会社概要
小川誠氏(以下、小川):最初に、当社の理解を深めていただければと思います。まず、会社概要です。設立は2001年、従業員数は91名で、2017年に東証マザーズに上場しました。事業内容としてはインターネット事業を中心に展開しています。
沿革
小川:次に沿革です。設立当初は、iモード等にサッカーニュースを配信するコンテンツ事業から始まっています。2005年の「らくらく連絡網」運用開始とともにメディア事業を、2014年の「pinpoint DMP」の提供開始とともにアドテクノロジー事業を展開しています。また足元において、10月にリリースした日本初の運用型求人広告プラットフォーム「HRアドプラットフォーム」の提供開始とともにプラットフォーム事業を展開し、ITの進化に適応するかたちで歩んできました。
事業概要
小川:次に、事業概要です。現在のサービスの中心は、アドテクノロジー事業である運用型広告のpinpoint事業となります。さらに、「らくらく連絡網」を中心としたメディア事業を展開しています。
事業概要 ― 自社メディア【らくらく連絡網】
小川:まず、自社メディアである「らくらく連絡網」をご紹介します。39万団体、696万人の方にご利用いただく日本最大級の連絡網サービスです。主な特徴は、大学生のサークル活動、ゼミ、部活、研究室の連絡網として、また数としては、お子さまの習い事の父母会の連絡網やPTA活動としての利用が多いです。
一方、円グラフに示していますが、シェアとしてはスポーツ系の団体でのご利用が最も多く、サッカーチームや野球チームだけでもそれぞれ2万チーム以上が利用しています。
事業概要 ― 自社メディア【らくらく連絡網】(続き)
小川:「らくらく連絡網」と他のコミュニケーションツールの位置づけです。スライドの右側にあるように、「らくらく連絡網」はいわゆる公的・情報の必要性が高いところに位置づいています。LINEやFacebook、Instagramなどの他のSNSは、自身の意思で入会するサービスになりますが、「らくらく連絡網」の入会については幹事やその団体の代表者の意思が尊重されるケースが非常に強いことが最も大きな違いです。
らくらく連絡網を活用したビジネスモデル
小川:ビジネスモデルについてです。当社は「らくらく連絡網」で取得したデータを活用したビジネスモデルを展開しています。後述しますが、中でもpinpoint事業は、「らくらく連絡網」のデータを匿名加工化し、「pinpoint DMP」を通じて他社のWebメディア面で広告を配信しています。
事業概要 ― 自社メディア【ガクバアルバイト】【らくらくアルバイト】
小川:自社メディアの「ガクバアルバイト」「らくらくアルバイト」についてです。「ガクバアルバイト」は大学生に特化した掲載型の求人情報提供サイトである一方、「らくらくアルバイト」は連携求人メディアの求人情報をポータル化し、求人メディアに応募者を送客する送客型の収益モデルになります。
事業概要 ― 自社メディア【ガクバアルバイト】【らくらくアルバイト】(続き)
小川:それぞれのポジショニングです。「ガクバアルバイト」は特化型に位置しています。一方、「らくらくアルバイト」はスライドの左側にあるような媒体の求人情報をポータル化する、ポータル事業としての位置づけになっています。
事業概要 ― 運用型広告【pinpoint】
小川:では、現在の中心サービスであるpinpoint事業についてご説明しますが、少し難しいため、かいつまんでお話しします。
もともとアドテクノロジーは、金融業界からきていると言われています。株式をイメージしてください。みなさまもそうだと思いますが、株式の保有者ができるだけ高く株を売りたい一方、これから取得したい人はできるだけ安く買いたいと考えています。これを入札というリアルタイムのビッディングを用いて運用されているのが株式市場だと思います。これをリーマンショック後、アメリカで金融業界のテックエンジニアが広告業界で転用したと言われています。
インターネットメディア会社は、自分たちの広告のスペースを1円でも高く出したいと考えています。一方、広告を出稿する側はできれば1円でも安く出したいと思います。これについては、スライドの青色の部分にあるRTB(Real Time Bidding)という入札システムを用いて広告が掲出されます。日本では、2011年に業界が始まったと言われています。
一方、「pinpoint」自体は2014年にサービスをスタートしていますので、若干後発でした。後発である利点では、DSPやアドエクスチェンジ、SSP等の領域はプレーヤーが多く、かなり混沌とした状態になっていましたので、薄利になるのではないかという印象を持っていました。我々のDMP(Data Management Platform)については、要はデータを保管しておく箱だと思ってください。この箱は、結果的にメディアの先にいる誰に広告を出すのかを選別できるのが当社のDMPの役割です。
