目次
松岡典之氏(以下、松岡):みなさま、こんにちは。株式会社マツオカコーポレーション代表取締役社長の松岡典之です。みなさまには平素より格別のご高配を賜り、心より感謝申し上げます。本日は、当社グループの2023年3月期通期決算についてご説明します。
資料の目次に従い、2023年3月期通期の概要、2024年3月期の計画、現在取り組んでいる中期経営計画「ビジョン2025」の進捗状況などを中心にお話しします。どうぞよろしくお願いします。
会社概要
金子浩幸氏(以下、金子):取締役CFOの金子浩幸です。まずは、当社の概要についてご説明します。代表者は、代表取締役社長CEO兼COOの松岡典之です。本社は広島県福山市に所在し、1956年に創業して60年以上の歴史があります。
中国、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアの5ヶ国で、主に縫製工場によるアパレル製品製造業を展開しています。縫製工場の特徴として多くの従業員に支えられており、2023年3月末のグループ総従業員数は1万7,729人です。
連結損益計算書
2023年3月期の決算概要をご説明します。まずは、連結損益計算書についてです。2023年3月期の連結業績は、年間を通じ受注が堅調だったことから、売上高は前期比23パーセント増の628億円、経常利益は前期比208.6パーセント増の32億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比199.8パーセント増の17億円で、増収増益となりました。
売上高と経常利益は、コロナ禍前である2019年3月期の売上高634億円、経常利益33億円とほぼ同水準まで回復させることができました。特に下半期は、半年という短期間にもかかわらず、売上高337億円、経常利益21億円と、上場来最高の水準で推移しました。
経常利益率は前期比3.1ポイント増の5.1パーセントとなりました。若干ですが、2月9日に発表した修正の業績予想を上回って着地しています。
決算ハイライト(業績予想対比)
2月9日に修正発表した業績予想比での決算ハイライトです。売上高は予想比2.9パーセント増と若干上回りました。
営業利益は6,700万円で、為替が予想時点でのレートより円高で推移したことにより、予想時点でのマイナス8億円に対して8億6,000万円増と大きく上回りました。一方で、この為替レートの想定との差は営業外で為替差益を圧縮する効果もあるため、経常利益は予想比14.3パーセント増の4億円の増加にとどまりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益が想定を上回ったことに加え、一部の在外子会社で法人税等が想定より少額だったこともあり、予想比28.9パーセント増となりました。
決算ハイライト(前期対比)
前期対比での決算ハイライトです。年度を通じてコロナ禍からウィズコロナの局面に入り、行動制限が徐々に緩和されたことなどから、アパレル製品の需要が回復傾向にありました。
当社グループの顧客の間で、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱から商品の生産地を見直す動きがある中で、当社グループがアジア5ヶ国に展開する生産拠点網がその受け皿となるように努めたため、受注が堅調に推移しました。その結果、売上高は前期比23パーセント増の628億円となりました。
営業利益は、期首から10月にかけて急激に円安が進み、年度を通じて円安水準にあったことで工場コストが増加し、減益となりました。しかし、一部の主要顧客との取引契約や銀行との為替予約により、その影響を低減させ、経常利益では増収の効果が回復し、前期比208.6パーセント増の32億円となりました。
また、一部の在外子会社では、ドル高現地通貨安が増収と経常利益の増益に寄与しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益の増加に伴い前期比199.8パーセント増の17億円となりました。
売上高(品目別・生産地域別)
品目別・生産地域別の売上高です。カジュアルウェア、ワーキングウェア、インナーウェア、生地加工のすべての品目で増収となりました。
ドル高の影響もあり、ドルでの売上が多い生地加工が前期比58パーセント増、金額では34億円増となりました。インナーウェアは18パーセント増、金額では20億円増と伸長しました。また、主力であるカジュアルウェアも、顧客の生産地振り替えニーズをしっかりと受け止めたことから16パーセント増、金額では51億円増と着実に売上が増加しました。
