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豊田彰啓氏(以下、豊田):株式会社淺沼組、代表取締役専務執行役員 戦略企画本部長の豊田彰啓です。よろしくお願いします。本日は弊社の個人投資家向け説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。ただいまより、会社説明会を始めます。
まずは、私より会社概要についてご説明します。その後は執行役員 戦略企画本部コーポレート・コミュニケーション部長の浅沼真里香より、中期3ヵ年計画の内容に沿って足元の取り組みや業績、株主還元についてご説明します。
1. 会社概要
豊田:弊社について初めて知っていただく方も多いかと思いますので、会社概要についてご説明します。
弊社は1892年に奈良県で創業して以来、130年以上にわたり総合建設業を営む企業です。全体で約1,800名の従業員が働いており、事業規模は連結ベースで売上高1,526億円、営業利益40億円となっています。
2. 沿革
豊田:弊社の沿革についてご説明します。弊社は1892年に創業後、1926年に現在の本社がある大阪へ進出し、全国へと事業を展開してきました。
創業133年目となる現在では、北は北海道から南は沖縄まで業容を拡大し、海外ではシンガポール、タイ、グアムにもビジネスを展開しています。
3. 創業理念
豊田:私たち淺沼組は、創業者である淺沼幸吉の「仕事が仕事を生む」という事業に対する信念のもと、「和の精神」「誠意・熱意・創意」を創業理念として、日々変わり続ける時代の変化に耳を傾けてきました。
そして、私たちを取り巻く環境の変化に対応すべく、防災や減災をはじめ、安心安全な社会基盤の構築、快適な環境作りに取り組んできました。
4. 事業概要(国内)
豊田:弊社の事業概要についてご説明します。スライドの円グラフで示しているとおり、事業ポートフォリオは約8割が建築事業、約2割が土木事業およびその他事業となっています。
4. 事業概要 ①建築事業(国内)
豊田:国内の建築事業についてです。スライド左上の棒グラフは完成工事高、いわゆる売上高の直近5年間の実績を示しています。
黄色の折れ線グラフは利益率を示しており、昨今の資材・労務価格高騰の影響を受けてやや減少していますが、今年度は改善してきています。
また、新築工事が約8割、リニューアル工事が約2割弱を占めており、右上の円グラフのとおり、多様な種類の建物をバランスよく建設しています。
4. 事業概要 ②土木事業(国内)
豊田:国内の土木事業についてです。先ほどのご説明と同様、スライド左上のグラフは売上高と利益率を示しています。また、用途別の売上高は右上の円グラフのとおり、多岐にわたる種類の工事を行っています。
4. 事業概要 ③海外事業
豊田:海外事業についてです。弊社は、1976年より海外でも事業を展開しています。
進出当初はグアム島を中心に事業を展開していましたが、現在ではシンガポールに買収した2社のリニューアル事業関連子会社を中心に、ASEAN地域でも事業展開を図っています。特に、シンガポールにある子会社の業績は堅調に推移しており、連結業績にも貢献しています。
5. 業績・財務実績
豊田:直近の業績として、2023年度を最終年度とする前中期3ヵ年計画における財務実績を示しています。
スライド左下にある表の1行目に記載のとおり、売上高は増収で推移しました。これは、増加傾向にある国内建設投資を的確に捉えて受注時につなげたことや、施工効率の高い案件が増加したことによるものです。
2行目の営業利益については、資材・労務費の高騰に加え、3年連続で3パーセントの賃上げ対応を実施した背景があり、営業利益率が減少しました。なお、後ほどご説明しますが、足元の利益率は改善が進んでいます。
当期純利益は増益で推移した結果、配当は3期連続増配、配当性向70パーセント以上を維持することができました。
ROEおよびROICについては、各期ともに株主資本コスト・WACCを上回る水準を確保することができました。PBRは直近2期で1倍以上を維持しており、市場からも相応のご評価をいただいていると感じています。
ここからは、弊社の執行役員 戦略企画本部コーポレート・コミュニケーション部長である浅沼真里香より、具体的な業績や施策、配当について、現中期3ヵ年計画に沿ってご説明します。
1. 中期3ヵ年計画のテーマ
浅沼真里香氏(以下、浅沼):淺沼組、執行役員 戦略企画本部コーポレート・コミュニケーション部長の浅沼です。ここからは、中期3ヵ年計画の内容に沿って、具体的にどのような取り組みを行っているかについてご説明します。
