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石川祐介氏(以下、石川):株式会社シンカの取締役CFOを務める石川です。

当社は今年3月に上場したばかりであり、当社や当社商品「カイクラ」の知名度はまだ低いと思っています。これらの詳細は後ほどご説明しますが、個人投資家のみなさまに当社および商品のことを知ってもらいたいということを目的として、本日こちらに参加しました。

本日はスライドに記載のとおり、会社概要、「カイクラ」のサービス概要、業績概要、そして成長戦略の順番でお話しします。

なお、当社は12月決算のため、今年3月の業績については、2023年12月の実績と2024年6月までの中間期の決算をあわせてお話しします。それにより、当社はどのような収益構造になっているかなどをご理解いただければと思っています。

会社概要

石川:こちらが会社概要です。株式会社シンカは、代表取締役社長の江尻高宏が2014年に設立し、創業以来社長を務めています。社内取締役は私のほか、CTOとして笹田直紀がいます。それ以外の陣容はスライドに記載のとおりです。

本社の所在地は東京都千代田区神田錦町で、東京メトロの竹橋駅や神保町駅、JR各線の御茶ノ水駅のあるエリアにオフィスを構えています。それ以外には、大阪支社、京都開発センター、福岡開発センターを置いています。

設立が2014年、上場は2024年3月と上場からまだ半年も経っていない状況です。従業員数は59名となり、今年ようやく東証グロースに上場することができました。

経営理念

石川:当社の経営理念は「ITで 世界をもっと おもしろく」です。ITを使って、いろいろな人や企業に「よりおもしろい世界」を体現してもらいたいというミッションを掲げて取り組んでいます。社長の江尻のみならず、役職員全員がこれをなんとか体現したいと考え、事業活動を営んでいます。

カイクラへの思い

石川:そのような中で提供している商品の「カイクラ」についてご説明します。これは江尻の体験談になりますが、江尻は日本総合研究所と船井総合研究所の2社を経験した後、当社を立ち上げています。

1社目の日本総合研究所時代には、コールセンターのシステム、いわゆるCTI(Computer Telephony Integration)を作っていました。そして、コールセンターに対してCTIを卸していた時に、その業務効率化の効果の高さに驚きました。

価格にして数千万円から数億円ぐらいのものを納めたと聞いていますが、「1年で投資した分を回収できた」とお客さまから言われ、感謝状も届いたらしく、江尻はそれに感動し「CTIってすごいんだな」という実感を持ったようです。

その後江尻は、船井総合研究所に転職し経営コンサルタントとして全国を飛び回るのですが、そこで中小企業の営業現場を実際に見て、衝撃を受けたと言っています。FAXでやり取りを行ったり、電話で発注したり、社長同士で「あの物品を、ちょっと来週までに100個調達してよ」という取引が行われたりしていたためです。

社長同士であればまだしも、社長がいなければそもそもの取引が成り立たなかったり、誰が何を言ったかわからなかったりと非効率なところも多く、これではトラブルもなくならないと感じていました。

そうした非効率な現場を見る中で、電話のやり取りについては、1社目に経験したCTIをうまく導入できれば解決できるのではないかと思い立ったようです。

コールセンターのシステムであるCTIは、例えばオペレーターとお客さまの会話をマネージャーも裏で聞いて話せる三者通話機能や、「順番にお繋ぎしますのでしばらくお待ちください」というような待ち呼の機能などを有しております。しかし、これらは一般のオフィスでは不要な機能であるため、一般のオフィスで利用することを想定すると省くことができます。

このように、電話でお客さまと良好なコミュニケーションをするためにCTIが使えるのではないかと思い立った江尻は、船井総合研究所を辞めて、三者通話機能や待ち呼の機能などは一切省いた「カイクラ」を開発しました。

このように、当初「カイクラ」は、固定電話におけるトラブルを解決するために作られたものでありました。

しかしながら最近は、スライド下段に記載のとおり、コミュニケーションツールが多様化しています。昔はコミュニケーションツールといえばFAXや固定電話のみでしたが、今は携帯電話、メール、ショートメッセージ、「LINE」のようなSNSやビデオ通話など、さまざまな手段が存在しています。

