1 価値創造型企業 ビーウィズ
飯島健二氏(以下、飯島):みなさま、本日はお時間をいただき誠にありがとうございます。ビーウィズ株式会社の取締役副社長執行役員、飯島でございます。よろしくお願いします。本日は、当社の概要や事業の強み、成長戦略についてご説明します。
Bewithグループ
飯島:まず、当社グループについて簡単にご説明します。当社は2000年に創業しており、創業20年を超える会社です。事業理念に「洞察を通じた社会への貢献」と掲げ、事業を推進しています。
Bewith at a glance
飯島:定量的なサマリーです。こちらはあらためて、事業の詳細とともにご説明します。
これまでの歩み (上場日:2022年3月2日)
飯島:当社の沿革について、事業の内容とともにご説明します。2000年の創業当時は、ソフトバンクグループと三菱商事の合弁会社として立ち上がりました。その後、2012年にパソナグループの資本が入り、2015年からはパソナグループの100パーセント子会社になりました。
スライド右上の赤枠で示しているとおり、2022年3月2日に東証一部に上場しました。現在はプライム市場に上場しています。東証一部市場で直接上場最後の銘柄と覚えていただければ幸いです。
スライドに記載している図の縦軸は、売上高推移を表しています。2000年からスタートして、数年間は100億円の水準を維持していましたが、2016年にアイブリットを子会社化し、クラウドPBXを展開し始めたことにより右肩上がりに成長しています。
Bewithのビジネスモデル
飯島:当社のビジネスモデルについてご説明します。スライド中央に記載しているコンタクトセンター・BPO事業が、当社の1つ目の事業です。コンタクトセンターはコールセンター、BPOは事務処理の代行と捉えていただければと思います。
コールセンターに必要なものは、大きく3つあります。1つ目は電話を受けるスタッフです。2つ目はコールセンターに必要なシステムです。例えば、電話をかけた時に「引越しに関わるお問い合わせは1番を押してください」「ご本人さま確認は3番を押してください」などと自動音声で振り分け、オペレーターにつなぐ電話システム等をITと表しています。3つ目は運営場所等の設備です。
ITについてはこの後詳しくご説明しますが、1990年代よりコールセンター業界では海外製品の電話システムを使うのが一般的であり、デファクトスタンダードと言ってもよい状況にありました。
当社も、当時は海外製の電話システムを使いコールセンター運営をしていましたが、このシステムを自分たちで開発して活用し始めたというのが当社の最大の特徴です。その内製システムは「Omnia LINK(オムニアリンク)」と呼んでいます。
このシステムを内製で使い始めたところ、外部でも販売できるのではないか、ということで、外販も進めています。こちらが2つ目の事業です。この事業はクラウド型のシステム販売、いわゆるSaaSビジネスです。コールセンター事業とクラウド事業の2つを行っている会社とご理解ください。
これまでの成長実績
飯島:当社の成長実績です。コンタクトセンター・BPO事業とクラウド事業の「Omnia LINK」については、2016年以降に積極的に展開を進めていく中で大きく成長してきました。
スライド左側のグラフは売上高の推移で、直近6年間のCAGRは17.3パーセントとなっています。右側のグラフは営業利益及び営業利益率の推移で、こちらも右肩上がりに伸びています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):2021年5月期から、特に営業利益が上がっています。こちらの理由を教えていただけますか?
飯島:主に2つの理由があります。1つ目に「Omnia LINK」を積極的に外販し始めたこと、2つ目に上場して市場の認知が上がってきたため、引き合いが旺盛になってきたことが挙げられます。
坂本:コロナ禍も追い風になっていますか?
飯島:おっしゃるとおり、新型コロナウイルス感染拡大に伴って仕事も増えました。
坂本:そのあたりのビジネスモデルは、この後詳しく教えていただきたいと思います。
2 DXの成功でつかんできた高い成長性
飯島:当社の成長要因である社内DXについてご説明します。
PBX(構内交換機 / Private Branch eXchange)とは
飯島:「Omnia LINK」は一般的にPBXと呼ばれるコンタクトセンターの業務システムなのですが、このPBXについて簡単にご紹介します。PBXには2種類あり、1つはオンプレミス型、もう1つはクラウド型のものがあります。コンタクトセンター業界では、オンプレミス型PBXが多く利用されています。
当社が開発した「Omnia LINK」はクラウド型PBXです。コールセンター業界でも、近年、オンプレミス型からクラウド型への移行の流れが起きており、非常に普及が進んできています。
スライドの右下にも記載しているとおり、拠点ごとに設備を置くオンプレミス型PBXとは違い、クラウド型PBXのほうは在宅でも業務を行うことができます。クラウド型PBXはコロナ禍の影響もあって広く普及してきており、こちらを自社で開発し、保有している点が当社の特徴と言えます。
坂本:従来のコールセンターのように、1つの部屋にたくさんの人が集まって運営している場合は、上司などが後ろに控えており、対応が難しい際や困ったときに手を挙げて電話を交代しています。クラウド型PBXを使った在宅業務の場合はそれができないと思いますが、どのように対応するのでしょうか?