現中期3ヵ年計画は、今年度から新たに始まりました。3年間で注力することとして、6つのテーマを選定しています。まずは、6つのテーマに沿ってどのような取り組みを実施しているかについてご説明します。
2. 各テーマの取り組み(1/6)
浅沼:1つ目に、「国内コア事業の強化」を掲げています。こちらは、国内建築における新築事業や土木事業をより強化していこうというテーマです。具体的な内容についてご説明します。
私どもはゼネコンで工事の管理・監督を行う立場であり、実際の建設作業は協力会社が行われている構造になっています。協力会社がいらっしゃらなければ私どもは存在し得ないため、協力会社を非常に大切にしています。その表れとして行っている取り組みを、いくつかご紹介します。
まず、スライド1行目に記載のとおり、協力会社宛の支払いを100パーセント現金化しました。
もともと協力会社宛の支払いに手形等を用いる場合、比較的長い決済サイトがありましたが、そのサイトを短縮し、現金で支払うことで協力会社の資金負担を軽減し、満足度の向上を図っています。過去に支払いを切り替えて以来、現在も継続しています。
また、協力会社とのつながりを大切にする取り組みの一環として、協力会社との協働によって各工事現場で生産性向上のアイデアを募集し、優秀なアイデアは表彰を行うとともに、社内水平展開を図ることを目的とした発表会も実施してきました。
さらに、スライド下段の1つ目に星印をつけているとおり、中期3ヵ年計画の施策のうち、国内コア事業強化施策の1つとして「受注と施工のバランス確保」を掲げています。
社内会議でも「無理な受注はしない」という言葉がよく出てきますが、これは適切な人員体制が取れるよう受注するという意味や、先ほど豊田が「工種が非常にバランスよく取れている」とご説明したとおり、特定の工種に偏ることなく受注するという意味合いを込め、注力している施策です。
2. 各テーマの取り組み(2/6)
浅沼:2つ目のテーマである、「リニューアル事業の強化」についてご説明します。
私どもは、前中期3ヵ年計画においてリニューアル事業を1つの注力事業にしようと旗揚げし、現在の中期3ヵ年計画においても引き続き注力しています。では、なぜリニューアル事業に注力しているのかについてご説明します。
リニューアル事業に注力している理由は、大きく3つあります。1つ目は「環境配慮・モノへの愛着」です。新築に建て替えする場合は建物の骨組み(躯体)を含めてすべて壊し、新たに建物を建てます。一方、リニューアルは躯体を残したまま躯体を活かして建築を行うという観点から、環境に配慮しています。
また、昨今は世間でもモノへの愛着の機運が非常に高まっています。リニューアルは、このような考え方にも合致している点が1つ目のポイントです。
2つ目は「需要の確保」です。中長期的に人口が減少していく国内市場において、足元では新築よりもリニューアルの需要が確実に高まっており、その需要をしっかりと確保したいと考えています。
3つ目は「高い利益率」です。リニューアルは、新築対比で利益率が高くなっています。
また、弊社の優位性は2つあります。1つ目は「手頃な案件サイズ」です。弊社の平均案件サイズは、新築に対してリニューアルは約5分の1と比較的小さくなっています。そのため、いわゆるスーパーゼネコンなどの比較的大規模な会社が獲得しないような案件を、中堅ゼネコンである我々が獲得しやすいという優位性があると考えています。
2つ目は「技術力」です。私どもは技術研究所を保有しており、そこで環境配慮を切り口とした技術開発を実施しています。それをお客さまにご提案することで、付加価値をつけていると自負しています。
スライド中段には「名古屋支店改修プロジェクト」と記載しています。これは、前中期3ヵ年計画でリニューアル事業に本格的に注力していこうとした際、まずは私どものノウハウや技術をすべて詰め込んだリニューアルプロジェクトに取り組もうと考え、自社ビルである名古屋支店の全面改修を行ったものです。
左側がビフォア、右側がアフターの写真です。ご覧のとおり、自然素材をふんだんに使ったビルに生まれ変わりました。環境配慮や健康に関わる認証を取得し、国内外で17個の賞を獲得でき、非常にご評価いただいたと思っています。
このプロジェクトを足がかりに、弊社の営業担当たちはリニューアル事業を推進しています。
kenmo氏(以下、kenmo):現在はリニューアル事業に注力されているということで、こちらのスライドでいくつかご質問します。まず、新築とリニューアルとでは、利益率にどのくらいの差があるのでしょうか?
