2021年12月期第1四半期決算説明会
山本正喜氏(以下、山本):Chatwork株式会社代表取締役CEOの山本正喜でございます。本日はお忙しい中、当社の決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。2021年12月期第1四半期の決算説明をさせていただければと思っています。それではさっそく、資料の説明をさせていただきます。
説明資料のアジェンダですが、会社概要、2021年12月期第1四半期の業績、四半期における主要トピック、そして今年2月、前回の決算説明で開示した中期経営計画の進捗、その後、2021年12月期の業績予想をご報告します。
今回はお時間も限られていますので、四半期業績と主要トピックを重点的にお話をさせていただき、中期経営計画はあらためてかいつまんだものをお話しして、その進捗、そして最後に業績予想という順番でお話をさせていただきます。
会社概要
会社概要ですが、Chatwork株式会社は2021年3月末の段階で176名という規模にまで大きくなってきました。所在地は、東京、大阪、ベトナム、台湾と、引き続き4拠点で業務を行っています。
コーポレートミッション
コーポレートミッションは「働くをもっと楽しく、創造的に」というものを掲げており、このミッションを非常に大切にしている会社です。ミッションを自分自身でも体現するとともに、事業を通じて実現していくといったところを推進している会社です。
ミッションが表すことについてです。人生の大半を過ごすことになる「働く」という時間。20代から、また10代から70代くらいまで「働く」という時間が人生の大半になりますが、その時間がただお金のためだけではなく、ただ生活の糧を得るためだけではなく、1人でも多くの人がより楽しく、自由な創造性を存分に発揮できる社会を実現していきたいと思っています。そのために「Chatwork」という事業を行っています。
事業セグメント
事業セグメントのご説明です。社名にもなっているビジネスチャットツール「Chatwork」の事業が主力事業となっており、およそ9割の売上を占めている事業となっています。
もう1つ、セキュリティ事業があります。「ESET(イーセット)」というウイルス対策ソフトウェアで、パソコンにインストールしてウイルスを検知して駆除するソフトウェアの販売代理店を行っている事業となっています。こちらはChatwork事業以前から展開している事業で、全社の安定的な収益に貢献している事業です。
業績ハイライト
第1四半期の業績の説明に入りたいと思います。まず、業績ハイライトです。第1四半期の売上高は6億8,800万円、前年同期比プラス27.1パーセントです。主力であり最も重要視しているChatwork事業の売上高は6億2,400万円で、前年同期比プラス33.6パーセントです。売上総利益は5億800万円、前年同期比プラス27.3パーセントです。営業利益はマイナス900万円となっています。
引き続き、テレワーク需要が増加しています。新型コロナウイルス感染症がまた強まっていますが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の最中ですので、その需要効果を受けて、売上高、売上総利益ともに前年同期比で大幅に伸長している状況が続いています。
利益のところでは、今回マイナスを計上していますが、中期経営計画に記載のとおり、中期経営計画の期間は投資フェーズです。最大限投資するフェーズと捉えており、先行投資というかたちで積極的な採用および広告、マーケティングを行っており、その活発化によって営業利益以下の各段階利益はこの四半期ではマイナスとなっています。しかし、コントローラブルなもので、計画的に実行しています。
課金ID数は47.1万IDと、前年同期比プラス14.4パーセントで順調に成長しています。ARPUは、昨年行った価格改定の影響が大きく、前年同期比プラス19.8パーセントと大幅に増加しています。こちらがハイライトです。
業績サマリー
業績サマリーは、先ほどのハイライトと重複するところですので割愛しますが、詳細はスライドのとおりです。
売上高推移
売上高の推移です。全社では前年同期比でプラス27.1パーセントです。Chatwork事業の売上高が最重要の経営目標ですが、昨年に比べてプラス33.6パーセントと高い伸び率になっています。
登録ID数・DAU数推移
KPIとしている登録ID数、DAU数です。登録ID数は無料・有料を含めたすべてのID数ですが、416.7万IDとなっています。前年同期比でプラス27.1パーセントと引き続き好調に増加しています。
DAUは1日あたりの利用ユーザー数ですが、89.1万と前年同期比でも大きく増加している状況です。
課金ID数・ARPU推移
課金ID数、ARPUです。「Chatwork」を有料でご利用いただいているID数ですが、47.1万IDを超え、前年同期比プラス14.4パーセントと、非常に堅調に伸びている状況です。
