目次

吉田毅氏(以下、吉田):みなさま、こんにちは。明和産業株式会社代表取締役社長の吉田です。さっそく、目次に沿ってご説明します。

明和産業とは?

当社は旧三菱商事にルーツを持つ、75年以上の歴史がある商社です。設立当初から中国ビジネスに強く、中国との貿易取引を行い、現在は売上高の約3分の1が中国との取引です。また、長年の中国取引において構築したビジネスネットワークを生かして、東南アジアやインドへの進出を進め、成長を加速させています。

東京ドームに広告看板:当社をもっと知って頂くために

当社は企業認知度向上を目的に、2025年3月より東京ドームに広告看板を掲載しました。企業認知度向上を図る施策を実施することで、みなさまのご関心や、個人投資家のみなさまへのアピール、採用活動での応募数増大につながると期待しています。

沿革:1947年、第2次世界大戦後の財閥解体で旧三菱商事の従業員等が設立。今年で創業78年。

当社は、第二次世界大戦後の財閥解体により、旧三菱商事の従業員らによって設立され、今年で創業78年となります。創業から1990年代後半までは取扱い商品の数と量を拡大し、売上重視で事業を伸ばしていきましたが、2000年以降は収益力を重視した経営方針に転換し、2000年3月期0.1パーセントであった経常利益率は、2025年3月期には2.9パーセントと収益力が大きく改善し、安定した収益性を確保しています。

化学品中心に様々な分野で事業を展開している商社

当社は国内拠点に加え、海外には北京とソウルに駐在員事務所、中国および東南アジア3ヶ国に現地法人を持ち、国内外に関係会社を有しています。中国の現地法人には100名以上のナショナルスタッフが在籍しており、中国でビジネスを展開する日系企業や中国ローカル企業との協業体制を整えています。

業績については、2025年3月期は昨年度に引き続き、過去最高益となりました。また、当社の売上高比率は約35パーセントが海外向けの取引ですが、その約90パーセントが中国との取引であり、連結売上高の31パーセントを占めています。

取扱製品:競争力の高い、化学品・樹脂、部品など様々な商材

当社の事業概要をご説明します。

第一事業は、レアアースやレアメタル等の希少資源や環境商材、金属製品を取り扱う資源・環境ビジネスです。プラスチック製品等を燃えにくくする材料を取り扱う難燃剤、そして、断熱、防水、内装分野を手掛ける機能建材ビジネスで構成されています。

第二事業は、主に石油製品や潤滑油を取り扱っています。

第三事業は、主に化学品を取り扱うセグメントであり、高機能素材、機能化学品、合成樹脂、無機薬品で構成されています。

自動車・電池材料事業は、持分法適用会社が担う部分が多いため、売上高の割合は低いですが、自動車の電動化への流れを取り込み、自動車本体に使われる部品だけでなく、リチウム電池に使用する原材料などを取り扱っているため、大きな成長が見込まれるセグメントです。

2025年3月期 決算概要

金井正宏氏(以下、金井):みなさま、こんにちは。ここからは取締役常務執行役員の金井より、2025年3月期決算概要並びに2026年3月期通期業績の見通しに関してご説明します。

2025年3月期の売上高については、前期比1.0パーセントの減収となりました。営業利益は利益率の高い商材が占める比率が増加したことに伴い、前期比20.1パーセントの増益となりました。経常利益は営業利益の増加の影響に加え、自動車事業の関連会社の利益の増加に伴い、前期比12.1パーセントの増益となりました。

結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益の影響もあり、前期比22.6パーセント増加の33億7,600万円となりました。

前期比分析 - 経常利益

次に、経常利益の前期比分析についてご説明します。2025年3月期のプラス要因としては、明和産業全体においては親会社における営業利益の増加並びに持分法投資損益の増加があります。親会社における営業利益の増加要因は、主にアンチモン価格の相場高騰による利益増加と、日本国内向けに販売しているベースオイルの販売が伸長した点です。

持分法投資損益の増加要因は、自動車事業部の関連会社であるクミ化成において、収益が改善した点です。一方のマイナス要因としては、子会社である明和上海の営業利益が減少しています。明和上海の主力事業である冷凍機油事業において在庫評価減を計上し、一過性の損失が発生したことが主な要因になります。

また、受取配当金は、期ずれにより減少しました。結果、経常利益は全体をとおして前年同期の12.1パーセントにあたる4億8,800万円の増益となりました。

各セグメントの業績ハイライト

こちらのスライドでは各セグメントの業績ハイライトを一覧でまとめています。詳細については、次のページよりご説明します。

第一事業の動向:主にアンチモン価格の市況高騰もあり難燃剤が好調に推移

第一事業については、売上高が前期の0.9パーセントにあたる3億8,100万円の減収、セグメント利益が前期の56.1パーセントにあたる8億5,100万円の増益となりました。