生産地域別でも、すべての地域で増収となりました。中期経営計画に基づき、ASEAN諸国等への生産地シフトを進めたことから、ベトナム生産による売上が前期比58パーセント増、金額では46億円増、同じくバングラデシュ生産が23パーセント増、金額では32億円増と大きく伸長しました。
売上高(生産地域別比率)
売上高の生産地域別比率です。中期経営計画に基づくASEAN諸国等への生産地シフトを着実に進めた結果、ASEAN諸国等での生産による売上高の構成比は、前期の50パーセントから57パーセントと、7ポイント増加しました。
ベトナム生産による売上高は、アンナム第2期工場が稼働を開始したことから、生産比率が前期比で4ポイント増加しました。バングラデシュ生産による売上高は、構成比こそ変わっていないものの、同地での生産による売上は着実に増加しています。
経常利益の変動要因(対前期比)
前期比での経常利益の変動要因です。堅調な受注に支えられ、売上高は117億円の増収となりました。しかし、円安による工場コストの増加に伴って製造原価および売上原価も増加したため、売上総利益は増加したものの、増加幅は11億円と圧縮されました。
円安によるコスト増は販管費にも現れ11億円増となり、売上総利益の増加を相殺したため、営業利益では1億円の減益となりました。
一方で、為替変動リスクのヘッジのため、以前より一部の主要顧客と個別の取引契約を結んでいたことや銀行との為替予約で対応したこと、ドル建て債券の換算替え等により、為替差益が前期比22億円増と大幅に増加しました。
これらの結果、2023年3月期の経常利益は、前期比22億円増の32億円となりました。先ほどご説明したとおり、こちらはコロナ禍前の2019年3月期とほぼ同程度の水準です。
連結貸借対照表(前期比)
連結貸借対照表です。中期経営計画に基づき工場建設を進めたことや、それに伴い資金を調達したことにより、総資産は前期末より74億円増の593億円となりました。
流動資産は、受注と売上高の増加に伴い、棚卸資産が17億円、売上債権が13億円増加したため、前期末より22億円増の376億円となりました。固定資産は、主にベトナムとバングラデシュでの工場新設によって、有形固定資産が前期末より47億円増加したことから、52億円増の217億円となりました。
負債は、工場建設資金等の調達により長期借入金が14億円、転換社債が15億円増加しました。加えて、運転資金増加の対応により短期借入金が24億円増加し、負債全体では前期末より41億円増の270億円となりました。
これらはすべて、中期経営計画に基づき、工場建設による生産能力拡充とASEAN諸国等への生産地シフトを進めたことによるものです。
純資産は当期純利益の獲得などにより株主資本が15億円、円安の影響により為替換算調整勘定が12億円増加し、前期末より29億円増の323億円となりました。
連結キャッシュ・フロー計算書
連結キャッシュ・フロー計算書による、現金及び現金同等物の増減分析です。2023年3月末の現金及び現金同等物の残高は、前期末から7億円減少し145億円となりました。
営業キャッシュ・フローは、堅調な受注による増収増益により税金等調整前当期純利益を29億円獲得しましたが、取引量の増加が運転資金の増加にもつながったため、営業キャッシュ・フロー全体では5億円の支出となりました。
投資キャッシュ・フローは62億円の支出になりました。こちらはほとんどが工場建設に伴う固定資産の取得による支出63億円があったことによるものです。
財務キャッシュ・フローは49億円の収入となりました。工場建設資金の調達と運転資金の調達による借入金の純増37億円と、工場建設資金調達のための社債発行収入15億円によるものです。
投資キャッシュ・フローおよび財務キャッシュ・フローにも、中期経営計画に基づき工場投資を進めた結果が現れています。以上、2023年3月期の決算概要をご説明しました。
2024年3月期定量計画
2024年3月期の計画についてご説明します。2024年3月期の定量計画として、売上高は前期比7.6パーセント減の580億円、経常利益は前期比53.2パーセント減の15億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比52.3パーセント減の8億円を見込んでいます。
アフターコロナへの移行によってアパレル製品需要には回復の傾向が見られるため、業績回復を発表しているアパレル企業が多いことは承知していますが、一方で、流通在庫の水準は依然として高止まりであると認識しています。
当社グループの顧客においても、在庫調整の1年となる可能性があることから、販売数量は前期並みか、やや減少すると予測しました。また、一部の在外子会社においては、前期の売上伸長に貢献したドル高のメリットが一部剥落し、減収となる見込みです。
