2024年12月期通期 連結業績見通し

山本孝昭氏(以下、山本):本日はご参加いただきありがとうございます。資料に沿って、我々の事業の概要と戦略等についてお話ししたいと思います。

18ページからご説明します。連結業績見通しということで、今回上期を終えたところで上方修正しました。当初は通期で48億円と見ていましたが、50億円を超えるラインで、前期比増減率14パーセント弱まで伸長すると考えています。

営業利益に関しても、7億6,200万円で、前年度比で約32パーセント増と予想しました。

主要KPI

これらの数字を支える主要KPIについてお話しします。スライドに6つの項目を示しています。ホリゾンタルSaaSが我々の主力のビジネスで、成長率が33.4パーセント、利益率は57.2パーセント、キャッシュ・フローも順調に伸びて前年同期比で77.3パーセントの伸びになっています。

売上比率の部分は、ストック比率が88.2パーセントで約9割まで伸びました。そのうち、クラウド比率が76.7パーセントまできています。ホリゾンタルSaaSの平均月額利用料も150万円を上回るかたちで推移しており、さらにNRRも約118パーセントという高い率で推移しています。

ホリゾンタルSaaS売上高

グラフはホリゾンタルSaaSの売上高を図にしたもので、大きな伸びを示しています。今後もこれが継続していくと期待をしています。

沿革

続いて、今年の位置づけを過去から振り返ってご説明します。   創業期から2007年までは、独立系のパッケージソフトウェアベンダーでした。2008年から「Shopらん」というバーティカルSaaSのサービスを始め、パッケージソフトウェアとともにクラウドサービスも展開するかたちで少し内容をアップデートしました。

2014年から17年には、クラウドサービスベンダーとしての幅を広げるとともに、パッケージソフトウェアのカスタマイズ開発およびシステム構築導入支援とサービスも広げていきました。

2018年から現在までで大きく事業を転換しました。ビジネスソフトウェアを提供するところでは外形的な形式は変わりませんが、その提供方法やビジネスモデル自体を大幅に変革し、IPOに至ったという状況です。

2024年は「剪定戦略」を推進しています。これまでの業歴が長いため、いろいろな技術的な負債や、お客さまとの取引上の古い契約が残っています。また、古いプロダクトをそのままご利用いただいているケースもあります。

さらなる成長の土台としてそれらを強固にするために、「剪定する」という年に位置づけており、順調に推移していると認識しています。

売上構成の変化と利益の推移

スライド中央のグラフに、2018年からのクラウド事業売上高比率の推移を示しています。新たな事業にシフトしたことでこのような高い成長率が示されており、今日においては完全にクラウド事業ベンダー、純粋なSaaSベンダーといえる状況になったと認識しています。

ビジョン:BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーを目指す

我々の事業をおさらいとしてご紹介します。「Big Donuts」と派手に記載していますが、これは我々のターゲットクライアントのシステムを、ドーナツをメタファーにして表しています。

ドーナツは真ん中がありません。真ん中が意味しているのは、ERPを始めとするミッションクリティカルエリアを指します。大企業の中枢を成すシステムで、SAP社あるいはオラクル社、またマイクロソフト社も提供しています。我々はこの部分を扱わず、それを取り囲む、実務エリアであるドーナツ型の部分のシステムを扱います。「Big」というのは、大企業を表しています。

そして我々は、「Big Donuts」市場のリーディングカンパニーになることを目指しています。ここがまさに、DXの核心エリアであり、戦略投資エリアであり、今拡大中のエリアです。

当社のターゲット顧客と市場:BD(Big Donuts)市場のリーディングカンパニーへ

「Big Donuts」をもう少し分解した図です。我々はホリゾンタルSaaS、主力製品をこのドーナツに全面的に適用するため、いろいろな業務を担います。ホリゾンタルのため、特定の業務に特化していないところが特徴であり、強みでもあります。