飯島:「Omnia LINK」には、お客さまとどのような話をしているかがわかるように、音声をテキスト化する仕組みがあります。例えば、私が自宅で業務をしていても、どのようなお客さまと会話をしているのかが遠隔で確認できるのです。
坂本:何かあったらボタンを押せば、離れている上司にも伝わるということですね。反対に、上司からアドバイスを送ることもできますか?
飯島:そのとおりです。遠隔でサポートすることも可能です。
坂本:非常にスムーズですね。
飯島:これまでは、上司が一人ひとりの電話を聞かなくてはいけないのが一般的でした。「Omnia LINK」では音声がテキスト化されるため、上司は聖徳太子のごとく、画面上で一度に10人くらいの様子を確認できます。
また、ネガティブワードやポジティブワードはテキスト上で赤色や青色で示され、電話対応している方自身もそれを確認できます。そのようにサポートできる仕組みを開発したのが、当社の強みです。
坂本:軌道修正もできますね。私もいろいろなイベントで話しますし、「YouTube」を見て自分の話し方を振り返ることがあるので、よくわかります。経験がそんなにない方でも、想定より早くスキルアップできそうですね。
飯島:おっしゃるとおり、初期にかかる研修時間も短縮できるほか、応対品質や話し方も向上する傾向があります。
坂本:御社のクラウド型PBXは、いつ頃から普及し始めましたか?
飯島:新型コロナウイルスが流行し始めた2020年の少し前からで、その辺りから段階的に増えていきました。先ほどお伝えしたとおり、当社は2016年と、早いタイミングからクラウド型PBXを開発し始めています。
坂本:導入費用はオンプレミス型PBXより、クラウド型PBXのほうが安いですか?
飯島:オンプレミス型は機材の購入にそれなりの投資が必要です。また、メーカーからの仕入れではなく、SIerによる導入が大半となり、中間マージンも発生しています。当社は自分たちで「Omnia LINK」をメーカーとして直接お客さまに導入しますので、特に導入のコストを安くできるところがポイントです。
社内におけるDXの成功
飯島:我々がなぜ「Omnia LINK」を開発したのかについて、簡単にご説明します。スライド左側に自社課題と記載しています。これまでは海外製のPBXを当社も使っていたわけですが、システムにかかる投資コスト削減とお客さまに向けてAIを含むいろいろな技術を使った価値提供をクイックに行いたいという考えがありました。それをかなえるためには、自社で開発するべき、という考えに至り、開発をスタートしました。
機能の詳細は、スライド右側に記載しています。1つ目にクラウド型のPBXであること、2つ目に自然言語処理を用いたリアルタイムテキスト化、3つ目は業務支援のための機能で、FAQレコメンドなどです。
定量的な効果として、生産性改善による人件費削減、内製化によるシステム面のコスト削減、在宅勤務推進によるファシリティ費用削減が挙げられます。
PoC(概念実証)による機能高度化
飯島:「Omnia LINK」の機能についてご説明します。この「Omnia LINK」は当社が運営しているコンタクトセンターで、スーパーバイザー(SV)と呼ばれる管理者1,500人が毎日のように利用しています。現場のリアルな声を集約し改善することで「かゆいところに手が届く」開発ができるところがポイントです。現場での実証を重ねることで、機能は徐々に高度化しています。
スライド右側の「機能階層」「総合ソリューション」をご覧ください。当社製品を使用していないような従来のコールセンターは、PBXという電話の受発信の機能のほかに、通話録音や音声認識・合成、付加価値機能など、別のメーカーのシステムを組み合わせるのが一般的です。
坂本:オプションを積み上げていくかたちだったのですね。
飯島:今もその状況は続いていると思います。スライド右端に赤字で記載しているとおり、当社ではそれらの機能をまとめて提供しており、1つで導入を完結できます。
坂本:それなら導入コストも圧縮できそうですし、1つの機能しか使っていなかった顧客が「Omnia LINK」を導入すると、大きな変革につながりそうです。
飯島:おっしゃるとおりです。こちらが強みだと思っています。
社内におけるDXの成果(1/2)
飯島:「Omnia LINK」はまずは社内のコスト削減を目的に自社で開発しましたが、その効果についてです。スライド左側の図は、当社の業務における2016年6月から2022年8月までのPBX種類とごとのライセンス数の推移です。
「Omnia LINK」は当初192IDでしたが、2022年8月は2,418IDまで伸びており、広く利用されてきています。これに伴い、従前利用していた外資系メーカーの製品を利用する割合を減らしています。
定量面については、スライド右側のグラフに示しています。灰色の棒の部分には営業利益の数値を、赤い丸枠には社内利用における「Omnia LINK」の占有率を記載しています。この占有率が増えていくことによって、営業利益も上がっています。
坂本:2022年5月期の社内利用における「Omnia LINK」の占有率は74パーセントで、残りの26パーセントはどのようなものですか?
