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青木淳一氏(以下、青木):本日は暑い中、当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。代表取締役社長の青木淳一と申します。よろしくお願いいたします。それでは、2022年5月期の室町ケミカル株式会社の決算説明会を開催させていただきます。

本日のご説明の流れとしては、最初に会社および事業概要、2番目に2022年5月期の決算説明、最後に新たに策定しました中期経営計画の順にご説明します。

当社のパーパス

まず当社および事業概要についてご説明します。当社のパーパス、いわゆる存在意義についてです。当社は、「健康」と「環境」をテーマに、社会貢献をしていく会社であり続ける所存です。医薬品・健康食品・化学品の3つの事業で構成されており、医薬品および健康食品事業で「健康」を、化学品事業で「環境」を、健康・環境分野で社会の抱える問題に向き合い、しっかり解決することにより、当社の経済的、社会的価値を向上し、継続的に成長していきます。

当社事業内容

前期の売上構成比率は、医薬品事業が約50パーセント、健康食品事業が15パーセント、化学品事業が35パーセントとなっています。

それぞれの事業内容についてです。医薬品事業は、医薬品の有効成分となる原薬を主に取り扱っています。特長としては、メーカー機能と商社機能の2つを併せ持つ点です。

健康食品事業では、ゼリータイプの健康食品の企画・製造を行っており、スティックゼリーの製品が中心になります。特長としては、臭いや苦み成分を覆い隠すマスキング技術とテイストの部分で市場から評価を得ています。

化学品事業については、約8割が液体処理に関するものです。イオン交換樹脂や分離膜をお客さまの目的に合わせて選定し、必要に応じてそれらを組み合わせ、場合によっては装置化までした上で、販売を行っています。特長としては、過去から蓄積した技術やノウハウをベースに、お客さまの要望に合わせた対応ができるという点です。

それぞれの特長の詳細については、スライドに記載のとおりです。

高度な化学技術とソリューション

スライドで示していますのが、当社の持つ主な技術です。当社は「分離・精製」を中心とした技術を持ち、強みとしては、これまでの経験により蓄積した技術をいろいろ組み合わせ、応用展開ができるという点です。

開発テーマによっては、新技術の確立も現在進行しています。例えば、医薬品開発部隊と化学品開発部隊の協力により、新たな技術を作るというチャレンジもしていますし、あるいは他社との共同開発によって、特許等の出願も積極的に進めています。それにより、2022年5月期は計3件の特許出願を実施しています。

決算ハイライト

2022年5月期の決算についてご説明します。2022年5月期は、前期から比較しますと、増収増益となりました。配当については19円を予定しています。減価償却費については、過年度の減損の影響や、この2年で大きな設備投資がなかったため減少しています。

設備投資については、健康食品事業における自動化設備導入、基幹システムの更新等があった関係上、増加しています。この後にご説明しますが、医薬品事業への設備投資は来期以降に本格化していく予定です。

セグメント別損益

セグメント別の損益です。売上高については、各事業とも案件の獲得が順調に進み、増収となりました。

医薬品事業では主に輸入原薬の取引の増加により増収となっています。また、製品より商品の売上が増えた関係上、利益率は若干悪化しています。健康食品事業は、既存・新規ともにおおむね順調に推移しており、生産効率の改善に取り組んだ結果、黒字化しています。化学品事業については、イオン交換樹脂の案件獲得が進み、装置案件の受注も多かったことから増収となり、営業損失を縮小しています。

損益計算書

損益計算書です。増収増益を達成し、売上高は56億8,100万円と過去最高を更新することができました。売上原価・売上総利益率については、仕入商品の比率が高まった点から、若干悪化しましたが、それ以上に売上の伸びが順調に推移したため、増益となっています。また、当期純利益については、過年度の減損の影響や繰延税金資産の計上により、大幅に改善できました。

営業利益 増減要因(前期比)

営業利益の増加要因です。結論的には、3事業すべてにおいて売上および売上総利益が増加したことによります。

販売管理費は人材採用等によって若干増加しています。本来、将来の投資に向けて、販売管理費をさらに使用したかったのですが、新型コロナウイルス感染症の影響により、特に前期の前半が思うように活動できなかったという反省材料があります。ただ、期の後半から展示会など、本来の営業活動が活発化してきており、今後は積極的に使用していきたいと考えています。

