本日の登壇者について:プロフィール

塩川拓行氏(以下、塩川):みなさまこんにちは。株式会社いい生活、個人投資家向けIR説明会をご視聴いただきありがとうございます。本日ご説明するのは、代表取締役副社長CFOの塩川です。よろしくお願いします。

まず、簡単に自己紹介をします。私は株式会社いい生活の創業メンバーの1人で、現在、代表取締役副社長CFOを務めています。証券時代や外資系投資銀行に勤務していた時の同僚とこの会社を創業し、今に至っています。みなさまから「なぜ、外資系の証券の人たちがIPと不動産なの?」とよく聞かれますので、本日はそのような点についてもお話しします。

目次

塩川:本日はスライドに記載したような流れでご説明します。

ミッション/ビジョン

塩川:事業内容について簡単にご説明します。当社は不動産テックという領域で事業を展開しています。ミッションとして「テクノロジーと心で、たくさんのいい生活を」を掲げ、「心地いい暮らしが循環する、社会のしくみをつくる」というビジョンの実現を目指している企業です。

不動産会社のDXを支援、不動産取引のペインポイントを解消

塩川:当社のビジネスモデルです。業界特化型の「垂直型バーティカルSaaS」という領域で、お客さまは不動産会社さんです。さらにそのお客さまであるエンドユーザーへ、より良い不動産取引体験を提供するためのシステムをSaaSで提供しています。

スライドの左側をご覧ください。当社はサービスの企画・開発、マーケティング、セールス、サポートをすべて自社で行い、お客さまから月額利用料をいただくサブスクリプションモデルでビジネスを展開しています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):質問を挟みながら進めていきます。よろしくお願いします。経歴と現在の仕事の関係のお話がありましたが、創業のきっかけについて教えてください。

塩川:我々はもともと証券会社に勤務しており、90年代の終わりに証券市場がインターネットとデジタル化によって大きく進化していく様子を目にしてきました。よく「証券と不動産は違う」と言われますが、資産を運用するという意味では、実は非常に似通っている点があります。我々は、金融で起きたことはおそらく不動産の市場でも起きると考え、不動産市場のデジタル化に賭けてみることにしました。

不動産市場は証券市場に負けずとも劣らない大きな市場ですが、証券会社は比較的大企業が多いのに対し、不動産会社は地域密着型産業のため中小企業が非常に多いという点が違います。そのため、証券会社と同じようなかたちでシステムを提供するのではなく、中小規模のお客様により良いシステムを考えると、当時はアプリケーションサービスプロバイダーなどと呼ばれていたSaaSのほうが向いているのではないかと考えました。

どちらの市場も法律に則って業務を行うため、業務内容は類似していますが、まだ良いシステムがないということが当時の課題でした。そこで、我々が開発しようと事業をスタートさせました。

坂本:先ほどアプリケーション系の話にもあったように、創業時はSaaSのようなシステムも、システムで仕事を進めていくことも、まだ一般的ではなかったと思います。御社の製品も当初からフルラインナップではなかったと思うのですが、どのようなところから始めたのでしょうか?

塩川:当初はインターネット上の媒体で情報を提供していました。しかしながら、媒体よりも、みなさまの日ごろの業務を支援するシステムのほうがニーズが高いのではないかと考え、業務効率化に特化したシステムの開発に舵を切りました。まずは賃貸仲介からスタートし、徐々に賃貸管理や売買仲介にまで拡大してきたという経緯です。

不動産カテゴリーとして、現在は賃貸仲介、賃貸管理、売買仲介をメインに事業を展開しています。分譲やオフィスビルなどは、まだそれほど多く手がけていません。

不動産会社のさまざまな「困りごと」を解決する統合型業務支援システム

塩川:スライドに不動産会社のカテゴリーを記載しました。左側は賃貸管理会社、右側は賃貸仲介会社です。当社は賃貸管理、賃貸仲介、売買仲介というセグメントにフォーカスしており、みなさまそれぞれに課題があります。

例えば、一般の消費者の方からは業務内容が見えにくいのですが、管理会社さんはオーナーさんから物件を預かって家賃管理や建物管理などの資産管理をしています。その中で、物件を空室にしておくのではなく、テナントさんに入ってもらって運用していくことが管理会社さんの課題となります。

一方で、仲介会社さんは家を探している方に対して物件を紹介する仕事になるため、重要事項説明や契約プロセスをいかに簡略化するかが課題です。このように、それぞれ異なる課題に応えるため、我々もラインナップを分けて提供しています。

不動産賃貸管理会社の業務

塩川:不動産賃貸管理会社の業務内容です。スライドの図は、不動産賃貸管理会社さんの業務と当社のサービスプロダクトがどのようなかたちでマッチしているのかを示しています。スライド中央の水色の図が賃貸管理会社さんの業務です。

