2022年3月期決算説明会

司会者:ただいまより、株式会社True Data2020年3月期決算説明会を始めさせていただきます。最初に出席者のご紹介をいたします。

代表取締役社⾧の米倉裕之でございます。執行役員・経営戦略部⾧の倉沢学でございます。本日は、代表取締役社長の米倉裕之がご説明いたします。では、よろしくお願いします。

2022年3月期決算 ハイライト

米倉裕之氏(以下、米倉):代表取締役社長の米倉です。本日は、決算概要、最近のトピックス、今期の見通しの3つをご説明いたします。

スライドには、2022年3月期決算のハイライトを記載しています。

1つ目の売上は、13億1,300万円で10期連続増収となり、過去最高を更新しています。

2つ目のストック型売上比率は、78.7パーセントに向上しました。主力サービスのストック型売上が順調に成⾧しています。

3つ目の営業利益は2,200万円と通期黒字転換しました。経常利益、当期純利益も黒字転換しています。一言で言いますと順調な決算で、ほぼ上場時にお約束した業績予想どおり着地しています。

損益計算書サマリー

スライドには損益計算書のサマリーを、前年度の数字と比較して記載しています。売上高は13億1,300万円で、前期比プラス12.7パーセントと過去最高となりました。営業利益以下の利益も、すべて通期で黒字転換となっています。

営業利益と経常利益が2,200万円で、当期純利益は1,500万円と、お約束したとおりにすべての利益が黒字になっています。

通期予想に対する達成率

通期予想に対する達成率です。2021年12月16日に開示した通期業績予想に対して、ほぼ計画どおり着地しています。営業利益と経常利益はごくわずかに未達ですが、ほぼ計画どおりとお伝えできるよい結果だと思っています。

ハイライト① 売上高推移

売上高の推移です。新型コロナウイルスの影響を乗り越えて、True Data事業は10期連続増収を継続しています。10年間の年平均成長率は、13.9パーセントとなっています。

ハイライト① 売上高推移:四半期別

スライドには、売上高の推移を四半期別に表したグラフを記載しています。四半期単位ではスポット売上の動向により多少凹凸しているものの、順調に成⾧を継続しています。

ハイライト② ストック型売上高推移

ストック型の売上高の推移です。主力のストック型売上は堅調に推移し、10億円を突破しました。ストック型売上比率も78.7パーセントまで上昇しています。過去5年間の年平均成長率は、20.6パーセントとなっています。

ハイライト② 小売業向けストック型売上高推移:通期累計

小売業向けストック型売上高の推移です。こちらも順調に成長を継続しています。

ハイライト② 小売業向けストック型売上高推移:四半期別

小売業向けストック型売上高の推移を、四半期別に分けたものになります。こちらも順調に成長を継続しています。

ハイライト② 消費財メーカー向けストック型売上高推移:通期累計

消費財メーカー向けストック型の売上高推移です。こちらも順調に成⾧を継続しています。主力商品「イーグルアイ」の契約社数は順調に伸⾧し、130社に到達しました。

ハイライト② 消費財メーカー向けストック型売上高推移:四半期別

四半期別の推移です。順調に成長を継続しており、先ほどお伝えしたとおり、「イーグルアイ」の契約社数が130社に到達しています。

(参考)主要ソリューションの既存顧客売上拡大およびストック型売上推移

主要ソリューションの既存顧客の売上拡大およびストック型の売上推移のチャートです。こちらのスライドでは、当社の売上成長の特徴を2つのグラフで表し、記載しています。スライドの左側は「イーグルアイ」の売上高上位5社のお客さまの、5年間の売上推移のグラフです。お客さま単位の売上も、毎年少しずつ拡大しながら積み上げてきていることがおわかりいただけると思います。

右側のグラフは「イーグルアイ」「ショッピングスキャン」の新規顧客の売上を、各年度ごとに分けて整理したものです。毎年新規のお客さまを着実に獲得し、ストック型の売上を積み重ねてきていることがおわかりいただけると思います。

ハイライト② 売上高増減分析:対前期

対前期の売上高増減分析のチャートです。スライドに記載しているグラフは、左側に前年度の売上高を、右側に2022年3月期の売上高を表記し、その増減を分解して示したものになります。

左から2つ目と3つ目には「ショッピングスキャン」等と「イーグルアイ」を記載しています。このような主力サービスが伸びたことで、売上成長を牽引しました。スポット型売上は新型コロナウイルスの影響もあり、わずかですが減少しました。