ARPUに関しては、ハイライトのところでお伝えしたとおり、前年同期比プラス19.8パーセントです。価格改定や旧プラン廃止といったプライシングの見直しにより、大幅にグッと上がっているところがグラフからも見てとれると思いますが、業績を押し上げる要因となっています。
売上総利益・売上総利益率推移
売上総利益、売上総利益率の推移です。売上総利益に関してですが、我々はSaaSで、ITビジネスを主力としていますので、規模の拡大とともに規模の経済が働き、売上総利益率を改善していくという構造を持っているビジネスです。
一方、先ほどお伝えしたとおり、中期経営計画どおり投資を加速していき、エンジニア採用も順次行っていますので、そちらによる製造原価というところで、売上総利益の原価にヒットしている部分があって相殺されていますが、直近のところをご覧いただくとおわかりのとおり、売上総利益率は73.8パーセント前後で横ばいに推移しています。投資している状況では改善が進んでいるものと考えています。
営業利益推移
営業利益の推移です。繰り返しになりますが、中期経営計画のとおり、先行投資として人件費および広告宣伝費が増加したことを要因に、四半期単体で営業利益はマイナスとなっています。今後も、シェア拡大に向けた最重要フェーズと捉えていますので、積極的な投資を行いたいと思っています。
費用構成推移
費用構成推移です。採用が順調に進んでいるとお伝えしましたが、主にプロダクトを作るエンジニア、お客さまの活用を促進するカスタマーサクセス、そしてお客さまに優良なアカウントをお勧めするインサイドセールスといった部門で順調に採用が進んでおり、青い折れ線グラフの人件費が増えています。
緑の折れ線グラフが広告宣伝費ですが、マーケティングの人員体制が整ったということで、広告宣伝費も増えてきています。
従業員数推移
従業員数の推移です。スライドは四半期ごとの従業員数の推移ですが、2020年度から急激に人員数が増加しているところが見てとれるかと思います。この四半期は退職はなく14名の純増で、そうしたペースで採用が進んでいます。
また当期においては、CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)、またCMO以外にもハイクラスのシニアマネージャー層に参画いただき、組織体制の強化が大幅に進捗しています。
ご参考までに新しいCMOの経歴をスライドに掲載していますので、お読みいただければと思います。このCMOの下、積極的にマーケティング施策を展開していきたいと思っています。
個人向けプランを組織向けプランに統合
主要トピックに入ります。まず、この四半期でもプラン改訂を行っています。個人事業主向けで、1人で使う「パーソナルプラン」を、管理者がユーザー管理できるような組織向けプランに統合しました。
個人向けの「パーソナルプラン」は、スライドに記載のとおり、今までは月額400円で1人で使うというものでした。
もう1つ、組織で導入したい方向けでは「ビジネスプラン」があります。こちらは5人以上で使っていただく前提のものです。3人でも4人でも使えるのですが、ライセンス料が5人分かかり、1ユーザーあたり500円で提供しているプランです。
2021年1月末日に「パーソナルプラン」の新規申し込みを終了しています。今まで「パーソナルプラン」をご利用の方は引き続きご利用いただけますが、新しく「パーソナルプラン」をご利用いただく場合は、最低利用人数がなく、1人から組織向けプランをお使いいただける新しい「ビジネスプラン」となります。
今まで、3人や4人など、5人未満の組織の場合は「パーソナルプラン」と「フリープラン」を組み合わせたり、「パーソナルプラン」をそれぞれ契約するといったかたちでご利用いただくことが多かったのですが、5人未満の場合でも「ビジネスプラン」をご利用いただけるということで、利便性が上がっています。
また、今まで「フリー」「パーソナル」「ビジネス」「エンタープライズ」と料金プランが4つあったのですが、「フリー」「ビジネス」「エンタープライズ」と非常にシンプルになったことによって、お客さま自体も利用しやすくなったと思います。
プランがたくさんあると開発コストやサポートのコストもかかってきますが、そこが低減されました。また、1人で使っても500円の「ビジネスプラン」をご利用いただけるため、ARPUの向上にもつながっていくプラン改定となっています。こちらは2月からスタートしています。
大型カンファレンスの実施を拡大
大型カンファレンスの実施を拡大しています。マーケティングと広告宣伝費を大きく使っているとお話ししましたが、一体何を行っているのかということで、一例をご紹介します。
今期は、数千人規模でご視聴いただけるオンラインの大型カンファレンスを年10回以上開催予定です。昨年度から実施はしていたのですが、規模はもっと小さいものであり、かつ4回実施しただけです。しかし今期においては、マーケティング体制が大きく整ってきたところもあり、継続的に実施していくことが可能になりました。