賃貸管理会社さんはオーナーさんから物件を取得し、入居者の募集業務を行います。募集そのものは、自社で仲介する会社もあれば、仲介専門会社にお任せする会社もあります。入居が始まると入居者から家賃を回収し、オーナーさんに届けます。他にも建物のメンテナンスなど、建物に関するさまざまな業務をオーナーさんに代わってすべて請け負います。

そこで、例えば毎月オーナーさんに行う家賃の収支報告に当社の専用アプリ「いい生活 Owner」を使用すると、オーナーさんにとっては連絡が一本化されるため便利ですし、賃貸管理会社さんは複数のオーナーさんに同じフォーマットを使用できるため、業務効率も向上します。

また、物件に入居された方とのさまざまなやり取りには専用アプリ「いい生活 Home」があります。例えば、設備のトラブルが発生して、入居者が不動産管理会社さんに連絡する時などに、電話やメールではなく専用アプリを使用することで、意思疎通がしやすくなります。

加えて、賃貸管理会社さんは入居者から預かった家賃から自分たちの手数料を引いてオーナーさんに支払うため、非常に厳格なお金の管理が必要になります。そのような業務もすべて当社のシステムで行うことができます。

当社のラインナップは、賃貸管理会社さんだけでなく、オーナーさん向け業務や入居者向け業務、あるいは決済の部分などを分けて提供しており、それぞれを組み合わせたかたちでご利用いただけます。

飯村美樹氏(以下、飯村):すでに他社システムを使用している場合でも、御社のシステムを取り入れることは可能でしょうか?

塩川:システム全体を入れ替えるケースもありますが、募集や入居者向けツールから当社のシステムをご利用いただくことも多いです。導入すると、同じシステムでそろえたほうが楽だということで、結果的にクロスセルが進むこともあります。他社システムをご利用中の企業さんも気軽に導入していただき、利便性が高いと感じていただけたら、当社のラインナップに徐々に置き換わっていくのではないかと思います。

坂本:御社のサービスは、1つずつのソフトというか、アプリごとに契約できるのでしょうか? それとも、ある程度は一括で契約するかたちでしょうか? どのような契約体系になっているのか教えてください。

塩川:それぞれのツールごとに、個別にご契約いただけます。契約方法としては、法人単位の契約もあれば、店舗単位の契約も一部あります。かなり自由度高くサービスを組み合わせることが可能で、自社の課題に沿ったものをお選びいただけます。

坂本:御社のシステムは自社開発されているのでしょうか? それとも、ある程度の要件に絞って開発しているのでしょうか?

塩川:当社は自社開発にこだわり、社内にエンジニアを抱えてすべて自社で開発しています。現在、社員200名ほどの会社ですが、約半分がエンジニアです。システム開発だけでなく、企画も自社で行っています。さらに、サポート部門も自社で行っているため、お客さまからのさまざまなニーズも瞬時に入ってきます。それをサービスに反映し、素早くリリースしていくというサイクルを設立時からずっと繰り返しています。

バーティカルSaaS + BPaaSがもたらす相乗効果

塩川:当社のサービスのラインナップをカテゴリーごとに分類したスライドです。当社の売上区分はSaaSサブスクリプションとソリューションに分かれています。SaaSサブスクリプションは、お客さまからいただく月額の利用料が主な売上です。

SaaSを導入いただく際、必ずしもその不動産会社さんがIT人材をたくさん抱えているわけではないため、自社で導入準備が進めづらいことがあります。例えば、オーナーさんとの管理受託契約や入居者との賃貸借契約など、膨大なデータをすべてデジタル化してシステムに格納したり、他社システムを使用している場合は、情報をいったん取り出して当社のシステムに再投入するといった作業が必要となります。

導入を検討する不動産会社さんから、このような業務もすべてお任せしたいというご要望を多くいただくようになったため、2018年頃からソリューションサービスを開始しました。当社が業務を一部受託し、そのようなサービスをソリューション売上として区分しています。

車輪の両輪のように、サブスクリプションの後には必然的にソリューションのニーズが出現し、ソリューションが進むとさらにサブスクリプションも進むといった、相乗効果を発揮するかたちでサービスを提供しています。

いい生活のポジショニングと競争優位性

塩川:当社の強みについてお話しします。1つ目は当社はバーティカルSaaS、いわゆる垂直型の市場特化型SaaSを展開していること、2つ目はSaaSオンリーで行っているということです。

3つ目は、マルチプロダクト戦略をとっているため、垂直に展開する中で必要とされるシステムをひととおり当社で提供したいという思いを持っていることです。この3つが当社の主な競争優位性と考えています。

