2022年3月期第3四半期決算説明会
米倉裕之氏(以下、米倉):みなさま、初めまして。株式会社True Data代表取締役社長の米倉です。本日は当社の上場後初の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
当社は昨年12月16日に東京証券取引所マザーズ市場に上場いたしました。新顔でございますが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
今回は上場後初めての決算説明の機会ですので、最初に会社・事業概要、次に当社の強みと成長戦略についてお話しします。その後、第3四半期の決算のご説明と、最近のトピックスをご紹介します。
True Dataの企業理念(パーパス)
「データと知恵で未来をつくる」というのがTrue Dataのパーパスになります。不動産やヘルスケアなど、さまざまなデータのプラットフォームがありますが、私たちは小売業の購買ビッグデータのプラットフォームです。
データやテクノロジーは、新しい道具です。この道具を使い、未来をつくるというのが私たちの存在意義になります。
行動指針に「社会へ貢献し、持続的な成長を追求します。」とお示ししていますが、社会貢献と持続的な成長という2つを両立させたいという方針で、ゼブラ企業を目指しています。
True Dataの企業理念
企業理念(パーパス)の概念を図にしたものです。山に雨のようなものが降っていますが、これはデータです。山は、スーパー、ドラッグストア、ホームセンターなどの小売業のみなさまを表しています。
このデータが各小売業で出てきますが、そこに例えばAIのようなテクノロジーを入れて、それで価値を出す企業もあります。
そのようなAI、テクノロジーをつなげて、真ん中に描いた1つのダムのように集めるというのがTrue Dataの役割です。
各小売業のデータについて、個別のデータを各小売業が使えるようにし、みなさまが価値を生み出せるよう支援しながらも、各データをつなげてコネクトし、市場全体がわかっていくようなものを作るのが、私たちTrue Dataです。
スライドの中央に、精製、蓄積、管理、分析、活用とお示ししています。データを使うには、データガバナンスやセキュリティなど、さまざまな対応が必要になります。
このような対応を万全に進めながら、右下に街が広がり、水が流れているように、データとテクノロジーの恩恵をみなさまにお届けするという仕組みです。また、データは水のように循環して山に戻っていきます。
このようなデータを使った価値の出し方を、水の恩恵にたとえて表現したものがこちらのイラストです。我々は、AIのみで勝負しているのではなく、データをコネクトすることで誰もが使えるようにし、さらにリテールAIなどを提供している会社も底支えして、みんなで進化し、新しい未来をつくるということが、私たちの理念です。
当社の事業構造の整理
先ほどのスライドをもう少しプラットフォームの面でご説明したものです。右側に、テクノロジーパートナー企業とあります。「プラットフォームをこう作っています」という図ではあるのですが、単純に「いろいろなテクノロジーを取り入れてます」ということを言いたいわけではありません。
例えばみなさまもお持ちのスマートフォンを挙げますと、iPhoneやAndroidなど、いろいろなテクノロジーがありますが、どんなものをお持ちであっても、このサービスが使えるというイメージです。
Googleのクラウドや、SAPのDXのプラットフォーム、ニールセンIQ社は106ヶ国で展開しています。このようなそれぞれのグローバルプラットフォームの上に、自分たちで作ったアルゴリズムなどを乗せて、データの領域を作っています。
データの領域が、世界のいろいろなグローバルテクノロジーの上に乗り、連携しながら展開していくというイメージです。
(参考)POSデータとID-POSデータ
次にデータのお話です。POSデータとID-POSデータとお示ししていますが、小売業のデータのことで、POSデータは商品の購買データのことです。ポイントカードを出して購買した時にIDがひも付きます。このIDが紐付いた購買データをID-POSデータと言います。
(参考)ウレコン(全国の消費者購買情報を公開)
具体例を挙げてもう少しわかりやすくご説明します。こちらは「ウレコン」というサイトです。当社が無償で提供しているダッシュボードです。インターネットでコネクトされたデータが見えます。