浅沼:完工粗利率、つまり売上粗利率は、3パーセントから4パーセントほど変わります。
kenmo:リニューアル事業のほうが3ポイントから4ポイントほど高いのですね。
もう1点疑問に思ったこととして、先ほど「スーパーゼネコンは入りにくい」というお話をうかがいました。リニューアル事業の利益率が高いのであれば、他の中堅ゼネコンもこぞってリニューアル工事を取りにいこうと動くのではないかと思いますが、そのような中、なぜ御社が受注できているのでしょうか?
浅沼:ゼネコンの中では、古くから「リニューアルは新築に付随するもの」という位置付けになっていることから、私どものような「リニューアル事業をメインで進めていこう」という考えがまだ浸透していないためかと思います。
2.各テーマの取り組み (2/6)
浅沼:こちらのページは細かい数字になりますので、説明は割愛させていただきます。
2. 各テーマの取り組み(3/6)
浅沼:3つ目のテーマである「人材の獲得・確保・育成」についてご説明します。まず、スライド最上部に記載のとおり、社員の平均勤続年数は21.4年と、ゼネコン大手23社中1位を獲得しています。
私も非常に驚いたのですが、これは弊社の社風や企業カルチャーが非常にアットホームであり、風通しが良い雰囲気が反映されているものと思っています。採用活動においても、平均勤続年数1位という点は企業カルチャーの良さの証左であると打ち出しています。
2点目の取り組みは「休暇取得・残業縮減の推進」です。社員の働き方も重要視し、施策を進めています。
具体的には、残業縮減のために残業を見える化するシステムを用いて勤怠管理を行ったり、スライド右側にあるパソコンの写真のように、残業申請しなければ定時超過後にポップアップが出たりするなど、さまざまな仕組みを導入しました。この取り組みによって、毎日新聞社主催のカンファレンスにて「Chronowis働きやすさ推進大賞」を受賞しました。
3点目もユニークな取り組みだと思っているのですが、弊社では2年連続で譲渡制限付株式報酬を全社員に付与しています。具体的には、約1,200人の全社員に対して10万円程度の弊社株式を付与しています。
この取り組みには福利厚生の面もありますが、単に10万円を渡すのではなく、株式として付与することで社員一人ひとりが株価をより意識する効果をもたらしています。
2. 各テーマの取り組み(4/6)
浅沼:4つ目のテーマである「DX推進」についてご説明します。前中期3ヵ年計画ではDX推進が道半ばとなり、反省点がありました。そこで、現在の中期3ヵ年計画では6つのテーマの1つとして「DX推進」を掲げています。
さまざまな取り組みの中で、少しおもしろいものがありますのでご紹介します。
まず、若手社員向け体験型現場教育システム「現場トレーナー」を他社と共同開発しました。スライドの写真にあるとおり、現場を模したバーチャル空間上に現場社員を模したアバターを歩かせ、危険な領域やチェックポイントなどについてゲーム感覚で学べるシステムです。他社ゼネコンとの共同開発により、さまざまなノウハウを詰め込んでいます。
昨今、現場は非常に忙しく、所長や先輩社員が若手社員や新入社員に教える時間が取りづらい環境になってきています。このシステムやDXを活用することで、新入社員や若手社員が楽しく学べる環境を作っていると同時に、知識の体系化も解決しています。
また、配筋検査システムを他社と共同開発するなど、作業所におけるさまざまな工程にもDXを活用し、効率化を推進しています。
2. 各テーマの取り組み(5/6)
浅沼:5つ目のテーマである「ガバナンス・コンプライアンス・リスク管理の強化」についてご説明します。
まず、弊社は今年度初めて統合報告書を発行しました。中堅ゼネコンの中では比較的珍しいほうかと思いますが、投資家のみなさまに弊社のことをさらに知っていただきたいと考え、発行しています。
もともと発行していたCSR報告書は、それぞれの部門での取り組みを発表する資料になっていましたが、財務情報と非財務情報を統合的に発表し、会社全体として昨年はどのような取り組みがあるのか、一目でわかる資料として発行しました。