加えて、自社で開発している点や、不動産に精通した人間がエンジニアやセールス部隊を構成している点も当社の強みになっています。さらに、賃貸管理会社さんにフォーカスしていること、さまざまなサービスが同じSaaSプラットフォーム上にあるため非常に連携が取りやすいというメリットもあり、こうした点も当社の強みだと思っています。

不動産市場におけるSaaSの可能性

塩川:不動産市場とSaaSとの相性についてお話しします。結論から言うと、不動産市場はSaaSに非常に向いてる市場だと考えています。現在、不動産会社は全国に約12万5,000社あります。ある程度は都市部に集中しているものの、さまざまな場所に散らばって存在しているため、数も多く、SaaSのようなシステムの提供の仕方が向いていると言えます。

加えて、3年前に賃貸住宅管理業法ができ、これまであまり規制がなかった、いわゆる管理会社さん側からオーナーさんに対してやらなければいけないことが法律で明確化されました。

そのような法改正が今後も続くと、オンプレミスのシステムを開発し、受託やカスタマイズを繰り返していくほうが良いのか、それとも、法改正があれば我々が全部対応するSaaSを導入してそれに乗ってしまったほうがよいのか検討する必要があります。

不動産会社経営者さんの中でも、今はSaaSを選んだほうが良いのではないかという方が増えてきています。この点もSaaSが非常に向いている理由です。

また、スライドの3番目に記載したように、サプライチェーンに登場する多様なプレーヤーを、同じプラットフォームの上で結びつけることができるため、合理性も非常に高いです。例えば家賃の支払いでも、最近は家賃保証会社さんが間に入るケースもあります。そうなると、やはりいろいろな方と情報を共有しなければいけません、SaaSは情報共有も非常にスムーズです。

さらに、スライドの4番目に記載したように、不動産会社はITに対する人材が豊富ではないため、システムを使い始めたらある程度任せたいというニーズがあります。それもSaaSならば、ソフトウェアのアップデートやサーバーの更新などもないため、みなさまが本業に集中できるというメリットもあります。

5番目の「必須マスター情報の存在」については、少しわかりにくいかもしれません。例えば今年の1月に政令指定都市である浜松市で区の統合が行われました。統合すると不動産情報の最も重要なところを構成している住所の情報が変わります。SaaSなら全体でグローバルチェンジがかけられるため、我々がサーバー上で情報を変更すればみなさまに適用されます。

そのようなシステムを使っていなければ、ユーザーのほうですべての住所情報を書き換えなければならないため、それも非常に煩雑です。そのような住所情報の更新等を考えても、SaaSは不動産市場に非常に向いているのではないかと考えています。

不動産取引のDX化に係る主な法改正や新制度

塩川:スライドは外部環境としてのいろいろな法制度改正の推移を記載したものです。重要なものは先ほどお話しした、2021年6月に賃貸住宅管理業法が施行されたことで、賃貸管理会社さんがオーナーさんに対して行うべきことが明確になりました。

加えて、2022年に電子契約が全面的に解禁になったため、現在はこのあたりの対応も進めています。外部環境や行政の動きとしても、不動産業のDXを強く推進していけるのではないかと考えています。

業績ハイライト

塩川:2024年3月期第3四半期の業績サマリーについて簡単にご説明します。売上高は20億5,100万円で、売上に占めるサブスクリプションの比率は88.2パーセントです。つまり約9割がサブスクリプションで占めているため、非常に安定した恒常性の高い売上構成になっています。有料課金法人数は1,507法人となっており、サービス利用店舗数は約4,500店舗です。

また、当社はソフトウェアを自社開発しており、設備投資が非常に大きくなるためEBITDAを出しており、こちらが4億6,800万円です。営業利益は前年同期比で少しマイナスとなり、まだキャッチアップしきれていないために1億1,000万円です。

顧客あたりの平均月額単価のARPUは13万6,000円と、SaaSの中でも非常にがんばっているほうだと考えています。2023年度のARPUが13万円程度だったため、じわじわと上昇を続けています。

スライドの右下に記載しているのはMRR解約率で、売上ベースの解約率を出しています。このマイナスは解釈が少し難しいかもしれませんが、既存契約の減少をすべて既存契約の増額で補っており、SaaSではネガティブチャーンと言われる状態です。解約をゼロにはできないものの、その月のプラス分でほぼ補えています。

サブスクリプション売上は前年同期比8.0%成長

塩川:売上の前年同期9ヶ月間との比較です。サブスクは順調に伸びています。ソリューションは、大型案件が少し下期に固まっていることもあり、前年同期比ではまだマイナスであるものの、こちらもきちんとキャッチアップしていきたいと考えています。

坂本:契約の体系については先ほどざっくり教えていただいたものの、実際には事業者あたり、または人あたりなど、いろいろなタイプの契約があるのでしょうか? また、いくつものソフトを契約すると安くなるなど、そのあたりも組み合わせながらかなり柔軟に対応しているのですか?