ハイライト③ 営業利益推移

営業利益推移についてご説明します。スライド左側に記載しているのが、営業利益の最近の推移を示したグラフです。2,200万円の営業黒字で着地できました。一昨年に完了した基幹システム「オンプレミス」からクラウドへの全面移行により、大型の減価償却費を計上しているため、利益を押し下げています。

スライド右側のグラフは、基幹システムの減価償却費を差し引く前の償却前営業利益を表しています。今回の決算では、減価償却前の営業利益は1億5,700万円の黒字となっており、基幹システムの減価償却費が利益を押し下げていることがおわかりいただけると思います。こちらの減価償却は2023年3月期に完了します。

ハイライト③ 営業利益増減分析:対前期

対前期の営業利益増減分析です。こちらのグラフは、先ほどの売上高の増減分析と同じように、営業利益の増減分析をしたグラフです。左端に前年度の営業赤字6,400万円、右端に2022年3月期の営業利益2,200万円を表記し、その増減の中身を分解して示しています。売上高の増収効果に加えて、ITコストの効率化などにより、黒字への転換ができました。

ハイライト③ コスト構造:対前期比較

コスト構造の対前期比較です。ここでは、前ページのコスト構造を対前期で比較しています。人件費、減価償却費が増加しているのは、成長投資です。その他の売上原価は、ITコスト効率化などの取り組みの成果により、前期比で減少しています。

【KPI】一年間に集信された購買データの合計金額(年間レシート規模)

このスライドに示したKPIは、1年間に集信された購買データの合計金額、つまり年間レシート規模のことです。当社は小売業の購買データプラットフォームですので、ビジネスにおける最も重要な基盤は、小売業での購買データです。コネクトしている購買データ量が、非常に大きな基盤になっています。

当社ではこの合計金額を重要KPIと設定し、目標管理をしています。今期は4兆8,000億円を突破し、順調に伸ばすことができました。

(参考)貸借対照表サマリー

貸借対照表のサマリー、すなわちバランスシートの状況です。昨年の上場により、資本金と資本剰余金が増加しています。これにより、自己資本比率は71.3パーセントまで向上しています。

(参考)キャッシュ・フロー計算書サマリー

キャッシュフロー計算書のサマリーです。ポイントについてご説明します。営業キャッシュフローと投資キャッシュフローを合計したフリーキャッシュフローは、8,000万円となりました。

また上場時の新株発行により、財務キャッシュフローは3億3,200万円を確保しました。結果として、現金および現金同等物の期末残高が4億1,300万円増加しました。今後の成長投資に備えていきたいと考えています。

(参考)当社の主要サービスの販売状況の推移

22ページ、23ページの参考資料は説明を割愛します。

(参考)人員数推移

その他の経営指標も掲載していますので、資料をご確認ください。

トピックス 最近の主な取り組み(22/3期 第4四半期以降)

ここからはトピックスについてご説明します。当社は今期も多くの取り組みを行ってきました。当社の最近の取り組みを、トピックスとして簡単にご紹介します。

2022年3月期第4四半期以降の主な取り組みです。ここでは第4四半期以降の活動の中から、代表的なものをご紹介しています。赤い吹き出しでピックアップと書いてあるトピックについては、後ほど具体的な内容を少しご紹介します。

トピックス 今期の取り組み(22/3期 第1四半期~第2四半期)

26ページ、27ページのスライドは、第3四半期の決算説明会でもご紹介した内容です。

トピックス 今期の取り組み(22/3期 第3四半期)

Pick Upと書いてあるトピックは、今回の資料にも内容を添付しています。

トピックス Pick Up①

「Pick Up①」として、ベトナムFPTソフトウェアとの業務提携、FPTソフトウェアグループのTRANDATAへの出資についてご説明します。

当社は小売業の購買ビッグデータに関するプラットフォーム事業を日本で展開していますが、このような事業の特徴として、「国境を越えてどんどん広げていきやすいこと」があると思っています。

日本にいながらにしてベトナムのデータがわかる、また逆もできるということは、非常に多くのメリット・価値を提供できると思っており、同じようなビジネスモデルをベトナムでも展開し、国境をまたがってデータをつなげていけたら素晴らしいということで、この事業に着手しました。

トピックス Pick Up②

「Pick Up②」についてご説明します。当社ではデータガバナンスセキュリティをしっかり対策した上で、大企業だけではなく中小企業のみなさまから、個人のみなさままで、多くのお客さまへ安心・安全に価値をお届けしていきたいと考えています。