スライドの左側の図です。従業員1,000名以上の企業にターゲットを絞っています。主に4,000名以上あるいは数万名の企業です。現在、一企業体としては10万名が最大ユーザーであり、そのようなエンタープライズをターゲットにしています。

主力製品・成長ドライバー「SmartDB」の活用範囲

ドーナツについて、もう少し詳しくお話しします。スライドには主力製品である「SmartDB」の適用範囲を2つ記載しています。スライドの右側は非ミッションクリティカル領域で、ミスクワーク(種々の雑多な業務)のデジタル化も含めいろいろなことで使われています。我々が予想していなかった使い方をしている企業もあり、全面的にカバーできる実績と、それを裏付ける機能が揃ってきている状態です。

スライドの左側はミッションクリティカル周辺領域で、MCSAと記載しています。スライド中央のドーナツの図で、中央寄りのエリアをピンク色で示していますが、ここが戦略的なターゲットであり、お客さまに対してもユーザーに対しても「ここで使えますよ」と強くアピールしています。

MCSAというのは造語ですが、MCSはミッションクリティカルシステムの略で、ドーナツの中央部分です。その周りをエイド(支援)する、ERPの前受け、後受け処理のようなものであり、伝統的に大手SIerのドル箱エリアでした。

ドーナツの中でも非常に美味しい部分で、鉱山に例えると金の含有量が高いエリアであり、ここを注力すべきターゲットとしてマーケティングメッセージを打ち出しています。

実際にERPの前受け処理を実現したユーザーがすでに複数社出てきており、ここを扱いたいということで、パートナー企業との新たな商談も始まっています。

MCSAエリアは重要なデータを扱うシステムに必要な部分で、人間の身体に例えるならば心臓に直結した動脈、静脈のようなところです。これまではノーコードでできないエリアだったのが、「SmartDB」ではノーコードでできるようになりました。今後成長していく上で重要エリアとして位置づけています。

SmartDBの活用範囲(MCSA領域の例:ERPフロントシステム)

スライド右側のグレーのエリアは、財務会計を例にしています。財務会計のERPシステムで、SAP社やオラクル社などをイメージしています。複雑な債務計上、仮払金の管理、支払い管理など、事業運営していく上では不可欠な処理を担っています。

ただし、これらを実際にERPで処理するためには、処理に必要なデータを前受け処理として整理・仕分けするプロセスが必要です。発注業務、支払依頼、検収などの業務プロセスが存在します。

「SmartDB」はこのエリアの、発注業務のプロセス、支払依頼のワークフローのようなプロセスをカバーしますが、それだけではありません。これらのプロセスを通じて出てきたデータを格納し、ERPに流していく処理を担うことができます。

日本の大手企業は根本的な事業変革を迫られており、ERP等のミッションクリティカルシステムの大改造と大幅なアップデートを行っています。そのため、我々の「SmartDB」を活用した前受け処理、後受け処理のプロセスについても、検討が増えている状況です。

実績が示すBD全体をカバーする広範なマーケット

我々のユーザーは、こちらに記載しているロゴのとおりで、そうそうたる会社に活用いただいています。

三菱UFJ銀行は、8万名ほどでご利用いただき、15年になります。最大ユーザーは、一昨年導入が決定したリクルートで、グループを含めて10万名(登録ID数)ほどです。大和ハウス・住友不動産、KDDIでは数万名規模になります。その他、スライドに記載した会社に導入いただいています。   また、民営化を推し進めている大阪メトロにも導入が決定し、活用がしっかりと始まっている状態です。

このように、大企業、巨大企業と言われるところが我々のターゲットです。

ii 現場部門に支持されるDX推進に不可欠なサービス:SmartDB

スライドの右側にNRR(売上継続率)117.9パーセントと記載しています。これはSaaSのNRRとしては非常に高いと思います。なぜこれだけ高いかというと、大企業に一度入ると、滅多にキャンセルされないためです。我々が提供するホリゾンタルSaaSの特徴です。

