スターツ出版のビジョン

菊地修一氏(以下、菊地):スターツ出版社長の菊地です。まず、決算説明を始めます。弊社は「感動プロデュース企業へ」というビジョンを掲げています。

スターツ出版のミッション

菊地:そして、「文化と笑顔の需要創造」をミッションに掲げています。

今期のスローガン

菊地:また、今期は「イノベーションで次なるミライを!」という前向きなスローガンを掲げています。

スターツ出版の事業領域

菊地:弊社の事業領域は、大きく2つに分かれます。1つがスライド左側の書籍コンテンツ事業で、後ほどお話ししますが、これは小説投稿サイトを起点とした書籍や電子書籍、そしてコミックビジネスです。

もう1つがメディアソリューション事業で、これがさらに2つに分かれます。その1つが「OZのプレミアム予約」であり、厳選店舗だけを掲載しているWeb予約サービスで、送客手数料ビジネスをしています。出版業とは違う、ITビジネスのようなものです。

もう1つが「ブランドソリューション」で、これは東京地域密着×リアル体験で、『オズマガジン』や『メトロミニッツ』といった雑誌や、「オズモール」というWebサイトのブランド力を活かしたソリューションビジネスを行っています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):初めてこれをご覧になる方がいるかと思いますので、もう少し御社の中身をざっくり教えてください。そのためには沿革をおうかがいするのがいいと思います。出版と言いつつ、先ほどのIT企業のようなことも行われているので、そこのつながりについてお話しいただければ理解が深まるのではないかと思いますので、お願いします。

菊地:弊社は実はスターツグループの中に属しています。不動産業をメインで行っているスターツコーポレーションの傘下にはあるものの、単独で上場しています。

坂本:スターツグループは、いろいろな子会社がありますよね?

菊地:おっしゃるとおりです。創業者であり、現在スターツグループ会長の村石が、もともと42年前に不動産会社を運営している時に、ペンを持つ企業を作りたいと思ったのが始まりです。不動産業は地域密着産業ですので、地域の人に貢献したいということで地域新聞を作りました。それがスタートになっています。それから『オズマガジン』を発刊して、もう38年前になります。

その後で時流に乗り、ネットの時代になるということで、29年前に「オズモール」をスタートしました。そこから脈々と受け継がれているのが、今のスターツ出版です。

坂本:非常によくわかりました。これでイメージがわいたかと思います。続いて、決算の状況を教えてください。

2024年12月期の決算

菊地:決算について簡単にご説明します。2024年はおかげさまで増収増益で着地し、過去最高値を更新しました。

売上高と当期純利益に関しては期初計画達成ということで、売上が85億8,100万円、営業利益が約23億円、当期純利益が約18億円でした。営業利益率が27.2パーセントですので、かなり高いのではないかと思います。

セグメント別の状況

菊地:セグメント別の状況です。先ほどお伝えした書籍とメディアソリューションについて、書籍コンテンツ事業は増収で若干減益しています。メディアソリューション事業は、売上が若干伸び、利益は大幅に改善しました。

貸借対照表

菊地:貸借対照表です。毎年総資産が増えており、前期末は総資産が約119億円で自己資本比率が現在8割を超えています。約81パーセントで有利子負債はゼロですので、かなり強固な財務基盤になっているのではないかと思います。

2025年度 売上89億円・営業利益24億円予想

菊地:今年は、売上を89億円、営業利益を24億円で予想しています。ただし四半期別で見ると、実は第1四半期は大きくマイナスになります。第2四半期、第3四半期から拡大を予想しています。

昨年の第1四半期は、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が大ヒットし、原作のほうもミリオンヒットで、第1四半期には何度も重版がかかりました。さらにそれ以外でも『鬼の花嫁』など大きなヒット作が発刊されたタイミングでもありました。

今年はそれがないため、第1四半期は前期と比較するとかなり厳しめにスタートします。ただし、第2四半期、第3四半期、第4四半期と右肩上がりになっていくだろうと予測しています。

中期経営計画の基本方針

菊地:今年から始まる新しい中期経営計画について、この場でご説明したいと思います。まず基本方針です。この出版市場は、残念ながら右肩下がりがずっと続いていますが、それに抗うべく、コンテンツの多層化を推進していこうという方針です。