飯島:以前から利用している外資系メーカーによる製品です。
坂本:そのまま置き換わっていない状況ですね。
飯島:おっしゃるとおり、まだ残っているものもあります。
社内におけるDXの成果(2/2)
飯島:ここまでで、「Omnia LINK」を内部利用することでのコスト削減と営業利益についてご説明しましたが、トップラインにも効いています。スライド左側に記載しているオペレーションブース数の推移をご覧ください。
「Omnia LINK」はクラウド型ですので、例えば、会社で使っているパソコンを家に持って帰れば、会社で行っていたコールセンター業務を家で同じように行うことができます。それを実現できたことにより、現在約1,300人が在宅勤務を行っています。
オペレーションブース数とは、いわゆる席数です。「Omnia LINK」を導入すると席数の急拡大が可能になり、クイックに拠点を立ち上げるとともに、スピード感を持ってお仕事することが可能になります。
スライド右側は、ブース1席当たりの月次売上高の推移です。2016年以降はスピード感を持った立ち上げが可能になったため、これまでのような機会損失を減らすとともに、緊急性が高い案件や高収益の案件を獲得できるようになったこともポイントです。
強みとしての「在宅コンタクトセンター」
飯島:福岡にある通販のコールセンターの事例をご紹介します。既存の人員による対応が難しいという状況から、完全在宅型の体制作りにチャレンジしたものです。お客さまのご了解をいただきながら施策を推進し、岩手県から鹿児島県まで日本全国のオペレーターが勤務するセンターを実現しました。
完全在宅コンタクトセンターにおいては、全国を対象としたオペレーターの採用が可能となります。我々としては、このソリューションは今後、介護中の方の仕事の両立や、地方の過疎化などの課題解決にもつながると考えているところです。
坂本:福岡県は通販サービスが非常に多い印象で、そのために人材の取り合いが起きているようです。さまざまな地域から在宅で協力してくれると、人材コストもかなり安くなりますし、テレワーク型というのはよい取り組みですね。
飯島:当社としても、積極的に在宅コンタクトセンターを広げたいと思っています。
競争優位性のある営業アプローチ
飯島:営業アプローチについてご説明します。当社は拠点を持ったコールセンターの展開、在宅コンタクトセンター、「Omnia LINK」の3つのサービスを持っており、それらの営業のアプローチも特徴的だと思っています。
スライド左側の図をご覧ください。特筆すべき部分として、「Omnia LINK」の営業ができるDX/ AIの展開と、業種・業界ごとに専門性を高めた営業体制・オペレーション体制を挙げています。
スライド右側には流通営業、情報通信、公益営業、金融営業と記載しており、「Omnia LINK営業」がピンク色の帯として示され、これらを包括しています。この営業体制が非常に効果を発揮していて、それぞれの業界に特化したアプローチを行うことで、専門性の高いオペレーションが実現できるとご評価いただいており、お客さまの信頼につながっています。
坂本:例えば、金融業界専門の営業担当がいて、関連業界の会社など同じセクターを回っているかたちでしょうか?
飯島:おっしゃるとおりです。
坂本:非常に珍しいですね。金融業界の営業なら公共法人や事業法人に絞ることもありますが、他にはあまり聞かないです。専門領域に特化した営業担当、いわゆる「話のわかる人」が赴くということですね。
飯島:そのとおりです。
坂本:この「Omnia LINK」の外販は、金融営業の人が金融セクターの営業を行うのですか? それとも、別に営業がいらっしゃるのですか?
