わたしたちのMISSIONとVISION

神谷栄治氏:株式会社アイビス代表取締役社長の神谷栄治です。事業計画及び成長可能性に関する事項についてご説明します。

まず、MISSIONは「モバイル無双で世界中に“ワォ!”を創り続ける」を掲げています。「モバイル無双」の「無双」は、モバイルに強いことを表しています。また、「世界中に“ワォ!”」ということで、驚きを創り続けたいと思っています。

VISIONは「Boost Japanese Tech to the World」です。アイビスの技術を世界中に届けたい、世界中でMade in Japanの技術の存在感を上げていきたいという思いから、このVISIONを掲げています。

会社概要

会社概要です。設立は2000年5月、従業員数は239名です。その内、ITエンジニアは208名と、ITエンジニアが主体の会社となっています。

主な沿革と代表略歴

主な沿革と略歴です。私は1973年に愛知県名古屋市で生まれました。名古屋工業大学電気情報工学科を卒業しています。

小学生の頃にパソコンを買ってプログラミングを始めました。大学生時代には、FTPソフト「小次郎」を作ってヒットさせ、資本金を用意することができました。2年ほど静岡県浜松市でサラリーマンを経験して、その後独立し、2000年にアイビスを設立しています。

設立当時は、ちょうど携帯電話がインターネットにつながるようになった時代で、「i-mode」が登場したばかりでした。「これからはすべての携帯電話がネットにつながり、世の中が変わる」と思い、これをチャンスと捉えて会社を興しました。

そして、2005年にリリースした「ibisBrowser」がヒットし、最近では「ibisPaint」がヒット商品となっています。

事業概要

事業概要です。主力商品の「ibisPaint」の開発・運営を行うモバイル事業の売上高構成比は63.7パーセントで、成長事業と考えています。

IT技術者派遣・受託開発を行うソリューション事業の売上高構成比は36.3パーセントで、安定事業と考えています。

売上高推移

スライドの棒グラフは、創業から23年分の売上高の推移を示しています。グラフの緑色がソリューション事業、オレンジ色が「ibisPaint」を開発・運営しているモバイル事業です。

ご覧いただくとおわかりのとおり、直近の2年から3年は「ibisPaint」の売上が急激に伸びています。2009年頃からリーマンショックの影響で2年ほど売上が浅かったタイミングがありますが、それ以外は基本的に増収し続けています。売上高は年商で33.9億円となりました。

収益構造図【モバイル事業】

事業の特徴です。まず、モバイル事業部の収益構造についてご説明します。1つは、アプリ広告売上となっています。アプリの使用中、画面の上部などにバナー広告を出し、収益を得るビジネスです。

もう1つは、アプリ課金です。ユーザに買切の広告除去アドオンを購入していただいたり、月額または年額課金でサブスクリプション(プレミアム会員)に契約していただいたりすることで収益を上げています。

売上構成【モバイル事業】

モバイル事業の売上構成です。アプリ広告売上が80.4パーセント、サブスクリプション売上が9.2パーセント、売切型アプリが10.0パーセントという構成になっています。

サブスクリプションは、メインとしてはクラウドストレージ利用量の拡大、プレミアム素材・プレミアム機能の増加などです。こちらは、月額300円または年額3,000円となっています。

売切型アプリは広告を消すことができ、1,600円です。他にもWindows版を最近リリースし、2,350円で販売しています。

収益モデル(フリーミアム)【モバイル事業】

収益モデルには、フリーミアムモデルを採用しています。我々はスマートフォンのアプリとして人気が高く、基本無料のため非常に多くのユーザに使っていただいています。ユーザ数を広げることを優先して活動しており、無料版アプリのアクティブユーザ数は月間4,080万人となっています。

売切型アプリの販売数は2.1万件、サブスクリプションの会員は6.6万人という構成です。

先ほど「ibisPaint」の月間アクティブユーザ数は4,080万人とお伝えしましたが、日本製のアプリの中では日本2位の数字となっています。1位はコミュニケーションアプリ(LINE)のようですので、非常にうまくいっていると思っています。

ibisPaint概要【モバイル事業】

「ibisPaint」は日本製のアプリとして、2021年に世界のダウンロード数で1位を達成しています。

「ibisPaint」各種データ推移 【モバイル事業】

「ibisPaint」の各種データ推移です。スライド左側のグラフは、「ibisPaint」のリリースから12年分の累計ダウンロード数を示しています。直近2年、3年で急増しており、2022年末には2.9億ダウンロードとなっています。