一方、当社の事業領域である赤い部分は、トレーディングデスク、つまり広告を運用する部隊のことを指しています。結果的によい広告効果を広告主にお返しするため、トレーディングデスクチームを自社で形成しています。このあたりが当社の事業領域です。
事業概要 ― 運用型広告【pinpoint】(続き)
小川:現在、「pinpoint DMP」は「らくらく連絡網」のデータを中心に約2,000万人を超える匿名加工化したデータが保有されています。一方、Cookie以外の手法でスライドの右側にあるような日本の有力メディアにおいて、当社のデータを活用した広告配信が可能となっています。
DMP(Data Management Platform)ベンダー表
小川:DMPだけを切り出したときのベンダー表です。上下の軸は、CRMとしてご利用いただくケースと広告としてご利用いただくケースを示していますが、当社の「pinpoint」は広告としてデータをご利用いただいています。
一方、最大の特徴はデータの持ち方が1st Partyデータであるということです。当社の場合は「らくらく連絡網」が自社でデータサプライヤーの役割をしていますので、1st Partyデータを持っていることになります。つまり、精度の高いデータを持っているところが特徴です。
一方、3rd PartyデータはいわゆるWebの閲覧履歴等を勘案した推測情報になりますので、数は多いのですが、あくまで推測情報になります。
2022年に向けて、今後さまざまなCookieの規制がなされていく中で、我々が1st Partyデータを有している点は、当社にとってかなり優位に働いていくのではないかと思います。
業績推移 ― 四半期別売上高
小川:それでは、2021年3月期第2四半期業績についてご説明します。第1四半期はどうなることかと思いました。新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言の影響を受け、第1四半期は前年同期比で46.7パーセントの減収です。
一方、第2四半期は前年同期比28.1パーセントの減収となり、前年同期との乖離は縮小しています。直近の足元では力強く回復していることを確認しています。
業績推移 ― 四半期別経常損益
小川:四半期別の経常損益についてです。第1四半期は前年同期比1億4,100万円の減益となりましたが、第2四半期は前年同期比7,700万円の減益となり、減益幅は徐々に回復傾向です。
業績ハイライト
小川:業績ハイライトです。新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言の影響を受けた5月前後を底に業績の回復傾向は確認できたものの、前年同期比では減収減益となっています。
外部環境と業績への影響
小川:その要因となる外部環境についてです。当社の売上の中心は、いわゆる求人、採用領域での広告出稿となっています。簡単に5月のあたりの数字で言うと、昨年は約120万件の求人が出されていたものが、今年は半分以下の50万件くらいとなっています。スライドの右側のグラフにあるように、正社員だけではなく、アルバイト・パート領域においても同様の状況が出ています。
8月に向けて回復傾向にあったのですが、9月になると新型コロナウイルスの第2波の影響が出て落ちました。まだ直近の数字は出ていませんが、第3波では市場自体も落ちているのではないかと思います。ただ、先ほど「足元で力強く」というお話をしました。徐々にではありますが、当社の回復は市場より早いかたちで回復してきていると感じています。
外部環境と業績への影響 ― 2021年3月期第2四半期
小川:外部環境におけるネガティブな要素とポジティブな要素です。ネガティブな要素としては、新型コロナウイルス感染症の影響によりいまだ経済が回復しておらず、新規の受注が前年並みに獲得できる環境に至っていないことです。
一方、新卒採用については、企業の80パーセントくらいが2022年度卒業生の採用を行うと言われているものの、何名採用するかが決まっていない企業が多いため、予算取りがまだ進んでいません。このようなところで遅れが見受けられることはネガティブな要素です。
ポジティブな部分については、当社の運用型広告における当社の運用力を背景に、他社からの乗り換えがかなり加速している印象です。販促系広告分野においては、新型コロナウイルス感染症による打撃を直接受けた業界以外からの受注が回復しています。また、上長のオンライン同行による商談により受注率が向上しており、さらなる営業効率の改善に取り組んでいきたいと思います。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社のビジネスについては先日詳しくお伺いしたのですが、営業面についてはあまりイメージが沸かないです。上長のオンライン同行を含めてどのような営業をしているのか、また「このようなかたちで取り組んでいます。新型コロナウイルスによってこう変わりました」など、営業における取り組みについて教えてください。
