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荒木裕一氏(以下、荒木):みなさま、こんにちは。豊田通商株式会社財務部IR室長の荒木です。本日は、豊田通商株式会社の説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。 それでは、スライドの目次に沿って、特に豊田通商の強みについて中心にご説明したいと思います。
豊田通商グループについて (2024年3月末時点)
荒木:会社概要についてです。豊田通商は、トヨタグループの総合商社です。約130ヶ国・地域でグローバルに事業を展開しており、卸売業・総合商社の一角です。
利益規模については、2024年3月期の当期利益は3,314億円となり、過去最高益となりました。1株当たりの配当金については、2024年3月期が通年で93円、進行期の2025年3月期は100円となり、15期連続の増配を予定しています。また、配当利回りは、2025年2月21日終値との比較で4.1パーセントとなっています。
理念とビジョン
荒木:豊田通商が掲げる理念とビジョンについてです。基本理念は恒久的に変わらず、我々が大事にしていくものになります。その基本理念を実際に追い求めるビジョンについては、スライド右側の手が地球を支えている絵のところに記載の「Be the Right ONE」を掲げています。日本語では「唯一無二の」という意味です。
それらを実現するために、中期経営計画3年計において、我々は具体的なアクションを遂行していきます。その我々の事業や行動を支えるのがスライド中央下に記載の「豊田通商DNA」になります。具体的には、「Humanity」「Gembality」「Beyond」の3つで、豊田通商の役員や職員、すべての仲間たちがステークホルダーに対して行動理念として持っているものになります。
事業本部体制
荒木:事業本部についてです。豊田通商にはサービスに特化した7つの事業本部と、スライド右下赤色の部分にあるアフリカ地域に特化した事業本部があります。
スライド左上から順にご説明します。まず、「メタル+(Plus)」本部は、金属製品を取り扱っています。しかしながら、さまざまな素材転換、あるいはもの作りの改革といったものによりこだわっていきたいという意味から、「プラス」という少し柔らかい言葉をつけた珍しい名前の本部になります。
「サーキュラーエコノミー」本部です。「サーキュラーエコノミー」とは、日本語訳で「循環型経済」となり、要するに「リサイクル」を表します。手当たり次第に新しいものだけで作っていくのではなく、リサイクルそのものが「飯の種」になると豊田通商では考えています。
「サプライチェーン」本部は、物を運ぶ、つなぐというのがこの本部の役割になります。モビリティ、自動車関連に関しては、本当に豊田通商の屋台骨、キャラクターを表すような本部です。
「モビリティ」本部です。主にアフリカ以外の新興国で自動車の販売などを行っています。また、「モビリティ」は、自動車に限らずすべての「移動」を表しますので、今後は、単に動くだけの車から、さらに楽しい車、あるいは空を飛ぶ車のようなものも、この本部で事業として行っていきます。
スライド左下にある「グリーンインフラ」本部です。サステナブルな地球環境を支える電力などのインフラをこの本部で実現し、豊田通商の将来の屋台骨にしたいと考えています。
「デジタルソリューション」本部です。我々の考える「モビリティ」は、単にアクセルを踏む車ではなく、益々賢く、そしてそれらがいろいろな社会変革を起こしていくものになります。それらを半導体やデジタルソリューションのビジネスを通じて実現したいという本部です。
「ライフスタイル」本部です。スライドは、泳いでいるマグロの写真です。近畿大学とのコラボレーションで、五島列島でマグロを完全養殖しています。これはマグロを売るためというより、持続可能な、あるいは今後の食料や医療などの資源を含めて人間の「ライフ」をどのようにしていくかということを課題解決する本部です。
最後は、「アフリカ」本部です。豊田通商はアフリカにコミットし、確実な成果を上げ、成長を遂げている、世界でもかなり珍しい会社だと思います。後ほどアフリカについてしっかりとご説明したいと思います。
業績推移
