2022年3月期実績:サマリー

後藤秀隆氏:みなさま、こんにちは。代表取締役社長の後藤でございます。本日はお忙しい中、弊社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。それではこれより、株式会社松屋アールアンドディ、2022年3月期の決算説明をさせていただきます。

まず、2022年3月期実績のサマリーについてです。昨年度の特需だった厚生労働省からの公募案件によるアイソレーションガウン受注減少と、ベトナムにおいて新型コロナウイルス感染拡大対策が実施された影響を大いに受けました。

しかし、ベトナムにおけるコロナ対策規制解除などにより、11月度から順調に生産が伸びたため、アイソレーションガウンの影響を除けば前年比で増収増益となり、過去最高の売上高となりました。

2022年3月期実績:セグメント別売上高&利益

セグメント別の売上高および利益についてお話しします。縫製自動機事業は海外案件も少なく、研究開発費の増加が影響しました。

先ほどもお伝えしたとおり、アイソレーションガウンの公募案件が0となっており、売上高・利益ともに減少しています。しかし、アイソレーションガウンを除く既存事業の売上高は増加となっています。

「本社費&調整費」は、新規事業開拓投資のほか、連結グループ内の固定資産に係る未実現利益の増加によるものです。

2022年3月期実績:年間売上高の推移

年間売上高の推移です。血圧計腕帯、カーシート、エアバッグ及び縫製自動機の売上高は増収のまま推移しています。

特に2020年3月期以降については、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けても、血圧計腕帯を中心に売上高が増加となりました。

2022年3月期実績:月次推移

月次推移です。スライド左上のグラフにあるとおり、ベトナムにおけるコロナ規制対策のため、7月から10月まで工場の出勤者が大きく減少し、稼働率低下を招きました。しかし、11月以降は子会社の稼働率も回復し、生産が増加しています。

なお、2月の減少は、テト休暇により稼働日が少なくなることが原因となっています。

2022年3月期実績:売上高の増減

売上高の増減をグラフでお示ししています。縫製自動機事業は、前期比2億2,800万円の減少となっています。また、血圧計腕帯は、前期比5億2,500万円の増加で、プラス14パーセントとなっています。カーシートとエアバッグは、生産が一時的に減少しましたが、挽回生産などにより前期から増加しています。

2022年3月期実績:営業利益の増減

営業利益の増減です。こちらもアイソレーションガウン受注減少の影響を大きく受けています。各項目についてみていきますと、運賃については、前年度より運送費が減少しました。

また、研究開発費は3D縫製機、エアバッグ用の自動機開発などのMICにおける研究開発費が増加しています。一方、人件費は、海外において営業、工場担当者中心に採用活動を進めたため増加しました。

2022年3月期実績:経常利益の増減

経常利益の増減についてです。為替差益の増加がみられ、主にドル建て取引が多くなりました。これは年度末に向けて円安ドル高になったことが影響しています。また、支払利息の減少がありました。借入金の期末残高は増加していますが、期中に一部を返済したことにより減少となっています。

親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益減少による法人税などの減少があります。また、減損損失として縫製自動機事業関連における固定資産の減損損失を計上しています。

さらに、新型コロナウイルス感染症対応として、ベトナムにおけるコロナウイルス感染症対策規制により、従業員の宿泊用の消耗品や設備などの支出が増加しました。

2022年3月期:連結貸借対照表

2022年3月期の連結貸借対照表です。棚卸資産は、松屋ベトナムでの原材料、仕掛品などがエアバッグ新規取引開始などにより増加しています。

有形無形固定資産は、この度発表したベトナム新工場の土地代金支払による建設仮勘定の増加をみています。

また、借入金はベトナム新工場関連の土地代金の借入です。リース債務にはベトナムにおいてエアバッグ新規取引用の設備導入によるリース取引増加があります。

純資産は、当期純利益の計上にくわえ、円安による為替換算調整勘定の増加がありました。

連結キャッシュ・フロー計算書

連結キャッシュフローの計算についてご説明します。アイソレーションガウンの特需によって営業キャッシュフローが大きく増加し、当期は反動で減少しました。また、コロナ対策規制によるロックダウンがあったものの、規制解除後のベトナムでの業況回復により、通期では営業キャッシュフローがプラスとなりました。ベトナム子会社新工場のための投資による支出が増加し、同様に借入による収入が増加しました。

