わたし、選んで、生きていく。

池内比呂子氏(以下、池内):みなさま、こんにちは。株式会社テノ.ホールディングス代表取締役社長の池内です。よろしくお願いします。初めに当社のパーパスについて、動画でご紹介します。

(動画流れる)

Purpose 存在意義

池内:当社のキーメッセージは「わたし、選んで、生きていく。」です。

そしてパーパスを「『手の』ぬくもりで、安心できる社会を創造する。」とし、そのもとに経営理念および「teno VISION 2030」をしっかり進めていきたいと思っています。

「テノ.」の由来

池内:社名「テノ.」の由来です。「テノ.」は、手のひらを意味しています。「もっと愛情を・・・もっと安心を・・・『手の』ぬくもりまでも伝えたい」という思いを込めて、社名をテノ.ホールディングスとしました。

経営理念

池内:経営理念には、「私たちは、女性のライフステージを応援します。私たちは、相手の立場に立って考えます。私たちは、コンプライアンスを推進します。私たちは、事業を通して社会貢献致します。」と掲げて、事業を展開しています。

昨今、ジェンダー平等の中で「女性だけを」というお声はたくさんありますが、先ほどのパーパスと同様、私たちは女性と男性が公平になるまで、女性そしてその女性の家族を支援していきたいと思っています。

目次

池内:ここからは、4つのセクションに分けてご説明します。1つ目が会社概要、2つ目が当社の特徴と強み、3つ目が2025年12月期の業績予想、4つ目が成長戦略についてです。

会社概要

池内:会社概要です。当社の本社は福岡県にあります。創業は1999年で、従業員数は2,059人です。

スライド下側の地図のとおり、福岡本社、東京本部、そして愛知県、大阪府、沖縄県を中心に事業を展開しています。

グループ概要

池内:グループ概要です。テノ.ホールディングスは純粋持株会社で、当社を含めてグループ12社で構成しています。傘下に6つの子会社と5つの孫会社があります。

テノ.コーポレーション、オフィス・パレットは保育事業を行っています。フォルテは介護事業を行っています。ホームメイドクッキングおよびセーフティージャパン・リスクマネジメントは生活支援事業でそれぞれ料理教室事業、少額短期保険業を行っています。ウィッシュは介護事業で障がい福祉事業を行っており、児童発達支援やデイサービスの施設を運営しています。

沿革

池内:沿革です。当社は、ベビーシッターサービスやハウスサービスの提供を目的に、1999年に私が1人でスタートした会社です。

創業以降、25期連続で増収となっています。これは社員全員が一丸となって努力した結果です。加えて病院や保育の規制改革、待機児童問題など事業環境の追い風もあり、順調に業績を伸ばすことができました。

必要な事業に取り組み続けた結果、会社を成長させることができ、2018年には東証マザーズ、福証Q-Boardへの上場を果たしています。さらに上場以降も、経営理念のもとM&Aや新規開設により事業を推進し、25期連続で増収となっています。

ガバナンス体制(2025年3月19日時点)

池内:ガバナンス体制です。私をトップとし、男性の役員、2名の女性執行役員という体制です。執行役員は事業会社の現場を支援しながら事業を進めています。

セグメント別売上高構成比

池内:セグメント別売上構成比は、スライドのグラフのとおりです。保育事業が79パーセントと、当社の売上の8割を保育事業が占めています。また、介護事業は7パーセント、生活関連事業が15パーセントという構成です。

事業内容① 保育事業(公的保育)

池内:セグメント別に事業内容をご説明します。まず、当社の一番の柱である公的保育については、東京を中心に福岡、大阪、名古屋で認可保育所を運営しています。

認可保育所は、国や自治体から補助金をいただき、保育サービスを提供します。経営のビジネスモデルで言うと「持つ」経営です。設備投資負担があり経営の自由度は低い反面、長期安定収益が見込める事業です。

事業内容② 保育事業(受託保育等)

池内:受託保育事業では、企業の福利厚生として受託した院内・事業所内保育所と放課後児童クラブといった学童保育所等を運営しています。

先ほどと違ってこちらは「持たざる」経営のビジネスモデルです。スライドの下に記載のとおり、院内・事業所内の受託保育所は、企業から補助金をいただき保育サービスを提供します。学童保育所等は、国や自治体から補助金をいただき、学童保育等のサービスを提供します。

関本圭吾氏(以下、関本):ここで、保育事業についてうかがいたいと思います。認可保育所や受託保育所の事業者には上場企業も多いと思いますが、御社の特徴や意識としてどのようなところに違いがあるのでしょうか?