荒木:業績推移についてです。豊田通商の利益面を一言で表すと、非常に安定して利益成長を続けている会社になります。トラックレコードを振り返ると、24年前の2001年には、食品を非常に得意としていた加商と合併しました。当時の当期利益は日本会計基準で82億円でした。
2006年には、当時総合商社の一角であったトーメン社と合併し、グローバルに拠点と人的リソース、また、商売の拡大を目指しています。
2012年には、アフリカに非常に強みを持っているフランスの商社CFAO(セーファーオー)社を子会社化し、ここから一気にアフリカに舵を切り、成長を続けてきました。
2016年には資源価格、原油価格の下落により赤字決算となりました。しかし、翌年の2017年には、当時として過去最高益である1,000億円超えを達成できました。このことから、非常に地力の強い会社であることがお分かりいただけると思います。
2017年に1,000億円を超えてから、1,500億円を狙う5年間が続き、コロナ禍を経てこの3年間は過去最高益を連続で更新しています。また、2025年3月期の予想についても当期利益3,500億円をガイドラインとして出しており、4期連続の過去最高益を目指しています。
スライド下部に記載の当期利益については、約20年間で82億円から約3,300億円と40倍の成長を、また、時価総額についても日経平均株価を大きく上回る24倍の伸長と、非常に大きく成長しています。
kenmo氏(以下、kenmo):ご説明のとおり、当期利益が約20年間で40倍ということで、著しい成長を遂げていることがわかります。特にトーメン社との合併や、CFAO社の買収が大きく利益貢献しているように思いますが、そのあたりのシナジー効果や、御社の利益成長に与えた影響について定量的に教えてください。
荒木:ご質問のとおり、やはりトーメン社との合併、CFAO社の子会社化のあとに、利益が大きく成長しています。大きなM&Aだけでなく、それぞれが持つ強みを掛け合わせてシナジー効果を大きくしています。それが単発にとどまらず、持続的にさらに成長していくことにつながっていることが豊田通商の特徴だと思います。
どのような目的でトーメン社と合併をしたのかをご説明します。自動車に非常に強い豊田通商と、グローバル展開をしており、食品や化学品に仕入れ先であるお客さまを持つトーメンとの合体により、自動車の裾野やサプライヤーを広げることができます。さらに、今までは商売のエリアが限られていましたが、合併により世界中に展開する拠点と仲間を得たということで、商売の範囲が一気に広がりました。
CFAO社の買収についても目的は同じです。もともと豊田通商は、アフリカ南部の英語圏の国々に非常に強かったのですが、アフリカ北部のフランス語圏を商圏として持っていたCFAO社を買収し仲間に入っていただいたことで、アフリカを1つの大陸として捉えられるようになりました。
このことにより、できることが増えたというのが最大のメリットになります。CFAO社は業績的に、ここまで来るのに10年かかりましたが、はじめの仕込みがなければ、この成長はなかったと考えています。
kenmo:スライド右側にある足元の業績が特に好調に見えますが、この要因は一過性のものなのか、それとも今後も持続可能なものなのか、そのあたりについて理由も含めて教えてください。
荒木:確かに、2021年3月期には1,346億円だった当期利益が、翌年の2022年には2,222億円まで伸長しています。この間は、コロナ禍でしたので、各社とも非常に苦労しており、我々も当初、業績予想が出せないといった状況でもありました。その中でも大きな利益を上げられたことには2つの要因があると思います。
1つ目はバリューチェーンや物流がズタズタに分断されるような、100年に一度の大危機の中で、豊田通商が準備していたサプライチェーンの構築と機能がお客さまに認められたということです。
具体的には、新型コロナウイルスの影響でどこかの工場が止まってしまった場合、豊田通商に相談をすれば部品が出てくる、そして、そのことにより物流が動くという流れを構築しました。なぜ、それを可能にしたかというと、事前に準備していたからです。それでは、どのような準備をしたかについてご説明します。
自動車関連で言いますと、非常に長く深い製造のサプライチェーンの中で、大量生産のためだけの最も効率のよいサプライチェーンには実は脆弱性があり、何かがあった時に止まってしまうのではないかという仮説を立てていました。結果的に、その仮説が当たりました。