もともとCTIをもとに開発された「カイクラ」では、そのような各種コミュニケーションツールを統合できないかとサービスを進化させ、現在展開しています。

カイクラとは 〜会話をクラウドでおもしろく!~

石川:当社が提供している「カイクラ」のサービス概要をご説明します。「カイクラ」は、「会話をクラウドでおもしろく!」という意味を込めて名づけました。

先ほどより「顧客対応を上質にするコミュニケーションDX」とお伝えしているとおり、固定電話、携帯電話、SMS、メール、ビデオ通話、「LINE」などのコミュニケーションチャネルを一元管理することが可能です。

今はいろいろな種類の企業が存在していますが、顧客とのコミュニケーションに関しては、大きく2つの課題があると思っています。

1つ目は、お客さまがどのような方かがわからないということです。あるお客さまと複数の担当者がやり取りしているような場合を想定してみてください。その際、ある担当者でなければ(他の担当者が)わからないようなことがあるという状況があるかと思います。またお客さまの情報が適時に共有されないと、電話がかかってきた時や何らかのやり取りが発生した時に、すぐ情報を把握することができません。例えば、お客さまの属性などがわからないという場合があります。

2つ目は、電話や「LINE」、メールなどのいろいろなチャネルで連絡している場合、営業担当がそれぞれのお客さまとどのようなやり取りを行っているかを、会社として把握できていないということです。

つまり、顧客の顔がわからないことと、コミュニケーションのチャネルが複雑化し過ぎて 結局会社として何をしているのかわからないという、2つの大きな問題があると思っています。

特に2つ目の課題については、今はコミュニケーションチャネルごとのやり取りが分散されてゴミのようになっています。しかし、裏を返せば、それをまとめることによって資産化できると思っています。

そこで「カイクラ」では、さまざまなコミュニケーションチャネルを一元管理するということを行っています。言葉のみではなかなかイメージしづらいと思いますので、「カイクラ」の画面をご覧いただきたいと思います。

こちらはデモ環境です。今回のデモ画面は自動車ディーラーを想定して作っています。オフィスに電話がかかってくると、着信と同時に、PC画面の右端あたりに小さくポップアップが表示されます。それをクリックすると、このような感じで画面が出ます。

(「カイクラ ホーム」画面が表示される)

佐藤さんという方から電話がありましたが、生年月日や郵便番号、住所などのお客さまに関する情報に加え、社内の誰が担当しているか、車を購入したという前提であればどのような車をいつ購入したか、どのようなパッケージで購入しており、車検はいつか、などといったお客さまの属性などもわかるようになっています。

これら全部を「カイクラ」にその都度入れるのではなく、例えば自動車ディーラーであれば、顧客管理ツールを別で持っているため、それと繋ぐことで「カイクラ」画面に情報を出すことができます。

つまり、顧客管理ツールとシステム連携することで「カイクラ」に同じ情報を入れなくとも、個々の情報を自由に出すことができます。また、どのような情報を出すかも、お客さまのほうで自由に決められます。

これにより、先ほど1つ目の課題とした「お客さまがどのような属性で、過去にどのようなやり取りを交わし、どのような方なのか」がわかった上で、やり取りすることができます。

そして、2つ目の課題である「お客さまとどのようなやり取りを行ったか」については、「電話ではこのようなやり取りがあった」「SMSではこのようなやり取りを行った」などを、すべてお客さまに紐づけて把握できるようになっています。

(「カイクラ 会話履歴」画面へ遷移)

実際に、どのようなかたちで行われるのかを少しお見せしたいと思います。電話の場合は、音声が非常に重要になるため、その音声をどのように取っているかを示します。

(録音再生ボタンを押下。通話音声流れる)

小暮:田邉さま、折り返しありがとうございます。シンカの小暮が承ります。

田邉:どうも、田邉です。

小暮:お世話になっております。

このようなやり取りを自動で録音し、クラウド上に保存することができます。これは、固定電話でも携帯電話でも同様です。

ただ、これだけでは「ただ録音しているだけだ」となるかと思います。実は、この会話の内容をテキスト化することができます。先ほどの音声を聞きながら、こちらをご覧いただくとイメージが湧くと思います。それでは、先ほどと同じ電話をお聞きください。

(テキストのみ表示ボタンを押下。通話音声のテキストデータが表示される)