小川:簡単に言えば、「Zoom」等を活用したオンライン商談が一般化されていることを背景に、まず移動がなくなったことでかなり効率がよくなりました。当社は東京に1拠点しかありませんので、「Zoom」はいわゆる「どこでもドア」だったのではないかと思います。北海道から九州のお客さままで認知できるようになったところが大きいです。
また、若手のメンバーに関しては、これまで営業マンではなく運用を担当していた人が商談に参加する割合が上がりました。
坂本:アサインされて一緒に行って……ということですよね。
小川:そうですね。営業力というよりは、「こう運用するとこのような効果が出ますよ」という運用側の声が直接伝えられるようになり、ここでかなり受注率が上がりました。上長のスケジュールを見るとびっしりと入っているため、そこは見てて可哀想だと思いますが。
坂本:詳しい人が一緒に営業に行くパターンはあると思います。「大勢来すぎだ」と思われることもありますが、「Zoom」上で1人から2人ほどアサインが増えるだけであれば問題ありませんよね。この点は確かによいと思います。
先ほどの運用型広告における乗り換えについては、御社のどのあたりがよいと思って乗り換えられたのでしょうか?
小川:コロナ禍で採用活動を継続している会社についても、全体の予算は若干縮小傾向にあります。しかし、縮小した中でも、これまで同様、またはこれまで以上の成果を出したいと思う会社は増えていると思います。今まで、求人業界のトップは最も営業力の強い会社が1位で、2位がその次……というかたちでしたが、運用型広告に関しては、当社は営業力から運用力勝負でプレゼンスを出していくことができます。その乗り換えが特に大きい印象です。
坂本:特に求人は何社も広告を出すと思うのですが、予算の縮小というのは、その絞り込みが行われたということでしょうか?
小川:おっしゃるとおりです。後述しますが、現状で当社が目指しているのは「HRアドプラットフォーム」です。求人メディアに掲載型で出稿する予算と、通常の運用型広告で自社の採用ページに人を集める、いわゆるWebプロモーションのケースについては、かなりのシェアを取ることができているのではないかと思います。
10月にリリースした「HRアドプラットフォーム」は、求人メディア側の出稿部分についてもシェアを獲得していきたいという思いでリリースしました。
2021年3月期業績予想
小川:次に2021年3月期の業績予想です。8月14日にレンジ形式で業績予想を公表していますが、現状では想定どおりの進捗状況です。新型コロナウイルス感染症の収束状況が不透明であることから、2020年8月14日に開示した業績予想は据え置きしますが、今後業績予想の修正が必要となった時点で速やかに開示します。
今後のロードマップ
小川:今後のロードマップです。現在、気分的にはすごく晴れやかになってきています。3月、4月ではどこが底なのかが見えなかったのが一番不安でしたが、第1四半期の5月には底が確認できました。第2四半期で回復してきたことが数字上でも確認できたのは大きかったです。足元においても力強く回復してきていますし、第4四半期には前年同期ないしはそれを超える数字目標を立てていますので、1年遅れになりますが、あらためて来期には成長曲線を描ける会社でいられるのではないかと思います。
自己資本比率
小川:自己資本比率については87.4パーセントと、特に借入等もありませんので、財務基盤は安定しています。
2021年3月期戦略
小川:2021年3月期戦略進捗状況について、4点挙げています。1つ目は「HRアドプラットフォーム」の事業化、2つ目が「pinpoint及びその他運用型広告」の伸長、3つ目が新卒採用分野の拡大、4つ目が自社メディアの開発状況です。
事業の「選択と集中」
小川:コロナ禍において、今期の1つのテーマとして、事業の「選択と集中」を進め、収益力確保を優先し、 改めて成長曲線を描く上での基盤構築を目指しています。「ガクバアルバイト」と「らくらくアルバイト」の2つは、経済回復後に補強する事業と位置付けています。
一方、このコロナ禍をチャンスと捉え、注力する事業はスライドの上の4つです。「HRアドプラットフォーム」「pinpoint及びその他運用型広告」の「プレイヤーチェンジ」の可能性が非常に高いところに注力しています。一方、戦略パートナーと新たな取り組みが始まる新卒採用分野、回復が早いと思われる販促広告分野にも注力しています。
1.HRアドプラットフォームの事業化 ― 求人広告領域の変遷
小川:HRアドプラットフォームの内容をご説明する前にその背景についてお伝えします。当社はもともとアドテクノロジー業界に属していましたが、アドテクにおいて営業マンは、例えばみなさまが使われる「Yahoo!」の広告面などは人を介しての販売はしていません。
坂本:広告を出稿したい人が登録し、そこから最も高い値段を付けた人が選ばれるオークション形式ということでしょうか?
