Mission

菅原充氏(以下、菅原):株式会社QDレーザの菅原でございます。本日はお時間をいただき、ありがとうございます。これから我々の事業、特に決算説明についてご紹介したいと思います。よろしくお願いいたします。

我々のミッションは「半導体レーザを使って、できなかったことをできるようにする。新しいアプリケーションを作り出し、世の中の基盤などの革新に貢献する」です。

おそらくみなさまの中で、これまで半導体レーザを見たことがある方は誰もいないと思います。1ミリ以下のすごく小さな半導体のチップが、巨大なレーザと同じ機能を果たし、通信、記録などのさまざまなアプリケーションで人間の社会に入り込んでいます。

今の情報通信社会は、半導体レーザがあって初めてでき上がったものであることをお伝えしつつ、我々の事業がどのように展開されるかについてお話しします。当社は、情報処理能力つまりコンピューターの処理能力を光で上げたり、光を網膜に投影して視覚障害者の支援や眼疾患の予防をしたり、スマートグラスなどスマートフォンの次の世代の端末を作ったりしている会社です。

業績ハイライトの前に、半導体レーザデバイスの事業を含めて会社の成り立ちから順番にご紹介します。

レーザデバイス事業の原点

菅原:光通信用半導体レーザが1980年代に世界中に敷設され、それから40年で社会が変わってしまいました。光通信にはとても厳しい水準が求められていましたが、富士通、NEC、沖電気工業など多くの日本企業が世界的な発展に貢献しました。

この光通信に貢献したメンバーが2001年のITバブル崩壊後に結集してできた会社が、QDレーザです。

そもそも半導体レーザとは?

菅原:先ほど「半導体レーザはすごく小さい」とお伝えしましたが、その小さなチップに電流を流し、中で光を増幅することでレーザ光を出します。例えば、我々の話した声がマイクで捉えられ、スピーカーから発せられ、またマイクに入ると、ぐるぐると回ってハウリングを起こしますが、同じような現象を光で行うのが半導体レーザです。

先ほどお伝えしたとおり、1980年代から2000年代にかけてできた光通信と光記録のインフラによって、今の情報社会ができ上がりました。

QDレーザへの期待

菅原:実は、レーザはアインシュタインが最初に提案しました。一般相対性理論が発表された1915年頃ですので、非常に古くから電子が光を増幅させることができるという提案がされていました。それをもとに約40年後にレーザが発明され、1962年に半導体がレーザになっています。

この後、1980年代に光通信が発明され、日本の企業が大きく貢献して光通信が敷設されました。1995年にインターネットができ、さらにはスマートフォンが登場し、人間と情報が光とマイクロ波でつながるところまで来ています。

そのような中で現在、世間にはあまり知られていないものの、5G、スーパーコンピューター、データセンター、顔認証、眼底撮影、レーザ加工などのさまざまなレーザアプリケーションが社会にどんどん浸透し始めています。当社は今挙げた分野すべてを対象に研究開発を行い、一部を製品化して世の中に実装しています。

特に象徴的なものはスライド左下の、指先に乗っている半導体のチップです。この5ミリ角のチップをLSIの周りに置くと、100ギガビットで光通信をLSI同士で行うことができます。このような新しいチップが、最終的にコンピューターの世界に大きな変革をもたらすと考えています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):スライドには第1期、第2期、第3期と記載されていますが、御社はどのフェーズから開発をされているのでしょうか? また、技術者を吸収して会社を設立されたということですが、開発してきた商品などを含めて創業のきっかけと歴史を教えてください。

菅原:半導体レーザを使った光通信を、日本企業であるNTTが立ち上げたのが1980年代の初めです。その後はNECと富士通と沖電気工業が御三家として、NTTと一緒に取り組んできました。その時代の研究者が私を含め、当社のコアメンバーとなっています。

2001年にITバブルが崩壊し、日本の企業が少しずつ光通信から撤退し始めました。その中で、もう一度光で新たなムーブメントを作ろうと、仲間に声をかけて始まったのがQDレーザです。もともとは富士通の研究者が主体となって始めましたが、今では多才な企業のメンバーが集まって事業を進めています。

更なるTAM拡大の可能性

菅原:アプリケーションは今お伝えした光通信だけで、7,700億円の市場があります。こちらは半導体チップやモジュール、いろいろなトランシーバなどの装置も含めて7,700億円です。

また、新しいアプリケーションとして、LiDARというレーザレーダ、顔認証、ドローン、眼底検査、シリコンフォトニクス、スマートグラス、5G関連デバイス、積層造形があります。レーザを使った新しいアプリケーションがネットワークにつながることで、より大きな価値をもたらしています。我々はそのすべてについて開発し、事業化をしている会社です。

坂本:御社はこの製品の中で最先端の部分を担い、事業を行っていると思います。スライドの図で見ると新規最終製品市場の前段、つまり最終製品市場や既存半導体レーザ市場については、どちらかというと事業対象外でしょうか? この市場には汎用品がすでにあるため、そうではなく新しいところを狙っていくかたちになりますか?

