自己紹介

安原武志氏(以下、安原):代表取締役社長の安原でございます。よろしくお願いいたします。会社のご説明の前に、まず自己紹介したいと思います。

私は兵庫県西宮市で生まれ、神戸市で育ち、大阪の大学を卒業後、30数年間東京で生活してきています。大学は理系でしたが、仕事は営業畑です。マーケティングに従事した時期も少しありましたが、今までほぼ営業一筋でした。

趣味はゴルフで、お客さまとのプレーやラウンドもありますが、プライベートでのラウンドも含めたら年間60ラウンドから70ラウンドくらいたしなんでいます。簡単ですが、自己紹介は以上です。

目次

安原:本日は、はじめに当社の紹介を行い、中期的な経営方針のご説明、株主還元についてお伝えします。そのあと直近での業績ハイライトならびに当期の業績見通しについてお話しします。

会社概要

安原:当社は1982年設立、1985年創業と、IT企業の中では比較的歴史のある企業です。東証スタンダード市場に上場しており、東京駅の近くに本社を構えています。鹿児島には、子会社である鹿児島データ・アプリケーションがあります。従業員数は連結で約130名です。

昨年度の売上は約23億円で、事業内容としては、データ・アプリケーションの名のとおり、データに関する事業を展開しています。

具体的には、企業間・企業内におけるデータをつなげるハブのような製品やサービスを提供することを生業とし、ビジネス・パートナーを経由してその製品やサービスを提供する、いわゆる間接販売の形態をとっています。ビジネス・パートナーについては、大手のAIベンダー、SIerをはじめとして55社と販売契約を締結しています。

適用イメージ

安原:当社製品の適用例をご紹介します。EDI、すなわち企業間での適用例として、みなさまの身近なところでスーパーマーケットを取り上げます。スーパーマーケットに商品が並ぶまで、生産者が商品の原料を生産し、メーカーがその原料を用いて商品を作り、その商品を管理する卸業者に納品し、スーパーマーケットがその卸業者から商品を仕入れる、という一般的な流れがあるかと思います。

この生産者、メーカー、卸業者、スーパーマーケット、それぞれの間で発生する「ものの流れ」と連動し、「データの流れ」として受注、発注、出荷、納品・請求、支払いなどの処理が発生しています。この「データの流れ」を安全かつ正確に行えるように支援しているのが当社のソフトウェアです。

さらに、当社のソフトウェアは企業内におけるシステム間でのデータ連携の支援もできます。また、企業間の取引は受発注だけではありません。例えば、電力の発電計画をやりとりするなど、社会インフラに重要な場面でも利用されています。そのほかでは、企業と金融機関の間で行われるお金のデータのやりとりや、企業と物流会社間の配送データのやりとりにも利用されています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):仕組みは理解できたのですが、御社のシステムはスライドの図の中のどこで使われているのでしょうか?

安原:一番下の図「データの流れ」のところにコンピューターの絵があり、そこに「ACMS Apex」と書かれています。これは当社の主力製品です。

このソフトウェアパッケージをそれぞれの企業に入れていただいて、それぞれが通信することでこの流れが成り立っているのです。ここに描かれているすべてのスーパーマーケット、卸業者、メーカー、生産者の方々にご利用いただいて、このような流れができています。

坂本:この製品に蓄積されたデータを仕事に活用するかたちですか?

安原:そのとおりです。補足すると、スライドでは我々の製品だけを並べていますが、他社にもEDIのベンダーは存在します。「ACMS Apex」は他社製品とも互換性があり、通信が可能になっています。

増井麻里子氏(以下、増井):どのような回線を使っていますか?

安原:今は主にインターネットですが、一般の電話回線や、INS回線などの企業が引いている専用線で通信しています。

データ・アプリケーションとは?

