決算ハイライト(P/L)

鎌田慶彦氏:みなさま、こんにちは。木徳神糧株式会社代表取締役社長執行役員の鎌田です。当社の決算説明会をご覧いただき、誠にありがとうございます。本日は、2024年12月期連結決算の状況、経営戦略と当期の取り組み、業績予想についてご説明します。

まずは連結決算の状況です。損益のハイライトとしては増収増益、利益は過去最高益を更新する結果となりました。詳細については後ほどご説明します。

売上高(セグメント別)

セグメント別の売上高です。主に増加したのは、スライド青色の米穀セグメントです。前年同期比5.2パーセント増の965億6,600万円となりました。これは、取引の中心となる令和5年産米の単価上昇によるものです。

コメの相対取引価格の推移

スライドのグラフは、農林水産省が発表したJAグループなどの集荷団体と、当社を含む米穀卸売業者との間における相対取引価格の推移です。これは、当社の仕入価格の指標となるものです。

スライド下部の3本の折れ線グラフは、それぞれ令和3年から5年産の玄米の60キロ当たりの全銘柄平均価格の推移です。令和3年産、令和4年産、令和5年産と上昇傾向にあり、米穀セグメントの増収要因となっています。

そして、赤い線の令和6年産が上に飛び出しており、今までとはまったく異なる価格水準でスタートした状況です。

販売数量(米穀事業)

当社の年間販売数量は、38万5,500トンから35万8,300トンへ減少しています。これは、スライド青色部分の外国産精米において、入札取引となるミニマム・アクセス米の減少が大きく影響しています。

みなさまもご承知のとおり、昨年から国内のお米の需給が大きく乱れ、当社としては仕入価格の高騰と調達難という厳しい環境にあります。その中で、スライド黄色部分の玄米販売の数量については、卸業者間売買が減ったことで減少しています。

精米販売については、おおむね前年並みを維持しています。

営業利益(セグメント別)

セグメント別の営業利益です。スライド青色部分の米穀事業については、需要の強まる中で価格転嫁を進めたことや、特売などの販促を抑えたことで増益となりました。

スライド黄色部分の鶏卵事業についても、前年の鳥インフルエンザによる供給不足から脱却する中、仕入先の複線化を進めて仕入条件を改定しました。そのほか、米穀事業や飼料事業と連携した取引拡大や業務効率化によるコスト削減が進んだことで、大幅な増益となりました。

資産、負債及び純資産の状況(1)

連結貸借対照表についてご説明します。まずは資産の部です。相対取引価格のグラフでも大きく上昇していた令和6年産米の取引が始まったことにより、たな卸資産額が単価見合いで増加したことに加え、売掛金も取引単価の上昇による影響で増加しました。固定資産は、桶川工場への設備投資により増加しています。

資産、負債及び純資産の状況(2)

負債及び純資産の部です。こちらも米穀価格の上昇を大きな要因として、仕入単価の上昇に応じて買掛金が増加しています。そして、調達に必要な資金が多くなっているため、短期借入金の増加等によって流動負債が約66億円増加しました。

決算ハイライト(B/S)

貸借対照表のハイライトです。総資産は、米穀の単価上昇の影響を大きく受け、前期比80億6,300万円増の401億6,900万円となりました。純資産は、前期比21億7,000万円増の155億6,000万円となっています。

自己資本比率は、前期比3.2ポイント減の37.3パーセントとなりましたが、1株当たり純資産は、前期比1,097.38円増の9,135.2円で着地しています。

決算ハイライト(C/F)

連結キャッシュ・フローの状況です。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に売上債権の増加や棚卸資産の増加などにより、9億2,900万円の支出となっています。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得により9億8,500万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加により28億6,100万円の収入となっています。

中期3ヵ年経営計画

経営戦略と中期3ヵ年計画、そして直近の活動と取り組みについてご説明します。

2023年にスタートした中期3ヵ年計画は、3年間を「事業規模・事業領域の拡大に向けた体制再構築の期間」と定義し、「コメビジネスの拡大」「コメ関連ビジネスの成長」「企業の成長の土台作り」という3つの方針に基づいて進めています。

今年が最終年度となりますが、数値目標については2024年におおむね達成しています。

当期の主要な取り組み

数値目標を前倒しで達成していることを踏まえて、中期3ヵ年計画の最終年度となる当期を「次の中期3ヵ年計画の準備期間」と位置付け、スライドに記載の取り組みを中心に進めていきます。