「この地域ではどの醤油が一番売れているか」という事例がスライドに出ていますが、「どのような人たちがそれを買っているのか」ということが、男性、女性、年代ごとにわかり、「その人たちは何曜日の何時くらいに来て、どのような購買をしていて、どのような人なのか」ということまでわかります。
通常、購買データと言うと「この商品がどれだけ売れているか」というお話になるのですが、私たちのデータの特徴は、そこにIDが紐付くことで、人を軸にして購買がわかるというところにあります。人を軸にして購買分析ができるという特徴を持っています。
プロから評価を得るID-POSデータ分析ツール(SaaS)
このデータはそのままでは使いづらいため、私たちは2つのサービスを、サブスクリプション型SaaSのツールに入れて、お客さまに提供しています。1つは各小売業のデータを使えるようにするSaaSで「Shopping Scan(ショッピングスキャン)」という名前です。
もう1つは、小売業ごとのデータ活用ではなく、ツールにログインすると市場全体、日本中の消費者の購買データがわかる「イーグルアイ」です。
当社はデータをそれら2つのツールに入れてご提供することにより、成長の土台を作っています。成長の土台は、コツコツ積み上げるものです。派手なことを行う会社というよりは、コツコツ売上を積み上げ、そこにデータをどんどんコネクトしながら大きくなっていくのが、私たちのビジネスの土台です。
「ショッピングスキャン」の詳しい内容と、「イーグルアイ」の詳しい内容については、後ほど資料をご覧ください。
当社の顧客・パートナー
お客さまの一例です。ツールをご活用いただいているお客さまもいますし、市場全体がリアルタイムにわかるデータですので、オルタナティブデータとして経済統計を早く理解したり、運用に活かしたり、地域の消費や生活などを可視化しながら総合政策に活かしたりするために利用されています。
当社事業の特徴
当社の事業の特徴です。スライドの図に記載したように、データ、テクノロジー、活用ノウハウ・教育の3つの領域があります。
データがあってもそれだけでは使えません。大量のデータを使うためのテクノロジー、そして「このように使えばよい」という活用のノウハウ、これらが揃い、初めてデータという道具が使えるようになると思います。
当社の消費者購買データ
現在コネクトしている小売業の年間売上規模は4.5兆円になります。4.5兆円と言ってもなかなかイメージが湧きづらいと思いますが、例えば、大手コンビニエンスストアの売上の規模がだいたい5,000億円から7,000億円です。それを考えていただくと、4.5兆円がどのくらいの規模でどのくらいの網羅性を持っているかというイメージが湧きやすいと思っています。
(データの精製)消費財メーカー社内でのデータ活用の課題
なぜこのように網羅性を持ち、データをコネクトできるのかご説明します。小売業のデータは、同じ商品でも名称や分類の仕方が違い、それぞれの企業が独自のかたちで自分のシステムに入れており、違ったかたちで存在しています。
(データの精製)消費者ビッグデータ活用の差別化要因
それらのデータをコネクトすると市場全体がわかるというプロセスを、我々のプラットフォームの中に構築しています。こうしてどんどんコネクトし、より市場の動きが正確にわかるようになり、いくらでもスケールできるという構造ができ上がっています。
業界内プレイヤーと当社の関係
業界内プレイヤーと当社の関係についてのチャートです。縦軸がデータのボリュームで、どんどんコネクトしていくことにより、データは大きくなっていきます。
一方、「ビッグデータを活用できる」というのが横軸になります。真ん中にはリサーチ企業がありますが、「True Data」のデータは、どのような消費者が買い、どのようなトレンドになっているのかを理解するためにも使われているため、リサーチにも使われています。
リサーチにも活用されていますが、リサーチのためというよりは、マーケティングのために作ったものです。マーケティングとは、お客さまを理解したあとにターゲティングし、アクションし、そのあと実際にプロモーションを行い、広告した結果、どのような人たちのどのような購買に変化が起こったのかを効果検証するということです。
このようなことも非常に大事になってくるため、私たちのデータはリサーチにも使っていただけますが、ターゲティング、効果検証といった幅広いマーケティングでもPDCAのCやAまでお使いいただけるノウハウをご提供しています。
売上を増やし効率よく新しいお客さまになっていただく、このようなことをデータテクノロジーを使い、行うのがマーケティング領域の話です。最近原油などの原価が上がり、コストもどんどん上がってくる中、利益がなかなか出しづらいフェーズになってきています。
