会社概要
鶴保直子氏(以下、鶴保):経営企画マネージャーの鶴保です。本日はよろしくお願いいたします。ログミー主催のセミナーには今年2月に初めて参加し、今回で2回目になります。初めて当社の名前を聞く方もまだ多いと思いますので、本日は基本的なことを中心にご説明し、当社のことをぜひ知っていただきたいと思います。
まず、会社概要についてご説明します。「高千穂交易」という社名ですが、日本神話の天地創造の象徴の地である「高千穂」と、貿易を通じて海外と、物だけではなく文化の交流にも貢献したいという思いで「交易」とし、この2つを合わせて「高千穂交易」と名付けました。
主にネットワーク製品やセキュリティ製品を海外から輸入し、技術的な付加価値をつけて国内外に販売しています。これらの<エレクトロニクス商材>に<技術の付加価値を付けて販売する商社>ということで、「エレクトロニクス技術商社」と呼んでいます。
設立は1952年で、今年3月に創業70周年を迎えました。本社は四谷にあり、今はスライド右上の写真のビルのYOTSUYA TOWERに入っています。四谷の駅前に高千穂交易の看板が大きく掲げてあるビルがありますが、そこは前の社屋です。BCPの観点と社員のモチベーションアップ、働き方改革という意味でビルを移転しました。
高千穂交易の強み①「目利き力」
鶴保:当社の強みを3点ご説明します。1つ目は、世界の先端商品を発掘する目利き力です。当社には、これまでに世界の最先端商品をいち早く日本に紹介してきた実績があります。
具体的には、1970年に販売を開始し、現在も主力商品の1つである商品監視システム(万引き防止システム)やスライドレールなどがあります。翌年には、半導体、ダイレクトメールや請求書を封入封緘するメーリングシステムを販売開始し、2000年には入退室管理システム、最近では2013年にクラウド型無線LANの販売を開始しています。
高千穂交易の強み②「技術力」
鶴保:当社の強みの2つ目は技術力です。商社としては意外に思われるかもしれませんが、当社ではエンジニア系の社員が全社員の40パーセント以上を占めています。多くのエンジニア系社員がいることにより、高い技術力のあるサポートが可能になっています。
具体例としては、コンサルティングから開発・設計、アフターサービスまで一気通貫して当社で実施できます。加えて、サービス網は全国300ヶ所にあり、コールセンターでのサポートは365日24時間対応しています。
卸売業や商社と聞くと、ただモノを仕入れて販売するイメージがあるかもしれませんが、当社ではこのような充実した技術サービスで競合企業との差別化を図っています。
高千穂交易の強み③顧客基盤
鶴保:当社の強みの3つ目は顧客基盤です。当社には創業後70年間で培った、多くのお客さまとの取引実績があります。総アカウント数は2万5,000ほどあり、この安定した顧客基盤は当社の財産の1つだと考えています。
また、豊富な取引実績により、多くのノウハウを社内に蓄積しており、これによって顧客満足度の高いサービスの提供が可能になっています。
事業セグメント
鶴保:実際の事業についてご説明します。当社のセグメントは現在、クラウドサービス&サポート、システム、デバイスの3つがあります。
クラウドサービス&サポートでは、システムセグメント製品の保守、クラウドサービスの提供を行っています。昨年度の売上構成比は10.2パーセントでした。保守とクラウドサービスは成長性と収益性が高いため、成長事業として位置づけ、今年度、新しいセグメントとしてシステムセグメントから切り分けました。
システムセグメントでは、扱っている製品はさまざまありますが、主にセキュリティシステムを扱っています。例えば、写真にあるような、オフィスに入るときにカードをかざして入退室が可能になる入退室管理システム、ドラッグストアやアパレルショップなど、小売店舗の入り口に設置してある万引き防止のための商品監視システムが挙げられます。昨年度の売上構成比は47.6パーセントとなっています。