また、カンファレンスにおいて、他社の協賛を募ることによって費用をいただき、その費用によって有名な方にもご登壇いただくことができます。また、集客にコストをかけることでご覧いただく方が増えていますので、その好循環によって、どんどん規模が大きくなるようなカンファレンスを運営できています。
新型コロナウイルス感染症のワクチンがまだまだ遅れているというお話がありますが、オンラインが主流な時代がまだ強く続くと思います。このような今の時世に合ったマーケティング手法を積極的に推進していきたいと思っています。
オンライン学習コンテンツ「Chatwork School」の提供開始
無料でご利用いただけるのですが、オンライン学習コンテンツの「Chatwork School」の提供を開始しています。2021年3月から提供を開始しており、いわゆる「eラーニング」のようなものと考えていただければと思いますが、「Chatwork」の既存のユーザー向けのもので、無料で登録いただき、動画でコースを受講いただくことで、グループの作り方やチャットのやり方、タスク管理の仕方といった「Chatwork」の基礎的な使い方を簡単に学習いただくことが可能です。
今までであればサポートに問い合わせたり、詳しい方に聞いたりして試行錯誤していたものが、動画でかなり理解しやすく学習いただけるようになりました。
受講状況ですが、我々が想定していた以上に受講いただいており、反響もよい状況です。このような施策を通じて「Chatwork」の活用が進むとともに、お客さまのアクティブ化、有料化というかたちで、カスタマーサクセスチームが主体となって進んでいければと思っています。ぜひご覧いただければと思います。
DX推進を支援する「Chatwork DX相談窓口」を提供開始
DX推進を支援する「Chatwork DX相談窓口」をスタートしています。こちらは4月にスタートしているもので、ここで紹介させていただいています。
後ほどお話ししますが、中期経営計画における1つの大きな戦略として「DXソリューション戦略」がありますが、その一環としてのサービス開始になります。名前のとおりですが、DXの推進において、当社の専任の担当者が無料で診断します。
お客さまから、どういったものの導入にお困りなのか、DXでの難しいポイントはどういったものがあるのかといったところをお聞かせいただき、最適なサービスを個社ごとに当社から提案するようなコンサルティングサービスとなっています。
当社で提携するパートナーをたくさん増やしており、そのパートナーのご協力も得ながらサービス導入を提案していくものになっています。導入が決まれば当社としても利用いただけるようなビジネスモデルを作っていきますので、アカウント課金に依らないARPUの向上、収益の向上のきっかけになります。
新任社外取締役として宮坂友大氏が就任
主要トピックスの最後ですが、新任社外取締役として宮坂友大氏が就任されました。2021年3月度に実施した株主総会で決議され、社外取締役として当社に参画いただいています。
コーポレートガバナンスの強化というところで、宮坂氏はベンチャーキャピタリストとして多数の優れたスタートアップ企業へ投資してきた経験があり、当社のようなSaaS企業の知見もお持ちの方です。
今後の企業戦略およびM&A、アライアンスも含め、知見を幅広く共有いただけることができると思っています。また、コーポレートガバナンスの観点からも中立的な意見をいただけることを期待しています。プロフィールを記載していますので、よろしければご覧いただければと思います。
中期経営計画における進捗
中期経営計画の進捗ですが、まずはおさらいしてから、こちらのスライドに戻って進捗をお伝えする流れでご説明します。
中長期方針
今年2月の決算説明で発表させていただいたものですが、あらためてお話ししたいと思います。
当社の中期経営計画において、中長期の方針を掲げています。中期の経営計画は、2021年から2024年の4年間ですが、この4年間のフェーズを「シェア拡大期」と捉えています。2024年が終わった段階で、中小企業ナンバーワンのビジネスチャットのポジションを確立するところを目指して進めていければと思っています。
2025年以降でどうするかについてです。中小企業市場における圧倒的なシェアを背景に、今までずっと掲げている長期ビジョン「ビジネス版スーパーアプリ」、つまりあらゆるビジネスの起点となるようなアプリケーションを目指して、プラットフォーム化していくところを進めていきます。
先ほどお話ししたとおり、2021年から2024年の中期がシェア拡大期で、これは最重要フェーズであると考えています。シェアが取れていなければ、スーパーアプリやプラットフォームといったものがそもそも成り立たないため、まずはここをしっかり押さえ切るというところで、当社にとって最重要フェーズと考えています。ここを勝ち切るために、投資スピードを最大限加速していきたいと思っています。