経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益については、減収に伴い減益と見込んでいます。
中期経営計画 「ビジョン2025」
中期経営計画の進捗状況です。当社グループは、2022年3月期から2026年3月期の5年間を対象とする中期経営計画「ビジョン2025」を推進中です。「あらゆる服づくりの舞台裏に私たちがいる」というビジョンを掲げ、不確実性の高い環境下でもお客さまのすべてのニーズに応えるべく、積極的な投資とさまざまな改革に取り組んでいます。
対象の5年間を2期に分けており、アフターコロナへの準備のための第1期が2023年3月期で終わりました。今期は、新たな成長を実現する第2期の3年間がスタートしたところです。
第1期の2年間はコロナ禍でしたが、ベトナムおよびバングラデシュでの工場建設による生産能力拡充を中心にアフターコロナに向けての準備を進め、工場建設は概ね計画どおりに終えることができました。
今期からの第2期では、コロナ禍から回復するアパレル需要を、顧客のニーズを拡充した生産背景でしっかりと受け止め、新たな成長を実現していきます。流通在庫の高止まりなど足元の厳しい環境はありますが、在庫調整が一巡した後のニーズを受け止める生産背景は構築できたと考えています。
中期経営計画 進捗状況
基本戦略の進捗状況です。基本戦略の柱である「サプライチェーンの更なる多元化推進と、『良質なものづくり』の一層の強化」においては、先ほどもお伝えしたとおり、ベトナムおよびバングラデシュでの工場建設を概ね計画どおりに終え、一部工場では稼働を開始しています。
当社グループ顧客の需要回復に向けて新設した工場を着実に立ち上げ稼働させるべく、機材の導入や工員の採用、習熟度の向上など、生産能力拡大と生産性向上に日々取り組んでいるところです。
「新素材開発および新たな製品開発への取組推進」では、主に生地加工の事業において、顧客要望に合わせた開発と提案を進めています。「主力OEM事業における営業力の強化」では、前期の夏以降、コロナ禍による移動制限が大幅に緩和されたことから、国内・国外ともに営業活動の幅を広げています。
コロナ禍でのサプライチェーンの混乱により生産地を見直す動きもあり、当社グループが5ヶ国に展開する生産背景に関心を持つ潜在顧客も増えていると感じています。加えて、戦略的業務提携を結んでいるタイのサハグループからの受注も徐々に増えており、さらなる関係強化に向けて資本提携を締結しました。
生産地シフトの推進
「サプライチェーンの更なる多元化推進と『良質なものづくり』の一層の強化」には、生産能力の拡大・拡充だけでなく、競争力の高いASEAN諸国等への生産地シフトも含まれています。スライドの円グラフは、その進捗状況です。
先ほどお話ししたとおり、2022年3月期に50パーセントだったASEAN諸国等での生産による売上高は、2023年3月期には7パーセント増の57パーセントとなり、計画どおり順調に進捗しています。3年後の2026年3月期には、さらに14ポイント増加させ、ASEAN諸国等での生産による売上高を71パーセントにまで拡大していきます。
実施した主な設備投資
実施した主な工場投資について、スライドには工期の大部分が2023年3月期だったものを紹介しています。
ベトナムのアンナム第3期工場は2021年9月から建設を開始し、生産能力は312万枚です。2022年5月からは、同規模の第4期工場の建設を開始しています。両工場は同時並行で建設が進められ、前年中に完成し一部稼働を開始しています。すでに稼働中の第2期工場と合わせると年間で900万枚規模の生産能力を持つ、大型工場です。
ベトナムのタンチュオン工場の年間最大生産能力は約140万枚で、高価格帯・高品質の製品を求める顧客のニーズに対応できる工場を目指しています。こちらも一部稼働を開始しています。
バングラデシュのIMBD第2期工場は2023年2月に完成し、現在は稼働に向けて機械設備を整備中です。年間最大生産能力は450万枚で、バングラデシュのコスト競争力の高さを活かし、顧客のニーズに応える工場を目指します。
定量目標 売上高700億円、経常利益35億円の実現
定量目標と進捗状況です。2023年3月期は、顧客の生産地見直しニーズにしっかりと応えたことで受注が増加し、中期経営計画の目標数値に対して売上高68億円、経常利益20億円と、それぞれ上回ることができました。
一方で、進行中の2024年3月期においては、アパレル流通在庫の調整期間による受注減の可能性を鑑み、中期経営計画の目標数値に対して売上高は40億円減の580億円、経常利益は8億円減の15億円を見込んでいます。