デバイスセグメントでは、半導体、機構部品を取り扱っています。機構部品というのは機械に使われる部品のことを言います。どちらもあまりなじみがないかもしれませんが、少し大きめの複合機がオフィスにあると思います。その給紙トレイや、みなさまの自宅のキッチンの引き出しをスムーズに閉じる機構などに使われています。昨年度の売上高構成比は、42.2パーセントとなっています。
クラウドサービス&サポートの事業
鶴保:各セグメントの説明に移ります。クラウドサービス&サポートの事業としては、大きく分けて保守とクラウドサービスの2つを提供しています。特徴としては、どちらも基本的には月額制で提供しているサービスです。サブスクリプションモデルと言いますと、なじみがあるかと思います。
保守では、システムセグメント製品のアフターサービスを行っています。クラウドサービスでは、写真にあるような「Verkada」という物理サーバー不要のAIカメラなどを管理できるクラウド型のネットワークシステムなど、複数取り扱っています。
その中でも主力サービスとして、MSPサービスというものがありますので、次のスライドで詳しくご説明します。
現在の売上構成比は保守7割、クラウド3割ほどになっています。次期中計ではこれを逆転させ、クラウドサービスの売上構成比を上げることを目標としています。
クラウドサービス&サポート ▶▶ MSPサービス概要
鶴保:クラウドサービスの主力であるMSPサービスについてご説明します。まず、MSPとはManaged Service Provider(マネージドサービスプロバイダー)の略です。Managed Serviceは、クラウド製品の保守運用、死活監視業務などをアウトソーシングできるサービスのことを言います。スライドにある図のようなイメージです。
当社のMSPサービスでは、左下の写真にあるCisco Merakiというメーカーのクラウド型無線LANシステムを取り扱っています。この商品の機器代、クラウドサービスのライセンス料、保守・運用管理サービスの3つをまとめて1つのサービスとして月額制で提供しています。
導入のメリットとしては、システムの設定から当社に委託できるため、社内に情報システム部門の専任者を置けない場合でも、システムを安定して稼働させることができます。ネットワークの専門知識を持つ人材がいない場合でも、当社に任せることができるということです。
当社の強みを一言で言うと、技術的なサービスが充実していることです。具体的には、設計・導入支援から行っていること、24時間365日のコールセンターに加え、全国オンサイト保守サービスを行っていることが挙げられます。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):今ご説明いただいたMSPサービスは、どのような顧客層が多いでしょうか?
鶴保:当社は無線LAN機器を取り扱っており、お客さまの業種や会社規模はさまざまです。情報システム部門の人手不足を解決する商品でもあるため、規模としては特に情報システム部門を兼任しているような中小企業にご好評いただいています。
業種については、オフィス向けが多くを占めますが、それ以外にも貸しオフィスや小売店舗、教育機関、少し珍しいところだと料理教室など、インフラの管理を任せたいというさまざまな業種に採用されています。
クラウドサービス&サポート ▶▶ MSPサービスKPI
鶴保:MSPサービスの契約状況についてご説明します。グラフは2015年3月期のサービス開始から現在までの累計契約数の推移を表しています。契約数はサービス開始から連続して増加し、今年6月末の時点で1万4,116ライセンスとなりました。月次解約率は3ヶ月平均で0.36パーセントほどです。
セールスフォース社の「SaaSスタートアップ創業者向けガイド」というものがありますが、そちらでは月次解約率は1パーセントから2パーセントを目指す必要があるとされているため、解約率としては合格点であると認識しています。
システムセグメント ▶▶ 小売業向けソリューション
鶴保:次に、システムセグメントについてご説明します。小売業向けソリューションでは、店舗犯罪の防止と店舗業務の効率化のための製品を扱っています。
