創業の経緯

田中伸明氏(以下、田中):今日は、会社概要、事業の成長性とKPIの推移、当期業績予想と進捗、成長戦略の4つをお話しします。

i-plugは、大阪に本社があるHRテックの会社です。創業は2012年で、代表の中野と山田、私の3名で起業しました。この3名は、グロービス経営大学院で一緒に学んでいた仲間です。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):もともと知り合いではなく、大学院で出会ったのですか?

田中:大学院で出会いました。1年半くらい一緒に学びながら、ビジネスプランコンテストなどに出て意気投合し、卒業とともに起業することになったという経緯です。グロービスでは初めてのケースだと聞いています。

坂本:それまではみなさま社会人だったのですか? それとも、学生からそのまま大学院に入ったのでしょうか?

田中:全員社会人でした。

坂本:いろいろなバックボーンがあったということですね。

田中:中野はインテリジェンス(現パーソル)で働いており、山田は大手電機メーカーのエンジニア、私はグロービスで法人営業を担当していました。

この3名が意気投合して創業しました。3名で起業するため、もめることもあるだろうと、立ち返るポイントを明確にするため合宿をしました。そこで定めた合言葉が、「我が子のために」です。3名とも小さい子どもを抱えていたため、子どもたちに将来使ってもらえるような仕組みをつくろうと会社を立ち上げました。

社名の由来

田中:i-plugの「i」は「人」を表しており、「PLUG」が「つなぐ」という意味です。自分たちの子どもを含めた若い人たちの可能性を拡げていけるような、社会、大学、企業とのつながりをつくっていきたい、そのつなぎ手になりたい、という思いを込めています。

わたしたちのミッション

田中:ミッションは「つながりで世界をワクワクさせる」「次世代を担う若い人材の可能性を拡げる仕組みをつくる」と掲げています。今は新卒に特化したダイレクトリクルーティングサービスの「OfferBox」と、グループ会社が提供する適性検査「eF-1G(エフワンジー)」の2つを提供しています。

将来的には、「人々の成長を加速させるようなキャリアデータベースプラットフォームを実現したい」というビジョンを掲げて、取り組んでいます。

事業概要

田中:主力事業である「OfferBox」についてご説明します。実は、「OfferBox」は2つ目の事業でした。1つ目は、いわゆる新卒紹介のような事業でしたが、うまくいかずに20日で撤退することになってしまいました。

坂本:20日ですか。撤退の理由を教えてください。

田中:代表の中野も私も営業畑だったため、きちんと計画を練って活動していました。しかし、計画どおりに進捗していないのは明らかだったため、このままでは自分たちの子どもが使うようなサービスをつくれないと思い、すぐに撤退を決めました。

そのあとに中野がひらめいたのが、「OfferBox」のアイデアでした。1つ目の事業は、経営大学院に通っておきながら、机上の空論で始めてしまいました。そこで、しっかりとお客さまの声を聞きながら形にしていこうと、サービスをつくってきました。当時、100名くらいの人事担当者の方々にヒアリングさせていただき、また200名の学生にインタビューやアンケート調査などをしながらつくったのが、「OfferBox」です。

坂本:「OfferBox」がどのようなものか、ご説明いただけますか?

田中:簡単にお伝えすると、いわゆる就職ナビサイトの真逆の仕組みです。豊富な学生のデータベースを私たちが企業に提供し、企業がその中から自分たちが出会いたい、採用したいと思う学生を見つけてオファーというかたちで声をかけ、採用につなげていく仕組みです。

エントリー型では出会えない学生を採用できる

田中:これまでの就職活動は、就職ナビサイトでのエントリー型が中心でした。学生が自分で企業を探して応募するという流れで、学生が企業を知らない限り、企業は学生と出会えません。

坂本:確かにそうですね。

田中:認知度が高い企業、あるいは認知度を高めるために資金をかけられる企業が有利な構造になっていました。

坂本:広告を出したり、「リクナビ」などでオプションで上のほうに表示されるように資金をかけたりということですね。

田中:おっしゃるとおりです。

坂本:大手企業でみなさまが知っている会社か、資金をかけている会社が有利に採用できる仕組みだったのが変わるということですね。

田中:私たちが着目したのは、スライドに記載している図の上のゾーンです。これまでは、企業が採用したい学生に対して、自らアプローチできる領域が十分にありませんでした。中途採用ではありましたが、新卒採用ではありませんでした。そこに対して「OfferBox」で価値提供していきました。

企業はエントリー型では出会えない学生に出会え、認知度がなくても直接自社を知らせることができ、興味を高めて採用できます。学生にとっては、思いもよらない企業から声がかかり、「あなたの経験はすてきですね」「うちできっと活躍できますよ」などとオファーが届くため、自信につながります。