池内:保育事業において他社との一番の違いは、多様な子育て支援を行っているところだと思います。具体的には認可保育所、受託保育所、バイリンガル幼児園、障がい福祉施設、学童保育、ベビーシッターなどです。

これらは、利用者や保護者のみなさまから寄せられた「こんなサービスがあったら良いのに」「こういう仕組みがあると助かる」といった声にお応えするかたちで事業を多様化させています。その結果、それぞれの事業がお互いに情報を共有しながら、ノウハウを活かすことができています。また、多様性ゆえに職員の採用については、当社でも最も大きな課題の一つです。しかし一方で、他社よりも間口の広い柔軟な採用の仕組みを持っており多様な人材の確保にも繋がっています。

このように、多様な子育て支援と、教育事業を横展開で行っていることが当社の強みであると思っています。

さらに、認可保育所や事業所内保育所については、それぞれの目的に応じて展開エリアを戦略的に絞っています。認可保育所は待機児童解消、一方で事業所内保育所では人手不足の解消と、それぞれの目的は違っています。

そのため、認可保育所は待機児童の多い首都圏を中心に展開しています。一方、事業所内保育所は、働きやすい職場環境として主に地方での「地の利が悪い」とか「車で行ける」とか「会社の横に車で子どもを連れて行ける」といった要望に合わせて展開しています。

このように戦略的に展開エリアを選定している点も当社の強みだと思っています。

関本:それぞれのあるべき目的に合わせて、どこに展開するかということですね。

池内:おっしゃるとおりです。

事業内容③ 介護事業①

池内:介護事業です。住宅型介護施設は12施設を運営しています。

事業内容③ 介護事業②

池内:デイサービスを行う通所介護施設は、福岡に3施設を運営しています。

また、障がい福祉施設は愛知県で8施設を直営しています。それ以外にフランチャイズ事業として44施設があります。当社は保育事業に取り組む中で「障がいのあるお子さまたちのしっかりした居場所を作りたい」という思いで、この障がい福祉施設に取り組んでいます。

事業内容④ 生活関連支援事業

池内:生活関連支援事業についてご説明します。スライドの上側の写真は料理教室事業です。エプロンをつけているのは全員女性ですが、将来的には、男性のエプロン姿の写真を載せたいという目標があります。その他に、少額短期保険業があります。

事業内容⑤ その他

池内:その他として、ベビーシッターサービス、ハウスサービス、結婚相談所事業「テノマリ」、「テノスクール(tenoSCHOOL)」、「保活アシスト」、人材派遣サービスと、幅広く事業を展開しています。

運営施設数の推移(セグメント別)

池内:セグメント別の運営施設数の推移は、スライドのとおりです。2025年4月1日時点では398施設の事業を展開しています。

関本:施設数の推移を見ると、直近では保育事業の出店がしばらく横ばいのように見えます。 その背景や今後の考えを教えてください。

池内:スライドの棒グラフのうち、下側の濃い赤色が認可保育所です。おっしゃるとおり、認可保育所は今横ばいですが、一方でピンク色の受託保育所や学童などは伸びている状況です。

今後の認可保育所の開設については、M&A含めて、そのようなチャンスがあれば拡大していきたいと思っています。また、今ニーズが高い学童にも力を入れながら進めていきたいと思っています。

コア・コンセプト~ライフステージとサービススコープ

池内:当社の特長と強みについてご説明します。

まず、コア・コンセプトです。私どもの事業は、スライドの図に記載のとおり、結婚・出産・育児・八面六臂・介護といった女性のライフステージの中で「いったい何が必要なのか」をコンセプトに事業を展開しています。