非常に移行コストがかさむため、検討も慎重に行われますが、キャンセルすると代替のものを用意する必要があるため、1度決まったら10年、20年と使っていくことが前提です。   そのため、我々のサービスは継続率が高く、SMBのマーケットとまったく異なり、アップセル、クロスセルが非常に強い特徴を持っています。

ダイナミックロードマップ(主力製品の開発計画)について

次に、主力製品の開発計画であるダイナミックロードマップのご説明をします。今後3年にわたり「SmartDB」と「InsuiteX」等のホリゾンタルSaaSをどのようにアップデートしていくかの道筋を示しており、6つの軸で考えています。   そのうちの1つは、デジタルの民主化、「デジ民」の促進を実現する機能群です。非IT部門の人たちが「SmartDB」というノーコードツールを使い、自らの業務を、自分たちでデジタライゼーションするための機能群です。

大企業において「デジタルの民主化」を進める過程で非常に懸念されるのが、統制が取れるのかということです。エンドユーザーが好き勝手にアプリケーションを開発すると、統制が取れなくなる可能性があります。

しかし、我々には長年の経験があり、「SmartDB」にはデジタルの民主化と、システムの全体的な統制を両立させる機能があります。それが先ほど紹介した、MCSAを実現していく上での機能です。   左下に、適用業務の拡大というテーマの軸があります。既にいろいろな業務で使われていますが、より広い範囲の業務で使える状況を作っていくための機能群です。

さらには、より使いやすく操作性を高め、情報活用を促進するための機能群があります。さらに昨今話題にもなっていますが、セキュリティ脅威が高まってきているため、セキュリティを強化する機能群もあります。この6つの軸でダイナミックロードマップを計画しています。

一つひとつは説明しきれませんが、その具体的な内容をかなり細かいところも含めて検討しています。

セキュリティ脅威の領域で、来年以降火がつくのではないかと予想しているのはマイナンバーです。いよいよ本格的に、あらゆるサービスにマイナンバーが紐づく状況になってきます。マイナンバーは個人情報や機密情報の中でも、かなりランクが高いものです。

「SmartDB」では、マイナンバー情報をしっかり守っていくため、BYOK(Bring Your Own Key)というオプションを用意しています。ユーザー自身がデータベースを暗号化し、その暗号を解く鍵を持つため、サービス提供者であるドリーム・アーツであっても、顧客のデータに一切アクセスすることはできません。   これは、完全に機密性を守れるという技術であり、アメリカでは先行してゴールドマンサックスをはじめ、大手金融機関で盛んに使われ始めています。我々は、既にこのオプションの提供を開始しており、ファーストユーザーはJCBです。

これらの機能を含めてセキュリティに関しても、強化していきます。6つの軸でレベルを上げていくことで、約118パーセントという高いレベルでNRRを維持し、アップセルを大きく伸ばしていきたいと考えています。

iii 競争優位性のある良好なポジショニング:SmartDB

スライド左側のマトリックスは、「SmartDB」のポジショニングを示したものです。

上下の軸は企業規模、左右の軸は学習コストです。プロダクトとしては外資系ベンダーのプロダクトと競合することになります。

しかし、実態としては、SaaSサービスのプロダクト同士の競合というよりも、システム導入の取り組み方で競争しています。伝統的に、大手SIerに依存している企業では、大手SIerが外資系ベンダーのローコードツールを使いたがります。こちらのほうが値段も高く、アドオン、カスタマイズが発生するため多くの人工(にんく)商売も発生します。

それに対し「SmartDB」は、学習コストが極めて低く、機能充足度に関してはほぼ引けを取らないため十分に対抗できます。我々はマトリックスの右肩に位置しています。

iii 競争優位性のある良好なポジショニング:SmartDBと他社製品の差異

ユーザーが検討する際に作られた比較表をスライドに載せていますが、「SmartDB」はこの5つの項目すべてを満たしています。直感的に作ることができて、複雑な処理にも対応し、市民開発やデジタルの民主化も実現できます。

