個人投資家向けIRセミナー
町田修氏(以下、町田):みなさま、本日はお忙しい中、スターフライヤー株式会社の決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。
代表取締役社長執行役員の町田です。本日は2025年3月期決算についてご説明したいと思います。どうぞよろしくお願いします。
スライドに記載のとおり、5つの章立てでご説明したいと思います。お時間の関係上、5番目にご説明予定の「安全の取り組み」については割愛することとなるかもしれません。どうぞご了承いただきたいと思います。
会社概要
町田:まずは会社概要について、簡単にご説明したいと思います。
社名は株式会社スターフライヤーです。設立日は2002年12月17日ですが、実際にフライトを始めたのは2006年です。羽田ー北九州線を皮切りに、就航を開始しています。
資本金、従業員数はスライドに記載のとおりのため、規模をご確認いただければと思います。本社は北九州市小倉南区空港北町6番と記載していますが、北九州空港の中に本社を構えています。また、事業内容は航空運送事業となります。
企業理念
町田:先ほど、ブランドコンセプトのビデオをみなさまにご視聴いただきました。その中でも感じていただけたのではないかと思いますが、スライドにも企業理念を記載しています。
「私たちは、安全運航のもと、人とその心を大切に、個性、創造性、ホスピタリティをもって、『感動のあるエアライン』であり続けます。」を企業理念として、社員に周知徹底を図っているところです。
みなさまにお気に留めておいていただきたいのは、スライド右側のブランドコンセプトです。私どもは、非常にブランドを重視しています。
創業者が「今までにない航空会社を立ち上げたい」という思いで2002年に作り上げたのが、スターフライヤーです。そこで、このブランドコンセプトが非常に重要であり、社員にも何度も口を酸っぱくして私が伝えているところです。
中でも、日本語で記載している「空を飛びながら光輝く流星群を生み出す Mother Cometのようにお客様が輝くための移動体として無償の愛から喚起されるホスピタリティを提供します」というブランドコンセプトを、企業理念とは別に定めています。
記載のとおりですが、お客さまが輝くための移動体ということで、ホスピタリティをもって事業運営にあたっていくということが、私どものコンセプトとなっています。
後ほどご説明する私が考える強みと、このコンセプトがラッピングしていくため、ぜひ気に留めていただければと思います。
沿革 営業収入推移
町田:沿革と営業収入推移です。2002年に会社設立後、2006年に運航を開始しました。一時は国際線も運航していましたが、ちょうど飛び始めた直後に新型コロナウイルス流行に当たってしまったこともあり、現在、国際線は運航していません。
飛行機を11機保有しており、国内線を中心に10機が稼働機、1機は予備機というかたちで事業を運営しています。
営業収入については、後ほど事業内容にてご説明します。
就航路線 保有する航空機
町田:先ほど申し上げましたが、就航している路線と保有する航空機についてです。スライドに掲載しているのは路線図です。
使用している飛行機は、スライド中央下に写真のある「Airbus A320」機です。「航空機数 ceo 9機/neo 2機」と記載していますが、「ceo」は従来型、「neo」はAirbus A320型機の新型です。現在はちょうど入れ替えをしているところで、現在は9機の旧型機と2機の新型機で運航しています。
スターフライヤーの強みについて
町田:スターフライヤーの強みについてご説明します。
スライドには、就航率・定時運航、顧客満足重視のサービス、機材戦略という3点を記載していますが、一言で申し上げると、「高品質」が私どもの強みであるとご理解いただければと思います。
強みの3点についてのご説明の前に、個人的なお話として自己紹介をすると、私は現在60歳ですが、ほぼ40年前に大学卒業した後、全日本空輸(全日空)に入社しました。その後の約40年間は全日空に籍を置き、現在はスターフライヤーの社長の職務を務めていますが、この40年間、航空業界ではさまざまなことがありました。
私が全日空にいた頃は、経営企画等でも働いたことがあり、この40年間の航空業界の動きを非常につぶさに見てきています。
航空のプロというのは口幅ったいのですが、自分なりの自負があります。この40年間の航空業界の流れや変遷を見てきた中で、いったいどのようなことが航空会社にとって強みとなり得るのかということは十分に熟知しているつもりです。