今の主力事業は、出産・育児ですが、今後は介護・結婚にも注力し、ライフステージに合わせて拡大していきたいと考えています。

テノ.ホールディングスの「特長」と「強み」

池内:当社の特長を4つご紹介します。1つ目は、スライドの図の中央にある女性目線です。当社は女性が多い会社ですので、女性目線で付加価値サービスを提供することにより差別化し、母親に響くサービスを提供しています。こちらが一番大きな特長です。

それを軸に2つ目の多様な子育て支援、3つ目の「テノスクール」、4つ目の公的保育・受託保育があります。

特長と強み① 女性目線~本物の保育

池内:それぞれの特長と強みをご紹介します。まず、女性目線で保育所がどのようなことを行っているのかについてです。

一般的な保育所は「子どもたちのため」という思いや、子どもたちへの理念を持って運営しています。一方で、当社は子どもたちの理念だけでなく、保護者やおかあさんたちへの支援という視点をいつも持っていることが大きく違うところです。

スライドに記載した内容は主にお子さまに対してですが、子どもたちが、将来「うまれてきてよかった!」と思えるように、保育課程からプライベートカリキュラムまで具体化しています。

特長と強み② 女性目線~本物の保育

池内:当社は、英語・ダンス・食育の3つを主軸としたカリキュラムを導入し、子どもたちが自分の道を選ぶためのコンパスをしっかり持てるようなプログラムの作成に努めています。

特長と強み③ 女性目線~本物の保育

池内:「チームエンゲージメントセンター」と「保育みらい研究所 Compass」についてです。

「チームエンゲージメントセンター」では、働きがいのある会社(園)を作っていくための取り組みを行っています。「保育みらい研究所」では、選ばれる保育所になるための取り組みを推進しています。

これら2つを、両輪として連携しながら事業を進めることで、保育の質の向上につなげています。

特長と強み④ 女性目線~子育て支援

池内:おかあさんたちに対する取り組みについてご紹介します。

まず前提として、仕事と子育ての両立は大変です。子育て中の家庭にとって、どのような環境が子どもにも保護者にも良いものかと考えると、やはりおかあさんたちがストレスを抱えないような子育てができる環境を作ることだと思います。

それには、本物の保育や安心安全だけでなく、便利さも含めての支援が必要だと考え、取り組みを行っています。

1つの例ですが、スライドの右側に「小さなおにぎり」と記載しています。当社の保育所では、夕方になると子どもに「小さなおにぎり」をあげています。その理由は、子どもとおかあさんが家に帰って、おかあさんが夕食を作る間に子どもが泣かずに待てるようにするためです。

それにより、おかあさんもストレスを抱えずにおいしい料理を作って楽しく食事し、そして夜には絵本を読んで聞かせる時間があって、そして翌朝にはまた元気に保育所に来ていただくことができます。

当社ではこのような「24時間に寄り添う子育て支援」を進めています。

特長と強み⑤ 多様な子育て支援・多様な働き方

池内:多様な子育て支援、多様な働き方についてです。当社はベビーシッターからスタートした会社ですので、「好きな時間に好きな場所で」仕事ができることをキャッチコピーに掲げています。

「子どもが小さく働く時間があまり取れない」「子どもが大きくなって大学にも行かせるのに仕事を増やしたい」など、さまざまな女性のライフステージに合わせた働き方を選べる仕組みがあるのは、当社の強みだと思っています。

働き方は正社員、パート、派遣もありますし、職種は保育所、幼稚園、子ども教室、ベビーシッターと、いろいろなかたちがあります。働く場所も、福岡県、東京都、沖縄県など、多様な場所があります。

このネットワークを使いながら、直接人材確保の戦略を持っており、採用の間口が広いところも当社の強みであると思っています。

関本:この特徴と強みはとてもおもしろいポイントだと感じました。保育事業者はどこも保育士の確保が重要な課題だと聞いています。保育士のネットワークから直接採用する仕組みについて非常にユニークだと思います。この仕組みについてもう少し詳しく教えてください。

