目次

畠賢一郎氏(以下、畠):みなさま、こんにちは。株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング代表取締役社長執行役員の畠です。どうぞよろしくお願いします。本日は多忙の中、当社の2025年3月期決算説明会のライブ配信にご参加いただき、誠にありがとうございます。

実は連休前に体調を崩し、その後の無理も重なり、本日は声が出しづらい状況です。お聞き苦しい点、誠に申し訳ありません。本日はIR担当執行役員の若林が主にご説明し、必要に応じて私からもお話しします。ご了承いただけますと幸いです。

目次です。本日の内容は、決算説明資料に沿って構成しています。参考として、スライド下部に用語の説明を記載しています。時間の都合上、駆け足でのご説明となる可能性がありますが、できる限りスライド内に説明文を記載していますのでご容赦ください。

サマリー

サマリーとして、本決算説明会の概要をまとめています。業績概要について、2025年3月期の売上高は24億5,500万円、営業利益はマイナス2億3,800万円でした。

2026年3月期は諸般の理由により業績をレンジで考えており、売上高は29億円から31億円、営業利益は1億円から2億円を見込んでいます。販売する製品がようやく充実し始めたため、今後は安定的な黒字化を目指していきます。これまでとは違い、成長を実現するパイプラインが整ってきました。本日は、これらの内容についてもご説明できるかと思います。

また、ようやくこの領域に理解のある仲間が増えてきました。当社が注力してきた人材育成もしっかりと実を結んでおり、経営基盤を強化するノウハウを持った人材も育ってきています。

これらの結果として、業界団体や学会等、外部のみなさまからも高い評価を得られるようになってきました。

2025年3月期の振り返り

2025年3月期の振り返りです。スライドに赤色の文字で、当社が実施した内容をサマライズして記載しました。なお、セグメントは4つに分かれています。

製品事業では、「ジャック」の価格改定を始め、「ジャスミン」の発売、そして「Allo-JaCE03」の治験完了報告、そして直近では「ジャック」の変形性膝関節症への適応拡大を、着実に進めてきました。

再生医療受託事業に関しては、VC Cell Therapy社との資本業務提携について開示しましたが、それ以外にも数多くの企業からの受託が進行しており、事業の重要性が浸透している状況です。加えて、「ジェイス」の適応拡大の一環として、リストカット痕に対する自家培養表皮移植についても開示のとおり始まっています。

研究開発支援事業では、「EpiSensA」の世界標準化、海外への訴求、そして新たなモダリティの導入も試みています。これらの取組により、当社が作り上げたプラットフォーム上でこの研究開発支援事業が前進する準備が整いました。

さらに、事業基盤として地域との強力な連携も進めています。スライドには、シスメックス社との基本合意の件を記載していますが、それ以外にもさまざまな方々と協力・連携体制を構築しています。

また、昨今はどの領域でも人材育成が話題になっています。当社では大学等、いろいろな学校と連携し、そのような人材育成も着実に進めているところです。

当社は今回、経営体制を刷新し、確かな経営基盤、事業基盤を作り上げていきます。そのようなお話を、私からみなさまへ直接伝え、対話もしたいと切に願っていますが、本日このような聞き苦しい声ですので、ここから先はIR担当執行役員の若林よりご説明します。

2025年3月期 決算のポイント

若林晃伸氏(以下、若林):IR担当執行役員の若林です。私から、2025年3月期の業績・トピックスをご説明します。

第4四半期(1月から3月)の実績については、スライド右上のグラフのとおりで、第4四半期の営業利益は9,500万円と大幅な増益で着地しました。「ジェイス」重症熱傷の症例が増加したことに加え、今後の成長が期待できる「ジャスミン」の販売を開始できたことなどが要因です。

累計実績については、主に帝人収入の後ろ倒しと助成金収入の減少により、営業利益は前年同期比マイナス2億3,800万円となりました。しかしながら、2026年3月期の業績では着実にV字回復を達成したいと思っています。

スライド下部のブレイクダウンしたブリッジチャートは、前年同期の1億4,400万円からの増減を示しています。左から順にご説明します。再生医療製品事業は8,600万円の増益となりました。この要因として「ジャスミン」販売開始、「ジェイス」の母斑好調、「ジャック」の保険償還価格の引き上げが挙げられます。これらにより、着実に基礎収益力を伸ばすことができました。

一方で、再生医療受託事業は、一般顧客向けの受託で、特定顧客の開発進捗によるマイナスがあったことに加え、帝人向けの支払いが今期に遅れたことによって、残念ながら減益となりました。

研究開発支援事業では、国内大口顧客において特定顧客の研究テーマ終了による減収があった一方、皮膚感作性試験法「EpiSensA」がOECDのテストガイドラインに新たに収載されたことを受け、国内外への拡販が進みました。その結果、若干ながら増収を維持しました。また、今後の事業基盤もしっかりと構築できたと考えています。

その他、減益の要因は、主に費用によるものです。特に、2024年3月期に計上していた経産省からの大型の助成金がなくなったことが大きく影響し、全体としては減益となりました。

