本日の内容

山本克彦氏(以下、山本):株式会社ディーエムエス代表取締役社長の山本克彦です。

本日は、担当より当社事業のご紹介と、2025年3月期の業績および2026年3月期の業績予想をお伝えし、そのあと私から、企業価値向上に向けた取組みについてご説明します。

1.事業紹介/①事業の全体像

村上遥香氏:当社は、1961年の会社設立以来、企業や公的機関と消費者との「よい関係づくり」をトータルサポートする事業を展開しています。

中核となるのは、ダイレクトメールの企画制作・発送の事業です。また、情報とモノを取り扱うノウハウを活かした第2の事業の柱として、物流事業に取り組んでいます。

その他、セールスプロモーション支援、イベント企画運営など、企業と消費者が直接コミュニケーションする分野で幅広いサービスを提供しています。

1.事業紹介/②選ばれる理由

当社の強みは大きく3つです。顧客企業が必要とする機能を複合的に提供できる「ワンストップサービス」、年間3億通を超えるダイレクトメールを扱う「スケールメリット」、品質や情報セキュリティのJIS認証を持ち、情報と安心をセットでお届けできる「マネジメントシステム」の強みです。

これらを活かして、付加価値が高く、かつ規模の大きな案件に組織的に取り組めることが、当社が大手企業を中心に選ばれる理由となっています。

1.事業紹介/③近年の業績推移

こちらのグラフは、過去10年間の当社の売上高と営業利益の推移です。2024年3月期と2025年3月期においてはコロナ対策関連案件の反動がありましたが、その他ではダイレクトメール事業の底堅い需要と、当社の強みが奏功し、ご覧のように、おおよそ安定的な収益を維持しています。

1.決算ハイライト

2025年3月期の決算概要です。売上高は前年比2.4パーセント増加の275億5,500万円、営業利益は13.1パーセント減少の11億9,000万円、当期純利益は44.6パーセント減少の8億4,100万円となりました。

前年度にありました土地の譲渡益やコロナ対策案件の反動などによって減益となりましたが、主力のダイレクトメール事業が好調に推移したことで、いずれも期中に上方修正した予想に対してはプラスとなりました。

2.事業ごとの業績/①ダイレクトメール事業

次に、事業セグメントごとに業績とその要因をご説明します。

まず、ダイレクトメール事業では、既存顧客の取引窓口拡大や新規受注を促進し、通信販売や金融分野の広告主をはじめとした取扱いが増加したことで増収・増益となりました。

引き続き、シェア拡大に向けた活動を強化していきます。

2.事業ごとの業績/②物流事業

物流事業では、EC市場の拡大を背景に、通販出荷案件が堅調に推移し増収となりました。また、最新物流設備への投資による業務効率化の取組みが奏功したことで増益となりました。

今後も、機械化による省人化などの取組みを続けながら、取扱量の拡大に向けて、新規案件の開発に注力していきます。

2.事業ごとの業績/③セールスプロモーション事業

セールスプロモーション事業では、コールセンターやバックオフィスの機能を活かし、企業・自治体を対象とした各種支援業務に注力したものの、前年4月から6月期のコロナ関連の事務局運営業務等の反動で、減収・減益となりました。

2.事業ごとの業績/④イベント事業

イベント事業では、販売促進やスポーツイベントの運営・警備業務に注力したものの、前年4月から6月期のコロナワクチン接種会場運営業務の反動で、減収・減益となりました。

3.2026年3月期業績予想/①業績予想の背景

次に、2026年3月期の業績予想について、その背景をご説明します。

まず、主力のダイレクトメール分野では、市場全体は軟化傾向にあるものの、ビッグデータ蓄積が進む中堅・大手企業を中心に、引き続きダイレクトメールの行動喚起力に期待した需要が堅調です。

物流分野でも、EC市場の拡大が続いていることで、当社の取扱量も増加傾向にあります。昨年から注力している業務提携や機械化・省人化の取組みが進展していることからも、さらなる受注拡大と、課題となっている利益改善に向けた環境が整ってきています。

また、セールスプロモーション分野では、自治体の子育て支援事業や改正戸籍法に関連する業務受託機会の増加が期待されます。イベント分野でも、大型スポーツイベント、メーカー展示会などの受注機会を見込んでいます。

3.2026年3月期業績予想

こうした環境認識と取組みを前提として、当社では、2026年3月期第2四半期の業績予想を、売上高125億円、営業利益3億7,000万円、純利益2億6,500万円、同じく通期業績予想を、売上高277億円、営業利益12億円、純利益8億5,000万円としています。

