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杉田武久氏(以下、杉田):みなさま、こんばんは。4月1日付で株式会社エージーピー社長に就任した杉田です。本日はご多用のところ、エージーピーの投資家説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
5月13日に発表した2023年度決算、中期経営計画の進捗、2024年度の取り組みについてご説明したのち、2024年度の業績予想についてご説明したいと思います。
2023年度 決算報告 業績推移 : Executive Summary
エグゼクティブサマリーとして、2023年度の決算数値と過去5年間の推移をスライドにまとめています。2023年度の売上高は129億8,600万円、営業利益は10億5,900万円となり、経常利益、当期純利益ともに計画を大きく上回ることができました。
この業績を踏まえ、株主のみなさまへの配当については、期中に増配を決定し、その後、5月13日に発表した期末での増配を加えると、前年の30円から45円に引き上げることができました。
過去5年間の業績推移は表のとおりですが、足元は航空需要の回復を背景とした増収増益基調にあり、コロナ禍からの着実な回復を示しています。
2024年度からは、後ほどご説明する新たな経営体制の下、成長事業の創出、技術開発、財務戦略、ESG経営の推進による経営基盤の盤石化、人的資本投資等の実行を加速させるため、一時的に営業利益は対前年度で減益となる計画です。
しかしながら、中期最終年度の2025年度目標値である営業利益率10パーセントは、変わらず目指していく所存です。
2023年度 決算報告 損益計算書
損益計算書の概要です。売上高は129億8,600万円で前年から19億4,600万円の増加となっています。売上原価は、各種費用の効率化等に努め11億500万円の増加にとどめました。
全社費用の増減額は対前年で32パーセント増の3億1,000万円でした。中期経営計画実現に向けた成長に資する、海外での活動や法改正(インボイス・電帳法)への対応や、セキュリティ強化等によるものです。
以上のとおり、売上高の増加が費用の増加を大きく上回ったことにより、営業利益は前年度の5億2,700万円から10億5,900万円に拡大することができました。当期純利益についても、前年度を大きく上回る結果となっています。
2023年度 決算報告 セグメント別売上高
事業別の売上高についてご説明します。今期は動力供給事業が大きく回復できました。その売上高は対前年で12億800万円、28.3パーセント増の54億7,500万円となりました。これは引き続き航空機の運航便数が回復していることに加え、今期から導入した原材料費の高騰に対する価格転嫁を開始したことによるものです。
エンジニアリング事業については、航空需要の回復に伴い空港内の特殊機械設備の保守業務が増加したことや修繕工事の増加等により、売上高は対前年で6億2,300万円、10.6パーセント増の64億9,300万円となりました。
物流保守サービスについては、成長領域として位置づけていたものの、役務提供から脱却した付加価値のあるビジネスを創出できていません。そのため、外部から経験のある人材を部長職に採用し、必要となる機能を具備しながら事業の拡大を目指します。
商品販売事業については、2023年2月に「AGPでんきサービス」を終了した影響で減収となっています。しかし、フードシステム販売は積極的な地方展開が進み前年を59.8パーセント、GSE等販売は前年を32.7パーセントをそれぞれ上回るところまで回復しました。そのことも影響して売上高は、対前年で1億1,500万円、12.8パーセント増の10億1,700万円となりました。
2023年度 決算報告 貸借対照表,分析指標
バランスシート等の状況についてご説明します。スライド上段はバランスシートの概要です。資産合計は137億9,600万円で、前期末比で4億4,100万円の増加となりました。流動資産は事業活動に伴い変動しました。固定資産は減価償却の進行や繰延税金資産の減少があったものの、10億4,600万円の投資等により3億1,200万円増加しています。
純資産は、配当金の支払いが5億2,800万円ほどありましたが、6億8,900万円の利益計上等により1億7,300万円増加しています。有利子負債は、長期借入金の返済等により2億7,700万円減少している状況です。