塩川:サービスごとにライセンスを契約するかたちになるため、それぞれのプロダクトごとに契約が可能です。また、それぞれのプロダクトの中でプランが分かれており、物件登録数が多い方と少ない方では差があるため、それでも変わってきます。そのため、用途としてはかなり複雑です。

一部従量的な売上もあります。例えば提携しているサービスからの手数料収入があります。当社は自社で電子契約を作らずに他社さんのサービスをそのまま提案し、その手数料を得るかたちにしています。その件数が増えれば当社に入ってくる手数数が増えるため、サブスクリプションの中でもより固定的なものと従量的なものがあります。

坂本:その2タイプがあるということですね。

塩川:契約についてはかなり柔軟に対応できるため、お客さまのほうでどの程度の物件数で利用したいかも含めて柔軟に選択してもらえます。

坂本:ソリューションの受注が下期のほうで固まっているという話がありましたが、これはけっこうな額になるのか、また、その後の受注もあるのかという点も含めて教えてください。

塩川:具体的にどのような業務かというと、例えば紙の契約情報を全部デジタル化したい等のニーズも含めて、賃貸管理会社さんを中心に、システムを使うために必要なさまざまな情報をあらかじめシステムに投入するという仕事があります。

先ほどお話ししたように、不動産会社は人手の問題があるため、その対応のために専門のITの人材を抱えるよりは、我々に任せていただいたほうが良いだろうと判断しています。その分、今は受注が非常に好調で、常時2億円ぐらいの受注残を持って推移しているため、ここは当社も提案すればどんどん仕事が取れてしまう領域です。

ただし、当社はここだけを伸ばすつもりはなく、あくまでもサブスクが増える中でソリューションも自然と増えてくれば良いと思っています。また、大きなサブスクを取ろうと思ったら、ある程度ソリューションも提供しないといけません。そのため、相乗効果というよりも、サブスクリプションとソリューションは車輪の両輪という感じで展開しています。

坂本:普通に契約されている方が、違うソフトもということで増やすパターンはかなり多いですか?

塩川:おっしゃるとおりです。もちろん最初からある程度セットで使うケースもあるものの、だいたいは賃貸管理や賃貸仲介、売買仲介などのいわゆるコアのサービスを使っていただきます。

例えば賃貸の仲介のお客さまであれば、今はいろいろなインターネットの媒体があるため、そこに広告として情報を掲載します。その時に電子的に情報を送る仕組みがあり、その仕組みを使っていないと、不動産会社さんが媒体の管理画面に手入力することになり、かなり煩雑です。そのため、媒体ごとにいわゆるコンバートと言われるサービスも提供しています。

それも完全にライセンス単位で提供しているもののため、契約としてはパターンが多く、やや複雑になりがちですが、お客さまのニーズに合わせて、いろいろなことが提供できる状態になっています。

前年同期比で増収、3Qまでやや費用先行で減益

塩川:P/Lはスライドのとおりで、前年同期との比較を記載しています。売上は順調に伸びているものの、まだ営業利益が追いついていないため、下期はがんばっていきたいと思っています。

直近実績と2024年3月期通期業績予想(連結)

塩川:今期の予想および直近2ヶ年の実績です。毎年順調に増収増益を繰り返しており、足元では順調と考えています。

大手企業から地方有力先へ当社SaaSの導入進む

塩川:当社のSaaSのご紹介ということで、導入の事例をいくつかご用意しました。それぞれ首都圏あるいは近畿圏での大きなお客さまに導入いただいています。当社のサービスはSaaSの中でも非常に機能を重視しているため、比較的規模の大きなお客さまにも導入が進んでいます。

これは裏を返せば、それだけの機能を提供できていることに加え「SaaSが良いのではないか」というみなさまからの期待の声が非常に大きいということだと思っています。

いい生活賃貸管理クラウド

塩川:プロダクトのラインナップは先ほどお話ししたとおりです。当社の主力サービスである「いい生活賃貸管理クラウド」は、賃貸管理会社さんが入居者の管理から家賃の管理まで、ひととおりの管理業務ができるものになっています。

いい生活賃貸クラウド

塩川:「いい生活賃貸クラウド」は賃貸仲介会社さん向けの機能です。例えば自社でデータベースを作り、自社のホームページで簡単に物件紹介、あるいは媒体に物件情報を送りたいというケースにこれを使っていただきます。先ほどお伝えした媒体ごとのコンバートはこのオプションになっています。

