サマリー 2020年8月期の総括

澤登一郎氏:ナガイレーベンの澤登です。昨今は新型コロナウイルスが蔓延している中で、感染症対策の最前線で力を尽くす医療従事者のみなさまに心より感謝申し上げます。それでは2020年度8月期の決算説明を始めます。

まとめとして、売上高・利益についてご説明します。売上高は170億6,000万円で、前年対比1.7パーセントの増で終わっています。営業利益は49億3,000万円で、前年対比0.4パーセントの増で終わっています。

新型コロナウイルスの当社グループに対する影響ですが、生産・販売・物流面においてすべて通常どおり稼働し、国内外の生産環境の影響は軽微でした。一方、医療市場は混乱傾向で納入遅れが発生しましたが、感染対策商品の開発に着手し、上市した商品が納入遅れ分の売上をカバーしました。また、去年の2019年11月13日に自己株式の取得を行っています。

当社の特徴①

当社の特徴についてです。当社は今年で創業105年を迎える白衣のメーカーで、ナースの白衣のシェアは60パーセント強、年間の生産枚数は600万着強になっています。我々を取り囲む市場について、ドクター、ナース、介護職員の就労人数は年々緩やかに増加しています。

当社の特徴②

安定的な利益を毎年積み重ねてきていますので、自己資本比率は89.3パーセント、ROIは8.7パーセントで終わっています。株式価値の向上、株主を重視した株主還元策として、第一に安定配当を目指し、配当性向は50パーセント以上を目標としています。また、機動的に自己株式の取得を行っています。社会的責任としては、豊かな社会の実現とその持続に貢献しています。内容については次ページからご説明します。

CSR/ESG 「いのちの力になりたい」を核にした取り組み

我々は「いのちの力になりたい」を核にした取り組みを行っています。直近の取り組みとしては感染対策商品の開発や、そこで開発したリユーザブルマスク、アイソレーションガウンを各医療機関に寄付しています。また、医療従事者への応援メッセージを新聞に掲載しています。その他の社会貢献としては、女性主役産業のサポート、ナースのためのビューティー講座、メディカルキッズプロジェクト等、いろいろな側面から支援を行っています。

CSR/ESG SDGsに向けた考え方

当社のSDGsに向けた考え方をご説明します。まず当社はなんといっても「いのちの力になりたい」ということで、白衣を通じて医療現場をサポートしています。医療従事者に快適に仕事してもらえることによって、尊い命を救うということを日々の活動を通して行っています。

商品としては、環境に配慮したリユーザブルなコンペルパックです。洗濯、滅菌を行い、再度繰り返して使う商品の開発等も行っています。また社会への還元として、今期は新型コロナウイルス対策で感染拡大リスクを抑えるマスクやガウンを開発しています。さまざまな取り組みを今後も続けていきたいと思っています。

Topics

当社の事業環境についてです。当社を取り囲む市場環境は大変混乱していると言えると思います。消費税増税に伴う診療報酬の改定や通常の診療報酬の改定がありましたが、それ以上に新型コロナウイルス感染症問題で医療および介護の現場は大きく混乱しています。

また医療物資の国内供給体制のリスクとしては、コロナ禍を受け医療物資の需要急増に伴う国内製造キャパが非常に不足しています。海外の生産国においては日本に向けての輸出の禁止など、我々は生産国の政策リスクを経験しています。為替相場に関しては、この1年間は比較的落ち着いていたと思っています。

事業環境 診療報酬・介護報酬の改定推移

事業環境についてです。診療報酬および介護報酬の改定の推移に関してですが、今回の改定は市場に対して大きな影響はなかったと考えています。

事業環境 看護・介護職員の将来需要推計

看護および介護職員の将来需要の推計ですが、看護職員および介護職員の人数は今後とも増加の見込みです。我々にとっては市場の拡大につながる、ありがたい環境だと考えています。

事業方針 経営課題とその取り組み状況

2020年8月期の決算概要と2021年度の見通しについてご説明します。経営環境とその取り組み状況に関しては、営業戦略、生産戦略、収益力安定に向けた戦略があります。こちらに関して大きな変更はありませんが、営業戦略については、今回のコロナ禍において我々が開発したリユーザブル感染対策商品の開発および販売をより強化していきたいと思います。

Topics 新型コロナウイルス感染症の対応状況

当社の新型コロナウイルス感染症の対応についてご説明します。冒頭でお話ししたとおり、当社に関する生産・販売・物流面に関しての影響はほとんどありませんでした。開発面としては、リユーザブル感染対策商品の開発に着手しました。その結果、感染防護衣アイソレーションガウン、マスクを上市しました。