安原:企業内外のあらゆるデータのハブとなり、データを届けるお手伝いをしているのが当社ということです。データの流れは目に見えませんが、裏で当たり前のようにやりとりされており、少しでも滞るとみなさまの生活に支障をきたす可能性があり、社会基盤を支える大切なものです。

このように、当社が24時間365日、データを安全かつ正確につなぎ続けることで、みなさまの便利な生活を陰で支えています。

EDI(Electronic Data Interchange=電子データ交換)のメリット

安原:企業間のデータ連携をシステム化するメリットについて考えてみましょう。企業間の取引においては、見積もり、注文、出荷、請求、支払いなど各種取引情報のやりとりが、日々大量に発生しています。この伝票処理を紙や電話、FAXなどで行うと、膨大な手間やコストがかかり、ミスも発生しやすく、双方にとって大きな負担になります。

企業間で電話回線やインターネットなどで接続し、お互いの取引情報のやりとりを自動化した仕組みがEDIと呼ばれるものです。EDIは、企業間システムにおける大量の受発注取引を可能にし、作業効率化、脱属人化、経費削減、正確性向上などさまざまな効果を生み出しています。

強み 1

安原:当社はこのEDIと呼ばれる領域において、顧客のニーズに対応できる高い技術力を、メンテナンスまで含めた1つのソフトウェアで提供することを強みとし、現在マーケットリーダーとなっています。

製品概要

安原:そのようなデータのやりとりを支える当社の製品群をご紹介します。データをつなぐという価値を提供するソフトウェアを幅広くラインナップしており、その中でも特に拡販に注力し戦略製品として位置づけている製品をピックアップしています。

当社を代表するACMSシリーズの最上位製品である「ACMS Apex」は、セキュアかつ可用性の高いデータ連携の実現をお客さまに提供するソフトウェアです。

データ連携に際し、統合や変換といったデータの加工を必要とすることがあり、そのデータの加工、変換を実現するソフトウェアとして「RACCOON」という製品をラインナップしています。「ACMS Apex」と「RACCOON」の組み合わせにより、数多くのお客さまにデータをつなぐという価値を提供できます。

EDIの分野においては、特にWebを用いたWeb-EDIが広がりを見せています。そのWeb-EDIシステムの構築を支援する「ACMS WebFramer」や、企業間の取引で未だに数多く存在している、FAX等を中心とした紙文書などのアナログなやりとりをデジタル化し、連携するための「OCRtran」などがあります。

強み 2(ACMS Apex・ RACCOON製品コンセプト)

安原:当社のソフトウェアの最大の強みは、「ACMS Apex」プラス「RACCOON」というワンプラットフォームによって、あらゆるデータをシームレスにつなげられることです。それぞれのツールが存在すると、コストや運用の手間がかかりますが、ワンプラットフォームでつなぐことによりそれらが低減されます。

ワンプラットフォームによるシームレスなデータ連携の実現は、当社だけの価値だと自負しており、数多くのお客さまにご支持いただいています。

ビジネスモデル

安原:ビジネスモデルや提供方法について簡単にお話しします。当社のソフトウェアの提供方法として、売り切り型であるパッケージと、月額で利用料金をいただくサブスクリプションの2パターンがあります。パッケージでのご提供の場合、そのソフトウェアに対するサポートサービスとしてメンテナンスを行います。

サブスクリプションモデルでは、サポートサービスも月額利用料金に含まれています。さらに、パッケージに付随するインストール作業やトレーニング等のサービスもあります。当社では、サブスクリプションならびにメンテナンスという、月額で売上計上するものをリカーリングと総称しており、これが当社の安定基盤となっています。

もう1つ、当社のビジネスモデルの特徴として、ビジネスパートナーによる間接販売という点があります。当社のソフトウェアはお客さまの大規模なシステムの一部となるため、当社の製品やお客さまのシステム構築にも熟知した強力なパートナーの力を借りることにより、業種・業態を問わず、幅広いお客さまに利用されています。

