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田鎖郁夫氏(以下、田鎖):視聴者のみなさま、本日はIRオンライン説明会にご参加いただき、ありがとうございます。株式会社エヌ・シー・エヌ代表取締役社長の田鎖郁夫でございます。
さっそくですが、決算の内容についてご説明します。本日ご説明させていただく内容は、今日初めてエヌ・シー・エヌをお知りになった方もいらっしゃるため、簡単に会社概要・事業概要を、連結業績ハイライト、2021年3月期のトピックス、最後に2022年3月期(今期)の事業計画について、ご説明させていただきたいと思います。
会社の目標
当社の設立は1996年になりますが、設立以来、「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」ということを目的にしてきました。その後、「日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる。」ということをもう1つの目標に設定し、25年間、事業に邁進しています。
日本に安心・安全な木構造を普及させる。
スライドは「日本に安心・安全な木構造を普及させる。」ということで、これは多くのハウスメーカーと一緒のことを言っています。
ところが、現在の日本では「木造2階建ての建物には構造計算を施していない」ということで、1996年から現在に至るまで、そのような事実があります。
日本は、地震による多くの災害に襲われていますが、木造住宅だけは特別な「4号特例」という法律で、「構造計算をしなくてよい」ということになっています。そのようなことからさまざまな不具合が起こっているため、これを多くの工務店、ビルダー、ハウスメーカーと一緒に解消していこうということで、新しい建設会社のネットワーク「New Constructor’s Network」が、当社の由来になっています。
地震で壊れない家をつくる。
そのような理由から作られた会社ですから、「SE構法」という独自の構法があります。こちらの構法を用いて安全な建物、そして構造計算を施すことが当社の特徴になります。
現在、すでに2万5,000戸以上の木造の建物に100パーセント構造の計算を施し、ビルディングなどの施設と同じ精密な構造計算をして、建物はすべて保証をつけてお売りしています。
現在まで、このような会社は「日本では当社だけ」と自負しています。
日本に資産価値のある住宅を提供する仕組みをつくる。
日本におけるもう1つの問題点は、投資家のみなさまにとっては当たり前のことかもしれませんが、日本の住宅に対する投資は、20年くらい経つと建物代がタダになる、または取り壊し費用でマイナスになるということです。
こちらの問題について、日本人を豊かにしないこの仕組みを、工務店、ハウスメーカー、設計事務所など、多くの方々との連携により解消していくということが2つ目の目標です。
事業セグメント
このような会社の成り立ちから、当社のセグメントは、「木造耐震設計事業」と「その他」に分かれています。
最近の住宅以外の木造の建物について、東京オリンピックのメインスタジアムなどもご覧になるかもしれませんが、屋根はすべて木で張ってある大規模木造建築物が非常に増えています。そのようなところから2つ分けました。
「その他」は、「省エネルギーの計算サービス」「住宅ローン事業」そして、後ほどご説明する「BIM事業(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」です。最近のデジタル化の流れから、このような事業を6年以上前から続けています。
当社グループの状況
エヌ・シー・エヌを中心として、このようなグループ会社によって事業を運営しています。先ほどご説明した金融事業、アセット事業の住宅ローンサービス、そして「SE構法」以外の多くの木造建築物、大規模建築物の構造設計を専門で行う、木構造デザインという会社を昨年立ち上げました。そして、MAKE HOUSEという会社がBIM事業となるわけですが、こちらはテクノロジー、ITの分野の会社です。
スライド下の3会社が特徴的で、みなさまご存知の無印良品があります。良品計画との合弁会社により、無印の持つ文化、ライフスタイルを住宅として表現するMUJI HOUSEという会社を中心に、YADOKARI、そして地方創生をお手伝いする一宮リアライズという会社を運営しています。
