INDEX
久保浩氏(以下、久保):株式会社やまびこ代表取締役社長の久保です。いつもお世話になっています。本日はご多忙のところ、弊社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。前半は二藤部より、2024年12月期の決算概要と当期計画の内容をご説明します。後半は私から、「中期経営計画2025」の進捗状況をご説明します。
また、恒例となりましたが、当社の事業内容をご理解いただくために、前半と後半の間に、北米のOPE事業についての動画をご用意しています。OPEは「Outdoor Power Equipment」の頭文字をつなげたものです。いささか日本では馴染みのない仕様ですので、本日は動画をご用意しています。
当社は屋外作業機器の総合メーカーであり、中でも2サイクルエンジン搭載の携帯型、手で持つ作業機に強みがあります。国内のお客さまである、中山間地域の農家や山の伐木事業者がこの作業機を使う場合は、農林機械と呼んでいます。また、我々の主力である欧米先進国のマーケットで、大きな庭や公園の緑地管理業者が使う場合は、同じものをOPEと呼んでいます。
海外のお客さま、つまり緑地管理事業者のことを、動画の中では「ランドスケーパー」と呼んでいます。ランドスケープは景色や景観という意味ですが、それを作る人やサービス事業をランドスケーパーと呼び、こちらも日本ではあまり見られないサービス事業体です。
当社は手持ちの作業機を主力に、欧米のOPE市場に従事するランドスケーパーに非常によく知られているブランドです。本日は、動画を通じてさらにご理解を深めていただければと思っています。
2024年12月期 経営成績
二藤部浩氏(以下、二藤部):2024年12月期決算概要についてご説明します。スライドは、前年比での損益計算書を抜粋したものです。売上高は前年比8.9パーセントの増収となりました。主力の海外OPEで、北米市場でのプロモーション効果や欧州での新型ロボット芝刈機の伸びがあり、好調に推移しました。国内においても、草刈り関連製品や振動防止機能を向上させた刈払機の新製品効果などにより増収となりました。
営業利益は中国子会社の解散・清算効果や継続的な原価低減活動に加え、国内外で実施した価格改定および円安の影響もあり大幅な増益となり、過去最高益となりました。
2024年12月期 販売状況
2024年12月期の販売状況です。セグメントを市場ごとに前年比の増減率で示しています。スライドの表の右端が為替影響を除いた前年比の増減率です。
北米のOPEおよび国内の農業用管理機械、この2つは2桁パーセント増加と好調でした。一方で、欧州のOPEと、海外の一般産業用機械、海外の農業用管理機械が苦戦しました。
北米のOPEはプロモーション効果や販売促進策により、ホームセンター向けの販売が増加しました。国内の農業用管理機械は省力化に寄与する草刈り機の販売が増加しました。これは、農業従事者の所得環境が好転したことも影響しています。
欧州のOPEは2023年の干ばつなどの影響で、当社にとっては販売先である各国の代理店で在庫が積み上がっていたため、当初の想定どおりではあるものの売上が落ち込みました。2024年12月期後半からは回復に向かっています。
海外の一般産業用機械は、北米で年初に発生した製品改修の影響や、販売体制の強化に時間を要したため、減収となりました。
海外の農業用管理機械は、北米が主なマーケットです。こちらは穀物市況や高い金利水準の影響を受け、減収となっています。
国内のOPEと一般産業用機械については増収、または前年並みを確保しました。
連結売上高および連結営業利益の増減
連結売上高および連結営業利益の増減です。スライド左側のグラフは、連結売上高のセグメント別増減を示しています。右側のグラフは、連結営業利益の増減要因を示しています。
営業利益の増減要因として、売上高の増加に加え、為替の影響や粗利の増加が大きくプラスに効いています。
四半期別業績推移
四半期別の業績推移です。売上高、利益ともに上期偏重の傾向にあります。第4四半期の売上高の水準が低く、過去にも赤字の期がありましたが、2023年12月期と2024年12月期は黒字を確保しています。
セグメント別経営成績
セグメント別の経営成績です。スライドの表の上段が売上高、下段が営業利益、右端が前年比の増減率です。OPEの増収増益が大きく寄与しました。
売上高実績(セグメント・地域別)
スライドは、セグメント別・地域別の売上高の実績を示したグラフです。地域別は国内・米州・欧州・その他海外で分類しています。
2025年12月期 通期予想
2025年12月期の業績予想についてご説明します。スライドの表の下段に記載したように、予想為替レートは1ドル150円、1ユーロ155円と設定しています。2024年12月期の実績に対し、ドルで約1円、ユーロで約9円の円高を見込んでいます。