そのような経歴を持つ私がスライドの3点を一言で言うと、「高品質なサービス」になります。加えて、私どもの強みになると考えています。
就航率・定時運航状況
町田:最初に、就航率・定時運航についてです。話が脱線しますが、なぜ高品質が強みになり得るのかをご説明します。私どもは、時折いわゆるLCC(ローコストキャリア)と勘違いされることがあります。このことは非常に残念で、社長としても忸怩たる思いがあります。
私どもはLCCではありません。サービスコンセプトでは、大手である全日空や日本航空に近い高品質なサービスを提供しているため、LCCとは違います。
LCCに明確な定義はありませんが、彼らはできるだけ機材効率を上げていきます。LCCの中にも会社ごとのコンセプトに違いはありますが、機材効率を上げ、何かあって遅れても仕方がない、というところがある一方、私どもはそのようなことはありません。
安全の上に乗る、一番の基本品質である定時制、要するにお客さまとお約束した時間にきちんと飛行機を飛ばし、定時にお届けするという基本品質にきちんと力を入れています。
スライドに記載のとおり、今まで非常に高い評価をいただいています。若干古くなりますが、2017年には「A320ワールドワイド・中小規模エアライン部門」で最優秀運航賞を受賞しています。その他にも、2019年、2022年にはCIRIUMという会社が公表している定時到着率においても世界1位を獲得しています。
数字については、スライドの表をご覧いただければおわかりのとおり、飛行機をきちんと飛ばす就航率を示す点線は非常に高いトップレベルを維持しており、定時出発率および到着率も、非常に高い数字をキープしています。
スライド右側の1番から4番にお伝えした内容を記載しています。4番の国内1位については、2024年10月から12月、いわゆる昨年度第3四半期の10月、11月、12月において、定時出発率・定時到着率ともに1位を記録しています。
この場でお伝えしてしまうと先走り過ぎになりますが、おそらく年度をとおしても、日本国内でトップを獲ることができるのではないかと思います。国土交通省航空局が統計を出すまでには、まだ時間がかかるため、先走ったことをお伝えして間違っていたら良くないのですが、少なくとも1位、2位のレベルで推移していることは、この場でお伝えしても良いかと思います。
このように、非常に高い品質、就航率・定時率をキープしています。
顧客満足度重視の差別化戦略
町田:強みの2点目、顧客満足重視のサービスについてご説明したいと思います。
先ほどご説明したとおり、いわゆる基本品質・安全が一番の品質になるわけですが、その上に乗っている定時就航は、きちんと飛行機を飛ばし、きちんと時間どおりお届けするということです。
加えて、当然ながら接客サービスも非常に高いものを維持するよう、日々、私も含めた社員が一丸となって努力しています。スライドにも記載していますが、近年では「CX(カスタマーエクスペリエンス)」が重視されています。
要するに、お客さまは飛行機を予約し、空港に行き、空港でのカウンターや機内を経て、その後飛行機を降りられる流れになるわけですが、この予約から実際にフライトを終えられるまでの一連の流れの中で、高品質なサービスと顧客満足を通しでご体験いただくことを重視しています。
スライド下部に記載のとおり、顧客満足度に関する外部評価において多数の受賞歴があります。後ほどスライドでお見せするため割愛しますが、正直に申し上げると、もともと非常に高い品質やブランドコンセプトを掲げて運営しているため、過去から高い評価をいただいている会社ではあります。
ここ数年、コロナ禍など非常に苦しい時期がありましたが、一昨年あたりからだいぶ復活してきています。このように、カスタマーエクスペリエンス重視の事業運営を行っています。
スライドに記載はしていませんが、当然ながらお客さまのお褒めの声やお叱りの声が私どもに寄せられます。社長として、きちんとお客さまの声を一つずつ見ています。コロナ禍でだいぶ傷ついたところはありましたが、修復されてきており、お客さまからのお褒めの声が増えています。
私は本当に長い間航空業界にいますが、このところ、私どもがいただいているお声は非常に良くなっていると思います。
私が誇らしく思っているのは、先ほどお話しした、予約から始まり、すべてが終わるまでの一連のフライトにおけるカスタマーエクスペリエンスを重視した結果、「社員同士の連携がよくできている。すばらしい」というお客さまからのお声が増えていることです。
社長としても非常に誇らしく、うれしいところであり、私どもが強みとしているお客さまに対する高品質なサービスがきちんとできているためではないかと思っています。
