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浅沼真里香氏:株式会社淺沼組、戦略企画本部コーポレート・コミュニケーション部長の浅沼です。株式会社淺沼組の2025年3月期第3四半期の決算について、3点ご説明します。
1点目は、2025年3月期第3四半期の業績です。2点目では、今年度から始まった中期3ヵ年計画の内容に沿って、弊社の取り組みをご説明します。3点目は、株主還元についてです。
1. 実績・進捗(連結)
2025年3月期第3四半期の業績についてご説明します。スライド左側に掲載しているグレーの表は、2024年3月期の実績の内容です。右側のグリーンの表には、2025年3月期の計画と第3四半期の実績、進捗率、前年同期比を記載しています。
ご覧のとおり、2025年3月期第3四半期は非常に順調に進捗しています。受注高は1,343億800万円で、進捗率は95.1パーセントまで到達しました。これは、特に国内建築事業において、工場・倉庫等の大型案件を受注でき、前年同期比で約1割アップしたためです。それらが反映されて、全体の受注高では前年同期比プラス5.6パーセントとなっています。
売上高は1,153億円となりました。計画比の進捗率は75パーセントまで進んでいます。建設業界は、年度末にかけて売上が立ってくるという特性がありますが、その点を加味しても、まずまずの進捗だと思っています。前年同期比ではプラス3.3パーセントです。
売上総利益は125億8,800万円で、前年同期比プラス28.1パーセントとなりました。売上総利益率は10.9パーセントで、前年同期比プラス2.1ポイントです。営業利益は53億1,600万円で、前年同期比プラス103.1パーセントとなり、営業利益率は4.6パーセントで、前年同期比プラス2.3ポイントとなっています。
売上総利益率も営業利益率も、前年同期比でプラス2ポイント以上となっており、非常に良好に推移していると思っています。利益率が前年同期比で改善した主な要因は、いわゆる選別受注をしっかりと強化したことです。
前年度の業績の反省として、利益率がやや減少してしまったことがありました。これは、資材・労務費の急騰が業績に反映されたことによるものです。そのような背景から、利益率を確保した受注に努めるために、受注時点での選別を今まで以上に強化しています。その取り組みが足元の業績に反映されてきている状況です。
さらには、受注時点での利益率のみならず、施工体制の確保にも努めました。具体的には、社内の人員も、協力会社の人員も確保できる体制で案件を受注しています。そうすることで、いざ工事を始めた際に、人手が確保できないために高値で発注するといったことがなくなり、ゆとりのある工事を行うことができます。このような取り組みが利益に着実に反映してきていると考えています。
これらを踏まえて、昨年5月14日に公表した2025年3月期の着地見込みについては、現時点では内容の変更はありません。
2. 受注の内訳(国内/単体)
2025年3月期第3四半期における受注の内訳についてご説明します。スライド右側のグリーンの部分が、2025年3月期第3四半期の実績の内容です。
国内においては、建築事業・土木事業を合わせて1,248億1,300万円で、前年同期比プラス9.6パーセントとなりました。その内訳として、官庁が209億9,000万円で前年同期比マイナス15.3パーセント、民間が1,038億2,300万円で前年同期比プラス16.5パーセントとなっています。官庁のマイナス分を、民間が堅実にカバーしたかたちです。
建築事業と土木事業の内訳については、建築事業が1,117億6,900万円で、前年同期比プラス10.6パーセントとなりました。土木事業は130億4,400万円で、前年同期比プラス1.1パーセントとなっています。
海外については94億9,500万円で、前年同期比マイナス28.1パーセントとなりました。このマイナス分を、先ほどご説明した国内の受注分でしっかりとカバーしたかたちです。これらを踏まえた受注全体の連結ベースについては1,343億800万円で、前年同期比プラス5.6パーセントで推移しています。
3. 用途別受注高(国内/単体)
スライドのグラフは、国内の受注高を用途別に示しています。左側が建築事業、右側が土木事業です。
建築事業では引き続き、工場・倉庫が42パーセントの割合を占めており、大型案件の獲得がこちらに寄与しています。続いて、住宅が21パーセント、教育研究施設が8パーセントです。
一方、土木事業では引き続き、道路、上下水道、造成などをバランスよく受注しています。
1. TOPICS
中期3ヵ年計画の内容に沿って、弊社の取り組み内容をご説明します。それに先立って、ご紹介したいトピックスが1つあります。
2025年4月13日に開幕予定の2025年日本国際博覧会、いわゆる「大阪・関西万博」にて、弊社はオランダ王国の「オランダパビリオン」の施工を担当しています。オランダ王国による推進があり、メディアにも非常に注目されています。引き続き、竣工に向けて注力しているところです。