池内:例えば、通常は認可保育所があったら直接そこだけの募集をかけますが、当社の場合はベビーシッターからスタートした会社ですので、スタートが職員登録なのです。

そして、どこで仕事をしたいかなどの条件を確認し、その人のライフステージに合わせて働く場所を提供しています。そのように働き方を選べるスタイルになっていることが強みです。

また、登録制にしているため、「別にこの認可保育所で働かなくても、働くのであれば他にもありますよ」と情報提供できる仕組みがあり、辞めた方が戻ってくることも大変多いです。また、ライフステージの変化により、あるいは「転勤したため、転居先で紹介してほしい」といった話も非常に多いです。

私としては、辞めた方も戻ってきて働けるようなネットワーク還流の仕組みにしたいと思っています。このように、採用のうち3割がリファラル採用(社員や知人などからの紹介)であることは当社の強みだと思っています。

特長と強み⑥ テノスクール(tenoSCHOOL)

池内:2005年から、保育士やベビーシッターを育成する学校「テノスクール」をスタートさせています。

当社はベビーシッターからスタートした会社ですが、ベビーシッターを利用しようと考えた方からは、「どのような人が来てくれるのか?」という質問を多くいただきます。

当社は、その答えとして「テノスクール」の卒業生であることで信頼を得られるよう、人材育成を進めてきました。現在では、保育士養成講座のほか自治体へのいろいろな支援も進めています。

この「テノスクール」は、利用者にも大変ありがたい話だと思いますが、スクールとしてのノウハウを利用して現場の研修等もできるメリットもあります。また、現在は割合としては少なくなりましたが、「テノスクール」の卒業生がそのまま当社に就職できるという流れがあることも、当社ならではの強みだと思っています。

以上、当社の特長と強みについてお話ししました。

2025年12月期 業績予想

池内:2025年12月期の業績予想についてご説明します。今期は増収・増益の予想です。

売上高は178億円で前年比11.1パーセントの増加です。営業利益は4億4,000万円で前年比123.4パーセントの増加、経常利益は4億円で前年比の118.7パーセントの増加、当期純利益は1億5,000万円と予想しています。

1株当たり配当について

池内:1株当たり配当は9円を予定しています。

「 teno VISION 2030 」

池内:成長戦略についてご説明します。当社は「teno VISION 2030」を、2023年に策定して進めています。当社は、時代に求められるサービスを提供するプロ集団となり、働き手にとって最も自己実現が可能な家庭総合サービスグループを目指していく方針です。

その中で、働き手視点および顧客・クライアント視点のビジョンの実現によって、「選ばれる企業集団」になっていきたいと思っています。

この2つの視点については、若い社員が2030年にどのような会社になっていたいと考えているかを引き出し、抜粋した内容となっています。これらを私たちは目指して対応していきたいと思っています。

成長戦略「働きがい」ある「選ばれる」園づくり

池内:「チームエンゲージメントセンター」と「保育みらい研究所 Compass」は、この「teno VISION 2030」を保育の現場に落とし込んだ取り組みとなっています。

SDGsの取り組み

池内:SDGsの取り組みです。スライドに記載のとおり、4番、5番、8番に力を入れながら、特に5番の「ジェンダー平等を実現しよう」に注力しているところです。

SDGs:ジェンダー平等を実現しよう

池内:5番については、創業以来「男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げよう」という経営理念を掲げ、事業を進めています。

ビジョンは「女性が活躍する社会の創造」、そして戦略は「女性が活躍する事業展開」だと考えています。

SDGsの取り組み

池内:スライドには、テノ.グループ社内のSDGsの行動計画を記載しています。KPIとして、男女の育休取得率、女性の管理職の割合を設定しています。

この数値目標について、策定当時は男性の育休取得はなかなか進んでいなかったのですが、2024年は男性も女性も100パーセントの育休取得を実現しました。また、男性には1ヶ月以上のお休みを取っていただいています。