スライド左下の表に記載の分析指標について、ROEは7.4パーセントとなり、前年を上回ることができました。自己資本比率は67.8パーセントです。手元資金に加え、有利子負債を活用しながら成長投資を実行して50パーセント台に低減させたいと考えており、この先の大きな課題となっています。2023年度決算の概要は以上のとおりです。
中期経営計画中間レビュー 上場維持基準適合に向けた進捗
ここからは、中期経営計画の進捗と2024年度の取り組みをご説明します。まず、上場維持基準適合に向けた取り組みについてです。当社は、スタンダード市場の上場維持基準である流通株式比率25パーセント以上を満たしていないため、経過措置の適用を受けています。
過去の経緯から、政策的な保有を目的として当社株式を多く保有されている株主さまがいらっしゃるため流通株式比率が著しく低くなり、上場維持基準を満たすことができていない状態ということです。
これまで当該株主さまの方針を尊重する一方、当社の流通株式の状況をご理解いただいた上で、当社株式の保有比率低減に向け、固定株の縮小に向けた取り組みを相互信頼関係の下で推進し、市場及び株価への影響を最小化しつつ、早期に流通株式比率を高めることができるよう、自己株式の活用など各種施策を積極的に検討・実行する計画を進めてきました。
流通株式比率の改善に向けたこの2年間の実績としては、上位3位までの主要な株主さまに、保有している当社株式128万7,900株余りを売却していただいたことで、当初17.73パーセントだった流通株式比率が、2024年3月31日現在において23.83パーセントとなりました。
現時点では、流通株式比率25パーセント以上という上場維持基準は未達の状態となっています。今後も引き続き、当社の最重要課題である上場維持基準への適合に向けて、過去の経緯から当社株式を保有されている企業さまへ、保有株式比率低減のお願いをさせていただく対話を続けます。
中期経営計画中間レビュー ESG経営の推進における進捗
中期経営計画中間レビューとして、ESG経営の推進における進捗をご報告します。中期経営計画では、3つのステートメント及び「ESG経営を推進し『成長の実現』と『戦略投資と還元の両立』を行う」というメッセージを掲げています。
環境社会実現に向けた貢献としては、動力供給事業の中小規模空港における小型機等への電力供給ツールとして、国産初のバッテリー駆動式GPUの開発を行い、「Be power.GPU」と命名して商標登録も終えています。現在の販売実績は1台となっています。電動ブレーキクーリングカートの製品開発も行っています。
人材育成と社員福祉の充実については、2023年4月より退職金制度を統一しています。また、当社にとって価値創出の原動力であり最大の資本である従業員が高い次元で挑戦し、その成果に報いる観点から、従業員自身が株主になることで経営参画意識を向上させ、役員と従業員が一丸となって企業価値向上に取り組むことができるよう、人的資本投資の一環として株式給付信託「J-ESOP」を2023年5月より導入しています。
加えて、ダイバーシティ推進を念頭に置いた、外国人社員の採用を着実に進めています。社員福祉の向上については、育児休業取得率100パーセントを達成しています。
経営の透明性、健全性に重きを置いたガバナンスについては、この2年間は、コーポレートガバナンス・コードを遵守できていない19項目のうち11項目を達成することができました。引き続き、本中期経営計画期間の残り2年間で全項目の達成を目指していきたいと思っています。
IR活動については、認知度向上に向けて四半期ごとに個人投資家向け説明会や機関投資家向け説明会を実施しています。当社ホームページをリニューアルし、情報発信の充実化も行っています。
上場維持基準適合に向けた取り組みは未達の状況となっていますが、引き続き流通株式比率の向上に向けた取り組みを進めていきます。
中期経営計画中間レビュー 中期経営計画FY25着地目標に対する進捗
中期経営計画の最終年度に当たる2025年度の定量目標に対する進捗状況についてご説明します。2025年度の計画と対比すると、損益計算書では、中期経営計画の最終年度比で売上高は2023年度が86パーセント、2022年度が73パーセントとなり、13ポイント上昇しています。