また、スライド右側に記載のとおり、私どもの顧客サービスは非常に高い評価を得ています。その「接客・おもてなし」を、現在は教育研修事業として新規に展開しています。
業界の中にいるとなかなか気づかないところがありますが、お客さまからの評判が非常に良い点に着目し、個人向けのエアライン研修やおもてなし研修、団体向けの安全研修および見学を実施しています。
現在は本社が北九州空港の中にあるため、主に九州北部になりますが、大学や医療系機関、金融系企業、交通系企業などから多くの研修依頼を受け、好評を得ているところです。この事業は去年頃から始めたものですが、「良かったので2025年度もお願いしたい」という声をいただいており、実際に仕事を受注しています。
このように、培ってきたものが外部のみなさまからも評価されるところにまで来ていると思います。これを1つの基準として、さらに次の高みへ進んでいきたいと考えています。
顧客満足度重視の差別化戦略
町田:ソフト面となる人材の能力を中心にご説明しましたが、顧客満足度重視の差別化戦略のうち、機内設備・サービスについても少しご説明しておきたいと思います。
スライド左側に記載のとおり、ゆったりとした座席間隔、全席革張りシートとなっています。これは就航当初からの私どもの売りです。
はじめに、「私どもはLCCではない、誤解されている」と申し上げましたが、LCCとは真逆で、私どもが運航しているAirbus A320は、基本的に座席数を180席程度まで設置することができます。
この180席というのは、大手の日本航空や全日空が現在入れているシートの間隔で約180席まで入れられるということです。しかしながら、私どもはあえてゆったりとしたスペースを確保しようということで、旧型機のceo機では150席、新型のneo機では162席を設置しています。neo機のほうが若干余裕が取れるため、162席としています。
つまり、あえて大手航空会社以上のスペースを確保するという戦略をとっています。
最初にお伝えしたとおり、私は以前、全日空の社員でした。そのため、国内線でも全日空の飛行機によく乗っていましたが、スターフライヤーの社長になってからは、当然ながらスターフライヤーの飛行機によく乗るようになりました。時折全日空の飛行機にも乗っていましたが、慣れというのは恐ろしいもので、全日空に乗ると狭いと感じるようになりました。
本日ご視聴くださっているみなさまも、ぜひ一度、私どものゆったりとしたスペースを試してみてください。他の飛行機には乗れなくなるくらい、快適な機内をご提供できると思います。
また、スライド右側にあるタッチパネル式液晶モニター、コンセント・USBポートも用意しています。フットレスト・コートフックは、他社も入れているかと思いますが、設備もしっかり充実しています。
タッチパネル液晶モニターについては、正直に申し上げると、私どもが就航した20年前は非常に最先端でしたが、最近では大手が国際線だけでなく国内線でも最新のものを導入されているため、液晶モニター自体はどうしても若干見劣りするところがあるかと思っています。しかし、コンテンツを含めての勝負であり、依然としてしっかりしたものを提供しています。
もう1つの売りが、機内でくつろいでいただくため、就航当初からタリーズコーヒー(オリジナルブレンド)&チョコレートを提供しています。スライドの写真のとおり、私どものコンセプトとして機内を黒で統一しており、ビジネスマンの方々にゆったりと過ごしていただく中で、コーヒーにチョコレートをつけています。
このコーヒーは、オリジナルブレンドです。タリーズさまにお願いして、私どものブランドコンセプトに合った、専用のブレンドを作っていただいています。
チョコレートは、スターフライヤーのオリジナルチョコレートを提供しています。これも、社長目線ではなく個人目線でおいしいチョコレートです。いわゆるOEM生産で、私どもが実際に工場を持って作っているわけではありませんが、とあるメーカーにお願いして作っています。みなさまもよくご存知の国際的に有名なチョコレートメーカーの、日本生産を担当されているメーカーのため、非常に高い品質のものを提供いただいています。
このように、ゆったりとした機内、ラグジュアリー感のある革張りシート、そして、コーヒー、その他にもスープやりんごジュースなど冷たい飲み物も提供しています。
私は40年間航空会社で働いていますが、再度申し上げると、社長目線ではなく顧客目線で見ても、おそらく私どもの機内の飲み物はトップレベルであると自負しています。
機材戦略
町田:強みの3点目は、機材戦略についてです。ハードの部分でご説明した内容と重複する部分もありますが、Airbus A320という快適な飛行機を使っています。