生産面としては、幸いにも国内外の生産工場の影響は軽微でした。国内の生産能力を活用することで、早期の感染防護衣の納品を実現しています。販売面としては、我々のコアの商品であるヘルスケアウェアを中心に納入が遅れましたが、第4四半期に厚労省からの大口受注があった関係で売上減をカバーできました。

連結業績 2020年8月期決算概要と2021年8月期見通し①

2020年度の決算概要と2021年度の見通しについてご説明します。2020年度の売上は170億6,600万円、前年比でプラス1.7パーセントです。営業利益は前年対比でプラス0.4パーセント、経常利益はプラス0.8パーセント、当期純利益はプラス0.8パーセントとなりました。

2021年度の見通しとしては、売上高173億円で、前年対比1.4パーセントの増、営業利益はプラス2.7パーセント、経常利益はプラス2.2パーセント、当期純利益はプラス1.3パーセントを目指していきます。

2020年度の売上の中身についてご説明します。この期に関しては、コロナ禍において更新物件の商談に大きな支障が発生しています。したがって、ヘルスケアウェアやドクターウェアの納入遅れが起こっており、多くの期ズレが発生しています。この第3四半期は大幅な減収となったものの、第4四半期では遅れた物件が少しずつキャッチアップして回復基調にあると思います。

一方、手術ウェアは医療物資不足の中、コンペルパックについてリユーザブル商品の利点が評価され、第3四半期に順調な増収となりました。また、今期中に開発・上市した感染対策商品群が厚労省への納入を含めて大幅に売上貢献した結果、前年比でプラス1.7パーセントを達成しました。

2021年度の見通しですが、コロナ禍において非常に不透明感が残るものの、前期からの期ズレ物件も含めて、メディカルウェアは順次納入が発生するものと判断しています。また、感染対策商品群の厚労省への納入は第1四半期まで継続します。引き続き需要が期待される手術ウェア、前期取り組み開始が遅れた患者ウェアの順調な増収に加え、前期に厚労省へ納入した売上の剥落をカバーし、前期比でプラス1.4パーセントの過去最大の売上を目指していきます。

連結業績 2020年8月期決算概要と2021年8月期見通し②

売上総利益についてです。販売による要因はプラス1億2,900万円、生産による要因はマイナス1億5,900万円でした。売上総利益率は2019年度が46.7パーセントだったのに対し、この2020年度は45.8パーセントに低下しています。こちらの要素についてご説明します。

国内の加工賃の値上げによる影響が6,300万円あり、我々が使用している原材料の値上げの影響も6,800万円ほど原価を押し上げています。一方、為替レートとしては1円50銭の円高で推移した結果、3,000万円ほど原価が軽くなっています。海外生産に関しても生産率が49.2パーセントから49.5パーセントに増えた影響で、プラス3,500万円となっています。

しかし、先ほどからお伝えしている感染対策商品は厚労省への緊急の納品で、納期が非常に短かったために国内での生産を余儀なくされた結果、原価としては1億円ほど重くなっています。それを受けて2021年度の見通しとしては、販売による要素はプラス1億800万円、生産による要因としてはプラス9,200万円の予定です。売上総利益率は2020年度は45.8パーセントで終わりましたが、2021年度は46.3パーセントで粗利率が向上する見通しです。

中身としては、2021年度は加工賃および原材料の値上げの影響はありません。為替レートは1円ほど円高を見越していますので、原価が2,000万円ほど軽くなる見込みです。

海外生産率は49.5パーセントから50.5パーセントと、1パーセントほど海外にシフトする影響でプラス6,000万円を予定しています。そのうち感染対策商品は2,000万円含まれています。前期の感染対策商品は急遽国内で生産しましたが、この2021年度の納品分は海外に切り替えることによって粗利が上昇すると考えています。

連結業績 2020年8月期決算概要と2021年8月期見通し③

販管費についてご説明します。2020年度は、我々が開発したマスクや感染予防着のガウンを総計2,000万円ほど病院に寄付させていただきました。2019年度の期に役員退職慰労金が発生していますが、2020年度には発生していませんので、8,400万円軽くなっています。旅費交通費はこのコロナ禍で十分な販促活動が行えなかった結果、3,600万円軽くなっています。

2021年度の販管費は旅費交通費がプラス3,100万円ですが、こちらはコロナ禍が多少収まり、通常の営業活動が行えることを見越しています。広告宣伝費は1,800万円のプラスになっていますが、こちらは海外の販促用のカタログ作りの予算を見越しています。

2020年度の設備投資に関しては、設備投資額総計として1億8,300万円かかっており、減価償却費は3億3,400万円となっています。2021年度の設備投資額は2億7,500万円ですが、減価償却費は3億1,700万円と減少する見込みです。