その中で、当社では「ウレコン」という無償のサービスをインターネットで展開しています。500カテゴリものいろいろな日用品・食品、その他の購買データが閲覧できるサービスです。どの地域で何が今、一番売れているのか、どのような人たちが買っているのか、ファンがついているのかといった情報を知ることができるサイトです。

このサービスの年間登録者数が、現在どんどん増えていますので、トピックスとしてご紹介しました。

トピックス Pick Up③

「Pick Up③」は、プラネットと業務提携し、POSデータクレンジングサービスを共同で開発したことについてです。

当社とプラネットは、消費財メーカー、卸売業、小売業、消費者といった、いわゆるサプライチェーンにおけるデータとテクノロジーを道具として活用できれば、いろいろなお客さまが、DXの価値を享受できるようになると考えました。

そこで、各企業のDX推進の課題となっている部分を、プラネットとTrue Dataが手を合わせれば解決できるのではないかと考え、POSデータクレンジングサービスを共同で開発しました。このサービスをお客さまに届けることで、業界全体のDXが進むのではないかと考えています。このような社会的課題を解決するために、業務提携を行ったという発表です。

トピックス Pick Up④

こちらの説明は、本日割愛します。

トピックス Pick Up⑤

こちらも割愛します。

トピックス Pick Up⑥

こちらも割愛します。

今期経営計画の概要

ここからは、すでに始まっている2023年3月期の見通しをご説明します。今期経営計画の概要です。今期の業績予想のご説明に入る前に、当社の今期経営計画と重点取り組みについてご説明します。

まずマクロ環境ですが、当社の主要顧客である消費財メーカーおよび小売業の景況感は不透明です。ご存知のとおり、インフレや円安による原価高、光熱費高騰などが厳しく、お客さまやビジネスの状況には十分な留意が必要だと考えています。

我々は、お客さまの予算もかなり影響を受けるのではないかと予想しています。一方で、当社の事業そのものにはDX推進の追い風が強く、今期も「攻めの経営」を継続し、中長期的な競争力を強化する年度と位置づけています。

ストック型のサービスを着実に積み上げながら、成長に向けて「3つの重点施策」に取り組むつもりです。

1つは、購買ビッグデータの「面」の拡大を目指すことです。こちらに関しては、重点KPIとして「購買データ金額」を設定し、目標値の達成を目指していきます。

2つ目は、将来の成長のタネである新領域の立ち上げを進めることです。アライアンスも効果的に活用していきます。

ビッグデータホルダーの強みを活かし、エコシステムを念頭に置きながら、アナリティクスや広告のような新領域でアライアンスを組みつつ立ち上げていきます。また、もう1つの日本のモデルを海外で立ち上げます。

3つ目は、成長投資として人材への投資や専門家への投資を強化します。市場で戦える強い人材を獲得し、育成していきます。加えて、これから企業のあり方はどんどん進化していくのではないかと考えているため、柔軟な雇用形態を活用した組織力の強化を図っていきたいと思っています。

総論としては、ストック型売上の積み上げにより一定の利益を確保しながら「3つの重点施策」に基づく中長期的な成長に向けた取り組みを優先する年度とします。

今期業績予想

今期の業績予想です。売上高は、前期比プラス1億5,600万円の14億7,000万円で、11.9パーセントの成長と高成長を継続する計画です。営業利益は、前期比プラス1,200万円の3,500万円で、57.5パーセントの成長と、小幅ながら増益を計画しています。

各利益とも額は小幅ですが、しっかりと増益を目指していきます。

売上高計画と過去トレンド

売上高の計画と過去のトレンドです。1章でご説明した10年間の売上高推移に加えて、今期の計画をスライド内チャートの一番右に記載しています。前期比プラス11.9パーセントの成長を考えています。

ストック型売上高計画と過去トレンド

ストック型の売上高計画と過去のトレンドです。ストック型売上も前期比プラス12パーセントと成長を継続する計画です。

小売業向けストック型売上高計画と過去トレンド

小売業向けストック型売上高計画と過去のトレンドです。順調に成長を継続する計画になっています。

【KPI】「購買データ量」の目標

KPI「購買データ量」の目標です。小売業の購買データは当社ビジネスの基盤です。「購買データ量」を重要KPIとして目標管理を継続していきます。今期末の目標は5兆1,000億円としています。