なぜ、この2021年から2024年が最重要フェーズなのか。その前でもなく、その後でもなく、なぜこの4年なのか、その背景をご説明します。
DXの大きなトレンドがあることは、みなさまもご承知のことかと思いますが、昨今、ここに新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワーク、在宅ワークが一気に普及しているという急激なトレンドの加速があります。
ニューノーマルと呼ばれ、働き方が根本的に変わったと言われている中、たとえワクチンが入ってきて新型コロナウイルス感染症が収束しても、今さら満員電車には戻れない、オンラインの利便性を世の中が知ってしまったことから、働き方において根本的な変化が起きたと思っています。
2021〜24年を最重要フェーズとする背景
ビジネスチャットの市場についてですが、直近のデータでは、その普及率が日本市場全体において14.2パーセントほどになっており、8割方がまだビジネスチャットを使っておらず、まだまだ真っ白な市場です。
普及の壁となる「キャズム」という16パーセントくらいのラインがあり、そこを超えると一気に広がると言われていますが、そこを超えるのはここ3年から4年で、新型コロナウイルス感染症とDXのトレンドの中でこの数字、キャズムを大きく超える可能性があると考えています。
また、ビジネスチャットは解約率が低いです。会話のログが残り、かつ人間関係ができ、他社とのつながりもあるため、簡単にはやめられません。他のツールへ乗り換える際のスイッチングコストが高いところがあるため、お客さまの最初のビジネスチャットになるのが非常に大事です。
まだ白地の8割のところでの最初のビジネスチャットにならなければいけません。中小企業の最初のビジネスチャットになることが大事で、この4年間が勝負になってくると考えています。
中期経営計画
中期経営計画で「どれくらいいくのか」という数字のところを記載しています。2021年から2024年においては、主力のChatwork事業単体で、CAGR40パーセント以上のペースで売上成長を実現するところにコミットして推進していきたいと思っています。
また、2024年度、中期経営計画の終わりの年度においては、Chatwork事業と、その他にもM&Aを含めていろいろな周辺事業がある可能性がありますが、全社売上で100億円を定量目標として掲げて、コミットしていきたいと思っています。
そして、「中小企業向けビジネスチャットでナンバーワンになった」ということを、どのようにして数字的に証明できるのかについてです。
当社が考える「中小企業ナンバーワン」ですが、まず、ビジネスチャットの普及率が4年後はどうなっているのか、正直を言いまして読み切れないところがあります。仮に、現在の14パーセントが50パーセントになった場合の目標を出しています。日本における中小企業の就業者数は4,600万人超で、そこから50パーセントの普及率ですので、ビジネスチャット利用中のユーザーが2,300万人超となります。その40パーセント、約1,000万人ユーザーを取っていればナンバーワンだということです。
普及率が上がるとともに、実数も上がってきて、中小企業ナンバーワンというポジションを確立したいと考えています。
中期経営計画における戦略
中期計画の数字目標は非常に高いですが、どのように達成していくかということで、3つの戦略を掲げています。それぞれご説明します。
1つ目が「Product-Led Growth戦略」です。聞き慣れない方もいらっしゃるかと思いますが、我々が作った言葉ではなく、SaaS業界、特に米国で「Product-Led Growth」という戦略が優れていると言われています。よろしければご参照ください。
どういうものかについてですが、今までのBtoBのITのプロダクトはセールスが牽引してグロースしていました。マーケティングが見込み客を獲得し、セールスが商談を作って受注してくるといったかたちが、企業成長、売上を作る根本的な主軸でした。
このオンラインの時代においては、プロダクトがグロースを牽引していきます。プロダクト自身がプロダクトを広げていくという戦略をとるのが、資本効率がよく、レバレッジが効く戦略だと言われています。
いわゆる紹介であったりネットワーク効果のようなものを最大限使いながら加速させていくという戦略です。この紹介というところですが、プロダクトの力だけでもどんどん紹介が進んでいくのですが、そこにさらに人手を加えていくのが「Product-Led Growth戦略」となっています。詳しくは資料にも記載していますので、ご参照いただければと思います。
Horizontal x Vertical戦略とは