例えば、ベトナムの工場で世界中分のエアバッグを製造していた場合、ベトナムの工場が止まってしまうと、全世界の工場が止まってしまいます。
「アルゼンチンでも作ればよいではないか」「トルコでも作ればよいではないか」と言うのは簡単なのですが、その構築には何年もかかります。このような、我々はリージョン型、つまり地域型、地産地消型というサプライチェーンをコロナ禍より前から準備していました。これがうまく効果を発揮したことでお客さまの信頼を得て伸びにつながりました。
2つ目は、我々のさらなる機能の追加です。資源の価格はともかくとして自動車のみのGDP成長率でいうと、どの国も2倍にはなっていません。ただ、我々の利益が2倍になっている背景には、1台の自動車、あるいは1つの商品やサービスを提供する中で、複数のビジネスチャンスがあることが関係しています。
このようなビジネスチャンスを、豊田通商がお客さまの信頼を得て複数回つかむことができるようになりました。要は、1台の自動車を作る際にも、材料を売って終わりではなく、それを加工し、運び、そしてそれをリサイクルする、垂直統合という言葉もありますが、このように複層のどこをめくっても豊田通商が登場するかたちで利益を伸ばすことができました。
これは前述の我々がコロナ禍で得たお客さまの信頼が関係しています。つまり、このようなビジネスを安定的に積み上げていくことで、今後、何かが起きても起きなくても豊田通商が頼りになるということです。
成長戦略
荒木:当社の成長戦略についてご説明します。豊田通商は今、スライド右側に記載の長期に目指す姿である、「社会価値、自然価値の提供と経済価値を両立させ、より良い社会と地球環境を皆さまと共に創り上げていく」ために、スライド左側に記載の7つの重点分野を設定しています。
上から順に「ネクストモビリティ」「再生可能エネルギー・エネルギーマネジメント」「アフリカ」です。「循環型静脈」は、リサイクルのことです。そして、「バッテリー」「水素・代替燃料」です。「Economy of Life」は聞き慣れない言葉ではありますが、先ほどマグロの絵をご紹介したように、持続可能な命に関わるビジネスになります。
このような7つの重点分野を事業として行います。そして、この中期経営計画の3年間においては、「重点分野への投資の促進」「2030年CN(カーボンニュートラル)目標達成に向けた事業推進」「人的資本経営の推進」、また、我々は工場も持っている商社になりますので、安全やコンプライアンスにおける「さらなる成長の足元固め」の4本柱を立てています。
これらはトヨタグループ全体でも取り組んでいますが、豊田通商も例外なく取り組んでいます。このような中期経営計画の4本柱の中で、特に利益、リターンに直結する「重点分野への投資の促進」について詳しくご説明したいと思います。
重点分野への投資の促進~企業価値向上のサイクル~
荒木:豊田通商の投資の考え方である、企業価値向上のサイクルについてご説明します。先ほどお伝えした7つの重点分野は、スライド右側にあるように、その特徴や時間軸によって3つに分けられます。「Nature Value(自然価値)」は、再生可能エネルギーなどの分野になります。「Social Value(社会価値)」は、リサイクルやバッテリーなどの分野で、社会課題を解決しながら事業を膨らませていくビジネスになります。
「Core Value(基盤事業)」は、今すでに動いている事業であり、キャッシュを生むことでソーシャルやネイチャーへ投資を続けていきます。その投資がまたリターンを生み、また社会がよくなる、自然がよくなることで、循環してコアの価値をさらに高めてくれる、競争力を高めてくれるといった投資を目的としています。
重点分野への投資の促進~投資リターン~
荒木:これら3つの分野に2027年3月期までに1兆円を投じます。スライド右下の「Core Value」は、一番利益のある分野になりますが、今すでにあるビジネスについては4,000億円を投じ、ROIC(投下資本利益率)は15パーセント以上を狙っています。これらで得たキャッシュをさらに「Social Value」のリサイクルやバッテリーの分野へ3,000億円投じ、ROICは今後さらに期待されると予想し、10パーセント以上としています。
