2024年3月期決算説明

司会者:みなさま、こんにちは。本日はお忙しい中、王子ホールディングス株式会社2024年3月期決算説明会にご参加いただきありがとうございます。

本説明会に先立ち、決算短信ならびに決算説明会資料を、当社ホームページにアップしていますので、ご覧ください。なお、これから行われる説明においては、現時点の予想に基づく将来の見通しを述べる場合がありますが、それらはすべてリスクならびに不確実性を伴っています。みなさまには、実際の結果が見通しと異なる場合があることを、あらかじめご了承いただきたいと思います。

それでは、当社グループ決算概要について、取締役専務グループ経営委員の鎌田よりご説明します。

①2023年度 連結業績概要

鎌田和彦氏:本日13時に公表した2023年度の連結決算業績概要について、お配りしている決算説明資料に沿ってご説明します。

2023年度の売上高は1兆6,963億円で、前年対比104億円の減収となっています。営業利益に関しては2024年4月26日に業績予想の下方修正を発表しており、720億円をやや上回ったかたちになりましたが、726億円の着地となりました。前年対比でマイナス122億円の減益です。

一方で、経常利益については860億円ということで、マイナス90億円の減益です。

最終的な当期純利益に関しては508億円となりました。こちらも公表数値では500億円を予想していましたが、それをわずかに上回ったかたちとなりました。

海外売上高比率は34.9パーセントです。連結子会社の件数は2022年度から4件増えて合計200社となっています。

②セグメント別売上高・営業利益(2023年度実績)

セグメント別にご説明します。2023年度の営業利益は、上段の生活産業資材が212億円でした。2022年度は赤字だったため、前年対比で見ると225億円の増益となっています。

機能材は91億円で、マイナス64億円の減益です。資源環境ビジネスは196億円で、マイナス489億円の大幅な減益となっています。印刷情報メディアは168億円で、210億円の大幅な増益となっています。

したがって、連結合計は726億円で、前年対比マイナス122億円の減益となりました。

③セグメント別利益増減分析 - 生活産業資材

各セグメントの内容を、さらに細かく見ていきます。

生活産業資材については、225億円の増益となりました。国内と海外で分けてみると、国内事業は280億円の増益で、海外事業はマイナス56億円の減益となっています。残念ながら、海外事業はマイナス収益になっています。

国内事業においては価格の転嫁が功を奏し、361億円の増益となっています。一方で、その他のコスト要因でマイナス93億円の減益があり、280億円の増益にとどまっています。

海外事業においては東南アジアでの競合他社との価格や数量における厳しい競争が続いており、その分マイナス要因が大きくなっています。

③セグメント別利益増減分析 - 機能材

機能材については、マイナス64億円の減益です。国内と海外で分けて見ると、国内事業は14億円の増益となりました。一方で海外事業は苦戦し、マイナス78億円の減益となっています。

③セグメント別利益増減分析 - 資源環境ビジネス

資源環境ビジネスについてはマイナス489億円の減益で、そのほとんどは海外事業によるものです。海外事業でマイナス473億円の減益となりました。

スライドに内訳を記載していますが、PanPacの災害影響マイナス70億円に加えて、パルプ全般の売価が非常に低位で推移し、販売・市況要因マイナス358億円がありました。

一方で、スライド中央に示しているNBKPとLBKPの価格については、NBKPは、2022年通年では920ドル/トンでしたが、2023年は725ドル/トンと195ドル/トン下がって推移しました。LBKPについても、2022年通年で790ドル/トンで推移しましたが、2023年は210ドル/トン下がり、580ドル/トンの平均値になりました。

2024年に関しては、後ほどご説明する計画の中に示していますが、NBKPが765ドル/トン、LBKPが685ドル/トンの平均値で組んでいます。ご参考までに、足元の5月はNBKPが790ドル/トン、LBKPが710ドル/トンと、通年平均の計画よりも上振れて推移しています。

③セグメント別利益増減分析 - 印刷情報メディア

印刷情報メディアについては、216億円という大幅な増益になっています。内訳を見るとほとんどが国内事業ですが、194億円の増益となった要因として、価格の転嫁が功を奏しています。

一方、原燃料価格差については、ドル貨はある程度落ち着いてきているものの、やはり円安の影響で原燃料高になってしまっています。

以上が2023年度の決算概要です。

①2024年度 連結業績予想

2024年度の業績予想です。連結業績予想としては、スライド中央に記載のとおり、売上高は1兆9,500億円で過去最高の予想になります。営業利益は950億円、経常利益は1,000億円、当期純利益は750億円を見込んでいます。海外の売上が伸びると見込んでいるため、海外売上高比率は40パーセントを超えると予想しています。

スライド下段に、2024年度予想の前提条件を記載しています。当社の場合、為替レートは必ずしもドル/円だけではないのですが、代表的な通貨として、米ドル/円換算で1ドルあたり155円と見ています。現在は1ドルあたり156円前後ということですので、前提条件どおりに進捗しています。