坂本:売り切り型のパッケージと月額で利用料金が発生するサブスクリプションの体系があるとうかがいました。規模によって異なると思いますが、価格はどの程度でしょうか? ざっくりとしたイメージで構いませんので教えてください。

安原:売り切り型のものでクライアント型と言われている、比較的小規模なものでは10万円前後のパッケージがありますが、同じものでも大規模に利用いただくものでは数千万円と、かなり幅があります。サブスクリプションに関しては月額でご利用いただくということで、月額1万円を切るようなところから、数百万円をいただいているかたちです。

坂本:金額に幅がありますが、ユーザーによって異なるのですか? データ量に合わせて課金されるかたちでしょうか。

安原:おっしゃるとおり、データをどのくらい扱うかによって金額は変わります。

導入実績

安原:スライドをご覧のとおり、さまざまな業種・業界で当社のソフトウェアをご利用いただいています。当社のWebサイトでも導入事例としてご紹介していますので、のちほどご覧ください。

売上実績(業種別比率)

安原:昨年度の売上実績を業種別の比率で表したものです。情報・通信をはじめ、金融、電気・電子、石油・化学、商社、食品、アパレル、電気機器、小売、公共と幅広くご利用いただいています。その数はサーバー製品で2,600社、13,500サイトを超え、現時点でも社会インフラに大きく寄与していると自負しています。また、クライアント製品の出荷本数は累計で数万本あるかと思います。

1点、補足します。「情報・通信」の業種が突出しているのは、当社の製品を利用し、エンドユーザーにサービスとして提供している、いわゆるサービス事業者が「情報・通信」の業種に分類されているためです。

大手企業の情報子会社が当社の製品を導入し、それを親会社が利用している形態でも、同様に「情報・通信」の業種に分類されています。ですので、このような比率となっています。

増井:「情報・通信」の他に、「電気・電子」の業種が多いことには、どのような理由があるのでしょうか?

安原:最近も少しニュースになっていると思いますが、数年前から「新電力」と言われる、電力系の会社が増えてきていることが関係しています。それらの会社では、我々の「ACMS」という製品を標準として採用しているところが比較的多くあります。

そのため、電力業界では一気に新しい会社が増えることが考えられるのではないかと思っています。

沿革

安原:当社の沿革をご紹介します。先ほどご紹介したように、当社の製品は幅広い業種・業界で利用されています。また、現在ではEDIソフトウェアの市場でマーケットリーダーとしての地位を確立していますが、創業当初はSIerとしてスタートしています。

我々はSIerとしてさまざまなシステムに関わる中で、現在の事業領域における課題に直面し、自社でソフトウェアを開発し提供するソフトウェアベンダーへの転換を図ってきました。

先行するプレーヤーもいる中、非常に苦労してきたということも先代の経営陣より聞いています。そのような中で、お客さまのご要望に真摯に向き合い、コツコツと実績を積み重ねることで信頼を勝ち取り、今の地位を確立することができたのだと思います。

このように地道に努力を積み重ねて、信念を貫くという当社のマインドを大切にしながら、EDIをコアコンピタンスとした新たな市場にも積極的に参入していきます。

坂本:創業当初はSIerとして活動されていたということですが、どのような取引先があったのでしょうか? どのような仕事に取り組まれていたのかについても、教えていただけたらと思います。

安原:私が聞いている限りは、取引先のほとんどが大手の会社です。また、今でも付き合いがある大手のお客さまや大手SIerの、縁の下の力持ちとして取り組んでいたビジネスもあると聞いています。

当初はノンストップコンピューティングという仕事に取り組んでおり、今でもまだ一部あります。これは、いわゆる「何があっても止まらない」というもので、可用性を高めるハードウェアです。そのようなものと、それの上で動くSIという、システムインテグレーションを生業として行ってきた会社になります。