飯島:それとは別に、システム担当の営業がいます。
坂本:システムを導入した後に調整が必要などとなった場合にも、適宜対応できるのですね。
飯島:今のご質問についてもう1つお答えしますと、営業だけではなく、運用側にも金融担当のオペレーション部隊がいます。金融業界を例にとると、損害保険に詳しい人間が営業のみならず運用の現場にもいるのは、非常に強いことだと思っています。
坂本:金融分野は金利やコンプライアンスなどのお話も出てきて複雑ですが、そのような中でも、顧客の困りごとがすぐにわかる体制なのですね。非常におもしろい仕組みです。
顧客エンゲージメントを支える仕組み(採用)
飯島:ここからは人材の確保、いわゆる採用面についてお話しします。労働人口が減少している時代の中で、きちんと人材を確保してお勤めしてもらうための、さまざまな取り組みを行っています。
1つ目は「入社のリードタイム短縮」で、完全ペーパーレス化により、オンラインで入社の手続きができます。2つ目は「スマホ面接」で、スマートフォンを利用して面接を行っています。3つ目は「リファラル採用と再雇用の強化」で、ご紹介いただいた方や一度お辞めになった方の雇用を行っています。
4つ目は「新たな採用手法の構築」としています。最大の特徴として、登録制度とロケーションフリー採用というものがあります。登録制度は、人材を登録しておいて、短期的なお仕事や繁閑の差がある通販サービスなどでスポット的にお仕事していただくものです。
ロケーションフリー採用は、完全在宅の採用を行っているものです。決して人材確保が楽な時代ではありませんが、このようなところでしっかりと対応を進めています。
顧客エンゲージメントを支える仕組み(教育)
飯島:人材の教育も、我々の強みの1つです。スライド左側に記載している「ミライ転換力」は、当社独自のメソッドを軸に、業種・業界を問わず、外部の企業向けにも教育研修を提供しているものです。
スライド右側には、我々が出版した書籍を掲載しています。一般的に、我々のようなアウトソーシングを活用したコールセンター運営会社は、自分たちのナレッジを外には出しませんが、当社は20年間の実績を書籍にまとめて販売しています。
坂本:珍しいですね。これはなぜですか?
飯島:みなさまもご存知かもしれませんが、新型コロナウイルスワクチンに関するコールセンターなどで、コールセンター自体の認知が広がっています。
当社実績やノウハウをお伝えする取り組みを人材教育につなげ、生産性や効率を上げる目的もありますが、高齢化が進む日本社会の中でよりよいサービスを目指すとともに、自発的に拡大していきたいという想いで出版しているものです。
顧客エンゲージメントを支える仕組み(AI・DX)
飯島:品質管理についてお話しします。先ほど、在宅コールセンターについてご説明したとおり、これまでは人が音声を1件ずつ聴くモニタリングを行っていましたが、人でのモニタリングに加えて、「Omnia LINK」のシステムでは音声のテキスト化を活用した自動での応対評価の仕組みを作っています。
例えば、「1分間に何語話すか」「話すスピードが速いか遅いか」「誤った日本語を使っていないか」などを自動で判定できるシステムを自社で開発しています。このシステムによって高品質のサービスがご提供できればと思っています。
坂本:生産性に関わる重要なポイントですね。
開拓余地の大きいターゲット市場
飯島:ターゲット市場についてお話しします。我々は全事業におけるターゲット市場を2兆6,000億円程度と見ており、コールセンター・BPO市場(アウトソーサー運営)はそのうち1兆円と捉えています。
日本は海外に比べて、アウトソーシングが普及していません。海外は8割から9割をアウトソーシングしているのが当たり前と言われていますが、日本は現在、5割くらいのようです。現在社員などでコンタクトセンターを自社運営されている企業群がすべてアウトソースに流れ、日本のアウトソーシング比率が高まっていくことを想定すると、1.3兆円程度の潜在市場が存在していると考えています。
坂本:スライド上部の1.3兆円というのは、自社でコールセンターを持っている企業群で、今ご説明いただいた1兆円のほうは外部に任せている企業群ということですね。
飯島:おっしゃるとおりです。後者は我々のようなところにお任せされている企業を指しています。
坂本:スライド下部の、ピンク色で表示されている部分についても教えてください。
飯島:自社システムの「Omnia LINK」のみの市場を表しています。我々は「二兎を追う」スタイルで、システムのみの市場も取りに行きますし、アウトソーシングを使って運営するコールセンターとしてもニーズを獲得しています。まれですが、コールセンター・BPO市場の1兆円の中で闘うケースもあります。
高齢化が進み労働人口が不足する中で、自社内製でコンタクトセンター運営を行っている企業もアウトソーシング化が加速すると考えています。また、該当企業でまだアウトソーシングまでの検討が進んでいない企業の中でも、海外メーカーのPBXを使っているケースが非常に多く、そのような場合は、「Omnia LINK」のみを先に提供します。このようにダブルアプローチしているところです。