小川:おっしゃるとおりです。一方、求人広告に関しては、いまだに日本に何十万人という営業マンがおり、「1ヶ月掲載したら50万円です。2週間掲載したら40万円です」という期間販売をしていることの不思議から始まった企画です。
それを変遷とともに紐解いていきます。例えば、スライドの1990年代に「Yahoo!」と記載がありますが、インターネット広告についてもこの時点では営業マンが販売していました。そして、2002年にはGoogle等のリスティング広告が始まり、いわゆる運用型広告がインターネット広告として始まったのは2011年と言われています。インターネット広告市場の約80パーセントはリスティング広告と運用型広告で占められています。
一方、求人広告もいわゆるインターネット広告の進化に遅れるかたちで変遷しています。2000年くらいには紙が中心だった求人広告がWeb化されました。「Indeed」はリスティングの広告仕様を用いた求人検索エンジンの位置付けになりますが、上陸したのは2009年です。
つまり、この変遷を辿っていくと、2020年代は求人においても運用型の求人広告が進んでいくということで、どこよりも早く日本初のプラットフォームとしてリリースしました。
また、海外を振り返ると、世界的にも同じことが考えられる会社があります。2019年6月には、アメリカの会社で「HRアドプラットフォーム」と類似したサービスをリリースしていたことを確認しています。
1.HRアドプラットフォームの事業化 ― 全体像
小川:次に「HRアドプラットフォーム」の全体像についてです。スライドの図をもとにご説明すると、左側が求人企業つまり人を採用したい企業です。この企業が「HRアドプラットフォーム」を利用すると、採用したい企業が入札します。この入札については、1応募をいくらで獲得したいのかをイメージしてください。例えば、「自分たちは飲食業で、過去の流れから5,000円で1人の応募者を獲得できればよい」ということであれば、5,000円で入札するかたちになります。
ここで、ATS(採用管理システム)は求人企業が持つ自社の採用ページだと思ってください。そのATSの採用管理システムに入っている求人原稿を活用し、入札を用いて日本にあるさまざまな求人メディアの仕様に合わせて自動的に出稿します。今日ビットすれば今日中には全国の様々な求人メディアに自動的に掲載されます。
今までは、営業マンを介して原稿を作ると10日間くらいかかりましたが、「HRアドプラットフォーム」では、メディアAにしか掲載されないものがさまざまなメディアに自動出稿されます。メディアを通じて求職者にリーチでき、求職者の応募者情報はすべて自社で管理している採用管理システムに集約される流れだとご理解ください。
1.HRアドプラットフォームの事業化 ― 今期ロードマップ
小川:無事10月12日に「HRアドプラットフォーム」をリリースした一方、第3四半期はメディアの連携を増やしています。どのような視点で増やしているかというと、我々が想定している求人広告としてのインターネットメディアはだいたい4パターンあるのですが、この4パターンの事例が年内ですべて完了すると思います。
今後、これをもとに汎用化したAPIを活用し、1月以降は4パターンのメディアを横展開していきます。現在は連携のための開発工数が1ヶ月ほどかかりますが、想定どおり進めば年明けから5日で求人メディアとの連携が完了できるようになります。すると、圧倒的なスピードで求人メディアを束ねることができると思います。
一方、デマンド・サイドである求人企業側は、現在は当社が運営する「ジョブオレ」と言う採用管理システムを通じてのみ入札ができます。あくまで我々はプラットフォームを目指していますので、年明けからは「ジョブオレ」ではない他社のATSにもプラットフォームを開放していく流れです。
1.HRアドプラットフォームの事業化 ― トピックス