坂本:就職活動では基本的に自信がなくなりますからね。

田中:やはり自分たちの子どもにはそのような就職活動をさせたくない、という気持ちです。

飯村美樹氏(以下、飯村):学生が一生懸命に調べても、自分になにが合っているのかわからないところがあります。

坂本:学生としては、従来型で「しっかり見ていますか?」という思いもありますし、学歴で切られて終わりという場合もあると思います。確かにミスマッチでした。

田中:企業側には過去の採用データや採用ナレッジがあり、採用担当は見極める目も持っています。企業側から学生にアプローチしたほうが、間違いなくミスマッチを軽減できるのではないか、効率化できるのではないかというところが着想のポイントです。

坂本:おもしろいですね。

学生の人となりがわかるプロフィール

田中:企業が先に会いたい学生を見つけてオファーを送るため、学生のプロフィールは非常に重要です。

スライドに記載しているとおり、大学時代の出来事だけでなく、幼少期、中学校、高校でも、学生の人となりがわかる自分らしい出来事を書いてもらいます。あるいは、留学やインターンの実績、語学力、プログラミングの開発力、自分はこのような業界や職種に興味を持っている、などの情報を書くことができます。動画や写真、スライドショーも用いることができ、自由度も高いです。

坂本:従来のエントリーシートは、企業が「こちらに入れてください」という項目を入れますが、こちらは自分が好きなことをPRできる点がおもしろいですね。

田中:学生が持っている自分を表現する力や論理的思考力も、読み解いていくと見えてくるようなプロフィールになっています。

坂本:なるほど、おもしろいですね。

田中:適性検査も受けられるため、各企業が欲しいようなパーソナリティを持った人材を探すことができます。

企業の多様なニーズに対応した学生検索項目

田中:スライドに記載しているのは企業側の検索画面です。「OfferBox」は現在、1学年につき18万人以上の学生に使っていただいています。その中で自社に合った人材を探すのは、企業の力だけでは非効率になる可能性があるため、テクノロジーを活用しサポートしています。

企業は多様なニーズを持っているため、いろいろな検索ができるよう検索軸の豊富さはかなり重視しています。

ミスマッチを減らすためにー1to1コミュニケーションを重視したサービス設計

田中:マッチングについては、ミスマッチ軽減につなげるため、企業と学生がしっかりと相互理解を深められるようなサービスにしたいと思っています。「オファー流通量の制限」は、業界でも初だと思います。流通制限をしても、企業側には1名採用するのに送信できる「オファー枠」を設定し、学生側も一度にオファーを受けられる件数に縛りがある、という工夫をしています。

飯村:企業が検索をかけて優秀な人を集めて、やみくもにオファーを出せるわけではないということですね。

田中:そうですね。一括送信ボタンもありません。プロフィールを見ないと、オファー送信ができないようなUIになっています。

坂本:1名につき40枠ということは、40通送れるというイメージですか?

田中:そうですね。しかし、40「通」ではなく「枠」のため、その中で運用できるようになっています。学生がオファーを辞退した場合は、追加でまた1名送れます。学生側も同じです。

坂本:1週間反応しなかった場合はその枠が復活して、復活したところにまた送れるということですか?

田中:おっしゃるとおりです。

坂本:40枠でしたら、企業もオリジナルなオファーが出せますね。定型文ではなく、「あなたのこのようなプロフィールを見て、このようなところが気になりました」のような文面がしっかりと送れます。

田中:効率的にしたいという企業の思いもあるため、初期は定型文を使う企業も多かったです。しかし、粘り強く「こちらのサイトは、1to1コミュニケーションを重視した設計になっているため、1文、2文でもその学生に合ったコメントを入れてください」とお伝えしてきました。

出会い方も大事で、オファーを送っておきながら大規模な説明会に呼ぶのではなく、「個人面談や少人数で座談会で相互理解が深められるような場に呼んでください」などとお願いしていました。そのほうが効率的だとわかっていたため、データを示して企業に伝えていました。言葉が適切かわからないですが、使い方を教育していくようなかたちでこの10年取り組んできました。

ビッグデータ等を用いたマッチングの効率化

田中:テクノロジーの活用として、企業がこの学生にオファーを送る、送らない、学生が承諾する、しないなどの行動データを取っています。そのような行動データと属性データなどを掛け合わせながら、マッチングの効率化を実現できるような取り組みをしており、着実に決定率が上がってきています。

坂本:かなり上がってきていますね。

田中:こちらがこだわりのポイントです。

坂本:34項目の属性があり、かなりデータが細かいですね。

田中:しかし、細かければよいかというとそうでもありません。どのようなデータを学習させるのか、一番大事なのは意思のこもった行動データがあることだと思っています。例えば、エージェントはいっさい当社のサービスを使っていません。エージェントが送ると、データにノイズが含まれます。また、一斉送信ができないため、意思のこもったデータがきちんと蓄積されます。そういったデータを機械学習させると非常に効果が出やすいと考えています。

坂本:企業からのオファーしかないのですか? 興味がある企業があったら学生から「お願いします」と送ることができない理由はありますか?