スライドの表の上段をご覧ください。売上高は前年比4.3パーセント増の1,720億円を見込みます。営業利益が前年比3.2パーセント減少の190億円、経常利益は為替の実績レートと計画策定上のレートの差異もあり、前年比13.9パーセント減少の180億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年比15.0パーセント減少の135億円を見込んでいます。
連結売上高のセグメント別増減予想(円換算ベース)
連結売上高の円換算ベースでのセグメント別増減予想です。OPEは、主力の北米市場において、ホームセンター向け販売を中心に順調な推移を見込むとともに、欧州では代理店の在庫適正化が進んだことにより、売上高が増加する見通しです。
一般産業用機械については、国内・海外ともに安定したインフラ需要が続くと予想されており、特に北米市場において大型発電機の現地生産を開始するなど、大手顧客獲得に向けた販売活動を推進します。
農業用管理機械については、前年並みの水準を見込んでいます。
連結営業利益の増減予想
連結営業利益の増減予想についてご説明します。2025年12月期についても、売上高は増加を計画しています。一方で、先ほどご説明したとおり、為替要因による営業利益の減少を見込んでいます。
粗利の悪化については、中国子会社の解散清算に伴う生産効率の改善は実現していきますが、部材費コストの上昇や、生産部門の人件費の増加を織り込み、6億円の利益減少要因と見込んでいます。
販管費の増加要因としては、人件費の増加や開発・マーケティング費用、IT分野への投資等による増加を見込んでいます。
以上により、営業利益は前年比で6億円減少の190億円を見込んでいます。
売上高目標(セグメント・地域別)
スライドは、セグメント別・地域別の売上高予想になります。
設備投資・研究開発費・減価償却費
設備投資・研究開発費・減価償却費の計画および実績です。2025年12月期は修正計画となります。
株主還元政策
株主還元政策です。スライドのグラフで示したように、決算期の変更や記念配当を除くと、安定的に配当を継続しています。2024年12月期については、業績等を踏まえ期初予想の年間60円から30円増配し、年間90円の配当としました。
2025年12月期については、ご説明したとおり減益の見通しですが、「中期経営計画2025」の配当方針として、過去の配当実績に基づく安定的な配当を継続することを掲げていることから、前期と同額の年間90円の配当を予定しています。また、2月13日に公表したように、2024年に引き続き自己株式取得を実施します。金額の上限は10億円を設定しています。
引き続き、経営環境や業績および財務状況を勘案するとともに、株式市場の動向を見ながら総合的な還元策を検討していきます。
なお、同日2月13日に公表していますが、従業員エンゲージメントの向上を目的とし、従業員持株会を利用した株式インセンティブ制度として自己株式の処分を予定しています。こちらは最大で4億5,000万円の想定です。自己株式取得10億円は、このインセンティブも念頭に行うものです。
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応です。スライドに記載のとおり、「中期経営計画2025」策定時に資本コスト等を分析し、ROE10パーセント以上を目標として設定しています。スライド左側のグラフはROEの推移を示しています。2023年12月期以降、ROEは10パーセントを上回っており、2025年12月期も10パーセント以上を見込んでいます。
また、企業価値向上に向けた施策として、既存事業の成長と新規事業創造に加え、生産・営業効率の抜本的な改善に取り組むとともに、引き続き経営環境等を踏まえた適切な株主還元を実施していきます。
成長性への理解促進の施策としては、ESG情報を含むIR活動を強化することにより、企業認知度の向上や成長性に対する理解促進に努めていきます。
「中期経営計画2025」の進捗状況をご説明する前に、動画を1本ご覧ください。当社の北米における主要なエンドユーザーである緑地管理業者、ランドスケーパーについてご説明するものです。
ランドスケーパーは、当社のメインターゲットであるプロユーザーとして位置づけられます。彼らの具体的な業務内容や、なぜ北米市場で当社の製品が選ばれているのかがわかりにくい部分もあるかと思いますので、ランドスケーパーの役割や当社の「ECHO」ブランドが彼らの業務をどのように支えているのかをご紹介します。
(動画流れる)
やまびこの存在意義
久保:本日ご参加いただいているみなさまは、当社グループのことをよくご存じとは思うのですが、動画でご説明した内容を少し補足します。