小川:トピックスです。リリースの直前に「HRアドプラットフォーム」の特許を出願しましたが、実は人材業界ではかなり珍しいです。人材業界はどこかが始めると横にならえで始める業界だと理解していたため、出願した特許をもとに、知財戦略とともに拡大させていくことも人材業界ではかなり珍しい手法ではないかと思います。
また、キャリアインデックスの運営する「Lacotto」との提携を開始しています。
リリース後の市場の反応については、求人企業の引き合いが非常に多かったことは意外でした。コロナ禍においてもかなりの問い合わせをいただいた点と、おそらくみなさまがご存知の、テレビCMを放映しているような大手の求人メディアから連携できないかという引き合いがあった点は驚きでした。
坂本:多くの会社が「話を聞かせてください」と興味を示したということですね。
八木:他の会社が運用型求人広告を始めなかったのはどうしてなのでしょうか?
坂本:バックボーンなのか、今までのビジネスが順調だったかなど、いろいろあると思います。
小川:1つには、半分くらいの企業がATSの採用管理システムを導入していることがあると思います。実は、これを推進したのが求人検索エンジンである「Indeed」です。「Indeed」を利用するには、自社でオウンドメディアとしての採用ページがないと「Indeed」に掲載ができなかったため、みなさまがこぞってATSを使って自社のオウンドページを持ったことが背景にあります。
簡単に言うと2000年代に企業がホームページを立ち上げたくらいのレベルなのですが、そこに我々はアドテクノロジー側としての知見を生かしてどこよりも早く企画開発し、求人業界の変革の合図を出したことに先行優位性があったのではないかと思います。
坂本:特許も出願されましたし、投資家として面白いと思います。
1.HRアドプラットフォームの事業化 ― HRアドプラットフォーム成長戦略
小川:今後の成長戦略です。スライドの備考に記載していますが、特に来期以降は大手の求人メディアと同等の在庫量をできるだけ早く確保しようと考えています。この時点で大手のメディアと同等の在庫を抱えられるポテンシャルを秘めることになります。
最終的には、2025年にマーケットリーダーを目指していきます。この事業自体は「Google」が行なっているリスティングと「DoubleClick」の事業が広告の2本柱なのですが、これはもともと「Google」の「DoubleClick」をイメージした事業でした。おそらく5年後には市場の規模も2,000億円くらいになっているのではないかと予想しています。
1.HRアドプラットフォームの事業化 ― 全体戦略イメージ
小川:これをもって当社の全体の戦略についていうと、「HRアドプラットフォーム」を通じて求人メディアに出稿でき、「pinpoint DMP」を使ってデータを活用した採用活動ができる、「ジョブオレ」を通じてスライドの右側にあるような求人検索エンジンで人の採用ができる、ということになります。現在、当社が保有するところで言えば、求人企業に提供できないソリューションがなくなったのではないかと思います。
2.「pinpoint及びその他運用型広告」の伸長
小川:戦略の2つ目、「pinpoint及びその他運用型広告」の伸長に移ります。まず、成功のために必要なことは3点あると思っています。1つはデータの優位性です。ここについては先ほどお伝えしたとおり、「らくらく連絡網」を通じたデータを保有しているところが最大の強みです。今後についても「らくらく連絡網」のデータが増加するのはもちろんですが、他のデータサプライヤーとのアライアンスやパートナー作りも推進していきたいと思います。
2つ目は運用ノウハウです。我々は、求人領域においてアドテクノロジーでトレーディングデスクを活用し、長年運用ノウハウを蓄積していたため、まさにここが足元の当社の強みだと思っています。2000年代に「Google」や「Yahoo!」でリスティングが出たときに、どこもかしこもリスティングを運用代行する会社が登場しましたが、結果的には、運用力のあるところにすべて集約されてしまったのが現状です。