消費財メーカー向けストック型売上高計画と過去トレンド

消費財メーカー向けのストック型売上計画と過去のトレンドです。順調に成長を継続する計画です。イーグルアイの契約社数は142社を目標にしています。

営業利益計画と過去トレンド

営業利益計画と過去のトレンドです。1章でご説明した5年間の営業利益推移に加えて、スライド内チャートのそれぞれ一番右側に今期の計画を記載しています。

営業利益は小幅な増益を計画しています。今期までは減価償却費の負担が大きかったのですが、その負担が軽くなる2024年3月期からは利益が出やすいフェーズに入る見込みです。

この後の4章および5章は、会社や事業の概要をご説明するスライドです。今回は時間の関係でご説明を割愛しますので、後ほどご覧ください。

以上で私からのご説明を終わり、この後、質疑応答に入りたいと思います。ぜひともご質問いただければと思います。よろしくお願いいたします。

質疑応答:業績の季節要因について

司会者:「第3四半期まで赤字でしたが、第4四半期で黒字転換しました。計画どおりとのご説明ですが、御社は第4四半期に業績が偏るような季節要因があるのでしょうか? 今期も同じような業績の推移になる計画ですか?」というご質問です。

米倉:特に当社の場合、第4四半期に売上が偏るような季節要因があるわけではありません。ただ、当社のビジネスモデルはストック型売上比率が高く、少しずつ売上を積み上げていくことになりますので、四半期が進むごとに少しずつ業績が伸びる傾向があります。

今期についても、売上・利益ともに上期よりも下期のほうが大きくなると見込んでいます。特に今期は4月に10名が入社しており、第1四半期、第2四半期はコスト先行となりますが、通期ではしっかり増収増益を達成する計画となっています。

質疑応答:FPTソフトウェアやプラネットとの提携について

司会者:「最近、FPTソフトウェアやプラネットとの提携がリリースされていますが、いつ頃から、どのくらい業績への効果が出てくると考えていますか?」というご質問です。

米倉:どちらもプレスリリースしていますが、数字についてはまだ開示できる段階ではありません。ただし、どちらの取り組みも中期的なポテンシャルが大きいと思っています。

時期についてですが、プラネットは、今期の下期にはある程度成果を出していきたいと考えています。FPTソフトウェアは、データを綺麗にする必要があったり、新しい仕様での取り組みになるため、立ち上げに少し時間がかかると思っており、数字として出てくるのは来期からになります。

数字等に影響を与えるような進展があった際には、あらためて適時開示等でみなさまにご連絡していきたいと考えています。

質疑応答:売上総利益率の改善について

司会者:「損益計算書サマリーを見ると、売上総利益率が前期の43.1パーセントから50パーセント近くまで改善していますが、この要因を教えてください」というご質問です。

倉沢学氏(以下、倉沢):売上総利益率が、前年度の43.1パーセントから今年度は49.4パーセントまで上がっているということで、上がった理由として、1つは売上が計画どおり順調に伸びたことが挙げられると思います。我々は、固定費の損益分岐点を超えると非常に利益が出やすいビジネスモデルのため、売上が計画どおり伸びたことで利益率が上がったのが1点です。

もう1点は、17ページをご覧ください。原価の内訳の中で「その他売上原価」が実額で減っていることが、売上総利益率のアップに寄与しています。具体的には、システム運用保守費、サーバー利用料、ライセンス使用料といったところでコスト削減できています。当社では数年間、ITコストの効率化に関する取り組みを進めてきたため、その効果が出てきたと思っています。

また、クラウドに移行したことも原価率低減に一定程度寄与していると思っています。

質疑応答:「イーグルアイ」のポテンシャルについて

司会者:「『イーグルアイ』の契約社数は順調ですが、売上の天井のようなものはありますか? どの程度まで売上が伸びるポテンシャルがあるのか教えてください」というご質問です。

米倉:まだまだ売上の天井が見える状況ではないと思っています。今期はスーパーマーケットの開拓をさらに進めますが、データが揃ってくると、食品・飲料メーカーのお客さまがさらに見込めると考えています。

食品・飲料メーカーは数も多く、「イーグルアイ」の売上ポテンシャルは大きいと考えています。

質疑応答:コロナ影響について

司会者:「コロナ影響は結局どの程度だったのでしょうか?」というご質問です。

米倉:当社のお客さまである消費財メーカーの中には、コロナ影響を受けてマーケティング予算を縮小した会社がありました。具体的な影響は15ページにお示ししましたが、スポット型売上が前年比で減少となったのは、お客さまのマーケティング予算の縮小が影響したと捉えています。主力サービスについては、昨年度はほとんど影響はありませんでした。