営業利益は70.6パーセントで、一見して順調に回復していますが、前半の2年間は助走期という位置づけであり、今後、最後の2年間が重要です。
一方、バランスシートに目を移すと、自己資本比率が67.8パーセントと高止まりしていますが、これは過去2年間、成長に資する戦略投資が進んでいなかったことによるものです。今期より有利子負債の活用と積極的な事業投資を実行することにより、資本効率の向上に努めていきます。
また、ROEはコロナ禍前よりも上昇してきています。後ほど2024年度の取り組みと業績予想のパートで詳細をご説明しますが、将来の成長に向けた人的資本投資、研究開発投資を実行する計画としているため、2024年度は一時的にROEが低下することを覚悟した計画としています。
空港外売上比率です。航空需要の回復を背景とした空港内既存事業の回復の加速に伴い増収となっているため、空港外の売上比率が相対的に低下した状況です。今後、空港外領域への積極展開を継続し、中期経営計画の「20パーセント以上」の達成を目指していきます。CO2排出量の削減については、航空需要の回復を背景として順調に推移しています。
戦略投資と還元の充実については、成長事業領域への投資の進捗が芳しくない状況ですが、今期からリカバリープランを策定しました。2024年度から2025年度の2年間で有利子負債の活用と積極的な事業投資を実行し資本効率の向上に努めるとともに、中期経営計画で示した4年間のキャッシュアロケーション計画の達成を目指していきます。
中期経営計画中間レビュー セグメント別の進捗
セグメント別の進捗状況です。動力供給事業は、電力原材料費の高騰に対する価格転嫁制度を導入し、従来同様の収益性を担保する仕組みを整えました。今後、いくつかの空港で拡張や再編等の計画が進むことから、当社としては資産効率の向上を意識しつつ、投資を実行し、技術開発も継続していきます。
エンジニアリング事業は、事業環境の変化に応じて契約の改定を行い、引き続き収益性の改善に努めていきます。事業の拡大に際しては、人の問題が大きな課題となるため、技術者のマルチスキル化やビジネスプロセス改革を推進することによって生産性の向上を図っていきます。
製品販売事業は、環境貢献をはじめとした社会課題の解決にも資する商品の提供を行っていきます。
中期経営計画中間レビュー 企業価値向上に向けた戦略の進捗
戦略投資の進捗です。すでにお伝えしたように、計画より遅延している状況ですが、もう少し深堀りするため、事業の視点から、現在の取り組み状況についてご説明します。
採算性の低い事業については、成長エンジンの獲得に向けてリソースを再配分していきます。空港外の成長市場である物流保守サービスに展開していく予定です。
自社製品となるバッテリー駆動式GPUの開発に成功し、販売実績を上げました。空港内におけるエネルギーマネジメントシステムの研究開発を、タイ王国のタマサート大学、日本の武蔵野大学と連携して開始しています。
次に、財務の観点から現在の取り組み状況についてご説明します。成長事業の創出に対する資本投入は進んでいません。よって、借り入れの実施もありませんでした。その結果、内部留保が膨らみ、自己資本比率も高止まりの状態が継続しています。資本効率の向上も進んでいませんが、利益の増加によりROEは向上しています。
株主還元については2年連続増配となり、2年間の総還元性向は100パーセント以上を維持しています。この状況を踏まえ、中期経営計画の残りの2年間で、本格的な戦略投資の実行を加速化させていきます。
中期経営計画中間レビュー 成長の実現に向けた事業戦略の進捗
成長の実現に向けた事業戦略における進捗です。スライド中央の新商品開発戦略においては、当社技術を駆使してバッテリー駆動式GPUを自社開発しました。「Be power. GPU」と命名し、商標登録も済んでいます。この商品をもって、市場開拓戦略として地方空港への展開を行い、すでに納品済みです。
また、当社が出資しているSmart Airport Systems Japan、通称SASJ社のCOMBO機材も地方空港への配備が拡大中です。
海外展開については、新型コロナウイルスにより、空港拡張計画自体の遅延が3年ほど発生しましたが、2022年10月に水際対策が一部緩和されて以降、徐々に再開してきており、当初ターゲットとしていた空港以外の複数の空港からも引き合いをいただいている状況ですので、積極的に埋設型GPUの事業展開ができるように取り組んでいる最中です。