2025年3月期の業績

P/Lです。2025年3月期の営業利益はマイナス2億3,800万円で着地しました。

成長施策に関する進捗状況

成長施策に関する進捗状況をご説明します。1つ目は、再生医療製品事業です。皮膚領域においては「ジャスミン」の受注が1月から入ってきています。2025年3月期は6例、2026年3月期はすでに50例を超える待機患者さんがいます。医療機関と連携して着実な治療提供を行っていく計画です。

また、他家培養表皮である新規パイプライン「Allo-JaCE03」に関しては、2026年3月期中の承認申請を目指しており、開発が順調に進捗しています。

軟骨領域の「ジャック」の変形性膝関節症への適応拡大に関しては、4月18日に開催された厚生労働省「薬事審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会」において適応症に変形性膝関節症を追加する一部変更承認がが了承されました。こちらは後ほど詳細をご説明します。

また、新規パイプラインの自家CAR-T細胞について、これまでの名古屋大学での悪性リンパ腫の医師主導治験に加え、当社がライセンス権を保有する急性リンパ性白血病への適応に対する医師主導治験も開始され、治療提供に向けて前進しました。

2つ目は、再生医療受託事業です。資本業務提携を開始したVC Cell Therapy社との開発は順調に進捗しています。また、メトセラ社と循環器領域という新たな領域での受託契約を締結しました。見込み顧客との契約交渉も複数進捗しています。

3つ目は、研究開発支援事業です。「EpiSensA」の拡販体制を構築するために、帝人構造解析センターと協業で試験受託事業を開始しています。欧州を中心とした海外展開を本格化する準備も整いました。

また、新規パイプラインとして、ヒトiPS細胞とオルガノイド技術を用いた研究用腸管上皮モデルの開発権を取得しました。これまでの製品は化粧品市場への展開が中心でしたが、今後はより大きな市場である創薬市場や海外への展開を加速していきたいと考えています。

4つ目に、基盤構築として、これらの成長を加速する経営体制への刷新、生産合理化の技術を持つシスメックス社との共同開発も順調に進捗しています。

開発パイプラインの上市目標

開発パイプラインの上市目標を表で示しました。スライドに赤色でハイライトした部分が進捗です。「ジャスミン」発売、「ジャック」の変形性膝関節症への適応拡大や自家CAR-T細胞の医師主導治験開始と、飛躍的な成長に向けて着実に前進しています。

Pickup 1 自家培養軟骨「ジャック」:厚労省の部会にてOA適応追加を了承

「ジャック」の変形性膝関節症への適応拡大に関する補足です。4月18日に薬事審議会 再生医療等製品・生物由来技術部会において、一部変更承認が了承され、大きく前進しました。5月中には正式に承認される見通しで、正式承認されれば詳細を開示予定です。

なお、ゴールとなる保険収載の時期は、「ジャスミン」の経験を踏まえると不確実性が高く予測が難しい状況ですが、2026年3月期の第3四半期(10月から12月)中には保険収載を目指し、現在、販売準備を計画しています。

承認前で適応などの詳細は未確定ですが、「ジャック」の適応拡大の概要についてもご説明します。変形性膝関節症は、膝関節の自覚症状を有する患者数で約1,000万人と非常に多くの患者さんが存在すると言われています。当社設立時から目指してきた長年の目標が叶う「真の適応」と考えています。

ただし、今回、「ジャック」の適応となるのは、スライドに記載のとおり、運動療法などの保存療法では症状が改善せず、かつ2平方センチメートル以上の軟骨の欠損を有する患者さんであり、軟骨が完全にすり減った重症の患者さんは対象外だと現時点では想定しています。

現在は適応が外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎で欠損面積が4平方センチメートル以上と限られており、年間200例弱の患者さんが対象となっていますが、将来的には年間1,000例を超えるポテンシャルがあると見込んでいます。当社の売上50億円達成に向けた、最も重要な成長ドライバーになると期待しています。

治験の結果も、スライドに記載のとおり、良好でした。この結果をしっかりと訴求していきたいと考えています。

Pickup 2 再生医療受託事業の新規領域への拡張

再生医療受託事業において新規領域へといかに拡張していくか、その具体的な戦略をご説明します。

スライド左側に示しているとおり、当社の強みは顧客のニーズを的確に捉え、上市を見据えた包括的な支援を実施できる点だと考えています。これらを十分に活かし、新規事業技術領域への展開を加速することで、国内のみならず、海外の顧客獲得・拡大を図っていきたいと考えています。

スライド右側に示しているとおり、VC Cell Therapy社とのiPS細胞への技術展開、メトセラ社との循環器領域への拡張、アクチュアライズ社との角膜領域での新展開を確実に支援していくことで、より多くのシーズの上市を実現する支援に取り組んでいきます。

Pickup 3 ヒトiPS細胞とオルガノイド技術を用いた研究用腸管上皮モデル開発権取得

研究開発支援事業における「ラボサイト」シリーズの新製品開発権の取得についてご説明します。

昨今、欧米を中心に動物愛護の観点から動物実験禁止の潮流が世界的に加速しています。この要請にしっかりと応えてサステナブルな事業を目指すべく、ヒトiPS細胞とオルガノイド技術を用いた研究用腸管上皮モデルの開発権を、タカラバイオ社より譲り受けました。