菅原:今は光通信と、その上の置き換え市場は、日本とアメリカとドイツの大きなレーザの企業が行っています。ソニー、シャープ、三菱電機、そしてドイツのオスラムという会社がありますが、大量生産をできるバックグラウンドを持っているため、積極的に取り組んでいます。

一方、新しい市場は、ベンチャーが狙って大きく立ち上げていくところだと思っています。

当社コアテクノロジーと競合優位性

菅原:だんだんと難しい話になってきましたが、コア技術がさまざまなものを生み出す源泉になっています。半導体レーザの材料、設計、制御にあたって、QDレーザだけが持っているさまざまな技術をご紹介します。

「量子ドット」という半導体の玉をレーザの中に100万個ほど詰め込むことで、温度に対して非常に安定で、びくともしないレーザを作ることができます。こちらはQDレーザだけの技術で、シリコンにはめ込むことでシリコンに光を入れることができます。また、それを作る技術として「半導体結晶成長」という技術があります。

「レーザ設計」は超高速で瞬間的に光を出す技術で、加工や半導体のウエハー検査に使われています。チップをモジュールにする「小型モジュール」は出た光を自在に操る技術です。「VISIRIUM テクノロジー」は、網膜に映像を投影して瞳孔を通して入れる技術です。「回折格子と波長変換素子」はある物質に光を通すことで、波長を制御して色を変えてしまう技術です。

これらを組み合わせることで新しい事業に取り組み、製品を作り始めています。

QDレーザが開発・販売する半導体レーザの特徴

菅原:より抽象的な言葉で言うと「アレンジの自在性」です。当社のレーザは、半導体から出てくる光の色をいくらでも制御できるため、青、緑、オレンジ、赤、見えない光まで、どのような波長でも作ることができます。

半導体のレーザは光の波長によって使う場所が違うため、さまざまなお客さまやアプリケーションに応じて、ワンストップソリューションで提供できることが強みになっています。

坂本:取引先から「このようなものを作ってください」とお願いされて作ることが多いですか?

菅原:おっしゃるとおりです。お客さまは現在60社弱ほどいますが、それぞれいろいろな加工やセンシング、通信、コンピューターに取り組んでいます。そこで必要なものを当社がうかがい、カスタマイズしながら作ります。一個一個のカスタマイズが成功すると、何千万台、何億台になる可能性を秘めています。

坂本:そちらが製品化されると、非常に多く生産されるということですね。

菅原:そのとおりです。このようなことは大企業ではできないため、当社の大きな強みだと思っています。

坂本:生産面が大企業との差になっているのですね。

QDレーザ独自の製造プロセス

菅原:生産についてはセミファブレス体制のため、まさに自由度が高いことが一番大きな強みだと思っています。まず、大きなラインをあらかじめ作る必要がありませんので、固定費も安いです。さらに、数個などの少量から大規模まで数も自由に作ることができますので、成功したら大きなラインを借りればよいというかたちで進められます。

また、品種もどんどん増やせるという点がこのビジネスモデルの大きな特徴です。だからこそ、新しい可能性のあるチャレンジができると思っています。

坂本:いまの説明では、自由度を確保するためにセミファブレス体制を採っているとのことですが、スライド左側の図を見ると、オレンジ色で示された自社製造の部分は4工程ほどあります。

こちらについて、技術流出を防ぐため、委託工場での生産が足りないため、もしくは先ほどお話しされたように「この部分を自社で行うことによって、さらに自由になる」と考えているためなど、いろいろな理由があるかと思いますが、水平分業にしている理由を教えていただけますか?

菅原:半導体レーザの肝は「結晶成長」と呼ばれる、原子を一個一個重ねて、切り刻んだ時に最適なレーザになるという設計技術と原子レベルで物を作る技術です。こちらに関してはやはり、人に真似されたくない、いわば「秘伝のタレ」ですので、自社で製造を行っています。

坂本:財宝的なものですね。

菅原:そのようなものです。こちらは富士通とNECの技術が集積された技術です。

QDレーザが開発・販売する半導体レーザのバリエーション

菅原:レーザにはいろいろな波長があるとお伝えしましたが、スライドの左から順にご説明します。

小型可視レーザはバイオ系のレーザです。高出力FPレーザは、半導体の工場の中でいろいろなセンサーとして使われています。DFBレーザは、スマホなどの精密加工や、半導体のウエハーの表面検査に使われています。量子ドットレーザはコンピューターの光です。それぞれが事業として進んでいます。

坂本:色が違うのはわかるのですが、スライドの450から1,550までの数字はどう違うのでしょうか? レーザーの太さ細さが違うのか、どのような製品にはこの数字のものが適しているのかなど教えていただければ、御社が作られている製品のイメージが湧くと思います。

菅原:光は音と同様に、波長を持っています。高い周波数では高い音が聞こえますが、高い周波数の音は波長が短いです。音では波の粗いところと詰まったところが、周波数として並んで耳に伝わってきます。