このように電話を録音し、AIによって自動でテキスト化します。

少し難しかった点は、話者を分離するところでした。電話では必ず2人の話者がいて、かつさまざまなノイズが入りますが、「LINE」の画面のようにユーザーフレンドリーなかたちで話者分離して「誰がどのような話をしているか」を示すようにしています。

(テキスト+要約ボタンを押下。通録テキストが表示される)

また、音と実際のやり取りを文字にするだけでは実際にどのような内容を話したかが即座にわからないため、要約機能も付けています。先ほどご覧いただいたテキストが自動で要約され、「このようなことを話している」とわかるようになっています。

さらに、電話は感情が乗ることがあるため、「どのようなトーンで話していたのか」も知りたい時があるかと思います。そこで「感情ラベリング」という機能を付けています。

(テキスト+感情ラベリングボタンを押下。通録テキストが表示される)

先ほどの音声では、話者Aは期待感を持って話しています。一方で、話者Bは信頼感を持って答えています。このように、当社では固定電話を「カイクラ」の中で分析し、取り込んで一元管理することができます。

(詳細検索の発着信方法と期間選択を設定し、検索ボタンを押下。検索結果が表示される)

それ以外にも、「カイクラ」はSMSや「LINE」などのさまざまな媒体の会話を取り扱っており、期間で絞り込むこともできます。例えば、6月から今日までのやり取りを絞り込むと、ご覧のようなかたちで出てきます。この画面から、この方とどのようなやり取りをしたかを見ることができます。

(吹き出しアイコンを押下。SMS本文確認が表示される)

例では「『カイクラ』のビデオ通話に入ってください」というリンクを添付していますが、キャンペーンなどの情報を送ることもできます。これにより「どのようなキャンペーンをお客さまに対して送ったか」も一目瞭然です。

(「LINE」アイコンを押下。「LINE」履歴が表示される)

「LINE」の会話も取り込むことができます。お客さまと営業担当者が「LINE」でつながることがあると思いますが、それも「カイクラ」に取り込むことが可能です。

このように「カイクラ」では、お客さまに対して電話でどのようなやり取りを行ったか、「LINE」でどのようなやり取りを交わしたか、SMSでどのようなことを連絡しているかを把握できます。加えて、本日はご説明を省きますが「Gmail」や「Outlook」などのようなメールなども一元管理して取り込むことが可能です。

それでは、「カイクラ」のデモ画面を閉じて資料のご説明に戻ります。

カイクラのイメージ図

石川:スライドには「カイクラ」のイメージ図を示しています。いろいろなコミュニケーションチャネルで発生する「カイクラ」ユーザーとのやり取りを、自動で「カイクラ」の中に取り込み、お客さまごとに整理して一元管理することができます。

電話やメールが来た時には、設定しておいた内容が画面にポップアップされて、それをクリックすれば先ほどの「カイクラ」の画面に遷移できます。ポップアップせずとも、先ほどご覧いただいたとおり、いつでもどこでも参照可能です。

そのため、インターネットさえつながっていれば、「カイクラ」の画面を呼び出すことで、外部の場にいてもお客さまとのコミュニケーション履歴がすぐにわかります。

カイクラの3つの導入効果

石川:「カイクラ」の3つの導入効果についてご説明します。1つ目は顧客対応の圧倒的な効率化です。電話対応における業務が大幅に削減されることから、コストの低下を実現できます。

2つ目はCS(顧客満足度)向上です。電話をかけるお客さま側が「自分のことをちゃんとわかって話をしてくれている」と感じられるため、安心感を持ってお話しいただけます。

3つ目はES(従業員満足度)向上です。電話対応への不安が低減されることで、従業員が安心して仕事に取り組めるようになります。

これらの大きな導入効果以外にも、スライドには記載していないさまざまな導入効果があります。

例えば、当社を自動車ディーラーだと想定した場合、お客さまが車を購入されてから半年後のオイル交換キャンペーンや車検の案内をSNSで出す時、「カイクラ」の設定によってこれを自動で送ることができます。

とても優秀な営業はお客さまと継続的にコミュニケーションを取りますが、それを「カイクラ」のシステムでサポートできるため、ES向上やCS向上のみならず、売上につながる使い方も可能です。

