仕事をいただいていることがあります。インバウンド需要も非常に増えてきていますので、ガイド・パンフレット・マップ・特典開発といった業務が大幅に増加しています。
加えて、賑わいを創出するためのイベント企画・運営・キャンペーンの業務も増加しています。
観光DXアプリ開発・運営(株)RelyonTripをM&A
すでに発表していますが、Relyon Tripという会社をM&Aしました。この会社は、小規模ながらお出掛け・旅行計画支援アプリ「SASSY」を開発・運営するスタートアップ企業です。
社長の西村氏は若く、弊社の雰囲気に合う人物で、実際に、彼が弊社に加わり、私たちのブランドソリューションのビジネスに「SASSY」というお出掛け・旅行計画支援アプリや、彼が持つIT・スタートアップの知見を取り込みながら、社内ベンチャーのような形式で社員と共に事業を推進してもらっています。
SASSYとメディアソリューション事業のシナジー
「SASSY」というアプリは「Instagram」や「Google マップ」と連動しています。
また、国内のみならず、アジア圏でも利用でき、インバウンド4ヶ国対応となっています。そのため、当社の行う地方自治体や商業施設へのサービスにおいても非常に力になるのではないかと考えています。
来期からは当社のメディアブランドと組み合わせた商品がどんどん販売できるのではないかと思います。年内はその実験を進めている段階であり、現在取り組みを進めている最中です。
「利益剰余金」は80億円越え(2024年末)
昨年末の段階で利益剰余金が80億円を超え、その豊富なキャッシュを基に資本提携やM&Aを進める成長投資に舵を切りました。今回の「SASSY」はその第1弾です。「SASSY」は非常に小規模の会社であり、当社として初めてのM&Aに挑戦した案件です。
豊富なキャッシュを“成長投資”に活かす
大きなリスクを負うことなく、M&Aの専門会社や対象企業とのやり取りを進めてみると、「なるほど、こういうことなのか」と理解が深まったと感じています。今後は、さらに規模の大きな良い案件を見つけながら、本格的に成長投資を進めていきたい考えです。
女性、若手の多い社員構成
当社は、穏やかで伸び伸びとした、社員の成長が持続できる企業風土を目指しています。若手が多く在籍し20代が104名、女性が全体の71パーセントを占めています。
社員を育成する各種施策
社員を育成するための各種施策も、ラインナップが充実してきています。社員の成長スピードも速くなっていると考えています。
コミュニケーションが活発で、社員同士‘仲の良い’社風を後押しする制度
コミュニケーションが活発で、社員同士で「仲の良い」の社風を後押しする制度があります。仲の良い和やかな社風で運営しています。上期は若干業績が落ちましたが、社内で下を向いている社員はおらず、今後は3ヶ年計画に基づいて着実に計画を進めていきます。