女性の管理職率は、基本的に2024年で32.1パーセントですが、2030年には、男性も女性も同じ割合になるように尽力しているところです。

中期経営計画

池内:中期経営計画では、基本方針として次の5つを掲げています。1つ目は、保育事業における事業の拡大です。2つ目に、サービスの品質を追求し、選ばれる施設作りを行います。3つ目に、人事制度と人材育成制度の一体改革に着手します。4つ目に、新規事業を立ち上げます。5つ目に、介護事業における事業拡大に注力し、保育事業に続く柱へと成長させます。

事業環境① 市場動向

池内:事業環境についてご説明します。スライドの左側のグラフは、出生数と合計特殊出生率の推移です。みなさまもご存じかと思いますが、出生数は2024年が72万人で、出生率は直近の調査結果では1.15と、少子化が大変進行しています。

スライドの右側のグラフは、学童保育所の待機児童数の推移です。こちらは逆に、「小1の壁」と言われるとおり、「保育所の数は充実しているが、学童の数は少ない」という声が多く聞こえるように、学童保育の待機児童はどんどん増えている状況です。

その中で、国は少子化対策を非常に積極的に進めています。

セグメントの市場動向と今後の取り組み【保育事業】

池内:このような事業環境の中で、保育所が今後どうなのかと言いますと、国策としていろいろな制度ができていく中で、2024年に「こども誰でも通園制度」が生まれました。

認可保育所は今まで、働く人しか預けられませんでした。そこがもっと多くの方が預けられるように、働かなくても預けられるという意味では、保育所のニーズはまだ増えていくと思っています。

学童保育のほうも「放課後児童対策パッケージ」が制定されており、今後も受け皿の拡大が進んでいくものと思っています。

関本:マーケットについては、先ほどのご説明で出てきましたが、待機児童問題が主に首都圏で騒がれてからかなり時間が経ち、現在ではおおむね解消したのではないかと言われていると思います。

せっかくの機会ですので、現在の市場環境に対して、国や自治体はどのように取り組んでいるのかや、池内さんがどのように考えているのかなどを、教えていただけますか?

池内:おっしゃるとおり、保育の待機児童は、2024年4月の時点で約2,500人と大幅に減少している状況です。

これは、受け皿がたくさん増えたから良くなった面と、子どもの数が減ったから良くなった面の2つが考えられるお話だと思っています。

国としては少子化対策を十分に進めていかなければならないという姿勢で、「こども誰でも通園制度」など、いろいろな国策を通して出生率をなんとか増やしていこうとしています。

また、保育所の数を増やすことで待機児童問題を解消できましたが、今後の取り組みとしては、いつ子どもができても安心して預けられる保育所を維持していくことが、国や自治体においては大変重要だと思っています。そのことから受け皿をたくさん増やすというよりも、逆に今度は、今の施設をどう維持していくかに焦点を当てて、もっと質を上げていくことに方向転換されていくと予測しています。

施設を作る投資フェーズから、保育の質に投資していくフェーズに移行していく段階です。保育施設の中の職員の処遇改善や、DXなどが積極的に進んでいくということで、保育の質の向上を後押しする流れに大変期待しています。

関本:確かに、問題になってから体制を整えるのではなく、まずは女性が働きたい状況の中で、預ける先があるという状態を維持しなくてはいけないわけですね。この問題が解消されてきた次は、やはり保育の質が課題となります。御社は保育の質の問題については、どのように取り組まれていますか?

池内:私どもとしては、現場の効率化という意味ではDXを進めていくことも重要だと思っています。もう一方では「チームエンゲージメントセンター」や「保育みらい研究所 Compass」で保育の質を上げていこうと、積極的に取り組んでいます。

実際、直近3年では離職率が大幅に減少していることから、この「チームエンゲージメントセンター」などの取り組みが大変プラスに寄与していると私たちは思って進めています。

関本:実際にそのような取り組みは、採用や業績につながるところですので、すばらしいですね。

池内:ありがとうございます。

関本:市場についての質問が続いてしまいますが、このようなプレイヤーがある程度多くなって、保育の質の向上に取り組んでいこうという中では、どうしても参入企業の淘汰のような段階に進んでいくのかとも思っています。

冒頭で、M&Aでの認可保育所の増加などについても触れていましたが、このあたりの業界再編やM&Aの可能性について、池内さんのご意見をうかがえますか?