貸借対照表

貸借対照表です。健康食品事業の設備投資等により、固定資産が増加しています。借入金については、返済を進め、約4億円の減少となっています。負債の圧縮と利益剰余金の増加により、自己資本比率が前期比6.1ポイント改善し、約35パーセントとなっています。

キャッシュ・フロー計算書 要約

キャッシュ・フロー計算書です。先ほどご説明しました設備投資および借入金の返済により、キャッシュは前期末より1億3,500万円減少しています。

業績予想

2023年5月期の業績予想についてです。売上高は7.4パーセント増の61億円、経常利益は3億6,000万円の増収減益を見込んでいます。引き続き、輸入原薬やイオン交換樹脂を中心に売上増を見込んでいるのですが、売上構成の変化や原材料費・エネルギー費の価格上昇、為替影響等により、利益面では苦戦すると考えています。

配当は19円を継続し、配当性向は28パーセントと予想しています。

設備投資額については、現段階の計画では対前期で約20パーセント減となっていますが、今期末から医薬品事業への設備投資を本格化する予定です。医薬品事業への投資については、2024年5月期にピークとなる予定ですが、開発の進捗によっては前倒し等もあり得ます。

セグメント別の予想

今期のセグメント別の予想です。医薬品事業は輸入原薬の取引量増加により、売上増加となる見込みです。また、自社加工品の開発案件が増加してきています。中長期的な売上拡大に向け、引き続き力を入れていきます。

健康食品事業については、今期は未開拓であった高齢者市場への訴求活動を実施し、今後の成長につなげていきます。化学品事業については、イオン交換樹脂の取引量増加と、開発品の拡販活動に注力していきます。

詳細については後ほど、中期経営計画の中でご説明します。

長期ビジョン

続いて、中期経営計画についてご説明します。最初に長期のビジョンです。「VISION 2032」として、10年先まで見据えた目標を設定しました。これまでもご説明した、過去から蓄積されている我々の豊富な化学技術をベースに、新たな技術確立も加え、徹底してお客さまの問題を解決するオンリーワン企業を目指していきます。

まず、スタートである今回の「中期経営計画2025」の3年で、売上高70億円、営業利益率8パーセントを目指します。この3年で開発強化と収益性改善をテーマに進めていきます。

この3年で地盤を強固にし、次の3年では、現在進行中の開発案件を中心とした新領域の収益化、既存事業の収益力強化を行います。数字としては、売上高80億円、営業利益率9パーセント以上を目指します。

最終の4年では、開発案件をさらに増やし、それをベースに継続的に成長していきます。10年後には、売上高100億円、営業利益率10パーセント以上を目指していきます。

中期計画の基本方針(FY2023〜FY2025)

最初の3ヶ年の中期経営計画の基本方針についてです。事業価値拡大策のキーワードは「新製品・新商品の開発と成長投資」となります。

医薬品事業については、この後ご説明する新製品投入による拡大継続、健康食品事業では、未参入分野への進出と売上拡大、化学品事業では、成長が期待される分野への集中継続を行います。また、これらを支える研究開発・生産技術力向上への注力・加速、人材育成・製造設備の強靱化推進も行っていきます。

企業価値拡大策については、3年後の2025年5月期に、売上高70億円以上、営業利益6億円以上、営業利益率8.5パーセント以上、自己資本比率35パーセント以上、ROE15パーセント以上、配当性向20パーセント以上を目指して進めていきます。

FY2025 数値計画

3年後の数値計画です。売上高は71億円、営業利益は6億円、営業利益率については8.5パーセントとしています。

今期については、当面の原材料費・エネルギーの高騰や、円安による為替の影響などに加え、事業拡大に向けた人材登用、あるいは営業・開発の両方に経費を投下することで、利益は減少となりますが、売上総利益率を維持した上で、付加価値の高い製品の拡販を進めることで、各事業の売上を伸ばし、営業利益を伸ばしていきます。

投資計画 & キャッシュアロケーション

今後は営業キャッシュフローを着実に積み上げ、設備投資と研究開発に投下することで、次の成長につなげていきます。

設備投資計画については、この後ご説明しますが、医薬品の製造設備に3億円を投資するとともに、他事業の設備投資、あるいはインフラの見直し、老朽化設備の更新、品質検査関連等々を合計すると約7億3,000万円の投資を見込んでいます。