それと同じように、光の波はサインカーブで伝わってきますが、波が広いものは周波数が低くてエネルギーの弱い光、短いものはエネルギーの高い光となります。その部分を変えることでレーザの種類が変わります。

一番重要なのは、周波数や波長が違うと物質との関わり方も変わるということです。例えば、人間の目が赤と青と緑しか見えないのは、人間のセンサーがそのような構造になっているからです。私たちには赤外線が見えませんが、蜂には紫外線が見えます。

同様に、シリコンには1,310ナノメーターの光しか通りません。他の光を使うと中で吸収されてしまい、コンピューターに光を入れられません。このように、アプリや物質が光とどう関わるかで、応用ごとに必要な光が違ってきます。

坂本:イメージはわかりました。レーザでは見えない光を出すことができるのですね。

菅原:おっしゃるとおりです。それがコンピューターの中の光です。

DFBレーザ

菅原:それぞれの製品についてご説明します。DFBレーザは加工やセンサーに使われており、最近ではウエハーの表面検査にも非常に使われ始めています。

30インチのシリコンウエハーの斜めから光を入れ、もし表面が荒れていると上に散乱光が飛びます。普通の鏡とは違って壊れていると上に飛ぶため、半導体のウエハーを検査することができます。今ではパターンを書いた回路も検査できるため、歩留まりを上げるために非常に役に立っています。

小型可視レーザ・小型マルチカラーレーザ光源

菅原:小型マルチカラーレーザは我々の発明品ですが、オレンジ色や黄緑色のレーザを初めて半導体レーザから出すことができました。波長を変えるトリックを使っているのですが、血液の成分を測ることができ、白血球、赤血球、血小板がどれくらい血液に入っているかを横から光を当てて計測します。

今は年間8,000台ぐらいの市場がこの装置にあり、我々はその中のかなりの部分にレーザの供給を始めています。みなさまが行う血液検査では、このレーザが使われている可能性が高いと思います。

小型可視レーザの成⻑戦略

菅原:戦略商品でもある黄緑色の561ナノメーターは現在、市場の33パーセントのシェアを占めています。この技術を使ったフローサイトメーターという血液装置は、年間4,000台から5,000台販売されますが、そのうちの3分の1を我々が提供しており、売上は2億円ほどです。今後はこの規模を3倍から4倍にして市場を取り、さらに5億円から6億円にしていきたいと考えています。

今後は波長の種類を広げて増やし、いろいろな光や色を作り、さらにモジュール化してマルチカラー光源を製造するという、バリューチェーンを下るかたちでのプラグアンドプレイのソリューションビジネスに取り組みたいです。狙いとしては数十億円規模の市場を、まずはこのニッチなところで作っていこうと考えています。

新製品:当社小型化しレーザを集積化した小型マルチカラーレーザ光源

菅原:ニッチ市場への取り組みの最終ゴールの1つとして、スライドに記載した新製品があります。1個1個のレーザを買っていただき、苦労しながら使ってもらうのではなく、最初かお客さまが必要としてカスタマイズしたレーザを、眼底撮影やフローサイトメーターといった、いろいろな装置にプラグアンドプレイで使っていただくことを目指したものとなっています。

キーエンスや浜松ホトニクスなど、すでに光を扱う企業では、そのような方向で大きな事業をしています。我々も独自のチップを使って、お客さまへソリューションを与える付加価値を持ったデバイスを作っていきたいと思っており、いよいよ始動するところです。

坂本:これがあれば1つの機械でいろいろな検査ができるようになるというイメージでしょうか?

菅原:お客さまがレーザを組み上げて調節する必要がなくなるということです。例えば、人がのぞき込む筐体にそのまま置くだけですぐに装置が完成します。いろいろな工程を削減すできるため、コストや時間の削減という付加価値をお客さまに提供することができます。

#3量子ドットレーザ

菅原:量子ドットレーザの仕組みは非常に分かりにくいのですが、私が研究所時代からずっと扱ってきたものです。スライドの左側に示している1個1個の玉は「量子ドット」と呼ばれており、インフルエンザウイルスの10分の1ぐらいの大きさになりますが、電子を捕まえ、光を増幅する機能を持っています。

量子ドット量産技術の紹介

菅原:「量子ドット」の作り方をご紹介します。先ほど「結晶成長は自分たちで行う」とお話しした「秘伝のタレ」の部分になりますが、スライドの写真のような宇宙空間並みの高真空釜の下から、ガリウムやヒ素、イリジウムなどの金属を溶かして吹き付けます。

そうすると、原子が1個1個飛んでウエハーに積もっていき、量子ドットという材料ができます。ワックスを塗った自動車のボディの上に水をかけると球になるのと同じように、量子ドットも球の形状をしています。

広がるよりも球になった方が自然のエネルギーが低いという、いわゆる物理における「エネルギー保存の法則」の原理からできています。こちらはNECと富士通のグループが95年から取り組み続けていたものですが、一緒に集めることにより、作ることができるようになりました。

顕在化し始めたシリコンフォトニクス(電子・光集積回路技術基盤、コンピュータチップの光通信)

坂本:量子ドットを使うと、どのようなことができるようになるのですか?