2023年3月期業績予想

2023年3月期の業績予想です。売上高については、ベトナム工場の安定稼働に加えて、自動機の海外営業に注力するほか、メディカルヘルスケア事業の新商品として多機能リハビリロボット事業を開始しました。最終的にはアイソレーションガウンの特需を除いて、過去最高を目指していきたいと思っています。

リスク要因としては、新型コロナウイルス感染拡大による上海のロックダウンの状況と、半導体の供給不足、あるいはウクライナ情勢などがあり、今後の状況は不透明ですが、安定成長を目指していきたいと思っています。

投資面においては、2024年3月に完成予定のベトナム新工場建設計画を推進させていきます。現在、土地取得のための代金の90パーセントが支払済みで、6月もしくは7月頃に正式に取得する予定になっています。

売上高に関しては、昨年度56億4,000万円が、最新予想として61億6,600万円で9.3パーセントの増加、営業利益は3億5,500万円が4億1,000万円で15.5パーセントの増加、経常利益は4億800万円に対して4億3,500万円の6.5パーセントの増加、当期純利益は1億6,500万円が3億1,500万円の予想で、90.6パーセントの増加を予定しています。

成⻑戦略 メディカルヘルスケア事業およびセイフティシステム事業の拡大

今後の成長戦略は、メディカルヘルスケア事業およびセイフティシステム事業の拡大です。従来と特に大きく変わることなく、まずメディカルヘルスケア事業では医療用自動機の開発やリハビリロボット事業(脳梗塞を中心としたリハビリ用のロボット事業)を展開していこうと考えています。

最先端ウエアラブル機器の開発、製造販売も引き続き行っていきたいと思います。Anti Virus関係の防護服やガウンの縫製の自動化も進め、これらの製造関係にも着手していきたいと思っています。

セイフティシステム事業としては、3D縫製自動機の開発があります。これは前回のIRでも発表しましたが、オムロンとの共同開発で新たな自動機の開発を促進していきたいと思います。加えて、国内回帰あるいはその自動化ラインの推進も図っていきたいと考えています。ドローン用エアバッグに関しても、新たな展開を迎えようとしています。

当社を取り巻く業界の変化予想及び今後の取組

メディカルヘルスケア事業としては、血圧計の腕帯について、ベトナムにおける新工場建設計画の推進によって生産能力を大幅に強化し、市場拡大に対応していこうと思っています。

また、エムハートとコンサルティング契約を締結し、リハビリ関連事業への進出を試みています。現在、最終審査も終わり、6月頃までには認可が下りて販売が開始できると思っています。

最先端ウェアラブル機器に関しては、他社との提携により、心拍数、あるいは体温測定などのセンサーおよびDXシステムの開発を引き続き行っていきます。

当社を取り巻く業界の変化予想及び今後の取組

セイフティシステム事業としては、松屋イノベーションセンター(MIC)におけるエアバッグ用の生産管理システムの導入により、品質管理能力の大幅な向上を図り、独自の生産ラインを構築し、さらに生産管理システムを他社に販売していく取り組みに着手しています。同様に新工場建設計画の推進により、生産能力を大幅に強化していきたいと思っています。

大きな業界の再編、あるいは大手企業のファブレス化ということで、積極的なM&A、業務提携の活用を行っていきたいと考えています。今まで取り組んできたM&Aや業務提携に関しては、開示できるようになり次第、お伝えしていきたいと思います。

