目次
伊藤仁士氏(以下、伊藤):みなさま、こんばんは。IR・広報部長の伊藤でございます。本日はお忙しいところ、弊社説明会にご出席くださり誠にありがとうございます。
本日お話しする内容はスライドのとおりです。会社概要に続き、先月発表した2024年第1四半期決算の概要、現在取り組んでいる中期経営計画「E-Plan2025」の進捗、株式分割、株主還元についてご説明します。
荏原の概要
はじめに会社概要からご説明します。弊社は1912年に創業し、今年で創業112周年を迎えます。本社は東京都大田区で、羽田空港のすぐそばにあります。2023年12月末現在の関係会社数は117社、連結従業員数は約2万名規模の会社です。
荏原製作所の歴史
荏原製作所は「ゐのくち式渦巻ポンプ」を製作する大学発ベンチャーとして創業しました。スライド左下の写真が、創業者の畠山一清です。東京帝国大学の恩師にあたる井口在屋教授の理論を実現化するために会社を興しました。
スライド右側に記載している創業の精神「熱と誠」は「自ら創意工夫する熱意で取り組み、誠心誠意これをやり遂げる心を持って仕事をすること」を意味しています。この精神は今も従業員の中に息づいており、我々も常に意識しているものです。
製品で見る荏原の事業の歴史
弊社の製品と事業の歴史についてご説明します。先ほどご説明したように、1912年に大型ポンプを日本の水インフラに供給する事業から始まっています。
ポンプは流体を扱うため、内部に「回転体」と呼ばれる羽根車が入っています。そのような技術については、例えば取り扱うものが水であればポンプ、ガスなどの気体には送風機やコンプレッサ・タービンに使われます。また、冷凍機のうち「ターボ冷凍機」と呼ばれるものは、ポンプと同じように内部に羽根車が入っています。
このように共通の技術を使うことで、冷凍機、送風機、コンプレッサ・タービンと事業を広げてきました。
一方で、ポンプの販売先としては、水処理プラント等があり、このようなマーケットで環境事業を拡大してきました。その途中で焼却炉の技術導入を進め、現在の主力製品の1つであり、非常に特徴的な技術を使った「流動床炉」という焼却炉を中心に事業展開を行っています。
また1980年代には、勃興しつつあった半導体市場にドライ真空ポンプを投入しました。
そのほか、CMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシャー)装置については「回転体の技術と流体を扱う技術を持つ荏原であれば、このような装置が開発できるのではないか」とお客さまからご提案いただき、開発を進めました。CMP装置はウエハを研磨する装置で、主力事業の1つとして育っています。
2023年から組織変更を行い、現在はスライドのとおり5事業を展開しています。
2023年12月期の業績
2023年12月期の業績についてご説明します。全社の売上収益は7,593億円、営業利益は860億円と、営業利益率で10パーセントを超えるような業績となっています。
建築・産業セグメントでは、スライドの画像のような冷凍機、標準ポンプ、送風機を展開しています。エネルギーセグメントでは、画像のようなコンプレッサやオイル&ガス向けのカスタムポンプなどを展開しています。
弊社の祖業であるインフラセグメントでは、画像のような大型ポンプを公共体を中心とした水インフラへ供給しています。環境セグメントでは、画像のような焼却炉を同じく公共体を中心に供給しています。
精密・電子セグメントでは、先ほどご説明したように、ドライ真空ポンプとCMP装置を半導体メーカーに供給しています。
世界に広がる荏原の拠点(合計117社)
荏原製作所は、現在117社の拠点を持っています。スライドのように子会社数はアジアに多く、北米、中南米、欧州、中東とグローバルに事業展開を行っています。
くらしを支える荏原の製品
我々の製品は、みなさまの目にとまる機会は少ないですが、スライドに示すように生活や社会インフラを支えるためには欠かせないものです。
例えば、みなさまが働くビルで、水道の蛇口を捻れば水が出るのは我々のポンプを使っているからですし、トイレの使用後に下水を流すためにも我々のポンプが使われています。そのほか、ゴミ焼却施設、水族館、みなさまが使っているスマートフォンに欠かせない半導体チップの製造には、弊社の製品がなくてはならないものとなっています。
世界中で活躍する荏原の製品
弊社の製品は世界中で活躍しています。例えば、スライド画像のように、ラスベガスのフーバーダムからの取水システム、イタリアのコロッセオの外壁洗浄、シンガポールのマーライオンの噴水システムには弊社のポンプが使われています。
私もシンガポールに駐在していた時期があり、お客さまにこの話をすると驚かれるとともに、荏原の名前を覚えていただくきっかけになっていました。