大きく3つあります。1つ目が、「IP展開による、収益の最大化」です。IP展開というのは、弊社が自社で開発したコンテンツを活用して展開するビジネスのことを言いますが、後ほど詳しくご説明します。2番目が、「コミックシフトと新レーベルの創刊ラッシュ」を狙っていきます。3番目として、「生成AI活用による、生産性の向上」をスタートしていきます。

坂本:出版市場が右肩下がりだというお話は、前にご説明いただいた時に棒グラフで見せていただきました。

菊地:もう20年以上続いています。

坂本:これは足元もやはり厳しいというイメージですか?

菊地:厳しいです。電子書籍はまだ少しずつは伸びていますが、紙の本は相当厳しいです。

2026年売上100億円突破、2027年営業利益30億円突破へ

菊地:過去6年間およびこれから3年間の計画です。今年は売上予想が89億円とお伝えしましたが、来年、2026年は売上が100億円を突破するのではないか、そして営業利益は28億円と予想しています。再来年は売上が106億円で営業利益が30億円を超えてくるのではないか、ここを目指したい、と考えています。

グラフを見ると2020年の、コロナ禍で業績がぐっと落ちたところを底にして、そこから一気にこの4年間かけ上がりました。昨年から今年にかけては若干踊り場といいますか、実は新たな3ヶ年のために先行投資をしている期間でもありますが、それによって来年から一気に再拡大をしていこうという計画を持っています。

セグメント別 売上計画

菊地:セグメント別の売上計画です。書籍コンテンツ事業はこの5年間で急激に拡大してきました。昨年から今年にかけて、新たな再成長のための投資期間と位置づけており、その結果が、来年からまた出てくると見ています。メディアソリューション事業に関しては、2020年のコロナ禍の時に大きく落ちましたが、そこから緩やかに回復し、着実に成長しています。

セグメント別 営業利益計画

菊地:営業利益の計画です。こちらも書籍コンテンツ事業に関しては2023年まで急拡大しましたが、昨年と今年は踊り場、そして来年からまた一気に拡大していくような計画です。メディアソリューション事業はコロナ禍の時に大きく赤字になりましたが、2023年でようやく黒字に戻り、徐々に利益が増加していく計画です。

坂本:2024年に利益がかなり急回復しているのは、加盟店が増えてきたためなのか、それとも利用者が増えてきたからでしょうか? いろいろあると思いますが、この点について教えてください。

菊地:特にこの中でシェアの大きい「オズモール」の「OZのプレミアム予約」事業は、予約手数料ビジネスです。そのため、店舗数とお客さまの数が増えて、ある一定の損益分岐点を超えると、基本的にはそれがほぼ利益になってきますので、損益分岐点を超えると利益率が非常に大きくなるということです。

坂本:この3ヶ年の最後の2027年は非常に伸びていますが、この背景としてどのようなことを予想されているのかを教えてください。

菊地:これは、今取り組んでいる「オズモール」の新しい仕掛けがぐっと伸びてくるのではないかと予想しています。

坂本:利益を伸ばした後、新中期経営計画の2年ぐらいは、投資期というか次に伸びるための準備があるということですね。

菊地:おっしゃるとおりです。

1.IP展開による、収益の最大化

菊地:まず1番目の「IP展開による、収益の最大化」ですが、実は今年から始まるこれからの3ヶ年で、当社原作の作品を基にした映像化が15作品決定しました。映画が10本、ドラマが2本、アニメが3本です。

スライドの一番下に記載しているIP売上についてご説明します。まず映画やアニメがスタートし、それに対して製作委員会が作られ、そこに出資します。出資をしていきますので、それがうまくいくとその出資に対する配当、つまりリターンがあります。

さらに映画化やアニメ化に関しては、東南アジアや北米といった海外でも通用するようなコンテンツもこれから発表されていきます。海外では、紙媒体が日本よりも売れているので、その海外翻訳出版を計画しています。

さらにアニメに関しては、キャラクターが立ってくるとグッズ販売ができるようになりますので、グッズ販売をします。したがって、出資の配当、海外翻訳出版、グッズ販売という、新たなポケットができてくるだろうと予想しています。