これら3つの会社は、コロナ禍によりみなさまのライフスタイルが変わっていくところを吸収し、付加価値に変えて発信していくための仕組み作りや、テクノロジーから始まった会社です。みなさまの生活全般に至るところまでサービスの領域を徐々に広げていこうという取り組みから、このような状況になっています。
2. 連結業績ハイライト
業績のハイライトをお伝えします。
2021年3月期 連結業績
昨年度、2021年3月期の連結業績ですが、売上高は64億3,100万円、営業利益は2億8,200万円、経常利益は3億2,300万円で、昨年の決算から2.7パーセントの減収、それに対して25パーセントの増益というかたちで着地しました。
業績推移
経年の変化をご覧いただくために、5年分のグラフで表しています。売上高は毎年成長してきました。ただ、「新型コロナウイルスの影響」とあまり言いたくないのですが、今期は残念ながら昨年を下回る結果となっています。
しかしながら、売上総利益、粗利の部分は昨年、一昨年を上回る成績を残しています。また、経常利益は3億2,300万円ということで、過去最高の利益を獲得できました。
これらにより、株主のみなさまには「増配」というかたちで、今回発表させていただいています。
事業セグメントとセグメント売上高
事業セグメントごとの売上高についてです。住宅分野では、「新型コロナウイルスの影響はどうだったの?」という方が多くいらっしゃいます。大手ハウスメーカーは10パーセント弱の減少はあったと思われますが、前期比マイナス1.5パーセントの着地となりました。
一方で、大規模の建物、施設建築に関しては前期比マイナス約20パーセントと、前年を大きく下回る結果となっています。
また、省エネルギーや金融の分野に関しては、今時代のニーズが省エネルギー、脱炭素ということですから、順調に2桁成長をしています。
セグメント別売上高の四半期推移
実際に、新型コロナウイルスの影響に関心を寄せていただいていたため、四半期ごとの売上高、利益の推移をお示ししています。第1四半期は、新型コロナウイルスの影響により大きく下回り、また、第4四半期は1月から緊急事態宣言が発出されたことにより、このような状況になってしまいました。
出荷棟数の四半期推移
構造計算を必ず建物に施しているため、構造計算が先行指標となり、そして材料の出荷があとについていくことになります。実際の構造計算の出荷のグラフもこのようなかたちで、第1四半期と第4四半期は、工務店、ハウスメーカーの営業の停滞により、構造計算、棟数も下回っています。一方で、第2四半期、第3四半期については、かなり取り戻した状況です。
大規模木造(非住宅)分野の四半期推移
大きく成長を期待している大規模木造建築物に関しては、第1四半期は非常に順調です。実は、大きな建物ですから出荷が突然止まらないということがあるわけです。
ところが、第2四半期、第3四半期になると、どうしても工事が密になってしまうということで、現場が止まるという現象が起き、売上を落としてしまった状況です。
そのようなことから、「引き合いも下がってしまったのではないか」とご心配の方もいらっしゃると思います。実際に「構造計算をしてほしい」というご依頼、また、ご相談の件数は、新型コロナウイルスの影響がある中でも、例年どおり多くいただいている状況です。そのため、今後は物件の出荷というかたちで、昨年度分のマイナスを取り返せると考えています。
売上総利益の増減要因
「売上が下がっているのに、なぜ利益は増えたの?」ということについてです。当社は21パーセント程度の売上総利益がありますが、売上高が減ったことにより、そこは減少しました。
ただ、昨期は新たな登録施工店、ネットワークのパートナーの増加、そして一昨年来、ITに対する投資を行っており、構造設計事業の効率化により「売上高は下がったが粗利が増加した」という現象が起き、今期は増益というかたちになりました。
経常利益の増減要因
経費については、「新型コロナウイルスの影響で減少したの?」という方もいらっしゃいますが、スライドにある経費を見ていただくと、ほぼ変わっていません。社員を増やし、今後の需要増に対しての準備をしっかりと行っています。
残念ながら交通費は減っていますが、これは「Zoom」営業などに変わったことにより若干減ったものです。コロナ禍でも停滞することなく、経費も使っているかたちです。
貸借対照表
結果として、貸借対照表はこのような結果となっています。当社は借入金もないため、利益分だけが増えている状況です。