坂本:だから「Omnia LINK」の外販がこのような表示になっているのですね。コールセンター・BPO市場で、御社がアウトソースするかたちでコールセンターの業務を担っていることもあるのだと理解しました。
それを踏まえて、コンタクトセンターを自社運営している企業群にも「Omnia LINK」を売りに行くことで、また新たなニーズを獲得するかたちになるということですね。非常によくわかりました。
3 当社の成長戦略 「Omnia LINK GTM (Go-to-Market)」
飯島:当社のこれからの成長戦略についてお話しします。
競争優位性が確立された営業アプローチ
飯島:我々の強みを活かした営業アプローチの手法は、他社とは圧倒的に違います。
スライド左側に記載している「従来の『営業アプローチ』」では、「コンタクトセンター・BPOはいかがですか?」と、例えばエンタープライズの企業やメーカーなどに営業していました。右側の「新たな『営業アプローチ』」でも同様ですが、それに加えて、まだアウトソーシングを行っていない企業に「システムはいかがですか?」というアプローチを行っています。
例えば、大手メーカーや航空系・鉄道系の会社には、まだ社員の方でコンタクトセンター運営をされているところがあります。このようなところにはまずシステムのみをご利用いただき、適切なタイミングでアウトソーシングしていただいており、クロスセルが非常に有効な事例となっています。
坂本:オンプレミスの場合は、一気に特需が発生すると、機器も増やさなければいけませんよね。自社運営で、機器を買わなければいけないところはかなり負担がかかるのではと思います。特に付加サービスをつけている場合は、それに伴いすべて増やさなければいけないということが起きそうです。
飯島:おっしゃるとおりです。現在は円安の影響もあり、海外から機械を買うことが多いために高くなってしまいます。
Omnia LINKの今後の進化
飯島:「Omnia LINK」の進化についてご説明します。スライドの表を下からご覧ください。第1フェーズでは、2016年より、コールセンターに必要な機能を一生懸命に作ってきたことを示しています。第2フェーズでは、音声認識をキードライバーとして、電話応対の品質を自動判定する評価システムや、FAQをレコメンドするシステムを作ってきました。
今後は、日本の働き方改革を背景に、ビジネスコラボレーションツールの市場へと拡大展開するべく、当社が開発してきた「Omnia LINK」の機能をスマートフォンに付加していきたいと思っています。
オフィス向けOmnia LINK
飯島:具体的には、コールセンターと同等の機能をスマートフォン上に搭載し、音声のテキスト化などができるようにしていきます。
想定される利用シーンとしては、スライド右側に記載しています。例えば、弁護士の方が通話内容をテキストで残したい場合、これまでなら反訳会社に依頼していたところを「Omnia LINK」があればご自身でできるようになります。記録を残したいニーズのある多くの業種・業界に響くのではないかと思っています。
これまでのソリューションでは、録音されても聞き起こしまでは難しかったと思いますが、「Omnia LINK」は非常に簡単に、スピーディーに音声をテキスト化して見られることがポイントになります。このようなサービスによって、新たな市場に進出したいと考えています。
CXプラットフォームによる非対面接客の充実
飯島:コールセンターについて多々お話ししてきましたが、我々は金融業界や家電メーカー、不動産業界などのさまざまな事務系のお仕事も数多く行っています。コロナ禍の影響もあると思うのですが、対面接客を要するところで、非対面へ移行する流れが今まさに起きています。
オンラインでの資料提供やご案内はできても、スライドに記載しているような本人確認や電子契約まではできないというのが、現在の一般的なオンライン商談・接客です。当社では現在、資料案内に加えて本人確認や申込書の記入、契約までを一気通貫で完結できるようなプラットフォームの開発を進めており、この冬にリリースする予定です。
極端なことを言いますと、これにより、今までは店舗で行っていた業務を、店舗を閉じても同じようにスマートフォン越しに業務ができるようになります。
坂本:業界ごとに契約書のひな型などが違うと思いますが、カスタマイズもできるようなかたちで考えているのでしょうか?
飯島:まさに、我々はそこに目をつけています。当社は非常に多くの業界とお取引していますが、帳票や申込書、変更契約書などさまざまな書類があります。これらは同じフォーマットではないことが明らかですので、AI OCRで読み込むことで、そのような帳票と同じ内容をデータに落とし込むことを実現しようとしています。
今までは手元で記載していた書類がそのままシステムに上がってきます。例えば、金融業界のA社用の書類、不動産業界のB社用の書類など、さまざまな会社の帳票をすべて読み込んで、どの業種・業態にも合わせられるように考えているところです。
増井麻里子氏(以下、増井):パソコンを持っていないお客さまも多いと思いますが、スマートフォンで契約書のサインなどもできるのですか?