田中:トライしたこともありますが、やはり企業側を起点にした仕組みのほうが成果につながりやすかったです。少しですが、学生から「この企業気になります」というアクションができる仕組みはあります。

用途に合わせて選べる料金プラン

田中:現在の日本の就職活動は、インターンシップ期間と本選考期間があります。マネタイズは企業に対して行っており、本選考期間は利用料なしで成功報酬1本で使っていただくことができます。価格は業界最安値水準で提供しているため、「春先にナビサイトで母集団を形成し、選考活動をしたが、結果が出なかった」という企業が低リスクで導入できるのが、「成功報酬型」です。

坂本:両方使う企業もあるのですね。「リクナビ」のような一括採用のサイトを使いつつ、御社も使うということですね。

田中:そのような企業が大半です。しかし、3名や5名ほどの少人数の場合「OfferBox」だけで全員採用している企業もあります。最近は、10名程度採用する企業も出てきています。

坂本:通常、1名につき新卒採用コストはいくらくらいですか?

田中:外部調査を確認すると、50万円くらいです。

坂本:御社はそちらより安いですね。

田中:そちらの中には、採用活動費用と経費も含まれています。費用感を見て、そちらを除いた時に適正な価格帯と考え、38万円で提供しています。

この成功報酬を例に取っていただき、採用ができなくても、よい学生に出会えたという実績ができると、「翌年度はもっと早い時期から使おう」とイメージします。そのような時に提供しているのが、「早期定額型」のプランです。こちらはインターンシップ期間からオファー送信ができます。

イメージは映画の前売りチケットのようなもので、「成功報酬型」の38万円の枠を先に買っていただき、その代わりに、利用料の返金は行いませんがディスカウントするというものです。3名ならば75万円、1人あたり25万円で採用できることになります。

坂本:3名以上採りたいという会社にとっては、そちらがよいということですね。

田中:そのとおりです。採用枠を3名などと設定していただくのですが、設定した枠以上の人数が採用できた場合は成功報酬がかかるかたちです。今は多くの企業の方々に、早期定額型で使っていただいています。

収益構造

田中:収益構造が特徴的なのですが、成功報酬型の場合はシンプルで、採用が決定するタイミングで売上計上となります。しかし、早期定額型の場合は、利用期間で受注した金額を毎月按分して売上計上しています。

坂本:最長2年ですね。

田中:はい、最長24ヶ月で按分する構造になっています。実際に、受注総額のうち3割くらいは翌年度の売上に計上されています。ここでお伝えしておきたいのは、受注が非常に先行するということ、また、売上が遅れて計上されてくるということです。

坂本:今年がんばって受注を増やした分が、来期に計上されるということですね。

田中:おっしゃるとおりです。当期と来期に影響を与えるかたちです。

新卒採用スケジュール

田中:ここからは、事業の成長性とKPIの推移についてご説明します。先ほど新卒採用スケジュールについてお話ししましたが、現在は大学3年生の夏くらいからインターンシップが始まり、次の年の3月に広報、いわゆるナビサイトが解禁するというスケジュールです。

企業が抱える採用課題①

田中:企業が抱えているさまざまな課題に関して、スライドに記載されているようなデータがあります。左側は学生向けの調査結果ですが、「エントリーした企業を、その時点で知っていましたか?」という質問に対し、約半数が「就職活動を始める前から知っていた」と回答しています。だいたい26社くらいエントリーする中で、そのうちの半分はもともと知っていた、つまり有名企業、大手企業だったということです。

企業の課題を調査した結果は右側ですが、非常に高いのが「ターゲット層の応募者を集めたい」というところです。これは中小企業だけではなく、1,000名を超えるような大手企業にとっても高いニーズになってきています。

坂本:少しお話が戻りますが、最近はインターン期間があって本採用という流れになっていると思います。これは、早期定額型の利用企業が「インターンに来ませんか?」というオファーを「OfferBox」から送っているイメージでしょうか?