足元から今後についても、おそらく営業力ではなく運用力の勝負における過程においては、当社のプレゼンスは発揮していけるものと思います。
3つ目は求人原稿数です。ATSで求人原稿をどれだけ抱えているかが求人企業を握っている数になります。「ジョブオレ」については順調に求人原稿数が増えているところであり、今後は「ジョブオレ」のさらなる拡大と「HRアドプラットフォーム」の推進によって利用する求人原稿数を増やしていきます。
2.「pinpoint及びその他運用型広告」の伸長(続き)①
小川:ターゲットとする業界・業種・雇用形態を見極め、引き続き「pinpoint及びその他運用型広告」の強化を推進していきます。スライドの円グラフにある第2四半期の累計期間で言うと、当社の売上の73.5パーセントはこの事業を占めています。
2.「pinpoint及びその他運用型広告」の伸長(続き)②
小川:運用型広告における当社の運用力を背景に、他社からの乗り換えが加速しています。一方、「Indeed」の認定パートナー制度において、2020年上半期総合売上で「シルバーパートナー1位」を受賞しています。また、スライドのグラフにあるように、この領域において販促分野も前年同期比で49.3パーセント伸長しています。
2.「pinpoint及びその他運用型広告」の伸長 ― ジョブオレの歩み
小川:「ジョブオレ」についてです。第2四半期が終了した時点で5万弱くらいの求人を取り扱っています。前年同期で比較すると113.2パーセントであり、倍以上伸びています。
坂本:「ジョブオレ」の取り扱いの原稿数が大きく増えていますが、その要因と「HRアドプラットフォーム」でどのような影響があったのか教えてください。
小川:当社では現在約5万求人を取り扱っていますが、伸びた要因としては、他社から乗り換えるにあたって、当社のATSに乗り換えるところで求人数がどんどん増えていったことがあります。一方、9月末において「HRアドプラットフォーム」を利用したい企業が「ジョブオレ」を利用するというケースもあります。
坂本:「こっちもよいな」ということもあるわけですね。
小川:おっしゃるとおりです。現状、「ジョブオレ」の5万求人のお客さまのみが年内に「HRアドプラットフォーム」を利用できます。
坂本:「ジョブオレ」を使っている方だけ「HRアドプラットフォーム」を使えるということですが、来年からは他の方も使えるようになるのですよね。
小川:はい、他社のATSにもプラットフォームを開放していきます。
坂本:それが増えた要因の1つですね。
3.新卒採用分野の拡大
小川:次に新卒採用分野の拡大です。4点あげた中で言うと若干進捗が遅れているのがこちらです。先ほどもお伝えしたとおり、今の大学3年生を対象とした採用人数が決まっていない企業が多く、予算組みが遅れていると推測しています。
一方で、戦略パートナーは「もうここが販売してくれているのなら間違いない」というところではありますが、足元では、新卒以外の中途採用やアルバイト分野においても戦略パートナーと推進していく動きが始まっています。
4.自社メディアの開発状況 ― 自社メディアの保守・運用フェーズへの移行
小川:次に自社メディアの開発状況についてです。「ガクバアルバイト」「らくらくアルバイト」「らくらく連絡網」はすべて保守・運用フェーズに入りました。これは戦略的に行った結果であり、今後の保守・運用のコストをとにかく削減するためにすべての開発を行いました。
一方、エンジニアのリソースなど、これまでメディアに投資したものはすべて「HRアドプラットフォーム」に投入することを段階的に行ってきた背景があります。
らくらく連絡網.app ― らくらく連絡網新アプリ
小川:8月31日に「らくらく連絡網.app」という新アプリをリリースしました。開発目的には、先ほどお伝えしたとおり、保守・運用の工数削減の点と、よりユーザーの利便性を追求するために機能を絞った「連絡特化型」アプリを実現する点があります。