最初にお伝えしたとおり、2025年3月末時点で旧型機のceo機が9機、新型機のneo機が2機、合計11機ありますが、順次入れ替えを進めており、1年後には新型機のneo機をさらに2機増やしていこうと考えています。
もともとAirbus A320は非常に効率の良い飛行機ではありますが、新型機のneo機は旧型機のceo機から燃費がさらに20パーセントも削減されます。また、騒音は50パーセント程度低減され、座席も若干増やすことができました。
やはり燃費の向上、20パーセントの削減になるということは、いわゆるESG、脱炭素の観点からも非常に大きなことであり、私どものコスト的な面においても、非常に効率的な機材になっています。
スライドには、安全性・信頼性評価の高いエアバス社のA320シリーズで統一することによるメリットとして、コスト削減、運航効率の向上、燃費の向上、顧客サービスの向上の4点を記載しています。
目立たないことではありますが、航空会社にとって、機材の選定は経営を非常に大きく左右する部分です。
Airbus A320は、私どもが運航している国内事業において、非常に適合した大きさであり、スライドに記載のとおり非常に信頼性が高く、壊れません。また、「CFM56」というエンジンが搭載されており、こちらも非常に性能が高く、わかりやすく言えば壊れない機体エンジンです。
何事も起こらなければなかなか目立ちませんが、飛行機は機械のため、どうしても壊れて欠航するなどさまざまなことがあります。しかし、それが他の機種に比べて最低限に抑えられていることから、信頼性が高く、コスト効率的な機材を私どもは選択しています。こちらは、非常に大きな私どもの強みになってくると考えています。
主な受賞歴
町田:スライドには主な受賞歴を記載しています。可能な限り多く記載していますが、ご覧のとおり、私どものサービス・品質に対する評価はこれだけ高いということをご確認いただければと思います。
最初に申し上げたとおり、私どもはLCCではないという誤解を解くことも含め、大手に負けないくらいの高品質なサービスを強みとして、20年前から事業運営をしています。その間コロナ禍などもありましたが、現在はそこからの脱却に向けて努めています。その結果、お客さまには満足していただいております。
続いては、最新の2025年3月期はどのようなかたちになっているのか、どのような成果が表れているのか、ご説明したいと思います。
決算概要
町田:決算概要です。スライドの表をご覧のとおり、スライドの左から右にわたって2018年度からの業績を記載しています。
2018年度というと、ちょうどコロナ禍の前です。思い起こせば、2020年に東京オリンピックが開催されるということで、日本中が盛り上がっていたのが2018年度ですが、そこからの比較という意味で記載しています。
スライド一番右端が2024年度、すなわち2025年3月期であり、売上高429億円ちょうどを記録しています。スライド上部の黒丸に記載しているとおり、この売上高は私どもの20年の歴史の中で過去最高を記録しています。
2019年度の売上高404億1,600万円が過去2番目の成績となりますが、実は2019年度は、飛行機が13機ありました。最初に申し上げたとおり、現在の私どもの飛行機は11機のため、2機少ない飛行機で2019年度の売上を超えています。つまり、多くのお客さまが戻ってきているということです。
旅客数の増加に加え、できるだけ高単価で売るイールドコントロールの2つが成功した結果、過去最高となる429億円の売上高を記録しました。
残念ながら、ご存知のとおり、円安や原油高、人件費など諸物価の高騰があり、費用も伸びていますが、結果として営業利益は12億3,000万円、当期純利益は19億2,300万円となりました。
当期純利益をご覧ください。コロナ禍の頃はあまりにもひど過ぎましたが、2018年度は2020年東京オリンピック前の一種のバブル時代だったと思っています。その年度をも超える当期純利益を出しています。2024年度は当期純利益率は4.5パーセントと、私どもとしては高い数字を記録することができています。
期末純資産は42億9,300万円と、どうしてもコロナ禍で傷んだところがありますので、2018年度よりは下回っています。しかしながら、コロナ禍の2021年度の13億5,700万円から比べると、かなり回復できています。
ドル為替レートとドバイ原油は、航空機燃料に関わってくる部分です。ドル為替レートは2018年度には110円50銭でしたが、2024年度は期中平均で152円60銭となっています。原油価格も2018年度は69ドルでしたが、2024年度は79.4ドルと非常に高い水準になっています。