米穀事業の事業環境①

コメビジネスの拡大についてです。まずは、現在も話題となっている米の流通量の減少、価格の高騰という米穀事業の事業環境についてご説明します。

一昨年に収穫した令和5年産米は、スライド左側の枠のように、夏の記録的な猛暑による高温障害で収穫量が減少して品質も低下しました。これによって精米の歩留まり、つまり玄米を精米した時に白米が残る割合が減りました。

そして、インバウンド需要や、当時はお米に割安感があり需要も旺盛であったため、2024年6月末の民間在庫が過去最低水準となる中で、南海トラフ地震臨時情報の発令による備蓄需要から買い急ぎが発生しました。

こうした複数の要因で需給がひっ迫して流通量が著しく減少し、店頭からお米が一時的に消える「令和の米騒動」と言われる事態に発展しました。

米穀事業の事業環境②

昨年の秋に穫れた令和6年産のお米の環境は、農水省が発表した作況指数が101と平年並み、主食用米の生産量は679万トンと前年よりも18万トン多いとされたものの、検査数量や集荷数量は低下しています。

端境期のスポット価格高騰により令和6年産は高値での集荷競争が発生し、全農を初めとする集荷業者に物が集まらない状況が続きました。12月末で集荷業者に渡った数量が前年比で21万トン少ないことから、当社も原料の確保に苦戦しています。

調達難や仕入価格の上昇といった大きな課題を抱える中、安定的な仕入基盤を作っていくための施策や、外国産米の提案等が必要になります。

また、政府備蓄米の買い戻し条件付き売り渡し21万トンが予定される中で、まず第1弾として15万トンの放出が行われます。これで今以上の価格上昇は食い止められるのではないかと見ていますが、需給の先行きは依然不透明な状況と言えます。

当社では、事前契約数量に対して大幅な不足が発生しており、積極的に放出される備蓄米を活用していきたいと考えています。

米穀事業の取り組み①

米穀事業の主要な取り組みについてです。玄米を調達する仕入部門の取り組みとして、高温耐性や多収性を持つ品種の普及拡大を行います。令和6年産は9,000トンを超えましたが、令和7年産は1万5,000トンを目指します。

また、収穫後の切り株に生える二番穂を刈り取る「再生二期作」の栽培方法確立に向け、東京大学ならびに明治大学、JA北つくば、そして生産者と、産学連携で実証に取り組んでいます。令和6年産は2ヘクタール、令和7年産は4ヘクタールに拡大する予定です。

このような取り組みは、産地と生産者にとっては省力化と効率向上、手取り収入の向上というメリットがありますし、当社にとっては安定的な仕入基盤強化につながります。今まで築いてきた各産地とのつながりをもとに、今後さらなる拡大を目指していきます。

米穀事業の取り組み②

米穀事業の販売面における取り組みとして、UMBP方式の無洗米NB商品のリブランディングが挙げられます。

こちらは「e-come(イーコメ)」と命名した商品で、スライドに記載の特徴を持っています。こうした特徴のある商品を活用し、木徳神糧の認知度向上を図っていきます。

米穀事業の取り組み③

UMBP方式の無洗米についてです。UMBPとは、ウルトラマイクロバブルを使用して、ぬかをやさしくきれいに取り除く無洗米加工の方式です。今後は、当社の無洗米製造におけるUMBP方式の比率を75パーセント以上にしていく計画です。

海外事業のビジネス

米穀セグメントには海外事業も含んでいます。海外事業に関するビジネスを大きく区分すると、日本産米の輸出、各国における現地法人による販売、当社を経由した三国間貿易、外国産米の輸入および日本での販売などとなります。

海外での新たな取り組み

2024年には国外で初めて、ベトナムの連結子会社アンジメックス・キトク社にUMBP設備を導入しました。海外展開の軸となるアンジメックス・キトク社から、高品質な無洗米商品を新たなマーケットに投入していきます。

木徳神糧グループの海外事業の展開

スライドの世界地図には、グループ全体の海外事業のビジネスとそれぞれのボリュームを表しています。現在の数量規模は、日本米の輸出、各国での販売、日本国内での販売を合わせて年間3万2,000トンほどになりますが、次の中期3ヵ年計画において5万トン台に引き上げることを目指しています。

飼料事業

コメ関連ビジネスの成長についてです。飼料事業は持続的な成長を目指し、仕入れ先の拡大と販売エリアの拡大・効率化を着実に進めていきます。また、循環型ビジネスの推進として、米穀事業や鶏卵事業と連携し、米ぬかや飼料用米、鶏糞肥料といった当社グループに関わりの深い資源を活用したビジネスにも力を入れていきます。