コンセプトには「コモングラウンド -新たな幕開け‐」を掲げています。循環型コンセプトで造られるパビリオンの名は「A New Dawn - 新たな幕開け」です。
スライドの写真でもご覧いただけるように、建物の中心には大きな丸い球体があります。これは、持続的に利用可能なクリーンエネルギーと日の出を表現しています。パビリオンの内容は非常にすばらしいものになっています。4月の開幕後には、ぜひ「オランダパビリオン」へ足を運んでいただきたいです。
2. 中期3ヵ年計画のテーマ
中期3ヵ年計画の内容に沿って、取り組み内容をご説明します。弊社の中期3ヵ年計画は、2024年4月にスタートしました。3年間で注力することとして、6つのテーマを選定しています。本日はそのうちの4つをピックアップして、取り組み内容をご説明します。
2. テーマ毎の取り組み(1/4)
1つ目のテーマである、国内コア事業の強化についてご説明します。まず、先ほど業績のところでもご説明した、選別受注の強化に取り組んでいます。
また、土木部門の組織変更にも取り組んでおり、2月7日に一部を開示しました。これまで技術設計や工務に関わる組織がエリアごとに存在していたものを、全国統括する組織を新設したことで組織力を強化します。
さらに、2月7日の開示には記載していない組織変更も行っています。受注確度の向上のために、全国の総合評価案件情報の集約管理を行う部門を新設しました。このような組織変更によって、組織力の強化や受注確度の向上を目指します。
加えて、以前から行っている取り組みとして、協力会社さまとともに作業所における生産性向上のアイデアを全国の作業所から募集し、表彰しています。また、そのようなアイデアの社内での水平展開を図ることを目的とした発表会を、今年度も開催しました。
その他、引き続き行っている中期3ヵ年計画の施策の内容を、スライド下部に記載しています。
2. テーマ毎の取り組み(2/4)
2つ目のテーマである、リニューアル事業の強化についてご説明します。弊社は、前中期3ヵ年計画からリニューアル事業を1つの注力事業として強化してきました。
そもそも、なぜリニューアル事業に注力するのかについて、あらためてご説明します。ポイントは大きく3つあります。
1つ目は、環境配慮の側面です。既存建物を新築に立て替える場合、躯体(くたい)と言われる骨組みを取り壊して、新しい建物を建てますが、一方でリニューアルは、躯体部分を残したまま躯体を活かして建物を生まれ変わらせることを言います。したがって、リニューアルは躯体の部分を壊さなくて済むため、それらに係る環境負荷を低減することができ、環境の配慮につながります。
また、昨今の世の中全体の流れとして、モノへの愛着やモノを大事にするという考え方が広く浸透してきていると思いますが、そのようなところにもリニューアルが通ずると考えています。
2つ目は、需要の確保です。国内市場では、人口が中長期的に減少するため、新築ではなく、リニューアルの需要が確実に高まっています。足元でも確実に伸びてきているため、そちらの需要をしっかり確保しようと考えています。
3つ目は、高い利益率です。新築に比べ、リニューアルの利益率は高いです。この3点がリニューアル事業に注力する理由となります。
では、弊社の優位性は何かということですが、2つあると思います。1つ目は、手頃な案件サイズです。リニューアルの案件は新築に比べ、一つひとつの案件のサイズが小さいです。
例えば、弊社では新築案件の平均サイズに比べて、リニューアル案件の平均サイズは約5分の1になっています。したがって、大手ゼネコンがなかなか入りづらい分野になっており、そこを中堅クラスの弊社が獲得できることが優位性になっていると思います。
2つ目は、技術力です。弊社は技術研究所を保有しているため、このようなリニューアルに対して、技術力をもって付加価値の高い提案ができることも優位性になってくると思います。
スライド中央に記載した「名古屋支店改修プロジェクト」についてご説明します。前中期3ヵ年計画で、リニューアル事業を注力事業の1つとして旗揚げした際に、まずは「当社のすべてのノウハウ・技術力を詰め込んだ建物を1つリニューアルしよう」ということになり、自社ビルである名古屋支店を全面改修しました。
こちらには、環境配慮に資するような技術や、人体の健康に好影響を与えるような技術などを詰め込んでいます。左側の写真にあるようなビルから、右側の写真のような自然素材をふんだんに使ったビルへと生まれ変わらせるプロジェクトを実施しました。
これにより、「WELL認証GOLD」など、健康や環境に資するような認証なども取得しました。また、国内外で17個の賞を獲得しました。今なお多数のお客さまが名古屋支店を内覧して、多くのご評価をいただいています。そのようなこともあり、弊社の営業担当者はこちらを足がかりに、リニューアルの案件を提案しているところです。
2. テーマ毎の取り組み(2/4)
