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イノバセル株式会社504A

東証グロース

医薬品

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ノビック・コーリン氏(以下、コーリン):代表取締役Co-CEOのノビック・コーリンです。イノバセル株式会社2026年12月期第1四半期の事業進捗に関するアップデートを行います。よろしくお願いします。

シーガー・ジェイソン氏(以下、ジェイソン):同じく、代表取締役Co-CEOのシーガー・ジェイソンです。よろしくお願いします。

コーリン:本日はスライドの3つの項目、つまり第1四半期の事業進捗、P/Lのアップデート、そして今後予定している主なマイルストーンについて、ご説明します。

当社IPOの概要

コーリン:当社の事業進捗について、ご説明します。

まず、みなさまもご存じのとおり、当社は今年2月24日付で東証グロース市場においてIPOを実現し、合計約117億円の資金調達を行うことができました(こちらはオーバーアロットメントを含めた金額です)。その結果として当社は現在、手元現預金が約116億円ある状況です。今回のIPOにより今後数年間分の運転資金を調達できたため、資金基盤を非常に強固なものにすることができました。

スライド下段に2026年3月末現在の連結B/Sを掲載しています。現預金残高は116億円となっており、当社の財務基盤が大きく改善していることがわかります。純資産額も100億円以上の状態です。

ジェイソン:当社が調べたところによると、バイオベンチャーとしての東証上場時新規調達額としては最も大きい調達額になったという理解です。

コーリン:そうですね。当社が調べた中では、発行体が調達した資金規模としてはこれまでの日本のIPOの中で最大です。

当社グループ開発パイプラインの全体像

コーリン:当社グループのパイプラインの全体像について、ご説明します。現在の臨床開発の進捗状況や、どのようなパイプラインがあるのかについてお話しします。

スライドには4つの開発品が掲載されています。まず一番上に記載されている当社のリードプロダクトである「ICEF15」について、ご説明します。

「ICEF15」は切迫性便失禁をターゲットとする再生医療等製品です。切迫性便失禁とは、外肛門括約筋という筋肉が、例えば分娩後の外傷や老化に伴う筋肉の衰退などで損傷を受けることにより生じる症状です。この症状を持った患者さまは、便意を感じながらもトイレに行こうとした際に間に合わないといった問題を抱えています。

現在「ICEF15」については、日本および欧州11カ国の計12カ国において、国際共同第Ⅲ相試験を実施中です。後ほど詳細をご説明しますが、今後は米国も加え、日・米・欧にわたって臨床開発を進める計画です。

臨床試験の詳しい内容は、スライドに掲載されているサイト「ClinicalTrials.gov」をご参照ください。本開発品は、患者さま自身の細胞を外肛門括約筋に直接投与し、その細胞が損傷した筋肉に生着することで筋肉を強化するためのものです。その結果として、便失禁の回数を減らすことを目的とした再生医療等製品です。

次に、2つ目の開発品についてです。スライドの上から2つ目に記載されている「ICES13」は腹圧性尿失禁に対応する再生医療等製品であり、こちらは女性のみを対象としています。「ICES13」については現在フェーズⅡb試験を完了しており、「ICEF15」について推進中の国際共同試験と同様に、日・米・欧にわたるフェーズⅢ臨床試験の開始準備を進めている状況です。

次に、3つ目の開発品である「ICEF16」についてです。こちらも便失禁を対象とした開発品ですが、スライドの「ターゲット疾患」の項にもあるように、切迫性便失禁ではなく漏出性便失禁を対象としています。対象となる筋肉の種類も「ICEF15」とは異なり、外肛門括約筋ではなく、その内側に存在する内肛門括約筋が対象です。この筋肉は平滑筋であり、内臓の筋肉と同様に自律的に動く筋肉です。

漏出性便失禁についてご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、こちらの疾患はそもそも便意がなく知らぬ間に漏れてしまうような状態を惹き起こします。「ICEF16」については、現在大動物試験を実施している最中であり、この試験が終了次第、今年中にFirst in Human(ヒト初回投与)臨床試験を開始する予定です。

スライドの一番下に記載されている項目についてです。まだ開発品名は決まっていませんが、当社は佐賀大学と共同で嚥下障害治療の基礎研究を進めています。

今後、これらすべての開発品について、「ICEF15」と同様に日米欧を含む主要国や地域で開発を進め、上市の準備を進めていきたいと考えています。

ジェイソン:「ICEF15」及び「ICEF16」の作用機序について補足します。「肛門括約筋は2層のリング構造になっており、外側のリングは自分の意思で動かせる筋肉、内側のリングは平滑筋であり、無意識に動く筋肉、つまり内臓と同じだ」とご説明しました。当社開発品の作用機序は投与した細胞の生着に基づくため、投与する細胞が投与先の筋肉と同じ種類の細胞である必要があります。したがって、「ICEF15」で使用する細胞と「ICEF16」で使用する細胞とではその種類が異なります。