質疑応答:円安や原価高の影響について

司会者:「円安や原価高の影響はあるのか教えてください」というご質問です。

米倉:当社への直接的な影響は小さいものと考えています。売上原価の中にドル建ての取引が少しだけありますが、全体に与える影響はそれほど大きくないという状況です。

むしろ消費財メーカーや小売業のお客さまへの原材料高、光熱費高騰の影響が大きく、マーケティング等のDX予算への影響が出てくる可能性は少々懸念しています。

質疑応答:減価償却前営業利益の減少について

司会者:「2023年3月期の減価償却費反映前の営業利益が、前期より若干下がる要因を解説してください。また、前期に対して今期の減価償却費の増減を教えてください」というご質問です。

倉沢:減価償却前営業利益は若干下がっていますが、これは償却の分を足しても若干の減益、つまり正味の営業利益が若干下がっているということです。先ほど米倉が申し上げたように、今期は攻めを継続するということで、人材投資等の先行投資で若干固定費を増やしながら進めていくためです。

前期に対して今期の減価償却費の増減ですが、減価償却費そのものの数値を開示しておらず、42ページの右のグラフから左のグラフを引き算した値が、売上原価の中の減価償却費ですので、その数字をご覧いただければと思います。

質疑応答:ストック型売上が増加した際に粗利率について

司会者:「2022年3月期は粗利率が49.4パーセントと大きく向上した背景を教えてください。また仮にストック型売上が100パーセントになった場合、粗利率は何パーセントを目指せるのでしょうか?」というご質問です。

倉沢:さきほども粗利率の質問がありましたが、もう一度お答えします。1つは、先ほど申し上げたように、売上が計画どおりにしっかり伸び、固定費の負担を超えて利益がしっかり出る収益構造になってきたためです。

もう一度17ページをお示ししますが、この中で原価の実額が減っているのが「その他売上原価」で、2,300万円減っています。これが寄与しており、その中身はITコストの効率化で、具体的にはシステム運用保守費、サーバー利用料、ライセンス使用料です。ここ数年の効率化の取り組みが進んできた結果が効いていると思います。

次に、100パーセント、ストック型売上になったらということですが、我々のビジネスはストック部分だけではなく、ストックに入る前の初期費用の部分、それからアドホック型で毎年いただいているスポット型売上があるため、現実的にすべてストック型売上にはならないと思います。

それを前提とした上で、粗利率がどこまでいくかですが、新規事業は別として、今のビジネスの状況から見ると、粗利率の上限はこのまま伸びれば60パーセントは超えてくると思っています。

質疑応答:基幹システムの大型投資について

司会者:「基幹システムの投資について、2023年3月期で償却を終えるとのことですが、こうした大型投資は数年おきに行われるのでしょうか? それとも一過性と考えてよいでしょうか?」というご質問です。

米倉:数年おきに大きな基幹システムに対する投資を行うということではありません。「クラウド」というような新しい考え方、新しいビジネスモデルが世の中に出てくるということを察知していち早く手を打ったのが、今回のものです。

このように、構造上の大きな転換が行われる場合、そのメリットを享受するために大型投資をしてでも、そちら側の世界に移行することはあると思いますが、基本的にはクラウドのままどんどん進化していくのが世の中の動きだと思っています。ITに対する構造変化が変わらない限りは、大型投資はしばらくないと考えています。

質疑応答:小売購買データの獲得について

司会者:「小売購買データの獲得が4.8兆円と莫大ですが、購買データ取得の難易度を教えてください。小売から購入しているだけなのか、貴社だから取得できる理由があるのでしょうか?」というご質問です。

米倉:非常に本質的なご質問だと思います。DXという言葉をよく聞くようになり、「守りのDX」「攻めのDX」という言葉で解説されることがあります。

「攻めのDX」は、データやテクノロジーを道具として使って、新しい価値を生み出すということで、売上を伸ばす、お客さまを増やすというのは攻めになります。ですから、マーケティング領域では売上を増やしたりお客さまを増やしたりするため、そうしたところにデータやテクノロジーを使うのは「攻めのDX」になります。

一方で「守りのDX」は何かというと、効率化です。人が担当していたものをテクノロジーに任せるなど、データやテクノロジーを使って効率を上げていくようなものを「守りのDX」と考えています。