まとめ:当社の強み

安原:当社の特性と強みについて、あらためて簡単にまとめたいと思います。当社はデータ連携をワンパッケージで行うことができるACMSシリーズを筆頭に、実績を積み重ね、EDIソフトウェア市場でマーケットリーダーの地位を確立しています。

そこには、長年の付き合いにより強固な信頼関係を築いた強力なビジネスパートナーの存在があり、今後も当社にとって非常に心強い存在となります。

また、サブスクリプションやメンテナンスといった月額で計上されるリカーリングによる売上が、売上高全体の約7割を占めており、安定的に成長を図れるビジネスモデルを形成しています。

IT業界は変化が目まぐるしい業界ですが、当社は従業員のおよそ半数が技術者であり、技術の変化に対しても迅速に対応できる研究開発型の企業になっています。このような特性と強みを活かし、企業の成長を図っていきたいと考えています。

当社を取り巻く環境

安原:当社の経営方針について、「どのように企業成長を図っていくか」という点をお話しします。まず、当社を取り巻く環境についてです。みなさまも「2025年の崖」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これを簡単にご説明します。

2025年には、約43万人ものIT人材の不足が発生する見込みです。しかし一方で、基幹系システム全体の約60%が21年以上も稼働している状態となっており、その維持管理費はIT予算の90パーセント以上と増加の一途をたどっています。この傾向が続くことによって、老朽化や複雑化した基幹システムのトラブルによるシステムダウンやデータの損失が発生し、経済損失が生まれることが想定されているというものです。

経済産業省の発表では、この経済損失は2025年で最大12兆円になると予測されており、これをIT業界では「2025年の崖」と呼んでいます。この経済損失を最小限に抑えるために、IT環境における大きな変革が必要となっています。

増井:ご説明いただいた「2025年の崖」は、御社のビジネスにおいて、どのようなチャンスになるのでしょうか?

安原:この「2025年の崖」に対して、数多くのシステムを刷新していかなければならないと考えています。また、刷新していくのは1つのシステムではなく、後ほどチャートをご覧いただきますが、いろいろなシステムをどんどん作っていかなければなりません。

我々はそのような「システム間をつなぐ」というところに、大きなチャンスがあると考えています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

安原:この「2025年の崖」への対策の1つとして、DXの推進が重要だと考えられています。DXとは、いわゆるデジタルトランスフォーメーションのことです。これは、あらゆるものを単純にデジタル化することではなく、デジタル化することによってビジネスや生活を最適化し、ビジネスモデルや環境風土を変革していくことを指します。

このDXによって業務効率化や環境の最適化を実現することで、「2025年の崖」による影響を抑えられると一般的には考えられています。

DXの構造

安原:DXを実現するためのプロセスとして、まずはデジタル化を促進する動きがあります。政府が法規制を緩和し、それに伴い電子帳簿保存法、インボイス制度などが整備されました。それらを背景に、企業では現在のシステムを見直さなければならないという機運が高まっています。

さらに、デジタル化だけではDX化につながりません。個別の業務プロセスのデジタル化を一緒に行っていくことが大切で、その部分のお手伝いが「データをつなぐこと」になります。すなわち、データ連携が当社の支援できる部分になると考えています。

データ連携市場について

安原:このような背景を基に、新市場であるデータ連携市場についてお話しします。当社では先ほどお話ししたEDIに加えて、企業内にある数多くのシステムを連携させ、データやアプリケーションを統合します。

また、企業内外のシステム間におけるデータの連携・変換・加工・活用といった、データを取り巻くさまざまな領域・分野を、当社ではデータ連携市場と定義しています。

経営方針(成長イメージ)

安原:当社はEDIのマーケットリーダーという地位を確立しているとお伝えしました。今後は、そのEDIのマーケットリーダーの地位は維持しつつ、これをコアコンピタンスとしてその周辺市場、つまりデータ連携市場において、さらなる企業成長を図っていきたいと考えています。