田中:そのようなイメージです。本選考で採用となれば決定ですが、インターンシップのオファーもありますし、「まずは1回会ってみませんか?」という声かけもあります。

坂本:インターンシップのオファーに一番使えそうですね。

田中:そのほうがうまく採用につながりやすいです。

坂本:一括採用を直接目指すのではなく、複数名のインターンシップを一括で行って、そこから「来たい人はどうぞ」というかたちで選考する流れだと思います。「OfferBox」はそのようなインターン生募集を行うのにかなりよいものだと思いました。

田中:おっしゃるとおり、効果的に使っていただけます。

企業が抱える採用課題②

田中:大手企業にとってもターゲット層の獲得が課題というのがなぜかと言いますと、大手企業は認知度が高いものの、ブランドイメージの影響が非常に大きいのです。学生は、その企業のブランドイメージに引っ張られて応募するのですが、企業側は現在、競争環境が激しく変わっているため、事業内容や戦略も変わっていきます。

坂本:そのために欲しい人材が毎年変わるのですね。非常にわかります。僕はかんぽ生命に在籍していた頃、採用にも少し携わっていたのですが、中途採用の方も参加した一次面接時に、昨年と選考理由がまったく違ったことがあり「これでよいのか?」と思ったことがあります。

新卒ダイレクトリクルーティングサービスの台頭

田中:環境の変化が激しいがゆえ、そのギャップが顕在化している状態です。これを埋めるために、ダイレクトリクルーティングという手法が非常に効果的であると考えています。新卒採用の領域は、市場自体は大きく伸びていないのですが、その中で新卒ダイレクトリクルーティングのみが顕著な成長を遂げている状況です。

TAMは45万人

田中:私たちは、TAMを決定人数ベースで考えています。金額の多寡よりも、新しい市場の形成を重視するスタンスです。就活生は45万人おり、ここに対して、このダイレクトリクルーティングでどれだけ決定を出していけるかというところにチャレンジしていきたいと思っています。現状は3,500名程度で、シェアはまだ1パーセントにも満たない状況ですが、ポテンシャルはとにかく高いです。

ダイレクトリクルーティングのポテンシャル①

田中:ポテンシャルについて、直近のトレンドを踏まえてお伝えします。特に高めている要素が3つあります。1つ目は、先ほどご説明した大手企業などのブランドイメージですが、業界のイメージや先入観から応募がないことに加え、人口が少なくて出会いにくいという課題もあります。例えば、データサイエンティストやエンジニアなどの人材に関しては獲得競争が過熱化しています。また、中小企業やベンチャー企業、地方企業については認知が足りず、なかなか応募が集められないという問題もあり、非常に慢性化しています。

大卒求人倍率の推移

田中:大卒の求人倍率の推移です。スライドの右側に折れ線グラフがありますが、これは従業員規模別のグラフです。ジェットコースターのような急角度になっているのが中小企業で、300人未満の規模になると、1人の学生を3社から5社で取り合っているような状態です。ここはやはり慢性的な採用難と言えます。

学生数の推移

田中:学生数は18歳人口が減少してきているものの、進学率は上がってきています。そのため、大学生はそこまで急激に減ることはありません。しかし、この人数が将来的に減ってくると考えると、やはり採用競争の過熱につながります。

この過熱化する採用市場において、ダイレクトリクルーティングはソリューションになりえます。今後も顕在化したニーズに対して、市場を伸ばしていく可能性があると考えています。

ダイレクトリクルーティングのポテンシャル②

田中:2つ目に、新型コロナウイルス感染拡大の影響です。よく話に上がることですが、コロナ禍の影響で、これまでリアルだった採用活動が一気にオンラインにシフトしました。オンラインになるとたくさんの学生に出会いやすくなりますが、グループ選考や見極め、意向上げがかなり難しいという課題も見えてきました。

結果として、企業側で何が起こったかと言いますと、これまでの採用手法の見直しが進んでいます。大量に集めてから絞り込むのではなく、最初から絞り込む手法で、まず見極めて、1to1でしっかりと口説いていくということです。そのような採用手法に切り替える企業が増えてきており、「1to1でコミュニケーション」することが当社のサービス設計ともリンクしている状況です。

ダイレクトリクルーティングのポテンシャル③

田中:3つ目は、直近のニュースでもよく言われているジョブ型雇用です。

坂本:ジョブ型雇用は、簡単に言いますと「この業務を行うために入社します」ということですね。

田中:そのとおりです。このようなものが新卒採用にも段階的に入ってくると考えると、ダイレクトリクルーティングとも相性はよいため、将来的にポテンシャルの要素となるのではと思っています。

坂本:学生側にも、そのように採用されたいと思っている方が必ずいると思います。オファーメールなどを通じて企業と実際にやりとりして信頼を築いて、その会社に興味が出るということですよね。

田中:おっしゃるとおりです。先ほどもお伝えしましたが、オファー型においては、培ってきたスキルが評価されて自信につながります。今の学生の方々は、非常にいろいろな経験を積んで学ばれているのですが、自信を持てる機会がなかなかないのです。やはり、社会に出るまでにそれを経験してもらうことにより、それ自体が日本の生産性を上げることに寄与するのではないかと思っています。

