会社概要
宮崎智裕氏:三晃金属工業株式会社執行役員の宮崎智裕です。それでは、2024年3月期の業績についてご説明いたします。
当社は1949年の創業以来、自社開発した屋根製品の製造から設計・施工を通じてさまざまな用途の屋根工事を手掛けてきました。
皇居新宮殿、日本で開催された4度のオリンピック会場と4度の万博関連施設、鉄道、空港、各地の体育館といった街のランドマークから、工場、倉庫、商業施設、集合住宅・戸建て住宅など暮らしに身近な建物までを70年以上にわたって手掛けております。
薄い金属を継ぎ目なく波型にロール成型した「折版(折板・せっぱん)」や「瓦棒(かわらぼう)」と呼ばれる金属屋根は、今では日本中の鉄骨造建築物でスタンダードとなっており、その元祖は三晃金属工業です。屋根を構成するタイトフレームなどの専用部材までほぼ内製化している数少ないメーカーでもあります。
その後も時代のニーズの変化(大規模、断熱、3次元、高強度、高遮音など)に応じてさまざまな屋根工法を世に送り出しております。
屋根の種類/⻑尺屋根
「⻑尺屋根」は、スタジアムや美術館、空港施設、工場など、大規模な屋根づくりに用いられます。素材にはアルミやステンレス、ガルバリウム鋼板、チタンといった各種金属が使用され、形状も「嵌合タイプ」「馳タイプ」「重ねタイプ」「断熱タイプ」「横葺タイプ」とさまざまです。
屋根の種類/R−T工法
「R-T工法」は、ステンレスもしくはチタンを成型した屋根材同士を溶接することで高い水密性と耐久性を実現する防水工法です。国内では当社独自のシステムとしてJASS(日本建築工事標準仕様)に定められています。曲線を活かした特殊な形状にも対応できるため、スポーツ施設や文化施設などの意匠性の高い建築物に数多く採用されています。
屋根の種類/ハイタフEG
工場や研究所など、高度な耐久性が求められる建物に採用されているのが「ハイタフEG」です。環境にやさしいアメリカ製のエチレンプロピレンゴムを主原料とした防水シートを使用し、高い耐候性と耐薬品性を発揮します。完全な防水性を誇り、あらゆる気候や自然災害から屋内を守ります。
屋根の種類/住宅建材
当社の製品は、大型建築だけでなく「一般住宅」の分野でも活躍しています。これまで培ってきた知識と最新のCAD/CAMシステムを応用することにより、一般住宅に求められる安全性や経済性、デザイン性、耐久性、加工性を実現しました。一軒ごとの希望に応える多彩で高品質な製品を提供しています。
未来に向けた挑戦
屋根のリーディングカンパニーとして常に新しい挑戦を続けています。環境問題への取り組みや、施工現場の担い手不足を解消するための省人・省力化への試みなど、未来を見据えたさまざまな施策を行っています。
未来に向けた5つの挑戦
当社は、気候変動による自然災害の頻発や甚大化にともない、時代のニーズに合った商品開発に取り組んでいます。
例えば、屋根の断面形状と固定方法を工夫することにより、極めて高い負圧強度を持つ新商品を開発しました。台風などの災害に強いだけでなく、強風域の建物や高層化する大型物流センターの屋根としても最適です。
こうした商品を世の中に送り出せるのは、自社の技術開発センターを所有している三晃金属工業ならではの強みです。実証実験もすべて社内で行うことにより、安定した品質や価格を担保しています。
未来に向けた5つの挑戦
ドローンを活用した測量やBIMの三次元モデルによる建築図面の管理など、最新テクノロジーを活用することで現場の省人化・効率化を目指しています。
工法に関しても、例えば従来は溶接により接合していたフレームをボルト固定にすることにより、現場での作業を省略化しました。これにより、溶接技術を持たない職人にも作業が可能になっただけでなく、溶接部の塗装や溶接火花の落下防止対策が不要になるなど、現場の作業効率が大幅にアップしています。
こうした最新の技術や工法を採用することで、現場の担い手不足の問題に対応しています。
未来に向けた5つの挑戦
当社は、早くから太陽光電池や屋上緑化の可能性を追求してきました。
東京駅の一部ホームには、パネルと屋根の機能を併せ持つ建材一体型のソーラーパネルを採用しています。屋根の上から設置される一般的なソーラーパネルとは異なり、施設利用者が天井越しにパネルを視認できるほか、バックシートから淡い光を取り込むことで採光も確保できます。
また、屋上緑化については、金属屋根による緑化システム工法を開発しました。ヒートアイランド現象への対策や景観への配慮、建物の耐久性や断熱性の向上など、より自然と共生できる屋根を目指します。
未来に向けた5つの挑戦
全国500社を超える協力会社とのネットワークを活かし、製造から施工までを一貫して行う「責任施工」を実現しています。そのために充実した社員教育はもちろん、若手職人を対象とした技量・安全研修なども積極的に開催しています。
特に、高度な技術を要する施工研修を自社工場で行うことにより、現場だけでは習得が難しい知識やスキルを身に着けてもらいます。こうした取り組みによって職人との連携を強化することで、クライアントはもちろん、職人からも選ばれ、信頼される企業を目指します。
また、三友会会員の施工技術向上と技術伝承のため、埼玉県深谷市に「三晃クラフトアカデミー」を開設しました。今後も施工技術に磨きをかけてまいります。
未来に向けた5つの挑戦
今後も当社が社会の役に立つ商品・サービスを提供し続けるために、仕事の質や生産性の向上などを通して、若手からベテランまで社員一人ひとりが、自らの成⻑を実感しながらやりがいを持って、心身ともに健康で活き活きと、持てる力を最大限発揮して働くことを実現します。
そのために、業務プロセスの改革、人材育成の強化などさまざまな取り組みを通して、快適で効率的な職場環境づくりに取り組んでいます。