菅原:量子ドットのすごい点は、コンピュータにまで光通信を持ちこみ、コンピュータのチップ同士が光で通信できるようになるところです。LSIは120度くらいの温度になりますが、我々のレーザは電子を捕まえることで、200度の高温下でも普通に動きます。

坂本:それでは、通常は暴走しないように冷やし続けなくてはいけませんね。

菅原:その条件で動くのはこのレーザしかありません。NEC、富士通の各グループ、さらにQDレーザが集まり、5ミリ角のチップにレーザを詰め込み、チップを完成させました。通常の光通信の100ギガビットモジュールの大きさはマウスほどですが、5ミリ角まで小さくすることに成功しました。

サイズダウンにより、スライドの中央の図にある「LSI間」の両側に「FPGA」とある周辺にチップを置くことができ、LSI同士が光で通信できるようになります。今はビルまで光通信が来ていますが、ビルからコンピュータの中には届いていません。しかし、シリコンフォトニクスと量子ドット技術が全てを最後の計算チップにまでつなぐことを可能にします。

そうすると、LSI同士が自分で計算したものを高速でメモリーに飛ばし、メモリーから必要な情報を高速で読み取り演算するというように、全体の処理能力が上がっていきます。これらはスーパーコンピュータでも必要とされている技術ですが、このようなレーザ技術とシリコン技術により、いよいよ光インターコネクトができあがるということです。

シリコンへ光を入れる技術は、すでに30年、40年研究されてきましたが、ついに完成するところまできています。現在は、インフラ系のボードやケーブルが電子から光に全て変わっていく時機を、虎視眈々とみている段階です。

顕在化し始めたシリコンフォトニクス(電子・光集積回路技術基盤、コンピュータチップの光通信)需要と当社の取り組み

坂本:スライド右側に「ムーアの法則の打破」といった内容がありますが、こちらが完成すると、どのような変化が起きるのでしょうか?

菅原:ムーアの法則の限界とは、LSI計算用のトランジスタの1つに「ソースドレイン」がありますが、その間が狭くなっていくにつれ、量子力学効果によりツーツーになってしまうというものです。そろそろ限界がきています。

坂本:限界がきているため、積層を増やしたり3Dにしたりすることで対応しているのでしょうか?

菅原:おっしゃるとおりです。ナノメートルになると「トンネル効果」が生じ、対応できません。それを防ぐために、いろいろなLSIを集積する、いわゆる「マルチコア」にしたり三次元にしたりするのですが、そろそろ限界がきています。そのため、コンピュータの最後の仕上げは光を入れることになります。

坂本:なるほど。この問題が打開できれば、意外と半導体の製造方法も変わってくるのでしょうか?

菅原:アメリカではすでに、ファブとして連携しようとしている企業がいくつかありますが、日本のアイオーコアが先頭を走っているのは確かです。

坂本:御社でも取り組んでいるということですか?

菅原:いよいよだと思っています。

視覚にイノベーションを起こす独自レーザ技術

菅原:レーザ網膜投影についてもお話ししたいと思います。先ほどお伝えしたように、我々は今までチップを使ってスマートフォン等の加工、血液やウエハーの表面をはかるセンシングなどに取り組んできました。

あわせて、これからシリコンフォトニクス用量子ドットレーザの爆発的な展開を期待するとともに、血液検査向けのものについてはバリューチェーンを下り、キーエンス的なモデルに取り組んでいきたいとお話ししました。

こちらは先ほどとはまた異なる角度でレーザ技術を使った最終商品で、すべてファブレスで作ります。原理としては、細いレーザービームを瞳孔を通して網膜に投影することにより、角膜水晶体に頼らない視覚体験を可能にします。つまり、水晶体がなくても見えるということです。我々は目のピントを合わせてものを見ますが、ピントを合わせる必要がなくなります。

さらに、どこを見ていても同じように見える、いわゆる「フリーフォーカス」になります。例えばデジタルで人形を描いて手の上を見ると、人形が手の上で踊っているように見ることができます。網膜の周辺部でもピントを合わせられるため、この技術は網膜症の人も含めて物が見えにくくなっている人を最大限見えやすくする、最高の技術だと思っています。

レーザアイウェア事業

菅原:我々は一気にスマートグラスに向かうのではなく、まずは「見えづらいを『見える』に変える」Low Vision Aidの製品展開、「『見える』の健康寿命を延ばす」Vision Health Careに取り組もうとしており、網膜投影によって目の検査をする事業を始めています。

そして最終的には、TDKやNTTと本格的に始めている、スマホの次世代端末になるであろうスマートグラスの時代まで進もうとしています。

世界初の網膜投影アイウェア

菅原:「ロービジョン」とは、WHOにおいて「眼鏡を使っても視力が出ないが、目を使ってなんとか生活したい、または何かをしたい人」と定義されています。つまり、積極的に何らかの解決策を探しているロービジョンの方々が、2.5億人もいるといわれています。