新しい生活様式が求められるなど、事業環境の変化で法人利用ニーズが高まる傾向があり、現在、カスタマイズが可能なSaaSソリューション事業への活用を検討しています。具体的には、ハンコをなくしたり学校教育をオンライン化したりなどです。また、自治体によってさまざまな回覧板があったりもします。今後は、SaaSモデルで連絡機能だけに特化したものを自治体やマンションの組合に提供できないかと考えています。
らくらく連絡網.app ― らくらく連絡網新アプリ(続き)
小川:「らくらく連絡網.app」の特徴は3点あります。必要な機能に絞ったシンプル設計、煩わしいコミュニケーション不要、簡単操作で使いやすいという点を主眼にリリースしました。
新型コロナウイルス感染症拡大に対する社内対応
小川:新型コロナウイルス感染拡大における当社の対応として、執務室内の社員数を50パーセントくらいにしています。半数が出社して残りの半数がテレワークというかたちで組み合わせて行っています。先ほどもお話ししましたが、我々の会社としてはむしろ今のオンラインでのやりとりの方が向いていると感じています。
らくらく連絡網の会員数・団体数増加
小川:次に、その他の取り組みについてご説明します。「らくらく連絡網」は696万人、390万団体まで伸長しました。春先に団体活動がかなり制限されましたので、若干伸び悩んだところはあります。かなり使われておらず、それを見て「日本人って真面目だな」と思いました。
坂本:コミュニケーションツールとして使ってもらえればよかったのですよね。
小川:やはり活動がないと我々のサービスは使われないです。
八木:回復してきたのは7月から8月くらいでしょうか?
小川:そうですね。7月以降に回復した印象です。
ガクバアルバイト・らくらくアルバイトの取り組み状況
小川:「ガクバアルバイト」「らくらくアルバイト」についてです。「ガクバアルバイト」は大学生が対象ということで、第1四半期の会員数は伸び悩みましたが、第2四半期は前年同期比より増えています。「らくらくアルバイト」は順調に会員数が増えており、170万人を超えています。
2021年3月期第2四半期 B/Sサマリー
小川:こちらはB/Sのサマリーです。
PR TIMES STORY(HRアドプラットフォーム取材記事)
小川:付録として、「HRアドプラットフォーム」がなぜ企画に至ったのか、また開発で苦労した点などを取材形式で資料に掲載していますので、お時間がありましたらぜひご覧ください。
坂本:そのあとにある用語集もけっこう助かります。ダウンロードできるのでぜひご覧ください。
質疑応答:「らくらく連絡網」におけるサークルでの利用状況について
八木:それでは、投稿されたQ&Aと坂本さんが気になるところを伺っていきましょう。
坂本:今後の可能性についてお話しいただき、確かに新しいことに取り組まれているし、面白いと思いました。
最初に、データの部分についてお伺いしたいと思います。御社の場合、今まではどちらかというと、大学生のサークル向けに「らくらく連絡網」を提供し、属性を使っていろいろなビジネスをされるパターンでした。しかし、キャンパスに行かない学生が増えた中で、サークル活動で使う黄金パターンが若干崩れ気味になっています。今後戻る可能性もあると思いますが、そのあたりの影響は出ていますか?
小川:影響は出ています。今の大学1年生はオリエンテーションもなくオンライン授業に突入し、サークルの勧誘を受けていませんので、前年比で見ると大学1年生の取得データは減っています。ただ、実は我々が大学生で最もリーチできているのはゼミと研究室です。
八木:これは続きますものね。
坂本:絶対ありますよね。
小川:ですので、現大学1年生のサークル加入率がこのまま減った状況であったとしても、2年次、3年次の研究室に入るタイミングやゼミに入るタイミングでデータベース化していけると思っています。
坂本:そうすると、大学生以外にも登録者数を増やしていくかたちが問われると思います。「らくらく連絡網.app」によってシンプルになったということは、社会人や中高年のサークルなどにある程度使われることもあったのでしょうか?
