ハイライト

秋好陽介氏:みなさま、こんにちは。ランサーズの秋好と申します。2022年3月期第3四半期の決算説明をさせていただきたいと思います。ランサーズ全般というよりも、特にこの第3四半期に起こったトピックを中心にご説明させていただき、みなさまからのご質問にお答えするという流れで進めさせてください。

冒頭はハイライトです。今年度から「3カ年計画」をリリースし、主にオンラインでマッチングし完結する、マーケットプレイスというモデルを中心に、成長投資を加速します。今までと比べると短期的には、投資先行していくかたちで開示しています。

ランサーズは売上高に関して季節偏重があり、第4四半期に流通金額が一番伸びるという特徴もありますが、スライドに記載のとおり、それを上回るかたちで進捗しているというのはポジティブな傾向です。

一方で、季節偏重があるとはいえ、売上高以外は一部ビハインドになっています。主な要因をご説明します。マーケットプレイス事業は前年同期比プラス22パーセントにしっかりと成長しています。しかし、大変よいことではあるのですが、特に第2四半期は感染が落ち着き、リアルのビジネスが活性化し、その影響で一時的に新規のお客さまが減り、既存のお客さまも減りました。

第3四半期は、我々の施策の効果もあり既存のお客さまは戻ってきていますが、新規のお客さまに関しては引き続き課題があるという状況です。後ほど、詳細をご説明します。

もう1つのトピックが、マーケットプレイス事業の成長を加速するため、上半期から大きく新しいプロダクトを加えるという動きを進めてきました。下半期にそのプロダクトのマーケティング投資をするという流れで考え、上半期はプロダクトをしっかりリリースしました。

新規のため、全体の流通金額に占める割合はまだまだ小さいのですが、我々が想定していたとおり、もしくはそれ以上の効果が第3四半期に出始めました。後ほど詳細をご説明します。

会社概要

会社概要のご説明をします。我々ランサーズは2008年、ちょうどリーマンショックの時に創業しました。私自身が大学生の時にオンラインでフリーランスをしていたことが創業のきっかけです。

最初に就職した企業で、個人の優秀なエンジニア・デザイナーに発注するのが難しかったという原体験を踏まえ、「その2者が結びつけば働き方、もしくは企業の仕事のスタイルが変わるのではないか?」と思い立ち、起業しました。

当社は、今までにいろいろなビジョンをアップデートしており、ちょうど3ヶ月前に「Vision」の部分をアップデートしました。

「Mission」である「個のエンパワーメント」は、創業以来13年変わっていません。今回、大きく変えたのは、法人の中にいる個人に対しての「Vision」です。「すべてのビジネスを『ランサーの力』で前進させる」と掲げ、企業の中にいる個人への価値提供も、より明確に推進していくことを決めました。

このコロナ禍により、いろいろなことがオンラインになっています。「誰もが自分らしく才能を発揮し、『誰かのプロ』になれる社会をつくる」と掲げ、仕事のマッチング以外の領域を含め、「誰かのプロ」になれるためのサービス提供を拡大してきています。

ランサーズの流通総額推移

創業以来、流通金額は年々伸びています。受託事業などは一部撤退し、売上は大きく減っているのですが、今期は、そのような中においても過去最高の流通金額を達成できるのではないかと考えています。

サービスの概要

ランサーズを使うことで、企業側は優秀なプロフェッショナルをスピーディーかつオンラインで調達でき、固定の人件費がかかりません。また、個人にとっては自分の持っている才能が複数の企業で報酬と結びつき、オンライン環境さえあれば、外国にいても、沖縄でも北海道でも、時間と場所にかかわらず働けます。これらがランサーズの価値です。

サービスの内容

実際にやり取りされているのはエンジニアやデザイナーの仕事が多かったのですが、昨今ではバックオフィスやセールスの仕事もオンライン上でできるようになったため、一般企業の通常の業務もランサーズで展開されるようになりました。

ランサーズの市場ポテンシャル

今の市場規模は大きく見積もると500億円程度、少なく見積もると数百億円程度ですが、少なくとも数年後には1,000億円規模になっていくと思っています。仕事のオンライン化や、社員以外の社会人材を活用するというトレンドがさらに浸透していくと思っており、2030年頃には1兆円規模のマーケットを狙えると見込み、事業を推進しています。

フリーランスの市場動向(新・フリーランス実態調査 2021-2022年版)