マーケット規模が非常に大きい創薬市場・海外市場への展開が期待できるものとして、2027年3月期第1四半期での上市を目指して開発を進めていきます。

さらには、この技術の開発を通じて知見を獲得し、組織構造を持つ製品ラインナップを新たに拡充していきたいと考えています。

ここまで各事業についてご説明しました。新経営体制への刷新に関しては、山田よりご説明します。

成長を加速する新経営体制へ刷新

山田一登氏(以下、山田):2025年6月19日開催予定の定時株主総会およびその後の取締役会にて承認された場合、代表取締役社長執行役員に就任予定の山田一登です。

6月19日より、私に加えて若林が取締役に就任し、さらに4名の執行役員を迎えた新たな経営体制のもと、黒字化の達成と当社のさらなる飛躍的発展を目指していきます。みなさまのご期待に応えられるよう事業を推進し、努力していきますので、引き続きよろしくお願いします。

2026年3月期の業績予想

若林:2026年3月期の業績予想についてご説明します。2026年3月期の見通しに関しては、「ジャック」変形性膝関節症への保険収載時期の見通しが非常に困難であり、なおかつ影響が大きいと考え、新たにレンジ形式を採用しています。

上限は、保険収載が2026年3月期中に完了する場合を見込んでいます。スライドに表で示したとおり、上限見込みとして売上高31億円、営業利益2億円、当期純利益1.9億円を想定しています。一方、保険収載が2026年3月期に完了しない場合の下限見込みは、売上高29億円、営業利益1億円、当期純利益1億円となります。

セグメント別の売上高および製品事業領域ごとの売上高は、スライドに記載のとおりです。各領域が成長戦略を確実に実行することで、すべてのセグメントにおいて増収を見込む計画を着実に推進していきたいと考えています。

上限値、下限値、いずれのケースでも着実に黒字化を達成し、今後の安定的な黒字化を実現していきたいと考えています。

2026年3月期の主要施策

業績予想を達成するための主要施策についてご説明します。まず、「ジャスミン」における50症例を超える待機患者さんに対し、着実な治療提供を進めていきます。これは2026年3月期の成長ドライバーの1つと位置づけています。

もう1つは「ジャック」の変形性膝関節症への適応拡大です。現時点で、保険収載時期の見通しは困難ですが、リソースを集中的に投入し、医師や患者さんへの啓発活動に注力することで、新たな治療の提供価値を世にしっかりと広めていきます。

その他にも、2027年3月期以降の収益化が期待できる「Allo-JaCE03」の開発・販売体制の整備、自家CAR-T細胞の医師主導治験を着実に遂行していきます。

加えて、再生医療受託事業と研究開発支援事業においても、先ほどお伝えした戦略を着実に実行することで増収を実現したいと考えています。

同時に、これらの成長を支える基盤構築にも注力します。その取組の1つが、製造・品質管理工程の機械化・自動化の推進です。そのために、シスメックス社との提携を加速していきます。

また、持続的な成長には人材の育成・確保が非常に重要です。豊橋技術科学大学等との地域連携強化により、人材育成と産業活性化を着実に実行していきます。

飛躍的成長に向けて

最後に、飛躍的成長に向けた中期経営計画の数値目標の見直しについてご説明します。

「事業計画及び成長可能性に関する事項」で2026年3月期達成を目指した売上高50億円、営業利益10パーセントについては、「ジャスミン」および「ジャック」変形性膝関節症に対する保険収載時期の遅れなどにより、残念ながら見直さざるを得ない状況となっています。

ただし、「ジャスミン」、「ジャック」変形性膝関節症への適応拡大、「Allo-JaCE03」の上市による製品事業の売上拡大を主な成長ドライバーとし、2年遅れとなる2028年3月期には当初目標を達成する計画へと修正します。

また、再生医療受託事業および研究開発支援事業でのグローバル展開の推進と、研究開発支援事業における腸管上皮モデルの上市などが寄与すれば、2028年3月期には売上高50億円、営業利益5億円の達成を目指せると考えています。

これらの目標については、各成長施策を着実に実績につなげていきながら、四半期ごとのIR説明資料や決算説明会を通じて進捗状況をご報告します。ご説明は以上です。

質疑応答:FDAの動物実験代替法に関する方針について

質問者:今回、FDA(アメリカ食品医薬品局)が新しく出した動物実験代替法に関する方針について教えてください。先ほども少し言及されていましたが、御社がこれから取り組む領域、あるいはすでに取り組んでいる領域に需要が大きく集まってくるかと思います。

御社ではそのような需要を自ら取りに行くために、営業体制を見直したり、目下の活動を変えたりしているのでしょうか?

ここから先は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

※本登録案内のメールが確認できない場合、迷惑メールフォルダやゴミ箱に自動的に振り分けられている可能性がありますので、今一度ご確認いただきますようお願いいたします。