5年後2万人決定を目指す

田中:このように非常に追い風が吹いている状況は、当社にとってはチャンスだと考えています。ここから先、積極的な投資を行い、2026年3月期には2万人が決定している状態を目指していきたいと思っています。

決定人数の進捗

田中:現状として、当期の第2四半期末時点で約4,300名の決定が出ています。5,000名あたりを目指しているのですが、しっかりとターゲットを捕捉できている状態になってきています。

2万人決定に向けての取り組み

田中:5年後の2万人決定に向けてどのような取り組みを行っていくのかを、スライドに記載しています。このようなかたちで要素分解して、「どこを伸ばしていくとレバレッジが効くのか」ということを社内で議論しながら、限られた資産をどこに配分していくかを考えて取り組んでいます。

決定が出るのは投資を行った期の翌期になるため、当期はすでに、来期の決定人数を伸ばすための施策をどんどん進めています。

各種KPI実績①:登録企業数の増加

田中:KPIも開示していますが、2022年3月卒の学生ではなく、2023年3月卒の学生のKPIが今どのように進捗しているかをご覧いただければと思っています。登録企業数は共通ですが、12月末で1万社を超えることができました。順調に右肩上がりで伸びてきています。

各種KPI実績②:登録学生数の増加

田中:登録学生数も、スライドのグラフの水色の部分を見ていただくと、昨年と比較して着実に伸びています。少し伸び率が鈍化しているように見えるかもしれませんが、2022年卒はコロナ禍の影響もあり、想定以上に学生の登録が伸びたもので、前期が異常値というところがあります。

プラットフォームサービスということで、企業側と学生側とのご利用のバランスは非常に大事です。過去、学生に対して企業の利用が少ない状態があったため、調整しているような状況です。

坂本:CMのイメージはあるのですが、御社はどのあたりに力を入れて、この登録数を増やしているのですか?

田中:競争優位性のところにもなりますが、私たちが一番大事にしているのは口コミです。今、口コミとオーガニックでの登録は4割5分くらいあり、その割合は年々上がってきています。それが何を証明しているかと言いますと、学生が満足してくれているということです。

坂本:コロナ禍でもテストや就職活動がありますし、その上で学生の横のつながりもありますが、その中で伸びているのはすごいと思います。

田中:ありがとうございます。そのような提供価値を高めることが、プラットフォームサービスのネットワーク効果を高める上では欠かせません。そこにしっかりとフォーカスして取り組むことが当社の戦略になっています。

坂本:大事なことですね。

各種KPI実績③:アクティブユーザーの増加

田中:アクティブユーザー数も、ナビサイトを含めた類似サービスとして開示しているところはありません。当社が高いかと言いますと、まだまだ課題はあるのですが、あえてこの数値を開示して、さらに高めていくことにコミットしています。アクティブであるということは、学生にとって価値があるということになります。

坂本:こちらのアクティブユーザー数は、3月、4月と、よくある就職活動のピーク時が高いかたちなのでしょうか?

田中:そのとおりです。全登録者数のだいたい5割強がアクティブな状態になっています。

坂本:大学3年生の時期からアクティブに動いているということは、早期に登録者数がきちんと増えているということですよね?

田中:はい、順調に入ってきています。

坂本:インターンシップの目的でも使われているということですね。

各種KPI実績④:オファー送信及びオファー承認(単月推移)

田中:最もみなさまにご覧いただきたいKPIは何かと言いますと、スライドの下段のオファー承認件数です。来期に向けて、どのくらいの学生がオファーを承認しているのかという承認件数の伸びが、決定人数の伸びにつながります。

坂本:1年ずれてくるということでしたね。

田中:はい、来期にリンクしてきます。累積で見ると150パーセントで進捗していますが、来期に向けて毎年140パーセントで成長させていこうと思っているため、非常に順調な進捗と言えそうです。

業界内のポジショニング

田中:業界内のポジションです。スライド右側の棒グラフを見ていただくと、大手ナビサイトが1位、2位を占めますが、2021年卒の時期、一昨年くらいから「OfferBox」は3番手に入ることができており、大手サービスに迫るほどの闘いができています。

左側のグラフの下部に赤と黄色の折れ線がありますが、このD社、E社がダイレクトリクルーティングのサービスです。そこのシェアと比較すると、だいたい4倍という状態になっています。そのため、「新卒×ダイレクトリクルーティング」の市場を牽引していくのが我々の役割だと思っており、投資を止めない、むしろ今後もどんどん投資していこうという考え方です。