第一事業の動向として、アンチモン価格の市況高騰が挙げられます。2024年9月より中国政府によってアンチモンの輸出許可制が開始されたことに起因し、現在も市況は高騰している状況です。当社としては、市況に依存しない体制を構築すべく、成長産業向けに高付加価値難燃剤の販売を取り組みながら、市況によるボラティリティ低減に向けた取り組みを行っています。

また、建築関連で使用される防水材の販売も好調に推移しました。当社は安定的な市況が見込まれる、学校、各市町村等の官公庁物件およびマンション・アパートなどの民間物件の定期修繕時に使用される防水材にターゲットを絞り、販売しています。そのような戦略のもと、継続的なPR活動を行った結果、防水材の販売数量は過去最高を記録しました。

第二事業の動向:中国での冷凍機油販売は競争が厳しいが、国内向けベースオイルが好調に推移

第二事業については、売上高は前期の11.3パーセントにあたる55億6,500万円の減収、セグメント利益が前期の17.9パーセントにあたる1億7,500万円の減益となりました。

第二事業の動向としては、中国冷凍機油事業の競争激化による影響を受けました。中国冷凍機油事業においては、ローカルメーカーの台頭による競争激化に伴い、中国家電メーカー向けの冷凍機油のシェア率が低下しています。結果として販売数量および利益率が低下し、減収減益の大きな要因となったほか、在庫についての評価減を計上することになりました。

そのため、汎用品で使用される冷凍機油の販売から、ローカルメーカーにはすぐには実現できない、中・大型機種のエアコンに使用される冷凍機油の販売も進行しています。加えて、中国市場での販売だけでなく、今後、エアコンの製造拠点が増える可能性のあるインド市場での販売に向けた準備も着実に進行しています。

また、国内向けに販売しているベースオイルの販売が好調に推移しました。当社が販売しているベースオイルは多様にありますが、工業用潤滑油や金属加工油用途を中心に好調に推移しました。

第三事業の動向:電子機器や加工製品に使用されるフィルム販売及び無機薬品の販売が好調

第三事業については、売上高が前期の2.1パーセントにあたる12億700万円の増収、セグメント利益が前期の6.0パーセントにあたる6,600万円の減益となりました。

第三事業の動向としては、電子機器や加工製品に使用されるフィルム製品の販売が好調に推移したほか、事業投資先における十全グループにおいて、製鉄や半導体製造関連での使用や、東京都等の官庁で水処理用途として使用される無機薬品の販売が好調に推移した結果、売上の増収要因となりました。

また、第三事業においては展示会に出展しており、当社の注力商品の需要の開拓に積極的に取り組んでいます。

自動車・電池材料事業の動向:中国で車載用電池材料販売が本格化、自動車の北米事業は回復傾向

自動車・電池材料については、売上高が前期の42.3パーセントにあたる31億8,700万円の増収、セグメント利益が前期の9.2パーセントにあたる3,400万円の増益となりました。

自動車・電池材料事業の動向としては、電池材料事業においては、中国における自動車用電池材料の販売が伸び増収となった一方、リチウム価格の下落の影響で利益は横ばいとなりました。ただし、当社が出資している青島菱達化成有限公司の増資により設置した設備が、試運転期間を経て2024年度から量産供給を開始したプラスの一面もありました。

自動車事業においては、生産体制の見直しにより収益に貢献しました。事業投資先であるクミ化成の国内事業においては、2024年に稼働した三重工場が想定よりも早く収益化しました。また、自動車メーカーの製造拠点の変更に併せて設備を増強しており、2025年4月より稼働しています。また、北米事業では生産体制の見直しを行い、収益改善が引き続き進行しています。

キャッシュ・フロー計算書:期末現預金残高は約83億円で前期比約12億円の減少

続いて、連結キャッシュフロー計算書についてご説明します。2025年3月期における営業活動によるキャッシュフローですが、2025年3月期は43億3,400万円のキャッシュインとなっています。ただ、その金額は冷凍機油事業が低調に推移したことに加え、昨年度が期末休日であったことで売上債権並びに仕入債務が減少した影響で、結果としてキャッシュインの額が前年同期比で約13億円減少しました。