2015年からフリーランスの実態調査を行っています。年によって変動はあるものの、スライドにあるグラフから見て取れるとおり、フリーランスの人口と経済規模は増加しています。

コロナ禍によりオンラインで働く環境が一気に拡大しました。そのため、副業や兼業・専業のフリーランス業を新しく始めやすい世の中に前進していると感じています。

このようなフリーランス市場において、単なるデータ入力などのスキルではなく、専門的なスキルをしっかり持った個人が多く登録しているのがランサーズの特徴です。個人にとっては報酬をしっかりもらえる高単価な仕事が多いプラットフォームになっていると思います。

競争優位性:フリーランス一人あたりの受注金額(流通総額)

他社のプラットフォームと比較すると、1人あたりの受注額は約2.5倍の差があります。つまり、受注している仕事の内容がハイスキルだということです。これこそがランサーズの特徴です。

競争優位性:コアとなる信頼ランサー

我々の究極の競争優位性は、優秀な個人がオンラインで完結して働けるという点です。そのような優秀な個人を「信頼ランサー」と呼んでおり、信頼ランサーが毎月の報酬をしっかり得ているかどうかを大事にしています。第3四半期は信頼ランサー数は前年同期比31パーセント増となっています。

競争優位性の源泉である信頼ランサーが増えていけば、需給のバランスはあるとはいえ、企業の発注にしっかり対応できる状態を拡大していけると思っています。信頼ランサー数もしくは信頼ランサーの報酬金額の総量を重要な指標としてモニタリングし、経営を行っていきます。

業績サマリー

直近の第3四半期の状況をご説明します。数字については、流通総額、売上、売上総利益ともにしっかり成長しました。

流通総額に関しては前年同期比14パーセント増となりました。

投資を除く営業利益及び営業利益の四半期推移(連結)

今は投資を先行させていますが、それを除けば前年度から黒字化できる状況です。

2022年3月期第3四半期累計P/L(連結)

マーケットプレイス事業の新規クライアント獲得については課題もあります。詳細は後ほどご説明しますが、下期偏重型とはいえ流通と売上総利益が少しビハインドしています。この部分を第4四半期でしっかり取り戻せるように方向修正しているところです。

2022年3月期 第3四半期B/S(連結)

B/Sの内容については第2四半期と大きく変わっていませんが、現金は17億円くらいで、銀行借入額は一部増強して12.1億円まで増額しています。今はまだ借入を起こしていませんが、経営アクションが必要な際は、約30億円はあるという状況になっています。

セグメント別サマリー

マーケットプレイス事業と、再成長してきているテックエージェント事業の2事業について、詳しくご説明します。

マーケットプレイス事業の構造変化

マーケットプレイス事業に関しては、新型コロナウイルスの影響で非常によかったです。

第2四半期は、世間がリアルの活動もしっかり行うというトレンドになっていました。ECサイトを作り、オンラインでものを売るというところにフォーカスしていたのですが、オンラインとリアルの両立という流れになり、第2四半期に関しては既存クライアントも少し落ち込み、新規クライアントも落ち込んだという状況にありました。

第3四半期に関しては、既存クライアントが活用しているカスタマーサクセス強化という施策も功を奏し、第2四半期より成長し、復調しているというところはポジティブ要素だと思っています。

マーケットプレイス事業

一方で、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言などにより、オンラインで「ECサイトを作る」「ものを作る」「集客する」というニーズが非常に高まっていたのですが、経済活動が一部戻ってきたため、その影響があります。

ECサイトでご説明しますと、10月、11月、12月は新しいことをするというよりも、かき入れ時のようなニーズがあり、新規クライアント数を以前の状態に戻す、もしくはそれ以上の状態にできるのではないかと見立てていたのですが、今は少しギャップが生じていると思っています。

これはランサーズの中だけではなく、我々のマーケット全体や海外の状況を見ても同様です。一時的に需要が非常に伸びていたところが、完全にもとに戻るということではありませんが、業界全体、マーケット全体で一部の需要が少し過大であると感じています。しかし、我々はこの状態がトレンドにはならないと見立てています。