CF計算書
キャッシュ・フローを見ていただくと、もっとわかりやすいと思います。営業キャッシュ・フローが3億9,700万円で4億円ほど増加し、投資キャッシュ・フローは、さらにシステム投資を大きく実施しました。DX化に対するシステム投資、そして、コロナ禍で会議室がいらなくなったことによるオフィスのレイアウト変更など、積極的、かつ前向きな投資を行ったということです。
また、財務キャッシュ・フローについては、配当をお支払いしています。ご覧いただくと、配当金が毎年増えていることがおわかりいただけると思います。
3. 2021年3月期のトピックス
昨年度のトピックスについてです。
登録施工店の増加
先ほど申し上げましたが、安定的にしっかりとしたサービスを提供したいということで、新たなネットワークパートナーを募集してきませんでした。ただ、株式公開後、我々のシステム、体制も整ったことから、今期は新たに約50社の新規パートナーの募集ができました。それにより、引き合い数も増加しています。
[DXの推進] デジタル住宅展示場/Instagram
一方で、昨年度は新型コロナウイルスによるニューノーマルな営業体制ということを考え、当社のネットワークのみなさまと一緒に、「YouTube」を使ったデジタル展示場や、「Instagram」による若い方々への訴求を促進しました。グラフを見ていただくと、まっすぐ伸びている状況がおわかりいただけると思います。
[DXの推進] 住宅性能シミュレーションのサービス拡充
長年、このシステムに投資してきましたが、1つの結実のかたちとして、大地震の地震波により地震のシミュレーションを精密に行うサービスができました。
昨年から、家を新築される方に「我が家は地震でどうなりますか?」と聞かれたら、「東日本のような地震、熊本のような地震ですか?」とお伺いしています。「その地震を想定して、実際に揺らしてみましょう」ということで、スライドにあるようなシミュレーションのサービスの提供により、曖昧な表現を使わない、みなさま方に安心をお届けするサービスがスタートしたということです。
[非住宅分野の取り組み] 中大規模専門のプレカット工場ネットワークを形成
一方で、「住宅以外の分野に対しての取り組みはどうですか?」ということですが、こちらは、新会社である木構造デザインという会社が作られました。どういったサービスをスタートしたかと言いますと、大きな建物はゼネコンや大きな設計事務所が関わりを持っていますが、木造については、これまでそのような方はなかなか着手してこなかったということがありました。
ですので、どのようなところで、どのような値段で買えばよいかわかりづらく、ましてや、構造設計をする人もいないということもあり、当社のノウハウを使い、「SE構法」という当社の製品のみならず、「CLT構法」や「2×4工法」も含めてマッチングしていくサービスを開始したわけです。
[非住宅分野の取り組み] プレカット工場ネットワーク
そんな中で、さらに供給先を増やすために、全国の工場、大手18社と提携し、昨年、木構造を供給するネットワークを完成しました。18社による供給量は、日本の全木材の加工高の14パーセントに相当する工場群のネットワークということで構築されています。
今期も、このネットワークを30社まで増やし、一層安心してお使いいただけるシステムを構築していきます。
[MUJI HOUSE] 新商品「陽の家」グッドデザイン賞受賞
そして、コロナ禍により地方への移住も促進されましたが、MUJI HOUSEという我々の合弁会社では、「陽の家」という、ご覧いただくとわかるようにスギの板を使ったワンルームの平屋を発表しました。こちらは「グッドデザイン賞」も受賞し、現在は別荘用、またはご自宅用として、非常にご好評いただいている商品となりました。
[ウッドショック]
昨年来、みなさま方のもう1つの関心事である「ウッドショック」というテーマが、テレビニュースでも流れています。ウッドショックに関しての原因や、さまざまな対策については、「教えて! 田鎖さん」という私の「YouTube」がありますので、そちらで詳しく解説しています。
今日は簡単にご説明します。コロナ禍により新築住宅の増加が始まり、アメリカの住宅市況が好調に推移しました。それにより、ヨーロッパも同じように環境問題から木造の需要が高まり、加えて中国の需要が高まったことにより、日本に輸入材が入って来にくくなり、価格が高騰しているというのが「ウッドショック」ということです。