比較的思い切った内容もあり、これまで開示していなかったデータや社外取締役の座談会なども取り入れた統合報告書を作っています。
2つ目のポイントは「ガバナンスの更なる強化」です。役員報酬決定方針を改定し、指標として営業利益、ROE、ROICなどの財務指標を導入しました。役員全員がこれらの数字をさらに意識し、経営を行うことを目的としています。
3つ目のポイントは「株主・投資家とのコミュニケーションの強化」です。より幅広く多くの投資家のみなさまに投資していただきたいという目的から、今年度は中間配当制度の導入と株式分割を実施しました。
また、より多くのみなさまに弊社についてご理解いただくことを目的に、本日のようなIR説明会などもさまざまな形態で実施しています。
2.各テーマの取り組み(6/6)
浅沼:6つ目のテーマである「環境・社会への貢献」の取り組みについてご説明します。
2021年に、弊社は「GOOD CYCLE PROJECT」を立ち上げました。「人間にも地球にもよい循環をつくる」をテーマに掲げ、全社的に環境や人の健康等に配慮した建設に取り組んでいます。これはまさに、環境・社会への貢献と弊社の建設ビジネスを融合させたものであるというイメージを持っていただければと思っています。
「GOOD CYCLE PROJECT」を推進することで、環境や社会に貢献できるだけでなく、弊社のビジネスも推進することができることから、これが我々にとっての勝機や勝ち筋であると考え、取り組んでいます。
具体的な取り組みの一例として、弊社が開発した建設残土に関する技術があります。建物を建設する際、「建設残土」と呼ばれる土が発生します。通常であれば廃棄しなければならない土ですが、これを新たな部材へ生まれ変わらせる技術と工法を開発しました。
例えば建設残土をブロックにしたり、他の材料と混ぜて左官用の塗料にしたりすることで、本来は捨てられるものだった土を部材として生まれ変わらせます。このような技術をお客さまにご提案し、一部のお客さまに採用いただく流れが生まれています。
TOPICS
浅沼:弊社は、「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」にてオランダパビリオンの施工を担当しています。オランダ王国はサステナビリティに対する意識が非常に高いため、先ほどご説明した建設残土を活用した左官をご提案したところ、採用していただくことができました。
パビリオンに入ってすぐにある、エントランスの床の左官部分に使われています。お越しいただいた際は、ぜひ見ていただければと思います。
kenmo:私も4月に行きますので、必ず見に行きたいと思います。
浅沼:ありがとうございます、ぜひお越しください。見ていただけますとうれしいです。
2.各テーマの取り組み(6/6)
浅沼:「環境・社会への貢献」の取り組みについてのご説明に戻ります。このように、生まれ変わらせたり、自然素材を使ったりするさまざまな提案を実施し、「GOOD CYCLE PROJECT」を鋭意推進しています。
3. 業績・財務計画
浅沼:ここからは、業績・財務計画についてご説明します。
スライドの表は、一番左のグレーの部分には前中期3ヵ年計画最終年度である2023年度の実績、中央の薄いグリーンの部分には2024年度の計画と第3四半期の実績、右側の濃いグリーンの部分には現中期3ヵ年計画の最終年度となる2026年度の計画を記載しています。
スライドに記載のとおり、業績は非常に好調に推移しています。売上高については、2024年度計画の1,536億6,000万円に対し、第3四半期時点の実績は1,153億円、進捗率は75パーセントに達しています。
ご高承かと思いますが、建設業界は年度末にかけて売上高が上がっていきます。それを踏まえても、進捗率としてはまずまずではないかと思っています。
営業利益については、2024年度計画の59億3,000万円に対し、第3四半期時点の実績は53億1,600万円と、比較的順調な進捗となりました。