現にオンラインはニーズがあるカテゴリーです。例えば、ECの中でも例年お話ししている「Shopify」であったり、「YouTube」や「TikTok」を利用した新しいマーケティングがあります。今、Web3.0(ウェブスリー)という言葉がはやっていますが、今後、メタバース上で3Dデザインをするというような新しいニーズは増え、オンラインでフリーランスに発注するという分野は、引き続き伸びていくと思っています。今の状況は一時的なものだと捉え、第4四半期はしっかりマーケティングセールス活動をサクセスすることで、新規クライアントに関しても戻していくことができると考えています。

マーケットプレイス事業の投資進捗

投資の状況についてご説明します。プロダクト投資、つまりエンジニア採用は、非常に苦しんでいる会社がある中で、ランサーズは上半期にしっかり採用し、プロダクトを作っていくことは順調にできていると思っています。どちらかというと、新規の獲得についてはもう少しチューニングが必要だと思っており、第3四半期にチューニングを行うことで、今後の数字のトレンドを変えていきたいと考えています。

テックエージェント事業

テックエージェント事業についても再成長してきているため、状況をご説明します。基本的にオンラインで集客するというのは変わりません。企業に対し、スポットでフリーランスに何かをお願いするというよりも、社員と同様に週3日から5日、エンジニアやデザイナーのフリーランスに固定して業務を行っていただくという内容のビジネスになっています。

テックエージェント事業については、コロナ禍で経済状況がどうなるかわからない中、単価が1人あたり80万円と非常に高いこともあって、この1年くらい企業の利用控えがあり、非常に苦しんでいました。

コロナ禍の状況に関わらず、企業の先行きも一定程度は見通せるようになりました。なおかつ、企業側もオンラインで働けるようになり「フリーランスで週5日来ない人も、社員で週5日出社しない人も一緒だよね」となったことで、今まで発注があまりなかったような、新しい企業のニーズも戻ってきました。

11月は過去最高の新規成約数となり、2022年3月期の第3四半期に関しては、過去最高の流通総額に推移しています。テックエージェント事業の成長率に関しては、前期比プラス20パーセントですが、この先、より力強く戻っていくのではないかと考えています。

人員構成(連結)

完全オンラインで仕事をするというマーケットプレイス事業も、週5日で1社の企業にフリーランスの方を提供するテックエージェント事業も、来期に向けてマーケット自体も非常に伸びています。我々もその伸びにしっかり追いつき、追い抜けるように、事業をフィットさせていきたいと考えています。

新規流通総額の拡大に向けた施策: Lancers「パッケージ方式」

事業のトピックになります。マーケットプレイス事業では、クライアントの方がより利用しやすいサービスとなるよう、新規のサービスを作り、いろいろな新機能を追加しています。

その中で大きなものの1つが「パッケージ方式」というものです。今までのランサーズは、企業が「営業をお願いしたい」という時には、営業ができるフリーランスの方を直接一人ひとり探したり、ランサーズのスタッフに聞いて紹介してもらって探すというかたちでした。

海外では「Fiverr」 、国内では「ココナラ」がモデルになりますが、このパッケージ方式は、第2四半期の11月にランサーズとしても本格的にサービスローンチしたものになっています。

ランサーズのトップページをご覧いただくと、今までは「フリーランスを探す」というコミュニケーションをしていたのですが、それとともに「パッケージで探す」、つまり「個人が出品しているスキルから探す」というコミュニケーションを追加しています。

その結果、リニューアル前とリニューアル後の流通金額の総額を比べると、前月比でプラス32パーセントとしっかりと成長しています。12月以降もこのトレンドに近いかたちでしっかりと伸びていっています。

そのため、現時点では、パッケージ方式が全体の流通金額に占める割合はすごく小さく、まだまだ数パーセントレベルですが、この成長が続いていくと、1年から2年経った時に、ランサーズの成長を牽引するモデルの1つになるのではないかと考えています。

パッケージ型は、海外の「Fiverr」も最初は5ドルという非常に低価格のモデルで始めましたが、基本的には安いからたくさん売れるというものでした。しかし、我々ランサーズはチャレンジで、1万円以上しか出品できないようになっています。スライドに表示しているものも20万円を超えるようなパッケージです。

「そのような高額なものが売れるのか」というところもあったのですが、他社と比べ非常に高い単価でしっかりと売れています。

単純に個数が売れるというだけではなく単価が高いものも売れるということは、我々がこれから増やそうと思っているいろいろな職種の中で、高い職種のものも「ランサーズでならパッケージで売れる」という布石になってくるのではないかと思っています。こちらの状況も、引き続きタイミングを見て開示したいと思います。