もちろん原作は弊社の文芸でありコミックなので、それぞれの映画化やドラマ化やアニメ化が発表されたタイミングから、どんどん書店の店頭、あるいは電子書店でプロモーションがかかってきますので、原作もどんどん重版がかかってくるだろうと考えています。

坂本:2026年は、過去に類を見ない本数の映画化が予定されています。映画化が決定して本数が増えてくると、御社の人員は増やさなければいけないのか、それとも「もう全部任せるよ」というかたちでこの映画化は進んでいくのか、この点についてはいかがでしょうか。

たくさん書籍が売れた場合の人員やグッズ関係の人員はおそらく別だと思いますが、こちらはコンテンツを提供して出資するだけというイメージですか?

菊地:おっしゃるとおりです。映画、ドラマ、アニメはそれぞれ専門の業界があり、我々はそこに出資させていただくかたちですので、そこの人員が増えることはありません。

ただ、現状でライツチームは2名という非常に少ない人数で運営しています。ただし、案件が海外に発展してきたらライツチームは1人か2人人員を増やして、弊社のコンテンツのライツをこのような業界にどんどん広めていきたいと考えています。

坂本:製作委員会にも出資を行うということですが、均等に行っていくのでしょうか? それとも、御社にはどのようなコンテンツが読者に刺さるかというノウハウが蓄積されていると思いますが、原作が売れた作品に関してはある程度出資額を多く入れないと映画化できないというかたちで濃淡をつけられるのでしょうか?

菊地:それは案件によります。それぞれの作品の強弱にもよりますが、それ以上に制作会社、配給会社、キャストが影響します。例えばティーンエイジャー向け、Z世代向けであれば、彼らにとって一番ホットな俳優がキャスティングされると、SNS上で非常にバズります。

坂本:それだけで本が売れるのですか?

菊地:おっしゃるとおりです。そのキャストを見たさに映画も見るし、本も買ってくださるという現象が起きるので、そのような状況を見ながらということになります。

2.コミックシフトと新レーベルの創刊ラッシュ

菊地:2番目の「コミックシフトと新レーベルの創刊ラッシュ」についてです。弊社は文芸編集部とコミックの編集部の2つに分かれていますが、コミックのほうが電子でも紙媒体でも圧倒的に売れるし、利益率も高いです。それは、文字物よりも漫画のほうが受け入れられやすいからです。

そのため、今年の1月から文芸編集部とコミックの編集部を一緒にして、ターゲット別に1部、2部、3部と分けました。文芸編集者もコミック制作を行うというハイブリッド型の編集体制に移行し始めました。

今年1年ぐらいかかりますが、全員が文芸の発掘をしながら編集も行い、同時に漫画家を引っ張ってきてコミックの制作も行うというやり方にしていきますので、来年以降はコミックのコンテンツも相当増えていくのではないかと考えています。

坂本:ノウハウが違うため、文芸とコミックが分かれているというのがおそらく基本的な考え方だと思います。このノウハウの違いについては、意外と誰でもこなせるスキルなのでしょうか?

菊地:そもそも弊社がコミックを立ち上げたのは約7年前で、大手や老舗のコミックを扱っている出版社と比べれば、まだまだ駆け出しです。しかも、それを作っている編集者たちも、もともとコミックのノウハウがある人を外から引っ張ってきたわけではなく、新入社員です。

坂本:「オズモール」の担当者だった人がコロナ禍で仕事が減ったために編集者になったというお話がありましたよね?

菊地:おっしゃるとおりです。「オズモール」の営業担当者を編集に異動しました。見よう見まねで始めて、だんだん自分たちでコミックの編集、あるいは漫画家と独自にやり取りができるようになりました。

また、スライドに記載したとおり、社員が自分たちでいろいろと考えてアイデアを出し合って新レーベルを創刊しようという動きが、数年前から多くあります。昨年末から今年にかけて、実に8レーベルを創刊するという創刊ラッシュを迎えているところです。

後ほどご説明しますが、昨年の年末には「野いちごぽっぷ」「BeLuck文庫」を創刊し、今月は「ベリーズ文庫with」、来月は「スターツ出版文庫アンチブルー」が発刊されます。今年の秋口から年末にかけてさらに3レーベルほどが創刊されますので、今年は創刊ラッシュになります。ただ、創刊ラッシュになるということは、それが軌道に乗るまでに1年ぐらいかかりますので、今年は投資フェーズになっています。