また、これはあまり語られることがないのですが、「プラットフォームのDX」という考え方があります。こちらは、データをコネクトしていくような考え方です。データとテクノロジーがあればよいのではなく、それを繋げることによって新しい価値が生まれていくという世界があると思っています。

実は我々は、小売業のデータをどんどんコネクトして使えるようにして、いろいろなかたちで小売業やメーカーへの価値を生み出しており、それ以外の価値も生み出しています。これは、データをコネクトするだけではなく、データガバナンスや契約関係もしっかり取り組みながら、このようなコネクトの世界を実現しています。

我々は、「日本のある地域で、こういったカテゴリーではこういったお客さまが増えている、こういった人が買っている」といったデータを「ウレコン」というサイトでみなさまに提供しています。それぞれ得られるデータは、同じ商品であってもネーミングが違ったかたちでサーバーに入っており、その分類の仕方も違うため、バラバラのデータになります。

こういったデータを俯瞰して、日本全体ではどうなっているか、ある地域の生活者はどうなっているかといったかたちにデータを整え直すのは非常に難しいことだと考えています。

そうしたことができる仕組みをすべて整えているため、当社がデータを取得できていると考えています。

質疑応答:ターゲットとする消費財メーカーの規模などについて

司会者:「ストック売上は消費財メーカー向けが多いと思いますが、ターゲットとする消費財メーカーの規模、業態、社数はどの程度でしょうか? 導入する際の主な導入理由はどのようなものでしょうか?」というご質問です。

米倉:「イーグルアイ」というものがあります。主に大手企業に使っていただいている部分はありますが、準大手企業や中堅企業など、どんどん広がっていると思っています。

我々は、データもテクノロジーも道具だと思っていますので、その道具を使える人たちが増えていくということは、みなさまがデータマーケティングに対して強くなっていくということですので、それを推進するために事業を展開しているようなところもあります。

最近は「令和の時代の読み書き・そろばんは、データとマーケティングである」というようなキーワードも聞きますが、読み書き・そろばんのように、いろいろな方がどんどん使えるようになっていくのは非常に喜ばしいことだと思っています。

主な導入理由についてです。データの規模が非常に大きく、速報性が高いデータとなっています。「イーグルアイ」では、2日前の購買状況まで把握できる速報性を持っており、しかもあまり売れていない商品でもデータとして見えるため、売上が小さな商品は出てこないといったことはなく、地域の企業の商品でもデータが見えるため、それをもとに考えられるというかたちになります。

今までは、自分たちがどういう商品を作って、どのように納品したかまではわかりましたが、小売業の店頭でどのように買われているかまではイメージすることができない部分がありました。それがわかるようになるわけです。

「自社の商品がデータ分析の結果がどうなっていて、競合の商品のデータ分析の結果がどうなっているから、現在の商品や新商品に対しての販促や商品開発はこうしたらいいのか」ということがわかることで、新商品作りにも活かせますし、新しいプロモーションにも活かせます。打ち手を考えるときに、勘や専門性だけではなく、データを軸にした判断もできるようになっていくと考えています。

また、メーカーの営業部は、自社商品を小売業に扱っていただくことが仕事になるわけですが、その際に、データを軸にした商品提案のほうが説得力があります。まだまだ、多くの企業がそうしたデータに基づく商談資料を作って小売業に対してご提案できている状況ではないと思っておりますので、それができるようになり、消費財メーカーとしては自社商品の強みを小売業としっかり共有でき、ロスや返品もなく、売れるものがきちんと売れていくといった世界になるのではないかと思っています。

質疑応答:2022年3月期の新規顧客の売上について

司会者:「14ページの右側の図ですが、2022年3月期の新規顧客の売上が少なく見えます。全体として売上は順調とのご説明でしたが、何か理由はありますか?」というご質問です。

倉沢:14ページの右側のグラフは、地層が積み上がっているようなグラフですが、2022年3月期の獲得顧客の部分が薄いのではないかというご質問ですが、このグラフ自体は事実ですので、見え方としては売上は若干薄くなっています。

2021年3月期の最後のほうに新規顧客になっていただいたお客さまが、そのあとの2022年3月期に通年でストック型売上が効いてきてるということがあり、2021年3月期中に新規顧客になったお客さまの売上は、このグラフでは2021年3月期の新規顧客の部分に入ります。