終了した国内外治験

菅原:網膜投影では「レーザを網膜に入れて本当に大丈夫なの?」といつも聞かれます。それを乗り越えるため、日本と欧州で臨床試験を実施しました。

特に不正乱視や角膜混濁の方の中には、読書もできなかった方が見えるようになったこともあり、医学的効果のエビデンスをいただき、加えて1年間使い続けても安全であるというお墨付きもいただきました。これにより、この技術が世の中に受け入れられる素地をきちんと作ったと思っています。

RETISSAシリーズ製品展開状況

菅原:そのような中「RETISSA DisplayⅡ」と「RETISSA メディカル」を日本でローンチしています。これまでに左側の「RETISSA DisplayⅡ」は900台くらい販売してきました。今はここからいよいよスタートする段階に至っています。

Low vision aid領域TAM(※前眼部適用のみ:屈折異常、角膜混濁)

菅原:市場規模的には、眼科先進国である日米欧のみでも大体9,000億円の市場があると考えています。いずれは中国などへの展開も想定しています。また、先ほどお話ししたような屈折異常や混濁の方に加え、網膜疾患の方にも提供していけばさらに大きな市場があると思っています。

そのような方々に使っていただいた上で最終的にスマートグラスを導入することにより、我々の技術を普通の人も使い始めたと言ってもらうことが夢です。

レーザ網膜投影製品RETISSA製造・販売体制構築、拡販

菅原:QDレーザの生命線であるパートナーシップについてご説明します。ファブレス体制に基づいたものや、認知度の向上、さらにSONY、サンテン、SEED、TDK、KAGA FEIといった主要プレイヤーと連携しながら製品開発を進めています。

レーザ網膜投影製品RETISSAロードマップ:レーザアイウェア

菅原:すでに「RETISSA メディカル」と「RETISSA Display II」は製品として販売しています。この後販売予定の「RETISSA Display III」は10万円以下の売価で10万台販売するとIPOの時から宣言しており、計画が進んでいます。

要素技術としては、アイトラッキング、小型のレーザ、普通の眼鏡と同じようなミラーになりますが、ほぼ揃ってきています。組み立て、試作品を出していく段階まで徐々に近づいてきています。

レーザ網膜投影製品RETISSAロードマップ:3つの新製品

菅原:この3つの新製品は、眼鏡改良など最終ゴールにまだ多少時間がかかります。それまでに2023年は手持ち型でそれぞれのアプリケーションに適応できる「RETISSA ON HAND」「RETISSA NEOVIEWER」「RETISSA MEOCHECK」という3つの新製品を発売します。2月1日には「RETISSA MEOCHECK」をリリースしました。2023年の計画としては500台規模で販売する予定であり、ほぼ受注をいただいているところです。

これらの商品の特徴ですが、眼鏡のように日常生活全般に使うわけではなく、使いたい場所で使います。「RETISSA ON HAND」は公共空間で使います。「RETISSA NEOVIEWER」では見えない方が旅行し、写真を撮る楽しみを得てもらいたいと考えています。「RETISSA MEOCHECK」は目の検査で使用します。

レーザ網膜投影製品RETISSA販売戦略と進展:レーザアイウェア

菅原:スライドにお示ししたものがレーザアイウェアです。先ほどお話ししたフラットミラーと小型の集積光源がついています。NTTやTDKと一緒に始めている製品で、各所で進めている展示では、大変好評です。我々は小さい会社ですが、両社と連携することにより、実際に関わっているメンバーも数十人レベルで開発しています。

レーザ網膜投影製品RETISSA販売戦略と進展:ON HAND

菅原:「RETISSA ON HAND」は画角が非常に広く、のぞくだけで子どもたちも動物を見ることができるように、遠くの景色を見ることが可能になります。網膜に映像を一度に投射することで、スライドのようにロービジョンの方が地図を見ることができるようになります。

みなさまの一般的な「見る」の場合、一方向しか見ることができません。しかし、網膜全面に描くことで、これまでとは異なった新しい見え方を獲得し、仕事や楽しみを得ることができるとわかってきています。こちらも2022年度中に発売する予定です。

レーザ網膜投影製品RETISSA販売戦略と進展:NEOVIEWER

菅原:デジタルカメラメーカーと連携し、写真を撮る新しい楽しみを生み出す取り組みに挑戦しています。ロービジョンの方々はスマホで撮ったものを一生懸命見ているのですが、デジタルカメラメーカーと自分の目でものを見て写真を撮る楽しみ、かつ旅行するといった機会をぜひ提供しようと取り組みを続けています。

レーザ網膜投影製品RETISSA販売戦略と進展:MEOCHECK

菅原:今までは網膜に映像を投影するとよく見えるとお伝えしてきましたが、それでも見えない場合がありました。光が通らないもしくは曇っている、あるいは光に当たっても脳に光の信号を伝える経路が切れているかのどちらかの場合です。このような症状の原因が白内障か緑内障なのかを、簡単に検出できる装置が「RETISSA MEOCHECK」です。