坂本:スライドの一番下に記載された「積層型収益」のイメージをもう少し詳しく教えてください。

菊地:書籍コンテンツの積層型というのは、まず新しくレーベルを創刊します。その時、本が書店に並ぶのは創刊作品の1点、2点で、まだ棚は出来上がっていません。これを毎月発刊し、どんどん点数が増えます。そして、作品が着実に売れていけば、新刊のコーナーに置かれるだけではなく、スターツ出版の、例えば「野いちごぽっぷ」のコーナーというかたちで置かれるようになります。

坂本:2025年2月に出たものが増えていくと、棚というかコーナーができるのですね。

菊地:毎月新刊が出て、それがどんどん増えていきます。電子書籍店でもどんどんストックが増えていきます。それがいわゆる積層型ということです。したがって、毎月いったん創刊したら様子を見て次はどうしようか考えるのではなく、毎月発刊しています。

毎月1冊でも1年で12点、1ヶ月に2点ぐらい出しますので、1年後には24作品ぐらいになります。そのうち、中には大当たりするヒット作が出てきます。そうすると、そのレーベルのブランドが有名になって、それ以外のものも読んでみようということで、その店舗に並んでいる過去の作品も売れてくるというのが「積層型」の意味合いです。

新しいレーベルを創刊し、作品を出して、それを積層型にしていくことで、ヒット作が出る確率も上がり、過去の作品も同時に売れていきます。

創刊間もない今は制作費がどんどんかさみますが、それが来年以降に大きくマネタイズされるのではないかというのが先ほどの見立てです。

読者ターゲットをさらに細分化し、新創刊レーベルを拡充

菊地:今お伝えしたものは読者ターゲットをかなりきめ細かくマーケティングしているのですが、さらに細分化して新創刊レーベルを拡充します。

昨年11月、12月に発刊した「野いちごぽっぷ」は、今まで小学校の高学年から中学生向けの「野いちごジュニア文庫」というものを出していましたが、それを小学校に入ったばかりの6歳ぐらいの年齢層に向けたものです。それまではお母さんが絵本を買い与えていたのが、小学生になって初めてママと一緒に本屋さんに行って、「ママ、これが欲しい」と自分で選んでもらえるようなものを作っています。

弊社の社員が一つひとつ作ったクイズがどのページにも入っていて、なぞなぞなどで遊べる絵本になっています。

次に「BeLuck文庫」というのは10代後半から20代前半をターゲットにしていますが、BL、ボーイズラブです。一昔前はアンダーグラウンドではやっていたものですが、最近は市民権を得てきています。

井上綾夏氏(以下、井上):最近、ドラマや映画もありますね。

菊地:ドラマで男性同士の恋愛ものが非常に多くなってきて、市民権を得てきましたので、ターゲットを女子中学生、女子高校生にして、性的な表現がない、学校の朝の読書の時間に読めるようなBLの中でもボーイズライフというジャンルの作品にしています。

坂本:それによって、読者の年齢層が広がりますよね。

菊地:おっしゃるとおりです。そのようなターゲティングで、昨年12月に2冊創刊したのですが非常に売れ行きが良くて、「TikTok」でバズりました。この『修学旅行で仲良くないグループに入りました』は、既に重版が3刷かかっています。創刊作品でいきなり重版3刷というのは普通はまずないです。

さらに、この作品は、同じ編集者が1月から同時並行で漫画家を見つけてきて、コミックの編集に入っています。ただし、コミックは絵を描くため1年間かかりますので、今年の年末に電子コミックで「BeLuckコミック」と称して発刊します。おそらく来年には紙のコミックにもなります。

このようなかたちで「ベリーズ文庫with」など、いろいろと創刊します。

坂本:いろいろな年齢層の読者に向けて刺さるレーベルを作って発刊を続けているのですが、読者の年齢が上がっていったら自発的にその年齢層に合うものに行っていただければいいというお考えでうまくいっているのか、それともそこをつなぐようなものがなにかあるのか、そのあたりを教えてください。