「Nature Value」の再生可能エネルギーに対しては3,000億円を投じます。こちらは、設備産業でもあるため、ROICは5パーセント以上となっていますが、今後、再生可能エネルギーあるいは自然価値にお客さまやステークホルダーのみなさまが価値を感じることで、ROICはどんどん向上していくであろうと考えています。
重点分野への投資の促進
荒木:本日は特に、我々が今強みを持っている「Core Value」の利益の源泉であり、競争優位性の源泉でもある、豊田通商を特徴づけるアフリカビジネスについてご説明します。
モビリティ 事業の変遷
荒木:基盤事業の「Core Value」についてです。豊田通商はトヨタグループの一員であり、モビリティ事業、自動車関連事業については自動車の輸出からその歴史が始まっています。1960年代にトヨタの自動車、あるいは豊田自動織機のフォークリフトを海外に輸出する事業から我々のモビリティ事業は始まりました。
販売に関しては、1990年代に入りトヨタからディストリビューターと呼ばれる、自動車を世界各国に広める卸の仕事や、代理店の展開、業務移管が始まりました。我々は特に、新興国である中南米や東ヨーロッパ、東南アジアなどの代理店を任されることになりました。
さらに2000年代には、豊田通商が世界中のいろいろなエリアでディーラーを展開し、トヨタ車を中心に販売していきました。その後、さらにこのチェーンは広がり、現在では中古車やサービス、アクセサリーといった周辺事業も行っています。以上が、モビリティ販売に関する事業になります。
モビリティ バリューチェーン(VC)
荒木:豊田通商は製造側でも活躍しています。販売と生産を同時に行っている会社は、非常に珍しいのではないかと思います。スライド左上の「生産・生産準備」から順にご説明します。「生産・生産準備」は、材料の確保から、それを運んで組み立て、そこにプログラミングや機能をつけた上で販売し、最終的にリサイクルするという、自動車の非常に長いバリューチェーンのスタート部分になります。
また、「生産・生産準備」として、自動車のボディーやドアに使う鉄板を運んで加工していきます。次の「最適調達」として、世界中から部品の材料を調達し、部品そのものを組み付けたモジュールを運ぶのが「加工/物流」になります。
その後、「部品組付」として、自動車工場の中で組み立てられます。現在は非常に賢い車が登場していますので、コネクティッド領域と呼ばれる自動車に機能付けを行い、そして「販売・サービス」として、販売サービス店に運ばれます。最終的には、工場から出た材料のくずが「リサイクル」されます。このように、生産・販売・リサイクルまでを1社ですべてを、また、多くのエリアでお手伝いしているのは、豊田通商の非常に特徴的な部分であると考えています。
kenmo:今ご説明のあったバリューチェーンが御社の特徴であり、強みでもあると思います。この中でも特に、御社が得意とするところについて教えていただけますか?
荒木:バリューチェーンは非常に長くて深いものですので、全部を行っているわけではありません。豊田通商の投資や事業の考え方は、我々が本当に得意としている事業分野、あるいはアフリカや新興国といった我々が得意にしているエリア、または、我々がすでに入っているエリアとの掛け合わせになります。
したがって、全部というよりは、我々が利益を最大化できる、機能を発揮できる部分について取り組む、そして、それ以外の部分はサポートするといった考え方になります。その中で特徴的なのは、やはり需給管理です。
例えば、鉄板を1枚運ぶにしても、いつ運んでどこに置いて、どのスピードでお客さまにお渡しするか、これらはお客さまの製造ラインの中にまで入り込まないと、なかなかうまくコントロールできないものになります。先ほどもお伝えしましたが、コロナ禍においては、この我々の在庫管理機能がお客さまに認められました。
在庫管理はもちろんのこと、工場内においての物流管理もしていきます。例えば、A部品をBの製造ラインまで運ぶには、トラックやフォークリフトが必要になりますが、このような管理も行うということです。中まで入り込んで、隅々までお客さまの課題を見つけることが、豊田通商の一番得意にしているところになります。したがって、「エリア」というよりは、そのような機能が特徴であると思っています。
kenmo:足元では、特にEVシフトが進んでいるかと思います。当然、今までのガソリン車からEVシフトが進む中で、バリューチェーンも大きく変わっていくかと思いますが、そこに対して御社はどのように対応しているのか教えていただけますか?