[ウッドショック] アメリカの木材市況の高騰
スライドのグラフをご覧ください。株価のように商品先物相場の表でご案内していますが、今年の5月に入ってから、木材の価格は約3倍に跳ね上がっています。
このような中で、多くのハウスメーカー、プレカット工場は材料不足で受注を制限する動きが出てきているのがウッドショックの状況です。多くの投資家も、住宅屋、または当社も木材を供給できるのかというご心配をいただいていると思います。
[ウッドショック] 安定供給を可能とするサプライチェーン
私の経歴ですが、25年前まで商社の木材部でアメリカ・カナダ・ニュージーランドから材木を輸入していたため、ウッドショックに関しては非常に強みがあります。当社は安定供給を可能にするこのようなサプライチェーンを、構造設計会社にしては珍しく持っており、無印良品の家でご案内すると、受注した図面ですぐに構造計算します。
構造計算すると、どういった材料がどのくらい使われるのか、どのくらいの強度が必要なのかわかるため、それをダイレクトに国内の集成材工場、または製材工場にデータを送ります。そこからしっかりとした製品を作り在庫を管理し、全国にある提携しているプレカット工場にタイムリーにお届けするというシステムになっています。
一般的な流通では、工場に発注して材料を手配するため若干あわてたりしますが、当社は約5ヶ月前から使用する材料をすでに発注しているため、これから6月に入りますが1棟も納期遅れ、材料不足は起きていません。
これから需要供給の問題でタイトになるかもしれませんが、当社はこのような状況で強みを発揮できます。そして、今期もサプライチェーンを強化していきます。
[ウッドショック] 資材の安定供給
日本国内、海外から材料が入りにくいという状況もありますが、当社はもともと国産材の利用を促進していたため、現在も3割程度は国産材によって賄っています。
国産材のスギは弱いところがあるため実験が必要になりますが、「SE構法」については認定も昨年9月までにすべて取得済みですので、国産材の利用を促進するということで、ウッドショックに対しては他社と比較して強い状況を生み出していきます。
2022年3月期 通期連結見通し①
2022年3月期、今期の事業の計画についてです。今期計画している売上高は73億6,500万円、営業利益は2億200万円、経常利益は2億5,700万円ということで14パーセント、2桁増収に対してマイナス20パーセントで、最初から減益で計画しています。これには理由がありますので、説明させていただきます。
通期連結見通し 事業セグメントとセグメント売上高
今期は、住宅分野については順調にいつもどおりの7パーセント以上の増加を見込んでいます。一方で昨期は出荷が滞り、コロナ禍により工事現場が止まってしまったものの再開したことにより、前期比プラス86パーセントと、約2倍の売上高を見込んでいます。
2022年3月期の方針
今期のテーマは、成長分野への投資です。株式の公開から2年、昨期はコロナ禍により全国同業でもさまざまな投資活動が停滞しています。そんな中で成長分野である大規模木造建築分野とBIM事業、後ほどご説明しますが3次元CADの分野に対しての投資、そして技術部門への投資ということでR&Dセンターを開設します。この3つを成長の起爆剤として今年は仕掛けていくということです。
[①大規模木造建築(非住宅)分野] 成長計画
中期経営計画、売上計画の中で、大規模木造建築の売上を約30億円まで伸ばすことを目標としていましたが、残念ながら昨年度は停滞し、10億円の予定が6億円での着地となりました。
こちらの停滞を今期の中で成長軌道に戻し、そして、中期経営計画をコロナ禍により後ろ倒しにすることなく、しっかりと実現していきたいというのが当社の考え方です。それには今年は1回投資を行い、屈んで大きくジャンプするその前の年であると位置付けています。
[①大規模木造建築(非住宅)分野] 投資計画
当然、日本では木造の構造計算について住宅では行っていなかったため、そのような人材の確保がなかなかできない状況にありますが、当社は年間で1,600戸の建物の構造計算をしていますので、その人材をもっと増やして強化していきます。
先ほどお見せしたプレカット工場の供給量を増やすための全国ネットワークの拡大、そして「大規模木造建築は、当社でできます」という認知活動の強化のため、多くの投資を行っていきます。