Topics 感染対策商品の厚労省への納入

感染対策商品の厚労省への納入の影響についてご説明します。売上に対しての影響ですが、2020年度の第4四半期に9億4,500万円を納入しており、2021年度の第1四半期に3億1,500万円を納入予定です。

売上高の前年同期比をご覧ください。2020年8月の上期はマイナス2.5パーセントで、2月から新型コロナウイルスの影響を受け始めています。第3四半期はマイナス7.8パーセントで、繁忙期に新型コロナウイルスの影響が大きく残っています。

第4四半期は23.5パーセントと、大きなプラスになっています。こちらは先ほどご説明した9億4,500万円の厚労省への納入の影響が色濃く出ています。2021年度の上期の見込みとしてはプラス8.6パーセントで、こちらも先ほどご説明した2021年度第1四半期の3億1,500万円の厚労省への納入が加味されています。

下期に関してはマイナス3.7パーセントで、2020年度第4四半期の9億4,500万円の納入がないため、このような結果を見越しています。しかし、仮に特殊要素を除いた場合は第3四半期までこのような特殊な影響はなかったことになります。新型コロナウイルスの影響を受けてマイナス7.8パーセントでしたが、特殊要因を除くと第4四半期に関してはマイナス1.0パーセントです。そのような意味では少しずつ正常を取り戻し、第3四半期の遅れも徐々に取り戻して回復に向かってきています。

2021年度の上期の見込みとしては、2020年度から期ズレした物件が上期に上乗せされてプラス4.1パーセントを見込んでいます。下期に関しても大変厳しかった2020年度の下期と対比しています。また2020年度の期ズレの物件も上乗せされることを予想して、プラス6.3パーセントの着地です。通期としては前年対比でプラス1.4パーセントを予定しています。

次に利益への影響についてですが、2020年度の厚労省の納品に関しては、国内において緊急の生産を行ったことにより原価が1億円ほど重たくなっています。それを受けて、2020年度第4四半期の売上総利益率は45.1パーセントと大変厳しい状況になりましたが、特殊要素1億円のマイナスを取り除くと46パーセントになります。2021年度は第1四半期に発生するものを海外生産に切り替えることで2,000万円ほど原価が軽くなります。それを受けて、2021年度8月期の通期の売上総利益率は46.3パーセントを予定しています。

連結業績 2020年8月期決算概要<貸借対照表>

20ページは貸借対照表です。こちらに関してはスライドのとおり、大きな変動はありません。

参考 アイテム別分類

アイテム別分類についてご説明します。我々のアイテムとしては、ヘルスケアウェア、ドクターウェア、ヘルスケアウェアの上に着るカーディガンやエプロンのユーティリティ、病院に入院する時や検診を受診する時に着る患者ウェア、特殊な環境下に置かれている手術ウェア、今期から新しく追加した手術の感染対策商品と分類しています。

売上状況 アイテム別売上状況

22ページはアイテム別の売上状況です。全体としては、2020年度はプラス1.7パーセントでしたが、通期でヘルスケアウェアはマイナス7.6パーセント、ドクターウェアは7.4パーセントと大変厳しい状況で終わっています。こちらに関しては先ほどからお伝えしているとおり、市場の混乱および販促活動の自粛も受けて、第3四半期に大幅な減収となりました。第4四半期にかけてはやや回復傾向にあります。

2021年度に関しては新型コロナウイルスの不透明感はまだ残るものの、期ズレ物件を確実に取り込むことによってプラス6.3パーセントを予定しています。

ユーティリティに関しては、もう長らく個人支給品から供用品に変わったことによる減少が続いていますので、終わった期もマイナス10.6パーセントです。2021年度もマイナス10パーセントを見越しています。

患者ウェアは2020年度はプラス1.7パーセントで、新型コロナウイルスの影響が比較的少なく終わっています。しかし、物件の進捗に若干の支障が発生したことにより、伸び率はプラス1.7パーセントです。2021年度は前期ペンディングとなった新規の取り組みを確実に実現することにより、プラス6.4パーセントを見越しています。

手術ウェアは特異な動きをしています。第3四半期にディスポ製品の供給不足によって当社のリユーザブル商品であるコンペルパックが見直され、売上を大幅に伸ばしています。したがって、通期ではプラス7.7パーセントで終わっています。

2021年度もプラス3.5パーセントと、引き続きリスク回避の利点をポイントにコンペルパックの市場浸透に努力してもらいたいと思っています。感染対策商品は先ほどからお伝えしているリユーザブルのアイソレーションガウンを急遽開発し、厚労省からの受注も含めて約11億円の売上を達成しています。2021年度は厚労省からの受注は大幅減となりますが、それ以外のリユーザブル感染対策商品の市場定着を目指して、販促を行っていきたいと思います。