荒木:EV化についてのご質問をよくいただきます。また、それらは豊田通商にとってプラスかマイナスか、ポジティブかネガティブかという質問もよくいただきます。
私はいつも、「豊田通商にとっては本当にチャンスで、非常にポジティブに考えています」とお答えしています。EV化について、明日から全部がEV車になるわけではなく、先進国を中心に、より環境負荷の少ないEV車に徐々に置き換わっていきます。我々が得意としている新興国やアフリカに関しては、まだまだガソリン車が必要な地域になります。このような国々ではやはり電気がまだまだ足りておらず、道もよくありません。
アフリカにおいては、トヨタ社が非常に強いブランドを持っており、極端な例になりますが、「サバイバルカー」生き残れる車などと言われています。当然ながら、停電も起こりますし、プラグがないようなところでEV車は普及しません。したがって、豊田通商は先進国での自動車販売のビジネスはほとんど行っていません。今の自動車のバリューチェーンは、基本的には先進国で大量生産された車が新興国に分散されるといったビジネスモデルになっています。
これがEV化される際には、より細かい国々で作られるようになり、また、部品の作り方も変わってきます。要するに、サプライチェーンの変更です。我々は、コロナ禍でこのようなサプライチェーンの変更を経験しており、また、大量生産用のサプライチェーンや物流網は非常に効率がよいものになります。一方、EV化により細分化されると、効率が悪くなりコストが上がります。ここに豊田通商の活躍の余地があると考えています。
モビリティ 調達物流
荒木:スライド世界地図の中の青色の国々で、豊田通商は製造のサポートを行っています。先ほどkenmo氏がおっしゃられたとおり、今後も変容していくサプライチェーンとともに、我々も変容し、さらに「最適調達」に向かっていきたいと思います。
モビリティ 事業例 ~生産~
荒木:豊田通商が何をしているのか、加工業についてもう少し詳しくご説明します。スライド左下をご覧ください。
こちらが製造ラインです。まず、我々は商社ですが、自分たちでボディに使う鉄を運び、実際に切断してトヨタに渡しています。このような加工業が、非常に特徴的だと考えています。
単に物をトレーディングするだけでは機能が足りません。「なぜ豊田通商から買わないといけないのか」という動機が弱いです。そこで、我々は機能を付加していきます。需給管理という機能をより強化することで、生き残っていきたいと考えています。
部品についても同様です。先ほどコロナ禍の物流網についてお話ししましたが、エアバッグは1ヶ所で作ったほうが、当然ながら安く済みますが、世界中に分散させるだけではどこかで途切れてしまう可能性があります。それをしっかりつなぎ合わせることが、我々の特徴となっています。
スライド中央の「組立」に色がついていますが、豊田通商は、自動車の組立会社も運営しています。世界中で数はそこまで多くありませんが、タイヤの組付といって、タイヤのゴムをホイールに装着し、5本セットで工場に納める商売や、「KD方式」と呼ばれるものがあります。これはKnock Downの略で、プラモデルのようにキット化された部品を、国から国へと輸出し、現地の工場で組み立てる、現地生産のスタートとなる方式です。これらの取り組みにより、自動車産業の裾野を広げていきます。
モビリティ 事業例 ~販売周辺~
荒木:販売の部分についてです。新興国でのディーラーの運営に加え、中古車販売やアクセサリーの製造・販売を行っています。このように、新車販売に依存しない、よりお客さまに密着したかたちでの商売を目指しています。
モビリティの販売においては、新車の利益が占める割合がそれほど高くなく、サービスやアフターパーツでどれだけお客さまを確保できるかがポイントです。そのため、まだ車が不足している新興国でも、このようなバリューチェーンをしっかりと構築していきたいと考えています。
モビリティ 事業展開
荒木:モビリティの販売において、アフリカ以外のお話をすると、主に新興国において、ディーラーやディストリビューター事業を展開しています。これらの国々で自動車産業がさらに広がる中で、サービスや中古車事業も積極的に展開していきたいと思います。
アフリカ