コーリン:もう1点補足します。非常に口語的な例えになりますが、再生医療等製品や細胞治療製品といった表現はわかりにくいと感じる方が多いと思います。昨年、大きな話題となった『はたらく細胞』の実写版映画の中に、実は当社が治療を目指している種類の筋肉が登場しています。

外肛門括約筋は医学用語で、多核細胞を持つ筋線維からなる筋肉として分類されています。例えるなら映画『はたらく細胞』の中で一ノ瀬ワタルさんが演じたラガーマンのような存在であり、スクラムを組むことで、すべての細胞が協力し合い、漏れ出る便や尿を抑えようとするという役割を担っています。

一方、内肛門括約筋は平滑筋です。例えるなら1人で相撲を取るような性質があり、自律的に動く筋肉と表現されています。そのため映画の中では、お相撲さんとして擬人化されています。このような比喩を通じて理解を深めるために、『はたらく細胞』をご覧いただくのも一つの方法かと思います。

当社は、患者さま自身の細胞をこれらの筋肉層に投与し、それぞれを強化する製品を開発しています。

ジェイソン:また、失禁の領域の市場規模についてですが、日本における失禁の患者数は、漏出性および切迫性の両方を含めて約500万人とされています。こちらは日本大腸肛門病学会の調査によるデータです。ただし、当社が対象としているのはその患者さまのすべてではなく、主に重症の患者さまです。「ICEF15」で対象としている患者数は当社推定で約12万人となります。

コーリン:当社がこの製品を開発する中でよく聞かれる質問の1つとして、「失禁は、おむつで対応することができるんじゃないの?」というものがあります。しかし、当社の「ICEF15」のフェーズⅡb試験に参加された患者さまの中には、1週間に10回以上、場合によっては60回以上失禁を経験される方もおられました。「ICEF15」はこのような患者さまに治療を施すことを目指しています。つまり、おむつでは対処しきれない患者さまを対象にしているとお考えください。

ジェイソン:さらに市場規模が大きい分野として挙げられるのが、腹圧性尿失禁です。日本だけでも推定患者数(女性のみ)が約1,500万人もいる計算になるということです。当社はその一部を対象に治療を行いますが、それでも市場は非常に大きいとご理解いただけるかと思います。

ICEF15開発の進捗

コーリン:当社のリード開発品である「ICEF15」の開発進捗について、もう少し詳しくご説明します。現在進行中の国際共同第Ⅲ相試験は、製造販売承認申請を行う直前の臨床開発段階です。この試験が完了した後に製造販売承認申請を行う計画です。

この治験は、「国際共同」という名称のとおり、いくつかの国および地域が共に参加して実施されている臨床試験です。合計で290例の患者さまを組み入れる必要がありますが、今年の5月12日現在で組み入れ済みの患者さまの数は236例です。内訳として、日本が40例、オーストリアが42例、スペインが41例となっております。その他の国々でも113例を組み入れています。

さらに、現在スクリーニング中の患者さまが11例おり、今回のスクリーニングの成功確率を考慮すると、240例を超えることがすでに見込まれています。そのため、スライドでは残りの組み入れが54例となっていますが、実際はそれよりさらに少ない数字になるとご理解いただければと思います。

また、スライド上部の「国際共同第Ⅲ相臨床試験(“Fidelia” 試験)」の下にある3つの箇条書きに記載されているとおり、米国FDA(食品医薬品局)に対する治験開始申請の提出準備を進めています。当社としては、今回のIPOの目論見書にも記載されていたように、同じ第Ⅲ相試験に米国の施設も組み入れることを計画しています。そのためのIND(治験開始申請)の提出準備が進んでいる段階ですので、今後の進展にご期待ください。

米国を加えた後については、後ほどもう少し詳しくご説明しますが、今年中にLast Patient In(最終患者組入)、つまり290例目の組み入れを目指しています。現在、患者組み入れは想定よりもおおむね1週間から2週間ほど早いペースで進んでいます。併せてご期待いただければと思います。

ジェイソン:米国の重要性についてですが、米国は最大の規模を有する市場です。米国FDA(食品医薬品局)から治験の開始許可を得られた場合には、米国の患者組み入れを開始します。それにより、日本、欧州、米国の3地域で同一の臨床試験を進め、理論上は3つの地域で承認取得を目指すことが可能になります。米国の開発スケジュールを加速させる要因の1つでもあり、非常に重要な取り組みとなっています。