店舗犯罪の防止の製品としては、まず商品監視システムが挙げられます。万引き防止システムとも呼ばれるこちらは、1970年から販売している当社の主力製品の1つです。入口に置くゲートと洋服などの商品につけるタグがあり、タグは消耗品のためリピート購入していただくビジネスモデルとなっています。
また、監視カメラなどの映像監視システムがあります。さらに、その映像を利用した顔認証システムの需要が高まっています。使い道としては、入店時の万引き常習犯の検知、また、最近ではカスタマーハラスメントというものがありますが、その対策として店員の安全を守るための利用が増えています。
主な顧客は総合スーパーやドラッグストア、アパレルショップなどです。この商品監視システムと映像監視システムは、ドラッグストアでのシェアで当社が1番となっています。
店舗業務の効率化を実現する製品としては、AI自動販売機やトラフィックカウンターがあります。「PickShop」というAI自動販売機はショーケース内の商品の出し入れの画像を認識して、自動的に決済することが可能なシステムです。店舗の空きスペースやオフィスなどに置くことができ、人手不足の解消、運用コスト削減のメリットがあります。
トラフィックカウンターは、天井にセンサーを設置することでマーケティング的な使い方ができます。具体的には、入店人数の計測や買い上げ率などのデータ分析を行うことができます。
システムセグメント ▶▶ オフィス・工場・データセンター向けソリューション
鶴保:同じくシステムセグメントから、オフィス・工場・データセンター向けソリューションについてご説明します。ビジネス環境の構築に向けた主力製品が2つあります。1つはオフィス内の出入りを管理する入退室管理システム、2つ目はネットワーク製品です。
主な顧客は一般企業、データセンター、工場などです。特に入退室管理システムは、大手の外資系企業向けのシェアが日本で1番になっています。その理由として、当社は世界トップシェアを誇る入退室管理システムメーカーであるtyco社、Honeywell社、AMAG社の正規代理店として、長く販売していることが挙げられます。
外資系のお客さまは、世界中どの拠点でもすべて同じセキュリティシステムを採用し、セキュリティポリシーの統一、デファクト化を行います。そのため、お客さまからは当社の技術力、経験、実績などで選択されることが多くなっています。
ネットワーク製品は、自宅などの遠隔地から社内システムにセキュアにアクセスできるリモートアクセス機器などです。
また、今までと少し毛色が違うのですが、スライド右下の防火設備の事業も行っています。こちらは東南アジア向けにタイ、シンガポールにある当社の子会社で、防火システムの設計、販売とインテグレーションを行っています。主な顧客はプラント建設会社や発電所で、このような設備には防火システムを設置することが義務付けられています。
デバイスセグメント ▶▶ 製造業向けソリューション
鶴保:次にデバイスセグメントについてご説明します。まず、左側の半導体・電子部品です。主に、海外製の半導体や電子部品を日本の製造業のお客さまに提供しています。カーナビやノートパソコンのマイク、プリンターなどにも半導体が使われていますが、ここ数年の売上が大きいものとしては、5G基地局の電源モジュールが挙げられます。
右側の機構部品については、先ほども触れましたが、身近なところでは複合機のコピー用紙が入っているトレイ、ATMで使われているスライドレールがあります。ATMでは、紙幣を入れる重量のあるユニットを、弱い力でスムーズに引き出すことができるようになります。ATMや複合機に使われるダンパー付きのスライドレールなど、一部の機構部品のシェアは当社が1番になっています。
他には、システムキッチンの引き出しにダンパーという部品が使用されており、勢いよく閉めてもゆっくりと閉まる動きを実現しています。
当社で取り扱っている機構部品の特徴としては、輸入商品が少なく、自社ブランドとして製品を提供しているものが多くなっています。そのため、地理的な制約が少なく、中国やアメリカへの輸出売上も順調に伸びています。
坂本:スライドレールは自社で作られているのですね。
鶴保:はい、そうです。
坂本:半導体不足が一部で解消されてきたという話や、年末までにはなんとかなるのではないかという話が出ていますが、御社の取り扱い商品の現状と見通しを教えていただけたらと思います。