航空産業は、基本的に輸入産業です。飛行機も燃料もすべて、外から買ってこなければなりません。私どもは出光興産などから買っていますが、彼らは原油を外から買ってきて、ジェット燃料に精製していますので、基本的には外から持ってくるものです。
したがって、円安・原油高は非常にきつい状況でした。そこを乗り越えた上で、さらに2024年度は当期純利益19億2,300万円を記録しています。
過去7年を振り返るとコロナ禍もありましたが、厳しいコロナ禍の間に、筋肉質の体制に生まれ変わって、稼げる力を十分につけてきたと思っています。
したがって、今回の決算では、いわゆるコロナ禍の後遺症はまだ財務体質的には引きずっていますが、単年度で見ると、稼ぐ力はすでに完全に復活したと言ってよく、コロナ禍を言い訳にできない段階に来たと考えています。
決算概要
町田:売上高と営業損益の推移については、スライド左のグラフのとおりです。キャッシュフローの推移は、スライド右のグラフのとおりですが、1点補足します。
フリーキャッシュフロー(FCF)は、コロナ禍に入った2020年度以降の4年間は当然苦しかったわけですが、2024年度には48億4,500万円のプラスとなりました。また、営業キャッシュフローは52億7,200万円で、過去最高を記録しています。
私どもの場合、いわゆるエンジン整備や機体整備などの航空機整備の有無によって、キャッシュフローが年度で変わるところがあります。
2024年度は2台のエンジン整備がありました。それほど多いほうではないのですが、ある程度のキャッシュアウトがあったにもかかわらず、営業キャッシュフローは過去最高52億7,200万円を記録できました。
そのため、今回の資料にはB/Sは載せていませんが、現金および現金同等物も100億円ほどになっています。
決算概要 - 営業収入
町田:営業収入の四半期ごとの推移です。細かくはご説明いたしませんが、基本的には右肩上がりで回復してきていることをご確認ください。
旅客輸送実績・運航実績(2024年度)
町田:旅客輸送実績・運航実績です。座席利用率の推移はスライド左下のグラフのとおりですが、全路線合計で2024年度は過去最高79.6パーセントを記録しました。
座席利用率を路線別で見ても、スライド上の表のとおり、各路線とも軒並み高い搭乗率を記録しています。前年比も北九州ー羽田線ではプラス3.9ポイント、その他の路線も福岡ー羽田線を除いてプラスとなっており、搭乗率を上げています。
福岡ー羽田線の座席利用率だけが前年比でマイナスになっているのが目立ちます。言い訳ではありませんが、実は路線収入としては上回っています。つまり、搭乗率は落としましたが、一般的な言い方をすると1人当たりの客単価を上げることに成功しています。
搭乗率自体は若干下がっていますが、収入としては上げていますので、イールドコントロールが非常に成功しているとご認識ください。
財政状況・キャッシュフローの状況
町田:財政状況・キャッシュフローの状況を、もう一度確認したいと思います。2023年度期末および2024年度期末の状況はスライドのとおりです。
2024年度は良い決算でしたので、当然、総資産も純資産額も増えています。自己資本比率は17.4パーセントと、前年に比べて3.8ポイント増えています。
自己資本比率17.4パーセントは、一般的にはそれほど高くなく、どちらかというと低いレベルかと思います。しかしながら、コロナ禍で毀損した財務状況からは、一段一段着実にステップアップしてきています。今後も自己資本比率を上げていきたいと思っています。
キャッシュフローは先ほどご説明したとおりですが、キャッシュフローが増えたことにより、有利子負債残高もかなり減らすことができています。営業キャッシュフローが52億7,200万円で、前年から47億4,300万円のプラスと大幅に改善しています。また、現金および現金同等物は2024年度末で100億1,300万円となっています。
運送実績・販売実績
町田:運送実績・販売実績です。スライドには細かい数字が並んでいますが、左上に記載のとおり、提供座席キロ ASK(Available Seat Kilometers)と私どもの業界で呼んでいる数値が、前年比プラス0.3パーセントとなっています。
つまり、いわゆる商品と言いますか生産量は、実は前年比プラス0.3パーセントしか伸ばせていないわけです。お客さまを運ぶことが私どもの仕事です。1つの座席が運べる重さがどれだけ伸びたかが生産量となりますが、それが前年比プラス0.3パーセントとなっています。