日本は市場自体は成熟していますが、売上がそんなに伸びなくても無駄や廃棄を減らすために、データと分析はとても活用できます。
「ダイナミックプライシング」という言葉もありますが、どのような価格を出せば一番利益が最適化され、お客さまにも買っていただけるのかという値段の付け方一つをとっても、世の中全体のデータを把握しているからこそAI、テクノロジーが活きます。
マーケティングでも活用でき、逆に売上が伸びなくても利益を増やすために活用できるというのが私たちの強みになります。
スライドの下に「提携」「テクノロジー企業」とあります。どのようなグローバルテクノロジーでもデータ圏が作っていけるため、提携しながらお客さまにもご紹介いただけるような、共存型・共創型モデルを作っています。
当社の参入市場と進化の方向性
参入市場と進化の方向性のチャートをご説明します。「イーグルアイ」「ショッピングスキャン」の2つの主力サービスをコツコツ積み上げ、データマーケティング市場でストック型の売上を積み上げています。現在は、ドラッグストアからスーパーマーケット、ホームセンターとどんどん広げていこうと思っています。
スライド中央の円の少し外側に、海外展開の円があります。日本でコツコツ積み上げていますが、同じようにグローバルプラットフォームに乗り、海外で行うのは、そんなに難しくない話です。またコツコツ行っていくために、ベトナムのFPTという会社のグループ企業に出資し、海外展開を始めました。数字になるのはもう少し先になりますので、スライドでは点線になっています。
スライドの右に広告市場、左にアナリティクス市場という大きな市場がございます。データをコツコツというよりは、貯めたデータの価値を使う方がたくさんいるのが、広告市場もしくはアナリティクス市場になります。
マーケティングの広告市場、利益を生み出すアナリティクス市場では、コツコツ積み上げた上に、大きな売上を積み上げたいと思っています。新しい大きな売り上げが出る時には、あらためて開示したいと考えています。
第3四半期決算 ハイライト
決算概要をご説明します。まず、今回の決算のハイライトを3つにまとめました。
True Data事業の売上は10期連続増収と順調に進捗、主力サービスのストック型売上は順調に成長し、ストック型売上比率もさらに向上しています。利益は第3四半期は赤字ですが、通期黒字転換予想に変更なく順調に進捗しています。一言でまとめると、売上・利益ともに計画どおり順調に進捗しています。
第3四半期決算 損益計算書サマリー
第3四半期累計の損益計算書をご説明します。左側に昨年度の第3四半期累計、右側に今期の第3四半期累計を記載しています。今期、第3四半期累計の売上は9億5,100万円、前年同期比10.5パーセント増となります。
一方、営業利益以下の利益は第3四半期累計では赤字となっています。今期に予定している費用を上場関連費用なども含めて計上しており、計画どおりの進捗です。通期での黒字予定に変わりはありません。
ハイライト① 売上高推移
過去10期分と今期の第3四半期累計の売上をグラフにしたものです。少し薄いグレーの売上が途中まで乗っています。これは、当社のテクノロジーが優れているということで、あるお客さまから依頼があり、システム開発し提供した売上です。
下の緑色が、先ほどコツコツ積み上げたとご説明したTrue Data事業です。かなり規模が大きいため分けて表現していますが、True Data事業の売上は今期まで10期連続の増収を続けています。
年平均成長率は14.4パーセントと中長期に成長を続けています。
ハイライト① 売上高推移:四半期別
こちらは、四半期別の売上高推移です。投資家のみなさまから、四半期ごとに分解して見たいというリクエストがあり、このようなチャートもご用意しました。
当社の売上はストック型が多いのですが、このように四半期ごとの推移を見ますと、スポット型は波があります。この点をご理解いただきたく思います。もちろん、中長期的には右肩上がりのトレンドで順調に成長を続けています。
ハイライト②ストック型売上高推移
ストック型売上高の推移です。当社は、月次課金型のストック型売上の比率が高いことが特徴です。売上高をストック型とスポット型に分けてグラフにしました。グラフで赤色の太線で囲っている部分がストック型売上です。
囲っている部分から小さな四角が引き出されていますが、こちらの数字の上段がストック型売上、括弧の中の数字が売上に占める比率です。CVS売上は分母から除外しています。