大学病院や眼科総代理店と連携し、目の健康チェックサービスも提供しようと考えています。我々としてはハードを販売するだけではなく、サービス事業にも乗り出す最初の契機になる事業だと思っています。

眼疾患・認知症・循環器疾患の早期発見サービスプラットフォーム構築

菅原:「RETISSA MEOCHECK」についてもう少し詳しくご説明します。眼科の病気はだんだん悪くなっていくため、自分ではどこまで悪くなったのかが分かりません。病院に行って検査するとしても、病院で20分、30分、あるいは1時間も掛けて測らなくてはなりません。そのためどうしても足が遠のき、相当悪くならないと病院に行く気になりません。

そこで我々は、職場や家庭、大規模商業施設や通勤圏内で簡単に測ることができれば、眼病発見によって事前にさまざまな苦労を防ぐことができるのではないかと考えました。

レーザ網膜投影技術を活用した新しい検眼装置群

菅原:ヘルスケア事業ではさまざまな機器を開発していますが、狙いは眼疾患や脳疾患、認知機能、循環器疾患です。これから60歳、70歳を超え、100歳まで生きる高齢化社会において、多くの方々に起こるであろう3つの高齢者疾患を事前に発見し生活習慣を変えることで、未病の段階で治療していくことを目指している治療です。

White paper 携帯型レーザ網膜投影機器による視野評価と眼疾患スクリーニングの研究を発行

菅原:すでに論文も出しています。スライドでお示ししたように、白内障、緑内障、脳疾患や脳腫瘍も発見できており、タクシー会社と連携したかたちで事業を始める寸前まできています。

定期健康診断への導入

菅原:スライド左下の写真は日本交通と連携して行った眼の健康チェックの様子です。さまざまな方がいましたが、事前に自覚して治療を受けていただくことにより、日本交通のタクシー運転手の安全性はおそらく日本で一番になるのではないかと思います。

システムイメージ:大学×DX企業

菅原:またこちらは、データと結び付きQDレーザもデータを管理する会社になる可能性があることを示しています。

中⻑期で期待できるポテンシャル

菅原:全体のまとめです。IPOの時からお見せしていますが、我々はこの絵のように進み続けてきました。

まずニッチ事業としてレーザデバイスがあり、その上にアイウェアがあります。きっとブレイクすると考えてさまざまな商品やスマートグラスを開発し、すでにその一部は商品化しています。

その後にはシリコンフォトニクスや量子ドットレーザ、そして目のスクリーニングサービスが待ち構えています。QDレーザの将来に向けてこの部分をしっかりと成長させていくことでがんばっていきたいと思っています。

業績ハイライト

菅原:こちらで冒頭に戻り、決算についてご説明します。第3四半期の業績ハイライトです。レーザの売上高は残念ながら前年同期比9パーセント減の6億1,200万円です。一方、アイウェアの売上高は前年同期比96パーセント増の7,500万円です。

アイウェアに関しては、先ほどご紹介した3つの新製品「RETISSA ON HAND」「RETISSA NEOVIEWER」「RETISSA MEOCHECK」により、通期の計画売上高2億3,900万円は達成の見通しとなっています。昨年度は9,000万円でしたため、非常に大きな伸びとなり、いよいよ網膜投影が実装される時が来たと感じているところです。

レーザに関しては、もう少し早く落ち着くと思っていた中国のロックダウンの影響が、残念ながら避けられずに、今は中国での高出力レーザの展開が鈍っています。

量子ドットレーザに関しては、アイオーコアの量産に向けては順調に進んでいるのですが、それ以外の共同開発案件が少し時期ズレになっています。

自動車メーカーと連携しているLiDARというレーザレーダーは、仕様をもう少しリファインしようとしています。また、アメリカの通信ベンダーとは、より出力が出る構造に切り替えようと設計仕様を詰めていることもあり、残念ながら売上にはつながらずこのような結果になっています。

業績ハイライト

菅原:レーザの営業利益は3,900万円まで上がってきました。この後も伸びて、十分な営業利益を7期連続で出せると思っています。

全社の経常損失が前年同期比6,300万円の悪化となったのは、3製品の開発が第3四半期に積み重なったためです。3製品の開発費を第3四半期に使い、第4四半期で販売するかたちで取り戻し、全体としては計画どおりの営業損益になっていきます。

業績ハイライト

菅原:業績を表にしたものです。レーザ自体の営業利益は3,900万円まできています。LEW事業で開発費を使ったこともあり、営業損失は前年同期比6,400万円の悪化ですが、全体として年間では変わらない営業利益を達成する見込みになっています。