鶴保:PCやモバイル向けの半導体は、一時よりひと段落ついたイメージはあります。ただ、当社の場合は半導体製造装置の部品や基地局向けの電源モジュールなど、産業機器向けの販売が多いです。
そちらの半導体不足はまだ解消されておらず、まだ受注残も多くありますので、当社製品向けの半導体が入ってくれば、当面は好調が続くと思います。
坂本:セグメントごとに異なると思いますが、営業手法について教えてください。非常に伸びているMSPサービスに人を割いているのか、どのように営業しているのか、などについておうかがいできればと思います。
鶴保:大きく分けると直接販売と間接販売があります。デバイスやシステムの中でも小売業向けソリューションについては直接販売がメインとなっています。お客さまの組織に深く入り込んで課題やニーズを拾い上げるのですが、そのニーズを満たすためには、やはり直接販売が有効となります。
また、システムの中でもネットワーク製品については、MSPサービスもそうですが、間接販売、代理店販売がメインとなっています。代理店に当社の製品をなるべく販売いただくためにキャンペーンを実施したりしています。
また、全社を挙げて取り組んでいるのが、Webマーケティングの強化です。ここ数年、お客さまの製品の選定プロセスが大きく変わってきました。今まではお客さまから直接電話がかかってきて「このようなものはないか」と聞かれていたのですが、今ではインターネットでなんでも調べることができるようになりました。それに対応するために、最近はホームページの改善やメールマガジンの配信など、Webを通じた営業手法も強化しており、それによってリードを獲得しています。
業績推移(直近5年間)
鶴保:ここからは業績についてご説明します。過去5年間の売上高、営業利益、当期純利益のグラフです。過去5年間の売上高はおおむね200億円前後で、2021年3月期はコロナ禍の影響で減少しましたが、それまでは増収の状況でした。
濃い青の折れ線グラフが当期純利益になります。2018年から2020年3月期については、2014年に買収した子会社ののれんの減損が大きく影響しています。先ほど説明に出てきました、防火システム事業を行っている子会社を買収した直後に、原油価格が低迷したことが影響しています。
2022年3月期は増収を実現し、粗利率が改善しました。外貨建債権の為替評価益を計上したこともあり、当期純利益は上昇しています。
増井麻里子氏(以下、増井):売上を見る限り、コロナ禍の影響はそれほど大きくなかったように見えますが、具体的にはどのような影響がありましたか? 逆に追い風になったことはありましたか?
鶴保:コロナ禍までは増収が続いていたのでダメージはありましたが、逆に好調になった事業もありました。
タイのロックダウンが非常に厳しかったため、タイで行っている防火システム事業は影響を受けました。国内でも、小売業の新規出店が抑制されるなどの影響を大きく受けました。
しかし、追い風となったのはテレワークです。テレワーク需要がかなり増加したため、リモートのアクセス機器やWi‐Fiの端末、PC向けの半導体が非常に好調に推移し、それほど落ちずに済んだ状況です。
坂本:のれんの減損もひとまず落ち着いているのですよね。
鶴保:はい、そのとおりです。
2023年3月期 第1四半期決算業績・通期見通し
鶴保:8月5日に公表した第1四半期の決算についてご説明します。売上高は49億7,400万円、経常利益は4億3,100万円、当期純利益は3億1,700万円と、前年同期比で増収増益となっています。これはデバイス事業、特に半導体、電子部品の販売が好調だったことによるものです。
また、円安によって外貨建債権の為替評価益を2億200万円計上したことも大きく影響しました。
通期の業績予想は右から2番目の列に記載しており、売上高は225億円、営業利益13億円、当期純利益9億2,000万円を計画しています。
坂本:円安や資材、人件費の上昇などはいろいろなところで問題になっていますが、販売への価格転嫁について教えてください。