菊地:この図を見ると、小学生が中学生になった時に「野いちごジュニア文庫」、次は「スターツ出版文庫」となってはいますが、世の中そんなに単純ではないです。小学生になった人はまったく一からの新規の読者と考えます。

ただ、先ほどお伝えしたとおり、スターツはもともと不動産業がメインなのですが、ここ数年、若い方にとっては、スターツは「私を泣かせてくれる本」というイメージかもしれません。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』をはじめとして、「スターツ出版文庫」が非常に売れたので、ネット上では「スターツやばい」「スターツ泣ける」などと言われており、「私が泣ける本」のことをスターツと思っている読者がいらっしゃいます。

全国の書店で「スターツの本」とか「スターツ文庫」という棚ができているところもあります。そのような意味では、もしかしたらつながるかもしれません。

坂本:それが強くなっていけば、違う年齢層への移行がもっとスムーズに行われるというイメージですね。

3.生成AI活用による、生産性の向上

菊地:生成AI活用による生産性の向上についてです。最近、新聞やニュースで「生成AI」という言葉が毎日のように言われています。これは今の世の中の完全な潮流であり、生成AIの時代に完全に突入したと思っています。

生成AIを一部導入したところ、「これが生成AIなんだ」というマジックのようなことが起きています。そこで、昨年末に、すべての事業において、時間と手間のかかる定型業務を生成AIの活用により効率化せよと大号令をかけました。

生成AIを活用することで、これまで社員が行っていたり、外部に発注していたルーチンワークの短納期化、省力化、そして外注費の削減が可能となります。長時間におよぶ定型業務を効率化することで、社員がクリエイティブな業務を行う時間を増やします。今、当社のシステム開発部のエンジニアがそれぞれの事業部に張り付いて、生成AIに置き換えられる業務を検討しているところです。後ほどその例をお話しします。

株主還元

菊地:株主還元についてご説明します。株主のみなさまが一番興味のある部分かと思います。

株主のみなさまへの利益還元を極めて重要な経営課題の1つとして認識していたのですが、これを具現化します。具体的には、「配当方針の変更」「大幅に増配」「株主優待の変更」の3つを行います。

株主還元(1.配当方針の変更 2.大幅に増配)

菊地:変更前は、経営体質を強化するために、必要な内部留保と成果配分とのバランスを勘案しながら、業績に裏づけられた安定配当を継続していくことを配当の基本方針としていました。

業績を見てもわかるとおり、この4年で事業が急拡大したため、従来の安定配当のステージが変わってしまいました。これまでと同じようなペースでは、なかなか今の業績にあった配当水準に達しないため、思い切って配当方針を変更しました。

変更後は、安定的かつ継続的な配当を実施することを基本方針としつつ、持続的な利益成長に合わせて、配当性向30パーセントを目標として配当水準の向上に努めることとしました。

また、期末配当を1株当たり30円から50円増配の80円とします。中間配当30円と合わせて、年間配当は従来の60円から110円になりました。

こちらで配当性向は23.1パーセントですが、2025年12月期に関しては120円とする予定です。2026年以降はまだわかりませんが、先ほどの業績次第ではまだまだ上げていくことができるのではないかと考えています。

株主還元(3.株主優待の変更)

菊地:株主還元ですが、従来は当社お薦めの書籍を3冊ほど差し上げる優待制度を実施していました。

こちらについては、ベストセラーになっている書籍もあり、一部の株主さまから「もう買った」「もう読んだ」というお声もありましたし、また「OZのプレミアム予約」のサービスがかなり充実してきて、関東・名古屋・関西方面のレストラン・トラベル・ビューティ予約を7,000店舗からご利用いただけるようになりましたので、ぜひ株主のみなさまにもご利用いただきたいと考え、優待内容を「OZのプレミアム予約」で利用できる電子クーポンに変更しました。

保有株式数が100株以上500株未満で継続保有期間が3年未満の場合は2,000円分を1枚、3年以上の場合は3,000円を1枚、保有株式数が500株以上の場合は2枚付与となります。