いい生活Square

塩川:「いい生活Square」は非常に面白いサービスです。これは賃貸管理会社さんが賃貸仲介会社さんに空室物件情報を送るシステム、いわゆるプラットフォームです。

これも消費者からなかなか見えにくいところですが、みなさまが家を借りる時にお話しするのは賃貸仲介会社さんが多いと思います。しかし、賃貸仲介会社さんは賃貸管理会社さんとは違って、オーナーさんとは直接話さず、鍵を持っていません。

鍵は賃貸管理会社さんが持っているため、例えばみなさまが店頭に行って物件をいろいろ見せてもらう中で「この物件に興味があります」と伝えると、賃貸仲介会社さんは賃貸管理会社に「空いていますか?」と確認をするわけです。

このサービスは、我々には賃貸管理のお客さまがたくさんいるため、そのシステムから空室物件だけをここに出そうということで、システムを自動的に連動しています。そうすると、この「いい生活Square」に出ているものについては、空室かどうかという物件確認は不要です。なぜならば、その仕組み上、空室しか表示されないからです。

そのため、賃貸仲介会社さんからすると、いちいち賃貸管理会社に電話して、物件が空いているか、紹介しても大丈夫かと確認しなくても紹介できるため、賃貸管理会社さんにも賃貸仲介会社さんにもメリットがあります。

今はほとんどの機能を無料で提供しており、登録している賃貸仲介会社さんはだいたい1万8,000社です。この賃貸仲介会社さんが当社のお客さまである賃貸管理会社さんの物件情報を必要としており、賃貸管理会社さんから見ると、賃貸仲介会社さんに入居者募集を任せているケースも多いため、相乗効果で双方にメリットがあるプラットフォームとしてサービスを提供しています。

いい生活ウェブサイト

塩川:「いい生活ウェブサイト」は、不動産会社さん専用のいわゆるホームページを簡単に作る機能です。これも不動産業に最適化して作っているため、データベースとの相性も非常に良いです。

例えば、いろいろな沿線別の検索や地図情報を使った検索などにも対応できるものになっています。これは、ほとんどのお客さまに使っていただいているサービスです。賃貸でも売買でも、賃貸管理でも、みなさまこれをお使いいただきます。

いい生活売買クラウド

塩川:「いい生活売買クラウド」は、売買仲介業務用です。例えば重要事項説明を作ったり、お客さまの希望条件を登録しておいて、自動的にそのお客さまに対して物件を案内したりする機能があるため、売買業務のいわゆる営業支援、顧客管理的なシステムになっています。

いい生活Home/いい生活Owner/いい生活Pay

塩川:「いい生活Home」「いい生活Owner」「いい生活Pay」です。「いい生活Home」は入居者向けのアプリです。例えばこれは賃貸管理会社さんと入居者にコミュニケーションを取ってもらうものです。集合住宅にお住まいのみなさまは、入口の郵便受けのところなどによく掲示板等があると思うのですが、そこに不動産会社からいろいろな連絡がきます。

その連絡内容を掲示板に貼るのではなくて、専用のアプリで賃貸管理会社さんと入居者につながってもらうと、非常にコミュニケーションがスムーズになります。不動産会社からも連絡がしやすいし、入居者からも連絡がしやすいです。

入居者が不動産会社に連絡するのは、必ずトラブルの時です。その時も電話やメールでも構いませんが、専用のアプリだと会社のみなさまがご覧になるため、対応がより早いです。そのような意味で、賃貸管理会社さんも入居者向けに良いサービスができます。

「いい生活Owner」はオーナーさま専用のアプリです。収支報告や修繕の見積もり等をオーナーさまに直接送るための機能で、これもメールや電話より良いだろうということで提供しています。「いい生活Pay」は、家賃の決済や更新料などの決済でお使いいただくための決済アプリです。

「いい生活Pay口座振替」の取り扱い金額が1億円を突破

塩川:「いい生活Pay口座振替」というサービスは、賃貸管理会社さんが入居者から集金するための仕組みです。当社はSMBCのグループ会社さんと提携して一緒にサービスを展開しており、その取り扱い金額が累計1億円を超えてきたため、少しご紹介しています。

2024年3月期の基本方針・成長戦略

塩川:当社の経営方針とビジョンです。当社が力を入れてる点をいくつかお話しすると、当社はSaaSをフルラインナップで提供している数少ない会社であるため、この唯一のポジショニングを活かして、お客さまのSaaSシフトをしっかり支援していきたいと考えています。