グラフのとおり、しっかりと成長しており、ストック型売上の最近5年間の年平均成長率は20.9パーセントと高い成長を続けています。また、ストック型売上比率もこの第3四半期に80.8パーセントまで上昇しました。
ハイライト② 小売業向けストック型売上高推移
小売業向けストック型売上高推移です。小売業向けの事業は、当社のビッグデータプラットフォームとしての基盤になる事業で、右肩上がりに売上を伸ばし順調に成長を続けています。
ハイライト② 消費財メーカー向けストック型売上高推移
消費財メーカー向けストック型売上推移です。こちらも、右肩上がりに売上を伸ばし順調にコツコツ成長を継続しています。
折れ線グラフは、当社主力サービス「イーグルアイ」の契約社数の推移です。こちらも右肩上がりに伸びています。
(参考)主要ソリューションの既存顧客売上拡大およびストック型売上推 移
主要ソリューションの既存顧客の売上拡大とストック型売上推移についてのデータです。売上成長の特徴を、2つのグラフでご説明します。
左側のグラフは、当社のイーグルアイ売上上位5社の5年間の売上推移です。顧客単位の売上も少しずつ拡大しながら積み上げていることがわかります。
右側のグラフは、年度ごとに獲得した新規顧客ごとの売上を、その後の年度に分け、整理したものです。毎年新規顧客を着実に獲得し、ストック型の売上を積み重ねていることがわかります。
ハイライト② 売上高増減分析:対前年
対前年の売上高増減分析です。このグラフは、左端に昨年度の第3四半期累計の売上高、右端に今期第3四半期累計の売上高を表記し、その増減を分解して示したものです。
「ショッピングスキャン」「イーグルアイ」という当社の主力サービスが伸びたことにより売上成長を牽引し、薄いグレーのスポット型売上はコロナ禍の影響もあり少し減少しています。
ハイライト③ 営業利益推移
営業利益の推移です。左側は第3四半期累計の営業利益の各年度の推移を示したグラフです。2022年3月期は1,400万円と若干の赤字ですが、計画どおりの進捗であり、通期は営業黒字で着地する予定です。
なお、一昨年完了した基幹システムのクラウドへの全面移行を踏まえ、このような大型の減価償却費を計上しています。右側のグラフは、基幹システムの減価償却費を差し引く前の、償却前営業利益を表示しています。
今回の第3四半期累計で見ると、減価償却前の営業利益は8,900万円の黒字となっています。つまり基幹システムの減価償却費が利益を押し下げていることが分かります。 この減価償却は2023年3月期にて完了する予定です。
通期業績予想に対する進捗と見通し
12月に発表した通期の業績予想を据え置きましたが、通期では予想通りに進捗しています。売上、売上原価、販管費が70パーセントから75パーセントの進捗率で推移しています。進捗率では若干費用のほうが先行していますが、これは上場費用などを含めており計画どおりです。
トピックス 今期の取組み〈1〉
最後にトピックスをお伝えします。当社は経営理念や成長戦略に基づき、今期も多くの取り組みを行ってきました。コツコツと売上を作ってデータをどんどん増やしながら、戦略を確実に実現してきています。
当社の最近の取り組みについて、今期に入ってからの活動の中から、代表的なものを簡単にご紹介します。スライド内で、吹き出しで「PickUp」と示している4つのトピックスについて、具体的な内容を少しご紹介していきます。
ピックアップ①は、宮城県気仙沼市の事例です。気仙沼市、特定非営利活動法人「人間の安全保障」フォーラムと、連携協定を締結しました。
我々は、消費者、生活者、各地域のデータも把握しており「それをどう活用していけばよいか」というノウハウも持っています。これは当社のデータだけでなく、さまざまなオープンデータ、たとえば各世帯の年収など、いろいろなデータを掛け合わせて作ったものです。
「人間の安全保障」という、「ものがどれだけ売れているか」というよりは、人間の尊厳や、貧困、あるいは暮らしやすさなど、そのような切り口で地域ごとに評価するような指数を作り、宮城県全域で発表しました。
気仙沼市がそのデータから課題を見つめる中で「実際に解決に取り組みたい」ということで、「人間の安全保障」フォーラムと気仙沼市と一緒に連携協定を結んで、解決を図っていこうという取り組みがスタートしています。
ピックアップ②は、AIで需要予測と在庫を最適化するグローバル企業の、ニールセンIQ社と戦略提携を締結し、「SDR-IO」のサービス提供を開始するというものです。
小売業の購買ビッグデータをどんどん大きくし、私たちだけではなく、いろいろな方々がこのデータを使えるようにします。そしてみなさまがAIの実力を発揮できるよう、みなさまの成長に向けて支援していきたいと思っています。