また、営業利益率は2024年度の計画3.9パーセントに対し、第3四半期時点の実績は4.6パーセントに達しています。当然ながら、営業利益率は年度が締まるまでわかりませんが、前年同期比でもプラス2.3ポイントと、非常に良い調子で向上しています。
さらに、中期3ヵ年計画の最終年度である2026年度には営業利益率4.2パーセントを計画しており、この数字から見ても、非常に好調な状況であると考えています。
その理由には、社内会議でも社長以下が頻繁に言っていることとして、弊社が選別受注を非常に強化していることにあります。選別受注とは、弊社が案件を受注する際にしっかりと選別を行うことです。
具体的にどのような選別の仕方をしているかというと、当然ながらさまざまな基準がありますが、主な3点を挙げます。
1つ目は、受注時点での利益率を非常に重視しています。先ほど豊田からも説明がありましたが、少し前に資材や労務費の急激な上昇があり、その影響を受けて2023年度の利益率が一時的に低下しました。今一度、受注時点での利益率をしっかりと確保しようという動きから、この点を重視することとなりました。
2つ目は、人員・施工体制です。受注時点で、社員の人員および協力会社の体制をしっかりと見た上で受注することを実施しています。
さらに、人員だけでなく働く環境もしっかりと確保すべく、4週間に8回、作業所を閉所しています。私たちは「4週8閉所」と呼んでおり、このように適切な環境を確保しながら工事スケジュールを引ける案件を受注するよう心がけています。
すべてにおいて実行できているわけではありませんが、このような取り組みをお客さまにご提案し、受け入れてくださる案件を受注しようという切り口で選別受注を行っています。
1つ目の利益率では、受注時利益率を確保しました。2つ目の人員、3つ目の4週8閉所の取り組みでは、余裕を持った工程の工事を獲得することで、入口の利益と工事期間中の利益を落とさず、しっかりと確保しています。これらを通じて、最終的な利益率を確保しようという取り組みが、弊社の利益率の源泉になっていると考えています。
以上の状況を踏まえ、2024年度の計画ではROEを8.5パーセント、ROICを6.7パーセントと設定しており、いずれも株主資本コストやWACCを上回る水準を維持する計画となっています。
株主還元
浅沼:最後に、株主還元についてご説明します。
弊社は株主還元の中でも特に配当に注力しており、スライドには配当金額および配当性向推移のグラフを掲載しています。グラフの左側は前々中期3ヵ年計画の実績、中央は前中期3ヵ年計画の実績、右側は今中期3ヵ年計画です。
スライドには直近6期分の実績のみを記載していますが、実際には10期連続で計画以上の配当をお支払いしている実績があります。
計画どおりに実施することは当然といえば当然ですが、計画以上のお支払いは、安定した業績がなければ実施できません。弊社としては、これまで着実に業績を残し、きちんと配当をお支払いしてきたことが、このグラフに表れていると思っています。
また、2024年度の配当は2023年度と比較すると減配となっていますが、今中期3ヵ年計画の最終年度である2026年度には増配を予定しているため、ご承知おきいただきたいと思います。
さらに、先ほどご説明したとおり、業績は非常に堅調に推移しているため、配当もしっかりとお支払いしたいと考えています。
指標や株価などをご覧いただくと、まだ割安だと言われることもあるかと思います。しかし、裏を返せば、今後まだまだ伸びる余地のある会社であると言えます。
本日ご説明した弊社の取り組みや業績、配当の内容を踏まえ、ぜひ弊社の株式購入をご検討いただきたいと思っています。私からのプレゼンテーションは、以上です。
質疑応答:配当とEPS成長の連動について
kenmo:株主還元についてうかがいます。2024年度は減配となり、今後は増配基調に戻っていくイメージだとご説明がありましたが、当然ながら、これはEPSの成長と連動していくという認識でよろしいのでしょうか?