スライド右側の薄い肌色の折れ線グラフは売切型アプリの販売数を示しており、こちらも徐々に増えています。濃いオレンジの折れ線グラフはサブスクリプションの課金数で、こちらも右肩上がりであり、かつその角度がだんだん上がってきているのがおわかりいただけるかと思います。

理由としては、プレミアム会員機能などのバージョンアップとともに、機能などの付加価値が増えているため、契約者数も時間とともに角度が上がってきています。

緑の塗りつぶし部分は、月間アクティブユーザ数を示しています。こちらも直近で上がってきています。コロナ特需の時に最大となり、現在はそこから一段落して少し戻っています。社内では、「コロナ特需の反動」と呼んでいます。

「ibisPaint」の特徴【モバイル事業】

「ibisPaint」の特徴です。無料でほぼフル機能が使えるため、ユーザ数も多くなっています。アクティブユーザの92パーセントが海外ユーザとなっており、非常に多くの方に使っていただいています。

コミュニティの活用については、「ibisPaint」のアプリの中にオンラインギャラリーという機能があります。ユーザが何時間もかけて描いた絵をサイトに投稿する機能で、投稿すると「いいね」やコメントをもらえたり、承認欲求が満たされたり、海外の人ともコミュニケーションを取ることができるため、盛り上がっています。

また、ユーザ層はZ世代の若者が中心となっています。

無料版でもほぼフル機能のアプリ【モバイル事業】

無料でほぼすべての機能が使える「ibisPaint」は、「パソコン並みの高機能アプリを、モバイルで創りたい」ということをコンセプトとしています。また、AIやディープラーニングを使った最先端の技術も投入しています。その結果、「AppStore」でのレビューが星4.7、「Google Play ストア」では星4.6となるなど、非常に高い満足度を実現しています。

自社オンラインギャラリー「ibispaint.com」【モバイル事業】

自社オンラインギャラリーである「ibispaint.com」は、ユーザ同士でコミュニケーションをとることにより、継続的に使ってもらえるような仕組みになっています。

また、オンラインギャラリーでは、作画工程を記録した動画(タイムラプス動画)をアップロードすることが可能です。これにより、ユーザが絵を描く技法などを共有したり、学んだりすることができるようになっています。

「ibisPaint」海外展開①【モバイル事業】

「ibisPaint」の海外展開についてです。累計ダウンロード数の92.5パーセント、売上高の73.4パーセントが海外からとなっています。スライド右側の図は、累計ダウンロード数上位10ヶ国を示しており、日本・アメリカ以外にも、ブラジル、インドネシア、インド、ロシア、EUなどでたくさんダウンロードされています。

「ibisPaint」は世界19言語に対応しており、200を超える国と地域で利用されています。

「ibisPaint」海外展開②【モバイル事業】

スライド左側のグラフをご覧ください。薄いオレンジ色のバーが広告宣伝費を示しています。ようやく少し利益が出るようになった2016年頃から、世界展開に向けて、世界中に広告を出稿し始めました。

濃いオレンジ色のバーが海外売上高です。最初の約2年はほとんど売上がありません。しかし、直近の2年間は、広告の投資ノウハウを仕入れたり、いろいろな実験をしたり、仮説を立てたりして、ノウハウを構築してきました。

そして、費用対効果が合うパターン、すなわち確かなノウハウが見つかり、それ以降は広告を打てば打つほど売上が上がるという状況となっているため、より多くの広告宣伝費を投入するかたちで伸びてきています。

また、社内でSNSマーケティングを行っており、「YouTube」「TikTok」「Instagram」「X(旧Twitter)」などを運用しています。特に「YouTube」のチャンネル登録者数は230万人を超えており、日本のYouTuberの中では比較的上位なのではないかと感じています。このSNSの運用も、非常に価値が高いと思っています。

Z世代からの高い支持【モバイル事業】

Z世代からの高い支持についてご説明します。「ibisPaint」のユーザ属性は、25歳未満が61.6パーセント、25歳以上45歳未満が27.1パーセント、45歳以上が11.2パーセントとなっています。男女比は女性が71.4パーセント、男性が28.6パーセントです。

直接競合するペイントアプリ同士で比較すると、「ibisPaint」は25歳未満のアクティブユーザシェアが90.5パーセントとなっています。小学校6年生や、中学校1年生で初めてスマホを買ってもらったような子どもたちの中で、デジタルイラストに少しでも興味があるユーザが、当社のアプリを選んでくれていると思っています。