導入しやすい料金体系

石川:料金体系についてご説明します。「カイクラ」導入時の費用は、1拠点あたりの初期費用15万円に設置費用等を含め、トータル18万1,000円となっています。月額費用は3万円で、オプションとして通話録音もしくはテキスト化を入れると値段が変わります。

ここでお伝えしたいのは、拠点単位で課金しているということです。通常、SaaSの場合はアカウント単位あるいは人ごとの課金になると思いますが、「カイクラ」は20人いるオフィスが100人になっても、月額費用は変わらず3万円や5万円で使えます。

なぜこのような料金体系にしているかをご説明します。アカウント単位で課金すると、特に固定電話の場合は「うちのオフィスは20人いますが、よく電話に出る人は4人だから4アカウントだけ契約すればよい」となるケースが多いと考えられます。

しかし、その4人が会議などで電話に出られない時は、5人目の方が電話に出ることになりますが、5人目や6人目の方は普段電話に出ていないため、コミュニケーションで苦労することになると思います。そのような時にこそ、その5人目や6人目の方が安心してコミュニケーションできるようにしたいと考え、このような料金体系としました。このように拠点ごとに課金したほうが「カイクラ」の良さがわかるのではないかということで、あえてこのような課金体系にしています。

スライド下部には従量課金オプションを示しています。SNS送信は送信数、ビデオ通話は通話時間にそれぞれ応じた料金になります。

導入しやすい料金体系

石川:携帯電話の料金体系です。こちらは拠点ごとではなく、スマートフォン台数に応じた料金体系になっています。

カイクラのメインターゲット

石川:現在の「カイクラ」のメインターゲットは自動車関連業界や不動産業界です。しかし実際は、スライド左側の円グラフにあるとおり自動車や不動産だけではなく医療・介護、士業、冠婚葬祭など、さまざまな業界で使われています。

100を超える業種業態で使われていますが、今は特に自動車ディーラーや不動産の賃貸管理業者にお使いいただいています。導入企業数は、2022年12月末の3,753拠点から、2024年6月末の5,205拠点まで伸ばすことができています。

kenmo氏(以下、kenmo):スライド左側に御社の製品を導入しているターゲット業界の図がありますが、どのような会社からのニーズが多いのか教えてください。

石川:「カイクラ」ユーザーは、BtoBよりも、さまざまな属性のエンドユーザーとコミュニケーションが発生するBtoCの会社が多いです。その中でも特に、ネットショッピングとは異なり、「商材が高単価で販売頻度が低い」という条件を備えている場合に「カイクラ」がマッチすると思っています。

先ほど挙げた不動産や自動車業界は、高単価で購買頻度が低いです。数年から10年に1回しか買わないものを扱う業種では、「お客さまと離れずにずっとつながっていたい」もしくは「数年ぶりにお客さまから連絡が来た時に粗相をしないよう、顧客情報をきちんと把握した上で対応したい」というニーズがあります。

お客さまから連絡が来た時に「カイクラ」をご利用いただくと、そのお客さまと過去にどのようなやり取りを行っていたかがわかります。BtoCで、特に高単価かつ購買頻度が低い場合にマッチするため、今はこのような会社に使っていただいています。

kenmo:「カイクラ」の競合他社、あるいは類似サービス等があれば教えてください。

石川:大きく分けて2つの視点があります。1つ目はコンセプトです。「さまざまなコミュニケーションを1つにまとめる」という発想のサービスはいくつかあると思っています。

例えば、最近では会社名がkubellに変わった「Chatwork」や「Slack」などがあります。そのようなところは、メッセージも電話もビデオ通話もできるようなかたちになっています。

当社がそうした他社と大きく違うのは、基本的にお客さまの環境を変えずに、それを継続してお使いいただきながら「カイクラ」を導入することで、バックで情報を取るような設計思想になっていることです。固定電話や携帯の電話番号、「Gmail」「LINE」などもすべてそのままで大丈夫です。

お客さまには、固定電話の電話番号が変わらないことが1番大きなポイントとして喜ばれています。自動車ディーラーなどでは、電話番号が変わることは社名が変わるくらい嫌がられます。これは例えば、あるお客さまが3年ぶりに自動車ディーラーに電話をかけた時に「この電話番号は現在、使われておりません」と言われると「せっかくここで買ったのに連絡が取れないではないか」となって機嫌を損ねるためです。