空港外の戦略については、EC物販産業の著しい成長により、物流倉庫関係における機器の設置及び保守業務の受注が増えています。
また、当社は電気の専門部隊です。電気を主軸にした新しい商品の開発を目指しており、タイのタマサート大学と、空港におけるエネルギーマネジメントシステムの共同研究開発を行っている最中です。
環境×電気×DXの領域で事業の多角化を狙っており、National Agendaの空港における脱炭素に向けた取り組みの1つである空港車両のEV化を好機と捉え、日本空港ビルデング社と空港車両のEV化調査事業を実施しました。さらに、高松空港に電動トーイングトラクターと充電設備を設置し、実証事業を行いました。
この先、当社の得意な電気を主軸としたこの領域で、技術を駆使した新たな製品や機能を具備できるように努め、成長の実現につなげたいと考えています。
目標達成に向けた施策 戦略投資の実行を加速化するための組織改革
目標達成に向けた施策についてご説明します。解決すべき現状の経営課題の再認識として、スライド上段に2つの項目を掲げています。
上場維持基準である流通株式比率25パーセントは、株主3社からの自己株取得等により、2024年3月31日現在は23.83パーセントまで改善していますが、残り1.17パーセント以上の改善が急務となっています。
成長の実現に向けた成長戦略の実行が遅延していることも大きな課題です。この2つを最優先事項の経営課題と認識しています。
これらの課題を解決するべく、BS経営を念頭に置き、3つの方針のもと事業推進していきます。まず、一時的なフリーキャッシュフローのマイナスを覚悟し、成長分野へ積極的な資本投入を行い、資本効率を高めて企業価値向上を目指します。
さらに、先行投資の位置づけで研究開発と人的資本投資を実行することを織り込み、営業利益の一時的な減益を計画しています。
このため、2025年3月期の配当については、遺憾ではありますが、当期の配当45円から5円減配の40円の予想としています。ただし、配当性向は100パーセント以上を保つことを見込んでいます。
そして、これらの経営課題に対してスピード感を持って解決に当たるべく、組織構造を再編することとし、Chief Officer制度を導入しました。加えて、従来の部門制だけでなく、経営課題に対し全社横断的に関与する戦略担務を設け、各役員に明確にミッションを設定しました。
Chief Officer制度及び戦略担務については、次ページ以降で詳細にご説明します。
目標達成に向けた施策 新体制 ①CXO制度の導入 ②戦略担務の設置
Chief Officer制度の導入と戦略担務の設置について、4月10日に開示した際に使用したスライドです。CxOについては、スライド中段に4つの項目を記載しています。
1つ目、経営目標の達成に向けて戦略を立案し、戦略担務ごとの方向性を決定し、進捗をモニタリングします。2つ目、特に戦略目標である成長事業の創出、技術研究開発、財務戦略、資本政策等の実行を加速させるため、必要な指導を実施します。
3つ目、成長戦略の実現に向け、優先順位をつけて最適な資源配分を決定します。4つ目、各戦略担務の成長と事業投資において、適切に投資判断基準を満たしているか否かの判断を行います。
戦略担務については、各々の目標を達成することで、最終目標である株主価値向上に向けて、総力を挙げて推進していきます。
目標達成に向けた取り組み ①CXO制度の役割
CxO制度について図で示したスライドです。当社のChief Officerの役割は、CEOは私、最高技術責任者(CTO)は細見、最高戦略責任者(CSO)は本日司会を務めている辻、最高財務責任者(CFO)は竹山とし、この4人のフォーメーションで進めていきます。
このうち、私と竹山は業界に精通した経営経験や知識を、細見と辻は業界外の経営経験と専門知識を具備しているため、業界内外のバランスが取れたチームだと考えています。
目標達成に向けた取り組み ②戦略担務について
具体的な戦略担務内容をご説明します。まず、スライド左上にある成長事業創出及び事業開発推進として、将来のエージーピーのために、新たな収益の柱となる成長事業の創出のため事業開発を推進していきます。必要となる機能を具備するためのM&A、出資なども行っていきます。
スライド上段の研究開発推進は、成長事業の創出を支える技術開発や、新たな自社製品・機能を具備するための研究開発、当社独自の技術である埋設型GPUの技術革新、省人化に資する技術研究開発などを担っています。