また、ペイントアプリは機能が非常に多いため、1つのアプリに慣れてしまうと、他のアプリには比較的移行しづらいことから、「ibisPaint」を5年、10年と長く使っているユーザもいます。

メインユーザはZ世代で、中高生などが多いですが、そのような人たちが大学生や社会人となった時に、課金していただければ良いと考えており、今のところはまだまだ成長できるのではないかと思っています。

差別化の源泉【モバイル事業】

差別化の源泉についてご説明します。まず、「モバイル最適化」についてです。「ibisPaint」の人気の理由には、ユーザインターフェースの使いやすさが挙げられます。小さい画面の中で、ペイントアプリのユーザインターフェース設計を0ベースで考えることにより、使いやすさを実現できていると思っています。

また、コンピューター性能が低い中でも、GPU等を駆使したり、高い技術を投入したりして、動作が高速なアプリを作っています。

「優秀なエンジニア」については、高度な数学的・物理的知識や科学的思考力を持つなど、高いレベルの人材を集めており、技術にもこだわっています。

「スピードへのこだわり」については、アプリ自体がサクサク動くのはもちろんのこと、ユーザのニーズや動向を把握し、スピーディな意思決定でサービスを運営することを大切にしています。

収益構造図【ソリューション事業】

ソリューション事業についてご説明します。こちらは、IT技術者派遣と受託開発の売上があります。

売上構成と特長【ソリューション事業】

ソリューション事業の売上高構成は、IT技術者派遣が85.6パーセント、受託開発が14.4パーセントです。売上高は年商で12.3億円となっています。

市場分析【インターネット広告市場(全世界)】

市場・競合分析です。まず「ペイントアプリ×ネット広告市場」で言いますと、ターゲット市場は世界合計で1兆円以上あり、まだまだ成長の余地があるだろうと思っています。

市場分析【アプリ販売市場(全世界) 】

「ペイントアプリ×課金市場」では、ターゲット市場が世界合計で1,774億円です。現在の当社の売上から見ても、まだ成長の余地はあると思っています。

市場分析【派遣・受託市場(日本) 】

派遣・受託市場は日本国内のみですが、ターゲット市場は7兆3,110億円と見ており、まだ成長の余地があると思っています。

市場分析【「ibisPaint」ポテンシャル市場】

市場分析です。目標として、2025年12月期に5億ダウンロードを達成したいと考えています。ポテンシャルとしては、7.4億ダウンロードくらいまで拡大するのではないかと思っています。

「ibisPaint」のポジショニング【モバイル事業】

「ibisPaint」のポジショニングです。スライドの図は、横軸がユーザにおけるプロのイラストレーターの比率、縦軸がアプリ価格を示しています。

図の右下に、プロ比率が高い有料のアプリとして、競合するPアプリ、Aアプリ、Cアプリを挙げています。「ibisPaint」は無料であり、プロ比率が低いため、図の左上に示したSアプリや、左下のDアプリが競合として存在します。

「ibisPaint」は無料のため、現在は左上のほうにいますが、有料の機能を展開してサブスク売上を次第に増やしています。より高機能で、プロでも使えるような機能を追加しつつ、有料版の売上を伸ばしている状況です。

競合分析【主な国内ペイントアプリのリリース時期比較】

こちらは国内の2つのペイントアプリの競合分析です。我々はモバイルネイティブということで、2011年の時点でiPad版、iPhone版を出し、その後Android版をリリースしています。競合は、PC版を先にリリースし、後からモバイル版を展開しています。

そうすると、機能が多くあるPC用に作られたユーザインターフェースを、スマートフォンのサイズに入れることになり、少し使いにくい部分があります。我々は逆の発想で、モバイル版でユーザ数を増やしてから、2022年にWindows版をリリースしました。

成長戦略概要

成長戦略概要です。スライドの図の緑色は、安定事業のソリューション事業部をイメージしています。図の中央の肌色は、「現在」の左側が今まで行ってきた戦略で、ユーザ数の拡大に注力してきました。その上にサブスクリプションの売上などを縦に積んでいく想定です。将来的にはアクティブユーザの多さを利用した、新規のマネタイズを考えています。

成長の展望①【モバイル事業/顧客基盤の拡大】

海外展開強化についてです。今までも海外展開やプロモーションを積極的に行い、多くのユーザを増やしてきました。こちらを引き続き強化し、モバイルアプリの中で圧倒的な世界No.1のシェアを目指したいと思っています。