自前のサービスもありますが、自前以外でも世界中で優れたサービスがあれば、合わせてお客さまに届けたいという考えで手掛けています。
このニールセンIQ社のAIはかなりの優れもので、これは我々が地道に積み上げるというよりは、アナリティクス領域になります。
「売上が伸びない時でも、在庫を最適化して粗利を大きく改善する」という機能があるように、「価格をどのくらいにしたら一番利益が最大化されるのか? ロスを減らせるのか?」というような切り口で使えるAIです。このようなものも世界から持ってきて、日本市場にフィットするようにチューニングし、提供する取り組みが始まっています。
トピックス 今期の取組み〈2〉
ピックアップ③です。これは先ほどまでと違う領域になりますが、我々のデータを、他のビッグデータと掛け合わせて、本州から北海道に自動車に乗ってフェリーに乗って行く人たちのような観光客を、データで見える化したという事例です。
「どこからどのような人たちが、何の目的でどこに行っているのか」ということが、データで把握できるようになれば、さまざまな広告領域とプレイヤーを含めて、「このような広告をこのように展開したらよいのではないか」というようなソリューションができるようになります。そのため、我々はこのようなデータを掛け合わせたものを、広告領域の支援のために公表しています。
ピックアップ④です。こちらは、日本で扱っているデータをコネクトして、使えるようにしていく取り組みです。日本にいながらも、他の市場のデータもログインしたらわかるようになっていく世界を作るため、ベトナムのFPTソフトウェアという、非常に素晴らしい会社と業務提携しました。
同社グループのビッグデータカンパニーで、ブロックチェーンなどいろいろなことを手掛け、与信やフィンテック事業を行っている企業に出資して、利用データのビークルとして整えるビジネスをスタートしています。
以上をもちまして私からのご説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:マーケットリサーチ企業について
司会者:「22ページのセグメンテーションについて、御社の左下にあるマーケットリサーチ企業とは、具体的にはインテージやマクロミルのことでしょうか? 御社の競合だと思っていましたが、ビジネスモデルが少し異なるということでしょうか?」というご質問です。
米倉:具体的なリサーチ企業とは、例えばどのような企業かについては、今ご指摘いただいたような企業が該当すると思っています。
名前が出たような企業は、あくまでもマーケットリサーチの会社です。基本的には5万人くらいの主婦の方がレシート情報を入力するようなかたちで購買データを集めています。
一方、我々はそのデータの集め方が異なっており、小売業の店舗における購買データを毎日まるごとプラットフォームに転送していただいています。そのため、先ほどご説明したように、小売業の購買ビッグデータそのものが次々とコネクトされ、全体を見ると6,000万人規模に達しています。
このデータ量はいくらでもスケールするため、人の購買行動として市場を把握できるデータ量については、他社を圧倒していると思います。これは、やり方によってはスケールできないため、そのようなところに差があると思います。このようなリアルタイムの分厚い購買データがあるため、リサーチ目的だけではなく、販促の効果検証などにもお使いいただけるようになっています。
当社はお客様のマーケティング活動のPDCAにおいて、CやAも含めてデータの利活用を総合的に支援しています。消費者の購買ビッグデータのプラットフォームビジネスを志向しているため、単純にリサーチとしての価値を発揮する他のリサーチ会社とは異なるビジネスモデルであると思っています。
質疑応答:株価について
司会者:「上場以来、株価が低迷しています。株価についてのお考えがあれば教えてください」というご質問です。
米倉:株価の動きについては確認しています。マザーズ上場以来、株価がさえないために、株主のみなさまにはご心配をおかけしています。しかし、先日ベトナムのデータホルダーに資本参加をして、現地の小売チェーンのデータコネクトを開始すると発表した日にストップ高になりました。
当社経営としては、今後も増収増益を継続しながら、成長戦略を次々実現させ、その上に売上を大きく積み上げて企業価値を引き上げていきます。中期的には、株価は企業価値に収斂していくものと考えているため、私たちが目指している時価総額はもっと大きな世界だと考えています。
質疑応答:来期以降の利益水準の目線について