そのため当社のサービスは、電話番号を変えないだけではなく、お客さまのコミュニケーション手段をそのままに、その裏から情報を取るところが大きな違いです。

2つ目は単機能です。録音のみ、ポップアップのみ、SNSを送るのみなど、単機能の類似サービスはありますが、それらをまとめたサービスは今のところ他にないと考えています。

kenmo:競合他社のサービスを導入すると電話番号が変わってしまうけれども、御社のシステムなら電話番号も変わらずそのままお使いいただけるということですが、それはどのような仕組みで行われているのでしょうか? 可能な範囲で教えていただけるとありがたいです。

石川:通常、当社のようなサービスを提供する場合は、ビジネスフォンを制御するために一番大事な装置であるPBXをクラウド化します。PBXをクラウド化することでポップアップなどが可能になりますが、それにより電話番号が変わってしまいます。

お客さまがリアルなPBXを持っている場合はそれをそのままにし、その横に「カイクラ」のアダプターをつけることでこの電話番号が変わるという課題を解決しています。

実績概要

石川:業績概要についてご説明します。まずは実績概要です。当社は12月決算のため、2023年の決算と2024年6月までの決算の2つを主軸にお話しします。

実績はスライドのとおりで、2023年12月期から黒字基調に転換しました。この第2四半期も黒字基調は継続しています。

アクティブユーザー拠点数と解約率

石川:なぜ「黒字基調」としているかについてご説明します。スライド右側のグラフのとおり、前期の売上高約10億円および今期第2四半期累計の売上高5億9,300万円のうち、8割超がストック売上になっています。

こちらの売上高は、先ほどご説明した月額料金と従量課金によるものです。SNSは継続的にご利用いただくケースが多くみだりに下がることはありませんので、当社はこれをストック売上だと捉えています。

黒字を達成した2023年12月期は売上高10億4,000万円のうち8億8,600万円が、今期は6ヶ月間の売上高5億9,300万円のうち4億8,000万円がストック売上ということで、売上が減りづらい構造になっていると考えています。

それを支えるのが、スライド左側に示したお客さまの数です。青色の線がアクティブユーザー拠点数、赤色の線が解約率を示しています。アクティブユーザー拠点数は増加基調が継続しており、2022年の3,753拠点から2023年は4,508拠点となり、1年間で750拠点増やしました。今年は6ヶ月間で約700拠点増やしているため、お客さまを増やす角度が上がっています。

一方で、解約率は大変低く推移しています。SaaS企業は1パーセントから2パーセントの平均月次解約率を目指しており、5パーセントを超えると事業にならないと言われています。その中で、当社は0.3パーセントから0.4パーセントとかなり低い解約率を実現しています。

このように、効率よくかつ確実にストック売上を増やすことができていることから、前期より黒字基調に転換したと考えています。

kenmo:解約率が徐々に低くなってきていますが、これはカスタマーサポートの強化など、何か社内での施策が奏功したのでしょうか?

石川:カスタマーサクセスの施策、開発の施策、営業施策の3つにより解約率を低くしています。

1つ目はカスタマーサクセスの施策です。「カイクラ」を導入してポップアップするだけでは、お客さまは「カイクラ」を使って何をしたらよいかがわかりません。そのため「カイクラ」の導入後は手厚くオンボーディングし、「どのように使ったらよいか」「SNSはどのようなロジックで自動送信設定を組めばお客さまに刺さるか」などの「カイクラ」の有効活用について、丁寧にサポートしています。

2つ目は開発の施策です。大変小さなバージョンアップも含めて、当社は月次で必ず「カイクラ」をバージョンアップし少しずつ良くしています。その際には、お客さまからの声を聴くようにし、「これは確かに『カイクラ』に入れたほうがよい」という意見は開発リストに追加して実現化します。このような「お客さまの声を聴きながらの開発フロー」も奏功したと考えています。

3つ目は営業施策です。かつての「カイクラ」は、居酒屋などのいわゆる「個店」に売っていました。当然ながら、そのようなお店でもさまざまなコミュニケーションが発生するため大変喜ばれています。