[②BIM事業] BIMの普及状況(海外)
もう1つ、これは新しい情報ですが、BIMという世界があります。「Building Information Modeling」の略で、世界でもBIMで通じます。建築物の図面はこれまでの日本は手書きや平面図など、2次元の世界で受け渡しが行われていましたが、実は世界中で2次元の図面だけで建築を行っている国はほとんどない状況です。
アメリカでは、2012年のBIMの導入率、3次元でのデータの受け渡し率は7割となっています。シンガポールでは確認申請という、政府に出す図面は3次元のBIMでないといけないというルールになっており、すでに5年が経っています。
イギリスでは2013年から動きが始まり、また中国では言わずもがなですが、当然ゼネコンはすべて3次元の図面で受け渡しを行います。これはデジタルの流れの中、建築ミスの発見や耐震性の確認ということで、格段の差が出てくるわけです。
[②BIM事業] BIMの普及状況(国内)
そんな中で、日本も大手ゼネコンなど、大きな建物を作られる方々の導入率が8割まで増加してきました。実際の建物に使われ始めたのは昨年、一昨年くらいからですが、木造の大規模物件においては、比率すらデータ化されていないくらいの遅れをとっています。日本では手板に絵を描いていた時代もありましたから、そこからするとかなり進歩していますが、世界標準からするとかなり遅れている状況です。
[②BIM事業] BIM/CADセンターの設立
これに対して、当社は6年前からMAKE HOUSEという会社でBIM事業を行ってきました。ファンダメンタルが整ってきたため、これからは入力作業する人間が必要です。
当然、海外の人材はできるのですが、日本にしっかりとしたCADセンターを作らないと、進歩の後押しができません。したがって、あえて日本でBIMのCADセンターを作ることにより、木造をBIMにしたいという方を応援していきたいと考えています。
[③R&Dセンター]
R&Dセンターです。これから必要になる木構造の接合部の強度や耐震性能について、もっと基礎的な研究を行っていく必要があります。ですので、独自のR&Dセンターを作り、足腰の強い技術開発をしていきたいと考えています。
2022年3月期 通期連結見通し②
以上のことから、売上総利益は当然増加させますが、今期に関しては来期に対するしっかりとした屈み込み、つまり成長分野への投資を行うことにより、このような決算を予想しています。ただし、配当は株主さまに対する還元ということで、今期と同様の金額の配当を予定しています。
中期計画(売上高)
中期計画の100億円に対して一旦アゲインストの風が吹きましたが、それに対してさらに当社の強みを活かせるところを目標としています。借入金もありませんし、足腰の強い当社はそこからもう一段ジャンプするための事業を今期行っていきます。
コロナ禍により先行きがまだ不透明ではありますが、ご自宅で過ごす時間が長いみなさまにとって、地震が起こっても、我が家で安心して暮らしていただける耐震住宅にお住まいいただけるように、これからも努力してまいります。よろしくお願いいたします。
質疑応答:構造計算のビジネスモデルについて
司会者:工務店、またはハウスメーカーに構造計算を売るというビジネスモデルということでしょうか? 簡単に言いますとそのようなことですか? というご質問が来ています。
田鎖:当社の目的は、日本で「構造計算しない」または「できない」を「できる」に変えていくということでは、構造計算を施させていただくというのがメインビジネスです。
一方で、材料も安全・安心な材料ということで、実は「木」は、無垢だと節(フシ)があるなど、1本ずつ強さが違います。
司会者:木によって違うということですね?
田鎖:違います。例えば、スギとヒノキでは強さが違うこともあるため、安心な材料ということで、我々が検査した材料をお届けする仕事もしています。それが「SE構法」というかたちです。
そのため、売上高としては、木構造、木材を売る分のほうが多いかもしれません。ただし、利益の部分は、構造計算するサービス業と認識いただいて構いません。
質疑応答:ウッドショック問題について
司会者:先ほどもあったウッドショック問題についてです。「ウッドショックの状況にありながら、資材の安定供給が実現できている」とお話がありましたが、在来工法など他の工法からの変更による引き合いの増加はありますか?