リニューアル事業の強化について、海外での取り組みにも少し触れます。弊社は、シンガポールでリニューアルを行う会社を2社M&Aしました。いずれも、まずまずの内容で業績が推移していますが、スライド中段に記載のとおり、特に「Evergreen Engineering & Construction Pte. Ltd.」は非常に好調です。
今期、これまでにない大型案件を獲得したこともあり、日本からも建築事業の担当者がシンガポールに出張して、現場での視察やアドバイスをするなど、日本とシンガポールの連携も実施しています。このように国内外において、リニューアル事業を強化しています。
2. テーマ毎の取り組み(3/4)
4つ目のテーマである、DX推進についてご説明します。弊社では、DXを推進するにあたって、DX推進委員会を設けました。そこでさまざまなことが協議され、さまざまなシステムの導入等の推進がされています。
その中におもしろい取り組みがありましたので、第3四半期に実施したものをご紹介します。
1つ目は、スライド上部に記載したとおり、3Dスキャナー・3Dプリンターを用いた工具への安全カバーの開発です。現場で使われる工具にはドリルのように回転する部分がありますが、「巻き込まれ防止の安全カバーをつけてほしい」という要請がありました。それを3Dスキャナー・3Dプリンターを用いて、実現したものです。
ドリルの部分は非常に複雑な形状だったのですが、それを3Dスキャンして、3Dプリンターで作りました。試行錯誤しながらも、出来上がってみれば非常に簡単に作れますので、今後このような要請があった場合、ちょっとした装置なども作れるのではないかと考えています。
2つ目は、以前から行っているものですが、若手社員向けの体験型現場教育システム「現場トレーナー」を他社と共同開発し、現在使用しています。スライド中段の写真でわかるとおり、ゲームのように仮想空間で現場を再現し、現場社員に見立てたアバターが自由に歩き回れるようになっています。確認しなければいけないポイントや、危険なポイントがどのようなところにあるかなどを現場さながらに見ることができ、クイズ形式で学べるようなシステムです。
近頃、現場では非常に忙しい状況が続いています。そのため、昔のように所長や先輩社員が若手社員・新入社員に対してじっくり教えることがなかなかできない状況です。したがって、このようなものを取り入れて、若手社員の教育をDXで拡充しています。
これにとどまらず、DX推進は非常に重要なテーマと認識しているため、鋭意進めていきます。
2. テーマ毎の取り組み(4/4)
5つ目のテーマである、ガバナンス・コンプライアンス・リスク管理の強化について、ご説明します。このたび、統合報告書「INTEGRATED REPORT 2024」を初公開しました。これまでは、CSR報告書という非財務情報を主にした報告書を年1回発行していたのですが、それを取りやめ、財務情報も載せて統合的に情報発信する方針に転換しました。
内容は、トップメッセージのみならず、社外取締役の方々の座談会なども載せており、より読みごたえのあるものになっています。なにより、弊社の取り組みをわかりやすく記載することを重視しました。また、できる限りのデータを入れるため、非財務データも合わせて、時系列で載せています。ただし、まだ第1弾ですので、これからさらに内容を深めていきたいと考えています。
その他の取り組みとして、株主・投資家とのコミュニケーションの強化も掲げています。引き続き、IR活動を行い、投資家とのコミュニケーションを図ります。これまで行っていたような対面形式でのIRミーティングのみならず、ラジオやオンラインなどを活用し、より多くの方々に弊社の取り組みをお届けできるようなIRミーティングも開催しました。このようなことを踏まえて、さらにIRを強化していきます。
3 株主還元
最後に、株主還元の内容についてご説明します。弊社は、株主還元の中でも特に配当に注力してきました。スライド中段に、配当金額・配当性向推移のグラフを記載していますが、左側3つが前々中期3ヵ年計画の実績、中央3つが前中期3ヵ年計画の実績、そして右側3つが今中期3ヵ年計画の内容です。
こちらのグラフは直近の実績しか記載していませんが、実は10期連続で計画以上の配当を出しています。計画を守っていることは当然ですが、計画以上の配当を出すということは安定した業績があってこそですので、今まで安定した業績を上げてきた証左なのかと思っています。
2024年度の配当は前年比で減配となりましたが、2026年度の計画値に向けては増配となっています。さらに、先ほどご説明したとおり、業績は非常に堅調に推移しているため、しっかりと配当を出したいと思っています。
足元ではまだまだ割安な株価と言える水準かと思っていますが、逆に言うと、割安な会社というのは今後伸びていく可能性がある会社ですので、弊社株式の購入をご検討いただければと思います。
その他の取り組みについては、弊社Webサイトに掲載している統合報告書にも記載していますので、ぜひご一読いただけると幸いです。本日はありがとうございました。