投資活動によるキャッシュフローは、3億5,000万円のキャッシュインとなっています。投資有価証券売却により前年同期比で約5億円増加しました。財務活動によるキャッシュフローは、借入金の返済や配当金の支払い等による資金減、自己株式の取得により、58億1,100万円のキャッシュアウトとなりました。短期借入金の返済が進んだことや、自己株式の取得、配当金の支払い額の増額があったことから、キャッシュアウトの金額は前年同期比で約14億円増加しています。

結果、2025年3月期末の現金および現金同等物は、83億1,800万円と前年度末から約12億円の減少となりました。

2026年3月期業績予想及び配当予想:総利益は増加するものの、先行投資の増加により減益を予想

最後に、2026年3月期の連結業績予想および配当予想についてご説明します。売上高は親会社および国内子会社の事業が堅調に推移し、2.1パーセントの増収を予想しています。営業利益については、総利益は増加するものの、人的資本やDX強化、ブランド向上等の先行投資を積極的に行うため、10.3パーセントの減益を予想しています。

経常利益は11.5パーセントの減益、当期純利益は11.2パーセントの減益を予想しています。これらの予想は営業利益と同じく、先行投資の増加によるものです。なお、想定為替レートについては、米ドルレートを145円、人民元レートを20円として作成しています。

また、配当予想については、すでに開示済みの1株あたり38円の期末配当を予想しています。以上で、2025年3月期の連結決算概要の説明と2026年3月期の業績の見通しのご説明を終わります。

特徴・強み:日本商社のノウハウ×中国起点のアジア・ネットワーク

吉田:当社の特徴・強みについてご説明します。当社の特徴、強みは3点あります。

1点目は、75年以上の歴史で積み上げてきた商社としてのビジネス・ノウハウです。設立当初から、海外市場への開拓を進めながら、事業ポートフォリオを常に入れ替え、安定的な収益と実績を積み上げています。

2点目は、コスト競争力と成長市場への事業展開に有利な中国で、いち早くビジネスネットワークを確立した点です。中国政府より友好商社として指定されるなど、日本の商社の中で有数の確固とした事業基盤を確立しています。

3点目は、ニッチな分野で環境に優しい製品に精通している点です。日本だけでなく、中国・アジアにおいて、ニッチな分野における環境技術に優れた日本製品・サービスを取扱い、環境や安心・安全な社会に貢献しています。

発展経緯:海外は創業時から中国中心に事業基盤を構築、国内は有望な化学品商材を資本参加で開拓

1つ目の特徴である、当社の発展経緯についてご説明します。海外では、創業時から旧社会主義国との取引を本格化させ、中国中心に事業を拡大しました。1962年には中国より友好商社に指定され、その後三菱グループの化学品などの輸出に注力しました。

1990年に入り、現ENEOS社と合弁会社を設立し、潤滑油の製造・販売を強化し、主力ビジネスに育てあげました。その後も、EVの普及が世界で一番進んでいる中国で、電池材料販売を本格化させ、現三菱ケミカルと合弁会社を設立するなど、さらなる事業の拡大を進めています。

また、国内は、積極的なビジネスパートナーへの資本参加で商材を増やし、自動車部品や難燃剤などニッチで優位性ある製品を製造・販売しています。

ニッチな商材の専門商社として、機動的に製品・事業ポートフォリオを見直し、成長機会を追求

当社は、機動的に製品および事業のポートフォリオを見直しながら成長機会を追求しています。化学品を中心に、事業環境の変化や製品寿命を見極め、次世代製品や事業を絶えず探索し、さらに成長の芽を育成、発展させました。

また、ピークアウトした製品や事業の入替や撤退によって、常に経営資源の循環を促進しています。

中国に根ざしたネットワーク:1962年に友好商社指定以後、人口大国で商機を発掘・発展

2点目の特徴である、中国に根ざしたネットワークについてご説明します。創業時から長年中国でビジネスを積み重ね、日本企業として有数の、中国に事業基盤を持つ商社へと発展しました。

1996年に明和上海有限公司を設立し、現在では100名を超える中国現地スタッフと中国全土の拠点を活用した供給体制を確立しました。また、当社は他の商社との違いの1つとして、ローカル化を積極的に進めています。

多くの商社は中国に進出する日系企業とのビジネスが中心ですが、当社は過去10年で中国系の企業とのビジネスが6割以上増加しており、より中国国内に根ざした商社として展開中です。

ニッチな分野で環境や安心・安全に寄与し、サステナブルな社会に貢献する製品に精通

3つ目の特徴である、ニッチな分野で環境や安心・安全に寄与し、サステナブルな社会に貢献する製品に精通している点についてご説明します。当社は長年、環境負荷低減や社会に貢献する製品を取り扱っています。