池内:保育事業が少しずつ成熟してきている中では、業界再編の動きも起こります。当社にもM&Aに向けて、買いたいところ、売りたいところ双方からたくさんのお話があり、売買に動いています。

ただし、そのような中でも、当社は、保育会社という位置付けではなく、家庭総合サービスを提供し、女性のライフステージを応援する企業でありたいと考えています。そこに他社とは違う競争優位性があるようなかたちで、前に進もうとしています。

私たちは、保育業界の会社というより、家庭総合サービスを目指す会社でありたいと思っています。

関本:おそらくその一環で、学童保育所の市場の成長にあわせた多様なサービス展開という動きがあるのだと思います。学童保育所の市場における御社の成長戦略は、どのようにお考えですか?

池内:成長戦略については、以前までは基本的に福岡で事業を展開してきており、おそらく九州で学童保育所の株式会社の参入は当社が一番だというくらい、かなり早くから取り組んでいました。

しかしながら、大阪や東京に進出するのは比較的遅くなりました。昨年から大阪にも進出し、今期は東京でも自治体からの学童保育所の運営を受託していますので、この流れで今後、全国的に学童保育所を展開していきたいと思っています。

セグメントの市場動向と今後の取り組み【介護事業・生活関連支援事業】

池内:当社の介護事業・生活関連支援事業についてです。スライドには高齢者介護と障がい福祉の市場動向のグラフを載せていますが、どちらもまだ大変伸びています。

介護事業については、私どもは大阪を中心に手掛けていますが、関東圏においても、ニーズが大変高いと思っていますので、全国的な事業拡大を着実に進めていきたいと思っています。

関本:今後の動向について、いろいろな会社にもお聞きしています。おそらく御社は影響を受けないのではないかと思っていますが、日本全体で米国の関税政策などのマクロの影響がある中で、例えばお客さまや関係会社が、なにか御社の事業に影響を与えるかもしれないお話はありますか? マクロな市場動向が、御社の事業に影響を与えるなどの見通しは、何かあるのでしょうか?

池内:当社は保育事業や介護事業を国内で行っていますので、直接的な影響を受けることはないかと思っています。

ただし、やはり関税政策による物価上昇の影響は、労務費や販管費などの費用面が増える可能性はあります。そのようなものに対しては、十分なコスト意識を持って、事業を推進していきます。

【成長戦略】継続した成長と収益性改善への取り組み

池内:継続した成長と収益性改善への取り組みについてです。まずは主力事業の強化と、介護事業の強化、さらにM&Aによる事業拡大を進めていきたいと考えており、それぞれに事業拡大、収益改善、成長戦略とテーマを設けています。

特に収益性の向上が重要であり、そこに注力しながら進めていきたいと思っています。

関本:スライドには、「介護事業に注力し、保育事業に次ぐ事業へと成長させる」とあります。現状の介護事業において、そもそもどのようなポジションで取り組んでいるのですか? そして、これからそれをどのように伸ばしていきたいと考えていますか?

池内:一般的に介護事業というと、高齢者介護のイメージがありますが、当社としては障がい福祉などの周辺分野にも事業を広げながら、社会の多様なニーズに応えるいろいろな介護事業という意味で、ワンストップの体制作りを目指していきたいと思っています。

中期経営計画と長期ビジョン

池内:中期経営計画と長期ビジョンについてです。保育関連事業の拡大、新規事業の創出、M&Aによる事業拡大という事業拡大戦略に基づいて計画を立てています。

2024年12月期に、最終年度2030年の計画値を変更しました。売上を500億円から300億円に変更し、営業利益率の目標値を設定し、営業利益率5パーセント以上の達成を目指して取り組んでいきたいと思います。

質疑応答:M&A戦略の考え方について

関本:さまざまな企業のM&Aが続いていることも成長に寄与しているのかと思っているのですが、M&A戦略についての考え方を教えていただけますか?

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