鶴保:世の中でもかなり値上げが行われ、浸透してきていると思いますが、当社も値上げのお願いを販売先に行っています。非常に厳しい交渉にはなっていますが、世の中の流れとして受け入れていただける会社も増加してきました。契約の問題などもあり、ご了承いただいてから実際に値上げするまでは少し期間が空いてしまうため、価格転嫁の実際の影響はこれから出てくると思います。
坂本:仕入れの値上げをされてしまうとやはり厳しいですからね。
鶴保:そうですね。円安の影響もありますので。
セグメント別業績
鶴保:セグメント別の業績になります。クラウドサービス&サポートではMSPサービスが堅調に推移して増収増益となりました。デバイスでは電子部品の販売が好調で増収増益、営業利益については前年同期比で198パーセント増となりました。
システムではデータセンター向けの入退室管理システムの販売が好調でしたが、前年同期の小売業向け大型案件を超えられず、減収増益となっています。特にシステム事業の製品はお客さまにとっては設備投資に当たるものが多いため、売上は第2四半期と第4四半期に偏重する傾向にあります。そのため、例年、第1四半期の営業利益は売上が販売管理費を賄える水準に達することができず、マイナスとなります。
四半期別業績推移
鶴保:四半期別の売上高と営業利益のグラフになります。例年、システムセグメントを中心に第2四半期と第4四半期に偏重する傾向になっています。今期はデバイス事業が非常に好調だったため、これまでと比べると第1四半期時点でかなり進捗している状況です。
また、業績の予想は通期だけでなく上半期の数字も発表していますが、これを8月5日に上方修正しています。通期の予想は据え置きで、5月公表値から変更していませんが、今後の業績傾向を見極めて修正の必要が生じた場合には速やかに公表する予定です。
坂本:第1四半期はいつもどちらかというとスローですが、今期の第1四半期は非常に好調な状況です。デバイスが非常によかったということですが、これは一過性のものなのでしょうか? 円安の影響も含めて教えてください。
鶴保:いつも第1四半期のスタートダッシュが遅めですが、今回は一部で半導体が入ってきたこともあり、受注残をしっかり販売できたため増益になりました。
円安の影響もあるのですが、当社は輸入商社ですので、本来は円安が原価の上昇につながり、粗利にはマイナスに作用します。一方で、当社は債権回転期間が少し長いこともあり、今回はドル預金や外貨建債権の為替評価益の影響がありました。そのため、経常利益が大きくプラスになっているという構造です。取り組みとしては、粗利のマイナス分をカバーできるように為替予約をしたり、外貨建ての資産を適切に保有できるように努めています。
坂本:通期の業績は据え置きということですが、想定しているリスク要因があれば教えてください。
鶴保:リスクは、やはり為替と調達になります。円安のリスクは、為替予約でトータルには影響が出ないように努めていきたいと思っています。
調達については、特に半導体の問題です。受注自体は多くいただいていますが、産業機器向けは不確定要素があるため、どれだけ調達を進められるかがポイントになります。仕入先と粘り強い交渉をして、入荷を進めていきたいと考えています。
新中期経営計画2022-2024
鶴保:事業戦略・資本戦略についてご説明します。2024年度を最終年度とした新しい中期経営計画を今年2月に公表しました。スローガンは「創造へのチャレンジ ~Toward 100th anniversary ニューノーマル時代における新たな価値創造へ〜」です。今年3月に70周年を迎え、30年後の創業100周年に向けて価値のある事業を提供し続けたいという思いを込めました。
この中期経営計画についてじっくりご説明すると時間がかかってしまいますので、今回はポイントを絞ってご説明します。右上のQRコードから全文のPDFを見られますので、興味を持たれた方はぜひご覧ください。また、前回のセミナーも参考にしていただければと思います。
まず数値ですが、3年後に売上高260億円、経常利益20億円、当期純利益14億円を目標としています。ROEは2022年3月期の実績6.0パーセントから、3年後に8.0パーセントを必達、10.0パーセントを目標としています。