例えば潤滑油ビジネスでは、地球温暖化係数を大幅に抑えた新冷媒に適した冷凍機油のマーケティングを通じて、環境負荷の低減に取り組んでいます。また、プラスチック製品等を燃えにくくする素材である難燃剤の開発やマーケティングによって、火災等の災害から人命を守る安心・安全な社会作りに貢献しています。

今後は、アジアなど成長市場でも、環境負荷の低い社会に貢献できる製品を提供できる有利なポジションを構築します。

「中期経営計画2025」の進捗状況 ROE二桁の実現に向け稼ぐ力を一層向上

ここからは、中長期成長戦略を中心に当社の将来性についてご説明します。まずは、中期経営計画の進捗状況についてご説明します。

2025年3月期は、純利益・ROE・株主還元が当初の計画を上回る水準となりました。特にROEは二桁に着実に近づいており、目標の実現に向け、資本の効率化と稼ぐ力を向上します。

基盤、成長投資金額については、3年間で35億から45億円の目標に対し、23年度、24年度合計の実績が12億9,000万円となりました。最終年度となる今年度は、目標達成に向け、より一層意思決定のスピードを上げ、積極的な投資に取り組みます。

中長期経営戦略:中国ネットワークの活用×新規事業へ人材投資

中期経営計画2025の施策として、既存事業の収益性と効率性の向上、そして新たな領域での事業展開の両輪を廻しています。既存事業では、注力領域であるモビリティ、環境、生活領域での取り組みを推進しています。

これまで培ってきた中国ビジネスでの経験や知見、そして取引先とのパートナーシップなどを最大限に活かし、中国はもとより、東南アジア、インド、日本を含む東アジアで各種の取り組みを加速しています。また、新たな事業展開のために人材への投資を継続しており、社員一人ひとりが活躍できる環境の整備を進めています。

中国ネットワークを起点とした海外展開

あらためて、当社の強みである中国ビジネスのこれまでとこれからをまとめました。STEP1、友好商社時代から2000年までは、中国が進める経済の基盤作りを当社の収益に取り込むべく、主に日本から中国への輸出ビジネスを中心に行いました。

STEP2、2000年代に入って中国の高度経済成長時には、日本企業と共同で中国へ進出し、現地法人を設立、営業・物流拠点を拡充し、中国国内の旺盛な需要を取り込みました。そして、足元では環境対応型の冷凍機油や中古車載電池のリユース・リサイクル事業などを通じて中国企業とのパートナーシップを深めており、当社の強みである中国でのネットワークをさらに強化しています。

STEP3、これからはこのネットワークを梃にして、注力領域での取組を東南アジアやインドなどの他地域にも複層的に展開します。

中古車載電池リユース事業化に向けてパートナーと会社設立

このスライドでは、STEP2である、中国国内市場の取り込みと注力領域の1つである環境を掛け合わせた事例をご紹介します。

電池材料事業では、トヨタ、中国五鉱グループと共同で中古車載電池のリユース、リサイクル事業を行う合弁会社を設立、操業を開始しました。本事業においては、当社の中国ネットワークを活かし、中古車載電池の回収および本事業会社で製造する蓄電池システムの販売を担います。EVが世界でいち早く普及している中国では、中古車載電池が先行して出てきます。

中古車載電池はさまざまな種類があり、劣化度も異なりますが、トヨタの技術と当社・五鉱グループの持つ中古電池の回収および製品のマーケティング力によってバリューチェーンを形成し、資源を無駄にしないサーキュラーエコノミーを実現します。

中国で天津志臻自動化設備有限公司への資本参加

このスライドでは、STEP3である、中国系企業の海外進出と環境負荷低減に貢献する事例をご紹介します。

当社の中国拠点である明和上海有限公司は、EV・自動運転車、高性能スマートフォン、IoT機器の普及などにより、急速に需要を拡大する積層セラミックコンデンサ、いわゆるMLCC業界において、主要な生産設備である積層機や切断機の製造・販売事業を手掛けている天津志臻(テンシン・ジージン)自動化設備有限公司の株式を今年1月、新たに取得しました。

同社の積層機、切断機は既存の設備と比較して、顧客となるMLCCメーカーの⽣産効率を上げ、エネルギー消費が⼤きいMLCC ⽣産⼯程の環境負荷低減にも貢献します。また、明和上海は、海外向け総販売代理店契約を同社と締結しました。今後は同社製品を中国外へ拡販していくため、当社のネットワークを活用し、積極的な顧客開拓を進めます。