坂本:データ・ビジネス・プラットフォームの成長についてはお話をもとにイメージすることができました。一般的に、現在はデータをどのように連携し、利用しながら、システムを連結しているのでしょうか? 視聴者の方が認知しやすいように、より簡単にご説明いただければと思います。

安原:先ほどは、当社と企業間の取引について、スーパーマーケットを例に出してご説明しました。この「企業と企業をつなぐ」というところに関しては、当社はマーケットでシェアを一番多く獲得しています。

それぞれの企業の中にもいろいろなシステムが乱立しているため、そのあたりもワンパッケージでシームレスにつなげるところが、我々の一番の強みだと思ってます。

先ほどご覧いただいた20ページの図では、取引先の企業を左側に書いています。中央には「デジタル・ビジネス・プラットフォーム」と記載していますが、その上と下に例として、SaaSや経費精算の仕組み、ERPなど、企業が自社内に導入せず、クラウドで利用しているものを載せています。

また、下側には「オンプレミス」と記載していますが、自社の中で構築した仕組みや分析に用いるシステムが各会社にはいろいろと用意されています。例えば、販売を行っている会社などでは、販売のマーケティングデータを分析するような仕組みがあると思います。

つまり、データをいろいろなところから集め、分析する必要があるということです。そのため、当社では企業と企業をつなぐだけではなく、そのつないだ企業の中のシステムをつなぐところに取り組んでいる最中です。

中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)

安原:当社では昨年度より、3ヶ年にわたる中期経営計画を策定しています。EDI事業専業メーカーからの脱却を図るべく「変革への挑戦」という中期ビジョンを掲げ、その実現のために成長戦略として4つの基本方針を設定しています。

1つ目は、企業成長の方向性を広げるための新規市場の開拓です。2つ目は、収益安定基盤を強化するための既存市場の深耕を掲げています。3つ目は収益安定性の向上に向けたリカーリングビジネスの推進です。4つ目に企業としての持続的成長の実現のため、組織体制の強化を掲げています。

中期経営計画の数値目標(連結)

安原:この4つの基本方針に基づいた活動により、中期経営計画の最終年度である来期において、総売上高は25億円、営業利益は3.5億円、売上高の中でもサブスクリプションの売上高については、2021年3月期の実績比300パーセントを目標数値としています。

中期経営計画の状況

安原:中期経営計画達成に向けたアクションプランは、スライドに記載のとおり、キーワードに基づいて設定しています。昨年度末までの時点で順調に進行しているものや、すでに達成済みのものについては青く表記しています。

ご覧のとおり、おおむね順調に推移している状況ですが、新規市場の開拓や既存市場の深耕、組織体制の強化においては課題も残っているため、最終年度に向けてさらに努力していこうと思っています。

増井:新規市場の開拓、既存市場の深耕、組織体制の強化などの課題について、具体的にはどのような取り組みを実施される予定ですか?

安原:新規市場の開拓については、次の項目でお話ししたいと思います。

サブスクリプション売上について

安原:サブスクリプションの売上について簡単にご説明します。当社は収益の最大化と安定的な成長の両面を達成するため、戦略製品を中心としてサブスクリプションモデルでの製品提供を強化しています。

中期経営計画においても、先ほどお伝えしたように、サブスクリプションモデルの売上を2021年3月期の実績値の3倍以上を目指すことを数値目標に掲げています。今期の上期の実績についても順調に伸長しており、通期の計画値に対しても50パーセントを超えているため、計画達成も射程圏内に入っていると考えています。

サブスクリプションモデルによる売上に占める戦略製品の比率も約50パーセントとなっており、こちらも順調であると判断しています。

坂本:サブスクリプションの売上比率を上げていくということですが、今まではパッケージで売った場合、初期の導入費用とメンテナンス費用がけっこう大きな売上になっていたと思います。

そのように考えると、23ページでお話しされていた売上の達成が困難になってしまう可能性があるのではないかと思いました。その点について、教えていただけますか?