浅沼:ご認識いただいているとおりです。今のまま進捗していけば、EPSの「E」の部分をしっかり伸ばしていける見通しが立っているため、配当も連動していくイメージとなっています。
kenmo:配当性向70パーセント以上という点はうれしいですが、さらに増配するには、やはりEPSを伸ばしていかなければならないと思います。
浅沼:おっしゃるとおりだと思います。
質疑応答:採用強化の方針や具体的施策について
kenmo:スライド17ページに、「ゼネコン大手23社平均勤続年数ランキング1位」とご説明がありました。こちらは大変すばらしいことだと思います。
一方で、課題となるのはやはり採用ではないでしょうか? どの企業にも言えることかと思いますが、特にこの業界は厳しい状況だと思います。
今後、どのように採用を強化していくのでしょうか? 今までの取り組みと今後の施策、女性や外国人なども含めた多様な人材について、具体的な取り組みなどがあれば教えてください。
浅沼:おっしゃるとおり、どの企業も同様かもしれませんが、人材の確保は弊社にとっても課題の1つだと捉えています。直近の新卒採用ではまずまずの人数を採用できていますが、中長期的に見ると、引き続き課題になってくると思っています。
これまで実施してきた取り組みの1つとして、以前は各部門で行っていたリクルーター制度をしっかりと仕組み化し、会社全体でリクルーター制度を整備することにしました。リクルーターを適切にアサインし、リクルーティング活動に十分な時間を確保できる体制を整えています。
もう1つは、先ほどご説明した「平均勤続年数1位」などにも言えることですが、企業カルチャーやアットホームな雰囲気は、弊社にとって比較的売りとなります。とはいえ、この強みはぼんやりとしていて、外から見ている学生などにはわかりづらいところもあると思います。
そこで、「平均勤続年数1位」など具体的なエピソードをしっかりと見える化し、学生に伝えていく取り組みを実施しています。その一環として、現在はリクルートサイトの全面改修に向け進めており、より学生が親しみやすいサイトになる予定です。
また、今後さらに強化していきたいポイントは、やはり弊社の認知度です。学生の方も中途採用の方も同様に、ゼネコンに入りたいと考える場合、なかなか弊社の名前まで行き着きません。
kenmo:やはり、大手ゼネコンが強いのですね。
浅沼:おっしゃるとおりです。上から見ていく方もいらっしゃるかもしれないことから、社名を知ってもらうことは非常に大事だと思っています。
その取り組みの1つとして、先ほども触れた大阪・関西万博はみなさまが非常に興味を持っており、注目も浴びているかと思います。そこで、現在はこちらを足がかりに、足元で一生懸命PR活動に活用しています。そのほかにも、さらなる認知度向上に向けたさまざまな施策を仕込んでいる状況です。
質疑応答:各種費用高騰による足元の影響について
kenmo:資材価格や人件費、外注費の高騰により、どうしても利益を圧迫してしまう部分があると思います。足元の状況について教えていただけますか?
浅沼:資材価格や労務価格のうち、特に資材価格については、2021年から2022年に非常に急激に上がった経緯があります。業界団体から出されている資料によると「約3割も上がった」というデータがあるほど、その上がり幅は非常に大きなものでした。
建設業にとって利益を圧迫してしまうのは、上がっている状態ではなく、上がり幅の大きさです。受注した建物を建てていく間に原材料が上がっていけば、その分どんどん利益が圧縮されてしまいます。原材料費の上がり幅が非常に大きかったことが、非常に苦しかった部分でした。
一方、足元では比較的高止まりしている状況です。上がり幅自体は落ち着いているという意味では、資材費は以前ほど大きな影響を受けている状況ではありません。
労務費も似たような状況ではあるものの、今後は人材が間違いなく減っていくことを鑑みると、引き続き注力していく必要があると思っています。
質疑応答:工事期間伸長の状況やその背景について
分林里佳氏(以下、分林):「御社に限らず、さまざまなところで昔よりも工事期間が長くなっているように感じます。実際はどのような状況なのでしょうか? どのような背景によるものなのですか?」というご質問です。
浅沼:工事期間が長くなっている大きな要因に、2024年問題があります。今年度から残業時間に規制がかかり、なかなか残業できなくなってきた分、工期が長くなっていることが要因の1つだと思います。
また、先ほども少し触れたとおり、4週間に8回作業所を閉所する「4週8閉所」などの実施によっても、やはり工期は長くなってきていると思います。
しかし、それでも弊社の建築工事の工期は1.5年ほどとなっており、それほど長いわけではないため、そこまでリスクはないと思っています。とはいえ、期間が長くなってきている背景としては、今ご説明したような要因があると思っています。
質疑応答:円安の影響について
分林:先ほど資材高騰についてご説明いただきましたが、円安の影響はいかがでしょうか?