生産量はほとんど伸びていませんが、座席利用率(L/F)つまり、ロードファクター(Load Factor)は、前年比2.2ポイント伸びています。したがって、2024年度は生産効率を高めたと言えます。昨年度は1旅客当たりの収入、1座席キログラム当たりの収入を伸ばすことができました。
販売実績については、定期旅客運送収入の構成比は2023年度の98.5パーセントから、前年比プラス7.6パーセントと、定期旅客運送収入がかなり上がっています。
決算概要 - 営業損益 前年比
町田:非常に細かい数字を羅列しましたが、このスライドでは昨年度の状況をウォーターフォールチャートでご説明します。
前期の営業損益はチャート左端に示したとおり、9,000万円となっています。2024年度の営業損益はチャート右端に示したとおり、12億3,000万円となっています。チャートをひと目見ればわかりますが、営業収入のプラス28億8,100万円が一番の要因です。
実は市況や円安の影響により、費用の部分も伸びています。また、人件費も比較的増えています。みなさまもご存知のとおり、世の中の流れにしたがい、人件費を上げていかざるを得ませんでした。
空港使用料については、今までは国の免除を受けていましたが、その部分がなくなってきたことにより、費用として6億円増えています。
地上ハンドリング費については、実質的には人件費です。委託先の委託費が増えたことにより、4億5,000万円増えました。地上ハンドリング費を合わせると、人件費は約13億円となります。
非常に人件費の伸びが大きかったのですが、売上でしっかりとカバーし、利益を確保できました。このようなことが、スライドのチャートから感じていただけると思います。
中期経営計画 2025 ハイライト
町田:2026年3月期の業績予想です。最新計画では売上高が454億円、営業利益が21億5,000万円を目指していきます。
中期経営計画当初の目標である営業利益50億円と比べると、半分以下になっていますが、これはほぼ為替レートの前提、市況などの影響によるものです。2025年度については、営業利益21億5,000万円をしっかりと達成していきたいと思っています。
収入拡大に向けた手法としては、基本的には需要喚起を行っていくことです。また、国際線のチャーター便等の運航で、運航便、生産量を伸ばして収入を稼いでいきたいと思っています。
中期経営戦略期間 3か年計画
町田:中期経営戦略期間3ヶ年の計画との比較です。あまり細かくご説明すると長くなりますので、営業利益についてのみご説明します。
中期経営戦略2025の計画では、2023年度が7億円、2024年度が17億円、2025年度が50億円と計画していました。それに対して、2023年度の実績は9,000万円、2024年度の実績は12億円、2025年度は21億円の予想となっています。
2024年度も達成できていませんが、こちらも市況影響によるものです。2025年度はなんとか21億円を達成していきたいと考えています。
財務戦略 市場リスクへの対応
町田:市場リスクへの対応についてです。この3年間は、特に円安・原油高という市況に影響されました。2025年度については、為替と燃油に対するヘッジをしっかり行うことで、為替の変動などの市況の変動が、経営成績に与える影響をミニマムにとどめたいと考えています。
財務戦略 財務基盤の強化
町田:財務基盤の強化についてです。財務基盤を強化する一番の目的は、もちろん市場リスクの低減・利益の確保ですが、さらに累積損失の解消、そして配当の再開を目指していきたいと思っています。
先日プレスリリースしましたが、今日現在、私どもの累積損失は約29億円です。昨年度末は45億円でしたが、2024年度は利益を出した関係で、足元の累積損失は29億円となっています。この6月の株主総会でご承認いただければ、その他資本剰余金を繰越利益剰余金に振り替えることにより、累積損失を一掃してゼロにしたいと思っています。
累積損失を解消した後の課題は、種類株式配当の再開です。私どもにはまだ優先株がありますので、優先株、種類株式配当の再開し、その後さらに、普通株式の配当を再開したいと思っています。
累積損失があると、どちらにしても配当などできませんので、まずは、累積損失を1回消したいと考えています。今年度は営業利益21億円という目標を着実に達成し、種類株、そして一般配当への道筋をきっちりとつけていきたいと思っています。
ROEと資本コストは、スライド右のグラフのとおりです。
リスクに備えたキャッシュの確保については、スライド右下に記載のとおりです。キャッシュは、手元に100億円あります。加えて、運転資金、コミットメントライン当座借越枠などを備えていますので、手元の資金ついてはまったく問題なく運営できると考えています。
2025年3月期の取り組み