また研究開発費は1億2,000万円の増額を見込んでいますが、開発テーマの新規発生や開発中の案件の進捗状況により、このあたりは柔軟に対応する予定です。

医薬品事業の成長戦略

各事業の戦略に移ります。まず医薬品事業ですが、商社機能とメーカー機能を併せ持つという特徴を活かします。

成長戦略としては、1つ目に、輸入原薬の横展開によるシェアを拡大していきます。2つ目に、特異技術による複数の自社製品を立ち上げていきます。3つ目に、治験薬の受託合成によるお客さまの新薬開発をサポートしていきます。これは、将来の量産委託優先権を念頭に置いて展開していきます。

4つ目に、リスク対策および安定供給のために、他拠点からの調達ネットワークを構築していきます。5つ目に、新規の海外調達先に対する日本の品質基準クリアへのサポートを進めていきます。

利益計画の概要ですが、売上高においては、年平均6パーセント以上の成長を目指します。また、営業利益率については、先ほどご説明したマイナス要因を受け、一時的に減少しますが、増収を継続し、営業利益を維持しつつ、次の3ヶ年計画の軸となる自社加工製品の立ち上げを進めていきます。したがって、3年後の売上目標は35億円、営業利益目標は3億6,000万円を目指して進めていきます。

医薬品事業:開発案件

医薬品事業のご説明の最後に、開発案件の最新状況をご説明します。現在、合計15品目の自社加工製品の立ち上げを予定しており、この量産設備導入を目的に、約3億円の設備投資を計画しています。なお、設備投資金額は直接の量産設備のみの金額となるため、周辺環境設備を含めると本金額以上となる可能性があります。

この15品目の新製品立ち上げの売上目標としては、約6億円を見込んでいますが、この数値がピークではありません。4年目以降の売上の伸びも期待しているところです。また、繰り返しとなりますが、次の3ヶ年計画の成長基盤となるため、確実に立ち上げを進めていきます。

さらに、新薬向けの合成案件獲得を進めています。前期の実績として、合計で9件の対応を完了しています。長期テーマのため、現時点で量産までには至っていませんが、将来の布石として積極的に取り組んでいきます。

健康食品事業の成長戦略

健康食品事業の戦略をご説明します。1つ目に、通販業者向けのODM製品を拡販していきます。2つ目に、原材料メーカーとの協業による顧客獲得を進めていきます。3つ目に、機能性表示に対応した製品の企画提案を進めていきます。4つ目に、先ほどからご説明している、未参入分野である高齢者向け製品の拡販、およびそれに伴って必要となる、容量増に対応できる「Tパウチ・ショット」の拡販を進めていきます。

これにより工場の稼働率を上昇させ、利益率の改善を進めていきます。3ヶ年最終年度の売上高目標は10億円、営業利益目標は7,000万円を目指して進めていきます。

健康食品事業:注力分野

健康食品事業の注力分野として、未参入であり、今後の成長が期待できる高齢者向け分野の参入を進めていきます。高齢者向けの栄養補給食品の市場規模は、グラフのとおり順調に伸びてきており、今後の伸びも期待しています。高齢化による老化の予防がキーとなり、現在さまざまな開発依頼がきています。

この分野に関する開発のキーワードとしては、極力少ない量で手軽にカロリー・たんぱくを補える製品が求められており、現在「Tパウチ・ショット」を軸に処方および製造方法を確立すべく開発が進行しています。案件が具体化したら、あらためてご報告します。

化学品事業の成長戦略

化学品事業の成長戦略についてご説明します。今後の成長が見込まれている半導体関連、エネルギー関連等を中心に、海外のイオン交換樹脂メーカーと共同開発が進行中です。共同開発先は、ヨーロッパを中心に東アジア・インド等で、合計7社の海外のイオン交換樹脂メーカーと共同開発が進行しています。

その中には中長期テーマが当然含まれるのですが、今後徐々に売上につながっていく予定でいます。テーマとしては、他社では対応が難しい特殊な液体処理案件が多い傾向にあります。それらを着実に進めることによって、3ヶ年の最終年度の売上高目標26億円、営業利益目標1億7,000万円を目指して進めていきます。