戦略については、オレンジのダイヤマークがついている項目について、後ほど詳しくご説明しますが、大きく分けて事業戦略、資本戦略、ガバナンスに対する取り組みを進めています。
事業戦略については、サービスビジネスの成長、ロイヤルカスタマー戦略の推進・深化、将来のコア事業の創造、経営基盤の強化、戦略投資の実行の5つになります。
資本戦略については、資本収益性向上のために、ROE3期平均8パーセント達成までは配当性向100パーセントを実施します。また、これまで当社は無借金経営を続けてきましたが、資本コスト抑制のために大型投資には有利子負債の活用を検討することにしました。
ガバナンスについては、投資委員会の設置、指名・報酬委員会の設置、より株主目線での経営にするために役員報酬のKPIにROEを設定しています。
新中期経営計画 ▶▶ 事業戦略
鶴保:事業戦略のうち、成長戦略についてご説明します。右側にグラフがありますが、昨年度の売上207億円から中期経営計画最終年度の260億円まで、約53億円伸ばす目標となっています。成長戦略①の「サービスビジネスの成長」でクラウドサービス&サポートセグメントの売上高を伸ばし、成長戦略②の「ロイヤルカスタマー戦略の推進・深化」でシステム、デバイスセグメントの売上高を伸ばす計画となっています。
成長戦略① サービスビジネスの成長 ~「モノ売り」から「コト売り」へ~
鶴保:成長戦略の1つ目、サービスビジネスの成長についてご説明します。クラウドサービス&サポートの売上高は、保守・クラウド合わせて昨年度の21億円から中期経営計画最終年度の40億円まで、約19憶円伸ばす目標となっています。特にクラウドサービスの成長を見込んでいます。
その成長要因はカスタマーサクセスの実現です。カスタマーサクセスサイクルを回して、当社のサービスが顧客にとってなくてはならない存在になることを目指しています。
増井:カスタマーサクセスサイクルというのは、例えばどのようなものでしょうか? 例を1つ教えてください。
鶴保:例えば、お客さま向けのプラットフォームを構築します。そのプラットフォーム上でお客さまが製品の不具合を解消する方法を検索し、検索結果によって問題を解決できることで顧客満足度を上げたいと思っています。当社は、その検索結果のデータを元に製品の改良などを行うことにより、製品の使い勝手もよくなり、さらに顧客満足度も上がっていくというサイクルを構想しています。
スライドの右下にある「TKエコシステム」は構想を練っている段階ですが、MSPサービス以外にも画像にあるようなさまざまなクラウドサービスを連携し、複数のサービスを1つのプラットフォーム上で利用してもらうことを想定しています。これによって、先ほどお伝えしたとおり顧客満足度の向上を実現し、1ユーザー当たりの月額単価を上げて、このセグメントを成長させていきたいと考えています。
成長戦略② ロイヤルカスタマー戦略の推進・深化
鶴保:成長戦略の2つ目は、ロイヤルカスタマー戦略の推進・深化です。まずロイヤルカスタマーとは、当社独自の定義であり、1社当たりの売上高が3,000万円以上のお客さまのことです。そして、ロイヤルカスタマー戦略とは、当社が付加価値を提供することでご満足いただけるお客さまを創出して、関係強化を目指す戦略のことです。
もう少しざっくり言うと、お客さまの潜在的ニーズを把握することでお客さまの課題を解決し、それによって関係が強化され、いろいろなことを当社に任せてもらえるようになり、また次の売上につながっていくという流れを想定しています。
数値目標としては、ロイヤルカスタマーの社数を130社超に増やすことと、全顧客の平均売上高を20パーセントアップさせることとしています。2022年3月期のロイヤルカスタマーの社数は108社、全顧客の平均売上高は約1,000万円となっています。
具体的な方策としては、まずグループシナジーの最大化を進めていきます。スライド右上の図にあるように、従来は事業部ごとにお客さまを受け持っており、それぞれで営業やマーケティング、技術サポートを行ってきました。現在は、事業部間や子会社との顧客紹介を進めており、これによるクロスセルの増加を見込んでいます。また、4月に組織変更も行い、技術専門の部署やマーケティングの部署を作り、事業部の垣根を越えたノウハウの共有も進めています。