2つ目として、「Horizontal × Vertical戦略」を掲げています。我々のビジネスチャット「Chatwork」は、「Horizontal SaaS」と言われているような、業種を問わず全業種に展開できるSaaSです。
それだけでは、業界それぞれでどう使えばいいのかという課題を解決していくことができないため、業界特化型のコミュニケーションをしっかり作っていくことが、この戦略になっています。
具体的には介護業界、建設業界、士業などに「Chatwork」のユーザーが多数いらっしゃいますが、本当に上手に使っていらっしゃる方から「どのように『Chatwork』を使っていらっしゃるのか」「どういう業務課題があるのか」を勉強させてもらっています。
それをもとに、その業界での「Chatwork」のベストな使い方を、もう一度我々が提案できるようにしていくということです。
今までであれば、「ビジネスチャットというものがあって、メールよりも便利ですよ」というようなマーケティング、訴求方法でした。そうではなく「介護業界における業界課題において、ビジネスチャットをこう使って、このようなグループを作って、このような運用をすると課題が解決できますよ」といったかたちで、この圧倒的な課題の数があるからこそできるのが、この戦略です。
我々は、国産のビジネスチャットとしては日本最大級のプレイヤーで、その強みを最大限に活かして、個々の事情がある中小企業というところを深くさしていきます。そうして海外企業との差別化を図るとともに、顧客に届けて、より活用いただくというところを推進していきたいと思っています。
DXソリューション戦略とは
3つ目が、「DXソリューション戦略」です。「Chatwork DX相談窓口」のところでも少しお伝えしましたが、我々のビジネスチャットをプラットフォームとしてDXのソリューションビジネスを展開していくというものです。
チャットという非常に強力なタッチポイントを持っているため、それを最大限に使って、中小企業の方々に対してDXソリューションを展開していくというものです。
こちらは周辺事業で「Chatwork」以外のプロダクトとの提携、開発を進めていくとともに、それを提案する力もつけていくということです。この3つを進めていきます。
詳しくは、それぞれ深掘りしていますので、そちらをご覧いただいたり、前回の決算説明の書き起こしなどもご覧いただければと思います。
長期ビジョン
長期ビジョンとロードマップです。繰り返しになりますが、中小企業ナンバーワンを取って、そこからビジネス版スーパーアプリということで、あらゆるビジネスの起点になるアプリケーションになり、SaaSの根本の土台になるといったようなイメージで考えています。
なぜそうなるのかですが、ビジネスチャットは、営業でも技術でも総務でも、全職種の方が朝から晩までずっと開いています。そのようなSaaSは、他にないですよね。他のSaaSは、特定の業種、職種の人が、特定の業務でなんらかのアクションがあった時に触るものです。ずっと使っているものは、ビジネスチャットだけだと思います。
そこがありますので、非常にプラットフォーム価値が高いわけです。なので、起点になるような、OSとアプリケーションのような関係だと考えていまして、我々がOSとしての土台を取って、アプリケーションとして他のSaaSと組む、そのような世界観を作りたいと思っています。
3つの戦略を遂行することで、ビジネス版スーパーアプリを目指す
中期経営計画のところで掲げている3つの戦略を遂行することで、長期ビジョンであるビジネス版スーパーアプリにもつながってくると思っています。
どうつながってくるのかについてです。今までは有料ユーザー数、つまり課金ID数と、顧客単価のARPUをかけると売上が出るといったように、KPIでご説明することが多かったです。
これからはプラットフォーム事業を展開していくというところで、無料ユーザーもプラットフォームに貢献することから、無料と有料を合わせたユーザー数と、どれくらいアクティブかを示す指標、そしてARPUという3つをかけ合わせることで、プラットフォームの事業を作るというかたちでKPIの転換を行っていきたいと思っています。これが、先ほどの3つの戦略に対応してきます。
1つ目の「Product-Led Growth戦略」についてです。今までマーケティングチームは、セールスに供給する見込み客を獲得することに一生懸命で、フリーユーザーの獲得に対してはあまりコストをかけられていませんでした。
しかし、この戦略ではマーケティングチームはフリーユーザーを獲得し、まずはユーザーになっていただいて、そこからセールスチームがオンボーディングや有料化といったところにコミュニケーションを当てていくため、ユーザー数が劇的に増えていくかたちに変わっていくと思います。この「Product-Led Growth戦略」は、ユーザー数に効いてきます。