その他パイプライン開発の進捗

コーリン:臨床開発段階にすでに入っている、もしくはこれから入ろうとしているその他の開発品の進捗について、簡単にご紹介します。

もう1つの便失禁の開発品である「ICEF16」についてですが、こちらは漏出性便失禁をターゲットとする開発品です。現在、前臨床試験(大動物試験)を実施しており、今年中にフェーズⅠ/Ⅱ試験であるFirst in Human(ヒト初回投与)試験を実施する計画です。進捗は計画どおりです。

「ICES13」は腹圧性尿失禁をターゲットとする開発品です。現在フェーズⅢの臨床試験の準備を進めており、来年中に開始する計画です。

今後の「ICEF15」の開発スケジュール見通しについてご説明いたします。今回のフェーズⅢ試験は、製造販売承認申請を行う前に実施する最後の臨床試験となる見通しです。この試験に290例を組み入れ、すべての患者さまについて12ヶ月間の経過観察を行います。その後、治験データを最終化するというタイムラインです。

このデータ最終化には数ヶ月を要し、その後で製造販売承認申請を日米欧で実施する計画です。この申請は「モジュール」と呼ばれる形式で行い、その準備にも数ヶ月を要する見込みです。そして最終的に、日米欧で製造販売承認申請を実施する計画です。この審査期間には約12ヶ月を要すると想定しており、それらの期間をすべて合わせて計算するとおおよその上市時期の目途を付けることができます。このような流れで進めていることをご理解いただければと思います。

当社グループが取り組んでいるGlobal Aggregation Model

ジェイソン:現在開発中のパイプライン以外の取り組みについて、お話しします。当社には「グローバルアグリゲーションモデル」というもう1つの事業モデルがあります。こちらのモデルは、将来性はあるもののアンダーバリュー(本来の価値よりも低く評価)されているシーズを買収あるいはライセンスインし、当社の開発プラットフォーム上でグローバル展開を図り、早期に世界の患者さまに届けることを目指しています。

実は当社(イノバセル株式会社)の成り立ちは、こちらのモデルの第1弾とも呼べる取り組みによるものです。現在当社子会社となっているオーストリア企業をターンアラウンドさせた際にこのオーストリア企業の親会社として当社を設立したのですが、これはいわば「グローバルアグリゲーションモデル」のファーストイニシアティブとして位置付けることができます。今後もこのような取り組みを続けていきたいと考えています。

「グローバルアグリゲーションモデル」への取り組みでは、現在4つの技術の評価を開始しています。そのうち1つは初期段階で評価を行った結果、辞退することを決定しました。ただし、他の技術については引き続き評価を進めており、近い将来、1件から2件の買収やライセンスインが実現するのではないかと考えています。ぜひご期待ください。

コーリン:このように、当社は中長期的なポートフォリオ拡大もきちんと視野に入れて動いています。

多くの方が意識されていないかもしれませんが、日本発製品のグローバル市場における品目数占有率が徐々に下がっているという懸念を、業界内で時折耳にします。しかし、日本の大学や技術の開発力を振り返ると、1980年代から2000年代前半にかけて築かれた基盤がいまだに揺らいでいません。日本には優れた技術や製品、データが豊富に存在しており、ダイヤの原石のような存在といえるでしょう。このような素材を、日本をはじめ、世界各地から見つけ出し、ポートフォリオ拡大につなげていきたいと考えています。

ジェイソン:優れた技術を持ちながらも資金調達がうまくいかない、いわゆる「死の谷」を超えられない企業やシーズが意外と多い状況です。当社は、長年の研究開発活動で培った開発プラットフォームや、私たちがこれまで築いてきた業界内のネットワークを活用し、そのようなシーズを特定し、評価して優良なものを取り込む努力を進めていきます。

EIB(欧州投資銀行)ローン元利金完済のインパクト

もう1つの進捗についてお話しします。当社のオーストリア子会社は上場前(2022年)にEIB(欧州投資銀行)から1,500万ユーロのベンチャーデットを借り入れました。この元本と利息を、当社が上場で調達した資金を用いて返済しました。具体的には、元本1,500万ユーロと利息を合わせた約1,750万ユーロを返済しており、その結果、バランスシートが強化されました。

このベンチャーデットには仕組みとして、元本や利息に加え、将来収益額に応じたロイヤリティ支払いが含まれています。ロイヤリティの支払いは、将来売上高が計上されて初めて発生する条件付きのものです。

さて、当社はオーストリア子会社の決算をオーストリア会計基準で組んだ後でそれをIFRS(国際会計基準)ベースに変換し、親会社が組む連結決算に取り込んでいます。EIBローンに関する会計処理をIFRSベースに切り替える際にはIFRS9という規則が適用され、「ローン契約とロイヤリティの支払いを1つの取引とみなす」という考え方が採られます。そのため、将来の支払ロイヤリティを現在価値に割り戻した金額を負債として計上する必要があります。こちらの負債は、将来支払ロイヤリティの現在価値であるとご理解ください。

