Voicy「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」
オープニング
荒井沙織氏(以下、荒井):「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」をご視聴いただき、ありがとうございます。今回の放送の司会を担当します、荒井沙織です。この番組は、個人投資家、アナリスト、ストラテジストなどの方々へのインタビュー、対談などを通して、みなさまとともに投資の知見を深めていくための、ログミーFinance主催のラジオ番組です。
今回の「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」では、前回に引き続き、個人投資家のヘムさんをゲストとしてお招きし、『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』について、執筆の裏話などを含めつつ、2回の放送を通してうかがっていきたいと思います。それでは、放送スタートです。
書籍執筆時に意識したこと
あらためまして、今回のゲストをご紹介いたします。個人投資家のヘムさんです。本日はよろしくお願いいたします。
ヘム氏(以下、ヘム):よろしくお願いします。
荒井:さて、前回の放送では書籍の概要について伺いましたので、今回は裏話的なことをうかがっていければと思います。まずは、今回書籍を執筆される中で、特に意識をされていたことは何かありましたでしょうか?
ヘム:はい。今回もよろしくお願いします。
荒井:お願いします。
ヘム:僕の投資手法の骨格は、小型割安株と、増配狙いと、暴落時の買い向かい。この3つの組み合わせになります。この3つの手法がどうして有効性があるのかということを、データとその理屈を示しながら、読んでいるみなさんに納得感を持ってわかっていただける。このことを強く意識しました。
この3つのうち、増配狙いについては、次回の放送、第3回で詳しく解説したいと思うので、今日は小型割安株投資と暴落時の買い向かい投資の有効性。なぜ有効なのかを、納得性をもってわかっていただけるように、少しの時間ですがお話しさせていただきたいと思います。
「小型割安株投資」の有効性
まず、小型割安株投資への有効性について説明させていただきます。これを説明するには「効率的市場仮説」という、ちょっと難しい話をしないといけないんです。効率的市場仮説というのは「株価は常に適正だ」という考えでして。これはシカゴ大学のユージン・ファーマさんが提唱した説で、彼は後にノーベル経済学賞を受賞してます。
この考え方では、「3つの前提条件のもとでは、株価は常に適正値、適切だ」というものなんです。その条件というのは、1つ目は、十分な参加者が市場にいること。2つ目は、その参加者が十分な情報と知識を持っていること。3つ目は、その参加者が合理的な判断をすること。この条件のもとでは、株価は常に適正だっていうんです。
株価が常に適正だと、どんな銘柄を選んでも結局は同じで、銘柄選定で優位性を出すことは難しいということになります。結果、インデックス投資をしていればいいということになって、乱暴な言い方をすると、すべては運次第で、どの銘柄を選んでも期待される儲け、期待値は同じということになります。銘柄は適当に選んでおけばいいということになるんです。
この考え方だと、長期でTOPIXとか日経平均を大きく上回る投資家はいないということになるんですけど、実際はそうではありません。長期で市場を上回る投資家はたくさん存在していて、僕の周りにもいますし、僕自身もそのうちの1人だと思ってます。
「じゃあ、どうしてなんだろう」ということになるんですが、それは効率的市場仮説には盲点があるからだということです。効率的市場仮説は、8割は適応してると思っています。つまり、8割がたは機能している、合ってるっていうことです。2割がたは効率的市場仮説が機能してないということになるんですけれども、この2割は盲点があるからなんです。
その盲点の1つが小型割安株投資です。小型株の世界では、時価総額の規模が小さすぎて、機関投資家などのプロの投資家が参加しにくい世界なんです。 プロは運用資産が大きすぎるので、小型株を買うと、自身の買いで株価をつり上げてしまうことになります。売る時も同じで、自身の売りで株価を下げてしまいます。つまり、高く買って安く売ることになる。そんなことをしてると儲からないので、「機関投資家は時価総額○○億円以上の株式しか買ってはいけない」という制約があるんです。だから、(機関投資家は)小型株の世界にはあまり入ることができないということになります。
先ほど、効率的市場仮説の前提の1つに「市場の参加者がたくさんいること」というお話をしたと思いますが、実は日本の株式市場の世界で、プロは8割以上です。正確にいうと8割5分ぐらいがプロです。残りの1割5分が個人投資家です。この8割5分が参加できないんですから、効率的市場仮説の前提である、十分な参加者がいないということになるんです。
もう1つ、効率的市場仮説の2つ目の条件というのは、参加者が十分な知識と情報を持っているということでした。でもプロがいない。個人投資家ばかり。つまり、十分な知識と情報を持っていないということになるんです。ということは、3つの条件のうち、2つが当てはまっていないということになる。この前提条件のもとでは、株価は適正値ではないっていうことになるんです。