もう1つは、新しいソリューションの強化です。スライドの右下に記載している分野は、これから伸びると言われている領域です。当社の強みである情報力や技術力を活かし、このような新しい技術を使ってお客さまの潜在的な課題を解決していくことができると考えています。
新中期経営計画 ▶▶ 資本戦略
鶴保:資本戦略についてです。当社の財務健全性を総合的に勘案した上で、資本収益性と現状のバランスシートの改善に向けた資本政策を実行していきます。新たな企業価値創造ということで、まずはROE3期平均8パーセントの超過を目標にしています。
その実現に向けて、収益性の改善と、自己資本の積み増しの抑制によるバランスシートの改善を行います。自己資本を積み増さないために、ROE3期平均8パーセントを超過するまでは配当性向100パーセントを維持することとしました。
プライム市場上場維持基準の適合状況の進捗
鶴保:簡単にではありますが、プライム市場上場維持基準の適合状況の進捗についてご説明します。今年4月の東証再編で、当社は東証1部からプライム市場に移行していますが、昨年6月時点ではプライムの上場維持基準を一部満たしていない状況でしたので、経過措置の適用を受けています。
現時点では、株価上昇に伴って、維持基準を満たしていなかった流通株式時価総額と1日平均売買代金の2項目について、上場維持基準を満たしている状況になっています。
また、こちらの件で、8月15日月曜日の『日本経済新聞』の「経営の視点」というコラムで当社についての記事が掲載され、社長のコメントも載っていますので、よろしければご覧いただければと思います。
株主還元 ▶▶ 配当
鶴保:最後に株主還元についてご説明します。まずは配当についてです。先ほどの資本戦略のスライドでもありましたが、資本収益性を意識した経営を行うために、ROEが3期平均8パーセントを達成するまでは配当性向100パーセントを維持するという方針にしました。
2023年3月期については、連結業績予想は当期純利益9億2,000万円と公表していますので、配当性向100パーセントで計算すると、年間配当金は1株当たり103円になる予定です。配当下限の24円というのは以前から設定していますが、そちらは継続して、中間配当ではその下限額の24円をお支払いする予定となっています。
坂本:こちらの配当性向は、ROE8パーセントになるまでは100パーセントでお返しするとのことですが、業績が上振れてもそのままスライドして100パーセント還元するというイメージでよろしいでしょうか?
鶴保:そのとおりです。業績が上振れた場合でも100パーセントを予定していますので、その場合は103円より増配になります。
坂本:すごいですね。株価の反応も相当なのではないかと思います。
株主還元 ▶▶ 株主優待制度
鶴保:株主優待についてです。当社では、3月末時点で100株以上保有の株主さまに「おこめギフト券」を贈呈しています。「おこめギフト券」の枚数は保有株式数に応じて決めており、100株以上200株未満では2キロ分、200株以上300株未満で5キロ分、300株以上からは10キロ分となります。
配当と優待を合計した総合利回りは株価によって変化しますが、現在の株価水準では4.8パーセント程度となっています。
坂本:株主優待で「おこめギフト券」を進呈されていますが、御社には何かお米にまつわるものがあるのでしょうか?
鶴保:お米にまつわる商売や事業をしているわけではありません。当社はBtoBの会社であり商社ですので、自社製品で優待を行っている会社とは少し異なります。
坂本:御社からATMのレールをもらっても困りますものね。
鶴保:まさにそうです。一般の方にお送りするのにちょうどよいものがなく、投資家さまに幅広くよろこんでいただけるものを、ということで「おこめギフト券」にしています。株主さまからはご好評いただいていると思いますので、長年この「おこめギフト券」を進呈しています。
坂本:「長期優待の新設についてのイメージを教えてください」という質問が来ているのですが、いかがでしょうか?