司会者:「今期はぎりぎりの黒字という印象です。来期以降の利益水準の目線について教えてください」というご質問です。
米倉:こちらは倉沢からお答えさせていただきます。
倉沢学氏(以下、倉沢):「具体的にいくら利益が出ます」という数字については現時点ではまだ開示していません。ただし、来期以降は、かなり利益が出やすいフェーズに入ってくることは申し上げておきたいと思います。
ポイントが2つあり、1点目は当社のビジネスはクラウド上のストック型ビジネスであり、限界利益率がかなり高いビジネスだということです。今期は損益分岐点をぎりぎり超える着地になる予定ですが、来期以降は、その限界利益率の高い売上が積み上がることにより、利益がかなり出やすくなってくるものと思います。
2点目に、減価償却費については、今期と来期がピークで、2023年3月期には終わる予定です。今後、減価償却の負担がなくなることにより利益が出やすいステージに入ってきます。
質疑応答:今後の大型投資について
司会者:「基幹システム投資の減価償却が2023年3月期で終了予定とのことですが、今後の大型投資について、どのようなものがあるか教えてください。人材投資、システム投資などがあるのではないかと思います」というご質問です。
米倉:大型のシステム投資については、今回クラウドにインフラからソリューションまですべてを載せ替えたため、今後、基本的にこのようなことは中期的には考えていません。
システムの大きな投資もここから先は基本的にはありません。現在ベトナムなど海外でもデータコネクトをスタートしましたが、こちらについても大きな投資は発生せずに、どんどん広げていけると考えています。 投資をするのであれば人に対してであると考えています。将来のために、人にどのような投資を行っていくかはこれからの戦略になります。
質疑応答:競合他社に対する戦略について
司会者:「ビジネスアナリティクスや広告市場はかなり大きい市場ですが、すでに強いプレイヤーがいる印象です。後発の御社が勝つためにどのような戦略を立てているのでしょうか? 具体的な取り組みを教えてください」というご質問です。
米倉:エコシステムという言葉がありますが、やはり強いプレイヤーがいて独占するのではなく、みなさんが強くなることが重要だと考えます。例えば、広告を打つプレイヤーと、AIを持っているプレイヤーがいる場合、両者ともにデータは当然必要となります。
両者とも、一からデータを集めてスケールしようと思うと時間がかかります。そこで、10年かかるものを一緒にやることにより、3年でできるようになると思っています。
1人ですべてを切り拓き、1人でデータをコネクトして、AIをつなげてやっていくのではなく、持っているものを合わせることで、10年を3年に短縮して世の中をどんどん進化させ、未来に紡いでいきます。このようなことが基本的なイメージだと思っています。
質疑応答:大手企業との提携について
司会者:「提携先となっている外資系大手テクノロジー企業は、どれもビッグネームですが、失礼ながら御社のような小さい企業がどのようにこれらの会社と提携できたのでしょうか?」というご質問です。
米倉:例えば、ある会社の場合には、ビジネスコンテストをインドのムンバイと東京で行った際に、一緒に連携したいスタートアップ企業としてで選定され、それからはパートナーシップというかたちになりました。相手にとっては、どのような価値を持っているか、どのような強みをもっているかが判断の基準であると思います。
小さいとか大きいといった基準ではなく、我々の持っているノウハウやデータ、コネクトしたデータの広がりといったプラットフォームの世界観を評価していただけたと思います。プラットフォームの上にプラットフォームが乗り、一緒に広げていくイメージだと考えています。
質疑応答:営業利益推移について
司会者:「営業利益推移を見ると、第3四半期では3期連続赤字ですが、2018年3月期はそこそこ利益が出ていたようです。これはなぜでしょうか?」というご質問です。
倉沢:2018年3月期は減価償却前営業利益が6,000万円出ていますが、CVS(コンビニストア向け)売上が2018年3月期まで立っており、それが実はすごく利益率の高い売上だったため、当時はこのような高い営業利益を出していたということです。
質疑応答:スポット型売上高におけるコロナ禍の影響
司会者:「38ページで、スポット型売上高がコロナ禍の影響を受けたという説明がありましたが、具体的にはどのような影響を受けたのでしょうか?」というご質問です。
米倉:こちらは複合的なものですが、1つ目は我々のお客様である消費財メーカーの収益に影響が出て、予算も少し圧縮されるようなことが起こりました。