2つ目の「Horizontal × Vertical戦略」は、業界特化のコミュニケーションプロセスを確立するというところですが、ユーザーの活用度が上がっていくところに効いてきます。
よって、DAUやMAUといったところもそうなのですが、「Chatwork」の機能をどれだけ深く使ってもらっているか、どれだけ広く使ってもらっているか、どれだけ他社と一緒に使ってもらっているかといったアクティブ指標をベースに、アクティブ化を多数仕掛けていくところを推進していきたいと思っています。ユーザー数にアクティブ指標をかけると、アクティブユーザー数が出てきます。
そして、「DXソリューション戦略」では、アクティブになったユーザーに対して、いろいろなソリューションを展開していきます。「Chatwork」以外のものをたくさん展開していくことで、「Chatwork」に依存しないような収益基盤を作っていきたいと思っています。それによってARPUを上げていきます。
ユーザー数が多く、それがアクティブになっていて、アクティブユーザーあたりの単価が高い。これは、プラットフォーム価値が非常に高いわけです。つまり、この3つの戦略を進めることによってビジネス版スーパーアプリという状態に近づいていくところが戦略の狙いとなっています。
ビジネス版スーパーアプリを含めた潜在市場規模(TAM)
以上が戦略ですが、ビジネスチャットの潜在市場規模は、だいたい6,000億円ほどと言われています。先ほどのDXソリューションビジネスのような、ビジネスチャットの範囲を超えたビジネスを展開する部分も、この戦略上のシェアに入っており、TAMとしても国内中小企業のIT支出が4.1兆円あり、そこに向けて拡大していけると考えています。
中期戦略ロードマップ
経営計画に関してはこのくらいにして、進捗をお話しします。中期経営計画は4年ですので、四半期の進捗で劇的なものはまだなく、施策の準備を進めているところが中心になってきます。
1つ目の「Product-Led Growth戦略」ですが、ここはまずユーザーになっていただき、そのユーザーのデータやアクティブ状況を見ながらコミュニケーションしていくため、CRM基盤が非常に大切です。
CRM基盤は「カスタマー・リレーションシップ・マネジメント」というシステムで、お客さまの情報が集まっているようなデータ基盤になります。こちらも、今までのセールスモデルに付いていたCRMではなく、「Product-Led Growth」に合わせたCRMにしていかなければいけません。設計を抜本的に見直すところに着手して、検証を実施しています。
検証を実施しながらCRMの設計を推し進めています。これは早々にやらなければいけないと思っています。
そこから、効率的なカスタマーサクセスということで、ユーザー数拡大の部分でプラットフォームを活用し、オンラインのユーザーに対してそのようなコミュニケーションをとっていく部分の検証も進めています。
そして、大型カンファレンスの実施です。ユーザー数拡大のマーケティング施策もどんどん進めていきたいと思います。
2つ目の「Horizontal × Vertical戦略」ですが、専任の研究開発チームがあり、各ユーザーにヒアリングさせていただいたり、業界研究を進めている状況です。まずは「業界を広く」ということで構造を分解して、同じような構造を持っている業界に対して集中して研究を進めているといった動きをとっています。
これによって、「このような業界は、このような構造でビジネスを進めていて、このような課題があって、『Chatwork』をこのように使っていて、うまくいっているようなものがある」といったレポートがどんどん蓄積されています。
それらを見て、マーケティングのチームが切り口を考えたり、セールスのチームがそのお客さまに合わせて「介護の現場だと、このようなことにお困りではないですか?」といったかたちでセールストークを行い、「ああ、よくわかってるね」といった流れになります。そのような成果につなげられるところも進めており、実際に結果が出はじめています。
セールスチームからも「このようなものがあるとやりやすい」という話を聞いていますが、こうしたものをどんどん拡大するところを進めています。
3つ目の「DXソリューション」の戦略ですが、先ほどお話ししたように「Chatwork DX相談窓口」を設置しています。
こちらは、とりあえず広くユーザーにヒアリングさせていただこうということで、かなりの量の相談が入ってきています。まずは広く聞いて、いったんお客さまのニーズを解決するというところを進めていこうということで、提案を進めているところです。
中期経営計画における進捗
先ほどの主要トピックで掲げたものは、この3つの戦略に紐づいています。大型カンファレンスの実施はユーザー拡大につながっていくところになるため、「Product-Led Growth戦略」に紐づいています。
「Chatwork School」は、ユーザーの活用度を上げるもので、2つ目の「Horizontal × Vertical戦略」に紐づいています。