当決算におけるポイント
先月発表した、第1四半期決算の概要をご説明します。スライド左上に第1四半期の業績をまとめました。受注高は1,916億円と昨年よりわずかに減少していますが、第1四半期として過去最高となった前年同期とほぼ同水準になっています。
半導体市場の本格的な回復にはまだ少し時間がかかると思われますが、底は打っており、昨年と比べて受注高は回復しています。環境事業やエネルギー事業は、昨年大型の受注がありましたが、今年は少しタイミングがずれて受注高は減少しています。
一方で、売上収益と営業利益は、第1四半期決算としては過去最高を記録し比較的好調です。営業利益率は10パーセントになっています。
スライド右上に2024年の業績予想を示しました。2月に発表した予想から修正はなく、受注高8,340億円、売上収益8,270億円、営業利益870億円で計画しています。上半期の計画については、現在の事業状況を反映して一部修正しましたが、通期見通しは順調な進捗のため変更はありません。
また、後ほどご説明しますが、2024年7月1日に弊社の株式1株を5株とする株式分割を実施予定です。
FY24 1Q 連結決算サマリ_セグメント別
セグメント別の決算サマリーです。細かい表となり恐縮ですが、上から順にご説明します。建築・産業セグメントは、昨年比で見ていただくとわかるとおり、受注高・売上収益・営業利益のいずれも増加し、順調な進捗となっています。
エネルギーセグメントは、昨年大型の受注があったため受注高はわずかに減少していますが、売上・営業利益は昨年比で増加し、こちらも順調な進捗です。インフラセグメントは、受注は昨年比で増加しているものの、売上・営業利益はやや減少しました。工事進行基準により、売上増加のタイミングが少し後ろにずれたのが要因です。
環境セグメントは、先ほどご説明したように、大型案件の受注があった昨年に比べて大きく減少していますが、こちらは計画どおりで特に大きな失注があったなどの背景はありません。売上・営業利益は昨年比で増加しています。
精密・電子セグメントは、受注は市場の回復を受けて昨年より大きく増加しており、売上・営業利益についてもほぼ昨年並みと順調に推移しています。
FY24 1Q 連結決算サマリ_営業利益増減分析
スライドの図は、昨年第1四半期の営業利益152億円から今期第1四半期の192億円まで、どのような増減があったかを分解したものです。注目していただきたいのは収益性です。55億円のプラスとなっているように、精密・電子セグメントを中心に収益性が改善しています。
固定費は、昨今は弊社もベースアップなどに取り組んでおり、人件費の増加でマイナス23億円となっています。このような増減があり、結果として営業利益は昨年比で増加しました。
FY24 1Q 連結決算サマリ_地域別売上収益
地域別売上収益の構成です。スライド右側の円グラフのうち、濃い青色に当たる部分が海外の売上ですが、現在は弊社売上の約60パーセントを海外が占めています。
左側の地域別グラフでは、第1四半期は日本も大きく伸びており、海外も3パーセント程度ではあるものの伸びました。地域別では、中国が昨年比で大きく伸びる一方で、日本と中国を除くアジアは大きく減少しています。これは主に精密・電子セグメントの影響によるものです。
中期経営計画「E-Plan2025」の位置づけ
中期経営計画「E-Plan2025」の進捗についてご説明します。中期経営計画は2023年2月に発表したもので、スライド右側の「E-Vision2030」が我々の長期ビジョンです。
2030年にありたい姿として、経済価値と社会環境価値の両方を高めていくことを目標としています。例えば環境価値では、CO2約1億トン相当の温室効果ガスの削減、世界で6億人に水を届ける、先端領域「ICAC5」への寄与という目標を掲げています。
2030年にありたい姿からのバックキャストと、前中計「E-Plan2022」の課題の両方を踏まえた上で「E-Plan2025」を設定しています。「顧客起点での価値創造=起業化」を大きなテーマに、お客さまにより良い製品やサービスを、マーケットインの視点で届けていくことを課題にしています。
スライド下には、経済価値として目標値を示しています。2030年にROIC10パーセント以上、ROE15パーセント以上、売上収益・時価総額1兆円規模を目標値に設定しています。
中期経営計画「E-Plan2025」の財務数値目標
「E-Plan2025」におけるそれぞれの指標です。2023年の実績も2025年の目標値に対して順調な進捗を示しており、2024年も目標を上回るよう設定しています。
中期経営計画 「E-Plan2025」 の進捗・成果