現在、大手企業への導入を一生懸命に進めています。現在は大手の会社でも、やはりSaaSが良いのではないかというトレンドがあるため、それをしっかりと捉えていきたいと考えています。

全体最適については、当社はマルチプロダクトの戦略をとっているため、どこか一部分だけが改善できれば良いのではなく、お客さまの業務全体を改善したいという発想で展開しています。

加えて先ほどお話しした「いい生活Square」というサービスを無料でご利用いただいているお客さまが現在1万8,000社あり、そこから徐々に当社の有料サービスをご利用いただけるように誘導していきたいと考えています。

さらに連携サービスの拡大ということで、電子契約、あるいは今後増えるであろうお客さまの会計システムとの連動など、お客さまの業務全体をうまくつなげて、よりスムーズにいくように展開しています。以上が現在当社が力を入れているポイントになっています。

不動産テック市場規模推移と予測

塩川:不動産市場全体の規模感です。これは当社独自の数字ではなくて矢野経済研究所さんのデータをそのまま使っています。一応このぐらいの規模感があるといわれています。

不動産テック市場の潜在的市場規模

塩川:スライドは当社の獲得し得るマーケットの規模を記載しています。不動産テック全体の市場規模が1.2兆円として、その中で業務支援のシステムで構成される分はおそらく1,700億円ほどあるのではないかと考えています。

そのうち当社はまず、60億円を目指そうと思っています。現時点の約2倍になりますが、このぐらいは十分に実現可能なゾーンだと思ってますので、しっかりと60億円を目指していきたいと思っています。

坂本:スライドに記載の市場規模についてお聞きします。御社のシステムは、各ステージの何パーセントぐらいがターゲットになるのか、ステージごとに教えてください。

塩川:もちろん当社のサービスだけで市場のすべてを取りきれるというものではないと思います。スライド中央に記載したSAMは、市場規模を1,700億円ぐらいと見積もっており、これが業務支援システムの大部分を占めています。そのため、ここが当社の最大限アプローチできるところだと思っています。

加えていろいろな競争状況などもありますが、SaaSのみというユニークなポジショニングで、今はシェアを一生懸命伸ばしていこうと取り組んでいます。シェアが何を示すのか概念的にはなかなか難しいですが、使っていただけるお客さまの数を増やしていこうという意味合いです。

坂本:御社は無料ユーザーを増やして、そこからアップセルにつなげるというビジネスモデルが基本でしょうか?

塩川:賃貸住宅管理業者のお客さまは、やはり慎重に検討いただいて移行するケースが多いですが、特に賃貸住宅仲介業者のほうは先ほどの「いい生活Square」で無料版を使って良さを実感していただいて、徐々に有料版に移行していただけるという流れがあり、当社サービスへの潜在ニーズがあると思います。

また、無料版「いい生活Square」の中で、物件情報のPDFのチラシ情報がダウンロードできます。

坂本:物件の概要・間取り図・契約情報などがまとまった物件資料、マイソクみたいなものでしょうか?

塩川:おっしゃるとおりです。当社のサービスを使っていると、それがデジタルダウンロードできるため、使いこなせる範囲が非常に広がっていくイメージです。

坂本:このサービスは、一般消費者に開放しませんか?

塩川:そのような声もよくいただきますが、お客さま向けにやっているもののため、当社としては今のところ、そこまでは構想していません。まずは賃貸仲介会社さんのほうにメリットを感じていただき、しっかりと顧客化していきたいと考えています。

不動産市場のDXに向けたプロダクトビジョン

塩川:当社のプロダクトビジョンについてご説明します。マルチプロダクトでリアルタイムデータ連携というのが当社の一番の強みになるため、それをこれからも続けたいと思っています。サービスはひととおり揃ってきましたが、まだこれから作るものもあります。

例えば、賃貸管理会社さんが簡単な修繕工事をする時の管理機能などはこれからになります。また、すべてを自社で提供するだけではなく、電子契約などは第三者の既存サービスともしっかり連携しながら、お客さまの総合的な業務効率化をサポートしていきたいと考えています。

不動産に関するあらゆるデータが集まるプラットフォームへ

塩川:当社のビジョンについてご説明します。「不動産に関するあらゆるデータが集まるプラットフォーム」というのを志向しています。不動産は本当に裾野が広く、いろいろな業界と近接的に繋がってる市場です。そのため、不動産市場だけではなく、隣り合ってる市場も含めて当社のプラットフォーム上に徐々に取り込むことによって、ビジネスチャンスの領域を広げていきたいと考えています。

SDGsへの取り組み

塩川:当社のサステナビリティへの取り組みについてご説明します。当社はSDGsも非常に意識しており、例えば「住み続けられるまちづくりを」というゴールがありますが、それはまさに当社の取り組みにぴったりだと思っています。当社は、ビジネスそのもので社会課題解決を目指していきたいと思っています。

取得済み認証

塩川:当社の取得済み認証についてご説明します。例えば、健康経営優良法人2023や、IT会社では当たり前と思っていますが、DX認定などを取得しています。

また、ISMS(ISO27001)は非常にポピュラーな規格で取得企業も多いと思いますが、当社はそれよりさらに厳しい規格である、ISMS(ISO27017)、ITSMS(ISO20000)を取っており、これは少し自慢できるところかと思います。お客さまの大事な情報をクラウドで多数預かっているため、情報セキュリティには非常に気を使い、万全の体制でやっているというところです。

「人的資本拡大に関する基本方針」を策定

塩川:当社は人的資本経営を掲げており、スライドに記載のような基本方針を社内で定めて取り組んでいます。

生産性の高い開発環境に評価、人的資本の充実にも直結

塩川:開発チームが非常に生産性の高い開発をしているということで、外部サービスからも多数表彰などをいただいています。

ESG関連トピックス

塩川:ESG関連トピックスについて、当社はスタンダード上場ではありますが、統合報告書まで公開しています。当社の非財務的な情報なども含め、みなさまにぜひご覧いただけたらと考えています。

質疑応答:不動産市況の現状と自社のポジショニングについて

坂本:「不動産市況の現状と御社のポジショニングについて教えてください」というご質問です。

塩川:不動産市況全般について、当社が主にフォーカスしている賃貸管理、仲介の市場は、おそらくみなさまが想像されるほど、いわゆる景気に対する感応度が高くないと言えるかと思います。みなさま家は借りますし、最近は金利上昇も視野に入ってきていますが、当社のお客さまである賃貸住宅管理業者さんはおそらく、そこまで大きな影響を受けないのではないでしょうか。

例えば、売買や分譲の市場はこれから金利上昇の影響を少し受ける可能性がありますが、賃貸住宅管理業者は、基本的に家賃収入に対する手数料で収入を得ている会社が多いため、我々のお客さまである賃貸住宅管理業者も、ストックをベースにした経営をされています。そのため、市況にそこまで左右されないと考えています。

質疑応答:無借金で経営できている理由について

坂本:「有利子負債がゼロですが、無借金で経営できている理由は何ですか?」というご質問です。

塩川:おかげさまで営業キャッシュフローがしっかりと回っています。これは投資を渋っているわけではなく、設備投資をしっかりして、現状でキャッシュを残せている状態だと思っています。

おかげさまでお客さまに好評いただいて導入が進んでおり、そこでしっかり営業キャッシュフローを上げて、それをだいたい毎年5億円、6億円ぐらい設備投資に振り向けているため、現状はそれで必要な投資が十分できてしまっているというところです。

例えば今後、サービスの開発にアクセルをぐっと踏む場面があるかもしれませんし、場合によっては他社とのいろいろな連携が視野に入ってくるかもしれませんが、今はその時に備えて、非常にフレキシブルで動きやすいバランスシートの状況にしているということです。

質疑応答:増配の計画について

坂本:「配当は一定ですが、増配はしていかないのでしょうか?」というご質問です。

塩川:実は去年、少し考えており、まだ実現していませんが、増配する余地はあると思っています。過去の事例からだいたい3割ぐらいを目途にしており、このまま順調に利益が出ていけば増配が視野に入ってくると考えています。

もちろんまだ決まったものではありませんが、配当も基本的には先ほどと同じように、営業キャッシュフローでしっかりと稼いで、そこから必要な投資もして、さらにお金をみなさまにお返しできる状態だと思ってます。そのため、投資との間で何か対立があるわけではなく、投資もしっかりしながら配当も出せるというスタイルでやっていければと考えています。

質疑応答:経営者の株式保有の考えについて

坂本:「会長から副社長までが大株主となっています。設立の経緯などもあると思いますが、一律保有しているのはなぜでしょうか? もう少し放出してください」というご質問です。株主総会ではよく「もっと経営者が株を持ちなさい」と言う人もいます。御社の考えを教えてください。

塩川:当社は代表取締役の4名でほぼ同じぐらいの株を持っています。流動性なども関係するため、どこかで変更があるかもしれませんが、今のところ具体的な計画はありません。ただ、流動性は少し課題であることは認識しているため、それに向けて打てる手段があれば少しずつ取り組んでいくと考えています。

我々がもともと所属していた会社もいわゆるパートナーシップ制の会社で、同じ株式を保有して経営するのは比較的普通でした。そのため、設立時はみんなイコールで始めて、我々としてはあまり違和感なくこのスタイルでやってきました。ただ、お互いの経済的な利益をしっかりと一致させるということで、株主のみなさまの立場に立った経営はできていると思っています。