「Chatwork DX相談窓口」は「DXソリューション戦略」に紐づくものです。戦略それぞれに合わせた施策ということで、いろいろなものを進めていくために、それぞれチームが分かれています。
今後も、四半期業績の開示とともに、中期経営計画の進捗をご説明できればと思います。
2021年12月期 業績予想
2021年12月の業績予想をお話しします。こちらに関しては、前回予想をそのまま継続させていただくかたちになっています。
中期経営計画で大きな施策をどんどん進めて、コストも大きくかかってきているところがありますが、結果が出てくるまでに少しタイムラグがあるため、業績予想としてはいったん継続とさせていただきます。
あらためて、現在の業績予想ですが、Chatwork事業の売上高推移が最重要の経営目標です。サブスクリプションで、非常に解約率が低い、ライフタイムバリューが長い、そしてプラットフォームにつながるというものになっており、ここを最大限伸ばすところが最重要だと考えています。
こちらに関しては、前期比でプラス35パーセント以上の成長を目標として、この期を進めていきたいと思います。
また、全社においてもプラス30パーセント以上の売上を目指すということで、売上の部分のみ開示させていただきます。利益部分に関しては、積極的に機動的な投資をしていくところで、勝ち筋が見つかれば投資を加速していくため、業績予想としては開示していませんが、少し時間がたち、蓋然性が高まってきた際に業績予想として出したいと考えています。当社からの決算説明は以上になります。
質疑応答:緊急事態宣言によるユーザー数等の増加について
質問1:4月末から再度緊急事態宣言が出されていますが、それによる影響、具体的には登録者数の再加速や有料ユーザーの増加などは確認されていますか?
山本:第3波が来て、終わったと思ったら、また変異株が出てきて緊急事態宣言というところで、予断を許さない社会情勢かと思います。当社においては、昨年の1回目の緊急事態宣言時に大きく数字が伸びたと開示でも説明させていただいています。
在宅ワークが必要なシチュエーションになればなるほど、我々のようなシステムが必要になるというところではありますが、実際の数字の部分としては、そこまで大きなものではないと思います。
世の中としても波のように流れてきたところがあるため、そういったものに取り組む会社は、昨年度は一生懸命やられて、ベースとして上がってはいるものの、波が上がった、下がったというところで、慌てて問い合わせするというような状況ではないかなというのが現在の状況だと思います。
引き続き、ベースとしては上がってはいるものの、急激に上がっているかというと、そうではないというご回答になります。
質疑応答:ARPUの見通しについて
質問2:今後のARPUの見通しを教えてください。価格改定の効果はいつまで続くのでしょうか?
山本:一旦、年払いのユーザーの移行が残っていてARPUが上がっていたところがありました。そちらに関しては一段落して、1年経って1周したところがありますので、ARPUの伸びのペースは少し落ち着いてくるかなと思います。
先ほどご説明したとおり「パーソナルプラン」を統合するということで、こちらが寄与してくると思います。計画的には、主要な「ビジネスプラン」のARPUに近づいていくイメージをお持ちいただければと思います。
質疑応答:中計における有料ユーザー数比率について
質問3:2024年度のシェア40パーセント目標は、無料ユーザーも含めてだと思いますが、有料ユーザーの比率はどの程度でしょうか?
山本:おっしゃるとおり、無料ユーザーを含めたものです。この戦略上、KPIを変えるとお話ししました。今までは「有料ユーザー×ARPU」という指標で、無料ユーザーは有料ユーザーの前段階であり、「大事なのは有料ユーザーである」という考えでしたが、プラットフォームになっていくというところで、無料ユーザーからの収益が上がってくる構造になってくると、必ずしも有料ID数を最大化するところに注力しなくてもよい部分があるため、そのあたりの状況によります。
40パーセントのシェアをとって、ユーザー数は1,000万規模になってはいるのですが、有料ユーザー数がどれくらいいたほうが将来を含めたところで収益として最大化するのかという観点もあります。
例えば、無料のほうがユーザーが伸びるペースが速いため、無料ユーザーでも相当数の売上が上げられるということであればそちらを強め、思ったよりも無料ユーザーの収益化が難しければ、有料化の施策を強めたりといったことも、バランスをとりながら行います。
基本的にはCAGR40パーセントの目線感を目安に考えていきたいと思いますが、有料ユーザー数だけを積極的に獲得するといったことはしない方針です。
質疑応答:第2四半期以降のマーケティングコストについて
質問4:第2四半期以降のマーケティングのコスト投下方針を教えてください。金額でどの程度ですか?