町田:昨年度2025年3月期の取り組みです。一つひとつご説明する時間がありませんので、スライドにはご参考までに、主なプレスリリース等を抜粋しています。
『進撃の巨人』『SEVENTEEN』『刀剣乱舞』など他社とコラボレーションしたことにより、かなり良い広告宣伝と旅客収入につながりました。
重要課題(マテリアリティ)への取り組み
町田:重要課題(マテリアリティ)への取り組みについてです。昨年度から、株式会社スタートラインと協調し、10名弱の障がい者をスターフライヤーの社員として直接採用し、品質の高いコーヒー商品を製作しています。
まだ外で販売するほどのボリュームがありませんので、社内で売るかたちで社内消費しています。私もコーヒーをよく飲みますので、たくさん買っています。いわゆるESG、重要課題の1つの大きなポイントである障がい者雇用を、去年からこのようなかたちで始めています。
障がい者が得意な分野で、やりがいのある仕事に取り組んでいます。株式会社スタートラインと協力することにより、このようなかたちでコーヒーの焙煎を進めています。
ESG対応
町田:ESG対応については、環境に優しい航空機(A320neo)を導入拡大することによって、燃費の改善等を図ります。なかなか航空会社には、これといった決め手がありませんが、そのようなことを地道に続けています。
ダイバーシティでは女性の活躍を推進しています。もともと航空会社は女性が多い会社なのですが、「部長級以上の女性管理職比率30パーセント」という目標に対して、現在は26パーセントとなっており、しっかりと達成できると思っています。
男女別の育児休業についても、スライド右側の表のとおり、2024年度の取得率は100パーセントに達しています。ESGにおいて、こちらも着実に進めています。
カスタマーハラスメントに対する方針
町田:日本中のいろいろな業界で今、カスタマーハラスメントが話題になっています。定期航空協会という業界団体と連携しながら、昨年、「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定しました。
次のスライドの「安全の取り組み」については、時間の都合上、申し訳ありませんがご説明を割愛します。
6月の株主総会とほぼ同時に、各航空会社とも安全報告書を提出しています。安全については、基本品質、基本の基本であり、各航空会社とも国土交通省としっかり連携して進めているところです。こちらについては私どもだけではなく、各航空会社が万全を期しています。
もし、ご興味がありましたら、6月に安全報告書を発表しますので、ご覧いただければと思います。私からのご説明は以上です。
質疑応答:配当方針と今後の見通しについて
司会者:「配当方針と今後の見通しについて教えてください」というご質問です。
町田:まずは6月の株主総会でみなさまからご承認いただいて、累積損失をゼロにします。次に、優先株に対する配当、未払い配当金があります。こちらをなんとか早期に実施して、普通配当につなげていきたいと思っています。
まずは、累積損失の解消を株主のみなさまに認めていただき、できるだけ早急に次のステップへ行きたいと考えています。
質疑応答:国際線の運航再開について
司会者:「国際線の運航の見通しと拡大について、再開する可能性はありますか?」というご質問です。
町田:再開したいと思っています。私どもは11機の飛行機を運航することにより、事業運営していますが、昨今、コロナ禍のロジスティックスの乱れがまだ影響しており、飛行機が手に入りにくくなっています。
したがって、飛行機を増やして事業規模を拡大していく、成長戦略に乗せることが、すぐにはできない状況になっています。
一方で、私どもは今、国内線だけを運航しており、夜間、飛行機が空いています。そちらを有効活用して、国際線に出ていって、生産量を伸ばして、収入を伸ばしていきたいと思っています。
ただし、いろいろな準備がありますので、おそらく2026年度以降になると思っています。
質疑応答:国内線の増便について
司会者:「国内線を増便する可能性はありますか?」というご質問です。
町田:前のご質問に関連しますが、今は基本的に持っている機材で国内線を張っていまして、この中をさらに増便するのは、難しい状況です。
国内では、空港に夜間制限などがあるため、基本的に、夜間に飛行機を飛ばすことができません。したがって、国内線の増便は、現実的には難しいと思っています。
質疑応答:全日空との関係について
司会者:「全日空との関係は良好ですか?」というご質問です。
町田:全日空との関係は良好です。それ以上言いようがなく、非常に良好に、それぞれの持ち味を活かすことができています。私どもも助けていただいていますし、私どもも全日空のコードシェアを通じて、お役に立てていると思っています。