荒木:豊田通商をさらに特徴づける、アフリカにおけるビジネスについてご説明します。スライドの地図に、アフリカ大陸が表示されていますが、アフリカには54ヶ国あり、豊田通商はすべての国で事業を展開しています。
また、豊田通商の連結従業員数は約7万人ですが、そのうちの3分の1にあたる2万3,000人以上がアフリカで働いています。
3年前に1兆円だった売上は、現在1兆6,000億円となっています。コンシューマー向け販売やサービスでこれだけの利益を上げている会社は、資源関係を除けばアフリカには存在せず、豊田通商のアフリカへのコミットメントの強さを示しています。
アフリカ
荒木:アフリカでは、4つの事業の柱の川上と川下を狙い、それぞれでマーケットリーダーになるべく戦略を掲げています。
その4つの事業の柱とは、「モビリティ」、電気や港湾設備といった「インフラ」、医薬品を取り扱う「ヘルスケア」、そして、飲料やスーパーマーケットの展開を行っている「コンシューマー」です。
アフリカ
荒木:おかげさまで、この数年、アフリカの利益が非常に大きく伸びています。
そもそも、豊田通商がアフリカにここまでコミットする理由は、まずマーケットとしての魅力です。
現在、アフリカの人口は13億人と言われていますが、2050年には2倍の25億人になると予測されています。
当時の世界の人口は100億人とされており、実に4人に1人がアフリカ人です。この大きな人口増加、GDPの成長、中間層の拡大を確実に取り込みたいというのが、豊田通商のアフリカ事業へのコミットの背景にあります。
まだ人口爆発は起こっていませんが、3年前には260億円だった税後利益は、今期の計画では720億円と、2.5倍に達する見込みです。このように、アフリカの大きなポテンシャルは豊田通商の魅力でもあります。
アフリカ モビリティ
荒木:ここからは、アフリカにおける4つの事業を簡単にご紹介します。まず、モビリティについて、アフリカ全土で生産および販売を行っています。
生産に関しては、南アフリカのトヨタの工場に材料を供給し、完成した車をアフリカ全土に展開しています。また、エジプト・ルワンダ・ケニア・ガーナ・ナイジェリアなどで組立事業も展開しています。
これらすべての国々でディーラーを運営し、商売を行っていますが、2019年にトヨタのアフリカビジネスの全面移管を受け、現在、アフリカにおけるトヨタ車のコントロールは我々が担っています。
アフリカ インフラ
荒木:次にインフラです。先ほどからお伝えしているとおり、新興国、特にアフリカでは、電気や港湾設備といったインフラが不足している状況です。
我々はアフリカというエリア・事業に強みを持つだけでなく、インドネシアでの港湾の開発や日本での空港の運営も手掛けており、インフラにも強みがあります。
また、日本国内最大級の風力発電事業者であるユーラスエナジーホールディングスを子会社に持ち、これらの知見を活かしてアフリカに港湾設備や再生可能エネルギーを提供し、課題解決と商売の両立を目指しています。
アフリカ ヘルスケア
荒木:人口・所得の増加に伴い、安全・安心なヘルスケアや医薬品へのアクセスが求められています。
豊田通商は、スライドに緑色の三角で示しているモロッコやアルジェリアでメーカーの委託を受けて生産を行い、それを青色のエリアの病院や薬局へ卸売しています。さらに紫色の三角で示している国々では小売事業にも参入し、ヘルスケアのネットワークを構築しています。
アフリカ コンシューマー
荒木:コンシューマーでは、消費財といった、みなさまの生活にかかわる物資そのものを提供しています。スライドの色付けされたエリアで、ショッピングモールやスーパーマーケットの運営、ジュースなどの飲料の製造・販売を行っています。
また、スライド右下の写真にある倉庫型店舗は、マルチパーパスの工場といって、製造ラインを特定せずにライターやボールペンなどの物品を製造しています。そして、それらをスーパーマーケットやショッピングモールに販売しています。これらの事業も、人口と所得の増加に伴い、確実に成長すると考えています。
kenmo:豊田通商が、アフリカでの事業をこれほど展開されているとは知らず、非常に勉強になりました。とはいえ、アフリカは地政学リスクや政治不安が常に伴い、参入が難しい市場です。その市場でのリスクに対して、どのようにヘッジしているのでしょうか?