当社は、生活に必須のインフラを支える、いわゆるエッセンシャルビジネスに従事する作業者が利用される屋外作業機器の総合メーカーです。
我々のいうエッセンシャルビジネスは、海外では景観を維持管理するランドスケープのことであり、国内・海外ともに町や都市インフラを支える土木・建設作業のことです。当社は、このような生活インフラの維持に必須な、屋外を中心とする作業現場で使用する作業機器とシステムを、グローバルに製造あるいは販売しています。
一例として、2020年に米国で新型コロナウイルス感染症が蔓延した際に、経済活動が止められロックアウトが起こり、外に出ることもできませんでした。そのような中で、当社はエッセンシャル事業であるランドスケーパーを支えていることから、必要な事業であるとみなされ、事業を継続することができました。
このように我々のいうエッセンシャルビジネスは、生活に必須な、特に屋外作業における現場での作業性を高めるための作業機器を提供しています。携帯型の作業機器や発電、あるいは現場の工事機器といった、作業機器の総合メーカーです。
現場で受け入れられる理由は、やはり耐久性に加え、作業性、生産性、経済性に尽きると思います。
当社は創業からこのような製品開発を基本としてきました。
また、作業現場での労働力不足と省人・無人化の需要への高まり、あるいは温暖化対策となるカーボンニュートラルに適応した省エネ需要の高まりなど、昨今の市場や社会環境の変化への対応を事業成長の機会とするべく、皆で取り組んでいます。
中期経営計画2025の位置付け
当社の取り組み事例や、「中期経営計画2025」2年目の進捗と今後をご説明します。
まず、「中期経営計画2025」の位置づけです。定量結果を出すことはもちろんですが、同時に重要なタスクとして、2030年に連結売上高2,500億円の事業規模の達成へ向け、成長軌道をしっかり描くための準備期間と位置づけています。
業績推移と数値目標
業績推移と数値目標については、二藤部よりご説明したため割愛します。
中期経営計画2025の事業戦略
「中期経営計画2025」の事業戦略です。スライドの③新規事業は、既存事業領域①②の延伸が基本方針です。
昨年から進捗しているため、今回は既存事業と新規事業のつながりをご理解いただけるように、一気通貫でご説明します。
①事業規模拡大(海外OPE事業).1
スライドは、先ほどの動画でご説明した内容を補足する資料です。米国におけるOPE市場だけをまとめたもので、一般産業用機械や農業用管理機械は入っていません。
スライド赤文字の「当社のターゲット市場」が、当社が狙うOPE市場です。報道機関等の情報によると約140億ドルの市場規模、日本円で2兆円強といわれています。この市場において、当社は携帯型製品に強みを持っています。
携帯型作業機のポートフォリオとしては、従来強みを持つエンジン製品に、2022年12月期に電動製品を加えて2軸とし、事業の安定成長を続けています。
製品の上市を継続しコストダウンに取り組むほか、OPE市場よりさらに大きな、約600億ドルの市場規模を誇る芝生管理市場への展開を進める予定です。この代表格となるゴルフ事業への進出が、後ほどご説明するOPE新規事業の成長戦略の一例となります。
①事業規模拡大(海外OPE事業).2
北米でのいろいろな既存の活動は、すでにお伝えしていますので割愛します。事業規模拡大においては、欧州のOPE事業のテコ入れをすべく進めています。特に、長年ロボット芝刈機の製造販売を進めてきましたが、2023年12月期にようやく技術的にブレークスルーし、2024年12月期には作業性の高い自律走行型ロボット芝刈機の製品化に結びつけることができました。
③新規事業創造 .2
従来の欧州の販路を活用するとともに、ゴルフ場の芝生管理において世界的に認知されている、米国ゴルフ場管理機械製造大手のToro社と業務提携を結びました。
2025年12月期から、Toro社が持つ125ヶ国以上の販売網を通じて、当社グループはゴルフ場の芝刈市場に進出します。今後はこの事業を、規模を伴った新たな収益の柱に育てたいと思っています。
地理的な市場開拓についてです。アジアには古くから足跡がありますが、再興したいと思っています。足跡のなかった地域として、インドや中東を中心に市場調査を行い、現在は代理店の設定や取引を開始しはじめた段階にあります。
OPE、一般産業用機械ともに営業活動を増やし、市場におけるビジネスチャンスを広げたい考えです。実際のところ、これまで特にOPEに関しては先進国ばかりで、アジアや新興国へのアプローチが手薄だった地域もあります。いささか自虐的ですが、十分に伸びしろがあると思い進めています。
①事業規模拡大(産機事業)
産機事業です。OPE事業の規模と肩を並べられるように、グループで総力を挙げて、「中期経営計画2025」の期間に取り組んでいます。