山本:具体的には申し上げられないところがありますが、積極的に投下していく方針を継続します。
井上直樹氏(以下、井上):ここは費用対効果の考え方だと思います。我々のようなビジネスチャット、SaaSの会社は、ライフタイムバリューと新規の獲得コストをどう見るかですが、きっちり獲得が進むようであればなるべくコストをかけるフェーズだと思います。
質疑応答:LINE WORKSとの競争環境の変化について
質問5:LINEの個人情報問題を受けて、LINE WORKSとの競争環境やコンペの勝率などに変化はありますか?
山本:大きなニュースになり、当社にも問い合わせが多数きています。一定の影響はあったと思いますが、そこまで強く数字が変わってはいません。
質疑応答:今期の利益見通しについて
質問6:四半期で上場以来初の赤字となりましたが、今期の利益見通しについて教えてください。
山本:繰り返しになりますが、費用対効果、ライフタイムバリューを投資が下回る見込みがあれば、積極的に、可能な限り速くと考えています。
投資の原則として、当社のマーケティングのコストは短期コストとして計上される費用になります。サブスクリプションビジネスのため、何年にも渡って、ずっと収益があがっていきます。短期的に赤字になったとしても、しっかり獲得できていれば、収益的には回収できるものになります。
そういう意味では、ライフタイムバリューよりも低い価格で獲得できているのであれば出来るだけ使っていくべきだろうと考えております。
さらにシェアを拡大することによって、プラットフォームというバリューも載ってくるため、できるだけ投資していくほうがよいと思います。中長期の成長にとっては、その方が高い企業価値を作れると考えています。
質疑応答:先行投資の結果の発現について
質問7:先行投資の成果は、いつからID数などのKPIに表れるとお考えでしょうか?Chatwork事業で35パーセント増収を掲げていますが、第2四半期以降、前年は緊急事態宣言でIDが急増したため、やや達成のハードルが高い印象です。先行投資の成果が出れば、前年のハードルは高いものの、35パーセントまで拡大できそうでしょうか?
山本:おっしゃるとおり、投資をかけているわけですから、早く成果を出すのは当たり前のことだと思っています。ただし、当社のビジネス上、無料ユーザーがアクティブ化して有料化していくため、売上の数字で結果が出るまでにタイムラグがあります。
短期的に急激に角度が変わるかというとそうではなく、じわじわと高まっていく動きになると見ていただければと思います。
また、費用の比率をご覧いただければと思いますが、実態として、広告宣伝費が増えているといってもそこまで増えていないところがあります。本当はもっとコストをかけたいというところがあります。
この1年くらいですごく人数が増えたというお話をさせていただいたのですが、人件費がすごく増えています。人が増えたから売上が上がるのではなく、採用した人が活動して売上があがっていくところがあるため、まずはしっかりとコストを使える体制を作ったのが昨年です。
これから、そこでコストを使っていくために人も増やして、CMOも就任して、組織の拡大、成熟とともにしっかり数字が上がってきます。
広告宣伝費との連動で売上が伸びる構造を作れるのですが、まだ広告宣伝費をかけられていません。今々、足元ではグッとは伸びないのですが、これからコストをかけていけば伸びていく構造は作れると思います。
井上:社長のお話のとおりで、少しタイムラグがあるものの、確実にそこは作れると思います。今回、継続してChatwork事業で35パーセント以上、全体で30パーセント以上の売上高成長は、我々としては自信を持って開示した部分です。
質疑応答:その他費用の増加の背景について
質問8:その他費用が激増している背景を教えてください。
井上:繰り返しになりますが、従業員数が非常に増えており、ここに付随するほとんどの費用がその他費用に入っていますので、従業員増に伴ったものとお考えいただければと思います。
質疑応答:全社売上100億円を実現する際の人員数について
質問9:中期経営計画での全社売上100億円を実現する際、御社の人員数はどこまで増加するでしょうか?
山本:採用のペースでは一定の目線感はあるものの、今後、新しい事業のような領域でビジネスのかたちが変わってくる可能性があるため、Chatwork事業だけでも今くらいのペースでは増えていくと思います。もちろん、売上成長を作れるのであれば、ペースは上がってくると思います。
山本氏よりご挨拶
山本:四半期の開示ということで、ご説明しました。まだまだ新型コロナウイルス感染症の影響が続きますが、我々のようなビジネスチャットがしっかり広がることによって、社会にとっても、働くことがもっと楽になると考えております。
しっかり企業成長することで、投資家のみなさまを含め、社会に対して貢献できる会社としてがんばっていきたいと思いますので、引き続き、ご支援いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、お忙しい中、お時間をいただきまして誠にありがとうございます。