既存流通総額の拡大に向けた施策:Lancers「月額報酬制のマッチングサービス」

2つ目の大きな施策が「月額報酬制サービス」というものになっています。今までのランサーズの課題として、どうしてもスポットで発注するため、スポットの仕事に満足してもらえたにもかかわらず、その方に2回目を発注する機会がなかったために継続しないという課題もありました。

これを受けて、同じく第3四半期に月額報酬型のマッチングサービスを開始しました。企業が個人に対して月額で契約することができ、稼働状況を管理できるサービスです。

パッケージと同様、全体に占める割合はまだまだ低いのですが、しっかり伸びています。当初の狙いどおり、1回発注した方がさらに継続して利用する割合は10月から12月まで、81パーセント、88パーセント、85パーセントと進捗しており、ほかのランサーズの継続率と比べると非常に高くなっています。このモデルの割合が増えれば増えるほど、1回の発注から数ヶ月、数年と継続利用も増えていくと思っているため、引き続きサービス拡大に努めていきたいと考えています。

既存流通総額の拡大に向けた施策:「Lancers」の評価制度をリニューアル

流通金額にクリティカルヒットするトピックではありませんが、ランサーズに登録しているフリーランスの方を評価するアルゴリズムを創業以来初めてリニューアルしました。例えば「食べログ」のコアな成長優位性はやはり評価制度にあると思います。ランサーズを利用するにあたっても、過去の仕事の評価を閲覧できることによって「この方には安心して発注できるとわかる」と企業側からお声をいただいています。

個人にとっても、ランサーズを使うことで手数料は取られてしまうのですが、よい仕事をすれば自分のプロフィールによい評価がつき、ほかのクライアントからも発注が来るというサイクルが生まれます。この評価制度が競争の大事なポイントだと思ってます。

これまでは、よい評価の方が非常に多いこともあり、例えば4.9という評価の中にどのようなよさがあるのかが見えないという課題がありました。それを受けて、平均点数ではなく満足・残念の積み上げ式に変更しました。また、品質・納期・予算などで採点していた個人評価は、AIによるアルゴリズムで判定するスキル評価に変更しました。

企業からの評価、フリーランスの方の市場評価、納品された仕事の評価など、これまでのサービスで蓄積したデータを元にAIが判定します。これにより、クライアントにとってわかりやすい評価に変更することができました。

数年経てば、「ランサーズの評価はすごくわかりやすい」「以前の評価制度のほうがよかった」など意見がわかれるかもしれません。その場合には戻すこともあり得ますが、評価制度のチャレンジによってランサーズの価値を高めていきたいと考えたうえでの変更ですので、この効果についてはまたご報告できればと思います。

2022年2月開催予定「Lancer of the Year」

今でこそ、フリーランスはみなさまにも知られている働き方になりましたが、どのような苦労や喜びがあってその働き方を選択しているのかという実態を世間に届けることが、中長期的にフリーランスの方の安心材料になると思っています。そのような考えから、「Lancer of the Year」というイベントを毎年開催しています。

今年で8年目ですが、昨年は約2,700人に視聴していただきました。今年は2月26日に開催し、6名の表彰やフリーランスの方向けのコンテンツをオンラインで配信します。無料でご覧いただけますので、説明会資料だけでは見えないランサーズのリアルを見ていただけるとうれしく思います。

3カ年(2024年3月期)の目指す姿及び経営方針

再掲になりますが、3ヶ年の方針についてです。マーケットプレイス事業に集中投資して、全サービスでCAGRプラス30パーセントを目指します。一時的に利益を出すのではなく、継続的に利益が出る構造に大きく変えていきたいと思っています。今期はそのための1年目だと認識しています。

現在は投資を加速させていますが、今期の投資の結果を受けて、継続したほうが投資回収できるのものに関しては来年も投資を継続すると思いますし、方向修正したほうがよいものに関しては投資を縮小していくと思います。そのため、今年が最も投資をするフェーズだと考えていますが、2024年3月期までに継続的に利益が出る構造に変えていきたいと思っています。

来期はそのための土台として取捨選択し、再来期も利益が出て成長率が加速する蓋然性が高い状況に持って行きたいと思っています。引き続き、そのような観点で開示も行っていきます。

私からの説明は以上となります。ありがとうございました。