左下のBPR(Business Process Re-engineering)推進は、適正人員の可視化から始まり、業務効率化と適正なシフト編成により、1人当たりの生産性向上を図る役割を担っています。
その他に、人的資本投資・ダイバーシティ推進、GPU設備投資抑制、コーポレートガバナンス強化、上場維持資本政策/財務戦略などの戦略担務を作っています。戦略担務を担う執行役員は、それぞれの定量目標を明確に設定し、責任を持って業務遂行にあたり、中期経営計画の達成を実現していきます。
目標達成に向けた取り組み 人的資本投資
賃金水準の引き上げについてご説明します。昨今の急激に進む物価上昇を背景に、従業員の生活水準を守るため、また、改定が予定されている最低賃金引き上げに対応するため、各企業が賃金引き上げを実施しており、当社においても検討を重ねてきました。
私たちは、既存従業員のみを対象に考えるのではなく、将来のエージーピー、将来のエージーピー従業員のことを考える必要があります。
エージーピーにとって人材は「価値創出の原動力であり最大の資本である」と考えています。4月に組織改革を行い新たな体制でスタートしていますが、戦略目標である成長事業の創出、技術研究開発、財務戦略、資本政策等の実行を加速させるためには、新たな人材の確保も必要です。
また、従業員の成長とともに企業価値の向上を実現させるために、従業員の能力開発を行っていきたいと考えています。この考え方に基づき、1人当たり平均月額1万円、賃上げ率平均3.6パーセントの賃上げを行うことを決定しました。なお、定期昇給を含む賃上げ率は、平均6.2パーセントとなります。
現在当社が必要としている階層には、メリハリをつけ最大2万円の賃上げとしています。この賃上げにより、優秀な人材の確保・維持に向けた採用力強化及び従業員定着率の向上、既存従業員の能力開発につなげていきたいと考えています。
2024年度 主要取り組みと業績予想 損益計算書
ここからは、2024年度の主要な取り組みと業績予想についてご説明します。まず損益計算書の概要です。
当社は、今期よりBS経営を念頭において、資本効率の高い経営を目指し、手元資金に加え有利子負債を活用し、成長投資として、成長事業に資する戦略投資、空港再編・拡張に対する設備投資・更新投資、人的資本投資、研究開発投資等を積極的に推し進め、自己資本比率を適正なレベルに引き下げ、ROEを高める方針としています。
売上高は143億円となり、対前年13億1,300万円増としています。なお、コロナ禍前の2019年度と比較すると、97パーセントに回復し、売上原価については、売上高の増加に伴う原材料費等変動費の増加に加え、研究開発投資・人的資本投資を計画した結果、対前年11億4,300万円の増加を計画しています。
全社費用については対前年4億1,900万円、32.8パーセントと大きく増加させていますが、成長の実現に向けたコストとして、新たな企業成長に資する研究開発投資と、成長戦略の遂行を推し進めるための人材(次世代リーダー候補)の採用にかかる人的資本投資、業務効率化に向けたシステム導入などを織り込んだ結果です。
売上原価と全社費用に、成長の実現に向けた費用を組み込んだ結果、営業利益は対前年で2億4,900万円減の8億1,000万円、一時的に減益を計画しています。これもひとえに、中期経営計画の達成に向けた成長に資する投資と考えて決断したものです。
2024年度 主要取り組みと業績予想 財務計画と経営指標
財務計画と経営指標です。まずはスライド左上の表で、戦略投資についてご説明します。2024年度では、前年度実現していない成長投資と事業投資について、総額27億9,300万円を計画しています。人的資本投資・研究開発投資も計画し、総額で45億円余りの戦略投資を計画しています。
これらの戦略投資を実現するために、先ほどご説明したChief Officer制度の導入、戦略担務の設置など、業務執行運営体制を変更しましたので、しっかりと進捗管理を行い、実行に向けて取り組んでいきます。
スライド右下のキャッシュフロー計算書で示しているとおり、営業キャッシュフロー以上の投資キャッシュフローを計画したことにより、フリーキャッシュフローはマイナス29億3,600万円の計画としましたが、その上で新規借り入れを実施し、しっかり有利子負債を活用して資本効率の向上を図っていきます。