「中期経営計画2025」では、まずOPE事業で土地勘のある北米市場を攻めることに決め、2023年から2024年にかけて販売・サービス体制を整備しつつ、2025年12月期からは「Shindaiwa」から「ECHO」へのブランド変更というマーケティング戦略の再構築を図っています。
また、ロジスティックコスト削減とお客さまへの即納需要に対応するため、2024年12月期よりセミノックダウンの現地組み立ての準備を始めています。場所については2021年に用地を取得済みであり、2025年12月期下期からのノックダウン生産を計画しています。2030年の稼ぎの柱に成長させるべく、取り組んでいます。
国内市場では、クボタのご協力により、当社が先陣を切って19機種ものバイオ燃料対応の発電機および溶接機を技術開発し、発表しています。いまだ燃料代も高いため、立ち上がりはゆっくりではありますが、大手ゼネコンからも大きな関心を持っていただき、レンタル企業経由で多くの引き合いや技術紹介をいただいています。
また、今回のスライドではご紹介していませんが、2024年の東京開催の「フォーミュラE 2024 Tokyo E-Prix」では、同社が業務提携先とともに、水素の直噴エンジンを8時間連続で稼働し、電気供給を成功させました。まだ技術実証に過ぎませんが、長時間の連続安定運転ができたのは、おそらく当社が初めてだと聞いています。
③ 新規事業創造 .1
そして、これからの事業化の領域として、産機用の事業化の領域をご説明します。2025年2月に発表しましたが、優れた蓄電技術ならびにコンバーター技術を有して充放電機器の製造販売を手がけているアイケイエスへの出資を実行しました。昨年来より複数のお客さまのもとで実証実験している複合発電システム「マルチハイブリッド」のコア技術を共同で開発しています。
さらに提携の幅を広げ、製品化スピードを高めるために出資を実行しました。従来の燃料を燃焼させ、エンジンを回して発電するところから、できるだけエンジンを回さずに発電する発想で開発を進めています。
現在は主に、地方自治体や環境意識の高い大手から引き合いがあります。当社が思い描く、人と自然と未来をつなぐことへの具体策、多くの方々から商業的に受け入れられる解決策になると確信して進めています。
① 事業規模拡大(農林事業)
国内の農林事業です。ご存じのとおり、この市場は労働人口が劇的に減少し、高齢化が進んでいます。2021年に私が社長になり、何年も農林事業の採算向上に取り組んでいますが、なかなか結果に結びついていません。
既存の製品モデルの安全配慮を先行させ、採算を悪化させたことも要因の1つかと思いますが、それは言い訳にすぎません。
もちろん開発、安全対策だけでなにもしていないわけではありません。スライドに記載していますが、労働就労人口の減少、高齢化など農林市場の変質に応じて、新規開発の方向性を遠隔操作、自動化に定めて開発を進めています。
他社農機具メーカーにお声掛けし、協働して都市型園芸農家への電動製品の開発を進めて3年経過しましたが、2024年は順次製品機種が増えてきています。当社だけでできないところを他社と協働して、お客さまの利便性を向上させます。そのような草の根の取り組みと安全への取り組みを並走させます。
クボタやヤンマーのような本格的なスマート農業への取り組みや、ダイナミックさはありませんが、同業他社とのエコシステムを作り、仲間を募って、当社らしい国内農林事業の収益の良化に取り組んでいます。
④ ESG経営の実践
スライドの30ページから32ページに、重要なESG経営の実践として、GHG対応への全社を挙げての取り組みを記載しています。
ESG 環境・ガバナンス
当社もTCFDに賛同しています。
ESG 人的資本
先ほど二藤部からもご説明しましたが、人的資本投資も非常に重要な分野としています。
⑤ やまびこのDX戦略
DX投資についてご説明します。私自身、2023年3月までCDOを兼務していたこともあり、思い入れがあります。DX認定はいただきましたが、なかなか思うように社内プロジェクトが進んでいません。その中でも、社内留学制度を作って、我々の規模ではありますが、専門家人材の内製化を計画どおりに進めています。
これからをご期待くださいとは言いにくいものの、生産性を高めるために、決めたことは必ずやり遂げたいと思っています。みなさまのご協力、ご辛抱を頂戴したいと思います。
質疑応答:OPE製品における北米市場の市況について
司会者:「OPE製品における北米市場の市況について、トランプ新政権の経済政策の影響を加味して、代理店向けとホームセンター向けに分けて教えてください」というご質問です。
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