ですので、その部分が増えているのはおわかりになると思いますが、新規顧客の獲得タイミングによって、グラフ上はこうしたことが起こり得ます。

現場で見ている立場としては、ビジネス上、何か問題が起きているということではありません。

質疑応答:「イーグルアイ」の売上成長率について

司会者:「『イーグルアイ』の売上成長率が、最近3期で26.5パーセント、17.8パーセント、13.0パーセントと下がってきていますが、成長鈍化と見ていますか?」というご質問です。

米倉:3期前が、特に伸びが大きかったため成長鈍化に見えてしまいますが、当社としては順調に2桁成長を続けていると思っています。ただし、今後も成長を続けるためには、購買データのさらなる充実が課題だと考えており、今期、スーパーマーケットの購買データを重点的に獲得していく戦略になっています。

これにより、食品・飲料メーカーへの「イーグルアイ」の拡販が進むと考えています。

質疑応答:減価償却の減少について

司会者:2023年3月期までに大型の減価償却が終わるとのことですが、具体的にどのくらいまで減るのでしょうか? また、2024年3月期から利益が出やすくなる見込みとのことですが、利益水準の目線があれば教えてください」というご質問です。

倉沢:まず、2024年3月期に減価償却がどこまで減るかですが、まだ開示していない見込み値であり確定数字ではないため、現時点の見込みですが、今期は年間の減価償却は1億円程度だと思います。この大型の減価償却がなくなるため、3,000万円くらいになってくるという見込みです。あくまで見込みですが、差分が7,000万円くらい出てくる可能性が高いと見ています。

もう1つ、2024年3月期の利益については、具体的な数字はまだ開示していませんが、単純計算では、お伝えしたとおり減価償却が約7,000万円減り、その分がまるまる利益に乗るかたちになると思っています。また、今期と同様に人材投資等をどこまで推進するかによって、最終的な数字は変わってくると考えています。

質疑応答:大手・中小小売業の購買データの割合について

司会者:「小売企業の購買データ取得ですが、大手小売業と中小以下の小売業とを比べると、大手からの取得は難しいのではないかと思うのですが、大手からのデータ購買状況はいかがでしょうか? 購買データ4.8兆円のうち、大手と中小に分けた場合、どの程度の比率なのでしょうか? また、大手から購買データを取得するための秘策はあるのでしょうか?」というご質問です。

米倉:大手小売業と、リージョナルドミナントという地域をしっかりカバーしている小売業に対する価値提供が、現時点でのメインとなりますので、中小以下の小売業とのデータ連携はそれほど多くないのが現状です。

ただし我々は、中小の小売業まで価値を提供して、データとテクノロジーで競争力をつけていただきたいと思っており、できれば地域の中小小売業にもどんどん裾野を広げていきたいと考えています。

質疑応答:今期の売上伸び率について

司会者:「今期の売上伸び率は、過去のCAGRに比べてやや鈍化していますが、保守的に見ているのでしょうか?」というご質問です。

米倉:極端に保守的に見ているわけではありませんが、昨今の原材料高、金利上昇、インフレなど、マクロ環境の変化が私たちのお客さまのビジネスに影響を与えることをある程度織り込んで計画を作成しています。

そこまでお客さまに影響が出ないのであれば、ここは変わってくると考えていますが、当社としては「こうなるであろう」というものを織り込んで計画を作ったほうがフェアだろうということで、そこを読んだ計画にしています。

これはストック型売上を中心とした成長イメージですが、今後の成長戦略として、例えばアナリティクスや広告など、新しい領域をさらに積み上げていくことも打ち出しています。

まだ開示する数字に織り込むところまで進んでいないため、織り込んでいる部分は限られていますが、それらが進捗して、今年度は実際に事例を作るということです。すでに広告領域では、観光DXの事例が出始めており、アナリティクス領域ではプラネットとの連携サービスを発表する段階に至っています。

今期は事例を作り、翌年にはサービスとしてスケールしていくスケジュール感で動いています。数字に反映できるタイミングが来れば、あらためてみなさまに開示したいと思っています。

質疑応答:ストック型売上比率の伸びについて

司会者:「ストック型売上の比率がずっと伸びていますが、今期計画では伸びが小さいと思います。その理由を教えてください」というご質問です。

倉沢:ストック型売上は、その言葉のとおりで、前年度の売上に対して新しいストック型売上が着々と積み上げられていくということですので、基本的にはあまり大きな解約がなければ年々増えていきます。

先ほどのご質問でも回答したとおり、私どものビジネス上にはスポット型売上も一定程度はありますので、ストック型売上だけで90パーセントや100パーセントになるとは思っていませんが、すでに80パーセント近くまで来ているため、伸びが鈍化してくるのはある意味では当然だと受け止めています。