株主還元については、スライド右上の表で示したとおり、2024年度の年間配当を40円としています。中期経営計画期間の4年間の総還元性向は、100パーセント以上を堅持しています。
これらの結果、一時的な利益の減少に伴い、2024年度期末のROEは5.0パーセントとなり、2023年度対比で2.4ポイント低下します。一方で、自己資本比率は7.0ポイント引き下げることができ、60.8パーセントとなる計画です。
2024年度主要取り組みと業績予想 セグメント別売上高予想
セグメント別売上高予想です。2024年度においては、動力供給事業とエンジニアリング事業の伸びが、それぞれ対前年で5パーセント程度増の3億円規模にとどまります。
一方で、商品開発事業では62パーセント増の6億円規模を増加し、商品開発事業が2024年度の業績を大きく牽引していると考えています。これは商品開発事業のうち、特にGSE等販売において、大型GSE機材の販売が成約したことによるものです。加えて、自社製品であるバッテリー駆動式GPU「Be Power.GPU」の販売を計画していることによります。
エンジニアリング事業においては、基本契約等のストックビジネスが増加していますので、今後安定的に売上に貢献できると期待もしています。
動力供給事業については、航空需要の回復はもとより、空港会社とも協調しつつ、お客さまである航空会社に対し、空港におけるCO2排出量の削減への貢献などの趣旨を訴求しつつ、利用率向上のための営業活動を推進していきます。
2024年度は、すべてのセグメントにおいて期中にも営業活動を推進し、さらなる増収を図りたいと考えています。
2024年度主要取り組みと業績予想 セグメント別コロナからの回復率(2019年度対比)
セグメント別のコロナ禍からの回復率を表したスライドです。動力供給事業については、グラフのとおり、堅調に推移して回復しています。
航空需要の回復によってコロナ禍から回復しており、原材料費高騰に応じた価格転嫁分を含めると、売上高は100パーセントの回復率となっています。しかしながら、電力供給機会と利用率の向上に資する営業推進の結果による売上高の回復率は94パーセントと予想しています。
セグメント利益については、研究開発投資を推進することで原価費用が増加します。その結果、2023年度対比で横ばいになると予想しています。
エンジニアリング事業のコロナ禍からの回復率は、92パーセントと予想しています。昨今のIoT、AI等の技術革新によるDX化の進展がありますので、空港内特殊機械設備のメンテナンス事業自体に自動化、機械化を含めた新たな概念が導入され始めています。
現状、私どもが行っている役務提供による常駐保守の減少を懸念しており、コロナ禍前への回復は難しいのではないかと判断しています。これに対応するために、当社においても、省人化・省力化に資する研究開発を戦略担務と定め、強力に推進していきます。
商品販売事業については、コロナ禍による投資抑制機運からは回復しています。しかしながら、当事業はフロービジネス主体であり、昨今の原材料の長納期の影響も受けるなどしており、ボラティリティの高い特性を持っています。
今後も営業活動を推進し、年度の枠を超えた受注を目指すなどして安定化に向けた取り組みを進めていきます。
2024年度主要取り組みと業績予想 株主還元:配当
当社は株主のみなさまへの安定的・継続的な利益還元を最も重要な課題の一つと認識しており、内部留保や業績、財務状況等を踏まえた上で、年2回の配当を行うことを基本としています。
また、1株当たりの利益を増大させることで、株主価値向上を図るとともに、配当及び自己株式取得に積極的に取り組みます。その上で、この中期経営計画期間である4年間トータルの総還元性向を100パーセント以上とすることを目指しています。
2024年度の年間配当は40円を予定しています。2022年度から2023年度の実績と、2024年度の計画を踏まえると、中期計画3年間の総還元性向は110パーセントと試算しています。これからも株主のみなさまのご期待に応えるべく、経営の改善に努めていきます。
質疑応答:物流事業の成長鈍化への対応策について
司会者:「物流事業の成長鈍化の理由として、役務提供からの脱却が叶わなかったとのお話でした。具体的にどのような対策を行っているのでしょうか?」というご質問です。
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