浅沼:円安による業績への影響について、大枠で見れば弊社の業績に大きな影響はありませんが、あるとすれば、弊社が所有するシンガポールの子会社があります。
シンガポール子会社は、入りも払いもシンガポール国内で完結しており、特に輸出入が発生しているわけではないことから、為替の影響はありません。
ただ、当然ながらシンガポール子会社が持っている預貯金の洗い替えに加え、弊社へ配当を送る際には為替の影響が発生します。しかし、それ以外の商取引においては、為替が発生していることはありません。
そのほかに考えられるものとしては、材料が挙げられます。輸入に頼っている材料などもありますが、適切な価格転嫁ができていることから、弊社の業績に直接的な関係はありません。ただし、円安の影響が関係してくる部分としては、このような要素があると思っています。
質疑応答:自社ビル等を活用したPR計画について
分林:「名古屋での自社ビルのリニューアルを通じて、外部にアピールできたことはすばらしいと思います。今後も、自社ビルで独自の工法を使ったアピールを計画されているのでしょうか?」というご質問です。
kenmo:「さまざまな事例を外部にアピールすることを考えていますか?」というご質問ですね。
浅沼:現時点では、弊社の各支店のエントランスを、弊社の独自技術等を使用しリニューアルを計画中であり、直近は広島支店エントランスの改修工事を竣工予定です。
名古屋支店は2021年頃に竣工しましたが、すでに約1,700人のお客さまが名古屋支店を訪れ、多くの方にご覧いただいています。現在も足を運んで見てくださるお客さまが比較的いらっしゃるため、名古屋支店で行った工法などについては、引き続きこのようなお客さまに向けて積極的にアピールしています。
質疑応答:海外の他地域への進出について
分林:「海外展開としてASEANに進出されていますが、今後はベトナムなど、他国への進出も検討されていますか?」というご質問です。
浅沼:現時点では、具体的な他の地域への進出は考えていません。基本的には、ASEANの中でも特にシンガポールを注視しています。社会基盤が非常にしっかりしていることもあり、そのような地域を攻めているところです。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:貴社が目標設定される際は固めなのか、それともチャレンジングな目標なのかを教えてください。
回答:対外公表している業績計画については、意欲的でありながらも達成可能な水準のものとしています。
<質問2>
質問:シンガポールは物価が高いという面から、利益率が一番高いのでしょうか?
回答:その土地、地域に見合った見積もりをした上で価格を設定しているため、物価が高いことが利益率に影響をもたらすことはありません。
<質問3>
質問:PBRはどこまで高める予定ですか?
回答:最低ラインとして1倍は確保し、現在は1.5倍を見据えて企業価値向上をはかっているところです。
<質問4>
質問:手形ではなく現金で協力会社に支払う方式にしたということは、銀行の当座預金を使わなくなったという理解でよろしいのでしょうか?
回答:協力会社さま宛の支払い方法として支払いサイトが長い手形での支払いを取りやめ、それにより協力会社さまの立替資金負担を軽減した、という意味合いになります。したがって、弊社の当座預金使用有無とは直接関係はありません(当座預金口座自体は保有しています)。
<質問5>
質問:浅沼さんは創業家の方なのでしょうか? 枢要なポストについていますが、現場の経験も豊富なのですか?
回答:2018年に他界した浅沼健一前社長の三女で、2022年に弊社へ入社していますが、前職は銀行にて営業や本社の企画業務等の経験をしてきました。建設現場での経験はありませんが、入社後はさまざまな建設現場の視察を行い、理解を深めています。
<質問6>
質問:この業界は、スーパーゼネコン、準大手ゼネコンがいて、さらに御社のような中堅ゼネコンがいくつもあるといった、再編が進んでいない業界であると感じています。業界再編についてどのように考えていますか?
回答:建設業界の構造として、規模別に適した工事があるため、必ずしも業界再編が良いとは言い切れないと考えていますが、今後中長期的に人口減少により建設投資が縮小していくことを考えると、業界再編の機運は高まっていると考えています。
<質問7>
質問:選別受注について、事業環境的にも進めやすいのでしょうか?
回答:ご認識のとおり、コロナ禍で停滞していた事業の再開や半導体等の特定産業の発展による需要の拡大に加え、人員不足も相まって、現時点では受注の引き合いを多くいただけている環境下にあり、利益・人員等を確保できる工事を選別しやすい環境にあります。
<質問8>
質問:昨今の物価高は御社にどのような影響をもたらしますか?
回答:建設業界は受注産業であるため、受注後の労務・資材価格の高騰は利益を逼迫する要因の1つになり得ますが、昨今の物価は高止まりの傾向にあり、その金額に見合った見積もりおよび受注をしているため、影響については限定的です。