人件費およびパソコン・クラウドサービス等のIT環境整備を中心に販管費が増加することで、上期の利益は前年同期比でマイナスの予想ですが、受注増と業務効率化による粗利改善が見込まれる下期の事業収益で挽回し、通期では、若干ではありますが、増収増益となることを予想しています。

4.企業価値向上に向けた取組み/①現状分析/評価

山本:続いて、私から、企業価値向上に向けた取組みについて、2025年3月にアップデートしました「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を中心に、ご説明します。

以前、当社では、CAPM(キャップエム)により株主資本コストを認識していましたが、その後の投資者の方との対話を持つ中で、この認識にギャップがあることがわかったため、前回2024年5月のアップデートの時点から、あらためて8パーセントの水準を認識しています。

これに対して、当社のROEは、直近5年間では平均8.5パーセントであったものの、厳しさを増す事業環境と足元での事業戦略の進捗を踏まえていったん5パーセントの水準になっています。

しかしながら、長年のPBR1倍割れを克服するためには、その構成要素であるROEを再び、株主資本コストを超える8パーセント以上とする必要があり、その達成を目標に取組むことを重要課題と考えています。

4.企業価値向上に向けた取組み/②ROE改善に向けた取り組み

ROE改善に向けた取組みとしては、ROEの分子である、売上拡大と利益改善による収益拡大と、分母である自己資本の抑制に向けた取組みが必要です。

売上拡大については、既存事業と相乗効果のある次世代事業の創出、物流事業とセールスプロモーション・イベント事業を第2、第3の事業に育てる取組み、主力であるダイレクトメール事業において新市場開発や新サービスでシェア拡大を図る取組みを進めます。

また、利益改善では、これらの事業のサービスを組み合わせて、顧客に提供する付加価値を高めることにより、価格競争を回避しつつ、一方で生産性向上につながる自動化、省人化、ITに対する投資を積極化させます。これらについては、この後、事業ポートフォリオと投資戦略の箇所でも、お話しします。

最後に資本政策についてですが、当社では株主還元の強化に取り組んでいます。後ほど、このことを含めて、キャピタルアロケーション、資本配分の方針について、ご説明します。

4.企業価値向上に向けた取組み/③事業ポートフォリオ

今後の事業展開については、引き続き既存事業の強みを活かしながらも、さらに周辺領域への展開を目指します。

当社の事業には、いずれも情報とモノを扱うノウハウ、リアル領域の販売促進支援の実績、盤石な顧客基盤の強みがあります。これらに、デジタル・オンライン、データ・AI、新たな顧客や市場の機会を組み合わせることで、より強い事業ポートフォリオとしていきたいと考えています。

スライドの図は、縦軸に成長性、横軸に収益性を表しています。緑色の円が現在の当社の事業の位置づけを表しており、これらに対してピンク色の円が、今後、収益性と成長性の見込める 右上の位置づけへと事業を伸ばしていくイメージを表しています。

また、最も右上のオレンジ色の部分では、DM事業をはじめとした既存事業とのシナジーが見込める「データ・AI」を有力な次世代事業分野と捉えて開発に取組みたいと考えています。

4.企業価値向上に向けた取組み/③-1 次世代事業の創出

これらの戦略に基づいて、すでに取組みを進めています。

次世代事業の創出の背景には、顧客企業でのビッグデータの活用ニーズや、AIや分析技術の高度化、一方で、顧客企業におけるデータ活用に向けた課題が生じていることなど、さまざまな変化があります。

これらは、当社の既存事業の上流にあるニーズと捉えることができ、当社事業との親和性が高いものと考えています。

ここまでの取組みでは、広告表現AIチェックや顧客情報の分析などのサービス開発を行い、初期的な成果が出ています。

2025年3月期は、これら新サービスの営業体制を新たに取り組んできました。ここからは、その成果の拡大展開と、さらに新たなサービス開発や資本提携、M&Aも視野に入れた開発を行いたいと考えているところです。

【取組事例】資本業務提携~データ・AI分野で新たなサービス開発

先日、2025年2月に、資本業務提携を発表しました株式会社グロースバースとの取組みも、こうしたチャレンジの一環です。

当社が、これまであまり手掛けてこなかった、マーケティングデータを扱うクラウドAIシステムの分野で協業し、ダイレクトメールをはじめとした既存事業の付加価値を高め、「総合情報ソリューション」企業としての展開を進めていきたいと考えています。