飯島:おっしゃるとおりです。スライド中央の「非対面」という枠内に示しているとおり、オペレーターがお客さまとスマートフォン越しにやり取りできるようにと考えています。
成長戦略に伴う業績イメージ
飯島:当社の成長戦略に伴う業績のイメージについてもお話しします。スライド左側が売上高、右側が営業利益の成長イメージです。
まず、売上高からご説明します。コンタクトセンター・BPO事業は、コールセンター業務のアウトソーシング運営のお仕事で、グラフではグレーで表示されているところです。前半でお伝えしたように、高い成長率を実現できており、今後は2桁成長を確実に目指していきます。
当社は上場以降、クラウドサービスである「Omnia LINK」の外販にも非常に力を入れています。これを確実に売上高にも乗せていきたいと思います。
「Omnia LINK」の1ライセンスあたりの単価は、コールセンター・BPO事業の1席あたりの値段と比べて非常に安くなっており、グラフのピンク色で表示されている売上高はその分薄くなっています。
営業利益についてもご説明します。「Omnia LINK」は自社で大半を開発したクラウドサービスであり、限界利益が非常に高いビジネスモデルになっています。これを現状のビジネスにアドオンしながら、当社全体の利益率を大きく改善していきたいと思っています。
CC・BPOの実績に基づく次世代ビジネスへ転換
飯島:ここまでで我々の事業の概要や強み、成長戦略をお話ししました。スライド左側に記載のとおり、当社はコンタクトセンター・BPO事業を生業としてきた会社です。創業から行っている事業を「BW(ビーウィズ)1.0」と呼んでいます。
BW2.0はプロセス型DXです。「Omnia LINK」や在宅コールセンターなどの仕組みを開発し、順調に展開を進めてきており、いろいろな企業や市場に接していることが我々の強みです。
創業から20年経ちましたが、引き続き市場に合わせたDX開発をしながら、お客さまによりよいサービスやシステムを提供することを目指し、今後の20年でもしっかりと取り組んでいきたいと思っています。
質疑応答:TOPIX構成銘柄の基準達成について
坂本:「流通株式時価総額は100億円を下回っているため、TOPIX構成銘柄のウエイト低減対象になっているかと思いますが、基準達成時期の目標はありますか? また達成するには何が必要だとお考えでしょうか」というご質問です。
飯島:流通株式時価総額がプライム市場の基準に達していない点がポイントだと思っています。これは我々のIRサイトにも出していますが、8月時点での適合計画書を開示しています。その中で特に重視しているのが、今期に中期経営計画を発表する予定であることです。
先ほどもご紹介したとおり、コールセンター・BPO事業と「Omnia LINK」の外販を進めていくことにより、2026年5月期には基準に達したいと思っています。そのためには、自社でしっかりと業績を上げていくことが最大のポイントだと思っています。
加えて、本日のセミナーもそうですが、株主や投資家のみなさまに対して、我々の事業内容などを丁寧にご説明する機会を多くしていきたいと思っています。
坂本:業務内容はなんとなく理解していましたが、お話を聞いてみると、意外と想像と違う部分がありますね。僕も資料を見て、当初考えていた質問がずれていたと感じました。
想定を修正しながらご質問していましたが、実際には、外販したり自社でBPOで受けていたりする部分もあることや、成長戦略として「Omnia LINK」を使ったり販売したりするのだとわかって、非常におもしろいと思いました。
質疑応答:BPO事業のオペレーター・料金体系について
坂本:BPOでいろいろな会社の業務を受けているところについて、オペレーターはその会社の専属なのですか? それとも、いくつかの会社の業務を受けるなど、効率よく受注できるものなのでしょうか。
飯島:両方のパターンがあり、専属のケースと、複数の会社の業務を受けるケースのどちらもあります。
坂本:もう少し詳しくお聞きします。課金モデルはどのようになっていますか? 件数あたりなのか、それとも月額制なのでしょうか。
飯島:これもいくつかのパターンがあり、月額を固定で請求するケースもあれば、1件あたりの請求、例えば通販で受注に伴って増額するなどのケースもあります。
質疑応答:新型コロナウイルス関連のスポット案件について
坂本:「第1四半期では新型コロナウイルス関連のスポット案件が取れなかった結果、計画が未達となりましたが、スポット案件が取れなかった原因はどこにあるのでしょうか? また、巻き返しに向けた足元の進捗はいかがでしょうか」というご質問です。
飯島:ご質問いただいたとおり、第1四半期は新型コロナウイルス関連を中心としたスポット案件が取れなかった状況があります。これは社会的状況と重なっている部分があります。
当社の第1四半期は6月から8月ですが、ちょうどその時期には新型コロナウイルスのワクチン接種がだいぶ収束してきて、みなさまは第3回目の接種まで進んでいました。そのため、ワクチン接種に関連するコールセンターの業務が減少し、安定してきたことがポイントです。