安原:おっしゃるとおり、そのあたりのバランスは非常に難しいところがあります。ですので、中計の初年度からパッケージの売り切り型とサブスクリプション型の売上がどのぐらい必要になるかという目標数値を設定していました。

基本的には、この案件に関しては売り切り型で売ったほうがよいという判断を、営業サイドで行っています。将来的には、すべてサブスクリプション型に切り替えたほうが本来はよいのだと思いますが、一気に切り替えると、売上も一気にダウンしてしまうため、バランスを見ながら年初の計画を立てています。

坂本:すべてをサブスクリプションにすると、初期の利益がとれなくなってしまうのですね。

安原:おっしゃるとおりです。

2023年3月期重点施策

安原:このような状況ですので、中期経営計画の2年目にあたる今年度は、スライドに記載している4つのテーマを重点施策として取り組んでいます。先ほどいただいたご質問について、ここで詳しくご説明したいと思います。

1つ目は新規市場開拓におけるDX実現への挑戦です。昨年度に発表したテクノスジャパン社との協業加速や、研究開発に注力した部門として昨年より設置したNP(ニュープロダクト)開発室による新規事業の創出に取り組んでいきます。

2つ目は、既存市場の深耕における収益の最大化です。より強固なパートナー関係構築を見据えたパートナー制度の見直しや、既存製品における価格改定とともにWeb-EDI向けソフトウェアである「ACMS WebFramer」の販売強化のための開発投資を実施します。

3つ目は、組織体制の強化におけるコストの最適化です。持続的成長のためにはまだまだ不足していると感じる人員の増強や、既存メンバーのスキル向上の推進はもちろんのこと、アフターコロナによる活動再開を強力にバックアップするための投資を実施したいと考えています。

4つ目は、組織体制の強化における企業力強化の取り組みです。コストの最適化における活動と連動しますが、既存メンバーのスキル向上推進のための教育訓練体制の強化、そして当社の力だけではたどり着けない事業領域にもタッチできるように第2、第3のテクノスジャパン社とも呼べるような、新たな協業先の模索にもスピード感をもって注力していきたいと思っています。

ここまでは、事業の方向性についてお話ししました。

配当に対する基本方針

安原:当社の株主還元に対する基本方針についてお話しします。配当の実績については、スライドのグラフをご覧ください。10年前からの推移を記載していますが、少しずつ配当額が増えています。2019年においては、配当に対する基本方針を改めた結果、1株当たりの配当金が大きく増えています。

当社の配当に対する基本方針についてご説明します。当社は、長期的に継続した研究開発投資を必要とする事業特性を持っています。そのため、短期的な業績指標に基づくものではなく、財務体質の強化と長期的な企業価値の向上を踏まえたものでありたいと考えています。

その指標として、配当性向ではなく株主資本配当率、いわゆるDOEの3.5パーセントの水準を勘案して配当を行っていく方針です。

配当以外にも株主還元と呼ばれるものがいくつかあるのは承知していますが、さまざまな方向で検討した結果、現時点においては、当社では配当による還元を最優先事項としています。また、現時点での当期の配当は、昨年同様の1株当たり43円を予想しています。

坂本:配当の方針についてはよくわかりました。非常に高い自己資本比率を誇っていることから、「M&Aなどはないのですか?」という会場質問も来ています。そのあたりはいかがでしょうか?