田所:もちろんあります。特にこの5月から多くなってきましたが、3月くらいまでは多くの工場で在庫があったため、なんとか対応していらっしゃるところも多くありました。しかし5月になると、スエズ運河の問題で少しコンテナが入りにくくなりました。
司会者:ありましたね。
田鎖:局所的な不足もあったことから、在来工法からの変更というかたちでの引き合いは若干増えています。
ただ、当社の場合は構造計算を先に行い、確認申請からスタートします。「今ください」と言われても、恐らく「すぐ」ということではないと思いますが、営業中の物件では、「SE構法」に切り替えていただく方は増えてきています。
供給先も限りがありますので、無尽蔵というわけにはいきませんが、そこは力一杯みなさまのご要望にお応えできればと思っています。
質疑応答:国産材の用途について
司会者:続いての質問も、ウッドショックの流れの中でご説明があったものです。「木材の国産材の利用率30パーセント」ということで、どのような使われ方をしているのでしょうか? また、今後、国産材の割合はどの程度まで上げていく予定か教えてください。
田鎖:国産材の利用に関しては、林野庁との今後の成り行きと言いますか、お話をしているところです。
1つは、「第2次ウッドショック」というものが2000年にあったのですが、熱帯雨林の伐採禁止になった時に、当社はいち早く国内の針葉樹であるカラマツ、スギを「針葉樹合板」というかたちにし、面材関係は国産材に変えています。
もう1つは、柱はヒノキが有名ですが、これは意外と強くない木ということです。
司会者:香りはすごくよいものですよね。
田鎖:香りもよく、耐久性も高いのですが、強度としては、アメリカのマツなどよりも弱いです。そこは実験をしながら柱として使えるようになってきました。
そのほかに、屋根材などもあります。「垂木(タルキ)」と言うのですが、そのようなところに国産材を使っていたりします。
「何パーセントまで国産材にできますか?」というお話について、理論上は100パーセントにすることは可能ですが、実は、スギという樹種は非常に強度が弱いということがあります。樹種としては日本にたくさん生えていますが、それを全部使えば、材木が太くなってしまうことがあります。
そのような技術開発を施すことができれば、100パーセントも可能になります。特に現在の施設建築では「100パーセント国産材」という指定の地方自治体もあります。
司会者:すでにあるということですね。
田所:ですので、もちろん100パーセントも可能です。
現在、私はCLT協会という新しい材料の協会の理事でもありますが、CLTという材料を使うことができると、100パーセントスギの国産材で作ることができます。
木ですから「0か100」の極端な議論ではなく、適材適所を使いながら、日本の山へ還元していけるサプライチェーンを、時間をかけて作らせていただければと思います。当面は30パーセントが目標ですが、10パーセントくらい増やすことが現在の目標です。
質疑応答:木造建築物の高層化について
司会者:R&Dセンターの設立により、木構造の基礎研究である「SE構法」の商品力強化が見込まれますが、木造の高層建築化への対応も進めていくのでしょうか?
田鎖:おっしゃるとおりです。現在でも、例えば、世界的に見ればドイツなどでは進んでいます。CLTという材料を使い、ビルディングを木造で作ることも増えているところです。
当社の「SE構法」というのは、もともと「3階建てまで」ということで、国の特別な認定をいただいていたのですが、昨年、一昨年では階層を取って、4階建て、5階建てを実現しています。現在すでに発表しているのは4階建てですが、今後も高さを少し高くしていこうとしています。
ただ、銀座にあるような高層ビルを木造で作れるほどの強度を持つ材料は、まだ作れていません。今後、一般のビルディングで言うところの5階建てや、そのくらいのものを普通に作れる技術は、R&Dセンターでしっかりと開発していこうと思っています。
また、超高層ビルになると、法律の変更が必要になります。木は着火してしまうため、法律の変更がないとできません。一概に超高層とは申し上げられませんが、当然、普通のビルディングであれば、「SE構法」すなわち木造で作れるようになります。現在も4階建て、5階建てまでなら可能です。
司会者:現時点でも4階建て、5階建てなら木造で作れるということですね?