質疑応答:ターゲットとする顧客層について
司会者:「スターフライヤーがターゲットとする顧客層を教えてください」というご質問です。
町田:顧客層は当社の強みに関わる部分です。スターフライヤーには、羽田ー福岡線、羽田ー北九州線、羽田ー山口宇部線などの路線があります。顧客層としては、もちろん観光客もいますが、基本的にはビジネスのお客さまが多い路線です。
このビジネスのお客さまをしっかりと捉えて、法人契約等を通して、お客さまに私どもの高品質サービスを理解していただいています。
大手ももちろんですが、例えば福岡線で言うと、スカイマークという私どもと似たような会社があります。私どもは高品質なサービスで、ビジネス層のお客さまをしっかりと捉えた上で、ブレジャー、つまり旅行客も、価格競争の中でしっかりと捉えていきたいと思っています。
質疑応答:米国の関税政策に伴う影響について
司会者:「米国の関税政策に伴う影響について、どのように認識していますか?」というご質問です。
町田:正直に言って、今のところよくわからず、予想が立てづらい状況です。そもそも関税政策自体が、まだはっきり決まっていないところがあるかと思います。
また、幸いにもと言ってよいのかわかりませんが、私どもの機材はエアバス社、つまりヨーロッパの機材ですので、米国の関税政策が直接影響することはないだろうと思っています。
ただし、実際のサプライチェーンは世界中にめぐらされていますし、航空機部品にも米国製がたくさんあります。それが今後どのようなかたちで私どもに影響してくるかは、正直に言って読めません。今のところ影響は確認できていません。
質疑応答:社員のモチベーションアップの仕組みについて
司会者:「社員のモチベーションアップの仕組みについて教えてください」というご質問です。
町田:社員のモチベーションをどう上げていくかは、なかなか難しいところです。人件費が増えていますが、一般的には、やはり給料が上がっていくことが社員にとっては一番うれしいことかと思います。
コロナ禍を抜けて、今、非常に業績が回復しています。それが、やはりモチベーションになっており、加えて、自分の給料も上がっていくところがあると思っています。
私が社内でこの1年の中で取り組みたいのが、ブランドのブラッシュアップです。コロナ禍では、なかなか思いどおりにお客さまに対するサービスができず、自分たちの持てる力を出せなかったと認識しています。
そこで、私どもの強みであるスターフライヤーのブランドを磨いていきます。個々人がそこに誇りをもう一度思い出すかたちで、モチベーションアップを図っていきたいと思っています。
質疑応答:競合他社との差別化戦略について
司会者:「競合他社との差別化戦略についての考えを教えてください」というご質問です。
町田:これまでの私のご説明の中に、すでに今のご質問の答えはほとんどあったのではないかと思いますが、あらためてご説明します。
当社は「今までにない航空会社を作ろう」という創業者の思いで立ち上がった会社です。その部分をもう一度踏まえた上で、なかなか大手のようにラウンジを持っているとか、プレミアムクラスがあるといったところまではいきませんが、機内のサービスなどをダントツの水準まで上げていきたいと思っています。
その他の羽田ー福岡線で言えば、競合するスカイマーク等より1つ上のサービス、トータルでのサービスを提供することにより、メイン顧客であるビジネス層のお客さまにしっかりと選んでいただけるようになりたいと思っています。
町田氏からのご挨拶
町田:みなさま、1時間お付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。やはりコロナ禍には、いろいろな意味で私どもも傷ついたところがありますが、戻ってきました。
みなさまがこれから、どのように私どものことを見ていただけるかは、実績でお答えするしかありませんが、これから成長戦略を描いていかなければいけないと思っています。その中では、やはり国際線が1つの大きなポイントになってくるかと思っています。
プレゼンテーションの中ではお話ししなかった強みがあります。私どもは福岡県北九州市に本社を持っています。九州はアジアに近い立地で、しかも、北九州空港は24時間運営できるという好立地に恵まれています。
コロナ禍は終わりました。これからはアフターコロナの中で、新たな成長戦略を描いて、企業価値を高めていきたいと思っています。引き続き、みなさまのご支援を賜れればと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました。