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中井一雅氏(以下、中井):本日はお忙しい中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。三井物産の中井でございます。私は2022年から生活産業セグメントの3事業本部とニュートリション・アグリカルチャー本部の合計4本部を担当しています。

本日は、2023年5月に公表した中期経営計画2026で設定した3つの攻め筋の1つ、Wellness Ecosystem Creationにおいて当社が目指すこと、および具体的な事業についてご説明します。

中期経営計画2026 攻め筋 (Key Strategic Initiatives)

中期経営計画2026で設定した3つの攻め筋についてです。こちらは、ライフスタイルの多様化と健康志向の高まり、グローバルサプライチェーンの変化などの重要な環境変化を踏まえて、注力領域として設定したものです。

Corporate Strategy - 創る・育てる・展げる (ビジネスモデル) の推進

当社のビジネスモデルについてご紹介します。当社では「Own Field」と呼んでおり、知見のある領域においてコア事業を育て、周辺事業と組み合わせながら事業群を形成しています。攻め筋であるWellness Ecosystem Creationにおいても、このビジネスモデルに沿って事業群を形成しています。

環境認識

食と健康の視点から世界を見てみると、新興国の人口増加や経済成長に伴う世界的な食の需要の増加、特に動物タンパク質の供給問題が顕在化しています。また、トレーサビリティを含めた安心・安全な食の安定供給への意識の高まりや、健康を意識した食生活の変化とライフスタイルの多様化、未病・予防やウェルビーイングへの関心の高まりなど、さまざまな大きな変化が起こっていると認識しています。

スライド右下のグラフは、アメリカにおける医療とウェルビーイングへの支出の見通しを示しています。未病・予防の意識の高まりにより、将来的に、医療費の支出に大きな変化はない一方で、健康に通じる食や栄養、減量への取り組み、パーソナルヘルスデバイスやフィットネスなどのウェルビーイング支出が増えると予測されています。

アジアなど新興国では依然として医療の需給ギャップも大きく、ヘルスケアの市場が拡大中ですが、医療やウェルビーイングの最先端を走るアメリカのトレンドが世界的に広まっていくものと認識しています。

三井物産の目指す世界

当社のウェルネスエコシステムが目指す世界についてご説明します。スライドの図のように、食やウェルネスに関する複数の事業群を組み合わせることでエコシステムを形成します。このウェルネスエコシステムを通じて、多様化するライフスタイルにあわせた食・健康・医療を提供し、世界中の人々の生涯にわたる豊かな暮らしの実現に貢献します。

ウェルネスエコシステムを構成する代表的な事業群は、ウェルネス事業群、フードサービス事業群、動物タンパク質事業群、農業化学事業群です。これらを密接に組み合わせることで、より付加価値の高いエコシステムを形成していきます。

ウェルネス事業群では、未病・予防・健康への支援、医療などのヘルスケアを提供します。フードサービス事業群では、健康に通じる食のメニュー開発と提供に加えて、おいしさ・便利さ・機能性など、多様化する消費者ニーズに応える食の開発・製造・流通を行っています。

動物タンパク質事業群と農業化学事業群では、安心・安全な食の供給のもととなる動物タンパク質や農作物の効率的な生産、環境負荷の軽減、自然資本への影響などを意識しながら安定供給を支えています。

ウェルネスエコシステムを構成する主な事業群と機能

ウェルネスエコシステムを形成する上で欠かせない当社の機能についてです。スライド左側に示す各事業群が提供する機能に加え、安定供給を支えるトレーディングやロジスティクスなどの商社の強みを活かした複合的な機能提供により、生産性の向上、環境負荷の軽減、多様化する消費者ニーズへの対応など、付加価値を持つウェルネスエコシステムを形成することができます。

また、このようなウェルネスエコシステムにおいては、産業横断的な取り組みが不可欠です。食料、流通、ウェルネス、ニュートリション・アグリカルチャー本部など複数の本部が垣根を越えて密接に連携し、グローバルに機能と強みを融合しているからこそ、エコシステムの形成とより高い付加価値の提供が可能となります。

農業化学事業群

それぞれの事業群についてご説明します。まずは農業化学事業群についてです。この事業群では、食料の増産・安定供給を実現すべく、農薬・肥料・種子といった農業資材を、それぞれの農業の現場に最適なかたちで届けるべく、世界の主要な農業国を中心に展開しています。

昨今、サステナビリティ・自然資本の観点から、農業の環境負荷低減の重要性はますます増大しています。従来力を入れてきた生物農薬に加えて、バイオスティミュラントと呼ばれる天然素材由来の肥料事業、また、土地本来の力を強める再生農業事業や、新たな生産形態である植物工場事業への進出など、さまざまな農業ソリューションをメニューに加えながら、農業化学事業群を拡大しています。 

定量については、これらの新しい取り組みの推進と、グローバルに保有している既存事業の強化を通じて収益力を向上させ、中期経営計画の最終年度には、肥料や肥料原料の高騰といった市況要因の追い風を受けた2023年3月期の当期利益200億円を上回る、安定的な収益レベルを目指します。

動物タンパク質事業群

動物タンパク質事業群についてです。世界的な人口増加や経済成長を受けて、動物タンパク質の消費量はグローバルで増加し続けています。当社は、鶏やエビを中心とする畜水産事業に加えて飼料、アニマルソリューション、動物種苗の事業を有しています。これらグループ企業と一体となり、トレーサビリティや生産性を向上し、安定供給と増加する需要に対応することで、長期的かつ継続的な価値創造を実現します。

特に、市場の成長率が高い鶏とエビは、育成期間が短く景気変動に強いことや、食文化や宗教的な制限が少ないこと、また、健康志向に応えるという点からも注力領域として位置づけています。

エビについては、先月、適時開示したエクアドルのエビ事業の説明会で詳細をお伝えしました。また、鶏については、1960年代から取り組んでいる国内の飼料、ブロイラー生産、加工事業を通じて蓄積した知見があります。この知見を活用しながら、国内で発展させてきたビジネスモデルをグローバルに展開していきます。鶏の新規取り組みについても、みなさまに近々ご紹介できると思っています。

この事業群の2023年3月期の当期利益は約130億円でした。鶏とエビを中心とする動物タンパク質事業における競争力ある資産の追加取得と、既存事業の生産能力向上により、中期経営計画の最終年度には、当期利益300億円以上への拡大を目指しています。

フードサービス事業群 × ウェルネス事業群

フードサービス事業群×ウェルネス事業群についてです。世界各国の医療費が増大していく中で、環境認識でもお伝えしたとおり、治療コストを抑制するために、未病・予防、そして心身の健康も含めたウェルビーイングへの支出が増加する大きな流れを認識しています。

当社は以前から、IHHを中核とした病院事業を展開し、多くの患者さまに治療サービスを提供してきました。現在は、その前段階である未病・予防領域での事業や、退院したあとの回復支援などの取り組みにも注力しています。

また、食と健康という切り口での価値創造の取り組みとして、今年100パーセント子会社化したエームサービスは、食を通じた健康促進のプラットフォームになると考えています。

エームサービスでは健康維持に効果的な栄養管理マネジメントシステムを構築しており、栄養学に基づいたメニュー開発を行っています。企業や学校向けの給食では、未病・予防の効果を持つ健康食、病院や医療施設向けには、健康支援や回復の効果を持つ治療食・介護食などの提供を強化しているところです。

コアとなる病院事業を中心とするヘルスケア事業に、未病・予防などを提供する事業群、そして食の開発・製造・提供を担うフードサービス事業群を組み合わせることで、当社ならではの立ち位置で、今後のウェルビーイングを中心とした健康志向の流れに対応した価値創造を進めます。

この事業群の業績は、IHHやエームサービスなど既存事業の収益向上に加え、機能性食品素材のNutrinovaなどへの新規投資の貢献により、当期利益は、2023年3月期の約370億円から、中期経営計画終年度には500億円以上への拡大を目指しています。

定量ターゲット

ウェルネスエコシステムの定量見通しについてです。スライドのグラフはウェルネスエコシステムを構成する主な事業群の基礎営業キャッシュ・フロー、当期利益、ROICの推移を示したものです。当期利益は、一過性の要因とそれ以外で色分けして示しています。

2023年3月期の当期利益は750億円超、ROICは約3パーセントで、これを2026年3月期には当期利益1,000億円超、ROIC約5パーセントまで成長させます。そして、継続的な既存事業の強化と収益性の高い資産の新たな獲得や、資産の入れ替えなどにより、事業規模拡大とあわせてROICを継続的に高めていきます。

引き続き、足元の収益強化に貢献する事業と、将来の成長を取り込む事業など、収益化の時間軸が異なる事業を組み合わせながら、当社らしいウェルネスエコシステムを構築していきたいと思います。

質疑応答:経営資源の配分について

質問者:ウェルネスエコシステムはさまざまな事業群やそれぞれの事業が多岐にわたっています。例えば、ヘルスケア、アニマルソリューション、種子は成長率が高い一方、Valuationも高い領域です。それらの事業群からウェルネスエコシステムを作り上げるための経営資源配分の考え方や優先順位を教えてください。

中井:ウェルネスエコシステムは領域として広く総花的に感じるかもしれませんが、各事業本部が事業群として育てていきたいところに焦点を当てて、動物タンパク質、農業化学、フードサービス、ウェルネスの各事業群をご紹介しており、また、その掛け合わせが注力分野となります。

例えば、動物タンパク質のエビと鶏のように、明確にターゲットを決め、それに付随する飼料やアニマルヘルスなど、コア事業の付加価値をさらに高めるための事業を武器として保有することがコンセプトとなります。

種子やアニマルソリューション等の各業界の巨大企業に投資して勝負するのではなく、当社の事業群形成に資する事業を武器として手に入れることが基本となります。高値掴みを避けるために、経済性を確認しながら進めていきます。

アニマルヘルスについては、住友ファーマアニマルヘルス(現物産アニマルヘルス)やブラジルのOuro Fino Saúde Animalを取得し、当社プレゼンスを伸ばしていますので、Valuation次第ですが、今後もこの延長線で行っていきたいと考えています。

経営資源配分については、本日お示しした定量ターゲットの実現に向け、事業本部ごとに注力領域を定めて経営資源を配分し、資本効率を意識し、投下資本を積み上げていきます。経営資源の配分や資本効率への意識は以前よりも高まっていると感じています。

質疑応答:中経の定量面について

質問者:定量面について、中期経営計画では基礎収益向上による当期利益プラス1,700億円のうち、攻め筋の1つであるWellness Ecosystem Creationによる貢献はプラス300億円、うち200億円が新規投資によるものとのご説明でした。本日の説明資料では、動物タンパク質事業群でプラス170億円、フードサービス事業群×ウェルネス事業群でプラス130億円と記載されていますが、中期経営計画プラス300億円はこれらの2つの事業群を分解したものとの理解で正しいでしょうか? また、この利益を創出するための2023年3月期と2026年3月期の投下資本の水準も合わせて教えてください。

中井: 中期経営計画で公表した数値を意識して今回の資料の数値を作成しています。

ウェルネスエコシステムは、生活産業セグメントにニュートリション・アグリカルチャー本部を単純に加えたものではなく、例えば、ICT事業本部におけるDXやAIを駆使した創薬事業や、コーポレート・ディベロップメント本部の創薬ベンチャーへの投資等、広い意味でのウェルネスエコシステムに係る事業に取り組んでいます。

このように、大きなウェルネスの中で当社の強みを活かして、定量ターゲットを達成し、またさらに向上させていきます。

投下資本の水準については、動物タンパク質事業群の投下資本は、「統合報告書2023」において2023年3月期実績2,400億円から2026年3月期目標3,800億円への増加と開示していますが、動物タンパク質事業群以外の投下資本の詳細は開示していません。

質疑応答:エームサービスについて

質問者:経営陣から「エームサービスに期待している」という話を聞いていますが、具体的な詳しい話について聞かせてください。エームサービスの強い分野、今後の成長戦略、競合との違いなど、エームサービスとして何を考えているか教えてください。

中井:エームサービスは、1970年代から米アラマークと50/50のジョイント・ベンチャーで事業を進め、経営及び株主間連携は良好でした。

しかしながら、例えば、米アラマークは配当をなるべく早く引きたい、当社は成長のための再投資を実行したいなど、企業経営の方法論に関し、異なる考え方があったことも事実です。今年4月に100パーセント子会社化したことによって当社が考える戦略を、スピード感を持って実行し、さらなる成長につなげたいというのが追加取得の趣旨となります。