株価が適正値でないというのはどういうことかというと、本来の価値より高く売られてる株と、安く売られてる株が混在しているということです。これをちょっと乱暴な言い方にすると、お宝銘柄とゴミ銘柄があるということなんです。
この中で、自分自身で分析をして、お宝だと思える銘柄を選定して、ポートフォリオを組むことによって、市場を上回るリターンが狙えるというのが1つ目の大きな戦略です。
実際、日本市場の過去のデータを調べてみると、過去15年でも、20年でも、43年でも小型割安株のパフォーマンスが優れてるというデータが存在します。
これは僕の本でも詳しく書いてるんですが、それもちょっと優れてるとかいうレベルでなく、大幅に優れているという状態です。で、個人投資家しか戦えない分野で、なおかつ高いリターンが狙える。つまりブルーオーシャンの世界ということなんです。僕が今まで高い成績を上げてこれた1つの理由は、このブルーオーシャンで戦ってきたからということになります。
このブルーオーシャンで戦ってきたのは私だけではなく、“億り人”、株で多くの資産を稼いだ人の多くはこの世界で戦っています。でも、この世界で戦うことが有利だということは、実はみなさんあまり知らないんですね。
多くの投資本には「大型株を買うほうがいい、安心だ」と書かれているんですが、リターンの面からいうと、実はそうではないということになります。これが1つ目の僕の戦略です。
「暴落時の買い向かい投資」の有効性
もう1つの戦略、暴落時の買い向かいですが、効率的市場仮説の前提の中で、「市場参加者が合理的な判断をする」ということが3つ目にありました。暴落というのは、市場参加者が最も合理的な判断ができない時なんです。しかも最近は、暴落が短期間で急である傾向があります。
どうしてそうなってるかというと、今は信用取引というものが増えていて。信用取引では、本来100万円しか持ってないのに300万円の株を買ったりするので、暴落すると一気に大きな損になっちゃう。なので早く撤退しないといけない。それで売るので、一気に株価が下落する。
プラス、今はAIによってリスクを管理するファンドも増えてきています。AIによるリスク管理では大きな下落の前に早く売っちゃう傾向にありまして、この売りも株価の下落を加速することになります。
つまり、今までよりも短期間でドーンと下落するので、これを見て周りにいる投資家も、「このままではやばい」と思って、みんな逃げることになるんですね。これで暴落がガーッと加速する。この動き、最近では植田ショックがそうでした。もう少し前でいうとコロナショックがそうでした。
僕は相場に27年いて、今までいろいろな暴落があったんですけども、明らかにこの2つは短期間の暴落速度が速いです。つまり、それだけ暴落が厳しいものになってるということなんです。
しかも、厳しいタイミングの時というのは、もうみんながみんな冷静でないので、効率的市場仮説の3つ目の条件、合理的な判断ができていない。結果として、本来の価値よりもものすごく安く売られてる株が存在している。ここに買い向かうというのが、僕の2つ目の戦略ということです。
出版の裏話
裏話的なことで言うと本のタイトルと表紙についてで。僕も知らなかったんですが、本のタイトルとか表紙というのは、出版社さん側に権利があるんですね。今回、僕はKADOKAWAさん(株式会社KADOKAWA)から本を出させていただいたので、最終的にはKADOKAWAさんが決める権利があるんです。でも、僕自身の想いもありますよね。
で、僕は本来「ヘムの勝つべくして勝つ投資」とか「現代版バリュー投資の教科書」みたいな、ちょっと堅めのタイトルにしたかった。内容としても堅めの本なので、そういうのがいいかなと思っていたんですけれども、KADOKAWAさんのほうはもっとキャッチーなタイトルにしたかったっていうのがあって。「ほったらかし」とか「何億円稼げる」とか「誰でも儲かる」とか、そういうふうにしたかったという意向がだいぶ強かったようで。
ここはちょっと揉めて、ああだこうだっていうことをやったんですけど、最終的に両者の中間とって折り合いをつけるという意味で、「資産3.7億円の投資家が教える増配株投資」というところに落ち着きました。
サブタイトルの部分で、KADOKAWAさんからは「まだ高配当株投資をやってるんですか」っていうのを入れたいって言われたんですね。(この言葉は)すごく挑戦的なので、たぶんみなさんが食いつきやすいんだと思ったんだと思うんです。でも僕の考えとはすごく離れていて。
高配当株投資っていうのはすごく良い投資手法なんです。高配当株投資の延長線上、もっといいところを目指そうと思ったら増配株投資というのが僕の考え方なので、ちょっとこの考え方を受け入れられなくて。これもいろいろと話し合って、最終的に「高配当株に飛びついてませんか」という、少し柔らかくするみたいなキャッチコピーで落ち着いたということがありました。
荒井:本当に裏話を教えていただきましたが、この表紙の「増配株投資」という、今回もお話をいろいろうかがっていきますけれども、すごくキャッチーでもありますし、「あ、そこに目をつけるといいんだ」ということがすごく伝わってきて、私には響きました。
ヘム:ありがとうございます。
『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』が特におすすめの人
荒井:こんなところに意識されながら執筆をされたということをうかがってってきましたが、ヘムさんの個人的な印象として、「この書籍、こんな人には特に読んでほしいな」とか、「こんな状況の人には特に寄り添えるんじゃないかな」というイメージは何かございますか?