しかし、個店には当社がコントロールできない解約理由が1つあります。それは「閉店」です。そのようなお店に「カイクラ」を売って閉店で解約となるのはもったいないため、今では意図的に、閉店による解約が比較的低いと考えられる自動車ディーラーや不動産などの業種に営業をシフトしています。

これら3つの施策により解約率を低く保っています。

ARPA

石川:1拠点あたりの平均ストック売上を示すARPAは基本的に上がり続けています。

2024年12月期第1四半期には、大型案件の獲得に伴いボリュームディスカウントを実施しました。こちらは「カイクラ」ユーザーであるA社に、B社とC社がくっついてX社という大きな会社になるような事態が複数発生したためです。

それにより、「カイクラ」を使っていなかったB社とC社において「A社が導入していて『良い』と言っているし、これから同じ会社になるから『カイクラ』を導入しよう」ということが起こりました。しかし、そうすると拠点数が大変多いため「そこに対してボリュームディスカウントを利かせてほしい」という要望が複数社で発生し、一時的にARPAが下がっています。

ただし、こちらのディスカウントは2024年1月で適用完了していますので、いったん下がりましたが今後は上げていきます。第1四半期が終わり、実際に第2四半期でARPAを上げることができていますので、今後も追加オプションなどでARPAを上げていきたいと思います。

決算概要 – 四半期累計期間

石川:四半期累計の決算概要です。2024年12月期第2四半期の売上高は、アクティブユーザー拠点数が増えたことにより、過去最高を計上しました。

営業利益もそれに伴って伸びるはずですが、事務所移転に係る一過性の費用が発生したため、営業利益自体は前年同期比で減少しました。ただし、こうした一過性の費用を除けば営業利益は増加しています。

経常利益も同様で、事務所移転による営業利益の減少に加えて上場に係る費用も発生し、減少しました。ただし、こうした一過性の費用を除いた場合は、基本的に経常利益もプラスとなっています。

第3四半期以降のトピックス

石川:第3四半期以降のトピックスとして「カイクラ」の販売機会拡大のための取り組みをご紹介します。

今年7月に大塚商会と、8月にSB C&Sと販売代理店契約を締結しました。力のあるディストリビューターと組んで「カイクラ」をより販売することで拠点数をさらに増やすことが大きな狙いです。

また、今年7月にはダイハツ工業の基幹システム「Dios(ディオス)」と「カイクラ」のシステム連携も開始し、ダイハツのディーラーがより「カイクラ」を利用しやすくなりました。これも「カイクラ」の販売機会増加につなげていきたいと考えています。

これらは第3四半期以降のトピックスですので、今後の売上に寄与させるために会社一丸となってがんばっているところです。

成長戦略

石川:成長戦略についてお話しします。当社の成長戦略は非常にシンプルで、アクティブユーザー拠点数の増加とARPA向上という2軸で考えています。

まずは製品を使っていただき、知ってもらわなければARPAだけを上げても難しいところがあると思っています。そのため、先にアクティブユーザー拠点数を増加させた後、単価を向上させる流れで考えています。

アクティブユーザー拠点数増加

石川:アクティブユーザー拠点数の増加については、大きく3つの階層に分けて考えています。メインターゲットである中規模企業を攻めるとともに、大企業と小規模企業は直販や販売パートナー以外のアプローチで攻めるかたちです。

アクティブユーザー拠点数増加 – メインターゲット

石川:メインターゲットである中規模企業の攻め方についてご説明します。自動車業界は現在の注力業界ですが、さらなる市場拡大が可能だと考えています。

正規カーディーラーへの導入シェアとして、会社シェア・店舗シェアをスライド右上の円グラフに示しています。現在、新車における日本の正規カーディーラーの約10パーセントが「カイクラ」を導入している状況です。

当然ながらメーカーやブランドによって状況はまちまちですが、おしなべてこのようなシェアになっています。ここをさらに9割までは広げられると思っていますので、より売上を拡大できるよう取り組んでいきます。

また、注力業界の横展開も考えています。2023年までは自動車業界をメインに取り組んでいましたが、2024年からは不動産業界も加えています。先日プレスリリースを出したとおり、現在はハウスコムでも全拠点で「カイクラ」をお使いいただいています。これをさらに広め、不動産業界で確たるシェアを取っていく狙いです。