一方、ワクチン接種に関連する業務の減少に対して、10月中旬ぐらいから、今まさに活況である「Go To Eat」や「県民割」に関連したご相談が非常に旺盛ですので、そのような案件をしっかりと取り込んでいきたいと思っています。
質疑応答:オペレーターの採用について
坂本:「7月に横浜第四センターを開設してオペレーションブースを増やしていますが、オペレーター在籍者数が伸び悩んでいるように見えます。オペレーターの採用は御社の課題の1つでしょうか? どのように対応するのか教えてください」というご質問です。
飯島:ご質問いただきましたように、ちょうど7月に横浜第四センターを開設し、オペレーションブースを580席まで大きく増強しました。オペレーターの採用について、580席を作って580人を一気に集めるというビジネスではなく、投資・成長計画上は、580席を四半期に100席から150席ずつ埋めていくイメージで考えています。
したがって、現在は580席も場所が増えたのに人が増えていないのではないかと捉える方もいるかと思いますが、これは段階的に増えていくものですので、随時見ていただきたいと思います。
坂本:段階的に増やす理由は、将来の需要を見越して大きく作っているのでしょうか? それとも教育が100人ずつだと難しいなどの理由でしょうか。
飯島:両方です。確実に業務を立ち上げていくスピード感と、しっかりと教育して品質の高いサービスをご提供するという両面で、580席を一気に埋めるのではなく、計画的に、段階的に埋めていくというシナリオです。
坂本:コールセンターの場所は人件費と密接に関係があるため、東北などに作られる会社は比較的多いと思いますが、横浜にあるのはやはり人数も大事だからでしょうか?
飯島:ご認識のとおりです。我々が横浜駅の周辺にオフィスを構えており、乗り入れの路線数が非常に多いこともあります。
質疑応答:クラウド型のコールセンターが日本で浸透する時期について
坂本:「クラウド型コールセンターが日本に浸透するまでには、どのぐらいの時間がかかるとお考えですか?」というご質問です。ある意味、「御社の製品が業界のスタンダードになるまで、どれぐらいかかるのか」というお話だと思いますが、いかがでしょうか?
飯島:お答えするのが非常に難しい質問ではありますが、海外の事例で見ますと、グローバルでご利用いただいている海外製のPBXが、デファクトスタンダードとして日本市場だけでなく、全世界の市場で使われています。
それが少しずつシフトしている傾向が海外の市場でも顕著になっており、この流れは日本にも確実にきています。そのため、我々も市場をしっかり捉えていこうと思っています。
もう少し丁寧にご説明しますと、日本のコールセンターは80万席ありますので、そこを我々だけで変えていくのでは、やはり10年単位の時間がかかるだろうと思います。
1990年代から2020年代まで、時間をかけて海外製のソリューションを使ってきた流れがあるので、これを1年や2年でひっくり返すのは、現実的ではありません。しかし、この流れに乗って、右肩上がりでリプレースが進んでいくのではないかと捉えています。
質疑応答:同業他社のクラウド製品への参入について
坂本:御社の製品はクラウド型であり、多機能ですが、日本国内の同業他社が同じような製品を作っている実例はあるのでしょうか。海外メーカーの巻き返しのようなものがあるのかどうかも、技術的な特性も含めて教えてください。
飯島:同業他社が我々と同じものを作るのは、相当難しいと思います。ポイントは、SIP(Session Initiation Protocol)という音声に特化した分野のエンジニアが必要になることです。資料9ページでもご案内していますが、我々の「強みの開発力」の最大のポイントとして、SIPというエンジニアが在籍しています。
ITエンジニアは日本国内で70万人から100万人と言われていますが、その中で音声分野のエンジニアは非常に稀有な存在です。そのようなエンジニアは、一部の通信キャリアや、電話機会社などにしかいません。
音声分野のエンジニアで、かつクラウドのPBXの開発をできる人材は、めったに外には出てこないと思っていますので、他社が我々のようにスクラッチで開発しようとするのは、相当ハードルが高いのではないかと見ており、日本では作ることが難しいソリューションと考えています。
海外についてもご説明します。すでに入ってこられている会社には問題ない点だと思うのですが、日本特有の03や045といった地域番号がボトルネックになります。新たな海外プレイヤーがこの日本特有の部分を解消して作っていくのは、少し難しいかと思います。
坂本:日本側にかなりアジャストしないと使いにくいのですね。
飯島:おっしゃるとおり、03番号などの地域番号を使いながらソリューションを作るのは、やや難しいような気がします。
坂本:今の機器はアジャストして使えているのか、シンプルだから使えているのかについてはいかがでしょうか?