成長の展望②【モバイル事業/収益基盤の拡大】

サブスクリプション強化についてです。日頃よりユーザから「こんな機能がほしい」というお声を多くいただいています。プロでも使える高機能をサブスクリプション用の機能としてどんどん追加し、サブスクリプションの売上比率を上げていきたいと思っています。

成長の展望③【モバイル事業/収益基盤の拡大】

プロの方が使用する場合、「大きな画面で描きたい」という要望が多いため、2022年に「ibisPaint」のWindows版をリリースしました。競合に比べると遅れてのリリースですので、市場のシェアは今のところ非常に小さいです。しかし、アクティブユーザの多さを武器に、Windows版も売上を上げ、シェアを広げていきたいと思っています。こちらも計画よりは売れており、順調です。

成長戦略概要【ソリューション事業】

ソリューション事業部の成長戦略概要です。人材力、対応力、拡大力により広げていきたいと思っています。

調達後資金の活用

調達後資金の活用についてです。3月23日に上場して資金が増えたため、海外プロモーションへの投資を実施しています。また「ibisPaint」は、世界の上位3社くらいと競合して、接戦を繰り広げています。開発力、開発速度などが競争力につながりますので、開発人材の拡充を予定しています。

業績推移と2023/12期計画【全社】

ここからは、業績サマリについてご説明します。まず、業績推移です。スライド左側のグラフは、売上高と売上高総利益率の推移を示しています。売上高は、右肩上がりで順調に伸びています。売上高総利益率は、4年くらい前から見ると急激に上がっていますが、今期の計画では、人件費等により少し下がっています。

スライド右側は各種利益の推移です。営業利益、経常利益、当期純利益ともに4年間続けて右肩上がりとなっています。

業績推移と2023/12期計画【構成比】

スライド左側のグラフは、売上高構成比の推移です。オレンジ色がモバイル事業部、縁色がソリューション事業部です。今期の計画では、モバイル事業の売上高は前期比3.2パーセント増の22億3,300万円、ソリューション事業は前期比10.0パーセント増の13億5,700万円の計画となっています。

スライド右側のグラフは、セグメント利益構成比です。オレンジ色がモバイル事業部、緑色がソリューション事業部のセグメント利益です。モバイル事業部の利益比率が上がってきています。ソリューション事業部の利益は、人材の採用投資を積極的に行っているため、今期は少なめになっています。

業績推移と2023/12期計画【構成比】

各事業の構成比の詳細です。モバイル事業構成比には、アプリ広告、サブスクリプション、売切型アプリという売上があり、すべて右肩上がりで伸びてきています。今期の計画ではアプリ広告のみ若干下がっていますが、これは「コロナ特需の反動」によるもので、広告市場次第で、年の後半くらいから回復する見込みです。

ソリューション事業構成比には、IT技術者派遣と受託開発の売上があり、こちらも順調に右肩上がりとなっています。

費用内訳 【全社 / モバイル事業/ ソリューション事業】

費用内訳です。モバイル事業部の主な費用は広告宣伝費で、海外プロモーションに多く投入しています。次に多いのは、「App Store」「Google Play ストア」「Microsoft Store」等に支払う販売手数料です。人件費は少なく、粗利益率が非常に高い事業となっています。

ソリューション事業部は、主な費用が人件費となっています。

重要な経営指標・事業KPI

KPIです。モバイル事業部はDAUと新規ダウンロード数、ソリューション事業部は派遣技術者数を指標としています。

事業KPIの推移

事業KPIの推移の推移です。モバイル事業では、新規ダウンロード数が3年ほど高止まりしています。DAUは前期の数字に対して、今期の計画は少し下がっていますが、こちらは「コロナ特需の反動」によるものと考えています。

ソリューション事業については、スライド右側のグラフをご確認いただければと思います。事業計画及び成長可能性に関する事項のご説明は以上となります。

神谷氏からのご挨拶

当社は3月23日に東証グロース市場に上場し、私自身としては長年の夢が叶ったところですが、これはマイルストーンの1つであり、今後も売上を伸ばして、成長していきたいと考えています。

上場から半年が経ち、株価が下がっていることに対しては、非常に悔しく、申し訳ない気持ちです。しかし、きちんと売上と利益を積み上げて結果を出せば、評価につながるのではないかと思っています。みなさまには、今後とも3年、5年と長期的なスパンで考えていただき、末永く応援していただければ幸いです。ご清聴ありがとうございました。