業績予想と進捗

田中:業績について簡単にご説明します。当期は、前期比でプラス36.4パーセントという売上高を目指しています。先ほどからお伝えしているとおり、中長期の成長に必要な投資を行っていくため、営業利益は減益となる見通しですが、ここまでの進捗として、第2四半期時点では35.3パーセント増と計画どおりに進捗しています。

OfferBoxの当期計上が確定している売上高の進捗について

田中:収益構造のところでお伝えしたとおり、受注が先で売上計上が後になります。「OfferBox」の売上は全体の9割を占めているのですが、当期に計上が確定している売上高、受注はこれに含まれています。スライドのグラフで、当期に計上が確定する売上高を見ると、第2四半期時点で7割に達しています。こちらも例年どおりのペースで積み上がってきている状況です。

2050年の労働市場の問題をテクノロジーで解決する

田中:成長戦略です。これから社内でさらに議論して、今後みなさまにもお届けできればと思っています。私たちが大事にしているのは、人材と企業とのよいマッチングを生み出していくことであり、ここが私たちの強みだと考えています。この「テクノロジー×プラットフォームビジネス」をさらに磨いていきながら、日本の労働人口減少の問題、生産性を向上させていくという問題に対して、しっかりと価値を提供していきたいと思っています。

成長戦略

田中:まずは主力事業である「OfferBox」をより伸ばしつつ、競争優位性を十分に積み上げて、新しい事業にどんどんと活かしていくような展開に、3ヶ年でまずはチャレンジしていきたいと考えています。

坂本:新しい事業はどのようなイメージでしょうか?

田中:まだこのような場でお伝えできる状況にはなっていませんが、私たちは学生と企業をマッチングする技術を磨いてきたため、やはり新卒の前後に関わる事業を展開していくことを考えています。

また新卒事業まわりでも、まだできることがたくさんあると思っています。例えば、説明会はコロナ禍においてリアルでの開催はなかなか難しくなっていますが、オンラインで開催するソリューションはいまだ十分ではなく、周辺領域だけを見てもまだ価値を高めていくことはできると思っています。ですので、私たちは技術だけでなく、この数年で就活生の3人に1人に使われており、1万社の企業が登録しているという顧客資産などを活かした事業展開を考えていきたいと思っています。

坂本:学生のデータは毎年たまっていくため、事業展開すれば非常に有利に進みますね。使い方はいろいろとありそうな気がします。

田中:個人情報の観点により、学生の利用が終わると常にデータを削除していかなければなりませんが、認知度は非常に高まってきています。

坂本:「中途採用のほうには行かないんですか?」といった質問や、個人情報を削除するのではなく、次は中途採用として登録してもらえれば資産として残るというお話も多分あると思います。

飯村:まさに今、少子化に備えて「中途への事業展開はありますか?」という質問がありましたが、少子化で獲得競争が激化すれば追い風になるというお話に「なるほど」と納得しました。

質疑応答:学生へのオファーの傾向について

坂本:オファーがよい学生がいたり、オファーが同じ学生に集まったりという傾向はありますか?

田中:プラットフォームとしては、多くの学生に機会を提供していきたいと思っています。先ほどお話しした、オファー送信数の制限や学生が検索される表示順位などのオファーが分散されるような仕組みをつくっています。

例えば、学生のプロフィールの入力では、直近にログインを行ったかどうかで表示順が変わることもあり、結果的にオファーがうまく分散するようになってきています。

「高学歴な学生さんほど、オファーがもらえるんですか?」というのも、よく言われますが、高学歴の学生だけにオファーが集まっているかというと、そのようなことはありません。実際にオファー送信の分散状況を見ると、大学群の登録の構成比率とほとんど同じように分散しています。

坂本:つまり、中小企業では今までの社員の方のボリュームゾーンの学歴でオファーをかけているため、だいたいの採用が分散されていくのでしょうか?

田中:おっしゃるとおりです。同じ企業規模、業種でも、オファーは全然違うタイプの学生に送っていることが、蓄積したデータから見えてきます。また、データを学習させて、学生の表示順位などにも反映させているため、使えば使うほどオファーは分散していく仕組みとなっています。

質疑応答:近年企業が求めている人材について

坂本:企業が求める人材が年を追って変わっていくこともあるのでしょうか? 昭和の時代には、画一的に「このような人が欲しい」ということがあったと思いますが、今はそうではなくなってきていますか?

田中:まず、1つのタイプの人材だけを採りたいという企業は減ってきており、これまでにいないタイプの人材を採っていきたいというニーズも高まってきています。「これまでに採用していない人材=エントリーしてきていない人材」ということで、「OfferBox」を手に取る企業が多いです。

飯村:企業側からそれだけのサポートをしてもらえると、学生はすごく助かるでしょうね。

坂本:学生は助かるだけでなく、興味のない企業からオファーがくることも、1つの承認としてうれしいのではないでしょうか?