先ほどお伝えした我々の発明品である小型可視レーザは、みなさまの血液を測る装置として非常に強くシェアを取り始めています。今後さらに伸ばしていけると思います。

念願であったLEW事業が前年同期比プラス96パーセントと、年間見通しを達成できる見込みですので、ご期待いただければと思っています。

貸借対照表

菅原:貸借対照表です。資産合計は38億5,200万円で、自己資本比率は89.2パーセントという状況です。

受注状況

菅原:年間予想売上高12億7,700万円に対し、現在の段階で売上高と受注残高を足した数字が75パーセントになります。

通期業績予想の修正について

菅原:期末に向けてだんだんと見通しが立ってきた段階で、通期予想を下方修正しました。ここでみなさまにお伝えする必要があると考え、再度ご紹介します。

先ほどお伝えしたように、もう少し早く回復すると思っていた新型コロナウイルス感染症に伴う中国のロックダウンの影響が長引き、工場の出荷や操業がストップしました。それにより高出力レーザの需要が減退し、最終的に約7,000万円のマイナスを見込まざるを得ないという判断になりました。

量子ドットレーザに関しても、特に大きなところで2社との共同開発の仕様更新などがあり、スケジュールが来年にずれ込んでいます。これらは、市場がなくなったり我々の技術が陳腐化したりしたことが原因で起きたことではなく、全体としてマクロ経済や開発案件の浮き沈みの部分であるため、来年度はしっかりと挽回していきたいと思っています。

最終的な売上高はマイナス1億4,700万円ですが、手数料や人件費などを中心に販売費や一般管理費の減少を見込んでいますので、営業利益、経常利益、当期純利益は当初の予定どおり進んでいます。

さまざまなアイテムが、このような社会や技術の調整により花開きつつあります。今後ともぜひご支援いただければ大変ありがたいと思っています。私からのご説明は以上です。どうもありがとうございます。

質疑応答:黒字化の目標時期について

坂本:「早急の話なのですが、黒字化の目標はいつ頃でしょうか? 以前は今年度という発言がありました」というご質問です。

菅原:できるだけ早く実現していきたいと思います。黒字化があって初めてこの事業の蓋然性や継続的な存在を示せるため、一番大事なことだと思っています。

IPOの時に我々のアイウェアは大企業との連携により完成を迎え、「RETISSA Display III」は10万台という数が出ました。それが黒字のドライビングフォースになると思っていましたが、もう少し時間がかかることになり、遅れてしまっていることは否めません。できるだけ早く実現し、黒字を達成したいと思っています。

質疑応答:目標とする営業体制について

坂本:「以前のワラント説明会で将来はキーエンスを目指したいとのことでしたが、どのような真意がありますか?」というご質問です。こちらに関しては僕の質問と絡めていただきたいのですが、営業手法はどのようなものがありますか? 代理店を使っているのでしょうか?

僕はキーエンスを営業力の会社だと思っています。僕はメーカーにいたこともラインにいたこともありますが、やはり提案が非常にうまいです。20年前の話ですので、今はあまりわかりませんが、ただファブレスのため、比較的オムロンのほうがよいのではないかという話もありました。

先ほどファブレス生産についてもお話しいただきましたが、御社の営業体制と「キーエンスを目指す」ことの真意を含めて教えてください。

菅原:当社には戦略が2つあります。我々の商品は完全な上流チップであり「お客さまのお客さま」つまり使っている方が本当のお客さまです。この間に数多くのモジュールベンダーが世界で数十社、数百社あるのですが、こちらの方々に出しているだけでは、僕らはお客さまの声がわかりません。

「どのように使っているか?」「なぜ我々の商品を選んだか?」「どこに不満があるか?」などの話を聞きながらバリューチェーンを下って、ソリューションあるいはプラグアンドプレイなものとして持っていき、最終商品のお客さまと価値を共有したいということが1つの考え方です。我々のレーザは使いこなすのが少し難しい部分もあるためです。

坂本:技術がありすぎるゆえにですね。

菅原:そこで少し遠慮してしまう方もいます。そうではなく、本当に持っていけば「そのまま使えます」というところまで製造し、その上で「どのようにしたらあなたのお客さまの工程が削減されたり、開発費用を下げたりすることができますか?」ということを突き詰めて考えていくのが大事だと思っています。

その手段としてチップだけ作っていては、「こんなものを持ってきても駄目だよ」と言われてしまい、うまくいきません。お客さまが使う寸前のものまで作ることを、まず行おうと考えています。

その上で「お客さまは何を作って、本当は何を欲しているか?」「どのようにしたらコストが下がるか? 価値が上がるか?」ということを、キーエンスの方々のように知り、必要な商品を自分で企画し、自分で営業できるメンバーにしていきたいと思っています。1年ぐらいでなんらかのかたちは出せるようになるかもしれません。

坂本:非常によくわかりました。技術力が高いがゆえに、仮にどこかから頼まれて作ったとしてもけっこうな利益が出ると僕は思っています。そのような取り組みにおいて、既存の同業他社が「技術的に難しいからお願いします」など御社に仕事を振られることはあるのですか? 

御社の技術が高いため、既存の同業他社から少し外れるかもしれないのですが「ここの部分を作ってください」というようなお願いはあるのですか?