ヘム:はい。やはり初級者、初心者の方ですね。前回も少しお話ししたんですけども、投資って入口を間違えると本当に大変なことになるんです。遠回りしたり、大きなリスクを背負ったりして、短期間ですごくお金を失って退場するって人も、僕はたくさん見てきてるんですね。
最初に基本を押さえる。「投資というのはこういうもんなんだよ」ということを理解してもらうということが大事だと思っているので、僕の本は前半の部分は投資の基本の部分、理屈の部分を書いています。後半で僕の手法について書いています。なので、この本で初心者の方が学ぶというのは、長い投資人生ですごく意義のあることだと思ってます。
僕の投資スタイルは、ちょっと時間がかかるけれど、着実に資産を増やしていくという考えでして。時間がかかるというと、そんなに儲からないと思われるかもしれないですが、実はそんなこともありません。
僕の過去の投資のリターンは年間10パーセントはキープできています。年率10パーセントは長期で見るとすごく力があるんです。
例えば、30歳で投資を始めたとして、投資元本が500万円だとします。がんばって年間96万円、100万円ぐらいの入金をしてもらうとすると、30歳で投資を始めたのが、60歳の時点だと2億8,000万円になります。年率10パーセントでは2億8,000万円ですが、年率12パーセントなら7億7,000万円になります。ものすごい金額だと思うんですね。
時間をかけてこのぐらいの力になるということと、これを安全に確実に高確率でできるというのは、そんなにたくさんある投資手法ではないと思ってます。そんなかたちで時間をかけても、今30歳の人が60歳ぐらいの時に数億円の資産を築いていたい。そう思う人には、いい本だと思ってます。
ただ逆に「数年間で億万長者になりたいんだ」「今、元本300万円だけれども、3年とか5年で1億円超えたいんだ」という方は、別の投資手法があるんで、そっちの本を読んだほうがいいと思います。でも、もちろんそういう手法にはリスクもあって、高い確率でうまくいく再現性があるかどうかというと、僕の投資手法よりは、そのあたりは低いのかなと思ってます。
荒井:ありがとうございます。
投資初心者の方へのエール
それではおしまいに、この本を読んで投資を始めてみようと思う方もいらっしゃるかと思うのですが、先輩投資家として、投資初心者の方へエールとか、注意してほしいことであったり、何かメッセージをお願いいたします。
ヘム:はい、ありがとうございます。 株式投資の世界というのは、ある程度、理屈が通じる世界なんです。ただ、勉強は必要なんです。学ぶことで勝率を上げることができる世界でもあるんです。
株式投資の目的はお金を増やすことです。例えば、みなさんがキャリアアップのために英検1級を取ろうとか、司法書士だとか、社労士だとか、公認会計士だとか、こういうのを取ろうと思うと、ものすごく勉強しないとだめですよね。
株式投資の世界は、何百万円、何千万円、場合によっては何億円も儲かる可能性のある世界です。それだけ儲けられる投資が簡単、誰でも(できる)というわけにはいかないです。やはり勉強は必要なんです。ただ、それでも勉強する価値は十分にあると思っています。最初はとっつきにくいと思いますが、やってるとだんだん楽しくなってきますし、努力に応じて成果も出てきますし、すごくいい世界だと思います。
ただ、先ほどもお話ししたんですが、入口はけっこう大事なので、その入口のところで基本を押さえながら、自分の手法を作っていけるようなかたちで入ってもらいたいなと思います。
ちょっと宣伝になりますが、そのための入口として僕の本は良い本だと思っているので、ぜひ買って見てもらえたらと思います。
荒井:ありがとうございます。それではお時間になりましたので、今回の放送はこちらで締めたいと思います。ゲストは個人投資家のヘムさんでした。ありがとうございました。
エンディング
今回は、個人投資家のヘムさんをゲストとしてお招きし、1月27日に発売された著書、『「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!』についてうかがいました。みなさまいかがでしたでしょうか?
なお、本放送については書き起こし記事も公開されますので、気になる方はログミーFinanceのWebサイトをぜひご覧ください。書き起こし記事内では、次の放送テーマや出演者の募集も行う予定です。
「こんなテーマを聞いてみたい」「この人に出演してほしい」など希望がありましたら、ぜひご意見をいただければと思います。
今回は個人投資家のヘムさんをゲストとしてお招きし、1月27日に発売された著書『年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!「増配」株投資』について伺いました。みなさま、いかがでしたでしょうか? なお、本放送については書き起こし記事も公開されますので、気になる方は、ログミーFinanceのWebサイトをぜひご覧ください。
それでは今回は以上になります。また次回の放送でお会いしましょう。さようなら。