飯村:オファーをもらえば、「え、なに? どんな会社?」とその企業を見ますよね。

坂本:絶対に見ます。そこはすごくよいサービスだと思います。

飯村:いざ調べてみて、「すごくおもしろそう」となるかもしれません。

坂本:私の学生時代には、最後のほうで就活をあきらめてしまう人がけっこういました。夏前までに決まらず就活をやめてしまう人もいますが、そのような人にオファーが届けば、就職をする機会になると思います。

田中:おっしゃるとおりです。実際に、2022年卒はこの夏以降に企業の利用が多くなっています。

坂本:スライド26ページのグラフの山の部分ですね。

田中:今もなお、1月、2月と毎日2022年卒の学生の登録があります。実際に3月末まで採用決定が出ます。おそらく、その時期まで機会を得られる仕組みはこれまであまりなかったのではないかと思っています。ですので、まだ就活に取り組んでいる方もあきらめずに「OfferBox」を使っていただきたいと思います。また、まだアクティブな学生がいるため、企業にもぜひ手に取っていただきたいと思います。

飯村:いろいろな事情で動くのが遅くなってしまった学生も多いでしょうね。

坂本:新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあり、特に多いと思います。

田中:コロナ禍以前では、12月頃に海外から戻ってくる学生などがいました。

質疑応答:ビジネスモデルの独創性について

坂本:会場から「ビジネスモデルは、大手が真似しにくいビジネスモデルなんですか?」という質問がありますが、いかがでしょうか?

田中:仕組み自体は大手企業でもつくることはできると思います。当社は創業してまもなく10年ですが、実際に大手ナビサイトを提供している企業が参入してきているほか、中途採用の領域でダイレクトリクルーティングでシェアを獲得している大手企業なども参入してきています。

ただし、当社のシェアは伸びており、大手企業との競争には勝つことができている状況です。やはり、今日お伝えしたこだわりのポイントや、提供価値を高めるためのサービスや蓄積したデータを磨いてきたところが優位性となり、なかなか真似できる状態になっていないからだと考えています。

質疑応答:学生の登録を支援する制度について

坂本:先ほど登録者と利用企業の採用数のバランスのお話がありました。登録者数を増やすためという意味で「学生登録を支援していくために、就職祝い金のような制度をつくる考えはありますか?」という質問がきています。

田中:実は、創業初期からあります。当社は最初から成功報酬型で、採用が決定したことを企業側から報告してもらい、それが確かかどうかを確認する意味も含めて、学生からも報告をもらう仕組みとなっています。

坂本:不正利用などはないと思うものの、一応確認するということですね。

田中:ただ、祝い金が高額になるのはあまりよくないため、1万円のAmazonギフト券をお渡ししています。

坂本:コストの管理をしながら、配れているということですね。

田中:おっしゃるとおりです。

飯村:1万円あれば靴なども買えますね。

坂本:学生が申し込むことは間違いないですね。誰もが登録すると思います。

飯村:1to1のマッチングをこれだけ入念に行ってから入社となると、企業に対する愛なども深まりそうな気がします。新入社員となった学生たちのその後の様子はいかがでしょうか?

田中:定性的には「『OfferBox』で採用決まった誰それさん、今もがんばってくれているよ」と聞きます。また最近は、学生が入社後に採用担当になって「OfferBox」を使ってくれたということがよくあります。

坂本:それは将来へのプラスですね。

田中:ただし、定量的には個人情報や機密情報の関係で調査しきれていないところがあり、将来的になにかしらの解決策を見出していきたいと思っています。

質疑応答:「OfferBox」における学生へのオファー制限について

坂本:スライド10ページについて、「先ほど、企業のオファーは40通までの制限があるというお話がありましたが、学生側にも制限はあるのですか?」という質問です。

田中:学生も15社から同時にオファーをもらうと、それ以上はいったんもらえなくなります。

坂本:そうなのですか。

田中:先ほどお伝えしたように、平均的なエントリー数はおおよそ26社です。選考に参加している社数の平均は今は10社のため、15社の枠というのはけっこうな数で、それが全部埋まることは、かなりそこを中心に動くようなかたちになるのです。

坂本:やはり分散が大事だという話ですね。

飯村:15社の選考を進めるのも大変ですよね。

田中:学生はけっこう大変ですよ。

坂本:オファーを承諾したら、ほぼすべての面接へ行くことになるため大変ですよ。就職氷河期だった私たちの頃は、承諾しても連絡が返ってくるかどうかわからなかったため、エントリーしたのは100社くらいで、面接に行ったのは50社くらいという不毛な状況でした。