小川:そうですね。「らくらく連絡網」はかなり公式な使われ方をしています。PTA活動や団体の代表者がメンバーを選別して招待して承認して……というかたちで、やっと連絡を取ることができます。したがって、今まで「らくらく連絡網」を使うほどではなかった層に「らくらく連絡網.app」を利用いただければと思います。一方、自治体などのtoB向けの企画も考えています。
質疑応答:中途採用における強みについて
坂本:会場からの質問です。御社はどちらかというと新卒・アルバイトがビジネスのパターンになっていたと思います。御社の中途採用部分の戦略と今まで持っていた強み、データ等の活用について教えてください。
小川:1兆円の求人広告市場がある中で、最も大きなシェアは中途市場です。次にアルバイト市場、新卒市場は1,000億円もないのではないかと言われています。現状の足元を見ると我々も中途の扱いが多いです。
坂本:今後も大学生の数自体が減っていく一方で中途は増えていくと思いますし、その方向に進むのは正しいと思います。
小川:おっしゃるとおりです。我々のデータとして受けがよいのは第2新卒です。東京大学出身の社会人3年目の方にリーチしたりしています。また、新型コロナウイルスの影響を受けなかった点でよかったのは、看護師、保育士、介護士などの有資格者の採用です。このようなところは、新型コロナウイルスであろうがなかろうが変わりませんし、当社は職業データを持っているため、かなり強みだと思います。
質疑応答:「HRアドプラットフォーム」の成長について
八木:求人に関してもいろいろなお話をいただいているのですが、今後、他社サービスと大きな差別化になるポイントは、今回新しくリリースされた「HRアドプラットフォーム」だと思います。あらためて、具体的にどのような成長を見込んでいるのか、もう一度説明していただいてもよろしいでしょうか?
小川:具体的な数字や金額については、まだお話しするのが難しい部分があります。しかし、足元ではかなり順調に推移しており、「ジョブオレ」に5万求人くらいが入っている中でも、年内で20パーセント、1万求人が「HRアドプラットフォーム」の利用求人になるかたちで推移しています。リリースが10月だったことを考えると、2ヶ月でかなりの数が増えた印象です。
おそらく5年後は、市場的には1兆円ある求人市場が、いわゆるこれまでの純広告という求人メディアの領域と、「Indeed」を代表とする求人検索エンジンの市場、我々の運用型求人プラットフォームの市場に三分されるくらいになると思います。
ただ、我々のプラットフォームを活用して求人メディアに自動出稿する流れになりますので、あくまで我々は求人メディアに収益をお戻しするかたちです。一緒に求人領域を盛り上げることに変わりはありません。
坂本:「一緒に成長しましょう」ということですね。確かにそのほうが御社にとってよいのかと思います。
質疑応答:資金の活用について
坂本:毎回聞いているお話なのですが、自己資金比率が非常に強固になっています。今期は下がった部分があるかもしれませんが、落ち着いたときは資金を何かに活用するかと思います。前回もお話しいただきましたが、そのイメージは新型コロナウイルスを経て変わりましたでしょうか?
小川:「逆にチャンスと捉え、積極的に行っていきたい」というくらいの印象です。今はHRアドプラットフォーム事業が中心ですが、足元の中心はアドテクノロジー事業であり、あくまでも当社はテクノロジーの会社です。やはり我々の持っていない新しいテクノロジーを持っている会社は常に興味があります。
坂本:出資するかもしれませんし、買うこともあるかもしれないということでしょうか?
小川:始めることもあるかもしれません。
坂本:逆にアドテクノロジーを含めて足りない部分や興味がある部分はありますか? 当然、今検討されていて言いにくい部分もあるかもしれませんが、このようなものだったらよいなというのはありますでしょうか?
小川:個人的には、現在業界的にはかなり厳しいのですが、トラベルテックについて、求人の「Indeed」を「トリバゴ」に置き換えると実はかなり近いのです。
坂本:飛行機の安いところを選ぶというのも確かに同じですね。
小川:天気予報などのデータや過去のお客さまのデータを活用すると、実はダイナミックプライシングができるということです。
坂本:飛行機が空いていると安くなったり、混んでいると高くなるなど、航空会社のサイトを見ているとすべて分かりますよね。だからけっこうシビアになってきて、旅行サイトと比べると航空会社のパッケージが安いことになります。それをもっと精緻にするということですよね。
小川:おっしゃるとおりで、例えば、旅館やホテルや、法的なしがらみがあるかもしれませんがタクシーなどの交通機関もそうだと思います。データとAIを活用したプライシングによる予約ページは、言ってみれば「ジョブオレ」なのです。
坂本:すごいわかりやすかったです。
小川:そのような部分をテクノロジーを使って展開していきたいと思います。