当社を取り巻く業界の変化予想及び今後の取組

セイフティシステム事業で人材の多様化、営業力の強化のために、今期以降も積極的に人材の活用を図っていきたいと思っています。

ポーランドなどの東ヨーロッパへの進出もすでに始めています。住所も決まり、新たに対応していくかたちで臨んでいきたいと思います。

また、メキシコ市場が今までとは違い、引き続き非常に大きく伸びる要素が出ているため、積極的に営業活動を行っていきたいと思っています。

当社を取り巻く業界の変化予想及び今後の取組

新規事業です。3D縫製自動機の開発については、先ほどもお話ししたとおり、オムロンと伸び縮みする柔らかい素材の縫製を実現する、3D縫製ロボットの共同開発を開始しています。今後は複数の特許申請を見込んでいます。進捗状況はできるようになり次第、開示していきたいと思っています。

また、ロボットSI(ロボット・システムインテグレーター)については、需要の増加にともない、ドライバー席用エアバッグ自動機をMICですでに開発しています。こちらは、ベトナムの技術者のみで開発しています。

それから、ドローンも市場が拡大しており、いろいろなかたちの販売要素も昨年からIRで報告させていただいています。今後はまた違ったかたちで、ドローン用のエアバッグ、あるいはパラシュートなどを併せ持ったものを、開示できるようになればしてまいります。

成⻑戦略 成⻑イメージ

成長戦略、成長イメージは特に大きく変わっておらず、従来と同様です。AIソーイングロボットの開発、リハビリ関連事業への進出、ウェアラブル機器の開発などの分野を中心に、今後もぶれることなく進めていこうと思っています。

我々のベースには非常に大きな市場があるため、常に安定的に売上・利益を伸ばしていくことができる素材を持ちながら、なおかつ、このような成長戦略を進めていこうと思っています。

また、ご説明したとおり、ベトナムに新工場を建設して、第1工場から第5工場までを集約することにより、年間1億数千万円の利益を生むことが可能になると思っています。

一方で、我々が今借りているアマタ工業団地の第1工場から第5工場までは、平均して3,500平米から4,000平米の実稼働面積、床面積を有しています。

また現時点では、コロナ禍が終息した後のベトナムのワーカーコストは、他の地域と比べて安定しており、非常に安価です。年間の休日日数も諸アジア地域に比べて1ヶ月も短いため、非常に有利な土地、地域であると思っています。

ただ、我々が現在運営しているアマタ工業団地についても、進出したくとも、すでに土地や工場には余裕がなく、次の造成が行われるのは2年、3年先になる状況です。そのため、アマタ工業団地から約10分くらい離れたところに新工場を建設予定ですが、そちらもすでに土地・建物ともに余裕はありません。

来年、弊社は第1工場から第5工場を集約して、新しいところへ移る予定ですが、「第1工場から第5工場が空くならば、すぐにでも貸してほしい」と言っているところも数多くあります。

ですので、新規でベトナムでの好立地でのOEMを望まれるお客さまがいらっしゃれば、我々が今まで培ってきたベトナムでの運営力を活かして、第1工場から第5工場も有効活用したく、OEMによるメリットを伝えられるように、大手銀行との取り組みを始めており、今後BtoBのいろいろな取り組みを実現しようと考えています。

例えば、「ベトナムへの進出や海外展開をしたいが、どこへどのように助けを求めればよいかわからない」「今、土地柄はベトナムが一番有利であるとわかっているけれども、設備投資などを一気にすることはなかなかできない」という企業が、数多くあると聞いています。

そこで、今年度は各大手銀行に我々の第1工場から第5工場を紹介してもらい、「ベトナムで一緒に、BtoBの新しい展開に取り組んでいきませんか?」というアプローチを積極的に行っていきたいと思っています。

また、現在のベトナムの第1工場から第5工場に関しては、すべて新しい事業で展開できるように臨んでいきたいと考えています。これもまた、新たに見えてきた成長戦略の1つです。

成長戦略をまとめると、AIのソーイングロボット、AIの検査システム、自社工場の生産ラインの自動化、生産管理システムの開発のほか、セイフティシステムの自動機の開発にはマツヤイノベーションセンターを利用しました。このようなことに特化して、他社とともに技術開発を行い、売上・利益の増進を図っていきたいと思っています。