田中:今は少し減ってきてはいますが、大学のキャリアセンターや『就職四季報』からもよく情報が入るのですが、いくつか内定を保有したり、なかなか決めることができない学生も多くなっていると聞いています。10年前からすでにそのようなお話はあったため、「OfferBox」上では「この企業のオファーを残すのか、残さないのか」というのを決めることを学生にはしてもらいたいと思っています。

坂本:オファー側も40通の制限がありますからね。

田中:そのためには、その企業のことを知った上で判断しなければなりません。また、自分が何で判断するのかも考えなければいけないため、それが自己理解につながり、自分のキャリアを描いていく上での軸にもなっていきます。実はそのような思いを込めたサービス設計となっています。

飯村:自己分析しないと決断できないため、学生にとっても非常によい学びの場になりそうです。

田中:学生から「『OfferBox』のよいところはどこ?」という声がどんどんと集まる仕組みがあるのですが、「自己理解が深まる、企業分析、選択肢が広がる」という声をたくさん受け取っています。

質疑応答:「OfferBox」への企業からのニーズについて

坂本:「OfferBox」のパターンについて、体育会系の学生のためのものもあるそうですが、企業側からそのようなニーズがあるのでしょうか?

田中:企業側のニーズは数多くあります。「OfferBox」も学生に見つけてもらいやすいように、アスリートなど、以前はいろいろな切り口で見せることで手に取ってもらいやすいマーケティング活動を行っていました。そのため、一定数は体育会系の学生も登録しています。

また、昨今はDXを推進してくれるようなエンジニアの人材も非常に豊富で、就活生の3人に1人は登録していますので、学生のデータベースは、たいていの企業のニーズをカバーできるようになっていると思います。

坂本:おもしろいですね。

飯村:聞けば聞くほど、おもしろいですね。

質疑応答:今後のTVCM放映予定について

坂本:「CMを継続して、ある程度認知度は高まったと思いますが、毎年新たな就活生が出てくるため、ある程度の露出は必要だと思います。今後もCMは続けていきますか?」という会場からの質問です。コスト面にも絡むと思いますが、いかがでしょうか?

田中:CMはまだほとんど行っていません。この第3四半期に、福岡でテストマーケティング的に実施したくらいで、実はマスマーケティングにはほとんど手を出していない状態です。

坂本:口コミなどに取り組んでいるのでしょうか?

田中:そうではなく、サービスそのものを磨くところにこの10年注力してきました。ただし、上場し、キャッシュも潤沢にはなってきているため、これからマスへの取り組みにもチャレンジしていけるのではないかと思い、テストマーケティングを開始しています。ですので、まだCMを行っていない状況で、学生の3人に1人が使っています。

坂本:それはすごいですね。

田中:企業も1万社の登録がある状態なため、マスのプロモーションを追加することによって、さらに伸ばしていくことはできるとイメージしています。

飯村:友だち同士の口コミもありますが、大学のキャリアセンターの人が「とりあえず、みなさんこれに登録しておきなさいね」といった話にもなっていそうですね。よいものだということは、採用に関わっている職員の方のほうが余計わかるはずです。

田中:そうですね。本当にこの数年は、大学から「学生に『OfferBox』について説明しに来てください」とお声がけいただく機会も増えており、情報交換などを行いながら、よい関係性をつくれていると思います。

質疑応答:適性検査によるシナジーについて

坂本:適性検査のお話もありましたが、すでに「OfferBox」を使っており、「適性検査もやれます」という会社が多いのか、それとも適性検査を先に使っている企業へ「OfferBox」の営業を行ってのシナジーが多いのか、どちらでしょうか? どちらもシナジーとなっていると思いますが、そのあたりの状況をうかがいたいです。

田中:スライド42ページをご覧ください。実は適性検査「eF-1G」は、「OfferBox」に標準搭載されており、すべての企業が無料で簡易的に各企業で活躍している人材の要件分析を行えるツールとなっています。そのため、活躍している人たちと同じようなタイプの人を「OfferBox」上で探すことや、「活躍しているAと同じようなタイプを見つけ出す」ということが無料で可能です。

一方で「eF-1G」自体は大手企業を中心に、エントリー型の採用活動でも「SPI」などと同じように使われています。当社の利用企業は大手企業から中小企業まで幅広いため、今後は「eF-1G」を「OfferBox」で少しご利用いただいた企業に、エントリー型でも使っていただくような事業展開が可能であると考えています。

田中氏によるご挨拶

田中:先ほどもお伝えしましたが、自分たちの子どもたちを含め、「若い人たちの可能性を広げるような仕組みをつくっていきたい、日本の生産性向上に貢献していきたい」という思いで取り組んできています。IPOもそれらを目指して取り組んできており、これからさらに伸ばしていきたいと思っているため、ご注目いただければと思います。

飯村:最初のスタートは「我が子のために」ですから、信頼感がありますね。