安原:そこに関しては、積極的に今、模索しています。

業績ハイライト

安原:直近の業績ハイライトならびに当期通期での業績見通しについてご説明します。

当期第2四半期における業績のハイライトについては、サブスプリクション売上の伸長を主要因として、売上高は12億1,400万円、営業利益は2億5,500万円、経常利益は2億6,600万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は1億8,400万円と、すべての項目で前年同四半期を上回る結果となっています。

2023年3月期連結業績見通し

安原:第2四半期は前年同四半期比で増収増益という結果ですが、通期における業績見通しについては増収減益としています。売上高は、第1四半期で成果の出ているサブスクリプションにおける売上伸長を計画し、前期比2.1パーセントの増収を目指しています。

サブスクリプションの売上伸長計画から見ますと、全体では2パーセント強の伸びになっています。これは、超大型のメンテナンス契約が昨年度で満了した影響によるものです。従来、当社のメンテナンス契約は、製品の特性上95パーセントの契約継続率ですが、今回は異例のかたちになっています。

コスト面では、新型コロナウイルス感染拡大の影響が想定よりも長引いていることにより、前期に実施できなかった投資を計画しています。さらに、先ほどお話ししたNP開発室における新規事業の創出や、 Web-EDI製品への開発投資など、短期的ではなく中長期的な事業成長に向けた、いわば先行投資と呼ばれる投資を積極的に行っていくため、利益面については前期比で減益の計画となっています。

中期経営計画の最終年度である来年度の営業利益3億5,000万円の達成は死守しつつも、将来に向けた投資を積極的に行い、中長期的な企業成長を実現することで、株主のみなさまのご期待に応えたいと思っています。

Topics

安原:トピックをいくつかお伝えします。既存ビジネスの収益の最大化ということで、2024年1月のNTT東西による固定電話のIP網化によるINSネットのサービス終了、インボイス制度および電子帳簿保存法を背景に、Web-EDIシステム基盤「ACMS WebFramer」最新版を発売しました。

また、11月21日の日本経済新聞に、売上高300億円以下の中堅上場企業「NEXT Company」を対象とした、3年平均の売上高に占める研究開発費比率の6位として掲載されました。これからも引き続き新事業を育み、競争力を高めていきます。

さらに、子会社である鹿児島データ・アプリケーションを吸収合併することに決定しました。この合併により、これまで以上にスピーディーかつダイナミックな開発を推進していきます。

最後に、日本郵政が発行するグリーンボンドを購入しています。SDGsへの貢献に投資というかたちでも積極的に関与したいと考え、今回実施したものです。

VISION

安原:当社はこれからもデータをつなぐだけでなく、企業が必要なかたちにデータを加工・活用することで、企業のみならず人々や社会に還元していきます。その結果、私たちの製品やサービスがあらゆるデータの基盤となり、そこに関わるすべての人々や社会がデータでつながることで「データと一緒にワクワクする未来」を描けるように企業活動を続けていきます。

ぜひ、みなさまとも「データと一緒にワクワクする未来」へ向けて、ともに歩んでいけることを願っています。私からのご説明は以上です。本日は貴重なお時間をちょうだいしまして、誠にありがとうございました。

質疑応答:関連会社が鹿児島にある理由について

坂本:鹿児島データ・アプリケーションについて、鹿児島に拠点がある理由を教えてください。

安原:もともとは、ニアショアというかたちです。上場前の時期に、海外も含めて開発の下請けの拠点を探していました。検討した結果、九州地区の鹿児島県でよい人材を見つけたため、そこでまずスタートしたという経緯です。

坂本:最近流行りのニアショアですね。

質疑応答:大株主とのビジネスのつながりについて

坂本:「光通信が株主にいらっしゃるのですが、ビジネスにつながりがあるのでしょうか?」というご質問です。他社を例に取ると「意外とつながりはない」というお話もありますが、けっこうな持ち株数の中で「ライバルサービスを立ち上げて困ってます」というお話もたまに耳にします。御社はいかがでしょうか?