なお、育成事業である接着剤を中心とした機能材関連については、現在順調に案件を獲得中です。2024年5月期の営業利益黒字化を目指して進行しています。

化学品事業の技術・用途

以前の決算説明会などで化学品事業についてご説明した際に、「事業の中身がわかりにくい」というご意見がありました。そのため、ここで簡単に技術・用途についてご説明します。

化学品事業については、当社の技術のコアである分離精製を主軸として展開しています。イオン交換樹脂や分離膜を中心とした方法・部材提供・装置化まで含めて対応しています。

用途については、有害物質の除去、半導体微細化機能の向上、医薬品の製造、CO2排出量削減など多岐にわたっています。販売先は、スライド右下のグラフに記載のとおり、関連商社が約30パーセントで、化学品メーカー、プラントメーカーと続いています。

化学品事業:注力案件

化学品事業の注力案件についてです。先ほどお伝えしたとおり、エネルギー・半導体・燃料業界向けの販売に注力していきます。具体的には、エネルギー業界向けには高架橋度のイオン交換樹脂、半導体関連向けには高純度のイオン交換樹脂、燃料業界向けにはバイオディーゼルの精製装置に特に注力していきます。

開発案件数としては7案件、3年後の売上は6億3,200万円を目指していきます。また、これとは別に100件を超える開発案件を抱えているため、次の中長期計画に向けて、しっかりと進めていきたいと考えています。

生産体制・コンプライアンス強化

生産体制・コンプライアンス強化についてです。生産体制については、お伝えしているとおり、この3ヶ年で医薬品を中心に積極的に設備投資を行う予定です。それに伴い、新規製造ラインの立ち上げとその最適化、生産量増加に伴うインフラ・物流戦略の再構築、原価低減への取り組みを行います。

コンプライアンス・品質管理体制については、法令遵守体制を継続し、生産体制および今後新たに制定される法令を確認しながら、抜け漏れのないよう対応していきます。抜け漏れのない品質管理体制の維持・強化については、ISO・GMP対応の中で、教育訓練も兼ねた監査やパトロールなどを定期的に実施していきます。文書管理体制については、上場時に基盤ができ、現在運用しているのですが、より効率的に、抜け漏れ防止をテーマに進めていきます。

管理体制については、人材育成、職場環境の改善、従業員満足度の向上を継続して進めていきます。

株主還元方針

株主還元の方針については、先ほどお伝えしたとおり、配当性向20パーセント以上を目標に安定的な配当を目指します。

以上のように、新中期経営計画を定めました。この実現のために、これらの施策を着実に実行していきます。株主さまをはじめ、ステークホルダーのみなさまのご支援に感謝申し上げますとともに、今後とも変わらぬご支援をお願い申し上げます。

まだまだ暑い日が続きますが、みなさまご自愛くださいますようお願い申し上げます。以上でご説明を終了します。ありがとうございました。

質疑応答:中期経営計画における営業利益率の達成と設備投資について

質問者:中期経営計画について2つおうかがいします。1つ目は、本日のご説明ですと、医薬品事業の営業利益率が下がっていき、食品事業と化学品事業が上がっていく売上構成になっています。3年後には全体の営業利益率を8.5パーセント以上伸ばすとのことですが、これを達成するために最も重要なポイントを1つ挙げるとしたら何だとお考えですか? 

2つ目は、今後の医薬品事業への設備投資額が出ていますが、どのあたりの期で設備投資額が多くなる予定ですか? また、今期予想の中に設備投資の効果は見込んでいますか?

青木:まず、2つ目のご質問についてご回答します。設備投資額のピークは2024年になる予定です。今期の後半から来期のピークに向けて、だんだんと3億円の設備投資を進めていく計画ですので、その効果が出てくるのは2025年頃になる予定です。

1つ目のご質問については、この計画の中では化学品事業の売上が一番伸びる予定です。先ほどお伝えしましたが、エネルギー・半導体・燃料の3つを柱として開発を進めていますので、まずはこれを確実に取っていくことが必要だと思っています。

一番のキーはそこだと考えていますが、一方で医薬品事業の設備投資が2024年5月期にピークを迎えます。医薬品事業も将来的な成長戦略の中で非常に重要な柱となっていきますので、間違いのないよう着実に設備投資を進めていくことも大事な要素だと考えています。