投稿サイトから作家を発掘、紙とデジタルの循環で読者を拡大

菊地:参考資料とトピックスについてご説明します。毎回お話ししていますが、弊社の書籍コンテンツ事業の事業モデルは、3つの投稿サイトから作家を発掘し、まずは紙の本を発刊します。次に、それを電子書籍化して、コミカライズ向きの作品を電子コミックにします。さらに、電子コミックで売れ始めれば紙のコミックにするというかたちで、紙とデジタルの循環で読者を拡大してユーザーを広げています。

書籍コンテンツ事業のレーベル別売上推移

菊地:書籍コンテンツ事業のレーベル別売上推移です。2019年から毎四半期、順調に積み上がってきました。ただし、2024年の第3四半期、第4四半期は2023年と比べると大きく落ち込んでいます。

こちらは、一昨年の2023年に映画化作品が3作品あったことが影響しています。2024年は映画化する作品がなく、落ち着いてしまったことが要因となっています。

井上:足元で伸びているレーベルと、その理由について教えてください。

菊地:足元が伸びているレーベルは、男性向けコミックの「グラストCOMICS」で、電子、紙ともに伸びています。

「ベリーズ文庫」も伸びています。40代、50代の女性向け恋愛小説「ベリーズ文庫」は厳しい時期があったのですが、新たにマーケティングし直して従来のマンネリを打破したことによって非常に好調となり、文庫とコミックが今非常に牽引しています。

また、これから大きく伸びると思われるのは、先ほどお伝えした、創刊したばかりの「BeLuck文庫」です。創刊作品、今月発刊した第2弾、ともに非常に出足が好調です。今、BLは急激に拡大しているマーケットですから、ここは広がっていくのではないかと考えています。

Topics 女子小学生向け単行本レーベル「野いちごポップ」創刊

菊地:「野いちごぽっぷ」という「全ページ遊べる本」を創刊しました。小学1、2年生の低学年向けと3、4年生の中学年向けがあり、わずかな年齢差ですが、それぞれに合わせた内容とサイズにしています。

Topics BL(ボーイズライフ)レーベル「BeLuck文庫」創刊

菊地:先ほどから何度かお伝えしている、新人作家によるエロなし「青春BL」です。同時並行で「BeLuckコミック」も制作中です。

Topics 30~40代女性向けレーベル「ベリーズ文庫with」創刊

菊地:新たに2025年2月に創刊した「ベリーズ文庫with」です。先ほどのご質問にもあったように、「ベリーズ文庫」は10年以上続いているレーベルで、読者年齢が30〜40代から50~60代に上がっています。

それはそれで人気があるため「ベリーズ文庫」として50~60代向けに発刊し続けるのですが、新たに30~40代の若い人向けに「恋はもっと、すぐそばに」がテーマのちょっと身近な恋物語ということで「ベリーズ文庫with」として発刊をスタートしました。

実際にPOSデータを見ても、お買い求めになっている読者は5歳から10歳くらい若返っているという実感があります。こちらに関しても同時並行でコミックを制作しています。

Topics 2025年公開予定『青春ゲシュタルト崩壊』

菊地:2025年初夏に『青春ゲシュタルト崩壊』が実写映画化されます。また、今後3年で10作品が映画化される予定です。

掲載店舗数、予約組数は順調に拡大

菊地:「OZのプレミアム予約」は予約送客ビジネスです。予約組数、掲載店舗ともに順調に拡大しています。

坂本:予約組数がかなり伸びていますね。

菊地:おっしゃるとおりです。そのため、株主優待でもこの「OZのプレミアム予約」をご利用いただきたいと思います。

Topics OZの「貸切・大人数予約」好調に推移

菊地:2024年にスタートした「貸切・大人数予約」も好調に推移しました。特に年末の忘年会、宴会・貸切パーティでは一気にブレークしました。

今年は2025年3月、4月の新年会、歓送迎会に向けて今、どんどん増えてきています。

坂本:1度使うと認知が広がります。コンシェルジュが受けてくれるのがとても楽ですよね。

菊地:弊社の社員が全部受けてそれぞれのニーズに沿ったお店をご紹介するため、幹事さんが一度これは便利だと思ったら使い続けてくださるのではないかと思います。

今まではBtoCで個人の方が「オズモール」を使っていましたが、これからは法人単位で使われるお客さまも増えてくるのではないかと思います。

Topics 生成AI活用による、生産性向上施策の事例

菊地:生成AI活用による生産性向上施策の事例です。「オズモール」は毎月、営業チームが新規のお店を開拓し、新たに掲載するための店舗ページを制作します。お店の紹介、あるいはプランの紹介ページが多くありますが、それは今までは外注していて、納期は約1週間かかっていました。

そこで、弊社の制作画面のシステムに生成AIを組み込んだところ、お店の情報等を読み込ませて設置された生成ボタンを押すだけで、原稿が瞬時にできるようになりました。

坂本:ある程度の手直しは必要ですよね?