もう1つはデータそのもので、例えば海外からの観光客がドラッグストアで大量に物を購入するといったインバウンド購買について、このデータを見ながら手を打ちたいというニーズがあり、コロナ禍以前はこのようなサービスの売上がありました。しかし、コロナ禍以降はほぼゼロになってしまいました。
このようにお客様の予算が縮小した業界があることや、そもそものデータがなくなり売上がなくなったといった要素が複合的にあります。一方で、コロナ禍が終息すると、逆にプラスに転じて、上に乗ってくるような動きになると考えています。
質疑応答:大型の減価償却について
司会者:「2023年3月期までで大型の減価償却が終わるとのことですが、具体的にどのくらい減るのでしょうか? 差し支えない範囲で教えてください」というご質問です。
倉沢:現時点での見込みですが、今期に関してはすでに1億円くらいシステムの減価償却がかかっています。そのため、通期で見ると1億3,000万円から4,000万円になると見ています。来期にもまだ少し残りますが、それ以降はおそらく3,000万円から4,000万円以下になってくるのではないかと見込んでいます。
質疑応答:2018年3月期のコンビニエンスストア売上について
司会者:「2018年3月期のコンビニエンスストア売上がなくなったのはなぜでしょうか? 何か問題があったのでしょうか?」というご質問です。
米倉:個別の契約のお話しのため詳細は差し控えますが、我々のソリューションやサービス自体は、その当時に最も競争力のあるものであったと私たちは理解していますし、おそらく外部からもそのように見えていたと思います。
ただし、物事を決める要因はいろいろあると思います。一言で言いますと、お客様の政策的な要因でそのようになったと理解しています。
質疑応答:「SDR-IO」の売上規模の見通しについて
司会者:「46ページのニールセンIQ社との取り組みはおもしろいと思いますが、このソリューションは1案件でどの程度の売上規模になるのでしょうか? また、今後の見通しを教えてください」というご質問です。
米倉:これはお客様の規模により違ってきますが、大手のほうがフィットするものであり、粗利が数十億円の規模で増えることが海外の事例を見ても明らかです。その時に、数十億円の粗利を改善する中で、数億円のストック型の売上をいただけるといったことが実現すると理解しています。
質疑応答:ビッグデータの掛け合わせについて
司会者:「ビッグデータの掛け合わせという説明が何回かありましたが、具体的にはどのようなことを行うのでしょうか?」というご質問です。
米倉:現在のデジタルの世界では、マーケティングにしても何にしても、人を軸に組み立てていくことになるため、人を何で捉えるかというデータの核が必要になってきます。以前は、Cookieというデジタル世界のIDを軸にすべてを組み立て、ビジネスが展開されていましたが、このCookieの活用が現在制限される方向になっています。
そのような中で、1つの核となる可能性をもつのが、この「ID-POS」です。「ID-POS」はいろいろな方法があり、決済手段によってIDが紐づくこともあれば、ポイントカードに紐づくようなこともあります。何らかのかたちで、IDがポイントカードや会員カード、決済などに紐づけばよいということです。
みなさまの中にはご自身のID会員の経済圏を作るプレイヤーが多いと思いますが、我々はこのIDのアグリゲートプラットフォームと言いますか、どんどんコネクトしていけるようなプラットフォームを作っています。
「本州から北海道まで自動車やフェリーに乗って旅する人はどのような人たちなのか」を明らかにしたい時には、この「ID-POS」から見える移動情報や検索情報を合わせ、属性を明らかにしてきました。
属性がわかると「ここの地域に住んでいるこのような人たちには、このようなコンテンツのデジタル広告を出していこう」となります。そして、どのコンテンツが一番響いたかの効果を検証することが可能となります。
いろいろなデータに、その人を表すようなデータを合わせることにより、本当のお客さまはどのような人で、どのような層をターゲットに価値を提供すれば自分たちの商品にとって一番よいのか、ボリュームが大きいのかといったことがデータで把握できます。
そのために、我々は「ID-POS」を整備して準備しています。その他、位置情報を整備しているプラットフォームもあれば、IoTのデータを整備しているプラットフォームもあります。ここはエコシステムで手を携えながら、どんどん価値を提供していくというイメージになります。