具体的な企業価値向上、成長戦略ですが、1点目は現場業務・経営のDXを通じた効率化・生産性の向上です。エームサービスはいまだに紙社会的なところがあり、現場業務はDXも進んでいないことから、DXによる効率化とそれに伴うコスト削減余地が大きいと考えています。DX化コストが先行して発生したとしても、中長期的なコスト削減、競争力強化、マージンの上昇につなげていきます。

2点目は、Toplineの引き上げによる収益力の向上です。当インダストリーにかかわらずですが、現在原料価格、燃料、人件費が上昇しており、顧客企業との価格改定が必要な状況です。エームサービスは1年ほど前から、顧客企業との価格交渉を続けており、最近になってその成果が出始めています。

3点目は成長シナリオです。当社の関与により、海外展開を進めていく、国内でセントラルキッチンを持つことで数ヶ所の事業所を束ねてよりコスト競争力を出していくなど、初期投資を伴う中長期的な成長につながるアクションを取っていきます。

このように、マージン良化、販管費を中心としたコスト改善を通じた収益性の向上、種々の成長戦略実行による売上成長の実現を念頭に置き、100パーセント子会社化しています。着実に結果が出てきていますので、来年度の数字含めて楽しみにしていただければと思います。

質疑応答:ROIC、IRRの低い部門について

質問者:Wellness Ecosystem Creation分野の投下資本は2兆円程度と試算しています。この分野はIRRが低い事業が集まっている印象がありますが、2023年3月期業績において、一過性のプラスも込みでROIC5パーセントは低いと感じます。注力していく事業のご説明はありましたが、逆に、問題になっている事業を削ることでROICを上げられる余地はないのでしょうか? また、この分野は一部の採算性の低い部門が足を引っ張っているという構図なのか、全体的に低収益な構造なのかも教えてください。

中井:Wellness Ecosystem Creation分野では平均3パーセントのROICを中経期間中に5パーセント超にします。5パーセントでは低いと思われるかもしれませんが、これは通過点であり引き続きROICを高めていきます。

ROICを高めるために、採算性の低い事業のリサイクルは全社的に進めています。ウェルネスエコシステムでは、動物タンパク質事業などROICの高い事業を新規のアセットとして取り入れつつ、採算性の低い事業のリサイクルと併せてPF全体のROICを上げて行く方針で、まずは各本部内でしっかり行っていくことを徹底しています。

低収益な事業の割合は開示していませんが、本部によっても状況が異なります。一般論として採算性の低い小さな投資をたくさん抱えているところは、本部長自らが意識をもって今年・来年に低収益の事業を減らしていくため、全社的にもその割合は減少していきます。

質疑応答:ビジネスモデルの展開とIHHの進捗について

質問者:Wellness Ecosystem Creationは領域全体が幅広く、どのようなビジネスモデルの展開が中心となるのかがわかりづらいと感じます。

先日のエクアドルのエビ事業の説明会ではボラティリティが話題となりました。川上の飼料原料や動物タンパク質のような市況に連動するビジネスもあれば、エームサービスのような川下事業、IHHのようなプラットフォームを保有し、周辺事業を紐づけるような展開する事業もあります。

どのビジネスモデルはどこに強みがあり、どこを伸ばそうとしているか、方向性を教えてください。

中井:回答が非常に難しいご質問で全体感のご説明になる点はご容赦いただければと思います。

食料であれば上流のタンパク質とそれに対応する飼料を繋げることで、一つひとつの事業のボラティリティをヘッジしながら、バリューチェーンのさまざまなところで収益を得ていることがポイントとなります。例えば、動物タンパク質のバリューチェーンは食料につながり、さらに川下につながっていきます。商品が直接的につながらなくとも、それぞれの事業領域を俯瞰して保有することでリスクをマネジメントしています。