その他石炭、重油の価格についてはご覧のとおりです。

② セグメント別売上高・営業利益 (2024年度予想)

セグメント別売上高・営業利益です。2024年度予想として、生活産業資材の営業利益は200億円を見込んでおり、2023年度実績からはマイナス12億円の減益となっています。

機能材については営業利益110億円で、前年対比19億円の増益を見込んでいます。資源環境ビジネスは営業利益470億円で、前述のパルプ前提価格をベースに計算し、前年対比274億円の大幅増益を見込んでいます。

印刷情報メディアの営業利益は120億円で前年対比マイナス48億円の減益、その他の営業利益は50億円と見ています。

連結合計では営業利益950億円、前年対比では224億円の増益を見込んでいます。こちらの詳細については、国内外を含めて次ページでご説明します。

③ セグメント別利益増減

スライドに記載のとおり、国内事業に関しては、生活産業資材セグメントでマイナス30億円の減益、機能材セグメントでマイナス13億円の減益、印刷情報メディアセグメントでマイナス61億円の減益と、この3セグメント合計でマイナス100億円ほどの減益となるように見えてしまっています。

当社のセグメント分類の都合上このような数字になっていますが、実際には前年対比ではほぼ五分五分になります。その理由としては、王子ホールディングスからの配賦経費について、一過性の経費処理の都合により100億円発生しており、セグメントに割り振っているため、国内事業が減益になっているように見えていますが、実際はそうではないということです。

④外部環境の変動による影響

外部環境の変動による影響についてです。先ほどお伝えしたとおり、1ドルあたり155円を為替レートとしています。ブラジルレアルの想定レートは1ドルあたり5.10レアルで、足元は1ドルあたり5.16レアル前後ですので、想定為替レート内で進捗しています。

以上が決算内容になります。

持続的な成長に向けた取り組み 進捗状況

本日はお時間をいただき、トピックスをご紹介します。

当社は昨年12月25日に「企業価値向上の取り組みについて」という資料を公表しています。ホームページに掲載したのみで、具体的な内容についてのご説明はしていませんでしたが、本日はお時間をいただきご説明します。

「持続的な成長に向けた取り組み」ということで、本スライドに記載の項目について、特に重点的に力を入れて取り組んでいます。

右下のとおり、「森林機能」に関しては当社が存在意義として掲げている「森を育て、森を活かす。」の根底になります。まずは森林機能を高めるために活動した上で、その後、既存事業の中での資産の効率化を図っていきます。低成長・低収益の事業の整理を行い、そこで生み出された資源を新しい原資として、新事業に展開していくという流れになります。短期的にはそのように既存事業を統廃合していきます。

中期的には、今後伸びるであろう産業、特に環境配慮型パッケージング事業の早期拡大を目指していきます。さらに中長期にわたっては、セルロースナノファイバーに代表されるような新素材や複合素材を手掛け、従来の紙パルプにはなかったような分野についても進出していきます。

個々の内容については、次ページ以降でご説明します。

①ウルグアイにおける植林地取得を目的とした会社設立について

まず、根底となる森林事業についてです。本日(2024年5月14日)、ウルグアイに植林地を取得することを発表しました。王子グループはブラジルに植林地を所有していますが、ブラジルを除く南米で、ウルグアイは初めて取得する土地となります。この度、4万1,000ヘクタールの森林を取得する段取りとなっています。

スライド右上のグラフに記載のとおり、当社は現在60万3,000ヘクタールの森林を所有しています。これを2030年度までに72万4,000ヘクタールまで拡充し、CO2の吸収源を増やしていくことを中長期の目標に掲げています。中段にある海外生産林に関しては、現在27万9,000ヘクタールの所有に対し、2030年度までに40万ヘクタールまで拡充することを目指しています。今般、ウルグアイで大型の植林地を入手するということで、40万ヘクタールまで拡充するという目標に向けてのロードマップが見えてくるかと思います。

①資産のスリム化

資産のスリム化ということで、まずは政策保有株式の縮減を推進していきます。4年間で300億円以上を売却すると公表(2024年4月26日)しており、従来に無いかたちの、積極的な売却を進めていきます。

②国内子供用おむつ事業からの撤退

こちらもすでに発表(2024年3月25日)していますが、王子ネピアが行っている国内子供用おむつ事業から撤退します。人口減少が目に見えて著しい中で、子供用おむつの将来的な期待値が非常に薄いということから、撤退することになりました。今後は、より成長が見込まれる海外でのおむつ事業や家庭紙事業、国内における大人用おむつ事業へ重点的に力を入れていきます。

③生産設備停止

生産設備の停止、統廃合、集中と選択にも取り組んでいきます。こちらも発表済み(2024年2月16日)ですが、主に新聞用紙や印刷用紙を作っている王子製紙苫小牧工場のN-2号マシンを完全に停止させる予定です。

①Walki社 100%株式取得完了 (2024年4月)

そうして得た経営資源を新規事業の拡大に充てていく方針の中で、すでにご案内したとおり、Walki社の100パーセント株式取得を完了しました。4月に無事クロージングを終え、すでに当社の100パーセント子会社となっています。