足元の環境から、今期は目標数値に対して未達を見込んでいますが、前期までの工場投資によって収益と利益拡大のための生産基盤は拡充できていますので、来期以降に目標数値をキャッチアップすることは可能だと考えています。
現在は、需要回復時に受注を拡大すべく、新工場の立ち上げと縫製工員の技術の習熟度向上に取り組んでいます。
配当方針
配当方針です。当社グループは、株主のみなさまに安定的に利益配当することを基本方針としており、中期経営計画の利益成長と定量目標の達成度に合わせて増配を検討しています。
近年、増配や自社株買い等で株主還元を検討する企業が増えていることは認識しています。しかし、当社グループは前期までに大規模な工場投資を終えたばかりであり、これらの工場の稼働を早期に高め、利益を拡大していくことが目下の最重要課題であると考えています。
その取り組みが、ひいては株主のみなさまの利益にもつながると考えています。
サステナビリティ活動の基礎①
中期経営計画におけるサステナビリティ活動の進捗状況です。当社グループは「服を着る人も作る人も幸せになる社会をつくる」ことを指針としており、サステナビリティ活動の中心に据えています。
スライドは、当社グループが1999年の中国進出以降、ミャンマー、バングラデシュ、ベトナム、インドネシアの5ヶ国に生産拠点を広げて「ものづくり」を進める中で、すべての国の工場周辺地域で雇用創出や労働環境の整備、人財登用などを行ってきた歴史を示したものです。
当社グループの生産能力の源である2万人を超える従業員とともに、工場を稼働させ続けることが「持続可能な社会」の実現に貢献すると考えています。
サステナビリティの活動の基礎②
当社グループは、いわゆる新興国や発展途上国と呼ばれる国へ進出し、縫製工場を運営しています。工場周辺地域での雇用創出が、従業員の生活レベル向上や街の育成、地域社会を豊かにすることの一助になると考えており、SDGsの項目では1から6の活動にあたります。
何もないジャングルのような土地やできたばかりの工業団地に工場を建設し、そこに通勤する人たちが増えると、商店や飲食店が立ち並び、近くに移り住む人たちも出てきて少しずつ街になっていきます。このように、工場周辺地域と良好な関係を築くことも、効率的な工場運営には不可欠です。
サステナビリティの取り組み –サステナビリティ委員会–
これまでの取り組みのさらなる推進と新たな活動の展開に向け、2022年10月にサステナビリティ委員会を発足しました。委員会からの諮問と協議を経て、当社グループのマテリアリティを特定しました。
マテリアリティは「顧客が求める良質な製品を提供し続ける」「環境に配慮し生産地域と共存共栄する」「全てのグループ人財がいきいき働く」の3項目です。
今後はサステナビリティ委員会において、それぞれのマテリアリティに対する実行計画の策定を促し、設定された指標および目標をモニタリング・評価する取り組みを進めていきます。
サステナビリティの取り組み –人的資本経営–
人的資本経営についてです。マテリアリティの1つである「全てのグループ人財がいきいき働く」の実現に向けて、多様なバックグラウンドや知識・経験を持つ人財が活躍できる仕組みや職場環境の整備を進めています。
具体的な施策として、すでに実施したことが3つあります。1つ目は、各国の責任者・担当者がASEAN諸国の都市に実際に集まって協議し、生産の方向性を決める「マツオカサミット」の開催です。2023年1月に生産部門を、3月には管理・経理部門の会議を実施しました。
2つ目は2023年4月の組織変更において、外国人社員を執行役員に登用したことです。生産地がASEAN諸国等へシフトしていく中で、海外での営業活動・生産活動の活性化には外国人幹部の活躍が不可欠です。
3つ目として、2023年3月に「健康経営優良法人2023」の認定を取得しました。取得自体にも基礎となる活動が必要ですが、今後も社員が健康的に働ける社内環境の整備を継続していきます。
また、新たな取り組みとして「女性のキャリア形成支援」についても、管理職比率の具体的な目標を定めて実行していきます。以上で、会社概要、2023年3月期の決算概要、2024年3月期計画および中期経営計画の進捗状況についてのご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:2024年3月期が減収減益計画となっている理由について
司会者:「ベトナムとバングラデシュで積極的に工場投資を行っていますが、2024年3月期が減収減益計画となっているのはなぜでしょうか?」というご質問です。