鶴保:現状はこのままの方針で進める予定ですが、今後のご意見として参考にしたいと思います。
質疑応答:為替変動の業績への影響について
坂本:為替変動についての質問をいただいています。すでにご説明いただいたとは思いますが、為替変動の業績への影響は大きかったのかどうかと、今後の見通しをうかがいたいです。御社は輸入ビジネスを行っているため、円安の影響はマイナスに作用するということですが、海外部門と全体的な影響をもう一度教えていただければと思います。
鶴保:繰り返しになりますが、輸入商社で仕入れ原価のコストが上がってしまうため、お客さまには申し訳ないものの、価格転嫁の努力をしていくという方策を取っていきます。また、半導体のお客さまとはドル取引も多いため、ドルで仕入れてドルで販売する取引を進めていくことも1つの方策として挙げられます。
質疑応答:半導体のリードタイムについて
坂本:先ほどのお話にもありましたが、半導体において、第2四半期以降に入荷し始めたものと厳しいものの状況はいかがでしょうか?
また、先行き何ヶ月の受注が積み上がっているかについてお聞きしたいのですが、これは受注が積み上がったとしても、出せるものが入ってこないと時期が分からないと思います。そこで質問を若干変えますが、御社の一般的な取り扱い商品の、受注から納品までのリードタイムはどのぐらいなのかということについて教えてください。
鶴保:半導体のお話で言いますと、通常のリードタイムは16週から30週ぐらいです。しかし、2年ぐらい前に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になってからは、52週から1年以上というリードタイムになっており、受注のお客さまからのリードタイムもやはりそれに合わせて増えてきています。
坂本:ありがとうございます。ピンポイントなお答えをいただきました。これを踏まえて、先行き何ヶ月の受注が積み上がっているかを想像していただければと思います。
質疑応答:株価の適正水準について
坂本:「数年前に比べて明らかに株価が上昇しています。御社の業績の水準が戻ってきたことと、株主還元の方針もあると思いますが、現在の株価は適正水準だと考えていますか?」というご質問をいただいています。
社長であれば何とかできるかもしれませんが、このあたりのお答えは難しいと思います。いかがでしょうか?
鶴保:これまで長い間PBRが1倍を割っていましたので、そこをまずクリアできたことで、ようやく投資家の方々に当社を知っていただけるようになったのではないかと感じています。株価は上昇していますが、気を引き締めて中期経営計画で掲げている目標を確実に達成できるように努力していきたいと思っています。
坂本:御社はいろいろなプロダクトがありますが、やはり商社全体で横並びに比較するとどうしてもPBRが低くなってしまいますので、評価基準はROEを重視されているということですよね。
鶴保:おっしゃるとおりです。
質疑応答:中期経営計画で特に注力する取り組みについて
坂本:中期経営計画の目標達成に向けてのお話もいただきましたが、今回お話しいただけなかった部分も含めて、今後どのあたりに力を入れていくかということをもう少しおうかがいできると、先行きのイメージになるかと思います。
鶴保:中期経営計画の中では、スライドに記載のとおり、サービスビジネスの成長に注力していきます。MSPサービスの契約数のグラフも先ほどお見せしたと思いますが、やはりサブスクリプション型のクラウドビジネスを強化していくことによって、収益をしっかりと安定的に増やしていけると考えています。
半導体に関してはシリコンサイクルなどもありますが、収益をしっかりと積み上げていき、サービスビジネス、クラウドのビジネスを成長・強化していきたいと考えています。
増井:この分野はけっこう競合が多くいらっしゃると思いますが、市場自体もまだ伸びると考えていますか?
鶴保:そのように捉えています。
質疑応答:人材への投資について
坂本:人材への投資をどのように考えているか教えてください。
鶴保:我々は商社ですので、やはり人が一番大事です。中期経営計画でも掲げているとおり、人材の育成は強化していきたいと思っています。教育ももちろんですが、前回の中期経営計画の3年間で人事制度を変更したり、持ち株の奨励金制度を取り入れたりしました。
坂本:福利厚生の制度として、いろいろな会社にありますよね。
鶴保:そうですね。社員に経営参加意識を持ってもらうためにも取り入れましたので、人材はしっかりと強化していきたいと考えています。