また、他システムとの連携についても多くの実績があり、APIエコノミーの中にしっかりと入ることができています。特定の部門で使うだけでなく全社・全グループでの使用までカバーできるという特徴を持っています。

iv アップセルによる顧客単価向上を図りやすい課金体系:SmartDB

導入パターンをスライド左側の図で示しています。当初は、部門導入から始まり、次に全社利用やグループ全体に導入するという、図の左から右の流れを予想して、「まず、部門導入から攻めよう」と言っていました。

しかし去年の後半あたりから、最初から全社導入、あるいはグループ会社を統括する会社での導入など、一度に大きく導入するタイプの案件が増えてきています。

現状では、全社導入で入っていくケースのほうが多い印象です。月額利用料の平均的なARPAが約160万円と、ビジネスSaaSとしても非常に高いレベルになっています。

成長戦略

我々の成長戦略についてです。

戦略のベースにあるのは、成長ドライバーであるホリゾンタルSaaSの「SmartDB」と「InsuiteX」の機能を拡充し、オプションを増やし、拡販を図っていくことです。

クロスセルの面では「SmartDB」の顧客に対し、「InsuiteX」、「Shopらん」、「DCR」等のサービスを提案し、拡販を図っていきます。その前提として、戦略パートナーの拡大があります。

現在、社内でEC2(External Capabilities&Capacity)という「SmartDB」に携わることのできる外部人材や、「SmartDB」を商材として扱うことのできるパートナー企業を増やし、顧客ニーズへの対応力を強化する戦略を掲げ、非常に力を入れています。ドリーム・アーツの外にケイパビリティとキャパシティを作っていくことによって、キャパシティを伸ばしながら事業継続の安全性と拡大戦略を両立させる戦略です。

スライドにある「戦略パートナーの拡大」には、大手企業も含まれており、現在、実際の案件ベースでも一緒に取組んでいます。また、これは追って発表できると思います。

認定制度の普及と戦略パートナーの拡大

また、「SmartDB Certified Specialist(SCS)」という資格認定制度を発足させ、非常に力を入れて取り組んでいます。

初級編がBRONZE、SILVERで、ここまでは同じですが、その先はエキスパートコースとオーガナイズコースに分かれます。エキスパートコースは、より複雑度の高い「SmartDB」を作ることができ、GOLD、PLATINUMと進んでいきます。

オーガナイズコースは、「SmartDB」を活用する際に必要となる、組織的な管理統制についてのエキスパートの資格認定です。以上の合計6つのグレードからなる資格認定制度を今年発足させました。現在、すでに資格取得者が1,000名を超えています。

来年は3,000名になると思いますが、そうなるといろいろな意味で状況が変わってくるのではないかと考えています。

実はすでに変化の兆候が見られ、この認定資格を持っていることが、転職の際に非常に有利になるという状況が起こり始めています。

もともとこの資格認定制度は、複数の会社から、「人事的な報奨制度のエビデンスにするために作ってほしい」という要望に基づいて作ったという経緯があります。したがって、ユーザーや企業から組織体としても非常に支持されています。

ある会社では、自社の研修センターで、資格取得合宿を行っており、参加者の90パーセントが、人事・総務・経営企画・営業部門などの非ITセクションの人たちで構成されていました。当社が主催する合同セミナーにも、様々な会社から数十人単位で受講者が集まっています。

BLONZEでも一定の学習時間は必要になりますが、これらの資格認定を取ろうと非常に熱心に取り組む人が増えています。これもパートナーの拡充とともに、非常に有効で強力な推進力になると考えています。

質疑応答:ホリゾンタルSaaSの大型案件増加要因について

質問者:ホリゾンタルSaaSに関する通期業績予想の修正についてうかがいます。リリースの中で、新規大型案件が増加傾向にあるとのことでしたが、その要因は何なのでしょうか?

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