米倉:ストック型売上の比率は高まっており、ここ自体の伸びは鈍化しているということと、一方で天井ではないということです。食品・飲料、その他のメーカーがまだまだいるため、大きなポテンシャルがあると思っています。

データのコネクト次第ですが、我々が価値提供できるデータの準備ができれば、それによってまた新しい売上の伸びが始まると考えています。

質疑応答:成長戦略の進捗状況について

司会者:「上場時に、今後の成長戦略としてアナリティクスや広告領域に期待しているとの説明がありましたが、半年経ったため、途中経過を教えてください」というご質問です。

米倉:こちらも繰り返しになってしまうかもしれないですが、広告領域とアナリティクス領域、ともにエコシステムの検討が順調に進んでいます。成長ペースはまだ見えていませんが、今期中に成約事例が立ち上がり、来期からサービスとしてスケール化していくスケジュールで動いています。

案件としては、すでに広告領域で観光DXの事例も出始めており、アナリティクス領域はプラネットとの連携サービスを発表する段階に至っています。

現在、マクロ環境がどんどん変化している部分がありますが、むしろこういうときこそ、その次の世界に向けて、また我々の成長だけではなく市場全体の成長を牽引するような進化が必要だと考えています。

広告市場、アナリティクス市場ともに、我々だけが独占するようなビジネスではなく、エコシステムとして、そこでチャレンジしているいろいろな企業と手を組んで、ともに未来を作っていくようなビジネスモデルですので、先が見えにくくなっているからこそ、新しい芽を立ち上げて、広告市場やアナリティクス市場全体に幅広く好影響をもたらすような取り組みに仕上げていきたいと考えています。

質疑応答:人材投資と利益との兼ね合いについて

司会者:「人材投資を積極的に進める方針は理解できますが、利益との兼ね合いをどう考えていますか?」というご質問です。

米倉:データとテクノロジーにフォーカスされがちな領域ではありますが、データとテクノロジーは道具に過ぎません。料理で考えると、材料があって、調理する人がいて、レシピがあって全部成り立つわけですが、テクノロジーが調理器具で、データが食材といったイメージです。

そう考えると「調理する人が大事だ」ということで、調理する人が必要になってきます。データサイエンティスト、データマーケターつまりマーケティング領域の知見を活かせる人、システムエンジニアなど、専門性を持った人材を組み合わせて作っていくビジネスのため、継続的な人材採用と育成が経営上の重要課題だと思っています。

人材への投資と人材育成は中期的な競争力強化につながると思っていますので、引き続きしっかり進めるということです。

一方で、上場企業のため、利益水準にも十分目配りしていくつもりですので、増収増益は確実に続けていきたいと考えています。

では、どのようにして確実な増収増益を達成するのかというお話ですが、中期的に目指す利益水準については、どこかのタイミングで投資家のみなさまに開示できるように準備していきたいと考えています。

質疑応答:利用者がリテラシーを高めるための施策について

司会者:「購買データを俯瞰して分析するツールを提供していますが、データに基づく仮説を立てて実証する部分は利用者のリテラシーに任せているように思います。利用者がリテラシーを高めていくための施策などはありますか? 仮説検証力を高めるためには何が重要になるのでしょうか?」というご質問です。

米倉:まさしくこの点が重要だと思っており、いくらデータがあって、テクノロジーがあって、それを使ってくださいと言っても、使えるものではないと考えています。教育や育成といったサポートが必要になります。

私たちは、みんながデータマーケティングの力をつけて幸せを享受できるような世界を作りたいということで、例えば企業と連携して、大学、専門学校、高校とともに、データとAIを使った取り組みを進めています。

自分たちのノウハウを自分たちだけで閉じずに、いろいろな方に共有しながら「こういうこともできるんだ」といったかたちで、道具の使い方を覚えてもらっています。「これをやったら、これができるんだ」ということを自社のみで囲い込まずに、かつ、契約やデータガバナンス、セキュリティもきちんと担保しながら、みんなが恩恵を受けられるようなエコシステムを作っていきたいと思っています。育成や教育が非常に大事だということで、我々もそこに力を入れています。

トピックスとして、大学と小売業とが連携した教育がスタートしたことなど、資料にいろいろと記載していますが、これだけではありません。こうした草の根運動のようなことをしっかりと進めながら、地道に取り組むことが、中長期的な大きな成長につながってくると考えています。