菅原:そのようなかたちがほとんどです。「QDレーザしか作れない」とみなさまはおっしゃいますので、言葉は悪いですが価値を持っていかれているのかもしれません。

坂本:もっと高くしてもよいのではないかという質問も来ています。

菅原:お客さまがどのように使っていて、何に困っていて、この製品を使うとどのようなコストダウンが行われているかを、僕らが本当に把握していかないと、なかなか値付けはできないのが実感です。

それを知るためにも、本当にそれを使いこなす最終商品のお客さまに渡せるところまで持っていきたいです。

坂本:そうすると値段としての価値もわかり、自分たちで値付けもできます。そのようなところまで行ければ、例えば1億円や5,000万円ぐらいもらってよいといった話もあるということですね。

菅原:それができるのが理想です。

質疑応答:規模拡大による開発速度向上について

増井:「規模を大きくして開発速度を高めていけないのですか?」というご質問です。

菅原:規模としては、特に量子ドットレーザやシリコンフォトニクスが立ち上がる時は数百万台になります。光通信のチップは、インフラなどに今でも7,000万台ぐらい出ていますが、コンピュータに光が入ったらそのような規模ではなく、数千万台から数億台になると思います。

それに向けた準備は少しずつ進める必要があると思っています。実際に100万台規模で量産が始まる時期を見計らい、今は将来を見越してキャパシティを上げていく資金調達をしようとしています。

キャパシティと言っても、我々は結晶成長の装置を1台1台作っていきます。1台作ると、だいたい数百万台からになり、それ以上作ることができるため、それほど大きな投資は必要ないのです。それに向けて、安定的、継続的に量産できるポジションを示すために、まずは量産機2台を置いて、その上で数に応じて伸ばしていこうと思っています。

4インチくらいの大きさのウエハーからレーザチップにするテクノロジーは、実は日本に数多くあります。光記録用CDやDVDのレーザと同じプロセスで量子ドットレーザは作られています。それは年間10億台以上の販売数であるため、量産に関しては問題ありません。

質疑応答:量子ドットレーザの将来について

坂本:「先ほどの話でコンピュータの中に光が入るということですが、我々一般消費者が使用するノートPCやスマホにも、将来量子ドットレーザが入ることはありますか? もしあるならば、どれくらいの時期になりますか?」という質問です。

菅原:まずは、インフラ系です。5G、6Gステーション、車、データセンター、医療機器、画像処理、高指向性のカメラからで、これらは業務用です。

個人に入るのは、それらをすべて経た後に1個10円など安くなる頃だと思います。最初の価格目標として、チップは3,000円から5,000円くらいですが、量産効果により何百円、何十円になる時が来れば、個人にも身近になる時代が訪れるということです。

坂本:今仮に3,000円のものを入れたとしても、個人としてはハイスペックすぎるのですね。

菅原:おっしゃるとおりです。

坂本:3,000円から5,000円とその何倍かを乗せれば製品に組み込めると思うのですが、まだついていけていないイメージです。

菅原:HDMI2.0にも光は入らず電気になりましたので、次の世代以降だと思います。まだその時代が追いついてきてはいません。ただし、情報爆発は確実に起こっているため、いつかそのような時代は来ると思います。

数年前でもスマホで画像や動画をやり取りできるとは誰も思っていませんでした。そのようなことはこれからも起こると思います。

質疑応答:マルチカラーレーザ光源について

坂本:「マルチカラーレーザ光源について5年後とのことですが、いつからの5年後になりますか?」という質問です。

菅原:今は、眼底撮影用のSLOというレーザを作っているところに対して使えるかを試験しています。医療機器のため、実際に組み込まれてから臨床試験を経ると3年から5年はかかります。

今は試験段階のため、確たることはお伝えできませんが、普通の医療機器のタイムラインで考えると、最短で2026年から2027年くらいには医療機器として登録される可能性はあると思います。

質疑応答:競合企業に対する技術優位性について

坂本:「沿革上、競合は富士通やNECになると思うのですが、技術レベルでの優位性はどのようになっていますか?」というご質問です。

菅原:我々は競合があまりないです。富士通とNECはNTTと合流することにより、デジタルコヒーレントという光通信のパイプを太くする技術を研究しています。光通信は、時間多重からWDMと呼ばれる波長多重になり、1秒間に1テラビットの情報を飛ばすのですが、そちらを10倍にする技術です。いかに大容量の通信を敷設するかというNTTの方針に沿ったかたちで、NECと富士通は参加しています。

我々はその先の、大容量の通信を敷設した後の、最後のコンピュータチップのすぐそばに置く技術を先んじて開発していますので、そのような意味ではビジネス的にもあまりコンペティションするところはないと思っています。

坂本:御社は独自のところに進んでいるというイメージですか?

菅原:手前味噌ですが、我々の量子ドットレーザもすごい技術です。しかし、アイオーコアのシリコンフォトニクスはさらにすごく、NECが40年、経産省が300億円のバックアップをしたものをスピンオフした会社がアイオーコアです。そこには日本の光の最終技術が詰まっています。我々だけがそのような会社と一緒に行えていることを、大変うれしく思っています。

坂本:非常によくわかりました。ありがとうございます。