菊地:おっしゃるとおりです。外注した場合と同じようにチェック作業を社員が行います。ただし、原稿制作期間は一気に短縮しますし、外注費のコストが削減できます。このようなことが全事業でできるのではないかということで、生成AI活用を進めています。

スターツ出版のメディアブランド

菊地:冒頭にお伝えしたスターツ出版のメディアブランド『オズマガジン』は創刊して38年、『メトロミニッツ』のフリーマガジンは23年、『アエルデ』は創業の事業で42年、絶やさずに継続しています。「オズモール」は29年です。

これをもとに、それぞれのブランドメディアがタイアップや純広告をもらうようなメディアビジネスの時代はとうの昔に過ぎてしまいましたが、長年継続することでブランドが非常に立っていて、親子2代にわたって『オズマガジン』をよく知っていただいています。

Topics 「地域観光の魅力」をオリジナル企画でアピール

菊地:スターツ出版のメディアブランドを利用したソリューションビジネスを、先ほどのブランドソリューション事業で行っています。こちらは1つの事例で、地域の観光の魅力をアピールするということで「どっぷり高知旅キャンペーン」をプロデュースしています。「高知かるた」を作り、弊社の媒体やSNS、イベント、地元のテレビ、新聞、Webメディアで一気に高知県の魅力を全国に向けて多角的にPRしています。

坂本:イベントはもともと「オズモール」とタイアップして続けていたため、そのノウハウはけっこうありますよね。

菊地:おっしゃるとおりです。このような立体的なこともできるようになったため、これを全国各地に広げたいと思います。

Topics 「地域観光の魅力」をSNS配信、インバウンド対応も強化

菊地:SNSを通じて発信する「オズレポーターズ」という組織があり、そこは約1,500人の人員を擁しています。そこにさらに中国語が話せる人たちもジョインしたため、ここにあるように繁体字を使用した、台湾のインバウンドの人たちにも見てもらえるようなアカウントをスタートしています。こちらで東京や地方の魅力をインバウンドの人たちに向けて情報発信し、ソリューションビジネスを拡大していく考えです。

企業風土

菊地:企業風土は、「穏やかで、伸び伸びとした、社員の成長が持続できる企業風土」を作っています。

女性、若手の多い社員構成

菊地:当社は女性、20代の社員が非常に多く、社員の年齢構成はきれいなピラミッド型をしています。

社員を育成する各種施策

菊地:当社は女性が72パーセントを占めているため、若い女性が活躍できるような風土を作り、社員を育成するような各種施策や会社のロイヤリティを高めて早く活躍できる人材を育てるための施策を多く行っています。

コミュニケーションが活発で、社員同士‘仲の良い’社風を後押しする制度

菊地:みんなが仲良く仕事ができるのが一番であるため、コミュニケーションが活発で、社員同士が仲の良い社風を後押しする制度もたくさん設けています。

長期ビジョン

菊地:長期ビジョンです。これから増えてくるコミックコンテンツをどんどん世界へ発信していきたい。北米や東南アジアへのコンテンツの配信、進出を長期的には考えています。

インバウンドは間違いなくもっと増えるので、東京や地方の魅力を弊社のブランドメディアを通じてどんどん発信していきたいです。

さらに、AI活用は生産性の向上のみならず、AIを活用した新しいサービスをこれから立案していきます。企業価値をさらに上げて、1人でも多くのステークホルダーに喜びを広げていきたいと考えています。

質疑応答:IPコンテンツの価値について

井上:「今後は書籍だけでなく、IPを活かしてライセンス収入も確保し、IP価値を最大化していく方向に進めていくという理解でよろしいでしょうか?」というご質問です。

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