田鎖:作ることができます。そして、これをR&Dによりもっと高くと思っています。
質疑応答:社名について
司会者:冒頭にご説明があったかもしれませんが、「株式会社エヌ・シー・エヌとは、何の略称でしょうか?」と質問をいただいています。
田鎖:ありがとうございます。何度でもちゃんとご説明します。「New Constructor’s Network」という言葉の略です。
木造は、構造計算をしなくてよいということで、また、家は30年経ったら壊すというイメージだったのですが、それをよしとしない、少し変わった新しい建築を求める人たちを集めたかったということです。
その人たちを「New Constructor’s」と呼び、会社というよりも最初は部活のように「みんなで研究していこうよ」ということで、「New Constructor’s Network」がスタートしました。今でもその魂と言いますか、創業の思いを忘れずに、頭文字を取り「NCN(エヌ・シー・エヌ)」と呼んでいます。ですから、「New Constructor’s Network」の略となります。
質疑応答:温熱計算サービスについて
司会者:「温熱計算サービス」について簡単に教えてください。
田鎖:現在、脱炭素ということで、消費エネルギー量を減らしたいという国の考えから、「家において、冷暖房でどのくらいのエネルギーを使うか」を計算するサービスです。
「ゼロエネルギー住宅」というのをよく聞かれると思いますが、例えば、「太陽光発電機を乗せました。これで家の冷暖房費とブレイクイーブンになりますか?」というのは、そのデータを作らないとわからないわけです。
例えば外の温度については、断熱材をしっかりと入れ、窓をペアサッシやトリプルサッシにしていただくと、日本の木造住宅は、冬、例えばマイナス5度くらいの外の温度でも、朝まで十分家の中が冷えないような保温性能がある家を作ることができます。
そのようなものについても、シミュレーションで「外気温が何度なら、この家は室内が何度になる」とエネルギー計算で算出しており、構造計算屋の当社では、同じように家の形、材料を入力して、すべてのエネルギー消費量を計算するというサービスになります。
このサービスの利点は、国では「住宅性能表示制度」と言いますが、消費エネルギー、省エネ性能が高い家を作ると補助金がもらえるということです。今は「グリーン住宅ポイント」と言いますが、エネルギー性能が高い家を作った人は、国の脱炭素に協力しているということで、グリーンポイントがもらえるのです。
そのエビデンス、証明書としても、当社の「温熱計算サービス」の証書がご利用いただけるということで、こちらについては、現在すごく引き合いが多い状態です。
司会者:それは建てる前、構造の時に一緒に行うということですか?
田鎖:一緒に行います。
司会者:一緒にわかるということですね。
田鎖:おっしゃるとおりです。建物の形をすべて入力すれば、構造計算はできます。壁の面積、窓をどこに付けるなど、そういった図面も一緒にいただきますが、当社は3次元で解析しているため、温熱計算、つまりエネルギー消費量の計算も一緒にできるということです。最近は、冷暖房機器などについても、先に決まっていれば計算できます。
司会者:このエアコンを付ける予定とわかっていればということですね。
田鎖:「これです」と言っていただけると、そこも含めて全部計算します。ここまでできる方はそれほどたくさんいらっしゃらないため、これからどんどん増えると思います。
司会者:これはかなり需要と言いますか、人気が出そうですね。
田鎖:そうですね。日本の消費エネルギーは、実は工場などでは減っています。例えば、木材工場へ行くと、バイオマス発電機を使用しているなど、実はそれほど大きなエネルギーを使っていないのですが、日本は家庭の電力がすごく増えているのです。
ですので、一般家庭、住宅における省エネは、国全体で非常に重要なテーマになっていますが、「分厚い断熱材が入っているから暖かい」と誤解する方はたくさんいます。このサービスにより、それをきちんと科学的に熱伝導率を計算することが一般化するとよいと思っています。
質疑応答:ライフスタイル分野について
司会者:続いて、ライフスタイル分野では、今後どのような取り組みを考えていますかということです。ご回答いただける範囲で教えてください。
田鎖:よい質問をありがとうございます。「ライフスタイル」という言い方をしてしまうとすごく大げさですが、みなさまの家に対する考え方が徐々に変わってきていたのが、新型コロナウイルスの影響でより加速されたと言えます。
また、多くの若い方は、車を所有せずにシェアされています。
司会者:今、進んでいますね。
田鎖:家も、もしかしたらそのような時代が来るかもしれないです。例えば「陽の家」を今回無印良品で出しましたが、1つの家を月額会費でシェアし、セカンドハウスとして使うという利用の仕方もあるかもしれません。実は、その最先端にいるのがYADOKARIです。だから「宿借り」なのですね。
司会者:なるほど。名前がそういうことですね。
田鎖:家を小さく、最低限ミニマムなかたちということで、みなさまにとっては本当に必要最低限のものにして、そこを所有するのではなくみんなで使うという、例えば、キャンピングカーのような暮らし方があってもよいということです。
私が売っている耐震性能のある、終の住処の「SE構法」とは少し距離がありますが、そのような両面について、我々は両方とも実感しながら今後の木造のあり方などを考えています。また、一宮リアライズという会社では、実は「SE構法」で、グランピング施設の土台を作りました。その上にテントを張ることで、すごくすてきな暮らしができるのです。
地方では過疎の問題などいろいろありますが、暮らし方を提案するということで、グランピングも1つかもしれませんし、小屋暮らしのようなものも1つかもしれません。そのようなものを、現在、一宮の方々と一緒に行っています。地方の方々と提携しながら、台風でも壊れなかった安全で安心な土台を作るということです。
司会者:一宮がある南房総のほうは、大変な被害が出ましたよね。
田鎖:大変でしたが、構造計算をしっかり行い、耐風性能のある土台を用意しています。そこは安心ですが、テントは飛んでしまいます。
司会者:土台は大丈夫ですよね?