2024年3月期 決算概要
それでは、2024年3月期の業績についてご説明いたします。
当事業年度の需要の前提となる2022年度(2022年4月から2023年3月)の全国非住宅鉄骨造着工床面積(申請ベース)は、前期比8.4パーセント減少、全国非住宅鉄骨造着工床面積のうち、当社工事物件に関係する工場・倉庫においては前期比4.1パーセント減少と、第2四半期までは回復基調にあった需要環境が第3四半期以降、減少に転じました。
建築コストにつきましては、諸資材価格は総じて高い水準で推移しております。
業績ハイライト
売上高は、工場・倉庫などの堅調な需要に支えられ7.8パーセント増収しました。経常利益は、増収及び売上利益率改善に伴い10.2パーセント増益、ROEは前期に引き続き10.8パーセントとなりました。
受注高
受注高につきましては、国内生産施設、物流倉庫を中心とした大型新築工事物件、竣工後20年以上経過した建屋の改修ニーズ捕捉による改修工事の受注などにより、前期比34億8,900万円(7.7パーセント)増加の485億9,800万円となりました。
売上高
売上高につきましては、31億1,700万円(7.8パーセント)増収の429億1,400万円となりました。
うち完成工事高としては、高いレベルにあった期首受注残の工事が順調に進捗したこと等により、前期比45億6,600万円(14.3パーセント)増収の364億1,700万円となりました。
うち製品販売高としては、屋根製品販売、住宅建材事業における減収、前期に海外大口販売物件があった反動から、14億4,900万円(マイナス18.2パーセント)減収の64億9,700万円となりました。
売上総利益
売上総利益につきましては、増収効果に加え、売上総利益率の改善(前期比プラス0.3パーセント)により前期比9.1パーセント増益の93億4,700万円となりました。
受注残高
受注残高は過去最高を更新し、前期比56億8,300万円(20.8パーセント)増加の330億700万円となりました。
経常利益増減分析
経常利益につきましては、受注単価の改善、工事量の増加、工事原価管理強化による原価低減等により、売上総利益が前期比7億8,200万円(9.1パーセント)増加したものの、ベースアップ、営業・工事系システムの基盤整備による減価償却費等販売費および一般管理費4億4,600万円(8.6パーセント)の増加があったため、前期比3億4,300万円(10.2パーセント)増益の37億900万円となりました。
財政状況
総資産につきましては、増収に伴い主に流動資産・負債が増加したことにより、前期比34億5,500万円(9.4パーセント)増加の401億6,200万円となりました。
純資産
純資産は、前期比19億7,200万円(8.6パーセント)増加の249億6,300万円となりました。この結果、自己資本比率は62.2パーセント(前事業年度末62.6パーセント)となりました。
キャッシュフロー
営業活動による資金の増加は41億600万円となりました。主な増加要因は、税引前当期純利益36億8,600万円、減価償却費6億9,200万円、仕入債務の増加額12億4,100万円、棚卸資産の減少額3億9,000万円であります。主な減少要因は、売上債権等の増加額11億7,700万円、法人税等の支払額11億4,200万円であります。
投資活動による資金の減少は9億3,400万円となりました。主な減少要因は、有形固定資産の取得による支出5億8,300万円、無形固定資産の取得による支出3億9,100万円であります。主な増加要因は、有形固定資産の売却による収入4,900万円であります。
財務活動による資金の減少は7億3,200万円となりました。主な減少要因は、配当金の支払額7億1,100万円であります。
2025年3月期の見通し
次に、2025年3月期の業績予想についてご説明いたします。
建設業界におきましては、新築需要の減少、今年度から建設業にも適用される残業規制や人手不足に起因する前工程の遅延、建設コスト高騰による建設計画の中止・延期などが懸念され、引き続き今後の動向を注視してまいります。
当社においては、営業面では技術提案を中心にした設計織込み営業の強化に注力するとともに、今秋には新しい省施工商品を市場に投入する計画としており、さらに受注を拡大してまいります。
工事面では引き続き高レベルの期首受注残高を維持しており、工事量の増加を確実に実行し、増収に注力いたします。
一方で、資材コスト、労務コスト、運送コスト等の建築コストは上昇しており、受注価格への転嫁と一層のコスト低減強化により全体的な利益確保に努めてまいります。
業績予想
2025年3月期の業績見通しにつきましては、売上高は期首受注残高が売上に寄与し4.9パーセント増収の450億円、経常利益は、売上総利益が増収により3.9億円増加するものの、人件費上昇等に伴う固定費が6億円増加し5.6パーセント減益の35億円、当期純利益は24億6,000万円を計画しております。
配当実績・予定
配当金につきましては、配当性向30パーセント方針により、前期より10円減配の190円を予定しております。
当社は、今後持続的成⻑を可能とすべく、中⻑期視点から競争力のコアとなる技術力の強化、施工協力会社との連携による施工体制の強化に努めるとともに、「業界最高レベルの商品力・営業力・工事力」で好循環を創出し、圧倒的な総合力で業界をリードするため、安全の確保を前提とした工事現場の生産性向上と工事品質向上、そのために必要な投資に継続的に取り組んでまいります。
今後とも、安全・法令遵守への取り組みを継続的に行うとともに、すべてのステークホルダーから信用・信頼され、選ばれる企業として社会に貢献し、持続的な成長を図ってまいります。