また、それぞれの事業領域でビジネスへの入り方が異なります。エームサービスは1970年代から事業を開始しており、当社持分を増加させることで影響力を高めています。ヘルスケアについては、現在の当社プレゼンスは大きいですが、当初参入する時に大きな一歩を踏み出さなければならなかったため、IHHに投資しました。各事業の攻め筋と生い立ちが異なるため、特定のビジネスモデルを決めることはできませんが、反対に、このような柔軟な展開が商社のビジネスモデルとも考えています。

今後、現在想定していない事業への取組み等が出てくるかもしれませんが、狙っている領域は本日ご説明したウェルネスエコシステムでの事業群形成となりますので、この観点から手を打って行きたいと考えています。

質疑応答:IHHの進捗について

質問者:IHHの今期の滑り出しは堅調と認識しています。一方で、アグレッシブな成長戦略を公表しているため、その成長戦略の進捗について、マイルストーンをクリアしているかなどの観点からご説明をお願いします。

中井:IHHは上場企業ですので当社からの個別事業の説明は控えさせていただきますが、堅調な業績を出してきています。コロナ後のメディカルツーリズムの回復、加えて地場の患者も病院に戻ってきており、本業の業績は堅調です。

また、マレーシアの医科大学の売却などのノンコア資産のリサイクルの実行、各地域で病床を増やして患者数を伸ばす等、わかりやすく成長シナリオを実践しています。今後の業績について言及するのは難しいですが、IHHの収益力には非常に期待しています。

質疑応答:未病・予防領域について

質問者:未病・予防について、数年前からウェルタスの展開や保健同人社の買収などの動きもあり、IR説明でも強調されていたと思いますが、核となる事業展開や定量的な成果が出ていない印象です。今後、未病・予防に関してどこが核になるのか、また定量目標があれば教えてください。

中井:未病・予防は数年前からターゲットとして掲げています。まず、アメリカのサプリメント会社Thorne Healthtechに出資し、米国で上場させ、その事業をアジアでも展開しています。エビデンスに基づいた未病・予防のためのサプリメントというところから入り、一定の役割を果たし、同社の株を売却したため、規模感のあるキャピタルゲインを得る見込みです。

Thorneのアジア展開の過程で、ユーヤンサンという漢方事業に出資しました。アジアの国々ではサプリより漢方が身近であり、エビデンスに基づく未病・予防のビジネスという同じコンセプトで、現在はユーヤンサンの事業を広げています。Thorneは収益化しましたが、ユーヤンサンは今後もっと広げていきます。

また、漢方・サプリメントだけでなく、エームサービスも介護施設・病院に対して付加価値の高い食の提供、健康に資する食の供給により未病・予防を狙います。未病・予防と病院・フードサービスの境界は見えにくくなっていますので、これらを含めて、事業として伸ばしていきます。エームサービスやユーヤンサンに次ぐ未病・予防領域でのパイプラインは、Valuationと収益性を見ながら選別していきたいと考えています。

質疑応答:ROIC向上の計画について

質問者:ROICを3パーセントから5パーセント超へ上げていく計画についてあらためて確認させてください。エクアドルのエビ養殖事業のように、高ROE事業がポートフォリオの中に占める割合を増やすのか、撤退により採算性の低い案件がポートフォリオから縮減していく効果なのか、定量計画の前提について教えてください。

中井:ROICを向上させるために、既存案件の継続的な収益力向上の実行に加え、収益性の高い新規案件を増やし、採算性の低い事業を縮小していくと本日ご説明しました。

食料や流通の領域では、ROICの分子となる収益の向上に加え、分母の投下資本の圧縮も取組んでいます。これらの本部は物流事業も収益の柱になっており、大きなWorking Capitalを必要とします。

中期経営計画の資料でも生活産業セグメントにおいて約1,000億円の投下資本を圧縮すると記載していますが、これは運転資本の圧縮も含めて達成します。例えば、日本における当社のコーヒー豆の輸入シェアは約4割あり、当該シェアを維持し、お客さまのニーズに応えるためにはさまざまな場所で在庫を保有してサービスを提供しなくてはなりませんが、すでに当該在庫も相当程度圧縮してきており、ROIC向上を意識して物流事業を行っています。

資産リサイクルや物流事業の運転資本の削減も含めて、ROIC2パーセント向上を達成できるという自信に基づいて本日の説明をしています。