田鎖:土台は大丈夫です。そのようなことを地元の方と相談しながら、グランピングエリアを作りました。
また、これまでの「家は絶対に所有しなければいけない」といったところから、若いクリエイターの方々と一緒に暮らし方について考えていこうとしています。無印良品の家も、そのような意味では、さまざまな暮らし方のご提案をする会社を目指しています。
質疑応答:田鎖氏の経歴について
司会者:先ほどのお話しの中で、私も「そうだったのですね」と初めて気づいたのですが、社長は商社のご出身ということをお話ししていました。どちらの商社の出身でしょうか?
また、木材をニュージーランドからというお話もされていたと思いますが、商社でどのようなお仕事をされていたのでしょうか?
田鎖:当時は日商岩井と言っていたのですが、今はニチメンと日商岩井が合併して双日という会社になりました。新入社員の頃、そちらの木材本部にいたということです。
最初はインドネシアなどの南洋材のお仕事を少しして、その後、現在も扱っている集成材という木をたくさん貼り合わせた木材の日本への輸入のエージェントをずっと行っていました。
先ほどニュージーランドと申し上げたのは、広島にウッドワンという大きな会社があるのですが、そちらの会社と一緒に住建日商という名前で、植林から伐採して、製材して持っていくというプロジェクトを行っていました。
そのような商社での大型船ごと輸入する、コンテナごとに入れる商売など、いろいろ経験させていただきました。現地の海外の会社に対する森林資源への投資ということもしていました。
質疑応答:販管費増加の理由について
司会者:2022年3月に販管費が増加して純利益が前期を下回るとありますが、主な理由は採用を増やすことによるものでしょうか?
田鎖:もちろん大規模物件を扱う方、そして、BIMの入力者という意味では採用を増やすことにも使いますが、もう一方で開発費、またはソフトウェア投資は5年の償却になることが大きく影響しています。1年間で4億円くらいになりますが、昨年と今年で経費を増やすということで、人件費と開発費、そして広告宣伝費の3つに投下します。
売上高73億円に対しての4億円の増加ですから、それほど大きな増加ではないものの、当社の純利益は3億円くらいで、昨年は3億2,000万円ですので、それに対しての4億円の増加は大きめです。しかし、みなさまがコロナ禍で少し停滞していたり、元気をなくしている部分もあると思いますので、今年はこのタイミングしかないと思っています。
当社は借入金もゼロですし、キャッシュ・フローも豊かですので、このような時に将来に向けた人材確保や投資をさせていただきたいと思っています。投資家のみなさまに対しては、そこをもっとしっかり説明しなければいけないところです。
質疑応答:2023年3月期の売上100億円達成に向けてのポイントについて
司会者:最後の質問です。中計の2023年3月期の売上100億円達成には、大規模木造建築分野の急速な成長が不可欠だと思いました。
田鎖:そのとおりです。
司会者:100億円を実現するために、重視しているポイントを教えてくださいということです。
田鎖:実現するための重要なポイントは、とにかく現在いただいている案件、構造計算を早くみなさまにお届けするということだと思います。ウッドショックということで、木材の入手も重要なポイント1つで、サービスのスピードアップにもなりますが、現在置かれている状況では、木材を調達することも重要になります。
売上高が大きく増加して見えますが、実は住宅1戸と大規模物件1戸と売上の規模が違います。住宅では、最大1戸あたりの構造材の費用は300万円くらいになりますが、施設建築では1,000万円を超えるかたちになります。そのような意味で、数としては達成可能だと思っています。
田鎖氏よりご挨拶
田鎖:長時間にわたり、ご視聴いただきありがとうございます。今期はコロナ禍でかなり世の中が停滞していましたが、木材の発展と耐震住宅を、ステイホームでもみなさまに手に入れていただくために、一生懸命成長させてまいります。ご忌憚のないご意見、またご指導をよろしくお願いいたします。本日は、誠にありがとうございました。