質疑応答:事業用不動産の売買仲介向けのビジネスモデルについて

坂本:「事業用不動産の売買仲介のほうが住宅物件と比較すると少ないものの、金額が大きいため収益は取れると思います。そちらに従量課金のように、売買金額に応じて取り分をもらうビジネスモデルは計画しないのでしょうか?」というご質問です。

塩川:大きなくくりで言うと売買市場は、非常に潜在的な魅力のある市場だと思っています。当社にも売買仲介向けのプロダクトがありますので、今後さらに磨いていこうと考えています。

その中で、確かに売買のお客さまは手数料で収益を得ているため、売買手数料のうち当社のシステムを使って実現したものについては、一定の手数料をもらうという方法も、もしかしたら適しているのかもしれません。それも含めていろいろ検討していきたいと思っています。

また、確かに事業用不動産は1件あたりの売買金額が大きくなりますが、システムの需要で考えると、やはりレジデンシャル部門のほうが多くの件数を扱うため、余地は大きいのではないかと考えています。ただ、不動産は本当に裾野が広く、いろいろな領域あるため、もしチャンスがあれば果敢に挑戦したいと思います。

質疑応答:社名の由来について

坂本:「ユニークな社名ですが、どのような経緯で決められたのでしょうか?」というご質問です。

塩川:当社のミッションとしても掲げているように、不動産市場の情報流通を改善することは、みなさまにとっての「いい生活」に繋がると考えています。不動産会社さんにただサービスを提供するだけではなく、その向こうにいる我々も含めた一般ユーザーに、当社の存在価値を示したいと思っており、そこまで視野に入れて世の中に「いい生活」を増やすという意味合いで、「いい生活」と名乗っています。

質疑応答:M&Aの計画について

坂本:「M&Aは検討していますか?」というご質問です。

塩川:私はもともと前職でM&Aに関わる仕事をしていたため「なぜもっとガンガンとM&Aをやらないのか」とたまに言われます。そこは「刀をちょっとしまって」ではありませんが、今のところは他社との連携やM&Aというツールを使うよりも、オーガニックなサービスに向けて投資していくほうが、結果的に早いと考えています。

これはお金の使い方の問題で、先ほど申し上げたとおり、当社はサービスを磨くほうに年間5億円から6億円投資しており、過去十数年では相当な額をサービスへ投資しています。

そのため、まずサービスをしっかりと磨きたいという考えが大きいのですが、もちろん今後チャンスがあった時は、M&Aという選択肢を排除しているわけではありません。そこは「昔取った杵柄」でうまくやれるのではないかと思っています。

坂本:確かに、今はエンジニアもかなりの人数がいらっしゃいますし、今ほど人数が多くない時期であればM&Aの可能性も少しあったかもしれません。

質疑応答:将来的な海外進出について

坂本:今の御社のビジネスモデルで海外進出はできるのでしょうか? 将来的な海外戦略なども含めてお聞かせください。

塩川:もちろん可能性としては海外進出もあると思っています。一方、不動産のルールは国によってかなり異なっており、もし当社が海外進出する際は、その国のルールに完全にローカライズした状態で進出する必要があると思っています。

そうなると、ある程度潜在的に市場規模が大きく、日本と同じように不動産の情報流通がまだ遅れている市場になってくるかと思いますが、まだ具体的にはどこの市場に対して進出するかまで検討が進んでないというところです。

坂本:基本的に法的なものを絡めた営業が浸透してるところのほうが良いと思いますが、そのようなところは、日本以上に不動産テックがすでに始まっているかもしれません。

塩川:おっしゃるとおりです。当社も海外進出しにくい領域ではあると思いますが、反対に海外からも進出しにくい領域です。そのため、おそらくアメリカのビッグテックは日本には進出しないと思います。もし進出するなら、当社を買収したほうが早いと思います。そう考えると、確かに当社も進出しにくいですが、それは悪い話ばかりではないと思っています。

坂本:もし仮に買収となれば、当然株主にはメリットがあります。

塩川:日本国内の市場もかなり難しいところがあるため、海外から簡単には進出できないのではないかと思います。

塩川氏からのご挨拶

飯村:視聴者のみなさまへ、最後に一言お願いします。

塩川:本日はありがとうございました。不動産はGDPの12パーセントぐらいを占める、非常に本当に大きな市場であり、その中で当社はDXを担っている会社です。質疑応答の中でご紹介したユニークな社名についても、ぜひこれを機会にみなさまに知っていただき、注目していただけたらと思います。引き続きよろしくお願いします。