2025年以降は、自動車・不動産に加えて医療や金融業界、自治体など、特に電話を中心とした困りごとのある業界へ販売を強化していきたいと思っています。

アクティブユーザー拠点数増加 – NTT グループ協業

石川:メインターゲットではない大規模企業の攻め方についてご説明します。当社はNTTグループと協業しながらアプローチをかけています。

特に上場前などは知名度もなかったため、当社だけで大きな会社に販売することは難しい状況でした。そこで、NTTグループがお持ちの「ひかりクラウドPBX」や「オフィスリンク」などとセットにし、NTTの営業力も使いながら「カイクラ」を販売しています。

アクティブユーザー拠点数増加 – OEM

石川:小規模企業への攻め方についてです。基本的に、このような企業へ「カイクラ」を直接販売することは想定していません。

しかし、「カイクラ」の機能の一部をOEM提供しており、OEM先からの販売によって部分的な使用を開拓していきます。当社はOEM先とのやり取りだけで済むため営業人員を割かずに進めることができます。

特にデンタル業界においては、歯科クリニックの予約管理システムを運営する会社と組むことで、当社のSMSを使って予約のリマインダーやキャンペーンの案内などを行っています。

2020年以降は美容やマッサージなどの業界でも使ってもらえないかと考え、OEM市場を拡大中です。こちらのOEMは、デンタル業界において現時点で1,000以上のクリニックに導入されていますので、かなりの利用人数になっていると考えています。

単価(ARPA)向上

石川:単価(ARPA)の向上については、大きく3つの方法を考えています。

1つ目はチャネルの追加です。「LINE」や「LINE WORKS」との連携により、新しいコミュニケーションチャネルを「カイクラ」で取り込めるようにすることで、価格向上を狙います。「LINE」との連携は今年4月に始めたばかりですが、新しいチャネルを常に取り入れて利便性をさらにアップし、「カイクラ」の単価を上げていきます。

2つ目は従量課金の使用量増加です。当社は「SMSをこのように使うと売上が上がり、お客さまが離反しない」というシナリオをいくつか持っていますので、効果的な使い方をお客さまにご説明して利用量を増やします。

「カイクラ」にはプリセット機能があり、任意のタイミングで自動的にSMSを送れます。そのような機能をお客さまに提案して従量課金の使用量を増やし、売上を伸ばすことを考えています。

3つ目は、スライドに薄い灰色で記載したコミュニケーション分析機能です。先の2つは現在取り組んでいることですが、こちらのコミュニケーション分析機能についても将来的に取り組んでいこうと思っています。

「カイクラ」では、お客さまの属性や顔など、いろいろなコミュニケーションチャネルを一元管理しています。このデータを使い、お客さまに「このようなタイミングでこのようなアプローチをすれば顧客が離反せず、来てくれるかもしれませんよ」という提案を出せるようにしたいと思っています。

現在の「カイクラ」には、電話だけでも約4億件を超える、お客さまとの実際のやり取りのデータがあります。

今は本当にいろいろなAIがあり、どの会社のAIもすばらしいものだと思いますが、当社はAIにどのようなデータを処理させるかということも極めて大事だと思っています。「カイクラ」の中に持っているリアルなコミュニケーションデータをAIでうまく処理することによって、こうしたコミュニケーション分析機能は実現可能だと考えています。このようなことを将来的に進めていき「カイクラ」をより利便性の高いものにすることで、売上を拡大したいと考えています。

中期計画

石川:最後に、中期計画のイメージについてご説明します。拠点数増加と単価向上により、売上高は30パーセントの成長を目指していきます。

営業利益率は15パーセントをいったん維持する計画です。前期の営業利益率は9.7パーセントで、今期の業績予想は12パーセントから13パーセント程度ですが、これを15パーセントで止め、残りの85パーセント分の売上高を事業に再投資することで「カイクラ」を成長させたいと思っています。

しばらくは売上を拡大し、企業価値を高めるかたちで経営していきたいと考えています。私からのご説明は以上です。ありがとうございました。

質疑応答:「カイクラ」アダプターの開発元と参入障壁について

質問者:「Chatwork」などでは電話番号を変える必要がある一方で、御社はクラウドPBXにアダプターをつけることで差別化しているとのお話でしたが、アダプターにおける参入障壁はないのでしょうか? また、開発はどこが行っているのでしょうか?

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