安原:つながりはまったくありません。大株主さまとして対話しており、純投資とうかがっています。

質疑応答:景気変動の影響について

坂本:「流通製造業は景気の変動を大きく受けそうなイメージですが、実際のところ、現在はいかがでしょうか?」という景気変動についてのご質問です。

安原:我々の業績は基本的に、受発注や電力の発電計画のやりとりなど、止まってはいけない仕組みのところに採用されています。コロナ禍も含め、影響を受けるようなことは今のところありません。

質疑応答:従業員の内訳について

増井:「単体で100名ほどの従業員がいらっしゃいますが、営業・システム開発などの人員の内訳を教えてください」というご質問です。

安原:先ほどもお話ししたとおり、約半数が技術者です。1割が管理系で、営業とマーケティング、および営業を支援するエンジニアで4割ほどです。1対4対5くらいで配分されていると思います。

質疑応答:サブスクリプションのニーズの高まりについて

坂本:「パッケージからサブスクリプションへの移行は他社でもよく見かけるのですが、EDIにおいてもサブスクリプションのニーズが高まっているというのは、業界全体の総意、あるいはニーズの変化なのでしょうか?」というご質問です。

安原:ニーズの変化ももちろんありますし、我々の戦略としても、サブスクリプションを企画して、販売活動しています。EDIに関してはオンプレミスということで、お客さま自身がシステムを構築して自社内でシステムを運用される形態もありますし、サービス事業者を経由して月額で利用するモデルもあります。

例えば、月額でサービスを利用しているお客さまが「やはり自社で行おう」となった時に、毎月のコストが一気に増えないということでも重宝されているのではないかと考えています。

質疑応答:中期経営計画における営業利益の数値目標について

坂本:「サブスクリプション比率が伸びていくのであれば粗利率も高まり、今期の予想を超えそうだと思っています。しかし、中期経営計画を見ると、営業利益は総売上高の14パーセントにとどまっており、販管費を大きく見積もっているのではとも思います。今後、粗利率は伸びる想定でしょうか?」というご質問です。

「中期経営計画の営業利益はもっと伸びてもよいのでは」というご質問かもしれません。そこは計画的に移さないと、利益計画もずれてくるのではないかというお話だったと思います。現状のスピード感も含めていかがでしょうか?

安原:以前のように、サブスクリプションではなくすべて売り切り型で販売すると、30億円を超える規模にはなると思います。そうしますと、営業利益も5億円を大きく超えるかたちにはできたと思うのですが、やはりいろいろなところで販管費が必要となってくるため、営業利益は最終年度で3億5,000万円ということにしています。

質疑応答:固定電話のIP網化によるINSネット廃止について

増井:2024年に電話回線がIP網化ということで、旧ISDNが終了します。御社の製品では今、Webで新しいバージョンが出ているとのことですが、こちらの対応は問題ないのでしょうか?

安原:むしろ、そのあたりを見越してWeb-EDIへの投資を強化しています。「ACMS WebFramer」もしくは「ACMS Apex」を使っていただければ、固定電話のIP網化によるINSネット廃止に関する問題解決になると考えています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:自己資本比率78%以上、ROEも8.5%以上ですばらしいのですが、割安性についての魅力がないため、投資する側としては魅力が高まる施策を考えていただきたいのですが、いかがでしょうか?

回答:割安の判断軸はさまざまであり、一概にお話しできるものではないと考えています。株主のみなさまに魅力的に映るように企業価値を最大化すべく、認知度向上、業績拡大、株価の醸成など、日々精進していきます。加えて、株主還元も重要な要素の1つと考えており、検討していく所存です。

<質問2>

質問:現株価水準で、配当3%は難しいでしょうか?

回答:貴重なご意見を賜りありがとうございます。なお、当社は、長期的に継続した研究開発投資を必要とする事業特性を持っています。

そのため、短期的な業績指標に基づくのではなく、財務体質の強化と長期的な企業価値の向上を踏まえたものでありたいと考えており、その指標として、配当性向ではなく株主資本配当率、いわゆるDOEの3.5%の水準を勘案して、配当を行っていく方針です。

<質問3>

質問:大株主として橋本慶太さんがおられますが、未だ意向を反映するかたちが大きいのでしょうか?

回答:ほかの株主さまと同様、一株主さまとして対話を実施しています。