コーリン:重要なポイントは、ここで計上されている将来支払ロイヤルティ現在価値の数値は、必ずしも実際の現金支出額などと一致するものではない会計上の数値ということです。

ご参考:EIBローン・将来支払ロイヤリティの会計処理

ジェイソン:EIBローンおよび将来支払ロイヤリティの詳細については、こちらのスライドをご参照ください。

ご参考:EIBローン契約・ロイヤリティ契約・保証契約の概要

同様に、こちらのスライドもご参照ください。

2026年12月第1四半期P/Lサマリー

コーリン:2026年12月期第1四半期のP/Lサマリーについて、お話しします。このスライドは、要点を1枚にまとめています。当四半期における支出については、おおむね当社計画のレンジ内に収まっているとご理解いただければと思います。

2026年12月期第1四半期の実績では、事業費用が比較的多くなっています。これは当社が臨床開発費用が膨らむフェーズⅢ試験を実施している段階にあるため、当然の結果ともいえる内容です。研究開発費、すなわちR&D費用として、5億円以上を計上しています。その他の事業費用は約2億円となっています。こちらは会計処理上研究開発費として計上されていませんが、主に研究開発活動を支えるための費用または研究開発活動に隣接する活動のコストとしてご理解いただければと思います。

結果として営業損失は合計で7億円強、経常損失が9億5,200万円となっています。なお、上場関連の一時費用として、約7,000万円の営業外費用が計上されています。

開示済みの2026年12月期業績予想(スライドのb列)と比べて当四半期実績(スライドのa列)の数字を見ると、22パーセントから28パーセントの範囲で推移しています。おおむね当社の計画どおりにコスト投下が推移している状況です。

ジェイソン:当社の今期の業績予想において、10億円の事業収益を織り込んでいます。こちらは日本の製薬会社と共同で「ICEF15」の販売・マーケティング活動を行うための契約に伴って受領する一時金として計画しているものです。現在交渉中の事柄であるため、多少前後する可能性があることをご承知おきください。

「臨床開発の進捗状況が計画どおり進んでいる」と先ほどご説明しましたが、これに対して、業績予想数値に対する第1四半期の費用計上状況を確認すると、4分の1以下に抑えられています。このことから、コスト管理がしっかりと行われていると考えています。

2026年12月期に計画している主な進捗

最後に、2026年12月期に計画している主な進捗について簡単に説明します。

まず、主要開発品「ICEF15」についてです。現在国際共同第Ⅲ相臨床試験を推進しており、患者さまの組み入れが日々進んでいる状況です。次の大きなマイルストーンとしては、米国FDA(食品医薬品局)への治験開始申請の提出や米国における患者募集の開始を計画しています。

また、国際共同第Ⅲ相臨床試験への患者組み入れは今期中に完了させる予定であり、こちらの進捗についても随時ご報告します。さらに、並行して商業化準備も進めており、欧州と米国におけるパートナー企業候補と経済条件を含めた協議を進めているところです。近い将来、本契約を締結できると考えています。

日本においては製薬会社とのコプロモーション(共同販売促進方式)で販売する計画であり、複数の製薬会社と販売・マーケティング提携へ向けた協議を行っております。今年中に本契約を締結する計画で、今のところ計画どおりに協議を進めております。

「ICEF16」については、First in Human(ヒト初回投与)臨床試験、つまり患者さまへの投与を開始することが、順調に進めば今年度に可能となると考えています。ぜひご期待いただければと思います。

コーリン氏からのご挨拶

コーリン:私たちは、当社について、単なる研究開発を行うバイオベンチャーとしてではなく、グローバル市場において実際に製品を届けることを前提とした事業の構築を行っている会社としてご理解いただきたいと考えています。

その一環として、当社のリード開発品である「ICEF15」は現在国際共同治験の組み入れの終盤に差し掛かっており、商業化の準備も着々と進んでいることを今回のご説明を通じてお伝えできたのではないかと思っています。

「ICEF15」の開発は、臨床開発に加え、業界で言うところのCMC、もう少し口語的に言えば製造体制構築、規制当局対応、そして将来の商業化を見据えたフェーズに入っています。もちろんバイオ企業である以上、今後もさまざまな挑戦が続きますが、患者さまに治療を届けるための最終段階に着実に近づいている状況です。

引き続き、中長期的な観点から当社をサポートしていただければ幸いです。今後とも、どうぞよろしくお願いします。

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