金子:外部環境として、世界的には金融引き締めやアメリカの債務上限問題、ウクライナ情勢などから先行き不透明な状況が続いています。日本のアパレル業界では、アフターコロナへの移行による経済活動の回復から、業績改善を発表する企業が増えてきました。
一方で、アパレル製品の流通在庫は依然として高止まりの傾向と捉えており、当社グループの顧客にも慎重な対応が見られています。このような環境認識から、2024年3月期が流通在庫の調整期となり、受注量の減少につながる可能性を考慮し、減収減益の予想としました。
今後は本格的なアフターコロナへの移行に加え、インバウンド需要の回復によって流通在庫量の調整が進み、当社グループの顧客からの発注が回復すると想定しています。その需要をしっかりと受け止め、当社グループの受注と収益につなげるよう、2023年3月期までに投資したベトナムとバングラデシュの工場を着実に稼働させるべく取り組んでいます。
質疑応答:スタンダード市場への上場選択申請の理由とプロセスについて
司会者:「昨日、プライム市場からスタンダード市場への上場選択申請を決定したとプレス発表がありましたが、その理由とプロセスについて教えてください」というご質問です。
金子:当社グループは、中期経営計画「ビジョン2025」に基づき、当社グループ顧客の需要回復に向けて、2023年3月期までの2年間で85億円規模の工場投資を実行しました。今は新設した工場を着実に立ち上げ、稼働させるべく取り組んでいるところです。
中期経営計画の最終年度である2026年3月期の定量目標として設定している、売上高700億円、経常利益35億円を達成することによって、プライム市場上場維持基準に適合することを目指し、それを基礎とした適合計画を提出していました。
そうした中、2023年4月1日施行の東証の規則改正により、プライム市場上場維持基準に関する経過措置の終了時期が、当社グループが適合基準を目指している2026年3月期よりも1年早い2025年3月期となりました。
この発表があった今年1月以降、社内では継続的に協議を進めてきましたが、工場に投資して立ち上げ、一定の期間をかけながらしっかりと利益を獲得していく当社グループのビジネスモデルから考えると、1年早く基準に適合できる目標を設定して計画を書き換えることは困難であると判断しました。
この規則改正により、当社グループがプライム市場に上場を維持し、経過措置期間中に当該基準を満たさなかった場合は、上場廃止となるリスクが生まれました。そのため、株主のみなさまが不安を持つことなく、安心して当社グループ株式を保有・売買できる環境を確保することが最優先で重要だと判断し、スタンダード市場への上場を選択することとしました。
スタンダード市場移行後も、中期経営計画「ビジョン2025」の基本方針や重点取り組み、最終年度である2026年3月期の定量目標は変わりません。株主のみなさま、投資家のみなさまから引き続きご支持いただけるよう、企業価値の向上に取り組んでいきます。
質疑応答:中期経営計画とスタンダード市場選択の矛盾について
司会者:「中期経営計画を達成することがプライム上場維持基準適合のための基本戦略だったはずですが、中期経営計画を見直さずスタンダード市場を選択することは矛盾しないのでしょうか?」というご質問です。
松岡:中期経営計画第1期の2年間で85億円規模の投資を行い、ベトナム、バングラデシュで新工場を設立しました。中期経営計画第2期の新たな成長の基礎となる生産能力拡大に向けて、スタート台に立ったところです。
世界経済の景気減速懸念やアパレル業界の流通在庫の滞留から、顧客が慎重な動きになることを想定し、足元では減収減益を見込んでいます。今般の東証の規則改定で、上場維持基準に抵触した後の経過措置の取り扱いが明確化され、経過措置終了期間が適合計画の終了期間から早まったことにより、スタンダード市場を選択することを決議しました。
しかし、最終目標である中期経営計画は変更していません。今後の見通しとしては、アフターコロナによる個人消費の拡大傾向や、インバウンド需要の急回復による受注の回復が想定されます。当社グループとしては、新設工場の垂直立ち上げと工員の習熟度向上に注力し、在庫調整後の顧客需要増を確実に受け止め、生産能力と収益力を中計の最終目標まで引き上げていきます。
質疑応答:株価低迷について
司会者:「株価低迷についてどのようにお考えでしょうか?」というご質問です。
松岡:前中期経営計画が未達に終わったことに加え、コロナ禍で業績が計画どおりに伸長しなかったことも、株価低迷の要因の1つであると考えています。
現中期経営計画では、コロナ禍にありながら収益改善に取り組むことはもちろん、中期的な経営戦略として、アフターコロナを見据えた大型設備投資も実施に併せて、ホームページやプレスリリース、決算説明会を通じた業容および業績の発信と、投資家のみなさまとの対話に注力してきました。