①Walki社 100%株式取得完了(2024年4月)

先般からご紹介しているとおり、Walki社には大きく3つの事業があります。「消費者向けパッケージ」は、脱プラによってバリア性を持たせた包装資材に変えていきます。「産業用パッケージ」としては、耐水・耐油性の環境配慮型の機能性段ボールを作っていますので、そちらにも取り組んでいきます。

さらに、王子グループには従来なかった「特殊品」として、建設産業向けの高性能断熱材を手がけています。これは家だけでなく自動車の内装材にも使われており、Walki社のノウハウを蓄積していきます。

①Walki社 100%株式取得完了(2024年4月)

欧州においては非常に環境意識が高まっており、スライド左上の「背景」という欄に記載のとおり、包装資材のリサイクル率を高めていくことが政府の指針として掲げられています。

PPWR(EUにおける包装・包装廃棄物法令)に則った対応事例をスライド下部に挙げています。従前はプラスチックや化石燃料で作られていたものを、紙の包装資材あるいはリサイクル可能な素材に切り替えていきます。

Walki社はこの点において非常に先進的な会社であり、すでにご覧のようなものをエンドユーザーと組んで開発しています。このノウハウを蓄積するとともに、王子グループも手がけている環境素材とのシナジーを最大限に発揮していきます。

①Walki社 100%株式取得完了(2024年4月)

具体的なロードマップです。Walki社がヨーロッパで環境素材を発信し、それを王子グループが日本側からサポートしつつ、すでに手を広げている東南アジア、インド、オセアニアにも展開していきます。

②脱プラスチック社会への対応

脱プラスチック社会への対応です。包装資材分野では、単なる包装材だけではなく、スライド右側の写真にある農業用マルチのような、さまざまなものまで紙化を図っていきます。紙に置き換えられるものはとことん紙化を進めていくということです。

①CNFを用いた燃料電池用「高分子電解質膜」開発

CNF(セルロースナノファイバー)についてはだいぶ前から開発、研究が進んでいますが、より具体的な製品化を進めていきたいと考えています。

中央の写真に写っているのは山形大学との共同研究で開発した高分子電解質膜で、今後伸びていく燃料電池等への応用が期待されているものです。フッ素フリーである木質由来のCNFが非常に役立つということです。

②CNF・天然ゴムを用いた複合材の量産試作設備導入

すでに自動車のワイパーなどで活用されていますが、天然ゴムとCNFを用いたサステナブルな複合素材の開発も進んでいます。

③最先端半導体用バイオマスレジスト

先日発表(2024年5月13日)しましたが、半導体分野でもバイオマス由来の素材を活用し、王子グループでフッ素フリーのバイオマスレジストを研究、開発しています。

半導体についてはさまざま取り上げられている中で、半導体分野についても王子グループとして推進していきます。

④木質由来糖液・エタノール・ポリ乳酸の事業化推進

木質由来糖液・エタノール・ポリ乳酸の事業化推進についてです。再生可能な木質資源から糖液を作り、さらにそれを発展させてエタノール・ポリ乳酸、ひいては最終的なバイオプラスチック、持続可能な航空燃料であるSAFなどにしていきます。

このような技術はすでに開発されていますが、王子グループとしてさらに一歩進めています。スライド左下に記載のとおり、米子市に糖液・エタノールのパイロット設備を建設中で、年内に稼働予定です。パイロット設備ができることにより、本格的な糖液・エタノールの商業的な供給が可能になります。

ポリ乳酸についてはスライド右下に記載のとおり、ベンチプラントを江戸川区に建設し、稼動します。

⑤薬用植物(甘草)の事業化促進

植林で培った植物を育てるノウハウを使い、薬用植物(甘草)の事業化を推進していましたが、より具体的な生産体制に入ってきたということで、あらためてご紹介します。

現在、甘草の生産は輸入に頼っています。これを国産で、しかも管理の行き届いた原料を供給するということです。

⑥GXへの取り組み

GXへの取り組みです。先般公表(2024年5月9日)しましたが、王子製紙・東京ガス等と連合を組み、王子製紙苫小牧工場で水力発電由来のグリーン水素によるカーボンニュートラルなe-メタンを生産しようというプロジェクトです。

⑥GXへの取り組み

石炭専焼ボイラからガスへの切り替えを推進しています。すでに王子マテリアの祖父江工場、佐賀工場で具体的なプロジェクトを始めており、2027年度から2030年度までの間に変えていく計画です。

⑥GXへの取り組み

政府が進めるGX推進機構へ、王子グループとしても積極的に出資を進めていくということで、この度合意しました。

①配当性向30%

配当性向については、30パーセント以上をお約束すると謳っています。2023年度に関しては16円の配当を維持しており、配当性向31.2パーセントというかたちになっています。

2024年度の当期純利益750億円の予想に対し、同じく30パーセント以上の配当性向を維持するということで、16円から24円への8円の増配を本日公表しています。

以上が私からのご説明になります。どうもありがとうございました。