4.企業価値向上に向けた取組み/③-2 第2-3の事業の柱づくり

物流、セールスプロモーションとイベント事業は、量的拡大と効率化で、第2、第3の事業の柱に育てたいと考えています。

EC市場の拡大や地方自治体での住民サービスの多様化・活性化、人手不足などの変化も、人との接点を事業化しているセールスプロモーション・イベント事業の機能をひとまとめに提供する機会になります。

これまでにも、自治体の子育て支援などにおいて、トータル業務設計を提案して、受注の実績をあげています。ここからは、さらにBPO・業務プロセスの一括委託を受けるサービスの拡大や、各事業との連携強化、デジタル化を視野に展開していきます。

【取組事例】東久留米市 ファミリー・アテンダント事業を受託

直近では、東久留米市のファミリー・アテンダント事業の受託を始めています。

本事業は、東久留米市が、市内で生後5か月から1歳を迎えるお子さんを養育する家庭への見守り訪問と、満3歳までのお子さんを養育する家庭への育児の伴走支援を行う、子育て支援事業です。

当社では、BPO・業務受託と、物流、イベントの各機能を組み合わせ、本事業の運営に必要な複合サービスを提供しています。

4.企業価値向上に向けた取組み/③-3 主力(DM)事業の深化

主力のダイレクトメール事業にも、深化の余地があります。

デジタルとリアルを行き来して行う消費体験が一般化する中、オンライン広告だけでは成果が出にくくなっており、ダイレクトメールを含むリアルな広告媒体との連携が行われるようになっています。また、郵便料金値上げなどの懸念材料があるものの、ダイレクトメールの費用対効果を高める付加価値に対するニーズが高まるなどの変化も見受けられます。

ここまでの取組みでも、金融機関や広告分野などの大手企業との協業による、新たなDMメディア開発で、ダイレクトメールの用途を広げることに取り組んでいます。

【取組事例】ビッグデータ企業との協業によるダイレクトメール活用機会拡大

従来から、ダイレクトメールは自社が直接取得した顧客データを利用して、おもに自社顧客の範囲で行われていましたが、一方で、自社にとっての新たなターゲットにダイレクトメールを展開したいというニーズも多くありました。

当社では、ビッグデータを保有する企業との協業により、個人情報保護に配慮したDMメディアとしての利用機会をつくることで、ダイレクトメールの活用機会拡大にも取り組んでいます。

これらをはじめ、品質・コスト・スピードだけではなく、販売促進効果を高めるサービスへ軸足を置き、新たな顧客・市場の開拓を進める考えです。

4.企業価値向上に向けた取組み/④投資戦略

一方、これらの事業戦略には、これまで以上に投資が必要になるとも考えています。例えば、戦略的な事業分野では、どちらかというとこれまで保守的だったM&Aや資本提携にも目を向けていきたいと考えています。

また、既存事業の領域でも、生産性や付加価値を向上させる設備投資、人や職場環境充実のための投資、AIを含めたデジタル化やIT環境整備のための投資など、事業ポートフォリオの変革と成長基盤への投資を積極的に推進したいと考えているところです。

4.企業価値向上に向けた取組み/⑤キャピタル・アロケーション

以上、述べてきたことの実現に向けて、これまでよりも、成長投資と株主還元に重きをおいた資本配分を新たな方針としていきます。

左が、2022年3月期から2024年3月期における原資と分配の実績を表しています。右は、2025年3月期から2027年3月期の方針です。

現預金91億円に、この間の営業キャッシュフローを加えたものを原資として、おおよそ2ヶ月分の売上高に当たる運転資金50億円を確保したうえで、残りを成長投資と株主還元に分配することを方針とします。

成長投資を表したピンク色の部分と、株主還元を表した緑色の部分の割合が、左右の図のように今後拡大することを見込み、より効果的な資本の活用を図ります。

4.企業価値向上に向けた取組み/⑥株主還元

具体的な株主還元としては、2025年3月期から2027年3月期において、より積極的かつ安定的な配当を実現するために、配当方針について、DOE(純資産配当率)を新たな指標として導入し、DOE8パーセントを目安とすることにしました。この配当方針は、2025年3月期の期末配当より適用します。

また、2025年3月期においては、4億2,100万円の自己株式取得を実施しています。この後も、成長投資の実施状況を勘案しながら、取組みを検討していきます。

顧客企業と生活者のよい関係づくりをトータルサポート

以上で、株式会社ディーエムエス、2025年3月期の決算説明を終了します。

今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。最後まで、ご視聴いただき、ありがとうございました。

質疑応答:株主還元強化の理由や背景について

Q:急激な株主還元強化を実施されたが、その理由や背景を教えてください。また、高配当は今後も継続して続けられるのでしょうか?

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