2022年6月から11月は低い水準で推移しましたが、その後は各種施策の効果もあり、12月頃から上昇傾向が見られました。株価については、今後も株主のみなさまのご期待に沿えるよう企業価値向上に全力で取り組んでいきます。
業績向上の施策のほか、当社グループに関してよりご理解いただくため、引き続きIR活動を積極的に展開し、説明会の充実も図っていきます。
質疑応答:2024年3月期を流通在庫の調整期とした根拠について
司会者:「2024年3月期を流通在庫の調整期とされていますが、その根拠は何でしょうか?」というご質問です。
金子:前々期にあたる2022年3月期では、コロナ禍により物流やサプライチェーンが混乱し、アパレル縫製工場を含む「つくり場」が減少した結果、当社グループの顧客において適時に適量の商品調達ができない状況が発生しました。
その反動から、前期の2023年3月期は売れ筋商品を中心に在庫を一定量確保したいというニーズが発生し、当社グループの堅調な受注にもつながりました。一方で、2度にわたる中国国内のロックダウンや欧米の景気減速もあり、アパレル製品の流通在庫の水準は高止まりであると認識しています。
今後はアフターコロナ移行による経済活動の回復から、流通在庫の調整が進むと想定していますが、シーズン単位で在庫が増減するアパレル製品の特性から、在庫調整が一巡するには1年程度かかると考えています。
質疑応答:流通在庫の高止まり期間について
司会者:「今期の計画では、流通在庫の高止まりはどれくらいの期間続くと想定していますか?」というご質問です。
金子:流通在庫が高止まりしている原因は、先ほどご説明したとおりです。アパレル製品の特性として、春夏物、秋冬物などのシーズンごとに在庫が増減する傾向がありますので、それが一巡するにはやはり1年程度かかると考えています。
質疑応答:株主価値向上の方針について
司会者:「各社が増配や自社株買いなどを積極的に行っていますが、御社の株主価値向上の方針について教えてください」というご質問です。
金子:当社グループは、中期経営計画に基づき、前期までの2年間で85億円規模の工場投資を実行しており、現在は本格稼働に向けた生産体制の立ち上げを着実に進めています。
ご質問のとおり、増配や自社株買いなどを積極的に行う会社が増えていることは承知していますが、当社グループとしては、工場投資を利益獲得につなげることが目下の最重要課題であり、それを早期に実現することが中長期的には一番の株主還元であると考えています。
中期経営計画の進捗達成状況に合わせて、その他の還元策も検討していきます。
質疑応答:アパレル業界の市況の見通しについて
司会者:「アパレル業界の市況をどのように見通していますか?」というご質問です。
松岡:引き続き不安定な世界情勢下にあるものの、世界的にもウィズコロナ、アフターコロナの局面に入っており、緩やかながら世界経済も回復基調へ向かっていると想定しています。日本では、新型コロナウイルスが第5類に移行し、各種規制も解除される中、消費マインドは回復傾向が続くと見込んでいます。
アパレル市場においても、一時的な流通在庫の滞留はあるものの、インバウンド需要の回復に加え、個人消費の復調が期待できるものと考えています。
質疑応答:プライム市場に再挑戦する計画について
司会者:「今後、プライム市場に再挑戦する計画はありますか?」というご質問です。
松岡:まずは本業に注力することを最優先として、収益力の拡大を図って利益還元していくことが第一だと考えています。当社グループの中長期的な企業価値向上とともに、ステークホルダーのみなさまのために、何が最善であるかを絶えず考え続けていきます。
現中期経営計画では、2024年3月期から第2期の3年間をかけて新たな成長フェーズを目指しています。4月から新しく組成した組織体制を基盤として、新工場のフル稼働を中心に、グループ全体で生産能力拡大と品質向上に注力していきます。
中長期的な戦略に基づき次期中期経営計画を立案し、さらなる成長を目指す中で、プライム市場への再挑戦という目標も盛り込める可能性はあると考えています。
松岡氏からのご挨拶
松岡:みなさま、本日は当社グループの2023年3月期通期決算説明会にご参加いただき、ありがとうございました。当社グループでは、これからも積極的なIR活動を通じて適正な企業情報を開示し、みなさまとの対話を深めていきたく存じます。
今後もみなさまのご期待にお応えすべく、事業の継続的な成長と企業価値のさらなる向上に努めてまいりますので、引き続きご支援賜りますようどうぞよろしくお願いいたします。