その他トピックス:東南アジア・インドで事業を深化。FT合成油は日本販売を本格開始。

中国ネットワークを起点とした注力領域と日本、東南アジア、インドへの展開を掛け合わせた事例もご紹介します。特に環境の領域である、省エネ、低摩擦、長寿命に寄与する潤滑油の原料となるFT合成油、いわゆるCTL(Coal to Liquid)の取引拡大に取り組んでいます。

本製品は当社と協業関係にある中国のパートナーが製造しており、今年の4月から日本の顧客への販売を本格的に開始しました。今後は日本だけでなく、アジアへの販売も推進します。

新たな事業開発に向け人材への投資継続:事業を創出する人材投資とスタートアップとの共創

両輪の施策のもう一方として、新たな事業開発を掲げています。具体的な施策の一部をご紹介します。「企業内起業家」の育成は、当社が新たな領域での事業開発を推進するにあたっての基盤の1つと考えています。昨年度から企業内起業家の育成研修を開始し、社内ベンチャー制度を通じて、1件の案件を事業化しました。

また、若手社員の海外トレーニー制度を通じ、海外での事業拡大の担い手の育成も積極的に進めています。さらに、ベンチャーキャピタルファンドへの出資などを通じ、スタートアップ分野での情報の取得機会も増やしています。現在、320件以上の案件の検討を行い、スタートアップ企業との共創へ向けた対話、交渉を進めています。

外部環境の変化への対応

近年、外部環境の変化が激しく、機動的な対応が求められています。ここでは2つのトピックについて、当社の対応をご説明します。まず、トランプ政権の関税政策についてです。

当社は直接的な影響は少ないものの、サプライチェーンの中位に位置するため、製造や物流の減少、経済成長の鈍化など間接的な影響が懸念されます。このため、政策動向を注視し、リスクシナリオを分析するとともに、柔軟な対応策を講じて事業への影響を最小限に抑えています。

次に、中国政府のレアアース・レアメタル輸出管理についてです。中国が加工工程の9割以上を占める中、輸出管理の開始は世界のサプライチェーンに大きな影響を与えています。これに対し、当社は現地サプライヤーとの強固な関係を活用し迅速な情報収集を行うとともに、調達先の多様化を進め、安定供給体制を構築しています。

これらの取り組みを通じ、外部環境の変化に対応しながら持続可能な事業運営を目指します。

資本コスト・株主還元策:配当性向50%の方針に基づき、今期配当を年42円に(前期比+8円)

株主還元並びに、資本コストや株価を意識した経営の実現についてご説明します。当社は中期経営計画2025において、ROEの目標を7パーセント以上とし、中長期では二桁の実現を目指します。そして、株主還元については、連結配当性向50パーセントを基本として、機動的な株主還元を行うこととしています。

2024年3月期は1株当たり34円の配当を実施し、2025年3月期は1株あたり42円を予定しています。中期経営計画2025を通じた企業価値のさらなる向上と、ROE二桁の実現によって、株主・投資家のみなさまにとって魅力のある銘柄を目指し、引き続き取り組みます。

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて:現状分析・評価〈全体像〉

当社の現状分析と自己評価です。2025年3月末における当社のPBRは0.73倍です。PBR1倍割れ解消のために、引き続き、ROEの改善並びにPER向上に向けた取り組みを実施します。

(参考)ROEの推移及び株主還元の推移

なお、参考として、こちらのスライドに当社のROEの推移および株主還元の推移を示しています。

(参考)株価推移 <2015年4月~2025年3月>

こちらのスライドには株価推移をお示ししています。お時間のある際にご覧ください。

今回のまとめ

最後に本日お伝えしたいポイントを4点でまとめています。

1点目は、2025年3月期決算についてです。難燃剤・ベースオイルおよび自動車部品関連が堅調に推移したことで2期連続、過去最高益を達成しました。

2点目は、今期の業績予想についてです。親会社および国内子会社の事業が堅調に推移する予想も、先行投資の増加や地政学リスクの影響に伴い、減益を予想しています。

3点目は、中期経営計画の進捗についてです。連結純利益は計画よりも大きく上回る状況であり、ROEは7パーセント以上を2期連続で達成しています。引き続き、ROE二桁の実現に向け、稼ぐ力と資本の効率性を一層向上します。

4点目は、株主還元についてです。配当性向50パーセントを基本として、機動的な株主還元を実現します。これからも、株主並びに投資家のみなさまのご期待に沿えるよう、当社グループ一丸となって事業活動を推進しますので、引き続きよろしくお願いします。

質疑応答:冷凍機油事業における2025年度の見通しについて

金井:「冷凍機油事業において、シェア率および販売価格は低下しているが、2025年度の見通しについて教えてほしい」というご質問です。

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