荒木:おっしゃるとおり、アフリカは、日本のメディアを見聞きしていると、過激なニュースが多いと思います。
まず我々は、アフリカをアフリカ全体だとは捉えていません。1ヶ国ずつとした場合、54ヶ国あります。その54ヶ国に我々の仲間、人々が住んでいて、経済があります。
したがって、1つの国でクーデター、政変が起こったとしても、残りの53ヶ国では普通に経済が動いています。政変が起こった国でも、人々は暮らしていて、経済は回っていて、車も走っています。
もちろん、現地の情報をキャッチしてリスクは捉えますし、可視化します。また、ミニマイズもしますが、経済そのものは動いていると考えています。
我々は、アフリカにすでにネットワークを持っています。54ヶ国すべてに展開している、面のポートフォリオがありますので、アフリカを守れます。1ヶ国が駄目になっても、残り53ヶ国があります。1ヶ国にしか展開していなければ、これは最大のリスクですが、残り53ヶ国に回せばよいということです。
このように、「どこかが悪い時にどこかが支えられる」というのが、1つの強みだと思います。
kenmo:また、4つの事業を紹介していただきましたが、今後、特に注力していきたい分野や事業について、教えてください。
荒木:ここについては、4つすべてとお伝えしたいところですが、まず1つは、豊田通商を特徴づけるインフラです。再生可能エネルギーといった港湾設備は、持続可能性が非常に高いビジネスのため、狙っていきたいと考えています。
もう1つはヘルスケアです。私は、コロナ禍に南アフリカにいたのですが、ロックダウンで車は売れず、工場も動かず、3ヶ月間売上が立たなかったことがありました。ただし、エッセンシャルマテリアル、生活に必要不可欠な物品ということで、医薬品の販売網、薬局・病院は開いていました。
その結果、医薬品のビジネスはコロナ禍でも非常に大きく伸びました。これは、新型コロナウイルスのような特殊な状況だけではなく、人口が増加し、高齢化が進む中で必ず伸びるビジネスです。これまでも着実に伸びていますし、今後も伸ばしていきたいと考えています。
株主還元方針
荒木:最後に、株主還元についてご説明します。
当社の株主還元方針は、スライド左上に記載のとおりです。2026年3月期まで累進配当を実施し、配当性向30パーセント以上を達成します。また、キャッシュフローの動向を踏まえ、追加的に機動的な総還元策・自己株買いを検討します。
先ほどからお伝えしているとおり、利益成長が安定しており、2024年3月期まで14期連続の増配を実現しています。今年も最高益を更新した暁には2025年3月期配当予想は100円となります。15期連続の増配、また累進配当を謳っていますので、2026年3月期までカウントすると、16期連続増配となる見込みです。
キャッシュアロケーション
荒木:これらを支えるキャッシュアロケーションについてご説明します。豊田通商は、この3年間で営業キャッシュフロー1兆3,000億円を確保し、1兆円を投資に、3,000億円以上を株主還元に充て、今後についても株主還元を強化することを考えています。
非常に安定的にキャッシュを生み出し、成長投資を続けながら、株主還元も強化していきますので、豊田通商の事業、キャッシュアロケーションを応援いただければと思います。
以上で、私からのご説明を終わります。ありがとうございました。
質疑応答:総合商社における豊田通商の強みについて
kenmo:総合商社がいくつかある中で、御社が特に強みを持っている分野や特徴について、バリューチェーンのところでも触れていただきましたが、あらためて教えてください。
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