副生水の資源化への取り組み

副生水の資源化への取り組みについてです。副生水とは、UMBP方式の無洗米加工において発生するとぎ汁のことです。現在は副生水の有効活用に向け、肥料化や飼料化、燃料原料化などのさまざまな取り組みを進めています。

必ず発生する副産物ですので、できる限り有効活用し、付加価値をつけたかたちで販売や資源化を行っていきたいと考えています。肥料化については、岩手県花巻市で副生水を用いた稲作向け農業用肥料原料のトライアル製造を始めている状況です。

重要性が高まっている国産肥料原料としての活用については、当社と取引のある農協や生産法人との関係を活かし、広域での取り組みへ展開していきたいと考えています。

商品開発の取り組み

これまでの商品開発の取り組みについて、スライドには近年開発・発売した商品の一覧を掲載しています。

ごはんとして食べるだけではなく、消費者のみなさまへお米のさまざまな価値や魅力を伝え、健康で楽しいライフスタイルをサポートしていきたいと考えています。

事業領域の拡大

事業領域の拡大についてです。国内の米穀市場が縮小傾向にある中でも、メインビジネスである米穀事業と関連する各事業との連携によって生まれるビジネスには、伸びしろがあると考えています。

事業間およびグループ各社との連携強化を通じて新たな事業領域に拡大していくことで、米穀事業以外の比率を高め、事業ポートフォリオの最適化を図っていきます。

人的資本経営によるグループ全体の成長①

企業の成長の土台作りについてご説明します。コメビジネスの拡大およびコメ関連ビジネスの成長には、人的資本経営を重視し、企業と従業員がともに成長していくことが必要不可欠だと考えています。

具体的には、公平感を重視したベースアップや、定期昇給を合わせて年間4パーセント以上の賃上げを考えています。また、職務階級に関する定義の明確化を通じて、多様な人材の育成と働き方への対応を進めていきます。

2024年には、譲渡制限付株式制度を導入しました。従業員にも、株主としての目線や企業の業績に関する当事者意識が醸成されることを期待しています。

人的資本経営によるグループ全体の成長②

2024年に実施したさまざまな研修の様子です。国内から海外、そして若手からベテランまで、木徳神糧グループ全体でさまざまな研修に力を入れて刺激し合い、成長していくことが大切だと思っています。

今後は研修費用を増額し、さらなる内容の充実に力を入れていきます。

地域社会との共生と食を通じた社会貢献活動①

当社の社会貢献活動についてご説明します。2024年9月、「令和の米騒動」の最中に窮状を訴えるこども食堂への新米緊急支援を行いました。全国400ヶ所のこども食堂に25キログラムずつ新米を提供し、当社ならではの存在価値を発揮できた活動だと考えています。

地域社会との共生と食を通じた社会貢献活動②

2024年末にかけて、当社の中四国支店がある岡山県で寄付型キャンペーンを実施しました。こちらは、お客さまの購入数量に応じて当社が寄付のお米を準備するという企画です。

1万袋のお米を販売した結果、消費者のみなさまから集まった善意が5トンのお米となって、岡山県内28ヶ所のこども食堂に岡山県産のお米を寄付することができました。今後も、さまざまな継続的支援を実施していきます。

資本コストや株価を意識した経営の実現へ

「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取り組み」として、スライドには当社の認識と今後の取り組みについてまとめています。

スライド左上のグラフは、黄色の線が当社のPBR、グレーの棒グラフが株価を示しています。直近の株価は上昇傾向にありますが、PBRは依然として1倍を下回っています。右上に示したROEは、メインとなる米穀事業を取り巻く環境の変動によって、過去大きく変動してきました。

PBRの改善は一朝一夕にできるものではありませんが、重要な課題だと認識しています。今後の改善に向けた取り組みは、スライドに記載のとおりです。これらの施策を通じて、ROEの安定化とPBRの改善を着実に進めていきます。

2025年12月期連結業績予想

2025年12月期の連結業績予想についてです。売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも前年同期を上回る計画としており、今期も増収増益の達成に向けて取り組んでいきます。

以上でご説明を終わります。数値目標を達成するため、今お話しした計画や取り組みを着実に実行し、グループ一丸となって尽力していきます。今後とも、当社に対してご支援賜りますようお願い申し上げます。ありがとうございました。