飯島:現在、海外産で参入しているところは対応できていると思います。
坂本:ありがとうございます。参入障壁も高そうですね。
質疑応答:コールセンターの従業員のケアについて
坂本:「素人目にはコールセンターの従業員のケアなどが課題だと思いますが、それについていかがでしょうか?」というご質問です。
飯島:従業員のケアは最大のポイントだと理解しています。いろいろな取り組みを行っていますが、単に給与が高ければよいという時代ではありません。
先ほど在宅勤務についてお話ししましたが、例えば「介護のかたわら自宅でも同じ仕事がしたい」など、様々な従業員の声を聞いています。一人ひとりのライフサイクル・ライフステージに向き合い、そこに対応できるようにと、数千人いる従業員の一人ひとりに対応することを会社としても重視しています。
給与以外にも、福利厚生や働きやすい環境を整えていくこともポイントだと思っています。
質疑応答:受容の多寡による人材の調整について
増井:コールセンターは需要の変動がかなり激しいイメージがあるのですが、仕事が多い時や少ない時、あるいは非常に混む時には、人材をどのように調整されているのですか?
飯島:おっしゃるとおり、お仕事にはどうしても繁閑差があります。テレビ通販では、よく「放映後の30分間は増席してお電話をお待ちしています」という放送がありますね。
坂本:通販でよくありますね。かなり多くの人材が要りそうですね。
飯島:我々もそのような状況で業務を進めています。一方、そのような業務があると、別の業務は落ち着いていることもありますので、自分たちの中でできる限り「やりくりをする」と言いますか、繁閑差を調整していくことがポイントです。
それでも対応できないところは、短期の登録制があると先ほどお話ししましたが、その登録制の人材は主婦の方などが多いです。例えば、午前中だけお仕事をしていただけるなどの登録がありますので、そのような方々に、毎週火曜日の午前中に働いていただくなどのやりくりを行っています。
坂本:「忙しいタイミングに来てください」ということができるのですね。
増井:働き手として、そちらのほうが都合がよい方も多そうです。
飯島:実際に、お子さまをお見送りした後に来ていただくなどのケースもありますね。
質疑応答:電話の需要が減少することによる業界の変化について
坂本:投資家は需要の減少に対して非常に敏感で、例えば「EVになるから自動車メーカーがダメだ」と考える人も比較的多くいます。コールセンターについても、Q&Aサイトや自動音声含めた効率化などによって、単純な電話応対の需要はある程度減ったと言いますか、落ちていると思います。
電話の需要は完全にはなくならないと思っていますが、現状は、残しておかなくてはいけない電話対応しかない状況まで来ているのでしょうか? 業界の変化について、イメージを教えてください。
飯島:ご認識のとおりだと思います。日本国内の人口自体が減っていることもあり、電話の占める割合は段階的に減ってくると思っています。そこで「ビーウィズの業績は大丈夫ですか?」などの疑問は当然出てきます。
先ほど市場についてお話ししましたが、1兆円の顕在市場のほかに、1.3兆円の潜在市場、すなわちコンタクトセンターを自社で運営している市場があります。ボリュームは減ってきても、実はまだ正社員で運営している企業が日本国内には多数あるので、その領域を取り込んでいくことで、当社の担う部分のボリュームが増えていくだろうと考えています。
また、みなさま方もご利用されていると思いますが、「一定の電話対応は残る」ということは、対応の難しいところだけが残ってくるということです。
増井:「アプリが動かなくて商品が買えない」などというケースですね。
坂本:そのように、自動音声では絶対に対応できないような部分は残るということですね。難しい対応と簡単な対応の感覚は違うものでしょうか?
飯島:そうですね。若干ですがやはり違います。
坂本:コールセンター業界のことを非常によく学ばせていただきました。まだまだ一定の需要はあるということですね。本日はありがとうございました。
飯島:どうもありがとうございました。
質疑応答:M&Aについて
Q:先日ドゥアイネットの子会社化を発表されていましたが、今後もM&Aなどは積極的に検討されていくのでしょうか?
A:はい。会社の成長につながるような会社とは、引き続きM&Aなども検討していきたいと考えています。
質疑応答:IRフェアへの出展について
Q:今後、IRフェアへの出展の予定はありますか?
A:はい。個人投資家のみなさまとはなかなか直接お会いする機会が少ないため、IRフェアは前向きに検討していきたいと思っています。