「E-Plan2025」 の実際の成果についてご説明します。対面市場別・顧客起点として、2023年1月に大きな組織変更を行いました。スライド右側の図で示したとおり、従来の製品別セグメントから我々が対面している市場別に再編し、各セグメントで一体経営が始まっています。
エネルギーセグメントでは、従来は営業やサービスの組織が異なっていたコンプレッサとカスタムポンプで、組織の統合が進んでいます。建築・産業セグメントにおいても、標準ポンプ、冷凍機、送風機などの営業・サービスについて統合を進めているところです。
また、精密・電子セグメントを中心に生産能力を高めるような投資を行っており、研究開発体制の整備も進めています。さらに、建築・産業セグメントを中心に海外拠点の整備やM&Aを実施しています。
中期経営計画「E-Plan2025」の進捗・成果
「E-Plan2025」では、新たな価値の創発にも取り組んでいます。先ほど組織を対面市場別に再編したことをご説明しましたが、これにより、スライド図の製品を組み合わせた高付加価値のソリューション開発を進めています。
建築・産業セグメントでは、標準ポンプと送風機を結び付けたIoTシステム「EBARAメンテナンスクラウド」を用いて運転状況をモニタリングし、故障等が起こる前にお客さまにサービスを提供するソリューションの開発を進めています。
新エネルギー案件では、最近プレスリリースを発行したとおり、持続可能な航空燃料「SAF」に向けたコンプレッサをタイで受注しました。
加えて、水素関連製品の開発も進めています。スライドの画像のような、液体水素を発電燃料に使えるようにする液体水素昇圧ポンプや、これも世界初となる水素を燃料に使った水素焚吸収冷温水機なども開発しています。
また昨今、特に日本ではアンモニアを燃料として石炭火力からの転換を図る動きがあります。このような用途に向けて液体アンモニア用のキャンドモーターポンプを開発し、上市しています。
さらに、陸上養殖や構造タンパク質などの新規事業に対するスタートアップへの投資も計画しています。
中期経営計画「E-Plan2025」の進捗・成果
経営インフラの高度化や効率化の取り組みについてご説明します。CxO制として、例えばCFOやCEOなどを導入したグループガバナンスの拡充や、国内外のグループ会社に基幹業務システム(ERP)の導入を進めています。さらに、DXを活用した事業強化も進めているところです。
中期経営計画「E-Plan2025」の進捗・成果
ESG経営の進化についてです。2050年のカーボンニュートラル実現に向けた削減貢献量を含む、温室効果ガスの削減施策の検討に取り組んでいます。また、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)として、推進部署の設置を進めています。
加えて昨今は、人的資本経営に非常に注目が集まっています。弊社においても、女性管理職比率の向上や男性育児休業取得率の向上などに取り組んでいます。
中期経営計画「E-Plan2025」のキャッシュアロケーション
現在の中計期間は、過去に比べると成長投資や基盤投資にキャッシュを多く使う計画になっています。この3年間は、各事業の競争力を高めるための投資を行う予定です。そのうち約半分が精密・電子セグメントへの投資で、工場や研究開発棟の建設を国内外で行っています。
建築・産業セグメントではM&Aも検討しています。エネルギーセグメントでは、S&S拠点の最適化をはじめ、生産拠点において製造装置の刷新等を含めた合理化を進めているところです。
FY24 業績予想
業績予想についてです。先ほど説明したとおり、スライドの計画に沿って進めています。
株式分割
株式分割についてご説明します。すでに開示していますが、より投資しやすい環境を整備して特に個人投資家層の拡大を図るため、6月30日を分割基準日として1株を5株に分割する株式分割を予定しています。
スライド下側のグラフが、弊社の株価の推移です。特に2024年に入ってから株価が大きく上昇し、安定して1万円を超える水準となりました。これにより、東証が推奨する水準も考慮して5分割を進める予定です。
株主還元
株主還元の方針についてご説明します。弊社は配当性向35パーセントを目標に、当該期の業績に連動した配当を実施しています。2024年の1株あたりの年間配当金は230円で、これは分割前の金額です。スライド下のグラフのとおり、当期利益の増加に伴って1株あたりの年間配当金も順調に増加しています。
以上で、私からのご説明を終わります。
質疑応答:2ナノメートルに対応したCMP半導体研磨装置の開発について
司会者:「『2ナノメートルに対応したCMP半導体研磨装置の開発にメドがついた』という新聞報道を見ました。その内容について詳しく教えてください」というご質問です。
既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。