売上状況 地域別売上状況

地域別の売上状況についてご説明します。こちらに関しても全体としてはプラス1.7パーセントで終わっていますが、東日本に関してはマイナス4.1パーセントと大変厳しい状況で終わっています。

第3四半期は手術ウェアや感染対策商品の拡販にも注力し、第4四半期は遅れを多少キャッチアップしていますが、大幅な期ズレ物件が発生しています。2021年度は確実にこの期ズレをキャッチアップし、プラス4.5パーセントを予定しています。

中部日本は非常に市場規模が小さいため大きくブレる市場ですが、終わった期はプラス4パーセントと、第4四半期に大型更新物件が納入できたのが大きく影響していると思います。中部においては2021年度も引き続き、更新予定物件を確実に獲得して過去最大の売上を予定しています。

西日本もマイナス6.2パーセントと大幅な減少になっています。内容に関しては、第4四半期に患者衣を納入しましたが、コロナ禍における納入物件の遅れが影響しています。西日本の市場に関しても2021年度は着実に期ズレ物件を納入するとともに、患者衣の市場が本格化すると期待されますので、売上の回復を図っていきます。

海外に関しては、前年対比6.0パーセントで終わっています。特に台湾において着実に受注を獲得しています。2021年度においてもプラス9.3パーセントと高い伸びを予定していますので、引き続き台湾の当社のビジネスモデルの推進によって、継続的に増収を図っていきます。

厚労省は第4四半期に9億4,500万円のアイソレーションガウンの受注を受けて大幅に売上を増しています。2021年度は第1四半期に3億1,500万円をすでに受注済みです。しかし現在のところ、それ以降の厚労省に対する売上の予定はありませんので、前年対比で見るとマイナス66.7パーセントの着地と見越しています。

事業戦略 商品戦略

商品戦略についてご説明します。当社は「ハイエンド」「高付加価値」「付加価値商品」「量販」と分類しています。終わった2020年度に関してのハイエンド商品がマイナス15.9パーセントと大幅なマイナスに見えますが、こちらはコロナ禍の影響よりも2019年度に比較的大型の病院に固まった受注があった影響で、2020年度は若干マイナスを受けています。しかし、順調に伸びていくと予想して、2021年度はプラス9.1パーセントの伸びを予想しています。

高付加価値商品に関しても、2020年度は新型コロナウイルスの影響を受けてマイナス3.1パーセントです。こちらは着実に刈り取ることによって、2021年度はプラス8.5パーセントを目指します。付加価値商品も終わった期はマイナス2.2パーセントでしたが、新しい期はプラス1.5パーセントを目指していきたいと考えています。

事業戦略 生産戦略

生産戦略です。2020年度の海外生産の構成比率が49.5パーセントですが、2021年度は初めて50パーセント超える、50.5パーセントの構成比率を目指しています。これによって原価率の低減を図っていきたいと思います。

経営戦略 事業展開の考え方

中期経営計画をご説明します。事業展開の考え方ですが、売上高の考え方としては我々の周辺の市場である患者や手術衣の市場を拡大し、よりハイエンドの商品、高付加価値の商品を伸ばしていきます。また、今期から開発した感染対策商品の開発および販売では、海外の特に台湾市場の開拓を行っていきます。

利益率の考え方としては、より高付加価値戦略の商品の開発、海外生産のシフト化、海外の素材の発掘を行うことによって原価低減を目指していきたいと思います。

経営戦略 売上高・総利益率の推移

当社の過去からの売上高・総利益率の推移です。棒グラフおよび折れ線グラフをご覧ください。毎年、中期経営計画として期末にローリングで3年後の姿を掲示していますが、コロナ禍の影響や今後の病院の経営に関して政府の対応等がまだ不透明なところがありますので、今回は2021年度までの売上および利益のご説明に変えます。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

株主還元 株主還元の考え方

株主還元の考え方についてご説明します。配当方針としては安定配当を継続し、配当性向も単体ベースで50パーセントを基本とします。今期は2019年11月に40万株の自己株を取得しています。

株主還元 株主還元実績

今期の着地予定ですが、配当性向としては57.9パーセントを予定しています。また、自社株の取得を行いましたので、今期の総還元性向としては87.9パーセントを予定しています。以上をもって、今期2020年度の決算内容のご説明および2021年度の予定についてご説明しました。

経営理念

最後になりますが、このコロナ禍の中、献身的に活動を続けられている医療従事者の方々に対して、白衣の力で快適に仕事ができるよう今後とも努力を重ねていきたいと思います。ここにお集まりのみなさまに対しても、今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げ、本日の決算発表に代えさせていただきます。ありがとうございました。